JP4418082B2 - ビニル系重合体の精製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はビニル系重合体の精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
リビング重合は分子量、分子量分布の制御だけでなく、ブロック共重合体、グラフト共重合体、スター型重合体、テレケリックポリマー等の多種多様な機能性高分子の精密合成が可能である。
【0003】
近年、ラジカル重合においてもリビング重合可能な重合系が見出されてきた。その例として有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合が挙げられる。(例えば、Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614,Macromolecules 1995,28,7901,Science 1996,272,866、あるいはSawamotoら、Macromolecules 1995,28,1721を参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、原子移動ラジカル重合で製造されるビニル系重合体には、重合触媒である遷移金属錯体が残存するため、重合体の着色、物性面への影響および環境安全性等の問題が生ずる。
【0005】
遷移金属錯体を除去する方法としてこれまでアルミナカラムクロマトグラフィーやイオン交換樹脂を用いた精製および再沈殿による精製などが行われたが、いずれも十分高純度なポリマーを与えるものではなく、また能率の良い方法とは言いがたいものである。本発明はこの課題を解決し、経済的かつ効率的なビニル系重合体の精製方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造されるビニル系重合体を精製するに際して、ビニル系重合体中に残存する金属触媒を密度の差により分離除去することを特徴とするビニル系重合体の精製方法である。密度の差により分離除去するとは、混合物中の各成分それぞれの密度が異なることを利用して、目的成分を分離除去することをいう。
【0007】
本発明に使用する、密度の差により分離除去する装置としては、遠心分離装置が好ましい。また、本発明において用いる遠心分離装置は、遠心沈降機であることが好ましい。また、本発明において用いる遠心沈降機は、分離板型であることが好ましい。
【0008】
また、本発明においては、原子移動ラジカル重合触媒である遷移金属錯体の中心金属が周期律表第8族、9族、10族、または11族元素であることが好ましい。
また、本発明においては、ビニル系重合体が(メタ)アクリル系重合体であることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明においては、遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造されるビニル系重合体の精製方法において、遠心分離装置等の、密度の差により分離する装置を用いてビニル系重合体中に残存する金属触媒を除去する。本発明における原子移動ラジカル重合とは、リビングラジカル重合の一つであり、有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属を中心金属とする金属錯体を触媒としてビニル系モノマーをラジカル重合する方法である。具体的には、例えば、Matyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、7901頁,サイエンス(Science)1996年、272巻、866頁、WO96/30421号公報,WO97/18247号公報、WO98/01480号公報,WO98/40415号公報、あるいはSawamotoら、マクロモレキュールズ(Macromolecules)1995年、28巻、1721頁、特開平9−208616号公報、特開平8−41117号公報などが挙げられる。
【0010】
本発明における原子移動ラジカル重合には、いわゆるリバース原子移動ラジカル重合も含まれる。リバース原子移動ラジカル重合とは、通常の原子移動ラジカル重合触媒がラジカルを発生させた時の高酸化状態(例えば、Cu(I)を触媒として用いた時のCu(II))に対して過酸化物等の一般的なラジカル開始剤を作用させ、その結果として原子移動ラジカル重合と同様の平衡状態を生み出す方法である(Macromolecules1999,32,2872参照)。
【0011】
原子移動ラジカル重合
まず始めに原子移動ラジカル重合について詳述する。
この原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、特に反応性の高い炭素−ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物(例えば、α位にハロゲンを有するカルボニル化合物や、ベンジル位にハロゲンを有する化合物)、あるいはハロゲン化スルホニル化合物等が開始剤として用いられる。具体的に例示するならば、
C6 H5 −CH2 X、C6 H5 −C(H)(X)CH3 、
C6 H5 −C(X)(CH3 )2
(ただし、上の各化学式中、C6 H5 はフェニル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
R3 −C(H)(X)−CO2 R4 、
R3 −C(CH3 )(X)−CO2 R4 、
R3 −C(H)(X)−C(O)R4 、R3 −C(CH3 )(X)−C(O)R4 、
(各式中、R3 、R4 はそれぞれ水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
R3 −C6 H4 −SO2 X
(式中、R3 は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
等が挙げられる。
【0012】
有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤としてビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を行うことにより、一般式(1)に示す末端構造を有するビニル系重合体が得られる。
−C(R1 )(R2 )(X) (1)
式中、R1 及びR2 はそれぞれビニル系モノマーのエチレン性不飽和基に結合した基を示す。Xは塩素、臭素又はヨウ素を示す。
【0013】
原子移動ラジカル重合の開始剤として、重合を開始する官能基とともに重合を開始しない特定の官能基を併せ持つ有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を用いることもできる。このような場合、一方の主鎖末端に特定の官能基を、他方の主鎖末端に一般式(1)に示す末端構造を有するビニル系重合体が得られる。このような特定の官能基としては、アルケニル基、架橋性シリル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられる。アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としては限定されず、例えば、一般式(2)に示す構造を有するものが例示される。
R6 R7 C(X)−R8 −R9 −C(R5 )=CH2 (2)
式中、R5 は水素、またはメチル基、R6 、R7 はそれぞれ水素、または、炭素数1〜20の1価のアルキル基、アリール基、またはアラルキル、または他端において相互に連結したもの、R8 は、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、またはo−,m−,p−フェニレン基、R9 は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基で1個以上のエーテル結合を含んでいても良く、Xは塩素、臭素、またはヨウ素をそれぞれ表す。置換基R6 、R7 の具体例としては、それぞれ水素、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。R6 とR7 は他端において連結して環状骨格を形成していてもよい。
【0014】
一般式(2)で示される、アルケニル基を有する有機ハロゲン化物の具体例としては、
XCH2 C(O)O(CH2 )n CH=CH2 、
H3 CC(H)(X)C(O)O(CH2 )n CH=CH2 、
(H3 C)2 C(X)C(O)O(CH2 )n CH=CH2 、
CH3 CH2 C(H)(X)C(O)O(CH2 )n CH=CH2 、
【0015】
【化1】
【0016】
上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数をそれぞれ表す。
XCH2 C(O)O(CH2 )n O(CH2 )m CH=CH2 、
H3 CC(H)(X)C(O)O(CH2 )n O(CH2 )m CH=CH2 、
(H3 C)2 C(X)C(O)O(CH2 )n O(CH2 )m CH=CH2 、
CH3 CH2 C(H)(X)C(O)O(CH2 )n O(CH2 )m CH=CH2 、
【0017】
【化2】
【0018】
上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数をそれぞれ表す。
o,m,p−XCH2 −C6 H4 −(CH2 )n −CH=CH2 、
o,m,p−CH3 C(H)(X)−C6 H4 −(CH2 )n −CH=CH2 、
o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C6 H4 −(CH2 )n −CH=CH2 、
上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数をそれぞれ表す。
o,m,p−XCH2 −C6 H4 −(CH2 )n −O−(CH2 )m −CH=CH2 、
o,m,p−CH3 C(H)(X)−C6 H4 −(CH2 )n −O−(CH2 )m −CH=CH2 、
o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C6 H4 −(CH2 )n −O−(CH2 )m CH=CH2 、
上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数をそれぞれ表す。
o,m,p−XCH2 −C6 H4 −O−(CH2 )n −CH=CH2 、
o,m,p−CH3 C(H)(X)−C6 H4 −O−(CH2 )n −CH=CH2 、
o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C6 H4 −O−(CH2 )n −CH=CH2 、
上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数をそれぞれ表す。
o,m,p−XCH2 −C6 H4 −O−(CH2 )n −O−(CH2 )m −CH=CH2 、
o,m,p−CH3 C(H)(X)−C6 H4 −O−(CH2 )n −O−(CH2 )m −CH=CH2 、
o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C6 H4 −O−(CH2 )n −O−(CH2 )m −CH=CH2 、
上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数をそれぞれ表す。
【0019】
アルケニル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに一般式(3)で示される化合物が挙げられる。
H2 C=C(R5 )−R9 −C(R6 )(X)−R10−R7 (3)
式中、R5 、R6 、R7 、R9 、Xはそれぞれ上記に同じ。R10は、直接結合、−C(O)O−(エステル基)、−C(O)−(ケト基)、または、o−,m−,p−フェニレン基を表す。
R9 は直接結合、または炭素数1〜20の2価の有機基(1個以上のエーテル結合を含んでいても良い)であるが、直接結合である場合は、ハロゲンの結合している炭素にビニル基が結合しており、ハロゲン化アリル化物である。この場合は、隣接ビニル基によって炭素−ハロゲン結合が活性化されているので、R10としてC(O)O基やフェニレン基等を有する必要は必ずしもなく、直接結合であってもよい。R9 が直接結合でない場合は、炭素−ハロゲン結合を活性化するために、R10としてはC(O)O基、C(O)基、フェニレン基が好ましい。
【0020】
一般式(3)の化合物を具体的に例示するならば、
CH2 =CHCH2 X、
CH2 =C(CH3 )CH2 X、
CH2 =CHC(H)(X)CH3 、CH2 =C(CH3 )C(H)(X)CH3 、
CH2 =CHC(X)(CH3 )2 、CH2 =CHC(H)(X)C2 H5 、
CH2 =CHC(H)(X)CH(CH3 )2 、
CH2 =CHC(H)(X)C6 H5 、CH2 =CHC(H)(X)CH2 C6 H5 、
CH2 =CHCH2 C(H)(X)−CO2 R、
CH2 =CH(CH2 )2 C(H)(X)−CO2 R、
CH2 =CH(CH2 )3 C(H)(X)−CO2 R、
CH2 =CH(CH2 )8 C(H)(X)−CO2 R、
CH2 =CHCH2 C(H)(X)−C6 H5 、
CH2 =CH(CH2 )2 C(H)(X)−C6 H5 、
CH2 =CH(CH2 )3 C(H)(X)−C6 H5 、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等を挙げることができる。
【0021】
アルケニル基を有するハロゲン化スルホニル化合物の具体例を挙げるならば、
o−,m−,p−CH2 =CH−(CH2 )n −C6 H4 −SO2 X、
o−,m−,p−CH2 =CH−(CH2 )n −O−C6 H4 −SO2 X、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、nは0〜20の整数)等である。
【0022】
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としては特に限定されず、例えば一般式(4)に示す構造を有するものが例示される。
R6 R7 C(X)−R8 −R9 −C(H)(R5 )CH2 −[Si(R11)2-b (Y)b O]m −Si(R12)3-a (Y)a (4)
式中、R5 、R6 、R7 、R8 、R9 、Xはそれぞれ上記に同じ。R11、R12は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、または(R’)3 SiO−(R’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であって、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R11またはR12が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。Yは水酸基または加水分解性基を示し、Yが2個以上存在するときそれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0,1,2,または3を、また、bは0,1,または2を示す。mは0〜19の整数である。ただし、a+mb≧1であることを満足するものとする。
【0023】
一般式(4)の化合物を具体的に例示するならば、
XCH2 C(O)O(CH2 )n Si(OCH3 )3 、
CH3 C(H)(X)C(O)O(CH2 )n Si(OCH3 )3 、
(CH3 )2 C(X)C(O)O(CH2 )n Si(OCH3 )3 、
XCH2 C(O)O(CH2 )n Si(CH3 )(OCH3 )2 、
CH3 C(H)(X)C(O)O(CH2 )n Si(CH3 )(OCH3 )2 、
(CH3 )2 C(X)C(O)O(CH2 )n Si(CH3 )(OCH3 )2 、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは0〜20の整数、)
XCH2 C(O)O(CH2 )n O(CH2 )m Si(OCH3 )3 、
H3 CC(H)(X)C(O)O(CH2 )n O(CH2 )m Si(OCH3 )3 、
(H3 C)2 C(X)C(O)O(CH2 )n O(CH2 )m Si(OCH3 )3 、
CH3 CH2 C(H)(X)C(O)O(CH2 )n O(CH2 )m Si(OCH3 )3 、
XCH2 C(O)O(CH2 )n O(CH2 )m Si(CH3 )(OCH3 )2 、
H3 CC(H)(X)C(O)O(CH2 )n O(CH2 )m −Si(CH3 )(OCH3 )2 、
(H3 C)2 C(X)C(O)O(CH2 )n O(CH2 )m −Si(CH3 )(OCH3 )2 、
CH3 CH2 C(H)(X)C(O)O(CH2 )n O(CH2 )m −Si(CH3 )(OCH3 )2 、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、ヨウ素、nは1〜20の整数、mは0〜20の整数)
【0024】
o,m,p−XCH2 −C6 H4 −(CH2 )2 Si(OCH3 )3 、
o,m,p−CH3 C(H)(X)−C6 H4 −(CH2 )2 Si(OCH3 )3 、
o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C6 H4 −(CH2 )2 Si(OCH3 )3 、
o,m,p−XCH2 −C6 H4 −(CH2 )3 Si(OCH3 )3 、
o,m,p−CH3 C(H)(X)−C6 H4 −(CH2 )3 Si(OCH3 )3 、
o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C6 H4 −(CH2 )3 Si(OCH3 )3 、
o,m,p−XCH2 −C6 H4 −(CH2 )2 −O−(CH2 )3 Si(OCH3 )3 、
o,m,p−CH3 C(H)(X)−C6 H4 −(CH2 )2 −O−(CH2 )3 Si(OCH3 )3 、
o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C6 H4 −(CH2 )2 −O−(CH2 )3 Si(OCH3 )3 、
o,m,p−XCH2 −C6 H4 −O−(CH2 )3 Si(OCH3 )3 、
o,m,p−CH3 C(H)(X)−C6 H4 −O−(CH2 )3 Si(OCH3 )3 、
o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C6 H4 −O−(CH2 )3 −Si(OCH3 )3 、
o,m,p−XCH2 −C6 H4 −O−(CH2 )2 −O−(CH2 )3 −Si(OCH3 )3 、
o,m,p−CH3 C(H)(X)−C6 H4 −O−(CH2 )2 −O−(CH2 )3 Si(OCH3 )3 、
o,m,p−CH3 CH2 C(H)(X)−C6 H4 −O−(CH2 )2 −O−(CH2 )3 Si(OCH3 )3 、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素)
等が挙げられる。
【0025】
上記架橋性シリル基を有する有機ハロゲン化物としてはさらに、一般式(5)で示される構造を有するものが例示される。
(R12)3-a (Y)a Si−[OSi(R11)2-b (Y)b ]m −CH2 −C(H)(R5 )−R9 −C(R6 )(X)−R10−R7 (5)
式中、R5 、R6 、R7 、R9 、R10、R11、R12、a、b、m、X、Yはそれぞれ上記に同じである。
このような化合物を具体的に例示するならば、
(CH3 O)3 SiCH2 CH2 C(H)(X)C6 H5 、
(CH3 O)2 (CH3 )SiCH2 CH2 C(H)(X)C6 H5 、
(CH3 O)3 Si(CH2 )2 C(H)(X)−CO2 R、
(CH3 O)2 (CH3 )Si(CH2 )2 C(H)(X)−CO2 R、
(CH3 O)3 Si(CH2 )3 C(H)(X)−CO2 R、
(CH3 O)2 (CH3 )Si(CH2 )3 C(H)(X)−CO2 R、
(CH3 O)3 Si(CH2 )4 C(H)(X)−CO2 R、
(CH3 O)2 (CH3 )Si(CH2 )4 C(H)(X)−CO2 R、
(CH3 O)3 Si(CH2 )9 C(H)(X)−CO2 R、
(CH3 O)2 (CH3 )Si(CH2 )9 C(H)(X)−CO2 R、
(CH3 O)3 Si(CH2 )3 C(H)(X)−C6 H5 、
(CH3 O)2 (CH3 )Si(CH2 )3 C(H)(X)−C6 H5 、
(CH3 O)3 Si(CH2 )4 C(H)(X)−C6 H5 、
(CH3 O)2 (CH3 )Si(CH2 )4 C(H)(X)−C6 H5 、
(上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基)
等が挙げられる。
【0026】
上記ヒドロキシル基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
HO−(CH2 )n −OC(O)C(H)(R)(X)
式中、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数を表す。
【0027】
上記アミノ基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
H2 N−(CH2 )n −OC(O)C(H)(R)(X)
式中、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数を表す。
【0028】
上記エポキシ基を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物としては特に限定されず、下記のようなものが例示される。
【0029】
【化3】
【0030】
上記の各式において、Xは塩素、臭素、またはヨウ素、Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、nは1〜20の整数をそれぞれ表す。
【0031】
本発明の末端構造を1分子内に2つ以上有する重合体を得るためには、2つ以上の開始点を持つ有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物が開始剤として用いるのが好ましい。具体的に例示するならば、
【0032】
【化4】
【0033】
【化5】
【0034】
等があげられる。
【0035】
本発明においては、原子移動ラジカル重合の触媒は、有機溶媒に溶けないもの、すなわち、不均一触媒であることが好ましい。重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体である。更に好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体が挙げられる。なかでも、銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル若しくはその誘導体、1,10−フェナントロリン若しくはその誘導体、又はテトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン若しくはヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等が配位子として添加される。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl2 (PPh3 )3 )も触媒として好適である。
【0036】
ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類が添加される。更に、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl2 (PPh3 )2 )、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl2 (PPh3 )2 )、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr2 (PBu3 )2 )も、触媒として好適である。
【0037】
この重合において用いられるビニル系モノマーとしては特に制約はなく、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。なかでも、生成物の物性等から、スチレン系モノマー及び(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーであり、特に好ましくはアクリル酸エステルモノマーであり、更に好ましくは、アクリル酸ブチルである。本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、更にはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40%含まれていることが好ましい。なお上記表現形式で例えば(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/あるいはメタクリル酸を表す。
【0038】
重合反応は、無溶媒でも可能であるが、各種の溶媒中で行うこともできる。溶媒の種類としては特に限定されず、例えば、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等のアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒等が挙げられる。これらは、単独でもよく、2種以上を併用してもよい。また、エマルジョン系もしくは超臨界流体CO2 を媒体とする系においても重合を行うことができる。
【0039】
限定はされないが、重合は、0〜200℃の範囲で行うことができ、好ましくは、室温〜150℃の範囲である。
【0040】
ビニル系重合体について
本発明のビニル系重合体の主鎖を構成するビニル系モノマーとしては特に限定されず、既に例示されたものを用いることができる。
【0041】
本発明のビニル系重合体の分子量分布、すなわち、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量と数平均分子量の比は、特に限定されないが、好ましくは1.8未満であり、好ましくは1.7以下であり、より好ましくは1.6以下であり、さらに好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。本発明でのGPC測定においては、通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにておこない、数平均分子量等はポリスチレン換算で求めることができる。
【0042】
本発明のビニル系重合体の数平均分子量は特に制限はないが、500〜1,000,000の範囲が好ましく、1000〜100,000がさらに好ましい。分子量が低くなりすぎると、ビニル系重合体の本来の特性が発現されにくく、また、逆に高くなりすぎると、取扱いが困難になる。
【0043】
遠心沈降機を用いた遷移金属錯体の除去について
本発明は、遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの上述の原子移動ラジカル重合を利用して製造されるビニル系重合体の精製方法において、主として遠心分離装置を用いてビニル系重合体中に残存する金属触媒を除去する精製方法を提供するものである。
【0044】
遠心分離とは、重力の代わりに遠心力を利用して行う分離操作であり、遠心力が重力と異なり人為的に大きくすることができるため、重力場におけるよりも非常に短い時間で分離を行うことができる。遠心分離装置のうち、遠心沈降機は原液の比重差を利用して分離するものであり、遠心濾過機はスクリーン、濾布を利用して分離するものである。固液の懸濁液中の固体と液体との比重関係については、固体の比重が液体の比重を上回る場合は遠心沈降機の方がより望ましく、固体の比重が液体の比重と比べて同等あるいはそれ以下の場合は遠心濾過機の方が望ましい。
【0045】
本発明においては、遠心沈降機、遠心濾過機のいずれも使用可能である。しかしながら、除去すべき遷移金属錯体と精製すべきビニル系重合体との比重差が大きく、遷移金属錯体の比重が十分大きい場合には、遠心沈降機の使用が望ましい。
【0046】
遠心沈降機はいずれも穴のないボウルをもつが、固体の排出方法によって、幾つかの型に分けられる。遠心沈降機内で、固体はボウル壁面上に沈降し、清澄液は給液口と反対側に設けられたせきを越えて排出される。遠心沈降機としては、円筒型、スキミング型、分離板型、スクリューデカンター型がある。スキミング型は一般に低速回転のものであるので、比較的沈降性がよく、分離固体がスキミングチューブで取り出せるかナイフで掻き取れるかの状態であることが必要である。デカンター型は沈降固体粒子を連続的に外部に排出する機構を持っており、一般に密度差が大きく、固体粒子濃度の比較的高い場合に用いられる。円筒型は竪軸、高速回転の円筒ボウルを上部より吊り下げ、原液の供給は下部より、固体はボウル内に蓄積し、分離液は上部より排出、ケーシングによって区分され、それぞれ取り出される仕組みのものであり、固体比重が液体の比重より大きいこと、固体の含有量が少ないことが必要で、通常は固体含有量1%以下が実用範囲とされている。分離板型は、通称ドラバル型といって、回転体内に多数の傘状をした分離板を重ねあわせ、分離板間の小さな間隙部分で沈降分離を行うものである。遠心沈降面積は円筒型などより大きく、構造は複雑なため回転数4000〜10000rpm程度である。
【0047】
本発明で使用される遠心沈降機は限定はされないが、分離板型遠心機であることが好ましい。一般的な分離板型遠心沈降機について以下に説明するが、これに限定されるものではない。分離板型遠心沈降機の発生する加速度は最大15000G程度であり、固体は濃厚スラリとして排出される。この型のボウルは、50〜150の円錐状の薄い分離板によって構成されている。各々の分離板の間には、2mm厚のスペーサが設けられており、この間隙を原液が通過する。固体はこの分離板上に沈降し、板の端の方向に移動してボウル壁面上に沈積する。清澄液はボウルの中心に集まり、底部あるいは頂部のせきから越流する。分離板型の特長として、回転体の中に傘状の分離板を多数挿入して、いわゆる薄層分離を行い分離効率を上げている、という点が挙げられる。原液は、回転体の中心軸の上部に設けられた供給口よりボウル内に供給され、分配器により原液を回転と等速にして、分離板のある内部に供給される。傘状分離板は僅少な間隔で積み重ねられ、各分離板には数個の孔があって、それぞれの孔は同一位置にセットされ、1つの導通管を形成している。原液はこの導通管を通ってボウルの下部より上部に流動するが、その間に重液及び固体は分離板の内側に近く、軽液は分離板の外側に近く、相互に外周方向と内周方向に分離されて、それぞれ頭部に設けられた排出口よりケーシングに排出される。分離板型遠心沈降機としては、ディスク型、ノズル型、セルフクリーニング型の3形式に分けられる。本発明で使用される分離板型遠心沈降機はセルフクリーニング型であることが好ましいが、これに限定されるわけではない。セルフクリーニング型遠心沈降機は、分離した固体を自動的に排出するもので、一般には外部より作動水を供給してボウルを軸方向に移動させ蓄積した固体を排出させるものが多い。固体の排出には運転状態で行うことも、給液を止めて行うこともできる。
【0048】
重合体又は重合体溶液をそのまま遠心沈降機による精製操作に用いることも可能ではあるが、重合体の粘度が高い場合は沈降しにくくなるため、重合体又は重合体溶液を希釈することが好ましい。希釈する溶媒としては特に限定されないが、遷移金属触媒を溶解させる高極性溶媒は不適であり、好ましくは25℃における比誘電率が7以下のものであり、より好ましくは5以下のものであり、更に好ましくは3以下のものである。溶媒を用いて重合体又は重合体溶液を希釈し、遠心沈降機を用いて遷移金属錯体触媒を除去することにより、目的とする清澄な重合体溶液を得る。
【0049】
【実施例】
以下に、具体的な実施例を示すが、本発明の精製方法は、下記実施例に限定されるものではない。
【0050】
(製造例1)
還流管および攪拌機付きの10Lのセパラブルフラスコに、CuBr(50.4g、0.35mol)を仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル(670mL)を加え、オイルバス中70℃で30分間攪拌した。これにアクリル酸ブチル(1.20kg)、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(105g、0.29mol)、ペンタメチルジエチレントリアミン(2.44mL、11.7mmol)(これ以降トリアミンと表す)を加え、反応を開始した。70℃で加熱攪拌しながら、アクリル酸ブチル(4.80kg)を連続的に滴下した。アクリル酸ブチルの滴下途中にトリアミン(9.8mL、47mmol)を追加した。引き続き70℃で加熱攪拌後、1,7−オクタジエン(1.73L)、トリアミン(18.3mL、88mmol)を添加し、さらに70℃で4時間加熱攪拌を続けることにより、重合体を含有する反応混合物(重合反応混合物[1])を得た。
重合体はGPC測定(ポリスチレン換算)により数平均分子量は25700、分子量分布は1.30であり、重合体1分子当たりに導入された平均のアルケニル基の数を1 H NMR分析により求めたところ、2.6個であった。
【0051】
(実施例1)
製造例1で得られた反応混合物(1)を重合体濃度が38重量%となるようにトルエンで希釈した。希釈混合物を遠心沈降管に流し込み、遠心沈降機を用いて固形分を沈降させた。最大回転半径17cm、回転数2000rpm、回転時間1分間とした。
上澄み液を濃縮し、重合体を得た。重合体に超高純度硝酸、超高純度硫酸を混合し、マイクロウェーブ分解した。ICP質量分析装置(横河アナリティカルシステムズ(株)製HP−4500)を用いて分解物中の残存銅量を測定し、重合体中に残存する銅量を定量した。結果を表1に示す。
【0052】
(実施例2〜7)
実施例1において回転数を変える以外は同様の操作を行い、得られた重合体に対して残存銅量を求めた。回転数及び残存銅量の結果を併せて表1に示す。
【0053】
(実施例8)
製造例1で得られた反応混合物(1)の揮発分を減圧留去し、濃縮した後、重合体濃度が38重量%となるようにトルエンで希釈した。 希釈混合物を遠心沈降管に流し込み、遠心沈降機を用いて固形分を沈降させた。最大回転半径17cm、回転数2000rpm、回転時間1分間とした。
上澄み液を濃縮し、重合体を得た。得られた重合体に対して実施例1と同様に残存銅量を求めた。結果を表1に示す。
【0054】
(実施例9〜14)
実施例8において回転数を変える以外は同様の操作を行い、得られた重合体に対して残存銅量を求めた。回転数及び残存銅量の結果を併せて表1に示す。
【0055】
(製造例2)
還流管および攪拌機付きの10Lのセパラブルフラスコに、CuBr(50.4g、0.35mol)を仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル(670mL)を加え、オイルバス中70℃で30分間攪拌した。これにアクリル酸ブチル(1.20kg)、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル(105g、0.29mol)、ペンタメチルジエチレントリアミン(2.44mL、11.7mmol)(これ以降トリアミンと表す)を加え、反応を開始した。70℃で加熱攪拌しながら、アクリル酸ブチル(4.80kg)を連続的に滴下した。アクリル酸ブチルの滴下途中にトリアミン(9.8mL、47mmol)を追加した。引き続き70℃で加熱攪拌後、1,7−オクタジエン(1.73L)、トリアミン(18.3mL、88mmol)を添加し、さらに70℃で4時間加熱攪拌を続けることにより、重合体を含有する反応混合物(重合反応混合物[2])を得た。
重合体はGPC測定(ポリスチレン換算)により数平均分子量は26600、分子量分布は1.27であり、重合体1分子当たりに導入された平均のアルケニル基の数を1 H NMR分析により求めたところ、2.7個であった。
【0056】
(実施例15)
製造例2で得られた重合反応混合物(2)を重量で3倍量のトルエンで希釈し、分離板型遠心沈降機(LAPX202、アルファラバル(株)製)を用いて固形分を分離除去した。回転数10000rpm(最大G値8200G)とした。液相を濃縮し、重合体を得た。実施例1と同様にして残存銅量を求めたところ、260ppmであった。精製前の重合体中の含有銅量が3600ppmであったことから、本発明により重合体中に残存する銅錯体のうち93%を除去することに成功した。この値は、一連の遠心分離機を用いた精製の場合と同様の値である。
【0057】
(実施例16)
製造例2で得られた重合反応混合物(2)を重量で2倍量のトルエンで希釈し、遠心濾過機(山陽理化学機械(株)製、濾紙;アドバンテック(株)製定性濾紙No. 131、プリコートに用いたセライト;昭和化学(株)製ラヂオライト#700)を用いて固形分を分離除去した。回転数5000rpmとした。液相を濃縮し、重合体を得た。実施例1と同様にして残存銅量を求めたところ、240ppmであった。
【0058】
【表1】
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、原子移動ラジカル重合により製造されたビニル系重合体について遠心分離装置を用いて精製することにより、残存金属触媒を除去することができる。特に遠心沈降機を使用することにより短い処理時間でも効果的に残存金属触媒量の低減が可能である。
Claims (12)
- 遷移金属錯体を重合触媒とするビニル系モノマーの原子移動ラジカル重合を利用して製造されるビニル系重合体を精製するに際して、ビニル系重合体中に残存する金属触媒を密度の差により分離除去することを特徴とするビニル系重合体の精製方法であって、
密度の差による分離除去を、分離板型遠心沈降機により行うビニル系重合体の精製方法。 - ビニル系重合体は、溶媒によって希釈されたものである請求項1記載の精製方法。
- 希釈に用いる溶媒の25℃における比誘電率の値が7以下である請求項2記載の精製方法。
- 原子移動ラジカル重合の触媒が不均一触媒である請求項1記載の精製方法。
- 遷移金属錯体の中心金属が周期律表第8族、9族、10族、または11族元素である請求項4記載の精製方法。
- 遷移金属錯体の中心金属が鉄、ニッケル、ルテニウム又は銅である請求項5記載の精製方法。
- 遷移金属錯体の中心金属が銅である請求項6記載の精製方法。
- 原子移動ラジカル重合の触媒配位子としてポリアミン化合物を用いる請求項1記載の精製方法。
- ポリアミン化合物としてトリアミン化合物を用いる請求項8記載の精製方法。
- ビニル系重合体が(メタ)アクリル系重合体である請求項1記載の精製方法。
- ビニル系重合体がアクリル酸エステル系重合体である請求項10記載の精製方法。
- ビニル系重合体がアクリル酸ブチル系重合体である請求項11記載の精製方法。
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