JP2006299070A - ビニル系重合体精製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造されるビニル系重合体の精製方法において、ビニル系重合体を水に接触させることによりビニル系重合体中に残存する金属触媒を除去することを特徴とする精製方法。
【選択図】 なし
Description
吸着処理法を基本として、重合触媒を効率的に除去する方法として、種々の方法が知られている。特許文献2では、固体添加物の存在下で50℃以上250℃以下に加熱する工程と、引き続き固液分離する方法により効率的に重合触媒を除去することにより、少ない固体添加量で、残存金属を数100ppmのレベルまで除去している。
特許文献3では、加熱する工程にて酸素等の酸化剤で処理する効果について述べられている。残存金属が数100ppmから数10ppmのレベルまで除去され、後の工程を経たヒドロシリル化硬化物の硬化性が向上することや、残存金属の使用する溶媒の極性について述べられている。これによると比誘電率は5以下が望ましいとあり、残存金属を貧溶媒で排除する効果が、その後の分離工程での残存金属の分離性に影響を与えているとしている。
ビニル系重合体が含む溶媒が1重量%以下であることが好ましい。
ビニル系重合体が(メタ)アクリル系重合体であることが好ましい。
ビニル系重合体がハロゲン基を有するビニル系重合体であることが好ましい。
ビニル系重合体の数平均分子量が500〜100000であることが好ましい。
ビニル系重合体の分子量分布が1.8未満であることが好ましい。
遷移金属錯体の中心金属が、周期律表第8族、9族、10族又は11族元素であることが好ましい。
遷移金属錯体の中心金属が、鉄、ニッケル、ルテニウム又は銅であることが好ましい。
移金属錯体の中心金属が銅であることが好ましい。
本発明のビニル系重合体の精製方法は、遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造されるビニル系重合体の精製方法において、ビニル系重合体を水に接触させることによりビニル系重合体中に残存する金属触媒を除去することを特徴とする方法である。
当該ビニル系重合体としては、末端に重合性の炭素−炭素二重結合を持つ基を有するビニル系重合体が好ましい。
具体的には、一般式(I):
−OC(O)C(R)=CH2 (I)
(式中、Rは水素原子、又は、炭素数1〜20の有機基を表す。)
で表される基を、1分子あたり少なくとも1個、分子末端に有するビニル系重合体であることがより好ましい。
一般式(I)において、Rの具体例としては、例えば、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2)nCH3(nは2〜19の整数を表す)、−C6H5、−CH2OH、−CN等が挙げられるが、好ましくは−H、−CH3である。
これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。
本発明においては、これらの好ましいモノマーを、他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40%以上含まれていることが好ましい。なお、上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。
また、ビニル系重合体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、特に限定されないが、1.8未満であることが好ましく、1.05以上1.50以下がより好ましく、1.10以上1.40以下がさらに好ましい。
当該分子量及び分子量分布は、ポリスチレンゲルカラムと、移動相としてのクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算で求めることができる。
本発明における原子移動ラジカル重合とは、リビングラジカル重合の一つであり、有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属を中心金属とする金属錯体を触媒として、ビニル系モノマーをラジカル重合する方法である。原子移動ラジカル重合法は、分子量、分子量分布の制御が可能であり、重合末端にハロゲン基を導入することも可能であることから、ハロゲン基含有ビニル系重合体の製造方法に最も適している。
具体的に例示するならば、
C6H5−CH2X、C6H5−C(H)(X)CH3、
C6H5−C(X)(CH3)2
(ただし、上の化学式中、C6H5はフェニル基、Xは塩素、臭素、又はヨウ素)
R3−C(H)(X)−CO2R4、
R3−C(CH3)(X)−CO2R4、
R3−C(H)(X)−C(O)R4、R3−C(CH3)(X)−C(O)R4、
(式中、R3、R4は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基、Xは塩素、臭素、又はヨウ素)
R3−C6H4−SO2X
(上記の各式において、R3は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基、Xは塩素、臭素、又はヨウ素)
等が挙げられる。
−C(R1)(R2)(X) (1)
(式中、R1及びR2はビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基を示す。Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す。)
このような特定の反応性官能基としては、アルケニル基、架橋性シリル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。これらの反応性官能基の反応性を利用して、一段階又は数段階の反応を経ることにより、ビニル系重合体に他の適当な官能基を導入することができる。
R6R7C(X)−R8−R9−C(R5)=CH2 (2)
(式中、R5は水素、又はメチル基、R6、R7は水素、又は、炭素数1〜20の1価のアルキル基、アリール基、又はアラルキル、又は他端において相互に連結したもの、R8は、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、又はo−,m−,p−フェニレン基、R9は直接結合、又は炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い、Xは塩素、臭素、又はヨウ素)
置換基R6、R7の具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。R6とR7は他端において連結して環状骨格を形成していてもよい。
XCH2C(O)O(CH2)nCH=CH2、
H3CC(H)(X)C(O)O(CH2)nCH=CH2、
(H3C)2C(X)C(O)O(CH2)nCH=CH2、
CH3CH2C(H)(X)C(O)O(CH2)nCH=CH2、
XCH2C(O)O(CH2)nO(CH2)mCH=CH2、
H3CC(H)(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)mCH=CH2、
(H3C)2C(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)mCH=CH2、
CH3CH2C(H)(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)mCH=CH2、
o,m,p−XCH2−C6H4−(CH2)n−CH=CH2、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−(CH2)n−CH=CH2、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−(CH2)n−CH=CH2、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C6H4−(CH2)n−O−(CH2)m−CH=CH2、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−(CH2)n−O−(CH2)m−CH=CH2、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−(CH2)n−O−(CH2)mCH=CH2、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C6H4−O−(CH2)n−CH=CH2、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)n−CH=CH2、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)n−CH=CH2、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C6H4−O−(CH2)n−O−(CH2)m−CH=CH2、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)n−O−(CH2)m−CH=CH2、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)n−O−(CH2)m−CH=CH2、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
H2C=C(R5)−R9−C(R6)(X)−R10−R7 (3)
(式中、R5、R6、R7、R9、Xは上記に同じ、R10は、直接結合、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、又は、o−,m−,p−フェニレン基を表す)
R9は直接結合、又は炭素数1〜20の2価の有機基(1個以上のエーテル結合を含んでいても良い)であるが、直接結合である場合は、ハロゲンの結合している炭素にビニル基が結合しており、ハロゲン化アリル化物である。この場合は、隣接ビニル基によって炭素−ハロゲン結合が活性化されているので、R10としてC(O)O基やフェニレン基等を有する必要は必ずしもなく、直接結合であってもよい。R9が直接結合でない場合は、炭素−ハロゲン結合を活性化するために、R10としてはC(O)O基、C(O)基、フェニレン基が好ましい。
CH2=CHCH2X、
CH2=C(CH3)CH2X、
CH2=CHC(H)(X)CH3、CH2=C(CH3)C(H)(X)CH3、
CH2=CHC(X)(CH3)2、CH2=CHC(H)(X)C2H5、
CH2=CHC(H)(X)CH(CH3)2、
CH2=CHC(H)(X)C6H5、CH2=CHC(H)(X)CH2C6H5、
CH2=CHCH2C(H)(X)−CO2R、
CH2=CH(CH2)2C(H)(X)−CO2R、
CH2=CH(CH2)3C(H)(X)−CO2R、
CH2=CH(CH2)8C(H)(X)−CO2R、
CH2=CHCH2C(H)(X)−C6H5、
CH2=CH(CH2)2C(H)(X)−C6H5、
CH2=CH(CH2)3C(H)(X)−C6H5、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等を挙げることができる。
o−,m−,p−CH2=CH−(CH2)n−C6H4−SO2X、
o−,m−,p−CH2=CH−(CH2)n−O−C6H4−SO2X、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは0〜20の整数)
等である。
R6R7C(X)−R8−R9−C(H)(R5)CH2−[Si(R11)2−b(Y)bO]m−Si(R12)3−a(Y)a (4)
(式中、R5、R6、R7、R8、R9、Xは上記に同じ、R11、R12は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は(R’)3SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R11又はR12が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,又は3を、また、bは0,1,又は2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする)
XCH2C(O)O(CH2)nSi(OCH3)3、
CH3C(H)(X)C(O)O(CH2)nSi(OCH3)3、
(CH3)2C(X)C(O)O(CH2)nSi(OCH3)3、
XCH2C(O)O(CH2)nSi(CH3)(OCH3)2、
CH3C(H)(X)C(O)O(CH2)nSi(CH3)(OCH3)2、
(CH3)2C(X)C(O)O(CH2)nSi(CH3)(OCH3)2、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは0〜20の整数、)
XCH2C(O)O(CH2)nO(CH2)mSi(OCH3)3、
H3CC(H)(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)mSi(OCH3)3、
(H3C)2C(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)mSi(OCH3)3、
CH3CH2C(H)(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)mSi(OCH3)3、
XCH2C(O)O(CH2)nO(CH2)mSi(CH3)(OCH3)2、
H3CC(H)(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)m−Si(CH3)(OCH3)2、
(H3C)2C(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)m−Si(CH3)(OCH3)2、
CH3CH2C(H)(X)C(O)O(CH2)nO(CH2)m−Si(CH3)(OCH3)2、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH2−C6H4−(CH2)2Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−(CH2)2Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−(CH2)2Si(OCH3)3、
o,m,p−XCH2−C6H4−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−XCH2−C6H4−(CH2)2−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−(CH2)2−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−(CH2)2−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−XCH2−C6H4−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)3−Si(OCH3)3、
o,m,p−XCH2−C6H4−O−(CH2)2−O−(CH2)3−Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)2−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
o,m,p−CH3CH2C(H)(X)−C6H4−O−(CH2)2−O−(CH2)3Si(OCH3)3、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素)
等が挙げられる。
(R12)3−a(Y)aSi−[OSi(R11)2−b(Y)b]m−CH2−C(H)(R5)−R9−C(R6)(X)−R10−R7 (5)
(式中、R5、R7、R8、R9、R10、R11、R12、a、b、m、X、Yは上記に同じ)
(CH3O)3SiCH2CH2C(H)(X)C6H5、
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2C(H)(X)C6H5、
(CH3O)3Si(CH2)2C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)2C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)3Si(CH2)3C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)3C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)3Si(CH2)4C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)4C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)3Si(CH2)9C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)9C(H)(X)−CO2R、
(CH3O)3Si(CH2)3C(H)(X)−C6H5、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)3C(H)(X)−C6H5、
(CH3O)3Si(CH2)4C(H)(X)−C6H5、
(CH3O)2(CH3)Si(CH2)4C(H)(X)−C6H5、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等が挙げられる。
HO−(CH2)n−OC(O)C(H)(R)(X)
(式中、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
H2N−(CH2)n−OC(O)C(H)(R)(X)
(式中、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
また、限定はされないが、重合は、0〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、室温〜150℃、より好ましくは50〜120℃の範囲である。
(1)官能基を有するビニル系モノマーを、原子移動ラジカル重合条件下で、所定のビニル系モノマーと共重合させる方法、
(2)官能基を有するラジカル重合性の低いオレフィン化合物を、ビニル系重合体の末端ハロゲン基に原子移動ラジカル重合条件下で反応させる方法、
(3)官能基を有する特定の化合物により、ビニル系重合体の末端ハロゲン基を置換する方法、
(4)ビニル系重合体の末端ハロゲンと、一般式(6)
M+−OC(O)C(R)=CH2 (6)
(式中、Rは水素、又は、炭素数1〜20の有機基を表す。M+はアルカリ金属、又は4級アンモニウムイオンを表す。)
で表される化合物とを反応させる方法。
当該精製方法においては、遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造された上記ビニル系重合体を、水に接触させることにより、ビニル系重合体中に残存する金属触媒を除去するものである。
ここで「精製」とは、原子移動ラジカル重合後にビニル系重合体又はその混合物中の不純物を系外に除去する処理であって、ビニル系重合体の物理的若しくは化学的変性物又はその混合物に対して行われる処理であってもよい。
当該精製処理としては、例えば、重合で使用される触媒残さの除去、重合等で使用される溶媒の除去、重合触媒等の不溶成分の除去、水抽出・吸着剤処理等による処理、加熱処理等が例示される。また、ハロゲン基等の除去、官能基導入等の化学的変性もその一つであり、未反応の官能基導入剤の除去や官能基導入時の副生成物の除去も含まれる。
当該精製処理を行う場合、可能な限り、前の工程において重合触媒を除去しておくことが品質上好ましい。つまり、重合反応が完了し、重合触媒が反応上不要となった時点(原子移動ラジカル重合条件下での反応完了時)から、可能な限り重合触媒を除去することが好ましい。
なお、ビニル系重合体と水とを接触させるのは、重合反応が完了し、重合触媒が反応上不要となった時点が好ましい。
また、当該ビニル系重合体は、溶媒を含まないことがより好ましい。
ここで、「溶媒」とは、水以外の溶媒で、重合溶媒や、重合溶媒除去後に新たに添加する溶媒等を示す。
重合体が溶媒を多く含んでいると、実生産上はリサイクル使用が必要な溶媒に不純物が蓄積し、溶媒の純度が低下するという問題がある。また、溶媒が水溶性である場合には、水と水溶性溶媒の分離が必要となる。また、有機相と水相の密度差が小さくなるため、有機相と水相の分離性が悪くなるという問題がある。
また、重合体と水との接触温度は、好ましくは150℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。下限は、好ましくは5℃である。
2相を混合させる駆動力を必要としない方法としては、スプレー塔、充填塔、バッフル塔、多孔板抽出塔、オリフィス塔、スタティックミキサー等のフローミキサーを用いる方法等が挙げられる。
駆動力を必要とする方法としては、脈動式充填塔、脈動式多孔板塔、振動板塔、ポドビルニアク抽出機、ルウェスタ抽出機等の遠心式抽出装置を用いる方法等が挙げられる。
駆動力として撹拌方式を用いる装置は、様々な方式があり、ミキサーセトラー抽出装置、シャイベル塔、回転円板抽出塔、オルドシュー−ラシュトン塔、ARD塔等が挙げられる。
デスクタービン型の連続遠心分離装置等を用いれば、連続的に水相と有機相を分離できる。短時間で大量の液を分離するためには、分離時の重力加速度(G)は、好ましくは3000G以上、より好ましくは5000G以上、さらに好ましくは7000G以上である。
また、分離時に混合液を冷却することにより、有機相と水相の比重差を持たせてもよい。
抽出装置としてタービン翼等を供えたバッチ式の撹拌槽を採用した場合は、静置分離によって有機相と水相を分離することが可能である。
また、ミキサーセトラー型等の連続抽出装置は、一般的に抽出操作と分離操作を同一の装置で連続的に実施することが可能である。
遠心分離等により分離された有機相からは、重合触媒が除かれた重合体が得られる。なお、重合体中に残存する金属濃度は、1000ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。
また、上記のようにして得られた重合体は微量の水を含むことがあるが、加熱等により水を蒸発させればよい。
水の添加量は、一定でもよく、操作毎に変えても構わない。
また、ミキサーセトラー型等の連続抽出装置を用いる場合には、有機相と水相の導入比率、装置内の滞留時間の調整により、装置の操作条件の範囲内で抽出効率を調整できる。
また、タービン翼等の撹拌翼の回転数や、遠心式の抽出装置の遠心力等も、抽出効率を左右する重要なパラメーターである。
また、分離された水は、重合体から副生する微量のハロゲン化物、微量の油分等を含むが、これらは活性炭カラムの通液等で処理可能である。
なお、排水中の金属含有量は低いことが好ましい。具体的には、5ppm以下が好ましく、1ppm以下がより好ましく、0.5ppm以下がさらに好ましい。
なお、下記の実施例及び比較例中、「部」は「重量部」を表す。
また、酸素窒素混合ガスの酸素濃度は、体積基準での割合である。
重合体1分子当たりの臭素基の数は、1H−NMRによる濃度分析を行い、GPCにより求まる数平均分子量により算出した。
重合体中の残存溶媒濃度は、ガスクロマトグラフィー法により算出した。
「Cu濃度」は、重合体を高温で酸処理した後、金属分を水抽出し、ICP−AES法(高周波誘導結合プラズマ−発光分光分析法)にて重合体中のCu濃度を算出した。
(アクリル酸n−ブチルの重合)
アクリル酸n−ブチルの仕込量を100部として、以下の処方で重合体を合成した。攪拌機付き反応槽にCuBr(0.84部)、アセトニトリル(8.79部)を加え、窒素雰囲気下、65℃で15分間攪拌した。これにアクリル酸n−ブチル(20.0部)、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(1.76部)を添加し、よく攪拌混合した。ペンタメチルジエチレントリアミン(0.03部;以下、単にトリアミンともいう)を添加し、重合を開始させた。70℃で加熱攪拌しながら、アクリル酸n−ブチル(80.0部)を連続的に滴下した。これらのモノマーの滴下途中に、トリアミン(0.105部)を分割添加した。
モノマー反応率が96%に達した時点で、残モノマー及びアセトニトリルを80℃で減圧回収した後、1,7−オクタジエン(21.49部)、アセトニトリル(35.17部)、トリアミン(0.34部)を添加し、引き続き80℃で加熱攪拌し、アルケニル基を有するビニル系重合体を含有する混合物を得た。
得られた混合物を80℃で加熱攪拌しながら減圧度を徐々に上げていき、減圧度が5Torrに到達した時点で3時間放置し、混合物中のアセトニトリル、未反応の1,7−オクタジエンを減圧除去し、アルケニル基を有するビニル系重合体(重合体[1])を得た。
重合体[1]中のアセトニトリル量をガスクロマトグラフィーで分析した結果、アセトニトリル量は検出限界以下であり、1,7−オクタジエンは1000ppmであった。また、重合体[1]の1部を採取し、トルエンで希釈した後、活性アルミナでろ過して分析したところ、重合体[1]の数平均分子量は24700、分子量分布は1.26であり、重合体1分子当たりに導入されたアルケニル基の数は2.0個であった。
得られた重合体[1]100部に対して、300部の純水で希釈し、3段デスクタービン翼を備えた撹拌槽で400rpmで撹拌した。100℃に加温し、2時間保持した。室温(15℃)に放冷し、1時間後に分離した水相を静置分離した。得られた水相中のCu濃度は780ppmであり、水相285部を回収した。重合体中のCu濃度は1300ppmであった。一連の処理をさらに3回行ったところ、重合体中のCu濃度は630ppmまで低下した。
(重合体の精製)
実施例1で得られた重合体[1]100部に対して、300部の純水で希釈し、3段デスクタービン翼を備えた撹拌槽で400rpmで撹拌した。20℃に温度調節し、2時間保持した。室温(15℃)に放冷し、1時間後に分離した水相を静置分離した。得られた水相中のCu濃度は880ppmであり、水相290部を回収した。重合体中のCu濃度は1000ppmであった。一連の処理をさらに3回行ったところ、重合体中のCu濃度は650ppmまで低下した。
(重合体の精製)
実施例1で得られた重合体[1]100部に対して、100部のトルエンで希釈し、ろ過助剤(ラヂオライト#900、昭和化学工業(株)製)を1.0部、吸着剤(キョーワード500SH及びキョーワード700SEN、共に協和化学(株)製)を夫々0.5部添加し、100℃で3時間加熱した。3時間の処理の1時間毎に、重合体のトルエン溶液の体積比で0.5倍量の6%酸素濃度の酸素窒素混合ガスを印加した。その後、加えたろ過助剤及び吸着剤を固液分離処理により除去したところ、6.5部の固形廃棄物を回収した。固液分離処理により得られた重合体溶液を100℃で加熱し、トルエンを減圧回収した。得られた重合体中のCu濃度は500ppmであった。固液分離によるケーキ層の形成前にろ液を回収すると、得られた重合体のCu濃度は1000ppmであった。また、減圧回収したトルエンには、1000ppmのブチルブロマイド、300ppmのブタノールが含まれていた。
Claims (9)
- 遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造されるビニル系重合体の精製方法において、ビニル系重合体を水に接触させることによりビニル系重合体中に残存する金属触媒を除去することを特徴とする精製方法。
- ビニル系重合体が含む溶媒が1重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の精製方法。
- ビニル系重合体が(メタ)アクリル系重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の精製方法。
- ビニル系重合体がハロゲン基を有するビニル系重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の精製方法。
- ビニル系重合体の数平均分子量が500〜100000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の精製方法。
- ビニル系重合体の分子量分布が1.8未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の精製方法。
- 遷移金属錯体の中心金属が、周期律表第8族、9族、10族又は11族元素である請求項1〜6のいずれか1項に記載の精製方法。
- 遷移金属錯体の中心金属が、鉄、ニッケル、ルテニウム又は銅である請求項1〜7のいずれか1項に記載の精製方法。
- 遷移金属錯体の中心金属が銅である請求項1〜8のいずれか1項に記載の精製方法。
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-
2005
- 2005-04-20 JP JP2005122264A patent/JP2006299070A/ja active Pending
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