JP4003452B2 - ブロック共重合体の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブロック共重合体の製造方法に関し、詳しくは、リビングラジカル重合法を利用したブロック共重合体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来リビングラジカル重合法には次の3つの方法が研究されている。
【0003】
(1)先ず、ラジカル開始剤または共有結合化学種から成長ラジカルを生成する。次いで、成長ラジカルと補足ラジカルとがモノマーを取り込みながら反応して共有結合化学種を生成する疑似停止反応と、共有結合化学種から補足ラジカルが解離して再び成長ラジカルを生成する反応とが、可逆的に生じて重合が進行する。
【0004】
(2)先ず、低原子価状態の金属化学種が共有結合化学種から酸化的に原子を引き抜き成長ラジカルと高原子価状態の金属化学種が生成する。次いで、成長ラジカルと高原子価状態の金属化学種とがモノマーを取り込みながら反応して低原子価状態の金属化学種を生成する疑似停止反応と、低原子価状態の金属化学種から高原子価状態の金属化学種が解離して再び成長ラジカルを生成する反応とが、可逆的に生じて重合が進行する。
【0005】
(3)先ず、ラジカル開始剤から成長ラジカルを生成する。次いで、成長ラジカルと連鎖移動剤とがモノマーを取り込みながら反応して連鎖移動ラジカルが生成する疑似停止反応と、連鎖移動ラジカルと連鎖移動化学種とが反応してラジカルが移動する反応と、連鎖移動ラジカルとモノマーとが反応して再び連鎖移動ラジカルを生成する疑似停止反応との3つの反応が、同時に生じて重合が進行する。
【0006】
このうち、第(2)の方法に分類される原子移動型ラジカル重合法は、次の様な図式で表される。
【0007】
【化1】
Figure 0004003452
【0008】
上記において、Pはポリマー鎖、(M)は遷移金属、Xはハロゲン、YおよびLは(M)に配位可能な配位子、nおよびn+1は遷移金属の原子価であり、低原子価錯体(1)と高原子価錯体(2)とはレドックス共役系を構成する。
【0009】
最初に、低原子価錯体(1)がハロゲンを含有する重合開始剤P−Xからハロゲン原子Xをラジカル的に引き抜いて、高原子価錯体(2)及び炭素中心ラジカルP・を形成する(この反応の速度はKactで表される)。このラジカルP・は、図示の様にモノマーと反応して同種の中間体ラジカル種P・を形成する(この反応の速度はKpropagationで表される)。高原子価錯体(2)とラジカルP・との間の反応は、生成物P−Xを生ずると同時に、低原子価錯体(1)を再生する(この反応の速度はKdeactで表される)。そして、低原子価錯体(1)はP−Xと更に反応して新たな反応を進行させる。本反応においては、成長ラジカル種P・の濃度を低く抑制することが重合を制御することにおいて最も重要である。
【0010】
上記の原子移動型ラジカル重合法の具体例としては、次の様な報告がある。
【0011】
(1)CuCl/ビピリジル錯体の存在下、α−クロロエチルベンゼンを開始剤としたスチレンの重合(J.Wang and K.Matyjaszewski, J.Am.Chem.Soc.,117,5614(1995)
【0012】
(2)RuCl2(PPh33、有機アルミ化合物の存在下でのCCl4を開始剤とするメタクリル酸メチルの重合(M.Kato,M.Kamigaito,M.Sawamoto,T.Higashimura,Macromolecules,28,1821(1995))
【0013】
その後、配位子、金属種、重合開始剤などの設計が行われ、原子移動型ラジカル重合法は、アクリレートモノマーを含めて多種のモノマー種への展開が計られてきた。
【0014】
ところで、ブロック共重合体の製造に原子移動型ラジカル重合法を適用せんとした場合、使用するモノマー種によってはブロック化が困難な場合がある。これは開始剤末端におけるハロゲン原子の引き抜かれ易さと、次に付加したモノマーの末端に結合したハロゲンの引き抜かれ易さ、すなわち1式におけるkactの差によるものと説明される。特に、第1ブロック鎖がアクリレート系モノマーで形成さた場合、アクリレート末端からのハロゲンの引き抜きが遅いために、次のメタクリレート系モノマーによる第2ブロック鎖の生成(ブロック化)が困難でありる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、原子移動型ラジカル重合法によるブロック共重合体の製造方法であって、アクリレート系モノマーによる第1ブロック鎖にメタクリレート系モノマーによる第2ブロック鎖を生成させて成り且つ分子量が狭分布であるブロック共重合体の製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、先ず、特定の重合開始剤およびレドックス触媒の存在下でアクリレート系モノマーを重合して第一ブロック鎖を得、次いで、メタクリレート系モノマーを1種以上を含むラジカル重合性モノマーを重合して第二ブロック鎖を得るが、当該第二ブロック鎖の重合開始時におけるレドックス触媒の低原子価金属(M)n(ただし、nは整数)と高原子価金属(M)n+1とのモル比(M)n/(M)n+1を特定の範囲に調節するならば、制御されたブロック重合体が効率よく得られて上記の目的を達成し得るとの知見を得た。
【0018】
発明の要旨は、少なくとも以下の第1ブロック鎖形成工程(i)及び第2ブロック鎖形成工程(ii)を順次に含むことを特徴とするブロック共重合体の製造方法に存する。
【0019】
<第1ブロック鎖形成工程(i)>
重合開始剤として、臭素原子またはヨウ素原子を含む有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を使用し、周期表7族〜11族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属(M)が中心金属であり且つ配位子に少なくともハロゲン原子を含む金属錯体から成るレドックス触媒であって、当該ハロゲン原子が臭素原子またはヨウ素原子である触媒の存在下、アクリレート系モノマーを重合させる。
【0020】
<第2ブロック鎖形成工程(ii)>
周期表7族〜11族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属(M)が中心金属であり且つ配位子に少なくともハロゲン原子を含む金属錯体から成るレドックス触媒であって、当該ハロゲン原子が塩素原子またはフッ素原子であり、第2ブロック鎖の重合開始時における当該レドックス触媒の低原子価金属(M)n(ただし、nは整数)と高原子価金属(M)n+1のモル比(M)n/(M)n+1が90/10〜0.1/99.9の範囲内であるレドックス触媒の存在下、メタクリレート系モノマーを重合させる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の製造方法で利用される原子移動型ラジカル重合は、概念的には前述の図式(化1)で表される。
【0022】
本発明の製造方法は、第1ブロック鎖形成工程(i)および第2ブロック鎖形成工程(ii)を順次に含む。
【0023】
<第1ブロック鎖形成工程(i)>
本工程では、重合開始剤として、臭素原子またはヨウ素原子を含む有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を使用し、周期表7族〜11族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属(M)が中心金属であり且つ配位子に少なくともハロゲン原子を含む金属錯体から成るレドックス触媒であって、当該ハロゲン原子が臭素原子またはヨウ素原子である触媒の存在下、アクリレート系モノマーを重合させる。
【0024】
(a1)重合溶媒:
第1ブロック鎖形成工程(i)のラジカル重合は無溶媒または各種の溶媒中で行うことが出来る。必要に応じて使用する重合溶媒としては、例えば、水;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のエステル化合物またはカーボネート化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソアミルアルコール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等ハロゲン化炭化水素類が挙げられる。重合溶媒の使用量は、特に限定されないが、モノマー仕込み量100重量部に対し、通常0.1〜5000重量部、好ましくは1〜2000重量部、更に好ましくは10〜1000重量部である。
【0025】
(a2)重合開始剤:
第1ブロック鎖形成工程(i)に使用する重合開始剤は、臭素原子またはヨウ素原子を含む有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物である。斯かる化合物としては、重合の開始点(重合開始末端または開始末端ということもある)となる臭素原子またはヨウ素原子を少なくとも1つ有する化合物であれば特に制限はないが、通常、開始点となる臭素原子またはヨウ素原子を1つ又は2つ有する化合物であり、以下の一般式(1)〜(19)で表される化合物が好ましい。但し、一般式(1)〜(19)において、C65はフェニル基、C64はフェニレン基、R1およびR2は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基またはアラルキル基であり、それぞれの炭素原子上にアルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基、アルキルチオ基などの官能基を有していてもよく、また、同一もしくは異なっていてもよい。Xは、塩素、臭素またはヨウ素、nは0〜20の整数である。
【0026】
<開始点が1つの重合開始剤>
(1)C65−CH2
(2)C65C(H)(X)CH3
(3)C65−C(X)(CH32
(4)R1−C(H)(X)−CO22
(5)R1−C(CH3)(X)−CO22
(6)R1−C(H)(X)−C(O)R2
(7)R1−C(CH3)(X)−C(O)R2
(8)R1−C64−SO2
【0027】
<開始点が2つの重合開始剤>
(9)o−、m−、p−XCH2−C64−CH2
(10)o−、m−、p−CH3C(H)(X)−C64−C(H)(X)CH3
(11)o−、m−、p−(CH32C(X)−C64−C(X)(CH32
(12)RO2C−C(H)(X)−(CH2)n−C(H)(X)−CO2
(13)RO2C−C(CH3)(X)−(CH2n−C(CH3)(X)−CO2
(14)RC(O)−C(H)(X)−(CH2n−C(H)(X)−C(O)R
(15)RC(O)−C(CH3)(X)−(CH2n−C(CH3)(X)−C(O)R
(16)XCH2CO2−(CH2n−OCOCH2
(17)CH3C(H)(X)CO2−(CH2n−OCOC(H)(X)CH3
(18)(CH32C(X)CO2−(CH2n−OCOC(X)(CH32
(19)RC(O)CH(X)2
【0028】
一般式(1)で表される重合開始剤としては、フェニルメチルブロマイド、フェニルメチルヨーダイド等、一般式(2)で表される重合開始剤としては、1−フェニルエチルブロマイド、1−フェニルエチルヨーダイド等、一般式(3)で表される重合開始剤としては、1−フェニルイソプロピルブロマイド、1−フェニルイソプロピルヨーダイド等、一般式(4)で表される重合開始剤としては、2−ブロモプロピオン酸、2−ヨードプロピオン酸、2−ブロモブタン酸、2−ヨードブタン酸、メチル−2−ブロモプロピオネート、エチル−2−ブロモプロピオネート、メチル−2−ヨードプロピオネート等、一般式(5)で表される重合開始剤としては、2−ブロモイソブタン酸、2−ヨードイソブタン酸、メチル−2−ブロモイソブチレート、エチル−2−ブロモイソブチレート、メチル−2−ヨードイソブチレート、エチル−2−ヨードイソブチレート等、一般式(6)で表される開始剤としては、α−ブロモアセトフェノン、α−ブロモアセトン等、一般式(7)で表される開始剤としては、α−ブロモイソプロピルフェニルケトン等、一般式(8)で表される開始剤としては、p−トルエンスルフォニルブロミド等、一般式(9)で表される開始剤としては、α、α’−ジブロモキシレン、α、α’−ジヨードキシレン等、一般式(10)で表される開始剤としてはビス(1−ブロモエチル)ベンゼン等、一般式(11)で表される開始剤としては、ビス(1−ブロモ−1−エチル)ベンゼン等、一般式(12)で表される開始剤としては、2,5−ジブロモアジピン酸ジメチル、2,5−ジヨードアジピン酸ジメチル、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル、2,5−ジヨードアジピン酸ジエチル、2,6−ジブロモ−1,7−ヘプタン二酸ジメチル、2,6−ジヨード−1,7−ヘプタン二酸ジメチル、2,6−ジブロモ−1,7−ヘプタン二酸ジエチル、2,6−ジヨード−1,7−ヘプタン二酸ジエチル等、一般式(13)で表される開始剤としては、2,6−ジブロモ−2,6−ジメチル−1,7−ヘプタン二酸ジメチル等、一般式(14)で表される開始剤としては、3,5−ジブロモ−2,6−ヘプタンジオン等、一般式(15)で表される開始剤としては、3,5−ジブロモ−3,5−ジメチル−2,6−ヘプタンジオン等、一般式(16)で表される開始剤としては、エチレングリコールビス(2−ブロモ酢酸)エステル等、一般式(17)で表される開始剤としては、エチレングリコールビス(2−ブロモプロピオン酸)エステル等、一般式(18)で表される開始剤としては、エチレングリコールビス(2−ブロモイソ酪酸)エステル等、一般式(19)で表される開始剤としては、α,α−ジブロモアセトフェノン等が挙げられる。斯かる重合開始剤の使用により、第2ブロックを形成する際の開始剤効率が高められる。
【0029】
(c1)レドックス触媒:
第1ブロック鎖形成工程(i)に使用するレドックス触媒は、周期表7族〜11族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属(M)が中心金属であり且つ配位子に少なくともハロゲン原子を含む金属錯体から成るレドックス触媒である。レドックス触媒(レドックス共役錯体)は、前述の図式(化1)に示す様に低原子価金属(M)nが中心金属である低原子価錯体(1)と高原子価金属(M)n+1が中心金属である高原子価錯体(2)とが可逆的に変化する。ただし、nは0以上の整数であり、通常、n=0、1、2、3、4、5、6である。
【0030】
具体的に使用される低原子価金属(M)nとしては、Cu+、Ni0、Ni+、Ni2+、Pd0、Pd+、Pt0、Pt+、Pt2+、Rh+、Rh2+、Rh3+、Co+、Co2+、Ir0、Ir+、Ir2+、Ir3+、Fe2+、Ru2+、Ru3+、Ru4+、Ru5+、Os2+、Os3+、Re2+、Re3+、Re4+、Re6+、Mn2+、Mn3+の群から選ばれる金属であり、中でも、Cu+、Ru2+、Fe2+、Ni2+が好ましい。
【0031】
1価の銅化合物としては、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅等、2価のニッケル化合物としては、二塩化ニッケル、二臭化ニッケル、二ヨウ化ニッケル等、二価の鉄化合物としては、二塩化鉄、二臭化鉄、二ヨウ化鉄など、2価のルテニウム化合物としては、二塩化ルテニウム、二臭化ルテニウム、二ヨウ化ルテニウム等が挙げられる。
【0032】
低原子価金属(M)nの使用量は、特に限定されないが、反応系中の濃度として、通常10-4〜10-1モル/l、好ましくは10-3〜10-1モル/lである。また、低原子価金属(M)nの使用量は、重合開始剤の重合開始末端1モルに対し、通常0.01〜100モル、好ましくは0.1〜50モル、更に好ましくは0.1〜10モルである。
【0033】
上記の金属錯体には有機配位子が使用される。有機配位子は、重合溶媒への可溶化およびレドックス共役錯体の可逆的な変化を可能にするため使用される。金属への配位原子としては、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子などが挙げられるが、好ましくは窒素原子またはリン原子である。有機配位子の具体例としては、2,2’−ビピリジル及びその誘導体、1,10−フェナントロリン及びその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(ジメチルアミノエチル)アミン、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられる。
【0034】
前記の遷移金属(M)と有機配位子とは、別々に添加して重合系中で金属錯体を生成させてもよいし、予め金属錯体を合成して重合系中へ添加してもよい。特に、銅の場合は前者の方法が好ましく、ルテニウム、鉄、ニッケルの場合は後者の方法が好ましい。
【0035】
予め合成されるルテニウム、鉄、ニッケル錯体の具体例としては、トリストリフェニルホスフィノ二塩化ルテニウム(RuCl2(PPh33)、ビストリフェニルホスフィノ二塩化鉄(FeCl2(PPh32)、ビストリフェニルホスフィノ二塩化ニッケル(NiCl2(PPh32)、ビストリブチルホスフィノ二臭化ニッケル(NiBr2(PBu32)等が挙げられる。
【0036】
第1ブロック鎖形成工程(i)におけるレドックス触媒は、上記の錯体(低原子価錯体)が酸化すると対応する高原子価錯体となる。金属錯体を構成するハロゲン原子が臭素原子またはヨウ素原子である低原子価錯体が存在すれば、重合開始時に高原子価錯体は存在してもよいが、低原子価錯体と高原子価錯体のモル比は必ずしも限定されない。金属錯体を構成するハロゲン原子が臭素原子またはヨウ素原子でない場合は、前述の図式に示すKactが小さすぎ、第1ブロック鎖(・・A・・)の生成が困難である。本工程で使用するレドックス触媒としては、1価の銅化合物が好ましく、特に臭化銅またはヨウ化銅が好ましい。
【0037】
(d1)アクリレート系モノマー:
第1ブロック鎖形成工程(i)に使用するアクリレート系モノマー(A)としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、メトキシテトラエチレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。これらのモノマーは1種または2種以上使用することが出来、ランダム共重合またはブロック共重合されていてもよく、更に、モノマーは重合の途中で徐々に添加してもよい。
【0038】
(e1)その他の重合条件:
第1ブロック鎖形成工程(i)のリビングラジカル重合は、通常−50〜200℃、好ましくは0〜150℃、更に好ましくは20〜130℃の温度で行われる。
【0039】
重合終了後、重合反応液から第一ブロック鎖を分離してもいいし、重合反応液をそのまま第2ブロック鎖形成工程(ii)に供してもよい。重合反応液から第一ブロック鎖を分離する場合、周知の方法に従って、残存モノマー及び/又は溶媒の留去、適当な溶媒中での再沈殿、沈殿したポリマーの濾過または遠心分離、ポリマーの洗浄および乾燥を行うことが出来る。必要に応じて生成ポリマーの良溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン等で重合溶液を希釈し、アルミナ、シリカ又はクレーのカラム若しくはパッドに通すことにより、触媒として使用した遷移金属錯体を重合溶媒から除去することが出来る。その他、重合溶液に金属吸着剤を分散させて処理する方法も採用し得る。
【0040】
第1ブロック鎖形成工程(i)で得られた第1ブロック鎖(・・A・・)は、アクリレート系重合体であり、ブロック鎖の少なくとも1つの末端が臭素末端またはヨウ素末端である。本工程(i)に使用する重合開始剤が1官能性重合開始剤の場合、重合開始剤から1方向に重合が進み、その成長末端が臭素末端またはヨウ素末端であるので、理論的には臭素末端またはヨウ素末端は1分子当たり1個である。一方、本工程(i)に使用する重合開始剤が2官能性重合開始剤の場合、重合開始剤から2方向に重合が進み、その成長末端が臭素末端またはヨウ素末端であるので、理論的には臭素末端またはヨウ素末端は1分子当たり2個である。従って、本工程(i)で得られた第1ブロック鎖は、アクリレート系重合体であり、理論的にはブロック鎖の1成長末端当たり1個が臭素末端またはヨウ素末端である。しかし、2分子停止反応、不均化反応、臭素またはヨウ素の脱離などの副反応で臭素末端またはヨウ素末端の構造が変化する場合がある。臭素末端またはヨウ素末端の末端基量は、例えば、プロトン核磁気共鳴分光計(1H−NMR)を使用して隣接プロトンの積分値から算出できる。
【0041】
<第2ブロック鎖形成工程(ii)>
本工程では、周期表7族〜11族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属(M)が中心金属であり且つ配位子に少なくともハロゲン原子を含む金属錯体から成るレドックス触媒であって、当該ハロゲン原子が塩素原子またはフッ素原子であり、第2ブロック鎖の重合開始時における当該レドックス触媒の低原子価金属(M)n(ただし、nは整数)と高原子価金属(M)n+1のモル比(M)n/(M)n+1が90/10〜0.1/99.9の範囲内であるレドックス触媒の存在下、メタクリレート系モノマーを重合させる。
【0042】
そして、第1ブロック鎖形成工程(i)で第1ブロック鎖(・・A・・)を形成した後、この重合体を一度単離して、単離した重合体をマクロイニシエーターとして本工程に供して、新たに第2のブロック鎖の重合反応を開始してもよいし、第1のブロック鎖の形成した後、引き続いて第2のブロック鎖に用いるメタクリレート系モノマーを加えて本工程を開始してもよい。
【0043】
(a2)重合溶媒:
第2ブロック鎖形成工程(ii)のラジカル重合は、通常、重合溶媒中で行うのが好ましい。第1ブロック鎖形成工程(i)が無溶媒で行われた場合、または、第1ブロック鎖を形成した後にこの重合体を一度単離した場合は、(i)工程で得られた重合体に新たに溶媒を加えてもよい。また、(i)工程で得られた重合体と溶媒とを含有する重合反応液に必要に応じて重合溶媒を追加添加してもよい。
【0044】
重合溶媒として、水、エーテル類、アミド類、ニトリル類、アルコール類の群から選ばれる少なくとも1種を含む溶媒を使用する。エーテル類としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、アニソール、ジメトキシベンゼン等が挙げられ、アミド類としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド等が挙げられ、ニトリル類としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソアミルアルコール等が挙げられる。これらの中では、水、エーテル類、アミド類、アルコール類の群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、水、アニソール又はDMFが更に好ましい。
【0045】
第2ブロック鎖形成工程(ii)においては、上記の重合溶媒とそれ以外の溶媒、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素などとを混合して使用してもよい。ただし、この場合は、上記の重合溶媒の量を開始剤のモル量以上にする必要がある。
【0046】
重合溶媒の使用量は、特に限定されないが、第1ブロック鎖およびモノマー仕込み量100重量部に対し、通常0.1〜5000重量部、好ましくは1〜2000重量部、更に好ましくは10〜1000重量部である。
【0047】
(b2)重合開始剤:
第2ブロック鎖形成工程(ii)においては、第1ブロック鎖形成工程(i)で得られた第1ブロック鎖が重合開始剤、すなわち、マクロイニシエーターとして働く。前述の通り、第1ブロック鎖は、アクリレート系重合体であり、ブロック鎖の少なくとも1つの末端が臭素末端またはヨウ素末端である。この臭素末端またはヨウ素末端が重合開始末端になるので、第1ブロック鎖中に重合開始末端が1つの場合は1方向に重合が進行し、第1ブロック鎖中に重合開始末端が2つの場合は2方向に重合が進行する。
【0048】
(c2)レドックス触媒:
第2ブロック鎖形成工程(ii)においは、周期表7族〜11族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属(M)が中心金属であり且つ配位子に少なくともハロゲン原子を含む金属錯体から成るレドックス触媒であって、当該ハロゲン原子が塩素原子またはフッ素原子であり、第2ブロック鎖の重合開始時における当該レドックス触媒系の低原子価金属(M)n(ただし、nは整数)と高原子価金属(M)n+1のモル比(M)n/(M)n+1が90/10〜0.1/99.9、好ましくは60/40〜1/99の範囲内であるレドックス触媒を使用する。
【0049】
本工程(ii)に使用するレドックス触媒(レドックス共役錯体)は、第1ブロック鎖形成工程(i)に使用するレドックス触媒と同様に、前述の図式(化1)に示す様に低原子価金属(M)nが中心金属である低原子価錯体(1)と高原子価金属(M)n+1が中心金属である高原子価錯体(2)とが可逆的に変化する。ただし、nは0以上の整数であり、通常、n=0、1、2、3、4、5、6である。
【0050】
具体的に使用される低原子価金属(M)nとしては、Cu+、Ni0、Ni+、Ni2+、Pd0、Pd+、Pt0、Pt+、Pt2+、Rh+、Rh2+、Rh3+、Co+、Co2+、Ir0、Ir+、Ir2+、Ir3+、Fe2+、Ru2+、Ru3+、Ru4+、Ru5+、Os2+、Os3+、Re2+、Re3+、Re4+、Re6+、Mn2+、Mn3+の群から選ばれる金属であり、中でも、Cu+、Ru2+、Fe2+、Ni2+が好ましい。
【0051】
1価の銅化合物としては、塩化第一銅、フッ化第一銅など、2価のニッケル化合物としては、二塩化ニッケル、二フッ化ニッケル等、二価の鉄化合物としては、二塩化鉄、二フッ化鉄など、2価のルテニウム化合物としては、二塩化ルテニウム、二フッ化ルテニウム等が挙げられ、好ましくは1価の銅化合物であり、更に好ましくは塩化銅またはフッ化銅である。
【0052】
第2ブロック鎖を形成する際に使用する金属錯体の構成ハロゲン原子が塩素原子またはフッ素原子でない場合は、(・・A・・)(B・)におけるKactが大きすぎ、第1ブロック鎖(・・A・・)の重合開始剤としての利用効率が低くなる。すなわち、既に反応を開始した(・・A・・)(・・B・・)の成長反応が優先される結果、ブロック化されない(・・A・・)が残存し、分子量分布が二山となり、分子量が狭分布のブロック共重合体が得られない。
【0053】
レドックス触媒は、低原子価錯体に高原子価錯体を添加することにより形成される。本発明において、レドックス触媒系の低原子価金属(M)nと高原子価金属(M)n+1とは90/10〜0.1/99.9のモル比でなければならない。斯かる条件により、レドックス平衡を保ち、重合速度を大きく低下させずに、重合の制御が可能となる。そして、本発明において、重合がリビング的に進行するため、分子量分布の狭い重合体が得られる。低原子価金属(M)nの量が上記範囲より増えると重合の制御が困難となり、上記範囲より少なくなると十分な速度で重合が進行しない。第2ブロック鎖形成工程(ii)のレドックス触媒の低原子価錯体と高原子価錯体とは、同一のハロゲン種であることが好ましい。金属錯体の使用量や金属錯体の有機配位子は、前述の第1ブロック鎖形成工程(i)におけるレドックス触媒の場合と同様である。
【0054】
(d2)メタクリレート系モノマー:
第2ブロック鎖形成工程(ii)に使用するメタクリレート系モノマー(B)としては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、ブトキシエチルメタクリレート、メトキシテトラエチレングリコールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは1種または2種以上使用することが出来、ランダム共重合またはブロック共重合されていてもよく、更に、モノマーは重合の途中で徐々に添加してもよい。
【0055】
(e2)その他の重合条件:
第2ブロック鎖形成工程(ii)のリビングラジカル重合は、通常−50〜200℃、好ましくは0〜150℃、10〜130℃の温度で行われる。
【0056】
前述の第1ブロック鎖形成工程(i)及び第2ブロック鎖形成工程(ii)に続けて、更に、第3ブロック鎖以降のための重合を続けてもよい。第3ブロック鎖の形成に使用するモノマーは、ラジカル重合性モノマーであれば制限はないが、通常、スチレン系モノマー、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマーであり、重合が容易である点から、スチレン系モノマー又はアクリレート系モノマーが好ましく、特にスチレン系モノマーが好ましい。
【0057】
重合終了後、周知の方法に従って、残存モノマー及び/又は溶媒の留去、適当な溶媒中での再沈殿、沈殿したポリマーの濾過または遠心分離、ポリマーの洗浄および乾燥を行うことが出来る。必要に応じ、生成ポリマーの良溶媒、例えば、THF、トルエン等で重合溶液を希釈し、アルミナ、シリカ又はクレーのカラム若しくはパッドに通すことにより、触媒として使用した遷移金属錯体を重合溶媒から除去することが出来る。その他、重合溶液に金属吸着剤を分散させて処理する方法も採用し得る。必要ならば金属成分は重合体中に残っていてもよい。得られた重合体は、周知の手法に従って、サイズ排除クロマトグラフィ、NMRスペクトル等により分析することが出来る。
【0058】
再沈殿に使用する溶媒としては、水;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数5〜8のアルカン;シクロヘキサン等の炭素数5〜8のシクロアルカン;メタノール、エタノール、イソプロパノール等の炭素数1〜6のアルコール等が挙げられる。これらの中では、水、ヘキサン、メタノール又はこれらの混合物が好適である。
【0059】
次に、本発明のブロック共重合体について説明する。本発明のブロック共重合体は、例えば、前述の本発明の製造方法で得られ、アクリレート系ブロック鎖およびメタクリレート系ブロック鎖から成り、且つ、メタクリレート系ブロック鎖の少なくとも1つの末端がハロゲン末端であることを特徴とする。前述の第1ブロック鎖形成工程(1)及び第2ブロック鎖形成工程(ii)のみを経て得られたブロック共重合体の場合のハロゲン末端は、塩素末端またはフッ素末端である。
【0060】
本発明のブロック共重合体は、前述の第1ブロック鎖形成工程(1)及び第2ブロック鎖形成工程(ii)の後に他の重合工程に供し、ハロゲン末端を成長開始点として他のモノマーの重合を続けて他のブロック鎖を含むブロック共重合体としたり、変成工程に供してハロゲン末端と官能基を有する化合物とを反応させて目的とする他の官能基を有するブロック共重合体としたりすることが出来る。そして、斯かる後続の工程ににより、ブロック共重合体の末端の構造は変化する。
【0061】
本発明のブロック共重合体のハロゲン末端は、上記の他の重合工程に供する場合は、反応性が良く且つ合理的速度で重合が進行するとの観点から、塩素末端がこのましい 。
【0062】
また、前述の第1ブロック鎖形成工程(1)で使用する開始剤が1官能性開始剤の場合、得られる重合体は、第一のブロック鎖の片末端に第二のブロック鎖が重合して成るジブロック共重合体であって、理論的にはハロゲン末端は1分子当たり1個である。一方、前述の第1ブロック鎖形成工程(1)で使用する開始剤が2官能性開始剤の場合、得られる重合体は、第一のブロック鎖の両末端に第二のブロック鎖が重合して成るトリブロック共重合体であって、理論的にはハロゲン末端は1分子当たり2個である。しかし、2分子停止反応、不均化反応、ハロゲンの脱離等の副反応によりハロゲン末端の構造が変化する場合があり、1成長末端あたりのハロゲン末端基量は、通常0.7〜1個、好ましくは0.8〜1個である。ハロゲン末端基量は、例えば、プロトン核磁気共鳴分光計(1H−NMR)を使用してて隣接プロトンの積分値から算出できる。
【0063】
本発明のブロック共重合体の数平均分子量は、通常250〜500,000、好ましくは500〜250,000であり、分子量分布(重量平均分子量:Mw/数平均分子量:Mn)は、通常1.8以下、好ましくは1.5以下である。
【0064】
本発明のブロック重合体は、リビングラジカル重合法で製造するため、重合開始可能な末端を有している。従って、重合開始可能な末端を利用し、重合を自由自在に開始し且つ終了させることが出来る。
【0065】
本発明のブロック重合体は、直接的には、エラストマー、エンジニアリング樹脂、塗料、接着剤、インク及び画像形成組成物などとして使用される他、セメント調整剤、分散剤、乳化剤、界面活性剤、粘性係数向上剤、紙添加剤、静電気防止剤、被覆剤、樹脂調整剤などの添加剤として使用される。また、本発明のブロック重合体は、ポリウレタン等のより大きな高分子製品の中間体として、水処理化学物質、複合部品、化粧品、毛髪用品、腸内拡張剤、診断剤、持続放出組成剤などの製薬剤などとして使用することが出来る。
【0066】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。以下の諸例においては、分子量の測定は、ポリスチレン標準試料で校正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して行った。また、末端ハロゲン残量は、プロトン核磁気共鳴分光計(1H−NMR)を使用して隣接プロトンの積分値から算出した。
【0067】
製造例1(1官能性マクロイニシエーターの製造)
溶媒としてアニソール540.34g、モノマーとしてt−ブチルアクリレート393.19g(3.07モル)、配位子としてペンタメチルジエチレントリアミン5.3117g(3.07×10-2モル)、重合開始剤としてメチル−2−ブロモプロピオネート2.5441g(1.52×10-2モル)をフラスコに仕込み、15分間窒素バブリングして混合溶液を得た。次いで、窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、上記の混合液、触媒として臭化第一銅2.2615g(1.58×10-2モル)を仕込み、90℃で120分間重合を行った。
【0068】
重合終了後、活性アルミナが充填されたカラムを通過させることにより触媒である銅錯体を除去した。そして、得られた重合溶液を、メタノール2000mlに滴下して再沈殿を行い、乾燥してt−ブチルアクリレート重合体(マクロイニシエーターA)を得た。この重合体の分子量をポリスチレン標準試料で校正したゲル浸透クロマトグラフィーで測定したところ、数平均分子量は1,844、分子量分布は1.09であった。
【0069】
実施例1
溶媒としてアニソール49.53g、モノマーとしてメチルメタクリレート47.25g(4.728×10-1モル)、配位子としてペンタメチルジエチレントリアミン1.8469g(1.07×10-2モル)、重合開始剤としてマクロイニシエーターA4.95gをフラスコに仕込み、15分間窒素バブリングして混合溶液を得た。次いで、窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として塩化第一銅0.2438g(2.46×10-3モル)、塩化第二銅0.3522g(2.62×10-3モル)を仕込み、85℃で重合を行った。任意の時間にフラスコ内より反応溶液を抜き出し、分子量を測定した。表1に示される様に、重合体の数平均分子量は重合時間の経過に従い増加し、また、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は2.0以下の狭分布であった。表1中の第2ブロック鎖重合体の欄における記号「−」は測定せずを意味する(以下の表においても同じ)。
【0070】
【表1】
Figure 0004003452
【0071】
比較例1
窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機および温度計付きのフラスコに、触媒として臭化第一銅0.3792g(2.64×10-3モル)、臭化第二銅0.6207g(2.66×10-3モル)を仕込み、次いで、アニソール47.34g、メチルメタクリレート48.33g(4.833×10-1モル)、配位子としてペンタメチルジエチレントリアミン0.9237g(5.33×10-2モル)、重合開始剤としてマクロイニシエーターA5.28gの混合溶液を15分間窒素バブリングした後、上記フラスコ内に仕込み、85℃で重合を行った。任意の時間にフラスコ内より反応溶液を抜き出し、分子量を測定した。表2に示される様に、重合体の数平均分子量は重合時間の経過に従い増加するものの、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は2.0以上の分布であった。
【0072】
【表2】
Figure 0004003452
【0073】
比較例2
窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、触媒として塩化第一銅0.3259g(3.29×10-3モル)、次いで、アニソール21.74g、メチルメタクリレート21.68g(2.168×10-1モル)、配位子としてペンタメチルジエチレントリアミン0.5658g(3.26×10-3モル)、重合開始剤としてマクロイニシエーターA5.28g混合溶液を15分間窒素バブリングした後、上記フラスコ内に仕込み、85℃で重合を行った。任意の時間にフラスコ内より反応溶液を抜き出し、分子量を測定した。表3に示される様に、重合初期(15分)に数平均分子量は増加するものの、その後重合時間が経過しても、数平均分子量は微増であった。
【0074】
【表3】
Figure 0004003452
【0075】
製造例2(二官能性マクロイニシエーターの製造2)
溶媒としてアニソール50ml(49.8g)、ノルマルブチルアクリレート44.7g(3.49×10-1 モル)、配位子としてペンタメチルジエチレントリアミン1.090g(6.28×10-3 モル)、重合開始剤として2,6−ジブロモ−1,7−ヘプタン二酸ジメチル1.09g(3.15×10-3 モル)をフラスコに仕込み、15分間窒素バブリングして混合溶液を得た。次いで、窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、上記の混合溶液、および、触媒として臭化第一銅0.4509g(3.16×10-3 モル)を仕込み、95℃で90分間重合を行った。
【0076】
重合終了後、活性アルミナ50gを充填したカラムを通過させることにより触媒である銅錯体を除去した。得られた重合溶液を、水/メタノール容量比が1/5の混合溶媒800mlに滴下して再沈殿を行い、乾燥してノルマルブチルアクリレート重合体(マクロイニシエーターB)を得た。この重合体の分子量をポリスチレン標準試料で校正したゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定したところ、数平均分子量8810、分子量分布1.14であった。
【0077】
実施例2
溶媒としてアニソール20ml(20g)、メチルメタクリレート18.7g(1.87×10-1 モル)、配位子としてペンタメチルジエチレントリアミン282.6mg(1.63×10-3 モル)、重合開始剤としてマクロイニシエーターB3.0gをフラスコに仕込み、15分間窒素バブリングして混合溶液を得た。次いで、窒素置換されたコンデンサー、窒素導入管、撹拌機及び温度計付きのフラスコに、上記の混合溶液、および、触媒として塩化第一銅67.3mg(1.02×10-4 モル)、塩化第二銅91.4mg(6.81×10-4 モル)を仕込み、95℃120分間重合を行った。
【0078】
重合終了後、重合溶液をTHF100ml(88.9g)で希釈し、活性アルミナ30gを充填したカラムを通過させて触媒である銅錯体を除去し、更に、水/メタノール容量比が1/5の混合溶媒800mlに滴下して再沈殿を行い、乾燥して無色透明なトリブロック共重合体(メチルメタクリレートブロック鎖−ノルマルブチルアクリレートブロック鎖−メチルメタクリレートブロック鎖)を得た。製造例2と同様に分子量および分子量分布を、H−NMRから末端基残存量を測定した。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量は1,8210、分子量分布は1.21、末端基のハロゲンは塩素、末端基残存量は1分子当たり1.86(1成長末端当たり0.93)であった。
【0079】
比較例3
実施例2において、触媒として塩化第一銅67.3mg(1.02×10-4 モル)、塩化第二銅91.4mg(6.81×10-4 モル)を使用したのに対し、触媒として塩化第一銅67.3mg(1.02×10-4 モル)のみを使用した以外は、実施例2と同様にして重合操作、分析操作をを行った。得られたトリブロック共重合体の数平均分子量は36,766、分子量分布は1.69、末端基のハロゲンは塩素、末端基残存量は1分子当たり1.23(1成長末端当たり0.61)であり、分子量の制御は困難であった。
【0080】
以上説明した実施例および比較例から明らかな通り、アクリレート系ブロック鎖を得る工程の後に、レドックス触媒系の低原子価金属(M)nと高原子価金属(M)n+1とのモル比(M)n/(M)n+1を90/10〜0.1/99.9の範囲内としてメタクリレート系ブロック鎖を得る工程を開始することにより、アクリレート系ブロック鎖およびメタクリレート系ブロック鎖を含む分子量分布の狭いブロック共重合体が得られる。
【0081】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、、原子移動型ラジカル重合法によるブロック共重合体の製造方法であって、アクリレート系モノマーによる第1ブロック鎖にメタクリレート系モノマーによる第2ブロック鎖を生成させて成り且つ分子量が狭分布であるブロック共重合体の製造方法および当該製造方法によって得られた新規なブロック共重合体が提供され、本発明の工業的価値は大きい。

Claims (2)

  1. 少なくとも以下の第1ブロック鎖形成工程(i)及び第2ブロック鎖形成工程(ii)を順次に含むことを特徴とするブロック共重合体の製造方法。
    <第1ブロック鎖形成工程(i)>
    重合開始剤として、臭素原子またはヨウ素原子を含む有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物を使用し、周期表7族〜11族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属(M)が中心金属であり且つ配位子に少なくともハロゲン原子を含む金属錯体から成るレドックス触媒であって、当該ハロゲン原子が臭素原子またはヨウ素原子である触媒の存在下、アクリレート系モノマーを重合させる。
    <第2ブロック鎖形成工程(ii)>
    周期表7族〜11族から選ばれる少なくとも1種の遷移金属(M)が中心金属であり且つ配位子に少なくともハロゲン原子を含む金属錯体から成るレドックス触媒であって、当該ハロゲン原子が塩素原子またはフッ素原子であり、第2ブロック鎖の重合開始時における当該レドックス触媒の低原子価金属(M)n(ただし、nは整数)と高原子価金属(M)n+1のモル比(M)n/(M)n+1が90/10〜0.1/99.9の範囲内であるレドックス触媒の存在下、メタクリレート系モノマーを重合させる。
  2. 低原子価金属(M)nが、Cu+、Ru2+、Fe2+、Ni2+の群から選ばれる1種である請求項に記載の製造方法。
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