JP2004002651A - オレフィン系熱可塑性エラストマーおよびその成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐油性、耐熱性、圧縮永久歪み、成形性およびリサイクル性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマーおよび該エラストマーからなるシール類を提供する。
【解決手段】耐油性エチレン−プロピレン共重合体セグメントとビニル系共重合体セグメントとからなり、かつ前記二つのセグメントのうち一方が他方に0.01〜1μmの微細な粒子として分散相を形成しているグラフト共重合体と、メトキシエチルアクリレート10〜90重量%とアクリル酸アルキルエステル5〜85重量%とアクリロニトリル5〜15重量%とを主成分とする単量体混合物から形成されるアクリル系ゴムと、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の架橋剤と、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の共架橋剤を溶融混練して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー。
【選択図】 なし
【解決手段】耐油性エチレン−プロピレン共重合体セグメントとビニル系共重合体セグメントとからなり、かつ前記二つのセグメントのうち一方が他方に0.01〜1μmの微細な粒子として分散相を形成しているグラフト共重合体と、メトキシエチルアクリレート10〜90重量%とアクリル酸アルキルエステル5〜85重量%とアクリロニトリル5〜15重量%とを主成分とする単量体混合物から形成されるアクリル系ゴムと、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の架橋剤と、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の共架橋剤を溶融混練して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明に属する技術分野】
本発明は、耐油性、耐熱性、機械的強度、圧縮永久歪み、成形性およびリサイクル性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマーおよび該エラストマーからなる成形体、特にシール類に関するものであり、自動車・車両部品、電気・電子機械部品、装置・器具部品、工業部品、建築部品等の広い分野で有効に使用されうるものである。
【0002】
【従来技術】
アクリルゴムは耐油性、耐熱性、耐オゾン性等に優れていることから、自動車の潤滑油系のパッキン、ガスケット、シール等(以下、これらをまとめて「シール類」という)に使用されている。
アクリルゴムを用いたシール類は、アクリルゴムに充填剤、老化防止剤、加工助剤、加硫剤等の各種配合剤を混合したものを任意の型に入れて加硫し、その後さらに二次加硫を行うといった工程によって製造されている。
このように、アクリルゴムは成形品の製造工程において加硫という煩雑な工程があるうえ、製造工程で発生したスクラップ、製品を再加工することが困難であるといった問題があった。
【0003】
近年ではアクリルゴムに代わりうる素材として、オレフィン系熱可塑性エラストマーが優れた機械的物性、成形性およびリサイクル性を有していることから、自動車の内外装部品や電機分野で幅広く使用されるようになってきた。
例えば、ポリプロピレンとエチレン−プロピレン系ゴムからなるオレフィン系熱可塑性エラストマー(例えば、特許文献1参照。)や、ポリプロピレンとアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムとからなるオレフィン系熱可塑性エラストマー(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
また、オレフィン系樹脂とアクリルゴムとからなるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、本質的に非相溶であり、単純にブレンドしたのでは良好な材料は得られないため、両者の相溶性を高めるような相溶化剤を追加的に添加したものが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたオレフィン系熱可塑性エラストマーは耐油性に著しく劣り、特許文献2に開示されたオレフィン系熱可塑性エラストマーは耐油性に優れるものの、耐熱性や耐オゾン性に劣るといった欠点を有しており、自動車のエンジンルーム内のごとき耐油性と耐熱性の両方が要求される分野で使用するにはその特性が十分でないという問題があった。
また、特許文献3に開示されたオレフィン系熱可塑性エラストマ−は相溶化のレベルがまだ不十分であるため、十分な圧縮永久歪みや機械的強度を得ることができなかった。
このように従来の技術では成形性やリサイクル性と耐油性、耐熱性、機械的強度、圧縮永久歪みなどの物性を両立させることは困難であった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭48−26838号公報(第38〜60頁)
【特許文献2】
特開平4−48817号公報(第5〜12頁)
【特許文献3】
特開昭60−156738号公報(第38〜69頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような従来技術に存在する問題点に注目してなされたものである。その目的とするところは、耐油性、耐熱性、機械的強度、圧縮永久歪み、成形性およびリサイクル性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマーおよび該エラストマーからなる成形体、特にシール類を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、本発明の第1の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、耐油性エチレン−プロピレン共重合体セグメントとビニル系共重合体セグメントとからなり、かつ前記二つのセグメントのうち一方が他方に0.01〜1μmの微細な粒子として分散相を形成しているグラフト共重合体と、メトキシエチルアクリレ−ト10〜90重量%とアクリル酸アルキルエステル5〜85重量%とアクリロニトリル5〜15重量%とを含みこれらを主成分とする単量体混合物から形成されるアクリル系ゴムと、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の架橋剤と、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の共架橋剤を溶融混練して得られるものである。
【0008】
第2の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、耐油性エチレン−プロピレン共重合体粒子中にビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との共重合体が分散した構造体であるグラフト化前駆体と、メトキシエチルアクリレート10〜90重量%とアクリル酸アルキルエステル5〜85重量%とアクリロニトリル5〜15重量%とを含みこれらを主成分とする単量体混合物から形成されるアクリル系ゴムと、グラフト化前駆体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の架橋剤と、グラフト化前駆体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の共架橋剤を溶融混練して得られるものである。
【0009】
第3の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第2の発明において、前記グラフト化前駆体が、耐油性エチレン−プロピレン共重合体粒子中に、ビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤を含浸させた後、ビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物とを共重合させて得られることを特徴とするものである。
第4の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第2または第3の発明において、前記ラジカル重合性有機過酸化物が、下記式(1)または(2)で示される化合物であるものである。
【0010】
【化3】
【0011】
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基、R3およびR4はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R5は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。mは1または2である。)
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、R6は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R7は水素原子またはメチル基、R8およびR9はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R10は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。nは0、1または2である。)
【0014】
第5の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第1〜4のいずれかの発明において、前記ビニル系共重合体セグメントまたはビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との共重合体が、架橋性官能基を有していることを特徴とするものである。
【0015】
第6の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第1〜5のいずれかの発明において、前記アクリル系ゴムが、アリルメタクリレートを含む単量体混合物から形成されていることを特徴としているものである。
【0016】
第7の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第1〜6のいずれかの発明において、さらに非極性α−オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体またはオレフィン系共重合体を含むものである。
【0017】
第8の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第1〜7のいずれかの発明において、さらに可塑剤、伸展剤、充填剤、難燃剤および老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の添加剤を含むものである。
【0018】
第9の発明は、第1〜8のいずれかの発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーを成形して得られる成形体である。
【0019】
第10の発明は、第1〜8のいずれかの発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーを成形して得られるシール類である。
【0020】
第11の発明は、第1〜8のいずれかの発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーを成形して得られる自動車用シール類である。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に使用するグラフト共重合体は、耐油性エチレン−プロピレン共重合体セグメントとビニル系共重合体セグメントとからなり、前記二つのセグメントのうち一方が他方に0.01〜1μm、更に好ましくは0.1〜1μmの微細な粒子として分散相を形成している。分散樹脂の粒子径が0.01μm未満の場合あるいは1μmを超える場合、アクリル系ゴムにブレンドしたときの相溶性が不十分となり、外観の悪化あるいは機械的物性が低下するため好ましくない。
【0022】
まず、グラフト共重合体の耐油性エチレン−プロピレン共重合体セグメントについて説明する。
ここで、耐油性エチレン−プロピレン共重合体とは、エチレン−プロピレンランダム共重合体におけるエチレンの含有量が5重量%以下、またはエチレン−プロピレンブロック共重合体におけるエチレンの含有量が8重量%以下の共重合体であり、これらの単独または2種類以上を混合して用いられる。
エチレン−プロピレンランダム共重合体中においてエチレンの含有量が5重量%を超える場合や、エチレン−プロピレンブロック共重合体中においてエチレンの含有量が8重量%を超える場合には、オレフィン系熱可塑性エラストマーの耐油性が低下するので好ましくない。
耐油性エチレン−プロピレン共重合体の重量平均分子量は5,000〜3,000,000、好ましくは10,000〜2,000,000、更に好ましくは50,000〜1,000,000である。重量平均分子量が5,000未満であったり、3,000,000を超えると、オレフィン系熱可塑性エラストマーの機械的物性、成形性が低下する傾向となるので好ましくはない。
【0023】
次にグラフト共重合体のビニル系共重合体セグメントについて説明する。ビニル系共重合体セグメントに形成される主原料としてのビニル系単量体としては、アクリル系ゴムとの相溶性が良好なものが好ましい。
具体的には、例えばスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルスチレン等のビニル芳香族;α−メチルスチレン、α−エチルスチレン等のα−置換スチレン;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート等のアクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;アクリロニトリルもしくはメタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有単量体であり、これらの単独、または2種以上が用いられる。
これらの中で特に好ましいのは、スチレン、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、アクリロニトリル、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートである。
【0024】
また、必要に応じて、二官能性アクリレート類、二官能性メタクリレート類、三官能性アクリレート類、三官能性メタクリレート類、ジビニルベンゼンなども30重量%以下、好ましくは20重量%以下の割合でビニル系共重合体中に前記ビニル系単量体などと一緒に共重合しても良い。前述の二官能性アクリレート類などの割合が30重量%を超えると相溶性や機械的強度が低下し、硬度が上昇するため好ましくない。
【0025】
さらに、ビニル系共重合体中に前記ビニル系単量体などと一緒に、架橋性官能基を有する単量体を共重合しても良い。具体的には活性塩素含有単量体、エポキシ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、不飽和基含有単量体等である。
【0026】
具体例として、活性塩素含有単量体としては、例えば2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロルアセテート、アリルクロルプロピオネート、アリルクロルアセテート等が挙げられる。好ましくは、2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルクロルアセテートである。
【0027】
エポキシ基含有単量体としては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸グリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシブテン、3,4−エポキシ−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチルペンテン、p−グリシジルスチレン等が挙げられる。好ましくは、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルである。
【0028】
カルボキシル基含有単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、桂皮酸が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。
【0029】
不飽和基含有単量体としては、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、アリルメタクリレートである。
【0030】
これらの架橋性官能基を有する単量体の使用量は、ビニル系共重合体中に20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。この架橋性官能基を有する単量体の使用量の割合が20重量%を超えると成形加工性と機械的物性が低下する傾向となるため好ましくない。なお、これらの架橋性官能基を有する単量体は架橋剤の種類により適宜選択して使用される。
【0031】
本発明におけるビニル系共重合体セグメントとなるビニル系共重合体の数平均重合度は通常5〜10,000、好ましくは10〜5,000、より好ましくは100〜2,000である。数平均重合度が5未満であると、本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーの成形性を向上させることは可能であるが、アクリル系ゴムとの相溶性が低下し外観が悪化する傾向にある。また、数平均重合度が10,000を超えると、溶融粘度が高く、成形性が低下したり、表面光沢が低下する傾向にある。
【0032】
本発明に用いるグラフト共重合体中に含まれる耐油性エチレン−プロピレン共重合体セグメントの割合は通常5〜95重量%、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%である。したがって、ビニル系共重合体セグメントの割合は通常95〜5重量%、好ましくは80〜10重量%、より好ましくは70〜20重量%である。
耐油性エチレン−プロピレン共重合体の割合が5重量%未満であると、成形性改良効果が不十分となり、また、耐油性エチレン−プロピレン共重合体の割合が95重量%を超えると、成形性改良効果は得られるが、アクリル系ゴムとの相溶性が悪化し、機械的物性が低下する傾向にある。
【0033】
次にグラフト化前駆体について説明する。本発明で使用するグラフト化前駆体は、上記耐油性エチレン−プロピレン共重合体粒子中にビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との共重合体(以下、過酸化結合を有するビニル系共重合体と略記する。)が分散された構造体である。
【0034】
本発明で使用するラジカル重合性有機過酸化物とは、エチレン性不飽和基と過酸化結合基を有する単量体である。好ましくは下記一般式(1)または(2)で示されるものである。
【0035】
【化5】
【0036】
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基、R3およびR4はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R5は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。mは1または2である。)
【0037】
【化6】
【0038】
(式中、R6は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R7は水素原子またはメチル基、R8およびR9はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R10は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。nは0、1または2である。)
【0039】
式(1)で表されるラジカル重合性有機過酸化物としては、例えばtert−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、tert−アミルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、クミルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、tert−アミルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、クミルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、tert−アミルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、クミルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、tert−アミルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、クミルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、tert−アミルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、クミルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート、tert−アミルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート、クミルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。
【0040】
さらに、式(2)で表されるラジカル重合性有機過酸化物としては、例えばtert−ブチルペルオキシアリルカーボネート、tert−アミルペルオキシアリルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシアリルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシアリルカーボネート、p−メンタンペルオキシアリルカーボネート、クミルペルオキシアリルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタリルカーボネート、tert−アミルペルオキシメタリルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシメタリルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメタリルカーボネート、p−メンタンペルオキシメタリルカーボネート、クミルペルオキシメタリルカーボネート、tert−ブチルペルオキシアリロキシエチルカーボネート、tert−アミルペルオキシアリロキシエチルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシアリロキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタリロキシエチルカーボネート、tert−アミルペルキシメタリロキシエチルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシメタリロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシアリロキシイソプロピルカーボネート、tert−アミルペルオキシアリロキシイソプロピルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシアリロキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタリロキシイソプロピルカーボネート、tert−アミルペルオキシメタリロキシイソプロピルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシメタリロキシイソプロピルカーボネート等を挙げることができる。
中でも好ましくは、tert−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシアリルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタリルカーボネートである。
【0041】
本発明におけるビニル系共重合体セグメントに形成される過酸化結合を有するビニル系共重合体の数平均重合度は通常5〜10,000、好ましくは10〜5,000、より好ましくは100〜2,000である。
数平均重合度が5未満であると、本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーの成形加工性を向上させることは可能であるが、アクリル系ゴムとの相溶性が低下し、外観が悪化する傾向にある。また、数平均重合度が10,000を超えると、溶融粘度が高く、成形加工性が低下したり、表面光沢が低下する傾向にある。
【0042】
本発明のグラフト化前駆体中に含まれる耐油性エチレン−プロピレン共重合体の割合は通常5〜95重量%、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%からなるものである。したがって、ビニル系共重合体の割合は通常95〜5重量%、好ましくは80〜10重量%、より好ましくは70〜20重量%である。
耐油性エチレン−プロピレン共重合体の割合が5重量%未満であると、成形性改良効果が不十分となり、また、耐油性エチレン−プロピレン共重合体の割合が95重量%を超えると、成形性改良効果は得られるが、アクリル系ゴムとの相溶性が悪化し、機械的物性が低下する傾向にある。
【0043】
本発明のグラフト化前駆体およびグラフト共重合体の製造方法を具体的に詳述する。
グラフト化前駆体は、耐油性エチレン−プロピレン共重合体粒子中に、ビニル系単量体、ラジカル重合性有機化酸化物およびラジカル重合開始剤を含浸させた後、ビニル系単量体とラジカル重合性有機化酸化物とを共重合させて得られる。ここで、好ましい粒子の粒径は10mm以下、より好ましくは5mm以下である。
【0044】
耐油性エチレン−プロピレン共重合体100重量部を水に懸濁させる。そこへ少なくとも1種のビニル系単量体5〜1,900重量部に、式(1)または(2)で表されるラジカル重合性有機過酸化物の1種または2種以上の混合物を該ビニル系単量体100重量部に対して0.1〜10重量部と、10時間の半減期を得るための分解温度が40〜90℃であるラジカル重合開始剤をビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との合計100重量部に対して0.01〜5重量部とを溶解せしめた溶液を加える。
次にラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない条件で加熱し、ビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤を耐油性エチレン−プロピレン共重合体に含浸せしめた後、この水性懸濁液の温度を上昇させることにより、ビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物とを耐油性エチレン−プロピレン共重合体粒子中で共重合させて、グラフト化前駆体を得ることができる。
本発明に用いるグラフト化前駆体は、その中にブレンドされているビニル系重合体が、活性酸素として0.003〜0.73重量%を含有していることが好ましい。活性酸素量が0.003重量%未満であるとグラフト化前駆体のグラフト化能が極度に低下し、好ましくない。また、0.73重量%を超えた場合、グラフト化の際ゲルの生成が多くなるため好ましくない。
なお、この場合の活性酸素量は、本発明のグラフト化前駆体から溶剤抽出によりビニル系共重合体を抽出し、このビニル系共重合体の活性酸素量をヨードメトリー法により求めることによって算出することができる。
本発明に用いるグラフト共重合体は、グラフト化前駆体を溶融混練することにより得ることができる。溶融混練中の加熱により、ビニル系共重合体中の過酸化結合が開裂し、生成したラジカルが耐油性エチレン−プロピレン共重合体に対して水素引き抜き反応を行い、それに引き続くグラフト化反応によりグラフト共重合体が製造される。
溶融混練する際の混練機としては、具体的には、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロール等が使用される。そして混練温度としては通常100〜300℃、好ましくは120〜280℃の範囲で行われる。上記温度が100℃未満の場合、溶融が不完全であったり、また溶融粘度が高いため、混合が不充分となって、成形物に相分離や層状剥離が現れるため好ましくない。また300℃を超えると、混合される樹脂の分解もしくはゲル化が起こり易くなるため好ましくない。
【0045】
本発明で使用するアクリル系ゴムとは、メトキシエチルアクリレート10〜90重量%とアクリル酸アルキルエステル5〜85重量%とアクリロニトリル5〜15重量%とを含みこれらを主成分とする単量体混合物を共重合することにより形成されるゴムである。
前記アクリル酸アルキルエステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上が適宜使用される。これらの中で特に好ましいのは、エチルアクリレート、ブチルアクリレートである。
【0046】
また、アクリル系ゴムの耐油性、成形加工性、ゴム弾性等の物性を向上する目的で、単量体混合物にスチレン、ジビニルベンゼン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、炭素数1〜12のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、二官能性アクリレート類、二官能性メタクリレート類、三官能性アクリレート類、三官能性メタクリレート類、エチレン、プロピレンまたはイソブテン等のα−オレフィン類、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類などを混合し共重合しても良い。これらの含有量としては40重量%以下が好ましく、更に30重量%以下が好ましい。含有量が40重量%を超えるとアクリル系ゴムの耐油性、機械的強度、成形性等の物性のバランスを損なう傾向にある。
【0047】
ここで、ビニル系共重合体と同様に、架橋反応のための官能基を含有する単量体を共重合しても良い。そのような単量体として具体的には、活性塩素含有単量体、エポキシ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、不飽和基含有単量体が使用される。
これらの中で特に、アリルメタクリレートを共重合することが好ましい。アリルメタクリレートの含有量としては10重量%以下が好ましく、さらに5重量%以下が好ましい。この含有量が10重量%を超えると成形加工性が著しく低下するため好ましくない。
【0048】
本発明のアクリル系ゴムの製造方法を具体的に詳述する。
メトキシエチルアクリレート、アクリル酸アルキルエステルとアクリロニトリルを主成分とするモノマー成分を、界面活性剤、水、重合開始剤を含む水中に滴下して、乳化共重合させる。この際、モノマー成分の一部をあらかじめ添加する手順であっても良い。乳化重合終了後、塩析を行い、アクリル系ゴムを得る。
上記乳化重合時の重合温度は、通常40〜100℃、好ましくは60〜90℃であり、重合時間は通常2〜12時間、好ましくは4〜10時間である。
前記界面活性剤は特に限定されるものでなく、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、反応性乳化剤等の全ての界面活性剤が使用できる。
【0049】
アニオン性界面活性剤としては、例えばナトリウムドデシルサルフェートもしくはカリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート;アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート;ナトリウムドデシルポリグリコールエ−テルサルフェート、ナトリウムスルホリシノエート、スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩もしくはスルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレートもしくはトリエタノールアミンオレエートもしくはトリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネートもしくはアルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属塩サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等が挙げられる。
【0050】
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;またはエチレンオキサイドと脂肪酸アミンもしくはアミドもしくは酸との縮合生成物等が挙げられる。
【0051】
カチオン性界面活性剤としては、例えばオクタデシルアミン酢酸塩、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、またはジオレイルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0052】
両性界面活性剤としては、例えばジメチルラウリルベタイン、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、アミドベタイン型、またはイミダゾリン型等が挙げられる。
【0053】
高分子界面活性剤としては、例えばポリビニルアルコ−ル、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の水溶性高分子が挙げられる。
【0054】
反応性乳化剤としては、例えば花王(株)社製のラムテル(商品名、S−180、S−180A)、第一工業製薬(株)社製のアクアロン(商品名、RNシリ−ズ、HSシリ−ズ)やニューフロンティア(商品名、A−229E、N−177E)、日本乳化剤(株)社製のAntox(商品名、MS−60、MS−2N、RA−1120、RA−2614、RMA−564、RMA−568、RMA−1114)、旭電化工業(株)社製のアデカリアソープ(商品名、NE−10、NE−20、NE−40)、または新中村化学工業(株)社製のNKエステル(商品名、M−20G、M−40G、M−90G、M−230G)などが挙げられる。
【0055】
好ましくは、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられる。
前記のアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、反応性乳化剤等の界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、その使用量は、全モノマ−総量100重量部に対して、0.1〜25重量部、好ましくは0.5〜20重量部である。0.1重量部未満では乳化が不安定となって凝集物を生じてしまい、25重量部を超えると乳化液の粘度が上昇しすぎる傾向にある。
【0056】
前記重合開始剤は、特に限定されるものでなく、例えばナトリウムパーサルフェート、カリウムパーサルフェート、アンモニウムパーサルフェート、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2−アゾビス{2−[N−(4−クロロフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(N−フェニルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス{2−[N−(4−ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(N−ベンジルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(N−アリルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス{2−[N−(2−ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアジピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジヒドレート、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック アシッド)、2,2−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられる。
【0057】
良好な重合安定性を得るために、好ましくは、例えばナトリウムパーサルフェート、カリウムパーサルフェート、アンモニウムパーサルフェート、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカ−ボネ−ト、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2−アゾビス[2−(N−フェニルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス{2−[N−(4−ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(N−ベンジルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス{2−[N−(2−ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアジピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられる。
【0058】
これらの重合開始剤の使用量は、全モノマーの総量100重量部に対して、通常0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。0.05重量部未満では、重合開始能が低下してしまい、10重量部を超えると重合安定性が低下してしまう傾向にある。
【0059】
前記塩析に用いる塩析剤種は、特に限定されるものでなく、例えば塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム等の多価金属塩、ジメチルアミン酢酸塩、エチルアミン酢酸塩、シクロヘキシルアミン酢酸塩等の有機酸アミン塩類等が挙げられる。
【0060】
本発明において、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの混合比(グラフト共重合体/アクリル系ゴム)、またはグラフト化前駆体とアクリル系ゴムとの混合比(グラフト化前駆体/アクリル系ゴム)は、重量基準で好ましくは95/5〜5/95、さらに好ましくは90/10〜10/90、特に好ましくは85/15〜15/85である。アクリル系ゴムが95重量%を超えると成形加工性が低下したり、得られる成形品の機械的強度が低下し、また5重量%未満では成形品の圧縮永久歪みが悪く、硬度も高くなる傾向にある。
【0061】
次に本発明の架橋剤は、グラフト共重合体およびアクリル系ゴムに含有される架橋性官能基、またはグラフト化前駆体およびアクリル系ゴムに含有される架橋性官能基と反応しうるものであり、導入されている官能基によって使い分けられる。
【0062】
従って、架橋部位が活性塩素、エポキシ基、カルボキシル基、不飽和基である場合の架橋剤の具体例としては、これらの官能基と反応しうる官能基、例えば硫黄、含硫黄有機化合物、アミノ基含有化合物、酸無水物基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、樹脂架橋剤、有機過酸化物等が挙げられる。これらの架橋剤には公知の架橋促進剤を併用することが好ましい。
【0063】
含硫黄有機化合物としては、例えばテトラメチルチウラムジサルファイド、テトラエチルチウラムジサルファイド、テトラブチルチウラムジサルファイド、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド等のチウラム類、sec−ジエチルジチオカーバメート、tert−ジエチルジチオカーバメート、sec−ジメチルジチオカーバメート等のジチオ酸塩類、モルホリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が挙げられる。
【0064】
アミノ基を含有する化合物としては、例えばトリメチルヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン等の脂肪族ジアミン類、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、アミノエチルエタノールアミン等の脂肪族ポリアミン類、フェニレンジアミン、4,4’−メチレンジアニリン、トルエンジアミン、ジアミノジトリルスルホン等の芳香族アミン類等が挙げられる。
【0065】
酸無水物基またはカルボキシル基含有化合物としては、例えば無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、シアヌル酸等が挙げられる。
【0066】
イソシアネート含有化合物としては、例えばトルエンジイソシアネート、イソシアナート基を末端基とするプレポリマーのイソシアナート類等が挙げられる。
【0067】
エポキシ基含有化合物としては、例えばビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン等のジグリシジルエーテルのようなエポキシド類が挙げられる。
【0068】
樹脂架橋剤としては、例えばアルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物およびトリアジン−ホルムアルデヒド縮合物、ヘキサメトキシメチル−メラミン樹脂等が挙げられる。
【0069】
有機過酸化物としては、例えばケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類が挙げられる。これらの中で、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類が好ましい。
【0070】
架橋部位が非共役ジエン等の不飽和基である場合や官能基を含まない場合、有機過酸化物による架橋が有効である。架橋反応に用いる有機過酸化物としては、特に制限を受けず公知の有機過酸化物の全てが使用可能である。例えばジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、tert−ブチルパーオキシクメン等が挙げられる。
これらの中で好ましくはジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3である。
【0071】
本発明の架橋剤の添加量は、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部、またはグラフト化前駆体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部である。この添加量は、架橋点の濃度および架橋剤の種類によって適宜変更される。0.01重量部未満では、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーの圧縮永久歪みが悪くなり、また10重量部を超えると機械的強度、成形加工性が低下する傾向にある。
【0072】
次に本発明において使用される共架橋剤は、ポリマーラジカルとすみやかに反応し架橋効率を高めるために使用され、例えばp−ベンゾキノンジオキシム、p,p−ジベンゾイルキノンジオキシム、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルフォスフェート、マレイミド、フェニ−ルマレイミドN,N’・m−フェニレンビスマレイミド、無水マレイン酸、イタコン酸、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、1,2−ポリブタジエン等が挙げられる。
この中で好ましいのはp−ベンゾキノンジオキシム、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルフォスフェート、ジビニルベンゼンである。
さらに好ましいのはp−ベンゾキノンジオキシム、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルフォスフェート、ジビニルベンゼンである。
【0073】
これら共架橋剤の添加量は、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部、またはグラフト化前駆体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜8重量部である。0.01重量部未満では、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーの機械的強度または耐油性が悪くなり、また10重量部を超えると成形加工性が著しく低下する傾向にある。
【0074】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマー中には非極性α−オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体またはオレフィン共重合体(以下、オレフィン系(共)重合体と略す。)をさらに添加して溶融混練しても良い。オレフィン系(共)重合体の具体例としては、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超超低密度ポリエチレン、低分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン(共)重合体等を挙げることができ、特にポリプロピレン、エチレン−プロピレン(共)重合体が耐油性、機械的物性の点で好ましい。
前記追加するオレフィン系(共)重合体の添加量としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー中、好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。90重量%を超えると、成形体の圧縮永久歪みが低下するため好ましくない。また、前記オレフィン系(共)重合体は2種以上を混合して使用することもできる。
【0075】
オレフィン系熱可塑性エラストマー中には、添加剤として可塑剤、伸展剤、充填材、難燃剤、老化防止剤を適宜、添加することができる。これらの添加剤により、オレフィン系熱可塑性エラストマーの性能を目的に応じて向上させることができる。さらに、着色剤、スコーチ防止剤、滑剤、カップリング剤、発泡剤等の添加剤を必要に応じて使用することができる。
【0076】
本発明において使用される可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート等のフタル酸エステル類;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル類;ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート等のアジピン酸エステル類、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート等のアゼライン酸エステル類、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル類、スルホンアミド等が挙げられる。
【0077】
伸展剤としては、例えば鉱物油(パラフィン系、ナフテン系、芳香族系)等が挙げられる。
【0078】
充填剤としては、例えばカーボンブラック、ホワイトカーボン、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、タルク等に代表される充填材、難燃剤としては水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等に代表される無機難燃剤、ハロゲン系、リン系等に代表される有機難燃剤が挙げられる。
【0079】
老化防止剤としては、フェノール系老化防止剤を必須とする1種以上の老化防止剤である。フェノール系老化防止剤のみを使用しても良いが、他の老化防止剤を併用してもかまわない。フェノ−ル系と併用可能な老化防止剤としてはリン系、硫黄系、アミン系等を挙げることができる。
【0080】
フェノール系老化防止剤としては、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、3−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノ−ル系老化防止剤;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−〔β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等のビスフェノール系老化防止剤;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ビス〔3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、D−α−トコフェノール等の高分子型フェノール系老化防止剤等を挙げることができる。
【0081】
また、リン系老化防止剤としては、例えばトリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、オクタデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等を挙げることができる。
【0082】
また、硫黄系老化防止剤としては、例えばジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2−メルカプトベンズイミダゾール等を挙げることができる。
【0083】
さらにアミン系老化防止剤としては、アルキル置換ジフェニルアミン等を挙げることができる。
これらの老化防止剤は、少なくとも1種類のフェノール系老化防止剤が含まれていれば、複数併用することができる。
スコーチ防止剤としては、スルホンアミド誘導体、ジフェニルウレア、N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド等が挙げられる。
【0084】
これらの添加剤は、本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、好ましくは200重量部以下、さらに好ましくは150重量部以下添加することができる。配合量が200重量部を超えると成形品の機械的物性が低下するので好ましくない。
【0085】
また充填剤の表面は、ステアリン酸、オレイン酸、パルチミン酸またはそれらの金属塩、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはそれらの変性物、有機シラン、有機ボラン、有機チタネート等を使用して表面処理を施すことが好ましい。
【0086】
さらに本発明の効果を損わない範囲において、他の熱可塑性樹脂を添加しても差し支えない。
他の熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセアール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアリレート系樹脂等のエンジニアリングプラスチックス;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂等のスチレン系樹脂;アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等の汎用プラスチックス;スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ブタジエンゴム、ブタジエン−スチレンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン系ゴム、ウレタンゴム、ケイ素ゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等の合成ゴム;天然ゴムなどを挙げることができる。
【0087】
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーを溶融、混合する方法としては、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロール等の通常用いられる混練機により行うことができる。
混練温度としては通常100〜300℃、好ましくは120〜280℃の範囲で行われる。上記温度が100℃未満の場合、溶融が不完全であったり、また溶融粘度が高いため、混合が不充分となって、成形物に相分離や層状剥離が現れるため好ましくない。また300℃を超えると、混合される樹脂の分解もしくはゲル化が起こり易くなるため好ましくない。
【0088】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、射出成形、押出成形、真空成形、ブロー成形の何れの成形方法でも成形することができ、所定形状の成形体が得られる。中でも射出成形は流動性、成形品外観の観点から、押出成形は成形シートの成形性、シート外観の観点から、また真空成形は深絞り成形性の観点からより好ましい。このようにして得られた成形体は使用後に回収して再度成形用の原料とすることができ、リサイクル性に優れている。
【0089】
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーを使用して得られるシール類としての形状、厚さ、寸法等は、使用目的に応じて適宜に選定される。例えば形状については、H型、Y型、U型、O型等のシール材に通常採用されるもののほか、シート、テープ、ブロック、ディスク、線、円柱、角柱、中空体、異形等の種々の形状を適宜選択することができる。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーを使用したシール類は、例えば自動車・車両部品、電気・電子機械部品、装置・器具部品、工業部品、建築部品等の幅広い分野において、クランクシャフトシール、ピストンシール、ロッドシール、ダストシール、ベアリングシール、バルブシール、摺動シール、部品接合部シール、配管パッキング、容器用内蓋、容器口金用パッキング、容器用栓、Oリング、Xリング、Uパッキン、Vパッキン、オイルパンガスケット、シリンダーガスケット等として使用することができる。
【0090】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
参考例1(アクリル系ゴム(A)の製造)
攪拌機、温度計、冷却器、滴下装置、窒素ガス導入管のついたフラスコにイオン交換水2300g、ナトリウムドデシルサルフェート20gを仕込んだ後、窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に70℃まで昇温した。その後、重合開始剤としてカリウムパーサルフェート5gを添加した。
そこへ、70℃の温度条件を維持しながら、単量体混合物(メトキシエチルアクリレート320g、エチルアクリレート1200g、アクリロニトリル80g、アリルメタクリレート8g)1608gを3時間かけて滴下した後、さらに3時間重合を行うことにより乳化液を得た。この状態での動的光散乱(DLS)による平均粒径は90nmであった。
次にこの乳化液を同重量の1%塩化カルシウム水溶液に、1時間かけて滴下することにより塩析を行った。そして水洗後、70℃で乾燥してアクリル系ゴム(A)を得た。各成分の使用量を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
参考例2(アクリル系ゴム(B)の製造)
参考例1において使用した単量体混合物(メトキシエチルアクリレート320g、エチルアクリレート1200g、アクリロニトリル80g、アリルメタクリレート8g)1608gを、単量体混合物(メトキシエチルアクリレート320g、ブチルアクリレート1200g、アクリロニトリル80g、アリルメタクリレート12g)1612gに変更した以外は、参考例1に準じてアクリル系ゴム(B)を得た。各成分の使用量を表1に示す。
【0094】
参考例3(アクリル系ゴム(C)の製造)
参考例1において使用した単量体混合物(メトキシエチルアクリレート320g、エチルアクリレート1200g、アクリロニトリル80g、アリルメタクリレート8g)1608gを、単量体混合物(メトキシエチルアクリレート480g、エチルアクリレート480g、ブチルアクリレート480g、アクリロニトリル160g、アリルメタクリレ−ト8g)1608gに変更した以外は、参考例1に準じてアクリル系ゴム(C)を得た。各成分の使用量を表1に示す。
【0095】
参考例4(アクリル系ゴム(D)の製造)
参考例1において使用した単量体混合物(メトキシエチルアクリレート320g、エチルアクリレート1200g、アクリロニトリル80g、アリルメタクリレート8g)1608gを、単量体混合物(エチルアクリレート1520g、アクリロニトリル80g)1600gに変更した以外は、参考例1に準じてアクリル系ゴム(D)を得た。各成分の使用量を表1に示す。
【0096】
参考例5(グラフト化前駆体(a)の製造)
容積5リットルのステンレス製オートクレーブに、純水2000gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルアルコール2.5gを溶解させた。この中にポリプロピレンA(ブロック共重合体、粒径3mm、エチレン含有量5.9重量%)700gを入れ、攪拌・分散した。そこへベンゾイルペルオキシド(日本油脂(株)製ラジカル重合開始剤、商品名:ナイパーB)1.2g、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート(ラジカル重合性有機過酸化物)6g、ビニル系単量体混合物(スチレン100g、ブチルアクリレート100gおよびヒドロキシプロピルメタクリレート100g)300gからなる混合単量体を前記オートクレーブ中に投入・撹拌した。
次いでオートクレーブを60〜65℃に昇温し、2時間攪はんすることによりラジカル重合開始剤、ラジカル重合性有機過酸化物およびビニル系単量体をポリプロピレン中に含浸させた。
次いで、温度を80〜85℃に上げ、その温度で6時間維持して重合を完結させた後、水洗および乾燥してグラフト化前駆体(a)を得た。このグラフト化前駆体(a)中のビニル系共重合体をトルエンで抽出し、GPCにより数平均重合度を測定したところ、850であった。
このグラフト化前駆体(a)を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEOL JSM T300)により観察したところ、粒子径0.3〜0.5μmの真球状樹脂が均一に分散した多層構造体であった。各成分の使用量を表2に示す。。
【0097】
【表2】
【0098】
参考例6(グラフト化前駆体(b)の製造)
参考例5において使用したビニル系単量体混合物(スチレン100g、ブチルアクリレート100gおよびヒドロキシプロピルメタクリレート100g)300gを、ビニル系単量体混合物(スチレン100g、ヒドロキシプロピルメタクリレート100gおよびメトキシエチルアクリレート100g)300gに変更し、ベンゾイルペルオキシドの添加量を1.2gから2.4gに変更したこと以外は、参考例5に準じてグラフト化前駆体(b)を得た。このときグラフト化前駆体(b)中のビニル系共重合体の数平均重合度は600であった。またこのグラフト化前駆体(b)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜0.5μmであった。
【0099】
参考例7(グラフト化前駆体(c)の製造)
参考例5において使用したポリプロピレンA(ブロック共重合体、粒径3mm、エチレン含有量5.9重量%)700gをポリプロピレンB(ブロック共重合体、粒径3mm、エチレン含有量8重量%)700gに変更し、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネートの添加量を6gから10gに変更した以外は、参考例5に準じてグラフト化前駆体(c)を得た。このときグラフト化前駆体(c)中のビニル系共重合体の数平均重合度は900であった。またこのグラフト化前駆体(c)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜0.5μmであった。
【0100】
参考例8(グラフト化前駆体(d)の製造)
参考例5において使用したビニル系単量体混合物(スチレン100g、ブチルアクリレート100gおよびヒドロキシプロピルメタクリレート100g)300gを、ビニル系単量体混合物(スチレン100g、ブチルアクリレート100g、ヒドロキシプロピルメタクリレート100gおよびアリルメタクリレート3g(架橋性官能基を有する単量体))303gに変更し、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネートの添加量を6gから2gに変更した以外は、参考例5に準じてグラフト化前駆体(d)を得た。このときグラフト化前駆体(d)中のビニル共重合体の数平均重合度は900であった。またこのグラフト化前駆体(d)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜0.5μmであった。
【0101】
参考例9(グラフト化前駆体(e)の製造)
参考例5において使用したポリプロピレンA(ブロック共重合体、粒径3mm、エチレン含有量5.9重量%)700gをポリプロピレンC(ランダム共重合体、粒径3mm、エチレン含有量4重量%)700gに変更した以外は、参考例5に準じてグラフト化前駆体(e)を得た。このときグラフト化前駆体(e)中のビニル系共重合体の数平均重合度は890であった。またこのグラフト化前駆体(e)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜0.5μmであった。
【0102】
参考例10(グラフト化前駆体(f)の製造)
参考例5において使用したポリプロピレンA(ブロック共重合体、粒径3mm、エチレン含有量5.9重量%)をポリプロピレンD(ブロック共重合体、粒径3mm、エチレン含有量10重量%)に変更した以外は、参考例5に準じてグラフト化前駆体(f)を得た。このときグラフト化前駆体(f)中のビニル系共重合体の数平均重合度は880であった。またこのグラフト化前駆体(f)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜0.5μmであった。
【0103】
実施例1
参考例5で得たグラフト化前駆体(a)600gと、参考例1で得たアクリル系ゴム(A)1800gを、190℃に予熱した加圧型ニーダー(モリヤマ(株)製、容量3リットル)を用いて10分間混練した後、架橋剤として2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサ25B、以下パーヘキサ25Bと略記)15gと、共架橋剤としてポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学(株)製、商品名:BPE−200、以下BPE−200と略記)30gと、フェノール系老化防止剤(商品名:イルガノックス1010、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製、以下イルガノックス1010と略記)20gを加え、更に5分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーをシリンダー温度180℃に設定された2軸1軸押出機に供給し、押出後造粒した。造粒した樹脂はプレス成形し(190℃、35MPa/cm2)、シートから打ち抜きにより試験片(3号ダンベル)を作成し、以下の試験法により物性を観察した。その結果を表3に示す。
【0104】
なお試験方法は以下の方法により行なった。
(1)硬度試験
JIS K−6253に準じ、タイプAデュロメータ試験機で硬度(ShA)
を測定した。
(2)引張試験
JIS K−6251に準じ、3号ダンベル試験片によって引張試験を行い、引張強度(MPa)および破断点伸び(%)を測定した。
(3)圧縮永久歪み試験
JIS K−6262に準じ、120℃で22時間後の圧縮永久歪み(%)を測定した。
(4)耐油性試験
試験片(3号ダンベル)を試験用油(IRM903oil)に120℃で72時間浸漬した後、浸漬後の重量および浸漬前の重量を測定して式(膨潤度=[(浸漬後の重量−浸漬前の重量)/浸漬前の重量]×100)により膨潤度(%)を測定した。
(5)耐熱性試験
試験片(3号ダンベル)を150℃のエアオーブン中に200時間放置した後、室温に冷却し破断点伸び(%)を測定した。
(6)外観試験
射出成形品の表面のフローマーク、肌荒れ、シルバーストリークおよびブルーミングなどを目視で判定し、次の3段階で評価した。
◎:優れた外観を有する
○:◎には劣るが成形品として問題なし
×:成形品として問題あり
(7)メルトフローレート試験
JIS K−7210に準じ、温度190℃、荷重10.0kgの条件でMFR(g/10min)を測定した。
【0105】
【表3】
【0106】
実施例2
参考例5で得たグラフト化前駆体(a)500gと、参考例3で得たアクリル系ゴム(C)1750gと、架橋剤(パーヘキサ25B)20gと、共架橋剤としてトリアリルホスフェート15gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを、180℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて15分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0107】
実施例3
参考例6で得たグラフト化前駆体(b)500gと、参考例2で得たアクリル系ゴム(B)1750gと、可塑剤としてジオクチルフタレート200gを、190℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて10分間混練した後、架橋剤としてα、α’−ビス(tert−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製、商品名:パーブチルP、以下パーブチルPと略記)7.5gと、共架橋剤としてポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート25gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを加え、更に5分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0108】
実施例4
参考例6で得たグラフト化前駆体(b)をラボプラストミル一軸押出機((株)東洋精機製作所製)で180℃にて押し出し、グラフト化反応させることによりグラフト共重合体(b)を得た。グラフト共重合体(b)500gと、参考例3で得たアクリル系ゴム(C)1750gと、架橋剤(パーブチルP)7.5gと、共架橋剤としてトリアリルホスフェート15gと、可塑剤としてジオクチルアジペート200gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを、190℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて15分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0109】
実施例5
参考例7で得たグラフト化前駆体(c)500gと、参考例2で得たアクリル系ゴム(B)1750gを、180℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて10分間混練した後、架橋剤(パーブチルP)7.5gと、共架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート20gと、ポリプロピレンE(ブロック共重合体、エチレン含有量10重量%)50gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを加え、更に5分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0110】
実施例6
参考例8で得たグラフト化前駆体(d)500gと、参考例1で得たアクリル系ゴム(A)1750gと、可塑剤としてジオクチルアジペート200gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを、200℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて10分間混練した後、架橋剤(パーヘキサ25B)20gと、共架橋剤としてポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート40gと、ポリプロピレンF(ホモポリプロピレン)250gを加え、更に5分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0111】
実施例7
参考例9で得たグラフト化前駆体(e)400gと、参考例3で得たアクリル系ゴム(C)1600gと、架橋剤(パーヘキサ25B)15gと、共架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート10gと、ポリプロピレンF200gを加え、180℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて15分間混練した。そして可塑剤としてジオクチルアジペート200gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを加え、更に4分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0112】
実施例8
参考例7で得たグラフト化前駆体(c)をラボプラストミル一軸押出機で180℃にて押し出し、グラフト化反応させることによりグラフト共重合体(c)を得た。グラフト共重合体(c)500gと、参考例1で得たアクリル系ゴム(A)1750gと、可塑剤としてジオクチルフタレート200gを、190℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて10分間混練した後、架橋剤(パーヘキサ25B)20gと、共架橋剤としてトリアリルホスフェート15gと、ポリプロピレンF250gを加え、更に5分間混練した。そして老化防止剤(イルガノックス1010)20gを加え、更に4分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0113】
実施例9
参考例5で得たグラフト化前駆体(a)500gと、参考例3で得たアクリル系ゴム(C)1750gを190℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて10分間混練した後、架橋剤(パーヘキサ25B)20gと、共架橋剤としてポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート40gと、ポリプロピレンE350gを加え、更に5分間混練した。そして可塑剤としてジオクチルフタレート250gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを加え、更に4分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0114】
実施例10
参考例5で得たグラフト化前駆体(a)500gと、参考例3で得たアクリル系ゴム(C)1750gと、架橋剤(パーヘキサ25B)20gと、共架橋剤としてポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート80gと、ポリプロピレンE350gを加え、180℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて15分間混練した。そして可塑剤としてジオクチルフタレート500gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを加え、更に4分間混練した。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0115】
比較例1
実施例1において、架橋剤と共架橋剤を使用しない以外は、すべて実施例1と同様の試験を行った。その結果を表4に示す。
【0116】
【表4】
【0117】
比較例2
実施例2で、共架橋剤を使用しない以外は、すべて実施例2と同様の試験を行った。その結果を表4に示す。
【0118】
比較例3
実施例1で、グラフト化前駆体(a)600gの代わりに、参考例10で得たグラフト化前駆体(f)600gを使用した以外は、すべて実施例1と同様の試験を行った。その結果を表4に示す。
【0119】
比較例4
実施例2で、アクリル系ゴム(C)1750gの代わりに、参考例4で得たアクリル系ゴム(D)1750gを使用した以外は、すべて実施例2と同様の試験を行った。その結果を表4に示す。
【0120】
比較例5
実施例1で、パーヘキサ25Bの添加量を15gから250gに、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート量の添加量を30gから300gに変更した以外は、すべて実施例1と同様の試験を行った。その結果を表4に示す。
【0121】
表3〜4から本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(実施例1〜10)は、機械的物性、圧縮永久歪み、成形性、耐熱性、外観において優れた性能を有し、耐油性エチレン−プロピレン共重合体を用いることにより耐油性が向上し、架橋剤や共架橋剤を添加することにより、機械的物性、圧縮永久歪み、耐油性が大幅に向上することが明らかとなった。
それに対して、エチレンの含有量が8重量%以上のエチレン−プロピレンブロック共重合体を用いると耐油性が低下し(比較例3)、メトキシエチルアクリレートの含有量が10重量%未満のアクリル系ゴムを用いたオレフィン系熱可塑性エラストマーは、圧縮永久歪み、耐油性が低下することが確認できた(比較例4)。
また架橋剤や共架橋剤を使用していないオレフィン系熱可塑性エラストマーにおいては、良好な機械的物性、圧縮永久歪み、耐油性が得られないが(比較例1、2)、所定量以上の架橋剤と共架橋剤を加えると、圧縮永久歪み、成形性、外観が大幅に低下することが確認できた(比較例5)。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、シール類として利用するのに必要な物性である機械的物性、圧縮永久歪み、耐油性及び耐熱性において優れた性能を有している。
【0122】
【発明の効果】
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、耐油性、耐熱性、圧縮永久歪み、成形加工性およびリサイクル性に優れており、該エラストマーを使用したシール類は自動車・車両部品、電気・電子機械部品、装置・器具部品、工業部品、建築部品等の広い分野で有効に使用することができる。
【発明に属する技術分野】
本発明は、耐油性、耐熱性、機械的強度、圧縮永久歪み、成形性およびリサイクル性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマーおよび該エラストマーからなる成形体、特にシール類に関するものであり、自動車・車両部品、電気・電子機械部品、装置・器具部品、工業部品、建築部品等の広い分野で有効に使用されうるものである。
【0002】
【従来技術】
アクリルゴムは耐油性、耐熱性、耐オゾン性等に優れていることから、自動車の潤滑油系のパッキン、ガスケット、シール等(以下、これらをまとめて「シール類」という)に使用されている。
アクリルゴムを用いたシール類は、アクリルゴムに充填剤、老化防止剤、加工助剤、加硫剤等の各種配合剤を混合したものを任意の型に入れて加硫し、その後さらに二次加硫を行うといった工程によって製造されている。
このように、アクリルゴムは成形品の製造工程において加硫という煩雑な工程があるうえ、製造工程で発生したスクラップ、製品を再加工することが困難であるといった問題があった。
【0003】
近年ではアクリルゴムに代わりうる素材として、オレフィン系熱可塑性エラストマーが優れた機械的物性、成形性およびリサイクル性を有していることから、自動車の内外装部品や電機分野で幅広く使用されるようになってきた。
例えば、ポリプロピレンとエチレン−プロピレン系ゴムからなるオレフィン系熱可塑性エラストマー(例えば、特許文献1参照。)や、ポリプロピレンとアクリロニトリル−ブタジエン系ゴムとからなるオレフィン系熱可塑性エラストマー(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
また、オレフィン系樹脂とアクリルゴムとからなるオレフィン系熱可塑性エラストマーは、本質的に非相溶であり、単純にブレンドしたのでは良好な材料は得られないため、両者の相溶性を高めるような相溶化剤を追加的に添加したものが開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたオレフィン系熱可塑性エラストマーは耐油性に著しく劣り、特許文献2に開示されたオレフィン系熱可塑性エラストマーは耐油性に優れるものの、耐熱性や耐オゾン性に劣るといった欠点を有しており、自動車のエンジンルーム内のごとき耐油性と耐熱性の両方が要求される分野で使用するにはその特性が十分でないという問題があった。
また、特許文献3に開示されたオレフィン系熱可塑性エラストマ−は相溶化のレベルがまだ不十分であるため、十分な圧縮永久歪みや機械的強度を得ることができなかった。
このように従来の技術では成形性やリサイクル性と耐油性、耐熱性、機械的強度、圧縮永久歪みなどの物性を両立させることは困難であった。
【0005】
【特許文献1】
特開昭48−26838号公報(第38〜60頁)
【特許文献2】
特開平4−48817号公報(第5〜12頁)
【特許文献3】
特開昭60−156738号公報(第38〜69頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような従来技術に存在する問題点に注目してなされたものである。その目的とするところは、耐油性、耐熱性、機械的強度、圧縮永久歪み、成形性およびリサイクル性に優れたオレフィン系熱可塑性エラストマーおよび該エラストマーからなる成形体、特にシール類を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、本発明の第1の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、耐油性エチレン−プロピレン共重合体セグメントとビニル系共重合体セグメントとからなり、かつ前記二つのセグメントのうち一方が他方に0.01〜1μmの微細な粒子として分散相を形成しているグラフト共重合体と、メトキシエチルアクリレ−ト10〜90重量%とアクリル酸アルキルエステル5〜85重量%とアクリロニトリル5〜15重量%とを含みこれらを主成分とする単量体混合物から形成されるアクリル系ゴムと、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の架橋剤と、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の共架橋剤を溶融混練して得られるものである。
【0008】
第2の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、耐油性エチレン−プロピレン共重合体粒子中にビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との共重合体が分散した構造体であるグラフト化前駆体と、メトキシエチルアクリレート10〜90重量%とアクリル酸アルキルエステル5〜85重量%とアクリロニトリル5〜15重量%とを含みこれらを主成分とする単量体混合物から形成されるアクリル系ゴムと、グラフト化前駆体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の架橋剤と、グラフト化前駆体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の共架橋剤を溶融混練して得られるものである。
【0009】
第3の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第2の発明において、前記グラフト化前駆体が、耐油性エチレン−プロピレン共重合体粒子中に、ビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤を含浸させた後、ビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物とを共重合させて得られることを特徴とするものである。
第4の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第2または第3の発明において、前記ラジカル重合性有機過酸化物が、下記式(1)または(2)で示される化合物であるものである。
【0010】
【化3】
【0011】
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基、R3およびR4はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R5は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。mは1または2である。)
【0012】
【化4】
【0013】
(式中、R6は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R7は水素原子またはメチル基、R8およびR9はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R10は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。nは0、1または2である。)
【0014】
第5の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第1〜4のいずれかの発明において、前記ビニル系共重合体セグメントまたはビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との共重合体が、架橋性官能基を有していることを特徴とするものである。
【0015】
第6の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第1〜5のいずれかの発明において、前記アクリル系ゴムが、アリルメタクリレートを含む単量体混合物から形成されていることを特徴としているものである。
【0016】
第7の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第1〜6のいずれかの発明において、さらに非極性α−オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体またはオレフィン系共重合体を含むものである。
【0017】
第8の発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、第1〜7のいずれかの発明において、さらに可塑剤、伸展剤、充填剤、難燃剤および老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の添加剤を含むものである。
【0018】
第9の発明は、第1〜8のいずれかの発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーを成形して得られる成形体である。
【0019】
第10の発明は、第1〜8のいずれかの発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーを成形して得られるシール類である。
【0020】
第11の発明は、第1〜8のいずれかの発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーを成形して得られる自動車用シール類である。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明に使用するグラフト共重合体は、耐油性エチレン−プロピレン共重合体セグメントとビニル系共重合体セグメントとからなり、前記二つのセグメントのうち一方が他方に0.01〜1μm、更に好ましくは0.1〜1μmの微細な粒子として分散相を形成している。分散樹脂の粒子径が0.01μm未満の場合あるいは1μmを超える場合、アクリル系ゴムにブレンドしたときの相溶性が不十分となり、外観の悪化あるいは機械的物性が低下するため好ましくない。
【0022】
まず、グラフト共重合体の耐油性エチレン−プロピレン共重合体セグメントについて説明する。
ここで、耐油性エチレン−プロピレン共重合体とは、エチレン−プロピレンランダム共重合体におけるエチレンの含有量が5重量%以下、またはエチレン−プロピレンブロック共重合体におけるエチレンの含有量が8重量%以下の共重合体であり、これらの単独または2種類以上を混合して用いられる。
エチレン−プロピレンランダム共重合体中においてエチレンの含有量が5重量%を超える場合や、エチレン−プロピレンブロック共重合体中においてエチレンの含有量が8重量%を超える場合には、オレフィン系熱可塑性エラストマーの耐油性が低下するので好ましくない。
耐油性エチレン−プロピレン共重合体の重量平均分子量は5,000〜3,000,000、好ましくは10,000〜2,000,000、更に好ましくは50,000〜1,000,000である。重量平均分子量が5,000未満であったり、3,000,000を超えると、オレフィン系熱可塑性エラストマーの機械的物性、成形性が低下する傾向となるので好ましくはない。
【0023】
次にグラフト共重合体のビニル系共重合体セグメントについて説明する。ビニル系共重合体セグメントに形成される主原料としてのビニル系単量体としては、アクリル系ゴムとの相溶性が良好なものが好ましい。
具体的には、例えばスチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、クロルスチレン等のビニル芳香族;α−メチルスチレン、α−エチルスチレン等のα−置換スチレン;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシプロピルアクリレート等のアクリル酸アルコキシアルキルエステル単量体;アクリロニトリルもしくはメタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有単量体であり、これらの単独、または2種以上が用いられる。
これらの中で特に好ましいのは、スチレン、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、アクリロニトリル、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートである。
【0024】
また、必要に応じて、二官能性アクリレート類、二官能性メタクリレート類、三官能性アクリレート類、三官能性メタクリレート類、ジビニルベンゼンなども30重量%以下、好ましくは20重量%以下の割合でビニル系共重合体中に前記ビニル系単量体などと一緒に共重合しても良い。前述の二官能性アクリレート類などの割合が30重量%を超えると相溶性や機械的強度が低下し、硬度が上昇するため好ましくない。
【0025】
さらに、ビニル系共重合体中に前記ビニル系単量体などと一緒に、架橋性官能基を有する単量体を共重合しても良い。具体的には活性塩素含有単量体、エポキシ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、不飽和基含有単量体等である。
【0026】
具体例として、活性塩素含有単量体としては、例えば2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロルアセテート、アリルクロルプロピオネート、アリルクロルアセテート等が挙げられる。好ましくは、2−クロロエチルビニルエーテル、ビニルクロルアセテートである。
【0027】
エポキシ基含有単量体としては、例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸グリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシブテン、3,4−エポキシ−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチルペンテン、p−グリシジルスチレン等が挙げられる。好ましくは、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルである。
【0028】
カルボキシル基含有単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、桂皮酸が挙げられる。好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。
【0029】
不飽和基含有単量体としては、例えばアリルアクリレート、アリルメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、アリルメタクリレートである。
【0030】
これらの架橋性官能基を有する単量体の使用量は、ビニル系共重合体中に20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。この架橋性官能基を有する単量体の使用量の割合が20重量%を超えると成形加工性と機械的物性が低下する傾向となるため好ましくない。なお、これらの架橋性官能基を有する単量体は架橋剤の種類により適宜選択して使用される。
【0031】
本発明におけるビニル系共重合体セグメントとなるビニル系共重合体の数平均重合度は通常5〜10,000、好ましくは10〜5,000、より好ましくは100〜2,000である。数平均重合度が5未満であると、本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーの成形性を向上させることは可能であるが、アクリル系ゴムとの相溶性が低下し外観が悪化する傾向にある。また、数平均重合度が10,000を超えると、溶融粘度が高く、成形性が低下したり、表面光沢が低下する傾向にある。
【0032】
本発明に用いるグラフト共重合体中に含まれる耐油性エチレン−プロピレン共重合体セグメントの割合は通常5〜95重量%、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%である。したがって、ビニル系共重合体セグメントの割合は通常95〜5重量%、好ましくは80〜10重量%、より好ましくは70〜20重量%である。
耐油性エチレン−プロピレン共重合体の割合が5重量%未満であると、成形性改良効果が不十分となり、また、耐油性エチレン−プロピレン共重合体の割合が95重量%を超えると、成形性改良効果は得られるが、アクリル系ゴムとの相溶性が悪化し、機械的物性が低下する傾向にある。
【0033】
次にグラフト化前駆体について説明する。本発明で使用するグラフト化前駆体は、上記耐油性エチレン−プロピレン共重合体粒子中にビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との共重合体(以下、過酸化結合を有するビニル系共重合体と略記する。)が分散された構造体である。
【0034】
本発明で使用するラジカル重合性有機過酸化物とは、エチレン性不飽和基と過酸化結合基を有する単量体である。好ましくは下記一般式(1)または(2)で示されるものである。
【0035】
【化5】
【0036】
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜2のアルキル基、R2は水素原子またはメチル基、R3およびR4はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R5は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。mは1または2である。)
【0037】
【化6】
【0038】
(式中、R6は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基、R7は水素原子またはメチル基、R8およびR9はそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基、R10は炭素数1〜12のアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。nは0、1または2である。)
【0039】
式(1)で表されるラジカル重合性有機過酸化物としては、例えばtert−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、tert−アミルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、クミルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、tert−アミルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、クミルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、tert−アミルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、クミルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシアクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、tert−アミルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、クミルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシメタクリロイロキシエトキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、tert−アミルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、クミルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシアクリロイロキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート、tert−アミルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート、クミルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート、p−イソプロピルクミルペルオキシメタクリロイロキシイソプロピルカーボネート等が挙げられる。
【0040】
さらに、式(2)で表されるラジカル重合性有機過酸化物としては、例えばtert−ブチルペルオキシアリルカーボネート、tert−アミルペルオキシアリルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシアリルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシアリルカーボネート、p−メンタンペルオキシアリルカーボネート、クミルペルオキシアリルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタリルカーボネート、tert−アミルペルオキシメタリルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシメタリルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシメタリルカーボネート、p−メンタンペルオキシメタリルカーボネート、クミルペルオキシメタリルカーボネート、tert−ブチルペルオキシアリロキシエチルカーボネート、tert−アミルペルオキシアリロキシエチルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシアリロキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタリロキシエチルカーボネート、tert−アミルペルキシメタリロキシエチルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシメタリロキシエチルカーボネート、t−ブチルペルオキシアリロキシイソプロピルカーボネート、tert−アミルペルオキシアリロキシイソプロピルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシアリロキシイソプロピルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタリロキシイソプロピルカーボネート、tert−アミルペルオキシメタリロキシイソプロピルカーボネート、tert−ヘキシルペルオキシメタリロキシイソプロピルカーボネート等を挙げることができる。
中でも好ましくは、tert−ブチルペルオキシアクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、tert−ブチルペルオキシアリルカーボネート、tert−ブチルペルオキシメタリルカーボネートである。
【0041】
本発明におけるビニル系共重合体セグメントに形成される過酸化結合を有するビニル系共重合体の数平均重合度は通常5〜10,000、好ましくは10〜5,000、より好ましくは100〜2,000である。
数平均重合度が5未満であると、本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーの成形加工性を向上させることは可能であるが、アクリル系ゴムとの相溶性が低下し、外観が悪化する傾向にある。また、数平均重合度が10,000を超えると、溶融粘度が高く、成形加工性が低下したり、表面光沢が低下する傾向にある。
【0042】
本発明のグラフト化前駆体中に含まれる耐油性エチレン−プロピレン共重合体の割合は通常5〜95重量%、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは30〜80重量%からなるものである。したがって、ビニル系共重合体の割合は通常95〜5重量%、好ましくは80〜10重量%、より好ましくは70〜20重量%である。
耐油性エチレン−プロピレン共重合体の割合が5重量%未満であると、成形性改良効果が不十分となり、また、耐油性エチレン−プロピレン共重合体の割合が95重量%を超えると、成形性改良効果は得られるが、アクリル系ゴムとの相溶性が悪化し、機械的物性が低下する傾向にある。
【0043】
本発明のグラフト化前駆体およびグラフト共重合体の製造方法を具体的に詳述する。
グラフト化前駆体は、耐油性エチレン−プロピレン共重合体粒子中に、ビニル系単量体、ラジカル重合性有機化酸化物およびラジカル重合開始剤を含浸させた後、ビニル系単量体とラジカル重合性有機化酸化物とを共重合させて得られる。ここで、好ましい粒子の粒径は10mm以下、より好ましくは5mm以下である。
【0044】
耐油性エチレン−プロピレン共重合体100重量部を水に懸濁させる。そこへ少なくとも1種のビニル系単量体5〜1,900重量部に、式(1)または(2)で表されるラジカル重合性有機過酸化物の1種または2種以上の混合物を該ビニル系単量体100重量部に対して0.1〜10重量部と、10時間の半減期を得るための分解温度が40〜90℃であるラジカル重合開始剤をビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との合計100重量部に対して0.01〜5重量部とを溶解せしめた溶液を加える。
次にラジカル重合開始剤の分解が実質的に起こらない条件で加熱し、ビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤を耐油性エチレン−プロピレン共重合体に含浸せしめた後、この水性懸濁液の温度を上昇させることにより、ビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物とを耐油性エチレン−プロピレン共重合体粒子中で共重合させて、グラフト化前駆体を得ることができる。
本発明に用いるグラフト化前駆体は、その中にブレンドされているビニル系重合体が、活性酸素として0.003〜0.73重量%を含有していることが好ましい。活性酸素量が0.003重量%未満であるとグラフト化前駆体のグラフト化能が極度に低下し、好ましくない。また、0.73重量%を超えた場合、グラフト化の際ゲルの生成が多くなるため好ましくない。
なお、この場合の活性酸素量は、本発明のグラフト化前駆体から溶剤抽出によりビニル系共重合体を抽出し、このビニル系共重合体の活性酸素量をヨードメトリー法により求めることによって算出することができる。
本発明に用いるグラフト共重合体は、グラフト化前駆体を溶融混練することにより得ることができる。溶融混練中の加熱により、ビニル系共重合体中の過酸化結合が開裂し、生成したラジカルが耐油性エチレン−プロピレン共重合体に対して水素引き抜き反応を行い、それに引き続くグラフト化反応によりグラフト共重合体が製造される。
溶融混練する際の混練機としては、具体的には、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロール等が使用される。そして混練温度としては通常100〜300℃、好ましくは120〜280℃の範囲で行われる。上記温度が100℃未満の場合、溶融が不完全であったり、また溶融粘度が高いため、混合が不充分となって、成形物に相分離や層状剥離が現れるため好ましくない。また300℃を超えると、混合される樹脂の分解もしくはゲル化が起こり易くなるため好ましくない。
【0045】
本発明で使用するアクリル系ゴムとは、メトキシエチルアクリレート10〜90重量%とアクリル酸アルキルエステル5〜85重量%とアクリロニトリル5〜15重量%とを含みこれらを主成分とする単量体混合物を共重合することにより形成されるゴムである。
前記アクリル酸アルキルエステルとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上が適宜使用される。これらの中で特に好ましいのは、エチルアクリレート、ブチルアクリレートである。
【0046】
また、アクリル系ゴムの耐油性、成形加工性、ゴム弾性等の物性を向上する目的で、単量体混合物にスチレン、ジビニルベンゼン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、炭素数1〜12のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステル、二官能性アクリレート類、二官能性メタクリレート類、三官能性アクリレート類、三官能性メタクリレート類、エチレン、プロピレンまたはイソブテン等のα−オレフィン類、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類などを混合し共重合しても良い。これらの含有量としては40重量%以下が好ましく、更に30重量%以下が好ましい。含有量が40重量%を超えるとアクリル系ゴムの耐油性、機械的強度、成形性等の物性のバランスを損なう傾向にある。
【0047】
ここで、ビニル系共重合体と同様に、架橋反応のための官能基を含有する単量体を共重合しても良い。そのような単量体として具体的には、活性塩素含有単量体、エポキシ基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、不飽和基含有単量体が使用される。
これらの中で特に、アリルメタクリレートを共重合することが好ましい。アリルメタクリレートの含有量としては10重量%以下が好ましく、さらに5重量%以下が好ましい。この含有量が10重量%を超えると成形加工性が著しく低下するため好ましくない。
【0048】
本発明のアクリル系ゴムの製造方法を具体的に詳述する。
メトキシエチルアクリレート、アクリル酸アルキルエステルとアクリロニトリルを主成分とするモノマー成分を、界面活性剤、水、重合開始剤を含む水中に滴下して、乳化共重合させる。この際、モノマー成分の一部をあらかじめ添加する手順であっても良い。乳化重合終了後、塩析を行い、アクリル系ゴムを得る。
上記乳化重合時の重合温度は、通常40〜100℃、好ましくは60〜90℃であり、重合時間は通常2〜12時間、好ましくは4〜10時間である。
前記界面活性剤は特に限定されるものでなく、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、反応性乳化剤等の全ての界面活性剤が使用できる。
【0049】
アニオン性界面活性剤としては、例えばナトリウムドデシルサルフェートもしくはカリウムドデシルサルフェート等のアルカリ金属アルキルサルフェート;アンモニウムドデシルサルフェート等のアンモニウムアルキルサルフェート;ナトリウムドデシルポリグリコールエ−テルサルフェート、ナトリウムスルホリシノエート、スルホン化パラフィンのアルカリ金属塩もしくはスルホン化パラフィンのアンモニウム塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムラウレートもしくはトリエタノールアミンオレエートもしくはトリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネートもしくはアルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属塩サルフェート等のアルキルアリールスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩;ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩等が挙げられる。
【0050】
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;またはエチレンオキサイドと脂肪酸アミンもしくはアミドもしくは酸との縮合生成物等が挙げられる。
【0051】
カチオン性界面活性剤としては、例えばオクタデシルアミン酢酸塩、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、またはジオレイルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0052】
両性界面活性剤としては、例えばジメチルラウリルベタイン、ラウリルジアミノエチルグリシンナトリウム、アミドベタイン型、またはイミダゾリン型等が挙げられる。
【0053】
高分子界面活性剤としては、例えばポリビニルアルコ−ル、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、ポリ(メタ)アクリル酸カリウム、ポリ(メタ)アクリル酸アンモニウム、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、ポリ(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等の水溶性高分子が挙げられる。
【0054】
反応性乳化剤としては、例えば花王(株)社製のラムテル(商品名、S−180、S−180A)、第一工業製薬(株)社製のアクアロン(商品名、RNシリ−ズ、HSシリ−ズ)やニューフロンティア(商品名、A−229E、N−177E)、日本乳化剤(株)社製のAntox(商品名、MS−60、MS−2N、RA−1120、RA−2614、RMA−564、RMA−568、RMA−1114)、旭電化工業(株)社製のアデカリアソープ(商品名、NE−10、NE−20、NE−40)、または新中村化学工業(株)社製のNKエステル(商品名、M−20G、M−40G、M−90G、M−230G)などが挙げられる。
【0055】
好ましくは、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤が挙げられる。
前記のアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、反応性乳化剤等の界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、その使用量は、全モノマ−総量100重量部に対して、0.1〜25重量部、好ましくは0.5〜20重量部である。0.1重量部未満では乳化が不安定となって凝集物を生じてしまい、25重量部を超えると乳化液の粘度が上昇しすぎる傾向にある。
【0056】
前記重合開始剤は、特に限定されるものでなく、例えばナトリウムパーサルフェート、カリウムパーサルフェート、アンモニウムパーサルフェート、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2−アゾビス{2−[N−(4−クロロフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(N−フェニルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス{2−[N−(4−ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(N−ベンジルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(N−アリルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス{2−[N−(2−ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアジピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジヒドレート、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック アシッド)、2,2−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられる。
【0057】
良好な重合安定性を得るために、好ましくは、例えばナトリウムパーサルフェート、カリウムパーサルフェート、アンモニウムパーサルフェート、アセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカ−ボネ−ト、tert−ブチルパーオキシマレイン酸、2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2−アゾビス[2−(N−フェニルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス{2−[N−(4−ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(N−ベンジルアミジノ)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス{2−[N−(2−ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアジピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられる。
【0058】
これらの重合開始剤の使用量は、全モノマーの総量100重量部に対して、通常0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。0.05重量部未満では、重合開始能が低下してしまい、10重量部を超えると重合安定性が低下してしまう傾向にある。
【0059】
前記塩析に用いる塩析剤種は、特に限定されるものでなく、例えば塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム等の多価金属塩、ジメチルアミン酢酸塩、エチルアミン酢酸塩、シクロヘキシルアミン酢酸塩等の有機酸アミン塩類等が挙げられる。
【0060】
本発明において、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの混合比(グラフト共重合体/アクリル系ゴム)、またはグラフト化前駆体とアクリル系ゴムとの混合比(グラフト化前駆体/アクリル系ゴム)は、重量基準で好ましくは95/5〜5/95、さらに好ましくは90/10〜10/90、特に好ましくは85/15〜15/85である。アクリル系ゴムが95重量%を超えると成形加工性が低下したり、得られる成形品の機械的強度が低下し、また5重量%未満では成形品の圧縮永久歪みが悪く、硬度も高くなる傾向にある。
【0061】
次に本発明の架橋剤は、グラフト共重合体およびアクリル系ゴムに含有される架橋性官能基、またはグラフト化前駆体およびアクリル系ゴムに含有される架橋性官能基と反応しうるものであり、導入されている官能基によって使い分けられる。
【0062】
従って、架橋部位が活性塩素、エポキシ基、カルボキシル基、不飽和基である場合の架橋剤の具体例としては、これらの官能基と反応しうる官能基、例えば硫黄、含硫黄有機化合物、アミノ基含有化合物、酸無水物基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、エポキシ基含有化合物、樹脂架橋剤、有機過酸化物等が挙げられる。これらの架橋剤には公知の架橋促進剤を併用することが好ましい。
【0063】
含硫黄有機化合物としては、例えばテトラメチルチウラムジサルファイド、テトラエチルチウラムジサルファイド、テトラブチルチウラムジサルファイド、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド等のチウラム類、sec−ジエチルジチオカーバメート、tert−ジエチルジチオカーバメート、sec−ジメチルジチオカーバメート等のジチオ酸塩類、モルホリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等が挙げられる。
【0064】
アミノ基を含有する化合物としては、例えばトリメチルヘキサメチレンジアミン、エチレンジアミン、1,4−ジアミノブタン等の脂肪族ジアミン類、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミン、アミノエチルエタノールアミン等の脂肪族ポリアミン類、フェニレンジアミン、4,4’−メチレンジアニリン、トルエンジアミン、ジアミノジトリルスルホン等の芳香族アミン類等が挙げられる。
【0065】
酸無水物基またはカルボキシル基含有化合物としては、例えば無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバチン酸、シアヌル酸等が挙げられる。
【0066】
イソシアネート含有化合物としては、例えばトルエンジイソシアネート、イソシアナート基を末端基とするプレポリマーのイソシアナート類等が挙げられる。
【0067】
エポキシ基含有化合物としては、例えばビスフェノールA、レゾルシノール、ハイドロキノン等のジグリシジルエーテルのようなエポキシド類が挙げられる。
【0068】
樹脂架橋剤としては、例えばアルキルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド縮合物およびトリアジン−ホルムアルデヒド縮合物、ヘキサメトキシメチル−メラミン樹脂等が挙げられる。
【0069】
有機過酸化物としては、例えばケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類が挙げられる。これらの中で、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類が好ましい。
【0070】
架橋部位が非共役ジエン等の不飽和基である場合や官能基を含まない場合、有機過酸化物による架橋が有効である。架橋反応に用いる有機過酸化物としては、特に制限を受けず公知の有機過酸化物の全てが使用可能である。例えばジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ジ(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、tert−ブチルパーオキシクメン等が挙げられる。
これらの中で好ましくはジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(tert−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3である。
【0071】
本発明の架橋剤の添加量は、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部、またはグラフト化前駆体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部である。この添加量は、架橋点の濃度および架橋剤の種類によって適宜変更される。0.01重量部未満では、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーの圧縮永久歪みが悪くなり、また10重量部を超えると機械的強度、成形加工性が低下する傾向にある。
【0072】
次に本発明において使用される共架橋剤は、ポリマーラジカルとすみやかに反応し架橋効率を高めるために使用され、例えばp−ベンゾキノンジオキシム、p,p−ジベンゾイルキノンジオキシム、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジアリルフタレート、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルフォスフェート、マレイミド、フェニ−ルマレイミドN,N’・m−フェニレンビスマレイミド、無水マレイン酸、イタコン酸、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、1,2−ポリブタジエン等が挙げられる。
この中で好ましいのはp−ベンゾキノンジオキシム、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルフォスフェート、ジビニルベンゼンである。
さらに好ましいのはp−ベンゾキノンジオキシム、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルフォスフェート、ジビニルベンゼンである。
【0073】
これら共架橋剤の添加量は、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部、またはグラフト化前駆体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.01〜8重量部である。0.01重量部未満では、得られるオレフィン系熱可塑性エラストマーの機械的強度または耐油性が悪くなり、また10重量部を超えると成形加工性が著しく低下する傾向にある。
【0074】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマー中には非極性α−オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体またはオレフィン共重合体(以下、オレフィン系(共)重合体と略す。)をさらに添加して溶融混練しても良い。オレフィン系(共)重合体の具体例としては、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超超低密度ポリエチレン、低分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン(共)重合体等を挙げることができ、特にポリプロピレン、エチレン−プロピレン(共)重合体が耐油性、機械的物性の点で好ましい。
前記追加するオレフィン系(共)重合体の添加量としては、オレフィン系熱可塑性エラストマー中、好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。90重量%を超えると、成形体の圧縮永久歪みが低下するため好ましくない。また、前記オレフィン系(共)重合体は2種以上を混合して使用することもできる。
【0075】
オレフィン系熱可塑性エラストマー中には、添加剤として可塑剤、伸展剤、充填材、難燃剤、老化防止剤を適宜、添加することができる。これらの添加剤により、オレフィン系熱可塑性エラストマーの性能を目的に応じて向上させることができる。さらに、着色剤、スコーチ防止剤、滑剤、カップリング剤、発泡剤等の添加剤を必要に応じて使用することができる。
【0076】
本発明において使用される可塑剤としては、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソノニルフタレート等のフタル酸エステル類;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリテート等のトリメリット酸エステル類;ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジブチルジグリコールアジペート等のアジピン酸エステル類、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート等のアゼライン酸エステル類、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル類、スルホンアミド等が挙げられる。
【0077】
伸展剤としては、例えば鉱物油(パラフィン系、ナフテン系、芳香族系)等が挙げられる。
【0078】
充填剤としては、例えばカーボンブラック、ホワイトカーボン、クレー、マイカ、炭酸カルシウム、タルク等に代表される充填材、難燃剤としては水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等に代表される無機難燃剤、ハロゲン系、リン系等に代表される有機難燃剤が挙げられる。
【0079】
老化防止剤としては、フェノール系老化防止剤を必須とする1種以上の老化防止剤である。フェノール系老化防止剤のみを使用しても良いが、他の老化防止剤を併用してもかまわない。フェノ−ル系と併用可能な老化防止剤としてはリン系、硫黄系、アミン系等を挙げることができる。
【0080】
フェノール系老化防止剤としては、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、3−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノ−ル系老化防止剤;2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−〔β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等のビスフェノール系老化防止剤;1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ビス〔3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、D−α−トコフェノール等の高分子型フェノール系老化防止剤等を挙げることができる。
【0081】
また、リン系老化防止剤としては、例えばトリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、オクタデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等を挙げることができる。
【0082】
また、硫黄系老化防止剤としては、例えばジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、2−メルカプトベンズイミダゾール等を挙げることができる。
【0083】
さらにアミン系老化防止剤としては、アルキル置換ジフェニルアミン等を挙げることができる。
これらの老化防止剤は、少なくとも1種類のフェノール系老化防止剤が含まれていれば、複数併用することができる。
スコーチ防止剤としては、スルホンアミド誘導体、ジフェニルウレア、N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミド等が挙げられる。
【0084】
これらの添加剤は、本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー100重量部に対して、好ましくは200重量部以下、さらに好ましくは150重量部以下添加することができる。配合量が200重量部を超えると成形品の機械的物性が低下するので好ましくない。
【0085】
また充填剤の表面は、ステアリン酸、オレイン酸、パルチミン酸またはそれらの金属塩、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスまたはそれらの変性物、有機シラン、有機ボラン、有機チタネート等を使用して表面処理を施すことが好ましい。
【0086】
さらに本発明の効果を損わない範囲において、他の熱可塑性樹脂を添加しても差し支えない。
他の熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアセアール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリアリレート系樹脂等のエンジニアリングプラスチックス;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂等のスチレン系樹脂;アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等の汎用プラスチックス;スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;ブタジエンゴム、ブタジエン−スチレンゴム、ブタジエン−アクリロニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレン系ゴム、ウレタンゴム、ケイ素ゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等の合成ゴム;天然ゴムなどを挙げることができる。
【0087】
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーを溶融、混合する方法としては、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、混練押出機、二軸押出機、ロール等の通常用いられる混練機により行うことができる。
混練温度としては通常100〜300℃、好ましくは120〜280℃の範囲で行われる。上記温度が100℃未満の場合、溶融が不完全であったり、また溶融粘度が高いため、混合が不充分となって、成形物に相分離や層状剥離が現れるため好ましくない。また300℃を超えると、混合される樹脂の分解もしくはゲル化が起こり易くなるため好ましくない。
【0088】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、射出成形、押出成形、真空成形、ブロー成形の何れの成形方法でも成形することができ、所定形状の成形体が得られる。中でも射出成形は流動性、成形品外観の観点から、押出成形は成形シートの成形性、シート外観の観点から、また真空成形は深絞り成形性の観点からより好ましい。このようにして得られた成形体は使用後に回収して再度成形用の原料とすることができ、リサイクル性に優れている。
【0089】
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーを使用して得られるシール類としての形状、厚さ、寸法等は、使用目的に応じて適宜に選定される。例えば形状については、H型、Y型、U型、O型等のシール材に通常採用されるもののほか、シート、テープ、ブロック、ディスク、線、円柱、角柱、中空体、異形等の種々の形状を適宜選択することができる。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーを使用したシール類は、例えば自動車・車両部品、電気・電子機械部品、装置・器具部品、工業部品、建築部品等の幅広い分野において、クランクシャフトシール、ピストンシール、ロッドシール、ダストシール、ベアリングシール、バルブシール、摺動シール、部品接合部シール、配管パッキング、容器用内蓋、容器口金用パッキング、容器用栓、Oリング、Xリング、Uパッキン、Vパッキン、オイルパンガスケット、シリンダーガスケット等として使用することができる。
【0090】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0091】
参考例1(アクリル系ゴム(A)の製造)
攪拌機、温度計、冷却器、滴下装置、窒素ガス導入管のついたフラスコにイオン交換水2300g、ナトリウムドデシルサルフェート20gを仕込んだ後、窒素ガスを吹き込みながら撹拌下に70℃まで昇温した。その後、重合開始剤としてカリウムパーサルフェート5gを添加した。
そこへ、70℃の温度条件を維持しながら、単量体混合物(メトキシエチルアクリレート320g、エチルアクリレート1200g、アクリロニトリル80g、アリルメタクリレート8g)1608gを3時間かけて滴下した後、さらに3時間重合を行うことにより乳化液を得た。この状態での動的光散乱(DLS)による平均粒径は90nmであった。
次にこの乳化液を同重量の1%塩化カルシウム水溶液に、1時間かけて滴下することにより塩析を行った。そして水洗後、70℃で乾燥してアクリル系ゴム(A)を得た。各成分の使用量を表1に示す。
【0092】
【表1】
【0093】
参考例2(アクリル系ゴム(B)の製造)
参考例1において使用した単量体混合物(メトキシエチルアクリレート320g、エチルアクリレート1200g、アクリロニトリル80g、アリルメタクリレート8g)1608gを、単量体混合物(メトキシエチルアクリレート320g、ブチルアクリレート1200g、アクリロニトリル80g、アリルメタクリレート12g)1612gに変更した以外は、参考例1に準じてアクリル系ゴム(B)を得た。各成分の使用量を表1に示す。
【0094】
参考例3(アクリル系ゴム(C)の製造)
参考例1において使用した単量体混合物(メトキシエチルアクリレート320g、エチルアクリレート1200g、アクリロニトリル80g、アリルメタクリレート8g)1608gを、単量体混合物(メトキシエチルアクリレート480g、エチルアクリレート480g、ブチルアクリレート480g、アクリロニトリル160g、アリルメタクリレ−ト8g)1608gに変更した以外は、参考例1に準じてアクリル系ゴム(C)を得た。各成分の使用量を表1に示す。
【0095】
参考例4(アクリル系ゴム(D)の製造)
参考例1において使用した単量体混合物(メトキシエチルアクリレート320g、エチルアクリレート1200g、アクリロニトリル80g、アリルメタクリレート8g)1608gを、単量体混合物(エチルアクリレート1520g、アクリロニトリル80g)1600gに変更した以外は、参考例1に準じてアクリル系ゴム(D)を得た。各成分の使用量を表1に示す。
【0096】
参考例5(グラフト化前駆体(a)の製造)
容積5リットルのステンレス製オートクレーブに、純水2000gを入れ、さらに懸濁剤としてポリビニルアルコール2.5gを溶解させた。この中にポリプロピレンA(ブロック共重合体、粒径3mm、エチレン含有量5.9重量%)700gを入れ、攪拌・分散した。そこへベンゾイルペルオキシド(日本油脂(株)製ラジカル重合開始剤、商品名:ナイパーB)1.2g、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート(ラジカル重合性有機過酸化物)6g、ビニル系単量体混合物(スチレン100g、ブチルアクリレート100gおよびヒドロキシプロピルメタクリレート100g)300gからなる混合単量体を前記オートクレーブ中に投入・撹拌した。
次いでオートクレーブを60〜65℃に昇温し、2時間攪はんすることによりラジカル重合開始剤、ラジカル重合性有機過酸化物およびビニル系単量体をポリプロピレン中に含浸させた。
次いで、温度を80〜85℃に上げ、その温度で6時間維持して重合を完結させた後、水洗および乾燥してグラフト化前駆体(a)を得た。このグラフト化前駆体(a)中のビニル系共重合体をトルエンで抽出し、GPCにより数平均重合度を測定したところ、850であった。
このグラフト化前駆体(a)を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、JEOL JSM T300)により観察したところ、粒子径0.3〜0.5μmの真球状樹脂が均一に分散した多層構造体であった。各成分の使用量を表2に示す。。
【0097】
【表2】
【0098】
参考例6(グラフト化前駆体(b)の製造)
参考例5において使用したビニル系単量体混合物(スチレン100g、ブチルアクリレート100gおよびヒドロキシプロピルメタクリレート100g)300gを、ビニル系単量体混合物(スチレン100g、ヒドロキシプロピルメタクリレート100gおよびメトキシエチルアクリレート100g)300gに変更し、ベンゾイルペルオキシドの添加量を1.2gから2.4gに変更したこと以外は、参考例5に準じてグラフト化前駆体(b)を得た。このときグラフト化前駆体(b)中のビニル系共重合体の数平均重合度は600であった。またこのグラフト化前駆体(b)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜0.5μmであった。
【0099】
参考例7(グラフト化前駆体(c)の製造)
参考例5において使用したポリプロピレンA(ブロック共重合体、粒径3mm、エチレン含有量5.9重量%)700gをポリプロピレンB(ブロック共重合体、粒径3mm、エチレン含有量8重量%)700gに変更し、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネートの添加量を6gから10gに変更した以外は、参考例5に準じてグラフト化前駆体(c)を得た。このときグラフト化前駆体(c)中のビニル系共重合体の数平均重合度は900であった。またこのグラフト化前駆体(c)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜0.5μmであった。
【0100】
参考例8(グラフト化前駆体(d)の製造)
参考例5において使用したビニル系単量体混合物(スチレン100g、ブチルアクリレート100gおよびヒドロキシプロピルメタクリレート100g)300gを、ビニル系単量体混合物(スチレン100g、ブチルアクリレート100g、ヒドロキシプロピルメタクリレート100gおよびアリルメタクリレート3g(架橋性官能基を有する単量体))303gに変更し、tert−ブチルペルオキシメタクリロイロキシエチルカーボネートの添加量を6gから2gに変更した以外は、参考例5に準じてグラフト化前駆体(d)を得た。このときグラフト化前駆体(d)中のビニル共重合体の数平均重合度は900であった。またこのグラフト化前駆体(d)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜0.5μmであった。
【0101】
参考例9(グラフト化前駆体(e)の製造)
参考例5において使用したポリプロピレンA(ブロック共重合体、粒径3mm、エチレン含有量5.9重量%)700gをポリプロピレンC(ランダム共重合体、粒径3mm、エチレン含有量4重量%)700gに変更した以外は、参考例5に準じてグラフト化前駆体(e)を得た。このときグラフト化前駆体(e)中のビニル系共重合体の数平均重合度は890であった。またこのグラフト化前駆体(e)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜0.5μmであった。
【0102】
参考例10(グラフト化前駆体(f)の製造)
参考例5において使用したポリプロピレンA(ブロック共重合体、粒径3mm、エチレン含有量5.9重量%)をポリプロピレンD(ブロック共重合体、粒径3mm、エチレン含有量10重量%)に変更した以外は、参考例5に準じてグラフト化前駆体(f)を得た。このときグラフト化前駆体(f)中のビニル系共重合体の数平均重合度は880であった。またこのグラフト化前駆体(f)中に分散している樹脂の平均粒子径は0.3〜0.5μmであった。
【0103】
実施例1
参考例5で得たグラフト化前駆体(a)600gと、参考例1で得たアクリル系ゴム(A)1800gを、190℃に予熱した加圧型ニーダー(モリヤマ(株)製、容量3リットル)を用いて10分間混練した後、架橋剤として2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂(株)製、商品名:パーヘキサ25B、以下パーヘキサ25Bと略記)15gと、共架橋剤としてポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート(新中村化学(株)製、商品名:BPE−200、以下BPE−200と略記)30gと、フェノール系老化防止剤(商品名:イルガノックス1010、チバ・スペシャリティー・ケミカルズ(株)製、以下イルガノックス1010と略記)20gを加え、更に5分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーをシリンダー温度180℃に設定された2軸1軸押出機に供給し、押出後造粒した。造粒した樹脂はプレス成形し(190℃、35MPa/cm2)、シートから打ち抜きにより試験片(3号ダンベル)を作成し、以下の試験法により物性を観察した。その結果を表3に示す。
【0104】
なお試験方法は以下の方法により行なった。
(1)硬度試験
JIS K−6253に準じ、タイプAデュロメータ試験機で硬度(ShA)
を測定した。
(2)引張試験
JIS K−6251に準じ、3号ダンベル試験片によって引張試験を行い、引張強度(MPa)および破断点伸び(%)を測定した。
(3)圧縮永久歪み試験
JIS K−6262に準じ、120℃で22時間後の圧縮永久歪み(%)を測定した。
(4)耐油性試験
試験片(3号ダンベル)を試験用油(IRM903oil)に120℃で72時間浸漬した後、浸漬後の重量および浸漬前の重量を測定して式(膨潤度=[(浸漬後の重量−浸漬前の重量)/浸漬前の重量]×100)により膨潤度(%)を測定した。
(5)耐熱性試験
試験片(3号ダンベル)を150℃のエアオーブン中に200時間放置した後、室温に冷却し破断点伸び(%)を測定した。
(6)外観試験
射出成形品の表面のフローマーク、肌荒れ、シルバーストリークおよびブルーミングなどを目視で判定し、次の3段階で評価した。
◎:優れた外観を有する
○:◎には劣るが成形品として問題なし
×:成形品として問題あり
(7)メルトフローレート試験
JIS K−7210に準じ、温度190℃、荷重10.0kgの条件でMFR(g/10min)を測定した。
【0105】
【表3】
【0106】
実施例2
参考例5で得たグラフト化前駆体(a)500gと、参考例3で得たアクリル系ゴム(C)1750gと、架橋剤(パーヘキサ25B)20gと、共架橋剤としてトリアリルホスフェート15gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを、180℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて15分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0107】
実施例3
参考例6で得たグラフト化前駆体(b)500gと、参考例2で得たアクリル系ゴム(B)1750gと、可塑剤としてジオクチルフタレート200gを、190℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて10分間混練した後、架橋剤としてα、α’−ビス(tert−ブチルパーオキシジイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製、商品名:パーブチルP、以下パーブチルPと略記)7.5gと、共架橋剤としてポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート25gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを加え、更に5分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0108】
実施例4
参考例6で得たグラフト化前駆体(b)をラボプラストミル一軸押出機((株)東洋精機製作所製)で180℃にて押し出し、グラフト化反応させることによりグラフト共重合体(b)を得た。グラフト共重合体(b)500gと、参考例3で得たアクリル系ゴム(C)1750gと、架橋剤(パーブチルP)7.5gと、共架橋剤としてトリアリルホスフェート15gと、可塑剤としてジオクチルアジペート200gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを、190℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて15分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0109】
実施例5
参考例7で得たグラフト化前駆体(c)500gと、参考例2で得たアクリル系ゴム(B)1750gを、180℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて10分間混練した後、架橋剤(パーブチルP)7.5gと、共架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート20gと、ポリプロピレンE(ブロック共重合体、エチレン含有量10重量%)50gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを加え、更に5分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0110】
実施例6
参考例8で得たグラフト化前駆体(d)500gと、参考例1で得たアクリル系ゴム(A)1750gと、可塑剤としてジオクチルアジペート200gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを、200℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて10分間混練した後、架橋剤(パーヘキサ25B)20gと、共架橋剤としてポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート40gと、ポリプロピレンF(ホモポリプロピレン)250gを加え、更に5分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0111】
実施例7
参考例9で得たグラフト化前駆体(e)400gと、参考例3で得たアクリル系ゴム(C)1600gと、架橋剤(パーヘキサ25B)15gと、共架橋剤としてエチレングリコールジメタクリレート10gと、ポリプロピレンF200gを加え、180℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて15分間混練した。そして可塑剤としてジオクチルアジペート200gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを加え、更に4分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0112】
実施例8
参考例7で得たグラフト化前駆体(c)をラボプラストミル一軸押出機で180℃にて押し出し、グラフト化反応させることによりグラフト共重合体(c)を得た。グラフト共重合体(c)500gと、参考例1で得たアクリル系ゴム(A)1750gと、可塑剤としてジオクチルフタレート200gを、190℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて10分間混練した後、架橋剤(パーヘキサ25B)20gと、共架橋剤としてトリアリルホスフェート15gと、ポリプロピレンF250gを加え、更に5分間混練した。そして老化防止剤(イルガノックス1010)20gを加え、更に4分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0113】
実施例9
参考例5で得たグラフト化前駆体(a)500gと、参考例3で得たアクリル系ゴム(C)1750gを190℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて10分間混練した後、架橋剤(パーヘキサ25B)20gと、共架橋剤としてポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート40gと、ポリプロピレンE350gを加え、更に5分間混練した。そして可塑剤としてジオクチルフタレート250gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを加え、更に4分間混練した。
得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0114】
実施例10
参考例5で得たグラフト化前駆体(a)500gと、参考例3で得たアクリル系ゴム(C)1750gと、架橋剤(パーヘキサ25B)20gと、共架橋剤としてポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート80gと、ポリプロピレンE350gを加え、180℃に予熱した加圧型ニーダーを用いて15分間混練した。そして可塑剤としてジオクチルフタレート500gと、老化防止剤(イルガノックス1010)20gを加え、更に4分間混練した。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマーを実施例1と同様の条件で押出後造粒し、同様に試験を行った。その結果を表3に示す。
【0115】
比較例1
実施例1において、架橋剤と共架橋剤を使用しない以外は、すべて実施例1と同様の試験を行った。その結果を表4に示す。
【0116】
【表4】
【0117】
比較例2
実施例2で、共架橋剤を使用しない以外は、すべて実施例2と同様の試験を行った。その結果を表4に示す。
【0118】
比較例3
実施例1で、グラフト化前駆体(a)600gの代わりに、参考例10で得たグラフト化前駆体(f)600gを使用した以外は、すべて実施例1と同様の試験を行った。その結果を表4に示す。
【0119】
比較例4
実施例2で、アクリル系ゴム(C)1750gの代わりに、参考例4で得たアクリル系ゴム(D)1750gを使用した以外は、すべて実施例2と同様の試験を行った。その結果を表4に示す。
【0120】
比較例5
実施例1で、パーヘキサ25Bの添加量を15gから250gに、ポリオキシエチレン変性ビスフェノールAジメタクリレート量の添加量を30gから300gに変更した以外は、すべて実施例1と同様の試験を行った。その結果を表4に示す。
【0121】
表3〜4から本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(実施例1〜10)は、機械的物性、圧縮永久歪み、成形性、耐熱性、外観において優れた性能を有し、耐油性エチレン−プロピレン共重合体を用いることにより耐油性が向上し、架橋剤や共架橋剤を添加することにより、機械的物性、圧縮永久歪み、耐油性が大幅に向上することが明らかとなった。
それに対して、エチレンの含有量が8重量%以上のエチレン−プロピレンブロック共重合体を用いると耐油性が低下し(比較例3)、メトキシエチルアクリレートの含有量が10重量%未満のアクリル系ゴムを用いたオレフィン系熱可塑性エラストマーは、圧縮永久歪み、耐油性が低下することが確認できた(比較例4)。
また架橋剤や共架橋剤を使用していないオレフィン系熱可塑性エラストマーにおいては、良好な機械的物性、圧縮永久歪み、耐油性が得られないが(比較例1、2)、所定量以上の架橋剤と共架橋剤を加えると、圧縮永久歪み、成形性、外観が大幅に低下することが確認できた(比較例5)。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、シール類として利用するのに必要な物性である機械的物性、圧縮永久歪み、耐油性及び耐熱性において優れた性能を有している。
【0122】
【発明の効果】
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、耐油性、耐熱性、圧縮永久歪み、成形加工性およびリサイクル性に優れており、該エラストマーを使用したシール類は自動車・車両部品、電気・電子機械部品、装置・器具部品、工業部品、建築部品等の広い分野で有効に使用することができる。
Claims (11)
- 耐油性エチレン−プロピレン共重合体セグメントとビニル系共重合体セグメントとからなり、かつ前記二つのセグメントのうち一方が他方に0.01〜1μmの微細な粒子として分散相を形成しているグラフト共重合体と、メトキシエチルアクリレート10〜90重量%とアクリル酸アルキルエステル5〜85重量%とアクリロニトリル5〜15重量%とを含みこれらを主成分とする単量体混合物から形成されるアクリル系ゴムと、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の架橋剤と、グラフト共重合体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の共架橋剤を溶融混練して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー。
- 耐油性エチレン−プロピレン共重合体粒子中にビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との共重合体が分散した構造体であるグラフト化前駆体と、メトキシエチルアクリレート10〜90重量%とアクリル酸アルキルエステル5〜85重量%とアクリロニトリル5〜15重量%とを含みこれらを主成分とする単量体混合物から形成されるアクリル系ゴムと、グラフト化前駆体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の架橋剤と、グラフト化前駆体とアクリル系ゴムとの合計量100重量部に対して0.01〜10重量部の共架橋剤を溶融混練して得られるオレフィン系熱可塑性エラストマー。
- 前記グラフト化前駆体が、耐油性エチレン−プロピレン共重合体粒子中に、ビニル系単量体、ラジカル重合性有機過酸化物およびラジカル重合開始剤を含浸させた後、ビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物とを共重合させて得られることを特徴とする請求項2に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー。
- 前記ラジカル重合性有機過酸化物が、下記式(1)または(2)で示される化合物であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー。
- 前記ビニル系共重合体セグメントまたはビニル系単量体とラジカル重合性有機過酸化物との共重合体が、架橋性官能基を有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー。
- 前記アクリル系ゴムが、アリルメタクリレートを含む単量体混合物から形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー。
- さらに非極性α−オレフィン単量体より形成されるオレフィン系重合体またはオレフィン系共重合体を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー。
- さらに可塑剤、伸展剤、充填剤、難燃剤および老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも一種の添加剤を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマー。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマーを成形して得られる成形体。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマーを成形して得られるシール類。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載のオレフィン系熱可塑性エラストマーを成形して得られる自動車用シール類。
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