JP2006299070A - ビニル系重合体精製方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 原子移動ラジカル重合により供給されるビニル系重合体から重合触媒を効率よく除去することができ、かつ、固形廃棄物の処理やリサイクル使用すべき有機溶媒の純度低下等の実生産における問題を有さない精製方法の提供。
【解決手段】 遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造されるビニル系重合体の精製方法において、ビニル系重合体を水に接触させることによりビニル系重合体中に残存する金属触媒を除去することを特徴とする精製方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、原子移動ラジカル重合を利用して製造されるビニル系重合体の精製方法に関する。
精密重合の一つであるリビング重合は分子量・分子量分布の制御等が可能であり、末端官能性ポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等の様々な機能性材料を製造するために利用される。リビング重合の一つである原子移動ラジカル重合は、ビニル系モノマーの選択性が広くかつ温和な条件で重合可能であることから、特に利用価値が高い。例えば原子移動ラジカル重合の一例として、有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、又は11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒とする重合系が挙げられる(例えば、非特許文献1〜4参照)。これらの重合法により製造されるビニル系重合体は、重合体末端にハロゲン基を有することを特徴とする。
ハロゲン基含有ビニル系重合体は、様々な機能性材料の製造中間体等としての利用が可能である。例えば、ハロゲン基をアルケニル基含有基に変換することでアルケニル基を有するビニル系重合体が製造される。アルケニル基含有ビニル系重合体は分子内に複数個のヒドロシリル基を有する化合物と反応させることにより架橋し、硬化物を与える。また、アルケニル基を反応性シリル基含有ヒドロシラン化合物と反応させることにより、ビニル系重合体中に反応性シリル基を導入することができる。これらの反応には、通常、白金等の金属錯体を触媒とするヒドロシリル化反応が利用される。また、ハロゲン基を(メタ)アクリロイル基等の重合性炭素−炭素二重結合を持つ基に変換することで、光ラジカル硬化や熱ラジカル硬化により硬化する樹脂や、他の重合体にグラフトさせるマクロモノマーとしての利用も可能となる。
これらのように、ハロゲン基含有ビニル系重合体は様々な機能性材料の製造中間体等としての利用が可能であるが、中間体としての用途を幅広く持つためには重合体の精製が必要である。例えば、ハロゲン基をアルケニル基に変換したビニル系重合体の利用を考える場合、ビニル系重合体中に残存する重合触媒等はヒドロシリル化反応の触媒毒として作用するため、重合体を精製することが必要となる。残存する重合触媒等はビニル系重合体を著しく着色させるという根本的な問題も抱えている。また、ハロゲン基を(メタ)アクリロイル基等の重合性炭素−炭素二重結合を持つ基に変換し、光ラジカル硬化により硬化物を得る場合には、ビニル系重合体の着色は、硬化性に影響を与えてしまう。
我々は、重合触媒等の除去及びヒドロシリル化活性を高める方法として吸着処理法を開発している(特許文献1参照)。これらの方法により、効率的に重合触媒等を除去し、ヒドロシリル化活性を高め、樹脂の着色を抑えることができる。
吸着処理法を基本として、重合触媒を効率的に除去する方法として、種々の方法が知られている。特許文献2では、固体添加物の存在下で50℃以上250℃以下に加熱する工程と、引き続き固液分離する方法により効率的に重合触媒を除去することにより、少ない固体添加量で、残存金属を数100ppmのレベルまで除去している。
特許文献3では、加熱する工程にて酸素等の酸化剤で処理する効果について述べられている。残存金属が数100ppmから数10ppmのレベルまで除去され、後の工程を経たヒドロシリル化硬化物の硬化性が向上することや、残存金属の使用する溶媒の極性について述べられている。これによると比誘電率は5以下が望ましいとあり、残存金属を貧溶媒で排除する効果が、その後の分離工程での残存金属の分離性に影響を与えているとしている。
ただし、これらの方法も重合触媒を完全に除去することができず、同様の工程を複数回減ることにより問題のない残存金属量の重合体を得ている。重合触媒を分離する方法は、遠心分離やろ過等の固液分離操作による方法が一般的である。分離された重合触媒はスラッジ状の固形廃棄物として排出される。この固形物は、除去された重合触媒に由来する金属、除去のために添加した吸着剤やろ過助剤等の固体添加物、さらにはこれらの固形廃棄物に付着する重合体や溶剤を含む。従って、この固形廃棄物は、燃焼等により付着した重合体や溶剤等の有機物を乾燥や燃焼により除去し、その後金属分を回収することが必要となる。特に金属は環境保全の考え方からも廃棄物より回収することが望ましい。有機物を除去した後の固形廃棄物を水やその他の溶剤に溶解させ、水や溶媒に溶解する金属と不溶性の固形物に分離する方法が一般的である。一方、固液分離操作において効率良く重合触媒を分離するためには、吸着剤やろ過助剤等の固体添加物を大量に使用することが必要となる。従って、精製精度よく重合体から重合触媒を分離するためには大量の固体添加物を使用しなければならず、大量の固体添加物を使用すれば固形分廃棄量が増え、金属分を回収するための処理に手間取るという問題も抱えている。
重合触媒を効率的に除去するにあたり、特許文献2に述べられているビニル系重合体溶液を加熱する処理は、重合体溶液中の重合触媒を凝集肥大させ、効率よく固液分離する処理として極めて有効である。ただし重合体溶液を加熱した際に、重合体のハロゲン末端に由来する副生物が蓄積する。ハロゲン末端由来の副生物の生成自体は問題ないが、重合体を溶解する溶媒を回収してリサイクルする場合に、溶媒の組成が変わってしまうという問題がある。溶媒の組成、特に極性は重合触媒の凝集肥大性を左右するため、溶媒をリサイクルするにつれて重合触媒の凝集肥大性が変わり、結果的に固液分離後の重合体溶液中の残存金属量が一定しないという実生産上の問題がある。従って、溶媒の純度を一定に保つための蒸留等の処理が必要となる。
以上のように、重合体から重合触媒を効率よく除去するために、溶媒に希釈した重合体溶液に、吸着剤等の固体添加物を添加し、加温等により触媒を肥大化させ、その後固液分離する処理方法は、固形廃棄物から金属を回収する新たな処理が必要となり、重合触媒の分離精度を向上させるために大量の固体添加物を使用すると、金属を回収する処理に手間取るという問題、さらには固液分離前の加温処理により、実生産上リサイクル使用が必要な有機溶媒の純度が低下してしまう問題、の2点が課題であった。
特開2001−323015号公報 特開2004−149563号公報 特開2003−327620号公報 Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614 Matyjaszewskiら、Macromolecules 1995,28,7901 Matyjaszewskiら、Science 1996,272,866 Sawamotoら、Macromolecules 1995,28,1721
本発明の目的は、原子移動ラジカル重合により供給されるビニル系重合体から重合触媒を効率よく除去する方法を提供し、かつ、この際に固形廃棄物の処理やリサイクル使用すべき有機溶媒の純度低下等の実生産における問題を有さない手段を提供することである。
本発明者らは、実生産上の問題がなく、ビニル系重合体を含有する重合体から遷移金属触媒である重合触媒を効率的に除去する方法について鋭意検討した結果、重合体を水と接触させ、重合触媒を水相に溶解させ、次いで有機相と水相を分離し、有機相から重合体を取り出す方法が、本課題を解決するに適した方法であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造されるビニル系重合体の精製方法において、ビニル系重合体を水に接触させることによりビニル系重合体中に残存する金属触媒を除去することを特徴とする精製方法に関するものである。
また、本発明では、
ビニル系重合体が含む溶媒が1重量%以下であることが好ましい。
ビニル系重合体が(メタ)アクリル系重合体であることが好ましい。
ビニル系重合体がハロゲン基を有するビニル系重合体であることが好ましい。
ビニル系重合体の数平均分子量が500〜100000であることが好ましい。
ビニル系重合体の分子量分布が1.8未満であることが好ましい。
遷移金属錯体の中心金属が、周期律表第8族、9族、10族又は11族元素であることが好ましい。
遷移金属錯体の中心金属が、鉄、ニッケル、ルテニウム又は銅であることが好ましい。
移金属錯体の中心金属が銅であることが好ましい。
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のビニル系重合体の精製方法は、遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造されるビニル系重合体の精製方法において、ビニル系重合体を水に接触させることによりビニル系重合体中に残存する金属触媒を除去することを特徴とする方法である。
まず、本発明におけるビニル系重合体について説明する。
当該ビニル系重合体としては、末端に重合性の炭素−炭素二重結合を持つ基を有するビニル系重合体が好ましい。
具体的には、一般式(I):
−OC(O)C(R)=CH (I)
(式中、Rは水素原子、又は、炭素数1〜20の有機基を表す。)
で表される基を、1分子あたり少なくとも1個、分子末端に有するビニル系重合体であることがより好ましい。
一般式(I)において、Rの具体例としては、例えば、−H、−CH、−CHCH、−(CHCH(nは2〜19の整数を表す)、−C、−CHOH、−CN等が挙げられるが、好ましくは−H、−CHである。
本発明のビニル系重合体1分子当たりの上記一般式(I)で表される基の数は、特に限定されないが、1個以上が好ましく、1.2〜4個であるのがより好ましい。1分子あたり1個未満であると、硬化性が低下し易くなる傾向がある。
原子移動ラジカル重合において用いられるビニル系モノマーとしては、特に限定されず、各種のものを用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。
これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。
なかでも、生成物の物性等から、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましい。より好ましくはアクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーであり、さらに好ましくはアクリル酸エステルモノマーであり、特に好ましくはアクリル酸ブチルである。
本発明においては、これらの好ましいモノマーを、他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40%以上含まれていることが好ましい。なお、上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を表す。
原子移動ラジカル重合を利用して製造されるビニル系重合体とは、原子移動ラジカル重合により製造されるビニル系重合体又はその変性体である。ビニル系重合体としては、既に例示したビニル系モノマーの重合体が挙げられるが、生成物の物性等から、スチレン系(共)重合体及び(メタ)アクリル酸系(共)重合体が好ましく、より好ましくはアクリル酸エステル系(共)重合体及びメタクリル酸エステル系(共)重合体であり、さらに好ましくはアクリル酸エステル系(共)重合体であり、特に好ましくはアクリル酸ブチル系(共)重合体である。
ビニル系重合体の分子量は特に限定されないが、数平均分子量として500以上100000以下が好ましく、1000以上100000以下がより好ましく、5000以上50000以下がより好ましい。
また、ビニル系重合体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、特に限定されないが、1.8未満であることが好ましく、1.05以上1.50以下がより好ましく、1.10以上1.40以下がさらに好ましい。
当該分子量及び分子量分布は、ポリスチレンゲルカラムと、移動相としてのクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定し、ポリスチレン換算で求めることができる。
次に、原子移動ラジカル重合について具体的に説明する。
本発明における原子移動ラジカル重合とは、リビングラジカル重合の一つであり、有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属を中心金属とする金属錯体を触媒として、ビニル系モノマーをラジカル重合する方法である。原子移動ラジカル重合法は、分子量、分子量分布の制御が可能であり、重合末端にハロゲン基を導入することも可能であることから、ハロゲン基含有ビニル系重合体の製造方法に最も適している。
原子移動ラジカル重合は、例えば、Matyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、7901頁,サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁、WO96/30421号公報,WO97/18247号公報、WO98/01480号公報,WO98/40415号公報、あるいはSawamotoら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁、特開平9−208616号公報、特開平8−41117号公報等が挙げられる。
この原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられる。
具体的に例示するならば、
−CHX、C−C(H)(X)CH
−C(X)(CH
(ただし、上の化学式中、Cはフェニル基、Xは塩素、臭素、又はヨウ素)
−C(H)(X)−CO
−C(CH)(X)−CO
−C(H)(X)−C(O)R、R−C(CH)(X)−C(O)R
(式中、R、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基、Xは塩素、臭素、又はヨウ素)
−C−SO
(上記の各式において、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基、Xは塩素、臭素、又はヨウ素)
等が挙げられる。
有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤としてビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を行うことにより、一般式(1)を末端に有するビニル系重合体が得られる。
−C(R)(R)(X) (1)
(式中、R及びRはビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基を示す。Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す。)
原子移動ラジカル重合の開始剤として、重合を開始する官能基とともに重合を開始しない特定の反応性官能基を併せ持つ有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を用いることもできる。このような場合、一方の主鎖末端に特定の反応性官能基を、他方の主鎖末端にハロゲン基含有構造(1)を有するビニル系重合体が得られる。
このような特定の反応性官能基としては、アルケニル基、架橋性シリル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。これらの反応性官能基の反応性を利用して、一段階又は数段階の反応を経ることにより、ビニル系重合体に他の適当な官能基を導入することができる。
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としては限定されず、例えば、一般式(2)に示す構造を有するものが例示される。
C(X)−R−R−C(R)=CH (2)
(式中、Rは水素、又はメチル基、R、Rは水素、又は、炭素数1〜20の1価のアルキル基、アリール基、又はアラルキル、又は他端において相互に連結したもの、Rは、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、又はo−,m−,p−フェニレン基、Rは直接結合、又は炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良い、Xは塩素、臭素、又はヨウ素)
置換基R、Rの具体例としては、水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。RとRは他端において連結して環状骨格を形成していてもよい。
一般式(2)で示される、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物の具体例としては、
XCHC(O)O(CHCH=CH
CC(H)(X)C(O)O(CHCH=CH
(HC)C(X)C(O)O(CHCH=CH
CHCHC(H)(X)C(O)O(CHCH=CH
Figure 2006299070
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは0〜20の整数)
XCHC(O)O(CHO(CHCH=CH
CC(H)(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH
(HC)C(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH
CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CHCH=CH
Figure 2006299070
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CH−CH=CH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−CH=CH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CH−O−(CH−CH=CH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−O−(CH−CH=CH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−O−(CHCH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−O−(CH−CH=CH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−CH=CH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CH−CH=CH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに一般式(3)で示される化合物が挙げられる。
C=C(R)−R−C(R)(X)−R10−R (3)
(式中、R、R、R、R、Xは上記に同じ、R10は、直接結合、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、又は、o−,m−,p−フェニレン基を表す)
は直接結合、又は炭素数1〜20の2価の有機基(1個以上のエーテル結合を含んでいても良い)であるが、直接結合である場合は、ハロゲンの結合している炭素にビニル基が結合しており、ハロゲン化アリル化物である。この場合は、隣接ビニル基によって炭素−ハロゲン結合が活性化されているので、R10としてC(O)O基やフェニレン基等を有する必要は必ずしもなく、直接結合であってもよい。Rが直接結合でない場合は、炭素−ハロゲン結合を活性化するために、R10としてはC(O)O基、C(O)基、フェニレン基が好ましい。
一般式(3)の化合物を具体的に例示するならば、
CH=CHCHX、
CH=C(CH)CHX、
CH=CHC(H)(X)CH、CH=C(CH)C(H)(X)CH
CH=CHC(X)(CH、CH=CHC(H)(X)C
CH=CHC(H)(X)CH(CH
CH=CHC(H)(X)C、CH=CHC(H)(X)CH
CH=CHCHC(H)(X)−COR、
CH=CH(CHC(H)(X)−COR、
CH=CH(CHC(H)(X)−COR、
CH=CH(CHC(H)(X)−COR、
CH=CHCHC(H)(X)−C
CH=CH(CHC(H)(X)−C
CH=CH(CHC(H)(X)−C
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等を挙げることができる。
アルケニル基を有するハロゲン化スルホニル化合物の具体例を挙げるならば、
o−,m−,p−CH=CH−(CH−C−SOX、
o−,m−,p−CH=CH−(CH−O−C−SOX、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、nは0〜20の整数)
等である。
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としては特に限定されず、例えば一般式(4)に示す構造を有するものが例示される。
C(X)−R−R−C(H)(R)CH−[Si(R112−b(Y)O]−Si(R123−a(Y) (4)
(式中、R、R、R、R、R、Xは上記に同じ、R11、R12は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、又は(R’)SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R11又はR12が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基又は加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,又は3を、また、bは0,1,又は2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする)
一般式(4)の化合物を具体的に例示するならば、
XCHC(O)O(CHSi(OCH
CHC(H)(X)C(O)O(CHSi(OCH
(CHC(X)C(O)O(CHSi(OCH
XCHC(O)O(CHSi(CH)(OCH
CHC(H)(X)C(O)O(CHSi(CH)(OCH
(CHC(X)C(O)O(CHSi(CH)(OCH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは0〜20の整数、)
XCHC(O)O(CHO(CHSi(OCH
CC(H)(X)C(O)O(CHO(CHSi(OCH
(HC)C(X)C(O)O(CHO(CHSi(OCH
CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CHSi(OCH
XCHC(O)O(CHO(CHSi(CH)(OCH
CC(H)(X)C(O)O(CHO(CH−Si(CH)(OCH
(HC)C(X)C(O)O(CHO(CH−Si(CH)(OCH
CHCHC(H)(X)C(O)O(CHO(CH−Si(CH)(OCH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
o,m,p−XCH−C−(CHSi(OCH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH
o,m,p−XCH−C−(CHSi(OCH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CHSi(OCH
o,m,p−XCH−C−(CH−O−(CHSi(OCH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−(CH−O−(CHSi(OCH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−(CH−O−(CHSi(OCH
o,m,p−XCH−C−O−(CHSi(OCH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CHSi(OCH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−Si(OCH
o,m,p−XCH−C−O−(CH−O−(CH−Si(OCH
o,m,p−CHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CHSi(OCH
o,m,p−CHCHC(H)(X)−C−O−(CH−O−(CHSi(OCH
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素)
等が挙げられる。
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに、一般式(5)で示される構造を有するものが例示される。
(R123−a(Y)Si−[OSi(R112−b(Y)−CH−C(H)(R)−R−C(R)(X)−R10−R (5)
(式中、R、R、R、R、R10、R11、R12、a、b、m、X、Yは上記に同じ)
このような化合物を具体的に例示するならば、
(CHO)SiCHCHC(H)(X)C
(CHO)(CH)SiCHCHC(H)(X)C
(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−COR、
(CHO)Si(CHC(H)(X)−C
(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−C
(CHO)Si(CHC(H)(X)−C
(CHO)(CH)Si(CHC(H)(X)−C
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等が挙げられる。
上記ヒドロキシル基を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
HO−(CH−OC(O)C(H)(R)(X)
(式中、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
上記アミノ基を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
N−(CH−OC(O)C(H)(R)(X)
(式中、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
上記エポキシ基を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
Figure 2006299070
(式中、Xは塩素、臭素、又はヨウ素、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数)
ハロゲン基を1分子内に2つ以上有する重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤として用いるのが好ましい。具体的に例示するならば、以下のもの等が挙げられる。
Figure 2006299070
Figure 2006299070
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては、特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、又は11族元素を中心金属とする金属錯体である。更に好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体が挙げられる。なかでも、銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等が配位子として添加される。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類が添加される。更に、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr(PBu)も、触媒として好適である。
原子移動ラジカル重合は、無溶媒でも可能であるが、各種の溶媒中で行うこともできる。溶媒の種類としては特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒等が挙げられる。これらは、単独でもよく、2種以上を併用してもよい。また、エマルジョン系もしくは超臨界流体COを媒体とする系においても重合を行うことができる。
また、限定はされないが、重合は、0〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、室温〜150℃、より好ましくは50〜120℃の範囲である。
さらに、官能基の導入方法としては、特に限定されず、様々な方法が利用される。例えば下記方法等が例示される。
(1)官能基を有するビニル系モノマーを、原子移動ラジカル重合条件下で、所定のビニル系モノマーと共重合させる方法、
(2)官能基を有するラジカル重合性の低いオレフィン化合物を、ビニル系重合体の末端ハロゲン基に原子移動ラジカル重合条件下で反応させる方法、
(3)官能基を有する特定の化合物により、ビニル系重合体の末端ハロゲン基を置換する方法、
(4)ビニル系重合体の末端ハロゲンと、一般式(6)
+−OC(O)C(R)=CH (6)
(式中、Rは水素、又は、炭素数1〜20の有機基を表す。Mはアルカリ金属、又は4級アンモニウムイオンを表す。)
で表される化合物とを反応させる方法。
次に、本発明のビニル系重合体の精製方法について、具体的に説明する。
当該精製方法においては、遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造された上記ビニル系重合体を、水に接触させることにより、ビニル系重合体中に残存する金属触媒を除去するものである。
上記のようにして重合された、末端ハロゲン基を有するビニル系重合体や、官能基が導入されたビニル系重合体は、精製する必要がある。
ここで「精製」とは、原子移動ラジカル重合後にビニル系重合体又はその混合物中の不純物を系外に除去する処理であって、ビニル系重合体の物理的若しくは化学的変性物又はその混合物に対して行われる処理であってもよい。
当該精製処理としては、例えば、重合で使用される触媒残さの除去、重合等で使用される溶媒の除去、重合触媒等の不溶成分の除去、水抽出・吸着剤処理等による処理、加熱処理等が例示される。また、ハロゲン基等の除去、官能基導入等の化学的変性もその一つであり、未反応の官能基導入剤の除去や官能基導入時の副生成物の除去も含まれる。
当該精製処理を行う場合、可能な限り、前の工程において重合触媒を除去しておくことが品質上好ましい。つまり、重合反応が完了し、重合触媒が反応上不要となった時点(原子移動ラジカル重合条件下での反応完了時)から、可能な限り重合触媒を除去することが好ましい。
本発明の精製方法の特徴は、この重合触媒の除去にあたり、ビニル系重合体(以下、単に重合体ともいう)と水とを接触させる点にあり、これにより、重合触媒を水相に溶解させ、次いで有機相と水相を分離し、有機相から重合体を取り出すものである。
なお、ビニル系重合体と水とを接触させるのは、重合反応が完了し、重合触媒が反応上不要となった時点が好ましい。
ビニル系重合体と水を接触させる際、当該ビニル系重合体が含む溶媒は、ビニル系重合体の乾燥重量を100重量%とした場合に、1重量%以下であることが好ましい。
また、当該ビニル系重合体は、溶媒を含まないことがより好ましい。
ここで、「溶媒」とは、水以外の溶媒で、重合溶媒や、重合溶媒除去後に新たに添加する溶媒等を示す。
重合体が溶媒を多く含んでいると、実生産上はリサイクル使用が必要な溶媒に不純物が蓄積し、溶媒の純度が低下するという問題がある。また、溶媒が水溶性である場合には、水と水溶性溶媒の分離が必要となる。また、有機相と水相の密度差が小さくなるため、有機相と水相の分離性が悪くなるという問題がある。
重合体と、接触させる水との重量比(水/重合体)は、分離性確保の観点から、好ましくは0.1〜100、より好ましくは1〜10、さらに好ましくは1.2〜5である。
また、重合体と水との接触温度は、好ましくは150℃以下、より好ましくは80℃以下、さらに好ましくは60℃以下である。下限は、好ましくは5℃である。
重合体と水を接触させて抽出する方法としては、様々な形式が挙げられる。
2相を混合させる駆動力を必要としない方法としては、スプレー塔、充填塔、バッフル塔、多孔板抽出塔、オリフィス塔、スタティックミキサー等のフローミキサーを用いる方法等が挙げられる。
駆動力を必要とする方法としては、脈動式充填塔、脈動式多孔板塔、振動板塔、ポドビルニアク抽出機、ルウェスタ抽出機等の遠心式抽出装置を用いる方法等が挙げられる。
駆動力として撹拌方式を用いる装置は、様々な方式があり、ミキサーセトラー抽出装置、シャイベル塔、回転円板抽出塔、オルドシュー−ラシュトン塔、ARD塔等が挙げられる。
重合体と水との分離の手段は、特に限定されない。
デスクタービン型の連続遠心分離装置等を用いれば、連続的に水相と有機相を分離できる。短時間で大量の液を分離するためには、分離時の重力加速度(G)は、好ましくは3000G以上、より好ましくは5000G以上、さらに好ましくは7000G以上である。
また、分離時に混合液を冷却することにより、有機相と水相の比重差を持たせてもよい。
抽出装置としてタービン翼等を供えたバッチ式の撹拌槽を採用した場合は、静置分離によって有機相と水相を分離することが可能である。
また、ミキサーセトラー型等の連続抽出装置は、一般的に抽出操作と分離操作を同一の装置で連続的に実施することが可能である。
遠心分離等により分離された有機相からは、重合触媒が除かれた重合体が得られる。なお、重合体中に残存する金属濃度は、1000ppm以下が好ましく、100ppm以下がより好ましい。
また、上記のようにして得られた重合体は微量の水を含むことがあるが、加熱等により水を蒸発させればよい。
バッチ式の抽出操作と分離操作を行う場合には、重合体と水とを接触させる抽出操作と、水相と有機相を分離する分離操作は何回繰り返しても構わない。一連の操作を繰り返すことにより、精製効率がより高まる。
水の添加量は、一定でもよく、操作毎に変えても構わない。
また、ミキサーセトラー型等の連続抽出装置を用いる場合には、有機相と水相の導入比率、装置内の滞留時間の調整により、装置の操作条件の範囲内で抽出効率を調整できる。
また、タービン翼等の撹拌翼の回転数や、遠心式の抽出装置の遠心力等も、抽出効率を左右する重要なパラメーターである。
有機相と水相の分離性を向上させるために、界面活性剤や消泡剤等の解乳化剤を用いてもよい。解乳化剤の機構は一様ではないが、界面活性作用による安定なエマルジョンの破壊、単分子油膜の形成や、微小固形物によるエマルジョンの破壊促進等の機構により、乳化状態を不安定化し、油と水の2相が分離した状態を作り出す。解乳化剤としては、様々な化合物が知られており、解乳化の作用により選定することができるが、重合体や水に残存した場合の影響を考慮しておく必要がある。従って、できうる限り、解乳化剤等の添加物を使用しない方法により、分離性を向上することが好ましい。
分離された水は、金属イオン等の不純物を含む。金属イオンは、酸や塩基での凝集、キレート剤等により錯体として捕集する方法、イオン化傾向のより大きい金属を使う金属置換法、電気分解による金属としての回収、抽出剤を使う溶媒抽出法等により、安全な形で回収できる。
また、分離された水は、重合体から副生する微量のハロゲン化物、微量の油分等を含むが、これらは活性炭カラムの通液等で処理可能である。
なお、排水中の金属含有量は低いことが好ましい。具体的には、5ppm以下が好ましく、1ppm以下がより好ましく、0.5ppm以下がさらに好ましい。
このように、従来の固液分離法では、重合触媒のみならず、吸着剤やろ過助剤等の固体添加物を含んだ、スラッジが大量に発生するが、本発明の水を使う分離法であれば、金属を水溶液として回収できるため、簡便にかつ環境保全上好ましい形で処理できる。
本発明の精製方法、つまりビニル系重合体と水を接触させる処理を行うことにより、原子移動ラジカル重合を利用して製造されるビニル系重合体から重合触媒をより効果的に分離することができる。また、本発明の精製方法は、面倒な処理を必要とする固形廃棄物を削減でき、リサイクル使用すべき有機溶媒の純度低下等の実生産における問題がなく、環境保全の観点からも好ましい。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではなく、本発明の範囲内において適宜変更実施可能である。
なお、下記の実施例及び比較例中、「部」は「重量部」を表す。
また、酸素窒素混合ガスの酸素濃度は、体積基準での割合である。
下記実施例中、「数平均分子量」及び「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804;昭和電工(株)製)、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。
重合体1分子当たりの臭素基の数は、H−NMRによる濃度分析を行い、GPCにより求まる数平均分子量により算出した。
重合体中の残存溶媒濃度は、ガスクロマトグラフィー法により算出した。
「Cu濃度」は、重合体を高温で酸処理した後、金属分を水抽出し、ICP−AES法(高周波誘導結合プラズマ−発光分光分析法)にて重合体中のCu濃度を算出した。
実施例1
(アクリル酸n−ブチルの重合)
アクリル酸n−ブチルの仕込量を100部として、以下の処方で重合体を合成した。攪拌機付き反応槽にCuBr(0.84部)、アセトニトリル(8.79部)を加え、窒素雰囲気下、65℃で15分間攪拌した。これにアクリル酸n−ブチル(20.0部)、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(1.76部)を添加し、よく攪拌混合した。ペンタメチルジエチレントリアミン(0.03部;以下、単にトリアミンともいう)を添加し、重合を開始させた。70℃で加熱攪拌しながら、アクリル酸n−ブチル(80.0部)を連続的に滴下した。これらのモノマーの滴下途中に、トリアミン(0.105部)を分割添加した。
(ビニル系重合体へのアルケニル基導入反応)
モノマー反応率が96%に達した時点で、残モノマー及びアセトニトリルを80℃で減圧回収した後、1,7−オクタジエン(21.49部)、アセトニトリル(35.17部)、トリアミン(0.34部)を添加し、引き続き80℃で加熱攪拌し、アルケニル基を有するビニル系重合体を含有する混合物を得た。
(重合溶媒、アルケニル基導入剤の除去)
得られた混合物を80℃で加熱攪拌しながら減圧度を徐々に上げていき、減圧度が5Torrに到達した時点で3時間放置し、混合物中のアセトニトリル、未反応の1,7−オクタジエンを減圧除去し、アルケニル基を有するビニル系重合体(重合体[1])を得た。
重合体[1]中のアセトニトリル量をガスクロマトグラフィーで分析した結果、アセトニトリル量は検出限界以下であり、1,7−オクタジエンは1000ppmであった。また、重合体[1]の1部を採取し、トルエンで希釈した後、活性アルミナでろ過して分析したところ、重合体[1]の数平均分子量は24700、分子量分布は1.26であり、重合体1分子当たりに導入されたアルケニル基の数は2.0個であった。
(重合体の精製)
得られた重合体[1]100部に対して、300部の純水で希釈し、3段デスクタービン翼を備えた撹拌槽で400rpmで撹拌した。100℃に加温し、2時間保持した。室温(15℃)に放冷し、1時間後に分離した水相を静置分離した。得られた水相中のCu濃度は780ppmであり、水相285部を回収した。重合体中のCu濃度は1300ppmであった。一連の処理をさらに3回行ったところ、重合体中のCu濃度は630ppmまで低下した。
実施例2
(重合体の精製)
実施例1で得られた重合体[1]100部に対して、300部の純水で希釈し、3段デスクタービン翼を備えた撹拌槽で400rpmで撹拌した。20℃に温度調節し、2時間保持した。室温(15℃)に放冷し、1時間後に分離した水相を静置分離した。得られた水相中のCu濃度は880ppmであり、水相290部を回収した。重合体中のCu濃度は1000ppmであった。一連の処理をさらに3回行ったところ、重合体中のCu濃度は650ppmまで低下した。
上記実施例1〜2の本発明の精製方法では、重合体[1]に元々含まれる触媒をCu濃度換算で3700ppmから600ppm程度まで低減することができた。精製の際に、新たな溶媒を必要としないため、固液分離前の処理等による溶媒の品質低下がなかった。また、面倒な処理を必要とする固形廃棄物が発生しなかった。
比較例1
(重合体の精製)
実施例1で得られた重合体[1]100部に対して、100部のトルエンで希釈し、ろ過助剤(ラヂオライト#900、昭和化学工業(株)製)を1.0部、吸着剤(キョーワード500SH及びキョーワード700SEN、共に協和化学(株)製)を夫々0.5部添加し、100℃で3時間加熱した。3時間の処理の1時間毎に、重合体のトルエン溶液の体積比で0.5倍量の6%酸素濃度の酸素窒素混合ガスを印加した。その後、加えたろ過助剤及び吸着剤を固液分離処理により除去したところ、6.5部の固形廃棄物を回収した。固液分離処理により得られた重合体溶液を100℃で加熱し、トルエンを減圧回収した。得られた重合体中のCu濃度は500ppmであった。固液分離によるケーキ層の形成前にろ液を回収すると、得られた重合体のCu濃度は1000ppmであった。また、減圧回収したトルエンには、1000ppmのブチルブロマイド、300ppmのブタノールが含まれていた。
比較例1に示すように固液分離を前提とする処理では、固液分離前の処理により、新たに加えた溶媒であるトルエンにブチルブロマイド、ブタノール等の副生物が混入していた。新たに加えた溶媒は、実生産上リサイクルが必要であるため、蒸留分離等の溶媒の精製処理を行わないと、上記副生物が蓄積してしまう。また、固液分離前の処理では溶媒の極性が低いことが好ましいが、ブタノール等は高極性であるため系の極性が上昇してしまう。さらに、当該方法では、重合体や溶媒を含んだ固形廃棄物が6.5部発生したため、付着する樹脂や溶媒成分を燃焼等により除去した後に、金属分の回収等の面倒な処理を必要とするものであった。
本発明の精製方法、つまりビニル系重合体と水を接触させる処理を行うことにより、原子移動ラジカル重合を利用して製造されるビニル系重合体から重合触媒をより効果的に分離することができる。また、本発明の精製方法は、面倒な処理を必要とする固形廃棄物を削減でき、リサイクル使用すべき有機溶媒の純度低下等の実生産における問題がなく、環境保全の観点からも好ましい。

Claims (9)

  1. 遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造されるビニル系重合体の精製方法において、ビニル系重合体を水に接触させることによりビニル系重合体中に残存する金属触媒を除去することを特徴とする精製方法。
  2. ビニル系重合体が含む溶媒が1重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の精製方法。
  3. ビニル系重合体が(メタ)アクリル系重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の精製方法。
  4. ビニル系重合体がハロゲン基を有するビニル系重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の精製方法。
  5. ビニル系重合体の数平均分子量が500〜100000であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の精製方法。
  6. ビニル系重合体の分子量分布が1.8未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の精製方法。
  7. 遷移金属錯体の中心金属が、周期律表第8族、9族、10族又は11族元素である請求項1〜6のいずれか1項に記載の精製方法。
  8. 遷移金属錯体の中心金属が、鉄、ニッケル、ルテニウム又は銅である請求項1〜7のいずれか1項に記載の精製方法。
  9. 遷移金属錯体の中心金属が銅である請求項1〜8のいずれか1項に記載の精製方法。
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