JP2004002520A - 重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】重合溶媒の存在下、ラジカル的移動可能な原子または原子団を有する開始剤と遷移金属が中心金属である金属錯体から成るレドックス触媒とを使用し、原子移動型ラジカル重合法で1種以上の重合性ビニル単量体を重合して非水溶性重合体を含む重合反応液を得、得られた重合反応液に水を添加して非水溶性重合体を析出または分液させ、固液分離手段または液液分離手段によって非水溶性重合体を含まない液相を分離して非水溶性重合体を回収し、回収された非水溶性重合体に脱水剤を添加して非水溶性重合体に同伴して混入した水分を脱水した後に脱水剤を分離し、次いで、重合体溶液から溶媒を除去して非水溶性重合体を回収する。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合体の製造方法に関し、詳しくは、原子移動型ラジカル重合法による重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
原子移動型ラジカル重合法は、リビングラジカル重合法の1つの方法であり、次の様な図式で表される。
【0003】
【化1】
【0004】
上記において、Pはポリマー又は開始剤、(M)は遷移金属、Xはハロゲン、YおよびLは(M)に配位可能な配位子、nおよびn+1は遷移金属の原子価であり、低原子価錯体(1)と高原子価錯体(2)とはレドックス共役系を構成する。
【0005】
最初に、低原子価錯体(1)が有機ハロゲン化物P−Xからハロゲン原子Xをラジカル的に引き抜いて、高原子価錯体(2)及び炭素中心ラジカルP・を形成する(この反応の速度はKactで表される)。このラジカルP・は、図示の様に単量体と反応して同種の中間体ラジカル種P・を形成する(この反応の速度はKpropagationで表される)。高原子価錯体(2)とラジカルP・との間の反応は、生成物P−Xを生ずると同時に、低原子価錯体(1)を再生する(この反応の速度はKdeactで表される)。そして、低原子価錯体(1)はP−Xと更に反応して新たな反応を進行させる。本反応においては、成長ラジカル種P・の濃度を低く抑制することが重合を制御することにおいて最も重要である。
【0006】
上記の原子移動型ラジカル重合法の具体例としては、次の様な報告がある。
【0007】
(1)CuCl/ビピリジル錯体の存在下、α―クロロエチルベンゼンを開始剤としたスチレンの重合(J.Wang and K.Matyjaszewski, J.Am.Chem.Soc.,117,5614(1995 )
【0008】
(2)RuCl2(PPh3)3、有機アルミ化合物の存在下でのCCl4を開始剤とするメタクリル酸メチルの重合(M.Kato,M.Kamigaito,M.Sawamoto,T.Higashimura,Macromolecules,28,1821(1995))
【0009】
その後、配位子、金属種、開始剤などの設計が行われ、原子移動型ラジカル重合法は、アクリレート単量体を含めて多種の単量体種への展開が計られてきた。
【0010】
ところで、従来、使用した金属触媒の除去は、重合終了後の溶液をそのまま或いは適当な溶媒で希釈した後、アルミナ、シリカ及び/又はクレーのカラム又はパッドに通すか、または、重合溶液に金属吸着剤を分散させて処理する方法によって行われている。
【0011】
しかしながら、上記の方法は、多くの吸着剤を必要とする上、スケールが大きい場合は濾過時間が長くなり、また、場合によっては重合体と一緒に金属触媒が流出し、工業的規模での実施が困難である。
【0012】
また、Macromolecules,33,1476(2000).には、イオン交換樹脂による銅成分の除去方法が記載されているが、斯かる方法の工業的実施は必ずしも容易ではない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、原子移動型ラジカル重合法による重合体の製造方法であって、使用した金属触媒の除去を効率的かつ簡便に行ない得る様に改良された重合体の製造方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の要旨は、重合溶媒の存在下、ラジカル的移動可能な原子または原子団を有する開始剤と遷移金属が中心金属である金属錯体から成るレドックス触媒とを使用し、原子移動型ラジカル重合法で1種以上の重合性ビニル単量体を重合して非水溶性重合体を含む重合反応液を得、得られた重合反応液に水を添加して非水溶性重合体を析出または分液させ、固液分離手段または液液分離手段によって非水溶性重合体を含まない液相を分離して非水溶性重合体を回収し、回収された非水溶性重合体に脱水剤を添加して非水溶性重合体に同伴して混入した水分を脱水した後に脱水剤を分離し、次いで、重合体溶液から溶媒を除去して非水溶性重合体を回収することを特徴とする重合体の製造方法に存する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の重合体の製造方法は、原子移動型ラジカル重合法であり、概念的には前述の図式で表される。
【0016】
本発明で使用する重合溶媒は、特に制限はないが、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等の脂肪族または芳香族エーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカルボニル化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭素類が挙げられる。
【0017】
上記の中では非水溶性溶媒が好適である。ここで、非水溶性溶媒とは、25℃における水に対する溶解度が20重量%以下、好ましくは15重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である溶媒をいう。斯かる非水溶性溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン、ベンゾニトリル、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム等が挙げられる。これらの重合溶媒は、単独使用の他、2種以上の混合物として使用することが出来る。
【0018】
本発明で使用する開始剤は、ラジカル的移動可能な原子または原子団を有する開始剤である。斯かる開始剤としては、以下の表1及び表2に一般式(1)〜(19)で表された様な有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物が挙げられる。但し、一般式(1)〜(19)において、C6H5はフェニル基、C6H4はフェニレン基、R1およびR2は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、それぞれの炭素原子上にアルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルキルチオ基などの官能基を有していてもよく、また、同一もしくは異なっていてもよい。Xは、塩素、臭素またはヨウ素、nは0〜20の整数である。
【0019】
<開始点が1つの重合開始剤>
【表1】
(1)C6H5−CH2X
(2)C6H5C(H)(X)CH3
(3)C6H5−C(X)(CH3)2
(4)R1−C(H)(X)−CO2R2
(5)R1−C(CH3)(X)−CO2R2
(6)R1−C(H)(X)−C(O)R2
(7)R1−C(CH3)(X)−C(O)R2
(8)R1−C6H4−SO2X
【0020】
<開始点が2つの重合開始剤>
【表2】
(9)o−、m−、p−XCH2−C6H4−CH2X
(10)o−、m−、p−CH3C(H)(X)−C6H4−C(H)(X)CH3
(11)o−、m−、p−(CH3)2C(X)−C6H4−C(X)(CH3)2
(12)RO2C−C(H)(X)−(CH2)n−C(H)(X)−CO2R
(13)RO2C−C(CH3)(X)−(CH2)n−C(CH3)(X)−CO2R
(14)RC(O)−C(H)(X)−(CH2)n−C(H)(X)−C(O)R
(15)RC(O)−C(CH3)(X)−(CH2)n−C(CH3)(X)−C(O)R
(16)XCH2CO2−(CH2)n−OCOCH2X
(17)CH3C(H)(X)CO2−(CH2)n−OCOC(H)(X)CH3
(18)(CH3)2C(X)CO2−(CH2)n−OCOC(X)(CH3)2
(19)RC(O)CH(X)2
【0021】
本発明において、好ましい開始剤は、1−フェニルエチルクロライド、1−フェニルエチルブロマイド、2−クロロプロピオニトリル、2−クロロプロピオン酸、2−ブロモプロピオン酸、2−クロロイソブチル酸、2−ブロモイソブチル酸およびそのアルキルエステル、p−ハロメチルスチレンであり、更に好ましい開始剤は、1−フェニルエチルクロライド、1−フェニルエチルブロマイド、メチル−2−クロロプロピオネート、エチル−2−クロロプロピオネート、メチル−2−ブロモプロピオネート、エチル−2−ブロモプロピオネート、α,α’−ジクロロキシレン、α,α’−ジブロモキシレン、2,5−ジブロモアジピン酸エステル、2,6−ジブロモ−1,7−ヘプタン二酸エステルである。
【0022】
本発明で使用するレドックス触媒は、遷移金属が中心金属である金属錯体から成る。遷移金属としては、特に制限されないが、周期表7〜11族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属が好適である。レドックス触媒(レドックス共役錯体)においては、前述の図式に示す様に低原子価錯体(1)と高原子価錯体(2)とが可逆的に変化する。
【0023】
具体的に使用される低原子価金属(M)nとしては、Cu+、Ni0、Ni+、Ni2+、Pd0、Pd+、Pt0、Pt+、Pt2+、Rh+、Rh2+、Rh3+、Co+、Co2+、Ir0、Ir+、Ir2+、Ir3+、Fe2+、Ru2+、Ru3+、Ru4+、Ru5+、Os2+、Os3+、Re2+、Re3+、Re4+、Re6+、Mn2+、Mn3+の群から選ばれる金属であり、中でも、Cu+、Ru2+、Fe2+、Ni2+が好ましく、特にCu+が好ましい。1価の銅化合物の具体例としては、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅などが挙げられる。
【0024】
上記の金属錯体には有機配位子が使用される。有機配位子は、重合溶媒への可溶化およびレドックス共役錯体の可逆的な変化を可能にするため使用される。金属への配位原子としては、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子などが挙げられるが、好ましくは窒素原子またはリン原子である。有機配位子の具体例としては、2,2’−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(ジメチルアミノエチル)アミン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられる。
【0025】
前記の遷移金属(M)と有機配位子とは、別々に添加して重合系中で金属錯体を生成させてもよいし、予め金属錯体を合成して重合系中へ添加してもよい。特に、銅の場合は前者の方法が好ましく、ルテニウム、鉄、ニッケルの場合は後者の方法が好ましい。
【0026】
予め合成されるルテニウム、鉄、ニッケル錯体の具体例としては、トリストリフェニルホスフィノ二塩化ルテニウム(RuCl2(PPh3)3)、ビストリフェニルホスフィノ二塩化鉄(FeCl2(PPh3)2)、ビストリフェニルホスフィノ二塩化ニッケル(NiCl2(PPh3)2)、ビストリブチルホスフィノ二臭化ニッケル(NiBr2(PBu3)2)等が挙げられる。
【0027】
本発明で使用する重合性ビニル単量体としては、通常のラジカル重合可能な単量体であれば制限なく使用することが出来る。斯かる単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールア(メタ)クリルアミド、N−ビニルピロリドン、スチレン、o−、m−、p−メトキシスチレン、o−、m−、p−t−ブトキシスチレン、o−、m−、p−クロロメチルスチレン等が挙げられる。
【0028】
上記の重合性ビニル単量体は、2種類以上使用してランダム共重合やブロック共重合されてもよいし、また、重合の途中で他の単量体を徐々に添加してもよい。何れにしても、本発明は、上記の単量体の組み合わせによって非水溶性の重合体を製造する場合に適用される。
【0029】
本発明において重合溶媒の使用量は、特に限定されないが、単量体100重量部に対し、通常1〜2000重量部、好ましくは10〜1000重量部である。低原子価金属(M)nの使用量は、特に限定されないが、反応系中の濃度として、通常10−4〜10−1モル/l、好ましくは10−3〜10−1モル/lである。そして、開始剤に対し、通常0.01〜100(モル比)、好ましくは0.1〜50(モル比)である。また、重合温度は、特に限定されないが、通常0〜200℃、好ましくは20〜150℃である。本発明において、重合はリビング的に進行し、分子量分布の狭い非水溶性重合体が得られる。
【0030】
本発明の特徴は、次の(1)〜(5)の操作により、得られた重合反応液から金属触媒を除去して非水溶性重合体を回収する点にある。
【0031】
(1)重合反応液に水を添加して非水溶性重合体を析出または分液させる。斯かる操作により、大部分の金属触媒は非水溶性重合体から分離される。水の添加量は、重合反応液1重量部に対し、通常0.01〜1000重量倍、好ましくは0.1〜100重量倍である。重合溶媒が非水溶性溶媒の場合は、更に、非水溶性重合体に対する貧溶媒を添加するのが好ましい。斯かる貧溶媒としては、各種の極性溶媒が挙げられるが、特に、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のC1−C6アルコールが好ましい。
【0032】
水および必要に応じて上記の貧溶媒を添加する場合、2回以上に分けて添加してもよいし、両者を別々に添加してもよい。水および上記の貧溶媒の使用割合は、非水溶性重合体の析出または分液および非水溶性重合体からの金属触媒の分離が良好に行なわれる様に適宜選択される。重合反応液に最初に添加する溶媒(水および/または上記の貧溶媒)の量は、重合反応液1重量部に対し、通常0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜20重量部である。ただし、水と貧溶媒との合計に対する水の割合は、通常70容量%以下、好ましくは5〜40容量%である。なお、最初に添加する溶媒中に水が含有されていない場合は、後から別途に水を添加するが、最初に添加する溶媒中に水が含有されている場合も、後から別途に水を添加するのが好ましい。
【0033】
また、水と上記の貧溶媒とを2回に分けて添加する場合は、一旦、固液分離手段または液液分離手段によって非水溶性重合体を回収し、回収された非水溶性重合体に非水溶性重合体に対する良溶媒を添加した後に水または上記の貧溶媒を添加して非水溶性重合体を析出または分液させるならば、金属触媒の除去率が高められて好ましい。非水溶性重合体が析出した場合、通常、固液分離手段としては濾過が好適に採用される。非水溶性重合体が分液した一方の液相に分配した場合、通常、非水溶性重合体の分配相は上層となるため、液液分離手段としては、非水溶性重合体を含まない液相を下層として除去する方法が好適に採用される。また、非水溶性重合体に対する良溶媒としては、前記の重合溶媒と同様の溶媒が使用される。
【0034】
一旦、分離手段によって回収された非水溶性重合体に、再度、水を添加する場合は、非水溶性重合体を含む固相または液相1重量部に対して0.01〜1000重量部の水があれば十分であるため、分離前に添加する水の量は少量でよい。また、上記の操作に使用する水は、酸、塩基または塩を溶解させた水でもよい。金属触媒の除去率を高める観点から酸水溶液が好ましい。酸としては、硫酸、炭酸などの無機酸、酢酸、トルエンスルホン酸などの有機酸であってもよい。
【0035】
(2)固液分離手段または液液分離手段によって非水溶性重合体を含まない液相を分離して非水溶性重合体を回収する。前工程で水を添加することにより非水溶性重合体が析出した場合は固液分離手段が採用され、固液分離手段としては濾過が好適に採用される。固液分離の条件は、特に制限されないが、通常は、常温かつ常圧である。固液分離で回収された非水溶性重合体は、反応溶媒および水、場合によっは貧溶媒を含んで膨潤しているために流動性がある。非水溶性重合体が液液分離手段で回収された場合は溶液状態である。
【0036】
(3)回収された非水溶性重合体に脱水剤を添加して非水溶性重合体に同伴して混入した水分を脱水する。この操作により、非水溶性重合体中に同伴された微量の金属触媒が水分と共に分離される。また、この場合、非水溶性重合体に非水溶性重合体に対する良溶媒を添加するならば、後述の操作(4)における脱水剤の分離が一層容易となり好ましい。上記の良溶媒としては前記の重合溶媒と同様の溶媒が使用される。また、脱水剤としては、特に制限されないが、無機塩類から成る脱水剤が好適に使用される。斯かる脱水剤としては、無水物が水和物になることにより脱水を行う、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、五酸化二リン、、塩化カルシウム、酸化カルシウム等が挙げられる。上記の溶媒の使用量は、非水溶性重合体1重量部に対し、脱水剤の使用量は、重合体溶液100重量部に対し、通常0.01〜50重量部、好ましくは0.05〜1重量部である。
【0037】
(4)脱水剤を分離する。非水溶性重合体が溶液状態の場合、脱水剤の分離は、通常、前記の固液分離手段と同様に行なうことが出来る。非水溶性重合体が膨潤状態の場合、溶媒(好ましくは良溶媒)を添加し、流動性を高めてから脱水剤を分離するのが好ましい。
【0038】
(5)次いで、重合体溶液から溶媒を除去して非水溶性重合体を回収する。溶媒の除去手段としては、例えばエバポレーション等が挙げられる。
【0039】
得られた重合体は、周知の手法に従って、サイズ排除クロマトグラフィ、NMRスペクトル等により分析することが出来る。この様にして、残留金属成分の含量が1ppm以下であり、不純物による着色がない高純度な非水溶性重合体を得ることが出来る。
【0040】
上記の本発明の製造方法で得られる非水溶性重合体の数平均分子量は、通常250〜500000、好ましくは500〜250000であり、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、通常1.8以下、好ましくは1.5以下である。
【0041】
本発明の製造方法は、リビング重合法であることから、重合を自由自在に開始し且つ終了させることが出来る。更に、重合体は、更なる重合を開始するために必要な官能基”X”を有しているため、第1のモノマーが重合で消費された後、第2のモノマーは成長するポリマー鎖上の第2のブロックを形成するために添加することが出来る。同一の又は異なるモノマーを加えることで、マルチ−ブロックコポリマーを調製することが出来る。
【0042】
本発明で得られる重合体は、直接的には、エラストマー、エンジニアリング樹脂、塗料、接着剤、インク及び画像形成組成物などとして使用される他、セメント調整剤、分散剤、乳化剤、界面活性剤、粘性係数向上剤、紙添加剤、静電気防止剤、被覆剤、樹脂調整剤などの添加剤として使用される。また、本発明で得られる重合体は、ポリウレタン等のより大きな高分子製品の中間体として、水処理化学物質、複合部品、化粧品、毛髪用品、腸内拡張剤、診断剤、持続放出組成剤などの製薬剤などとして使用することが出来る。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0044】
実施例1
コンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、窒素置換した後、触媒として臭化第一銅1.7gを仕込んだ。次いで、重合溶媒としてトルエン100g、単量体として2−エチルヘキシルアクリレート180g、配位子としてトリス(2−ジメチルアミノ)エチルアミン2.4g、重合開始剤としてメチルブロモプロピオネート1.6gを混合し、15分間窒素バブリングした後、上記フラスコ内に添加し、100℃で120分間重合を行って2−エチルヘキシルアクリレート重合体を得た。
【0045】
重合終了後、重合反応液にメタノール/水(700mL/140mL)を添加して重合体を析出させた。そして、デカンテーション法により含水相を分離し、析出した重合体を回収し、トルエン400mLに溶解させ、得られた溶液を分液漏斗に入れ、水300mLを添加した後に分液し、有機相(重合体溶液)を分離した。
【0046】
次いで、得られた重合体溶液に硫酸マグネシウム10gを添加し、撹拌した。その後、濾過により、硫酸マグネシウムを分離し、濾液からトルエンを除去して無色透明な2−エチルヘキシルアクリレート重合体を得た。原子吸光法によって銅の含有量を測定したところ、1ppm以下であった。また、ポリスチレン標準試料で校正したゲル浸透クロマトグラフィーで測定したところ、数平均分子量は8290、分子量分布は1.28であった。
【0047】
実施例2
実施例1と同様のフラスコに触媒として臭化第一銅52mgを仕込んだ。次いで、重合溶媒としてトルエン10g、単量体としてt−ブチルアクリレート18g、配位子としてトリス(2−ジメチルアミノ)エチルアミン83mg、重合開始剤としてジメチルジブロモヘプタジオネート133mgを混合し、15分間窒素バブリングした後、上記フラスコ内に添加し、100℃で120分間重合を行ってt−ブチルアクリレート重合体を得た。
【0048】
重合終了後、重合反応液にメタノール/水(500mL/100mL)を添加して重合体を析出させた。そして、デカンテーション法により含水相を分離し、析出した重合体を回収し、トルエン50mLに溶解させ、得られた溶液を分液漏斗に入れ、水40mLを添加した後に分液し、有機相(重合体溶液)を分離した。
【0049】
次いで、得られた重合体溶液に硫酸マグネシウム10gを添加し、撹拌した。その後、濾過により、硫酸マグネシウムを分離し、濾液からトルエンを除去して無色透明なt−ブチルアクリレート重合体を得た。原子吸光法によって銅の含有量を測定したところ、1ppm以下であった。また、ポリスチレン標準試料で校正したゲル浸透クロマトグラフィーで測定したところ、数平均分子量は13300、分子量分布は1.15であった。
【0050】
実施例3
実施例1と同様のフラスコに触媒として臭化第一銅0.6g、臭化第二銅0.98gを仕込んだ。次いで、重合溶媒としてジメチルホルムアミド100g、単量体としてn−ブチルアクリレート180g、配位子としてペンタメチルジエチレントリアミン1.7g、重合開始剤としてメチルブロモプロピオネート1.2gを混合し、15分間窒素バブリングした後、上記フラスコ内に添加し、100℃で240分間重合を行ってn−ブチルアクリレート重合体を得た。
【0051】
重合終了後、分液漏斗に回収した重合反応液に水100gを添加すると、上層の非水溶性重合体溶液、下層の水を多く含む液相とに分離された。下層の液相を除去して非水溶性重合体溶液を得た。この溶液にトルエン30gと硫酸マグネシウム30g添加し、撹拌した。その後、濾過により、硫酸マグネシウムを分離し、濾液からトルエンを除去して無色透明なn−ブチルアクリレート重合体を得た。原子吸光法によって銅の含有量を測定したところ、1ppm以下であった。また、ポリスチレン標準試料で校正したゲル浸透クロマトグラフィーで測定したところ、数平均分子量は8500、分子量分布は1.14であった。
【0052】
比較例1
実施例1と同様に重合反応を行なった。得られた重合反応液にメタノール/水(500mL/100mL)を添加して重合体を析出させた。そして、濾過により、析出した重合物を分離し、テトラヒドロフラン(THF)100mLに溶解させ、活性アルミナ10gを充填したカラムで処理した。その後、THFを除去し、ポリ2−エチルヘキシルアクリレート重合体を回収した。原子吸光法によって銅の含有量を測定したところ、500ppmであった。
【0053】
比較例2
比較例1において、活性アルミナの量を150gとした以外は、比較例1と同様に操作しポリ2−エチルヘキシルアクリレート重合体を回収した。原子吸光法によって銅の含有量を測定したところ、1ppm以下であった。
【0054】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、原子移動型ラジカル重合法による重合体の製造方法であって、使用した金属触媒の除去を効率的かつ簡便に行ない得る様に改良された重合体の製造方法が提供され、本発明の工業的価値は大きい。
Claims (3)
- 重合溶媒の存在下、ラジカル的移動可能な原子または原子団を有する開始剤と遷移金属が中心金属である金属錯体から成るレドックス触媒とを使用し、原子移動型ラジカル重合法で1種以上の重合性ビニル単量体を重合して非水溶性重合体を含む重合反応液を得、得られた重合反応液に水を添加して非水溶性重合体を析出または分液させ、固液分離手段または液液分離手段によって非水溶性重合体を含まない液相を分離して非水溶性重合体を回収し、回収された非水溶性重合体に脱水剤を添加して非水溶性重合体に同伴して混入した水分を脱水した後に脱水剤を分離し、次いで、重合体溶液から溶媒を除去して非水溶性重合体を回収することを特徴とする重合体の製造方法。
- 重合溶媒が非水溶性溶媒である請求項1に記載の製造方法。
- 脱水剤が無機塩類から成る脱水剤である請求項1又は2に記載の製造方法。
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