JP2003504528A - 紙および書籍の脱酸方法とその装置 - Google Patents

紙および書籍の脱酸方法とその装置

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JP2003504528A JP2001509317A JP2001509317A JP2003504528A JP 2003504528 A JP2003504528 A JP 2003504528A JP 2001509317 A JP2001509317 A JP 2001509317A JP 2001509317 A JP2001509317 A JP 2001509317A JP 2003504528 A JP2003504528 A JP 2003504528A
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JP2001509317A
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クンドロット、ロバート
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ズィッヒャーマン、ジョーゼフ
パーキンス、ドナルド
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Abstract

(57)【要約】 紙等のリグノセルロース製素材(201)は、音響的に(109、111)震動したサブミクロンアルカリ性粒子(119)に露呈され、この粒子が処理中の当該素材に付着することによって脱酸される。アルカリ性粒子は紙(201)の酸を中和し、酸による劣化を回避するように作用する。このアルカリ性脱酸法では、揮発性の化合物や溶媒は使用されず、このために紙を傷めることはない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 発明の分野 本発明は、セルロースを基材とする素材を低コストで効率よく脱酸する技術に
関する。
【0002】 発明の背景 リグノセルロース製の素材、例えば、紙等は、化学的、物理的または生物学的
な種々の要因に影響を受け易い。ここ200年、紙を製造する際には、多くの化
学的パルプ処理、機械的パルプ処理、漂白処理、糊付け処理が施されているが、
これらの処理によって紙が酸化するため、保管時の紙の安定性が低下してしまう
。紙を基材とする物質は、製造途中に酸が導入されることや、硫黄酸化物あるい
は窒素酸化物等の酸性ガス汚染物質に曝されること、さらには、酸を含有する素
材、すなわち、酸性の紙あるいは書籍に直接接触することによって酸性物質の加
水分解が引き起こされることに起因して徐々に劣化する。
【0003】 酸性物質が加水分解することに起因する紙やその他のセルロース製素材の劣化
は伝染し、これによる図書館等で保存されている文書の損失は、年間1%を下回
らないと概算されている。多くの資料や書籍が通常の読書においても耐えられな
くなるほど劣化してしまうので、通常の貸し出しから除外しなければならない。
重要な本あるいは文書の内容はマイクロフィルム化されたりデジタル化されたり
するものの、これらは単に情報を記録するということにすぎない。資料を元々の
形態で保存しておくためには、これら書物等を酸化に対して安定なものとする必
要がある。
【0004】 酸性物質の加水分解の影響を低減する方法としては、紙中の酸を脱酸すること
あるいは中和することが知られている。また、酸性物質の加水分解の影響から紙
を保護するために、アルカリ性の付着物を紙に含ませておくことが有用であるこ
とは、米国特許第2,033,452号および第2,864,723号に開示さ
れた公知技術である。それ以前には、水等の極性溶媒中に溶解された可溶アルカ
リ塩を使用する方法が採用されたこともある。しかしながら、これらの方法は、
極性溶媒によって紙に損傷を与えてしまうため、大部分の素材に対して適用でき
ない。このような問題を回避するため、最新の方法においては、紙中に存在する
酸をまず中性化し、次に、素材中にアルカリ性物質を供給する試薬として、アル
カリ性ガスや非極性溶媒に溶解された可溶アルカリ性化合物が使用されている。
ある脱酸方法では、紙は、不活性溶媒中で分散液から不溶性の小径アルカリ性粒
子を付着させることによって処理される。この方法によれば、アルカリ性物質を
含ませることができるだけではなく、アルカリ性物質が紙中に自然に拡散するの
で、紙中の酸を中和するアルカリ性物質を供給することができる。このため、紙
を非常に安定したものとすることができる。
【0005】 ポック(H. J. Porck)が1996年に発表した報告書「大量脱酸−可能性と
限界についての最新情報」は、主要な脱酸方法の概要を説明するものである。ポ
ック報告書において記載された方法は、ジエチル亜鉛法、ウェイトウ(Wei'To)
法、ブックキーパ法、バトレ(Battelle)法、FMC法、製造の初期段階にエア
ロゾル法を使用する方法等である。ポック報告書で概説された方法のうち、ジエ
チル亜鉛法はガスを使用する方法であり、一方、その他の脱酸方法は、溶媒中に
溶解ないし懸濁されたアルカリ性化合物を使用する方法である。
【0006】 ジエチル亜鉛(DEZ)法は、米国特許第3,969,549号および第4,
051,276号に開示されており、揮発性アルカリ金属であるジエチル亜鉛を
使用するものである。ポックによって記述されたDEZ法では、紙を充分に乾燥
させるために、処理前に真空引きによって2〜3日乾燥することが必要とされて
いる。乾燥の後、気相のジエチル亜鉛に素材を16〜18時間露呈する。液相の
ジエチル亜鉛は、空気に曝されると自然発火して燃焼し、また、水分と爆発的に
反応する。このような安全上の理由や複雑性から、DEZ法は、1994年から
実施されていない。
【0007】 ウェイトウ法は、初期の有機液相物脱酸法の1種であり、アルコール(メタノ
ール)に溶解されたメトキシマグネシウムメチル炭酸塩(MMC)が次にフルオ
ロカーボン(CFCs)あるいはヒドロフルオロカーボン(HCFCs)に分散
されたものを使用する方法である。この方法は、米国特許第4,318,963
号、第3,676,055号および第3,939,091号に開示されている。
MMCは、酸を中和した後、紙中の残留水分と反応して酸化マグネシウムを生成
する。酸化マグネシウムは、周囲の空気および二酸化炭素と徐々に反応して水酸
化マグネシウムおよび塩基性マグネシウム炭酸塩を生成し、これら水酸化マグネ
シウムおよび塩基性マグネシウム炭酸塩がアルカリ性含有物として紙中に残留す
る。
【0008】 ウェイトウ法には、幾つかの欠点がある。MMCを溶解するアルコール溶媒は
、紙中のある種の過敏なインクや染料をにじませる。また、アルコールは紙から
完全に除去することが困難であるので、処理済素材に臭いが残留する。他の欠点
は、CFCsあるいはHCFCsがオゾン層を破壊する物質であることから、政
府規制によってこれらの産業への使用が禁止されていることである。さらに、ウ
ェイトウ法では、処理に先立って書籍を36時間程度乾燥することが必要であり
、かつ処理後に品質を整えるのに2〜3日を要する。
【0009】 ブックキーパ法は、唯一、不活性溶媒中に懸濁された塩基性金属酸化物のアル
カリ性粒子を使用する脱酸法である。米国特許第4,552,843号には、C
FCsを使用するこの方法が開示され、その後、米国特許第5,409,736
号に、この方法において、CFCsに代替してパーフルオロカーボンを使用する
ことが開示された。米国特許第4,552,843号では、サブミクロンアルカ
リ性粒子を含有するエアロゾルを紙またはリグノセルロース製素材に直接的に衝
突させて処理することや、粒子を紙に引き寄せるために静電力ないし減圧法を利
用することが開示されている。ブックキーパ法では、粒状酸化マグネシウムが紙
に付着し、この酸化マグネシウムが水分や二酸化炭素と反応して、酸化を抑制す
る水酸化マグネシウムや塩基性マグネシウム炭酸塩を生成する。
【0010】 ブックキーパ法の欠点は、処理方法が複雑なことにある。素材に対しては、処
理に先立ち真空引きが施される。溶媒として使用されるパーフルオロカーボンは
高価であり、しかも、パーフルオロカーボンを除去するために加熱および18時
間以上の真空引きが必要である。長時間の真空引き/加熱溶媒除去過程では、処
理が施された紙や表面残留物が乾燥し、その結果、紙の耐摩耗性が低下してしま
う。
【0011】 フランクフルト/ライプジップにあるドイツ国立図書館では、米国特許第5,
227,842号および第5,322,558号に開示され、「バトレ」法とし
て知られている脱酸方法が創出された。バトレ法では、ヘキサジメチルジシロキ
サンに溶解されたマグネシウムチタンエトキシド(MTE)が使用される。MT
Eは酸を中和し、次に、紙中の水分と反応して酸化マグネシウムを生成する。さ
らに、この酸化マグネシウムは、水分および二酸化炭素と徐々に反応し、水酸化
マグネシウムと、酸性化過程に対する耐性を付与する塩基性炭酸マグネシウムと
を生成する。
【0012】 バトレ脱酸法には、他にも欠点がある。バトレ法によって処理された書籍は、
処理に先立って約2日間乾燥しなければならないし、残留した処理香が消えるの
に3週間程度を要する。バトレ法ではヘキサジメチルジシロキサンを用いるが、
この溶媒は高価であり、かつ燃え易い。したがって、耐爆発性の貯蔵庫や処理設
備が必要である。さらに、乾燥速度や溶媒除去速度を向上させるためにバトレ法
にて使用されるマイクロ波エネルギ乾燥は、金属粉を含むインクや金属製のステ
ープル、ステッチ等を含む紙または書籍を傷めることがある。
【0013】 FMC脱酸法は、米国特許第5,104,997号、第5,208,072号
および第5,264,243号に開示されている。FMC脱酸法では、ヘプタン
に溶解されたマグネシウムブチルグリコール酸塩(MGB)が使用される。MG
Bは、処理された素材を強化するとともに脱酸するものであるとされている。他
の溶媒を使用する方法では、MGBは、微量の水分と反応して酸化マグネシウム
や水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウムを生成し、アルカリ性の含有物
となる。
【0014】 FMC法では、米国特許第5,282,320号に開示されているように、処
理に先立って素材が乾燥される。この際、高周波乾燥が採用される。この方法に
おいても、高周波加熱過程の後、ヘプタン溶媒を除去する必要がある。マイクロ
波エネルギや高周波による加熱は、金属製物質を含有する紙または書籍を傷める
ことがある。
【0015】 FMC法には、他にも、MGBやヘプタン溶媒が一般的な書籍の素材と反応し
て該素材に悪影響を与えてしまうという欠点がある。FMC法で処理された紙に
残留したグリコール酸塩は、湿性グリコールとなる。この湿性グリコールは、紙
を膨張させ、かつ水蒸気を引き寄せるので、紙の質を変化させてしまう。また、
ヘプタンは可燃性の溶媒であるので、特殊な貯蔵庫と取り扱いが必要である。
【0016】 ポック報告書に記述されたエアロゾル処理法は、サブミクロン単位の粒子から
なる安定なエアロゾル雲中のアルカリ性粒子を書物上に衝突させることによって
該書物の脱酸を行うものである。凝集を抑制するためには、安定度が維持される
ように、アルカリ性粒子の濃度をおよそ2〜3mg/feet3未満にしなければな
らない。このような低濃度のアルカリ性エアロゾルでは、必要量のアルカリ含有
物を付着させるために紙面1枚上に衝撃を与えるか通過させるには、概ね5〜1
0feet3が必要である(3%CaCO3で)。加えて、付着速度が非常に遅い。ま
た、書籍の形状が複雑な場合は、エアロゾル衝突を利用して書籍を全ページに亘
って均一に処理することが困難である。
【0017】 その他の脱酸法も、文献に開示されている。そのうちの大多数は、気相脱酸試
薬を用いるものである。米国特許第3,472,611号および第4,927,
497号には、揮発性のシクロヘキシルアミン炭酸塩ガスを脱酸試薬として使用
することが開示されている。米国特許第3,771,958号および第3,83
7,804号には、モルホリンガスを脱酸試薬として使用することが開示されて
いる。米国特許第3,771,958号および第5,393,562号の双方に
は、アンモニアガスを脱酸試薬として使用することが開示されている。ガスまた
は蒸気を脱酸試薬とする場合の問題点は、製本後の酸腐食を長期間に亘って抑制
するのに必要なアルカリ含有物を紙中に残留させることができないことである。
さらに、多量の揮発性アミンが処理済書籍の残留香となり、これは健康にも影響
をもたらすものである。ガス脱酸法の多くは、安全上の問題、高コスト、残留香
、処理された素材を傷めるという理由から、現在では実施されていない。
【0018】 米国特許第5,433,827号には、気相または液相のいずれかを使用する
他の脱酸法が開示されている。この第5,433,827号特許方法は、塩基が
含浸された紙の間に紙を折り込み、この紙中に、酸を中和するアルカリ金属カチ
オンを移動させるものである。書籍は、アルカリ金属カチオンが移動するまで、
数日間に亘って比較的高湿度で加熱・加圧される。この方法ではかなりの労力が
必要であり、また、結合部分を傷めてしまう。そして、製本後の酸への露呈に対
して損傷を回避し得るのに充分なアルカリ含有物を付着できない。
【0019】 以上のようなことから、書籍を適切な時間で処理可能であり、かつ危険な物質
を使用することなく製本後の酸への露呈に対して損傷を回避可能な簡便な方法が
希求されている。
【0020】 発明の要約 本発明によれば、溶媒を使用することなく、安価でかつ毒性のないアルカリ性
の物質を酸性のセルロース製素材に注入することができる。セルロースを基材と
する書籍や紙、あるいは他の素材は、酸が加水分解することを回避することがで
きるとともに、塩基性金属酸化物、金属水酸化物、金属塩等のサブミクロンアル
カリ性粒子を処理によって含有することができる。アルカリ性粒子は、pHの上
昇を伴ってセルロース製の素材に付着する一方で、アルカリ性の緩衝剤となる。
【0021】 安定なエアロゾル中でのアルカリ性粒子の濃度を著しく増加させるとともに、
自発的に凝集する傾向にあるアルカリ性粒子を粉砕するために、粒子床は、特定
の周波数と振幅を有する音響エネルギによって震動される。音響的震動によって
サブミクロンアルカリ性粒子が流動床内で浮遊することや定常的に震動すること
も可能となり、その結果、紙構造中に粒子がさらに均一に浸透する。紙やその他
のセルロース製素材は、音響エネルギが付与されたアルカリ性粒子床に挿入され
る。アルカリ性粒子は、素材に付着して紙中の酸を中和する。セルロース製の素
材は、時間単位ではなく秒単位で適切に処理される。
【0022】 音響震動法は、震動する粒子床に素材を挿入するか、または、活性なアルカリ
性粒子が存在するゾーンに紙を通過させることによって、製本済の書籍を脱酸す
る際にも適用することができる。書籍のページは、個別の空気噴流によってめく
られ、アルカリ性粒子に露呈される。これにより、書籍を2〜3分以内に脱酸す
ることが可能となる。または、紙に衝突するアルカリ性粒子のゾーンが移動する
ような可動方式にて振動子をページに亘って移動させ、素材を脱酸するようにし
てもよい。
【0023】 脱酸処理チャンバは、震動したサブミクロンアルカリ性粒子を循環させるため
に超音波的に振動する壁または板を有するものであってもよい。これにより、素
材をほとんど傷めることなく処理を施すことができる。処理後、素材に長時間の
仕上げを行う必要はない。本発明に係る脱酸システムは、危険もないし、屋内で
作業可能なように設計されている。その上、作業に特別な熟練も必要としない。
【0024】 以下、本発明につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説
明する。
【0025】 発明の詳細な説明 本発明は、サブミクロンアルカリ性粒子の高濃度で安定なエアロゾルによって
短時間で紙や書籍を脱酸するものである。本発明においては、処理が施されてい
る最中の素材に浸透するサブミクロンアルカリ性粒子を流動させるのに音響エネ
ルギが使用される。エアロゾル中のアルカリ性粒子は、音響エネルギに応答して
震動し、その結果、エアロゾル中で懸濁する。また、音響で震動させることによ
って、アルカリ性粒子が凝集することが抑制される。粒子が流動しないのであれ
ば、サブミクロンアルカリ性粒子が空気中で安定な最高濃度は、およそ5〜10
mg/m3である。この濃度では、紙の露呈時間、すなわち粒子の衝突時間を長
くしなければならない。しかしながら、粒子の流動機構がエアロゾルを安定化す
るものであるならば、凝集を伴うことなくサブミクロンアルカリ性粒子の濃度を
4〜5kg/m3とすることができる。
【0026】 音響エネルギがサブミクロンアルカリ性粒子の流動化機構となる場合、サブミ
クロン粒子を高濃度で使用する際の多くの不具合、例えば、粒子が凝集する傾向
を示すこと等が解消される。多くの周波数と音波の振幅を選定した条件下で、ア
ルカリ性粒子の濃縮層の流動をシミュレーションすることが確立されており、ま
た、アルカリ性粒子の濃縮層は、過度に凝集することなく震動する。ある周波数
および振幅では、凝集したアルカリ性粒子は粉々になって分散する。アルカリ性
粒子は、音響場での急速な揺れと近接する表面への衝突による音響エネルギに反
応する。サブミクロンアルカリ性粒子が処理中の素材に衝突した際、該粒子は、
紙内に浸透する。アルカリ性粒子は、紙表面で空気/固相境界に一層容易に浸透
するので、アルカリ性粒子が震動することにより、処理過程に際しての脱酸速度
が大きくなる。
【0027】 本発明では、超音波振動によって発生した音響エネルギで処理チャンバ内のサ
ブミクロンアルカリ性粒子を流動させる。アルカリ性粒子の震動効率は、超音波
振動の出力周波数に影響を受ける。一般的に、周波数が低いほど大きな粒子が効
率よく震動し、一方、周波数が高いほど小さなサブミクロン粒子が効率よく震動
する。アルカリ性粒子を流動させるのに最も適した超音波周波数は、当該アルカ
リ性粒子の性質や寸法に応じて設定される。
【0028】 アルカリ性粒子の粒度分布が著しく広い場合には、単一周波数超音波エネルギ
では、チャンバ内の全粒子を効率よく流動させることは容易ではない。特定の単
一超音波周波数は、小粒子を効率よく流動させるが、大粒子を効率よく流動させ
ることは容易ではない。このため、粒子を選択的に震動させることができる。様
々な寸法の粒子は、多周波数音響エネルギによって効率よく流動させることがで
きる。処理チャンバ内の粒子の粒径分布を予め測定しておけば、音響エネルギの
周波数を、全粒子を効率よく流動させるように設定することができる。処理チャ
ンバは、粒度分布が既知の全粒子を効率よく流動させる様々な周波数を生じる変
換器を備える。
【0029】 粒子を多周波数の音響エネルギに曝すことに伴い、粒子が凝集することを抑制
することもできる。上記したように、サブミクロンアルカリ性粒子は、音響エネ
ルギに曝された際、大粒子のように応答する塊に凝集する傾向がある。凝集した
大塊を震動させるためには、低周波数が必要である。そして、大塊は、サブミク
ロン粒子を最も効率よく流動させる音響周波数では効率よく流動しない。凝集し
たサブミクロン粒子は、凝集した粒子を効率よく震動させる音響エネルギにおけ
る振幅を増加させることによって粉砕することができる。サブミクロンアルカリ
性粒子を震動させ、また、凝集した粒子を粉砕するために、処理チャンバは、低
周波数超音波振動子と高周波超音波振動子を備える。サブミクロン粒子は、1μ
mを超える凝集物として市販されているので、本発明においては、サブミクロン
粒子を効率よく震動させ、かつ大凝集物を粉砕する周波数を発生する超音波振動
子を配設することが好ましい。
【0030】 本発明に係る処理チャンバは、超音波振動子によって発生した音響エネルギが
チャンバ内壁から照射されるように構成されている。処理チャンバの音響エネル
ギは、チャンバ壁の形状や構成に影響を受ける。チャンバ内部の音響エネルギは
、音響エネルギを反射する内壁によって増幅される。粒子の震動は、異なる周波
数と振幅の音響エネルギを発する振動子を処理チャンバにおける対向壁に配置す
ることによっても容易となる。また、個別に振動したり、または反射体として作
用する壁を音響エネルギ的な壁に対向配置させてもよい。
【0031】 図1に、本発明の実施形態に係る脱酸システムを示す。発信器105は、音響
振動子109を駆動する増幅器107に信号を送る。付加的に、音響振動子10
9に対向するように、音響振動子または反射壁111を配設してもよい。反射壁
111は、固定されていてもよいし、固定されていなくてもよい。音響振動子1
09と音響振動子、固定反射壁または自由反射壁111との間には、アルカリ性
粒子119の床が介装される。アルカリ性粒子119の床は、音響振動子109
と音響振動子、固定反射壁または自由反射壁111との作用下に震動する。音波
吸収壁113は、音響エネルギが反射するのを防ぐために使用され、音響振動子
109と音響振動子、固定反射壁または自由反射壁111に隣接して配置される
。アルカリ性粒子の音響的震動は、アルカリ性粒子119の床中の濃度が非常に
高く、エアロゾル中で懸濁しているような場合でも可能である。より多くのサブ
ミクロン粒子が処理中の素材に衝突するとともに、素材を脱酸し得る量のアルカ
リ性粒子が素早く素材に吸収されるので、処理時間が大幅に減少する。
【0032】 振動壁とその他のチャンバ壁との間隔も音響エネルギに影響を与える。したが
って、その間隔は、所望の効果が得られるように調整される。1枚の紙を処理す
る一実施形態では、チャンバ壁の間隔はおよそ1.25〜5.0cmに設定され
る。また、製本済の書籍を処理する一実施形態では、チャンバ壁の間隔はおよそ
30.5〜45.5cmに設定される。いずれの場合においても、付加的な振動
板を垂直に配置することができる。または、アルカリ性粒子をより震動させ易く
するため、他の振動壁を積層するようにしてもよい。
【0033】 本発明は、低強度の紙や書籍を処理する場合には、多周波数音響エネルギを低
出力とすることによって適用することができる。脆弱な素材を処理する間、損傷
を回避するために音響エネルギが低減され、その結果、アルカリ性粒子が大幅に
震動する。脱酸処理間に発された低エネルギの音響エネルギは、粒子を比較的低
速度で振動させ、該粒子を脆弱な素材からなる紙の構造内に浸透させる。この方
法において音響エネルギを低減することにより、低強度で脆弱な紙であっても、
素材を傷めることなく処理することができる。
【0034】 本発明において、低音響振幅モードで脆弱な紙を処理する場合、粒子が充分に
震動しないので、凝集を回避することが容易ではなくなる。処理の間、サブミク
ロンアルカリ性粒子の濃度を上昇させると、素材の処理に先立って凝集を粉砕す
るような高振幅の音響エネルギが生じるように音響場が制御され、一方、処理チ
ャンバでは、処理すべき物質がなくなる。
【0035】 アルカリ性物質は、処理チャンバ内に粉末の集合体として存在する。このアル
カリ性物質は、適切な塩基性の金属酸化物、金属水酸化物または金属塩である。
適切な物質は、周期表における1族および2族や亜鉛の酸化物、水酸化物、炭酸
塩、重炭酸塩である。好ましい実施の形態では、アルカリ性物質のカチオンは、
マグネシウム、亜鉛、ナトリウム、カリウム、カルシウムである。比較的無害な
マグネシウムまたは亜鉛の酸化物、炭酸塩、重炭酸塩や、ナトリウム、カリウム
またはカルシウムの水酸化物もまた好適である。さらに、アルカリ性粒子の混合
物も適切である。アルカリ性物質の好適な例としては、酸化マグネシウム、マグ
ネシウム炭酸塩、マグネシウム重炭酸塩、亜鉛炭酸塩、亜鉛重炭酸塩、酸化亜鉛
、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。本発
明に係る脱酸法において最も好適なアルカリ性物質は、酸化マグネシウムである
【0036】 本発明に係る一実施形態において、処理チャンバは、粒径が0.01〜0.9
μmの範囲にある好適なアルカリ性粒子を最も効率よく震動させるように構成さ
れている。このため、粒径が0.01〜0.9μmの範囲にあるアルカリ性粒子
は、実際の処理中に95〜99%が震動する。アルカリ性粒子の平均粒径は0.
1〜0.6μmであることが好ましく、0.3μmであることが最も好ましい。
【0037】 典型的なアルカリ性粒子の表面積は、BET測定法で100〜200m2/g
であり、好ましくは150m2/gである。紙表面にアルカリ性粒子が付着する
ような高活性を有するアルカリ性粒子で処理することが好ましい。活性が高い物
質は、アルカリ性粒子が即座に水酸化することや、水分と反応して水酸化物や塩
基性炭酸塩を生成することができるからである。
【0038】 本発明に係る他の実施形態においては、アルカリ性粒子は、構成塩を仮焼(好
適には瞬間仮焼(flash calcinization))することによって得られたものであ
ることが好ましい。例えば、塩基性マグネシウム炭酸塩は、400℃〜700℃
で公知の手法によって仮焼される。このような温度範囲では、平均粒径が0.3
μmであり、0.1〜0.9μmであるものが大多数を占める小粒子からなる高
活性の酸化マグネシウム凝集物の多分散体が得られる。寸法、活性および化学的
組成は、流動層を音響場に露呈した際、空気のような適切な気相媒体中における
アルカリ性粒子の非凝集性や分散性に影響を与える。サブミクロン範囲の粒子は
、画像や印刷物を見難くすることなく紙に浸透し、また、紙を被覆する。処理さ
れた紙は、アルカリ性粒子をしっかりと保持し、糊付けをしなくても通常の取り
扱いに耐え得る程度の充分な表面活性を有することが好ましい。
【0039】 上記したように、固有の音響エネルギ周波数を使用することにより、粒子を震
動させることができるだけではなく、粒子の塊が凝集しないようにすることもで
きる。周波数を変化させたり、複数個の音響振動子を互いに相違する周波数で使
用したりすることにより、粒子凝集物を全て分散させ粉砕することができる。離
散のための音響エネルギ法は、粒子床から連続的に導出したり、空気衝突あるい
は凝集体の分散や粉砕をさらに促進する超音波素子(ソニレータ)を介してアル
カリ性粒子が通過するような再循環機構を支援する。この再循環法により、本に
おける見開きまたは個別のページへガス流および/またはアルカリ性粒子を直接
供給することができ、これにより、個々のページを脱酸することができる。
【0040】 再循環は、アルカリ性粒子を導く手法ではあるが、紙を脱酸する粒子が付着す
る主たる機構は、濃縮層における粒子の音響的震動である。音響的に震動させる
ことのさらなる利点は、他の粒子に対するアルカリ性粒子の衝突により粒子の表
面が削られるので、表面に堆積した塩(すなわち、水酸化物や炭酸塩)を除去し
易いことにある。表面が削られた粒子では、利用可能な活性サイトの数、すなわ
ち、粒子の活性が上昇し、換言すれば、粒子における紙繊維質への付着が容易と
なる。
【0041】 一実施形態では、粒子床は、まず、凝集した粒子を粉砕する低周波数音響エネ
ルギに露呈される。そして、素材が脱酸される間、音響エネルギと周波数は、素
材を処理するために粒子の活性を最適化するように調整される。素材が処理され
る間、脱酸音響エネルギの振幅は、アルカリ性粒子が素材の処理に供される前に
凝集しないような条件下に保たれる。素材を脱酸する間、サブミクロン粒子を震
動させる音響周波数の範囲は、およそ1kHz〜1MHzであり、好ましくは1
5kHz〜500kHzである。音響震動エネルギの振幅は、アルカリ性粒子の
震動速度が1×10-1〜1×10-4m/秒となるように規定することが好ましい
。粒子を震動させるのに好適な周波数やエネルギは、粒子の濃度、処理チャンバ
の形状、振動子の寸法、振動子の数、チャンバ内の反射あるいは焦点合わせ素子
の数、処理される物品の性質による影響を受ける。
【0042】 離散は、通常、大気圧で起こる。脱酸処理チャンバ内を徐々に加圧することに
より、アルカリ性粒子を効率よく離散させることができる。脱酸処理チャンバの
圧力を3.45MPa(0.5psi)に上昇させることにより離散性を向上さ
せることができ、その結果、粒径が0.5μmよりも小さいアルカリ性粒子の数
がおよそ2倍となる。
【0043】 本発明に係る一実施形態では、様々な周波数を発する超音波振動子は、各壁の
少なくとも1つの振動子が他の振動子から少なくとも1つの出力周波数を発する
ように配置されている。振動子の周波数を混合することにより、永続的な波の発
生が最小限となる。別の実施形態では、共通の壁の各振動子が互いに相違する出
力周波数を発する。
【0044】 処理の間にアルカリ性粒子の粒径に応じて音響エネルギを変化させることによ
り、アルカリ性粒子の震動挙動をさらに向上させることができる。アルカリ性粒
子が音響エネルギにまず曝された際、粒子が凝集した塊の大多数は、低周波音響
エネルギによって最も効率よく震動する。離散が起こると、粒子の塊は粉砕され
、より高周波の音響エネルギに反応して効率よく振動するアルカリ性粒子床内に
は、小径粒子が高い割合で存在する。振動子は、低周波数で粒子を震動させ、粒
子凝集体が粉砕された際に高周波数に移行するように構成すればよい。
【0045】 本実施の形態に係る一実施形態では、アルカリ性粒子床は、物質の流れ方向に
振動子からの出力周波数が増加するように構成される。物質の出口近傍の振動子
は、低周波数を発する。次なる振動子の周波数は、最高周波数が封入口近傍の振
動子の列から発されるまで漸次的に上昇する。
【0046】 本発明の脱酸方法に係る一実施形態では、紙や書籍等の素材が処理チャンバ内
に配置され、処理の間、超音波的に震動するサブミクロンアルカリ性粒子の床内
に保持される。サブミクロンアルカリ性粒子の好適な濃度は、50〜1000g
/m3またはそれ以上である。本発明に係るシステムでは、バッチ処理で多数の
紙や書籍を処理することが可能である。
【0047】 本発明の連続処理に係る実施形態では、アルカリ性粒子がさらに細かくなると
きに高周波音響エネルギが供給される。システムにおいて、操作を連続的に行う
のに特に適切なのは、2個以上のセルまたは封入体を直列に連結し、各セルに周
波数出力をより高く上昇させる振動子を取り付けることである。例えば、第1セ
ル内の粒子は低周波数出力で震動し、第2セル内の粒子はより高い周波数出力で
震動し、続くセルでは出力周波数が徐々に上昇する振動子が設置されている。超
音波振動子の出力は、5kHzから5MHzまで上昇する。本発明に係る別の実
施形態では、プリンタや他の文書取扱機器に共通する自動給紙システムのような
コンベアシステムによってアルカリ性粒子床を通過する素材が連続的に脱酸され
る。素材における脱酸の均一性は、粒子の濃度、流動するアルカリ性粒子床内で
の素材の露呈時間、さらには、超音波振動の周波数と振幅によって達成すること
ができる。
【0048】 本発明に係る脱酸システムは、平行または次なる処理チャンバと構成するよう
にしてもよい。特に、高周波数で処理する際の時間が低周波数で処理する場合に
比して短いのであれば、脱酸システムを能率的にするため、単一周波数のチャン
バに低周波数チャンバを2個以上導入するようにしてもよい。または、1個の低
周波数チャンバに高周波数のチャンバを2個以上導入するようにしてもよい。
【0049】 本発明において、1枚の紙を処理する実施形態では、紙は、サブミクロンアル
カリ性粒子の超音波震動床を通過するように給紙用ローラにて搬送される。この
実施形態では、紙は、振動子と反射体が1インチ以下で互いに離間した領域を通
過する。システムエネルギを効率化する超音波励起による活性化ないし流動を起
こすためには、音響板間に介在する粒子床のみがあればよい。
【0050】 図2に、本発明の脱酸システムに係る実施形態を示す。このシステムでは、紙
搬送機構が組み込まれている。脱酸機構自体は、図1に示すとともに既述したシ
ステムに準拠している。紙搬送システムは、紙をアルカリ性粒子床119に供給
する供給ローラ215と、処理済紙を取り除く取出ローラ217とを有し、これ
により、連続処理の能力を向上させる。給紙脱酸システムは比較的小型であり、
屋内での処理に際して容易に適応可能である。
【0051】 素材が処理される際、該素材を処理するためにアルカリ性粒子が消費されるの
で、定期的に再充填するための粒子通路が必要である。本発明に係る一実施形態
では、サブミクロンアルカリ性粒子は貯蔵用容器に収容されており、必要に応じ
て処理チャンバに供給される。粒子は、傾斜、圧力、再循環機構またはその他の
適切な搬送機構によって貯蔵用容器から処理チャンバに移送される。貯蔵用容器
は、約3000〜4000枚の紙を脱酸することができる能力を有する。本発明
に係る脱酸システムが全てのアルカリ性粒子を消費した場合、コピー機の取り替
え可能なトナーカートリッジのように、貯蔵用容器が取り替えられる。アルカリ
性粒子が処理チャンバ内に封入されており、かつ大気に曝されることがないよう
にされているので、酸化マグネシウム等のような高活性の物質を使用することが
できる。高活性の粒子は、大気中の水分や二酸化炭素と反応するので雰囲気から
遮断することが必要である。
【0052】 図3に、本発明に係る一実施形態を示す。この実施形態では、剥き出しのサブ
ミクロンアルカリ性粒子を取り扱うことなくアルカリ性粒子の取り替えカートリ
ッジ303を再充填することが可能な脱酸ユニットハウジング305が組み込ま
れる。取り替えカートリッジ303には予備アルカリ性粒子が収容されており、
該取り替えカートリッジ303に封入されることによって予備アルカリ性粒子が
飛散することが回避される。また、取り替えカートリッジ303には、アルカリ
性粒子を脱酸処理チャンバに搬出する供給機構を組み込むようにしてもよい。
【0053】 図4に、本発明に係る一実施形態を示す。この実施形態では、製本済の書物や
書籍を処理することが可能である。製本済の素材403は、脱酸処理チャンバ4
01内において、アルカリ性粒子床419中に配置されている。製本済の素材4
03は、音響振動子409、411によって流動するアルカリ性粒子に各ページ
405の一部が露呈するように配置されている。フローノズル413は、各ペー
ジ405がアルカリ性粒子に露呈するような形態で、加圧気体またはアルカリ性
粒子が製本済の素材403の各ページ405に流れるようにする。全ページ40
5が脱酸された後、製本済の素材403が処理チャンバ401から導出される。
【0054】 図5に、本発明に係る脱酸ユニット503をプリンタまたはコピー機505と
ともに使用した概略図を示す。脱酸ユニット503は、素材からなる紙がプリン
タやコピー機505から排出された際に該紙が脱酸ユニット503に直接供給さ
れるように、プリンタまたはコピー機505の出力側に配設されている。プリン
タやコピー機505との併用により、時間の経過とともに酸腐食を起こさない素
材を作製することができる。内部に脱酸ユニット503を組み込んでプリンタや
コピー機505を構成するようにしてもよいし、または、脱酸ユニット503を
プリンタやコピー機505の外部に連結するようにしてもよい。
【0055】 本発明に係る脱酸法による処理前後での素材のpH変化を表1および表2に示
す。従来から知られているように、pHは、溶液の酸度やアルカリ度で測定され
る。pH7は中性を表し、数値が小さくなるほど酸度が強くなり、数値が高くな
るほどアルカリ度が強くなることを意味する。数値が1違う場合、酸度またはア
ルカリ度が10倍変化したことを示す。処理後にpH値が著しく上昇しているこ
と、換言すれば、素材がさらにアルカリ性となっていることに留意されたい。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】 *注記:処理後、付着した酸化マグネシウムは、自発的に紙中の水分や大気中
の水蒸気および二酸化炭素と反応して、以後は紙の脱酸剤としてのアルカリ含有
物となる水酸化マグネシウムと塩基性マグネシウム炭酸塩とを生成した。
【0058】 脱酸処理後、処理された素材に対して、取り扱いの際に適切な処理を付加的に
行うようにしてもよい。緩やかに保持された凝集物や過剰に存在するアルカリ性
粒子を除去するために、加圧ガスと穏やかな真空引きとを組み合わせて処理され
た紙を清浄するようにしてもよい。その他、処理済紙を湿潤空気に露呈し、アル
カリ性酸化物を水酸化物や塩基性炭酸塩に変換することによって粒子を紙に確実
に保持させる処理を行うようにしてもよい。
【0059】 アルカリ性粒子移送脱酸法においては、アルカリ性粒子が処理チャンバ内の雰
囲気に浮遊され、かつ素材に衝突する。アルカリ性粒子は、液相系では、固相−
液相界面を介して震動しなければならず、気相系では、固相−気相界面を介して
震動する。本発明では、固相−液相界面よりむしろ、固相−気相(気相中の紙−
浮遊粒子)界面を介して粒子を分散させる。固相−気相界面の境界層は、固相−
液相界面の境界層に比して著しく薄く、したがって、固相−気相界面を有する系
は、処理される素材にアルカリ性粒子を一層容易に搬送させることができる。
【0060】 粒子を浮遊させることには、液体に粒子を懸濁させる場合に比べ、その他の利
点もある。気相に浮遊した粒子は、製本済の書物や書籍のように形状が複雑なも
のであってもより均一な処理を施すことができる。ページを綴じる本の背表紙近
傍に存在するような狭い空間でも、粒子が容易に入り込むからである。粒子が浮
遊したガスの衝突速度は、粒子が懸濁した液体に比して著しく速く、このために
脱酸される素材に良好に浸透する。処理される素材に対するアルカリ性粒子が浮
遊したガスの接触もまた、液相系に比して気相系の方が著しく速い。
【0061】 紙および製本済の素材に対する脱酸システムについて説明した。特別な実施形
態を例示して本発明を説明したが、上述した開示内容に照らし、当業者であれば
、請求項の範囲内で種々の改変が可能なことは明らかであろう。すなわち、明細
書と図面は、特徴を限定するものではなく、例示的な説明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る脱酸装置の概略説明図である。
【図2】 平坦な素材を処理するために構成された本発明に係る脱酸装置の概略説明図で
ある。
【図3】 本発明に係る脱酸装置を構成する取り替え容器またはカートリッジの概略説明
図である。
【図4】 製本済の素材を処理するために構成された本発明に係る脱酸装置の概略説明図
である。
【図5】 プリンタまたはコピー機の出力側に配置された小型の付加的ユニットとして構
成された本発明に係る脱酸装置の概略説明図である。
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成13年5月17日(2001.5.17)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4D075 AB07 AB08 AB33 AB39 BB13Y CA31 CA47 DA04 DB18 DC27 EA02 EB01 EB57 4L055 AG10 AG16 BE20 CH30 FA20 FA30

Claims (27)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 音響エネルギでアルカリ性粒子を震動させる工程と、 リグノセルロース製の素材を震動する前記アルカリ性粒子に露呈する工程と、 を有することを特徴とするリグノセルロース製の素材の脱酸方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の脱酸方法において、前記アルカリ性粒子は、離散状態での寸法
    がサブミクロンであることを特徴とするリグノセルロース製の素材の脱酸方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の脱酸方法において、前記リグノセルロース製の素材は、当該リ
    グノセルロース製の素材がアルカリ性粒子床に挿入されることによって前記アル
    カリ性粒子に露呈されることを特徴とするリグノセルロース製の素材の脱酸方法
  4. 【請求項4】 請求項1記載の脱酸方法において、前記アルカリ性粒子は、酸化物、水酸化物
    、炭酸塩、その他の塩基性物質の塩の群から選択された粒子であることを特徴と
    するリグノセルロース製の素材の脱酸方法。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の脱酸方法において、前記音響エネルギを振動子によって発生さ
    せることを特徴とするリグノセルロース製の素材の脱酸方法。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の脱酸方法において、前記アルカリ性粒子を離散させ分散する工
    程をさらに有することを特徴とするリグノセルロース製の素材の脱酸方法。
  7. 【請求項7】 請求項1記載の脱酸方法において、前記アルカリ性粒子を前記アルカリ性粒子
    の流動床内で音響エネルギによって震動させることを特徴とするリグノセルロー
    ス製の素材の脱酸方法。
  8. 【請求項8】 音響エネルギによってアルカリ性粒子を震動させてアルカリ性粒子の流動床を
    設ける工程と、 前記アルカリ性粒子床にリグノセルロース製の素材からなる紙を通過させる工
    程と、 を有することを特徴とするリグノセルロース製の素材からなる平面紙の脱酸方
    法。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の脱酸方法において、前記アルカリ性粒子の寸法がサブミクロン
    であることを特徴とするリグノセルロース製の素材からなる平面紙の脱酸方法。
  10. 【請求項10】 請求項8記載の脱酸方法において、リグノセルロース製の素材からなる前記平
    面紙が紙送り出し機構の作用下に前記アルカリ性粒子床を通過することを特徴と
    するリグノセルロース製の素材からなる平面紙の脱酸方法。
  11. 【請求項11】 請求項8記載の脱酸方法において、前記アルカリ性粒子は、酸化物、水酸化物
    、炭酸塩、その他の塩基性物質の塩の群から選択された粒子であることを特徴と
    するリグノセルロース製の素材からなる平面紙の脱酸方法。
  12. 【請求項12】 請求項8記載の脱酸方法において、前記音響エネルギを超音波振動子によって
    発生させることを特徴とするリグノセルロース製の素材からなる平面紙の脱酸方
    法。
  13. 【請求項13】 請求項8記載の脱酸方法において、前記アルカリ性粒子を離散させ分散する工
    程をさらに有することを特徴とするリグノセルロース製の素材からなる平面紙の
    脱酸方法。
  14. 【請求項14】 請求項8記載の脱酸方法において、前記アルカリ性粒子をリグノセルロース製
    の素材に付着させる工程をさらに有することを特徴とするリグノセルロース製の
    素材からなる平面紙の脱酸方法。
  15. 【請求項15】 音響エネルギによってアルカリ性粒子の流動床を設ける工程と、 製本済の書籍を前記アルカリ性粒子床に挿入する工程と、 を有することを特徴とする製本済の書籍の脱酸方法。
  16. 【請求項16】 請求項15記載の脱酸方法において、製本済の前記書籍がアルカリ性粒子床に
    保持される一方で、音響振動子が複数のページに亘って往復移動することを特徴
    とする製本済の書籍の脱酸方法。
  17. 【請求項17】 請求項15記載の脱酸方法において、前記本のページをガス噴流でめくること
    を特徴とする製本済の書籍の脱酸方法。
  18. 【請求項18】 請求項17記載の脱酸方法において、アルカリ性粒子をガス噴流に供給する再
    循環システムを介してアルカリ性粒子をアルカリ性粒子床から再循環させること
    を特徴とする製本済の書籍の脱酸方法。
  19. 【請求項19】 請求項18記載の脱酸方法において、ソニレータ(sonilator)によって前記
    アルカリ性粒子を分散させ離散する工程をさらに有することを特徴とする製本済
    の書籍の脱酸方法。
  20. 【請求項20】 請求項15記載の脱酸方法において、前記音響エネルギは、アルカリ性粒子を
    分散させ離散させる周波数であることを特徴とする製本済の書籍の脱酸方法。
  21. 【請求項21】 処理チャンバと、 サブミクロンアルカリ性粒子床と、 音響振動子と、 を有することを特徴とする脱酸装置。
  22. 【請求項22】 請求項21記載の装置において、紙送り出し機構をさらに有することを特徴と
    する脱酸装置。
  23. 【請求項23】 請求項21記載の装置において、ガス噴射部を少なくとも1個有することを特
    徴とする脱酸装置。
  24. 【請求項24】 請求項21記載の装置において、前記サブミクロンアルカリ性粒子床が、酸化
    物、水酸化物、炭酸塩、その他の塩基性物質の塩の群から選択された粒子の床で
    あることを特徴とする脱酸装置。
  25. 【請求項25】 請求項21記載の装置において、前記音響振動子の少なくとも1個は、1kH
    z〜1MHzの範囲内の周波数を有する音響エネルギを発することを特徴とする
    脱酸装置。
  26. 【請求項26】 請求項21記載の装置において、前記音響振動子が処理チャンバの壁面に設置
    されていることを特徴とする脱酸装置。
  27. 【請求項27】 請求項21記載の装置において、サブミクロンアルカリ性粒子を収容した取り
    替えカートリッジをさらに有することを特徴とする脱酸装置。
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