JP2003347622A - 圧電素子の製造方法及び圧電素子、電歪アクチュエータの製造方法及び電歪アクチュエータ、液体噴射ヘッドの製造方法及び液体噴射ヘッド - Google Patents

圧電素子の製造方法及び圧電素子、電歪アクチュエータの製造方法及び電歪アクチュエータ、液体噴射ヘッドの製造方法及び液体噴射ヘッド

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JP2003347622A JP2002199180A JP2002199180A JP2003347622A JP 2003347622 A JP2003347622 A JP 2003347622A JP 2002199180 A JP2002199180 A JP 2002199180A JP 2002199180 A JP2002199180 A JP 2002199180A JP 2003347622 A JP2003347622 A JP 2003347622A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 多層構造の圧電素子の製造効率を高めると共
に、所望の圧電特性を付与する。 【解決手段】 圧力室12とは反対側の振動板表面に形
成された圧電素子は、互いに積層された上層圧電体34
及び下層圧電体35からなる圧電体層31と、この圧電
体層31に付与される電場を発生する電極層33,3
6,37とを備えた多層構造とする。共通上電極36及
び共通下電極37をそれぞれ、基電極42,44とこれ
らの基電極から各圧電体層31に延設された複数の枝電
極43,45とからなる櫛歯状電極によって構成する。
分極処理時において、上層圧電体34と下層圧電体35
を個別に分極すると共に、その分極条件も個々に設定す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧電素子、この圧
電素子を駆動源とする電歪アクチュエータ及び液体噴射
ヘッド、並びに、これらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】圧電素子は、電気エネルギーの供給によ
って変形するものであり、例えば、液体噴射ヘッド、マ
イクロポンプ、発音体(スピーカ等)用の駆動源として
広く用いられている。ここで、液体噴射ヘッドは、圧力
室内の液体に圧力変動を生じさせることでノズル開口か
ら液滴を吐出させるものであり、例えば、プリンタ等の
画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレ
ーの製造に用いられる液晶噴射ヘッド、カラーフィルタ
の製造に用いられる色材噴射ヘッド等がある。また、マ
イクロポンプは、極く微量の液体を扱うことができる超
小型のポンプであり、例えば、極く少量の薬液を送出す
る際に用いられる。
【0003】このような液体噴射ヘッドやマイクロポン
プに用いられる重要な部品の一つに、振動板の表面に圧
電素子を設けた電歪アクチュエータがある。この電歪ア
クチュエータは圧力室となる空部を有する圧力室形成基
板に取り付けられ、圧力室の一部を振動板で区画する。
そして、液滴を吐出したり、液体を送出したりする際に
は、圧電素子に駆動パルスを供給してこの圧電素子及び
振動板(即ち、圧力室の変形部分)を変形させ、圧力室
の容積を変化させる。
【0004】これらの液体噴射ヘッドやマイクロポンプ
においては、圧電素子の高周波駆動に対する強い要請が
ある。これは、液滴の高周波吐出を実現したり、送液能
力を高めたりするためである。そして、圧電素子の高周
波駆動を実現するためには、上記変形部分のコンプライ
アンスを従来よりも小さくし、且つ、圧電素子の変形量
を従来よりも大きくする必要がある。これは、変形部分
のコンプライアンスを小さくすると応答性が向上するた
め、従来よりも高い周波数での駆動が可能となること、
及び、圧電素子の変形量を大きくすると圧力室の容積変
化量が大きくなるため、吐出される液滴の量や送出され
る液体の量を増やすことができることによる。
【0005】そして、変形部分のコンプライアンスと圧
電素子の変形量の相反する特性を充足するものとして、
多層構造の圧電素子が提案されている。例えば、特開平
2−289352号公報には、圧電体層を上層圧電体と
下層圧電体の2層構造とし、上層圧電体と下層圧電体の
境界に駆動電極(個別電極)を形成すると共に、上層圧
電体の外表面と下層圧電体の外表面とにそれぞれ共通電
極を形成した構造の圧電素子が開示されている。同様
に、特開平10−34924号公報にも多層構造の圧電
素子が開示されている。
【0006】上記多層構造の圧電素子では、上層圧電体
と下層圧電体の境界に駆動電極が設けられているので、
各層の圧電体には、駆動電極から各共通電極までの間隔
(即ち、各層圧電体の厚さ)と、駆動電極と各共通電極
の電位差とによって定まる強さの電場が付与される。こ
のため、共通電極と駆動電極とで単層の圧電体を挟んだ
単層構造の圧電素子と比べた場合、圧電素子全体の厚さ
を多少厚くして変形部分のコンプライアンスを小さくし
ても、従来と同じ駆動電圧で大きく変形させることがで
きる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記多
層構造の圧電素子は現実に市販されるまでに至っていな
い。このため、実際の製品としては、単層の圧電体を共
通電極と駆動電極とで挟んだ単層構造の圧電素子を用い
ることを余儀なくされている。これには種々の要因が考
えられるが、多層構造の圧電素子について、効率よく製
造することや、各圧電素子に所望の圧電特性を付与する
ことが困難であったことも一因と考えられる。
【0008】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
であり、その目的は、製造効率を向上させることにあ
る。また、多層構造の圧電素子について所望の圧電特性
を付与することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために提案されたものであり、請求項1に記載の
ものは、圧電材料と電極材料とを積層して分極前圧電素
子を形成する素子形成工程と、この分極前圧電素子に分
極電圧を供給して分極する分極工程とを経て製造される
圧電素子の製造方法において、前記素子形成工程は、支
持部材の表面に共通下電極を形成する第1工程と、共通
下電極に重ねて下層圧電体を形成する第2工程と、共通
下電極とは反対側の下層圧電体の表面に駆動電極を形成
する第3工程と、駆動電極を覆うように上層圧電体を形
成する第4工程と、駆動電極とは反対側の上層圧電体の
表面に共通上電極を形成する第5工程とを含み、前記分
極工程は、前記共通上電極と駆動電極の間、及び、共通
下電極と駆動電極との間に分極電圧を供給することで、
上層圧電体と下層圧電体とを分極することを特徴とする
圧電素子の製造方法である。ここで、「上、下」とある
のは、圧電素子が設けられる振動板等の支持部材を基準
とした位置関係を示している。換言すれば、支持部材に
接合される作用面(変形により生じる力を出力する面)
を基準とした位置関係を示している。そして、支持部材
から近い側を「下」とし、支持部材から遠い側を「上」
として示している。
【0010】請求項2に記載のものは、前記分極工程
で、共通上電極と駆動電極の間に供給される分極電圧
と、共通下電極と駆動電極の間に供給される分極電圧と
を異ならせたことを特徴とする請求項1に記載の圧電素
子の製造方法である。
【0011】請求項3に記載のものは、前記分極工程
で、共通上電極と駆動電極の間と、共通下電極と駆動電
極の間とに個別に分極電圧を供給することで、上層圧電
体と下層圧電体とを個別に分極することを特徴とする請
求項1または請求項2に記載の圧電素子の製造方法であ
る。
【0012】請求項4に記載のものは、前記分極工程
で、共通上電極と駆動電極の間と、共通下電極と駆動電
極の間とに同時に分極電圧を供給することで、上層圧電
体と下層圧電体とを同時に分極することを特徴とする請
求項1に記載の圧電素子の製造方法である。
【0013】請求項5に記載のものは、前記分極工程よ
りも後に、前記共通上電極及び共通下電極を導通する導
通工程を行うことを特徴とする請求項1から請求項4の
何れかに記載の圧電素子の製造方法である。
【0014】請求項6に記載のものは、請求項1から請
求項5の何れかに記載の製造方法で製造されたことを特
徴とする圧電素子である。
【0015】請求項7に記載のものは、圧電材料と電極
材料とを積層して振動板の表面に分極前圧電素子を形成
する素子形成工程と、この分極前圧電素子に分極電圧を
供給して分極する分極工程とを経て製造される電歪アク
チュエータの製造方法において、前記素子形成工程は、
振動板の表面に共通下電極を形成する第1工程と、共通
下電極に重ねて下層圧電体を形成する第2工程と、共通
下電極とは反対側の下層圧電体の表面に駆動電極を形成
する第3工程と、駆動電極を覆うように上層圧電体を形
成する第4工程と、駆動電極とは反対側の上層圧電体の
表面に共通上電極を形成する第5工程とを含み、前記分
極工程は、前記共通上電極と駆動電極の間、及び、共通
下電極と駆動電極との間に分極電圧を供給することで、
上層圧電体と下層圧電体とを分極することを特徴とする
電歪アクチュエータの製造方法である。
【0016】請求項8に記載のものは、前記分極工程
で、共通上電極と駆動電極の間に供給される分極電圧
と、共通下電極と駆動電極の間に供給される分極電圧と
を異ならせたことを特徴とする請求項7に記載の電歪ア
クチュエータの製造方法である。
【0017】請求項9に記載のものは、前記分極工程
で、共通上電極と駆動電極の間と、共通下電極と駆動電
極の間とに個別に分極電圧を供給することで、上層圧電
体と下層圧電体とを個別に分極することを特徴とする請
求項7または請求項8に記載の電歪アクチュエータの製
造方法である。
【0018】請求項10に記載のものは、前記分極工程
で、共通上電極と駆動電極の間と、共通下電極と駆動電
極の間とに同時に分極電圧を供給することで、上層圧電
体と下層圧電体とを同時に分極することを特徴とする請
求項7に記載の電歪アクチュエータの製造方法である。
【0019】請求項11に記載のものは、前記分極工程
よりも後に、前記共通上電極及び共通下電極を導通する
導通工程を行うことを特徴とする請求項7から請求項1
0の何れかに記載の電歪アクチュエータの製造方法であ
る。
【0020】請求項12に記載のものは、請求項7から
請求項11の何れかに記載の製造方法で製造されたこと
を特徴とする電歪アクチュエータである。
【0021】請求項13に記載のものは、圧電材料と電
極材料とを積層して振動板の表面に分極前圧電素子を形
成する素子形成工程と、この分極前圧電素子に分極電圧
を供給して分極する分極工程とを経て製造される液体噴
射ヘッドの製造方法において、前記素子形成工程は、振
動板の表面に共通下電極を形成する第1工程と、共通下
電極に重ねて下層圧電体を形成する第2工程と、共通下
電極とは反対側の下層圧電体の表面に駆動電極を形成す
る第3工程と、駆動電極を覆うように上層圧電体を形成
する第4工程と、駆動電極とは反対側の上層圧電体の表
面に共通上電極を形成する第5工程とを含み、前記分極
工程は、前記共通上電極と駆動電極の間、及び、共通下
電極と駆動電極との間に分極電圧を供給することで、上
層圧電体と下層圧電体とを分極することを特徴とする液
体噴射ヘッドの製造方法である。
【0022】請求項14に記載のものは、前記分極工程
で、共通上電極と駆動電極の間に供給される分極電圧
と、共通下電極と駆動電極の間に供給される分極電圧と
を異ならせたことを特徴とする請求項13に記載の液体
噴射ヘッドの製造方法である。
【0023】請求項15に記載のものは、前記分極工程
で、共通上電極と駆動電極の間と、共通下電極と駆動電
極の間とに個別に分極電圧を供給することで、上層圧電
体と下層圧電体とを個別に分極することを特徴とする請
求項13または請求項14に記載の液体噴射ヘッドの製
造方法である。
【0024】請求項16に記載のものは、前記分極工程
で、共通上電極と駆動電極の間と、共通下電極と駆動電
極の間とに同時に分極電圧を供給することで、上層圧電
体と下層圧電体とを同時に分極することを特徴とする請
求項13に記載の液体噴射ヘッドの製造方法である。
【0025】請求項17に記載のものは、前記分極工程
よりも後に、前記共通上電極及び共通下電極を導通する
導通工程を行うことを特徴とする請求項13から請求項
16の何れかに記載の液体噴射ヘッドの製造方法であ
る。
【0026】請求項18に記載のものは、請求項13か
ら請求項17の何れかに記載の製造方法で製造されたこ
とを特徴とする液体噴射ヘッドである。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。ここでは、プリンタやプロッタ等
の画像記録装置に搭載される記録ヘッド(液体噴射ヘッ
ドの一種)を例に挙げて説明する。この記録ヘッドは、
例えば、図11に示すように、複数個のヘッド本体1…
を備え、これらのヘッド本体1…を取付ベース61に取
り付けて構成されている。
【0028】まず、図1及び図2に基づき、ヘッド本体
1の基本構造について説明する。このヘッド本体1は、
流路ユニット2とアクチュエータユニット3とから概略
構成されている。
【0029】流路ユニット2は、インク供給口(オリフ
ィス)4及びノズル連通口5の一部となる通孔を開設し
た供給口形成基板6と、共通インク室7となる通孔及び
ノズル連通口5の一部となる通孔を開設したインク室形
成基板8と、ノズル開口9…を副走査方向(記録ヘッド
が移動される主走査方向とは直交する方向)に沿って開
設したノズルプレート10から構成されている。これら
の供給口形成基板6、インク室形成基板8、及び、ノズ
ルプレート10は、例えば、ステンレス製の板材をプレ
ス加工することで作製されている。そして、流路ユニッ
ト2は、インク室形成基板8の一方の表面(図中下側)
にノズルプレート10を、他方の表面(同上側)に供給
口形成基板6をそれぞれ配置し、これらの供給口形成基
板6、インク室形成基板8、及び、ノズルプレート10
を接合することで作製される。例えば、シート状の接着
剤によって各部材6,8,10を接着することで作製さ
れる。
【0030】上記のノズル開口9は、図2に示すよう
に、所定ピッチで複数個列状に開設される。そして、列
設された複数のノズル開口9…によってノズル列11が
構成される。例えば、92個のノズル開口9…で1つの
ノズル列11が構成され、このノズル列11が横並びに
2列形成される。
【0031】アクチュエータユニット3は、ヘッドチッ
プとも呼ばれる部材である。このアクチュエータユニッ
ト3は、圧力室12となる通孔を開設した圧力室形成基
板13と、圧力室12の一部を区画する振動板14と、
供給側連通口15となる通孔及びノズル連通口5の一部
となる通孔を開設した蓋部材16と、駆動源としての圧
電素子17とによって構成される。これら各部材13,
14,16の板厚に関し、圧力室形成基板13、及び、
蓋部材16は、好ましくは50μm以上、より好ましく
は100μm以上である。また、振動板14は、好まし
くは50μm以下、より好ましくは3〜12μm程度で
ある。
【0032】なお、このアクチュエータユニット3にお
いて、振動板14と圧電素子17が本発明の電歪アクチ
ュエータを構成する。また、振動板14は、圧電素子1
7が設けられる支持部材の一種である。
【0033】そして、このアクチュエータユニット3
は、圧力室形成基板13の一方の表面に蓋部材16を、
他方の表面に振動板14をそれぞれ配置して各部材を接
合し、その後振動板14の表面に圧電素子17を形成す
ることで作製される。これらの中で圧力室形成基板1
3、振動板14、及び、蓋部材16は、アルミナや酸化
ジルコニウム等のセラミックスで作製されており、焼成
によって接合される。
【0034】これらの圧力室形成基板13,振動板1
4,蓋部材16の接合は、例えば次の手順で行われる。
まず、セラミックス原料、バインダー及び液媒等によっ
てセラミックスのスラリーを調整する。次に、ドクター
ブレード装置やリバースロールコーター装置等の一般的
な装置を用いて、スラリーをグリーンシート(未焼成の
シート材)に成形する。その後、このグリーンシートに
対して切削や打ち抜き等の加工を施して必要な通孔等を
形成し、圧力室形成基板13、振動板14、及び、蓋部
材16の各シート状前駆体を形成する。そして、各シー
ト状前駆体を積層及び焼成することにより、各シート状
前駆体を一体化して1枚のシート状部材を得る。この場
合、各シート状前駆体は一体焼成されるので、特別な接
着処理が不要である。また、各シート状前駆体の接合面
において高いシール性を得ることもできる。
【0035】また、1枚のシート状部材には、複数ユニ
ット分の圧力室12…やノズル連通口5…等が形成され
ている。換言すれば、1枚のシート状部材から複数のア
クチュエータユニット(ヘッドチップ)3…を作製す
る。例えば、1つのアクチュエータユニット3となるチ
ップ領域を1枚のシート状部材内にマトリクス状に複数
設定する。そして、圧電素子17等の必要な部材を各チ
ップ領域内に形成した後、このシート状部材(セラミッ
クスシート)をチップ領域毎に切断することで、複数の
アクチュエータユニット3…を得る。
【0036】上記の圧力室12は、ノズル列11とは直
交する方向に細長い空部であり、ノズル開口9に対応す
る複数形成されている。即ち、図2に示すように、ノズ
ル列方向に列設されている。そして、各圧力室12…の
一端は、ノズル連通口5を通じて対応するノズル開口9
に連通する。また、ノズル連通口5とは反対側の圧力室
12の他端は、供給側連通口15及びインク供給口4を
通じて共通インク室7に連通している。さらに、この圧
力室12の一部は、振動板14によって区画されてい
る。
【0037】上記の圧電素子17は、所謂撓み振動モー
ドの圧電素子であり、圧力室12とは反対側の振動板表
面に圧力室12毎に形成されている。この圧電素子17
の幅は圧力室12の幅と略等しく、長さは圧力室12の
長さよりも多少長い。そして、圧電素子17は、圧力室
12の長手方向を覆うように形成されている。この圧電
素子17は、例えば、図3に示すように、圧電体層31
と共通電極32と駆動電極33等によって構成される多
層構造であり、駆動電極33と共通電極32とによって
圧電体層31を挟んでいる。なお、この圧電素子17に
ついては、後で詳しく説明する。
【0038】上記の駆動電極33には駆動信号の供給源
(図示せず)が導通、即ち、電気的に接続される。ま
た、共通電極32は例えば接地電位に調整される。駆動
電極33に駆動信号が供給されると、駆動電極33と共
通電極32との間には電位差に応じた強さの電場が発生
される。この電場は圧電体層31に付与されるので、圧
電体層31は付与された電場の強さに応じて変形する。
即ち、駆動電極33の電位を高くする程、圧電体層31
は電場と直交する方向に収縮し、圧力室12の容積を少
なくするように振動板14を変形させる。一方、駆動電
極33の電位を低くする程、圧電体層31は電界と直交
する方向に伸長し、圧力室12の容積を増やすように振
動板14を変形させる。
【0039】そして、このアクチュエータユニット3と
上記の流路ユニット2とは、互いに接合される。例え
ば、供給口形成基板6と蓋部材16との間にシート状接
着剤を介在させ、この状態でアクチュエータユニット3
を流路ユニット2側に加圧することで接着される。
【0040】このように構成されたヘッド本体1には、
共通インク室7からインク供給口4、供給側連通口1
5、圧力室12、及び、ノズル連通口5を通じてノズル
開口9に至る一連のインク流路がノズル開口9毎に形成
されている。使用時においてこのインク流路内はインク
(液体の一種)で満たされている。そして、圧電素子1
7を変形させることで対応する圧力室12が収縮或いは
膨張し、圧力室12内のインクに圧力変動が生じる。こ
のインク圧力を制御することで、ノズル開口9からイン
ク滴を吐出させることができる。例えば、定常容積の圧
力室12を一旦膨張させた後に急激に収縮させると、圧
力室12の膨張に伴ってインクが充填され、その後の急
激な収縮によって圧力室12内のインクが加圧されてイ
ンク滴が吐出される。
【0041】ここで、高速記録のためには、より多くの
インク滴を短時間で吐出させる必要がある。この要求に
応えるためには、圧力室12を区画している部分の振動
板14及び圧電素子17(即ち、圧力室12における変
形部分)のコンプライアンスと、圧電素子17の変形量
とを考慮する必要がある。即ち、上記変形部分のコンプ
ライアンスが大きくなる程、変形に対する応答性が悪く
なり、高い周波数での駆動が困難になるからである。ま
た、変形部分のコンプライアンスが小さくなる程に、こ
の変形部分が変形し難くなって圧力室12の収縮量が少
なくなり、1滴のインク量が減ってしまうからである。
【0042】このような観点から、既に実用化されてい
る撓み振動モードの圧電素子を用いた記録ヘッドでは、
圧電素子は単層の圧電体を共通電極と駆動電極とで挟ん
だ単層構造のものが用いられており、最大応答周波数は
25kHz程度、最大インク滴量は13pL(ピコリッ
トル)程度であった。
【0043】そして、本実施形態では、多層構造の圧電
素子17を用いて振動板14のコンプライアンスを小さ
くし、さらに、この圧電素子17の構造を改良すること
により、必要量のインク滴を従来よりも高い周波数で吐
出可能にした。以下、この点について説明する。
【0044】まず、圧電素子17の構造について詳細に
説明する。図3に示すように、圧電体層31は、互いに
積層された上層圧電体(外側圧電体)34及び下層圧電
体(内側圧電体)35から構成される。また、共通電極
32は、共通上電極(共通外電極)36及び共通下電極
(共通内電極)37から構成される。そして、この共通
電極32と駆動電極(個別電極)33とが電極層を構成
する。
【0045】なお、ここでいう「上(外)」或いは「下
(内)」とは、振動板14を基準とした位置関係を示し
ている。換言すれば、圧電素子17における振動板14
との接合面(圧電素子17の変形を出力するための作用
面とも表現できる。)を基準とした位置関係を示してい
る。そして、「上(外)」とあるのは振動板14から遠
い側を示し、「下(内)」とあるのは振動板14に近い
側を示している。
【0046】上記の駆動電極33は上層圧電体34と下
層圧電体35の境界に形成され、共通下電極37は下層
圧電体35と振動板14との間に形成される。また、共
通上電極36は駆動電極33(下層圧電体35)とは反
対側の上層圧電体34の表面に形成される。即ち、この
圧電素子17は、振動板側から、共通下電極37、下層
圧電体35、駆動電極33、上層圧電体34、共通上電
極36の順で積層された多層構造である。そして、圧電
体層31の厚さは上層圧電体34と下層圧電体35の2
層を合計して約17μmであり、共通電極32を含めた
圧電素子17の全体の厚さは約20μmである。なお、
従来の単層構造の圧電素子17にあっては、素子全体の
厚さが約15μmである。従って、圧電素子17の厚さ
が増したことから、その分だけ振動板14のコンプライ
アンスが小さくなっている。
【0047】上記の共通上電極36と共通下電極37
は、駆動信号に拘わらず一定の電位に調整される。本実
施形態において、これらの共通上電極36と共通下電極
37は、電気的に絶縁された状態で形成され、分極工程
の終了後に導通される。そして、これらの共通電極3
6,37は、例えば接地電位に調整される。上記の駆動
電極33は、駆動信号の供給源に導通され、供給された
駆動信号に応じて電位を変化させる。従って、駆動信号
が供給されると、駆動電極33と共通上電極36との
間、及び、駆動電極33と共通下電極37との間には、
それぞれ向きが反対の電場が生じる。
【0048】そして、これらの各電極33,36,37
を構成する材料としては、例えば、金属単体、合金、電
気絶縁性セラミックスと金属との混合物等の各種導体が
選択されるが、焼成温度において変質等の不具合が生じ
ないことが要求される。本実施形態では、共通上電極3
6に金を用い、共通下電極37及び駆動電極33に白金
を用いている。
【0049】上記の上層圧電体34と下層圧電体35は
共に、例えばジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を主成分
とする圧電材料によって作製されている。そして、上層
圧電体34と下層圧電体35とは分極方向が反対であ
る。このため、駆動信号供給時の伸縮方向が上層圧電体
34と下層圧電体35とで揃い、支障なく変形すること
ができる。即ち、上層圧電体34及び下層圧電体35
は、駆動電極33の電位を高くする程に圧力室12の容
積を少なくするように振動板14を変形させ、駆動電極
33の電位を低くする程に圧力室12の容積を増やすよ
うに振動板14を変形させる。
【0050】この多層構造の圧電素子17を効率よく変
形させるには、駆動信号の供給に伴う上層圧電体34の
変形度合いを下層圧電体35の変形度合いよりも大きく
することが好ましい。即ち、同じ駆動信号が供給された
場合に、上層圧電体34を下層圧電体35よりも大きく
変形させるようにすることが好ましい。これは、上層圧
電体34の方が振動板14から離隔しているため、その
変形量が増幅されて振動板14に作用し、振動板14の
変形量を大きくすることができるからである。そして、
振動板14を大きく変形できると、収縮時における圧力
室12の容積をより小さくでき、単に多層構造の圧電素
子17を用いた場合よりも、圧力室12の膨張時と収縮
時の容積差を広げることができる。その結果、インク滴
の吐出量を増やすことができる。
【0051】そして、上層圧電体34の変形度合いを下
層圧電体35の変形度合いよりも大きくするには、例え
ば、上層圧電体34の分極度合いを下層圧電体35の分
極度合いよりも大きくしたり、上層圧電体34の厚さt
p1を下層圧電体35の厚さtp2の3/4以下に設定
したりすればよい。
【0052】また、上記の共通上電極36には、他の電
極(駆動電極33,共通下電極37)よりも薄く、柔軟
性が高い電極材料を用いている。これは、この共通上電
極36が他の電極よりも大きく変形することに起因す
る。即ち、この共通上電極36は、上層圧電体34の表
面に形成されているので、他の電極よりも大きく変形す
る。このため、共通上電極36については、他の電極よ
りも柔らかい材料を用い、及び/又は、層厚を薄くする
ことで、変形の繰り返しによる破損を防止できる。ま
た、層厚を薄くしても電気抵抗が過度に高くならないよ
うに、導電性が良い電極材料を用いてもよい。
【0053】具体的に説明すると、電極材料に関して
は、上記したように、共通上電極36を金で作製し、駆
動電極33及び共通下電極37を白金で作製している。
そして、電極の厚さに関し、共通下電極37及び駆動電
極33は2〜3μmであるのに対し、共通上電極36
(te1)はその1/10程度(例えば、0.3μm)
にする。この構成により、共通上電極36を圧電素子1
7に追従させて変形させることができ、圧電素子17の
変形量が損なわれてしまう不具合を防止できる。また、
圧電素子17の変形が繰り返し行われても断線等の故障
が生じ難い。さらに、共通上電極36を通じて電流を効
率よく流すことができる。
【0054】そして、上記の駆動電極33は、図5に示
すように、圧電素子17の一方の端部で圧電素子17の
外側に露出し、導通電極39を通じて供給端子40に導
通されている。この供給端子40は、駆動信号を供給す
るための接点端子であり、駆動電極33毎に複数形成さ
れている。各供給端子40…には、フレキシブル・フラ
ット・ケーブル(FFC)が備える駆動信号供給用の接
点端子(図示せず)が導通される。従って、駆動信号
は、供給端子40及び導通電極39を通じて、対応する
駆動電極33に供給される。なお、導通電極39は、圧
電素子17の端面、振動板14の表面、及び、供給端子
40が設けられる端子基板41の表面に一連に形成され
ている。そして、上記したように、共通下電極37も振
動板14の表面に形成されているが、導通電極39と共
通下電極37との間には電極が形成されない断線領域X
を設けてあるので、導通電極39と共通下電極37とは
電気的に絶縁されている。
【0055】ところで、上記したように、圧電素子17
はノズル開口9毎に形成されるので、圧電素子17の数
は1つのノズル列11に対して92個となる。そして、
共通上電極36と共通下電極37は互いに導通される
が、両共通電極36,37を圧電素子17毎に導通させ
たのでは作業効率が悪く生産性の向上が図れない。その
一方で、共通電極32(36,37)の形成時に両共通
電極36,37を導通させてしまうと、上層圧電体34
と下層圧電体35の分極条件が分極電圧に応じて定まっ
てしまう。このため、所望の圧電特性を付与することが
困難である。
【0056】この点に鑑み、本実施形態では、共通上電
極36及び共通下電極37を、基電極と複数の枝電極と
からなる櫛歯状電極によって構成し、上層圧電体34と
下層圧電体35とを個別に分極処理した後に基電極同士
を導通させる構成としている。即ち、各共通電極36,
37に関し、電極形成時においては互いに電気的に絶縁
した状態とし、圧電体特性の測定処理の後に導通する構
成としている。以下、この点について説明する。
【0057】図5から図7に示すように、共通上電極3
6は、ノズル列方向に細長い直線帯状の基電極(幹電
極)42と、この基電極42の一側から圧電素子17
(上層圧電体34)の表面を覆うように一連に形成され
た複数の枝電極43…とから構成された櫛歯状電極によ
って構成される。
【0058】上記の基電極42は、振動板14の表面に
形成されており、その幅は全ての圧電素子17に対して
同時に駆動信号が供給されても支障なく電流を流せるよ
うに、枝電極43の幅よりも十分に広く設定されてい
る。そして、この基電極42の長手方向端部には、図7
(a)に点線で示すように、導通領域42a(導通部の
一種)を設けてある。この導通領域42aは、共通上電
極36と共通下電極37とを導通させる際に用いられる
(後述する)。また、各枝電極43…は、図6に示すよ
うに、圧電体層31の一端(基電極42に近い側の端
部)の傾斜面を通って上層圧電体34の表面に形成され
る。
【0059】各枝電極43…の先端(基電極42とは反
対側の端部)は、図5に示すように、上層圧電体34に
おける他端の手前に位置している。これは、枝電極43
と駆動電極33とが空中放電によって短絡してしまう不
具合を防止するためである。即ち、各枝電極43…の端
部と駆動電極33とを離隔した状態で形成することで、
両電極43,33間の短絡を防止することができる。
【0060】また、共通下電極37は、その全体が振動
板表面に形成され、図7(b)に示すように、ノズル列
方向に細長い直線帯状の基電極(幹電極)44と、この
基電極44の一側から各圧電素子17(下層圧電体3
5)毎に形成された複数の枝電極45…と、基電極44
の一端から枝電極45とは反対側に延設された導通帯部
46(導通部の一種)とから構成された櫛歯状電極によ
って構成される。
【0061】上記の基電極44は、全ての圧電素子17
に対して同時に駆動信号が供給されても支障なく電流を
流せるように、その幅が各枝電極45…よりも十分に広
く設定されている。そして、上記の枝電極45は、圧電
体層31(下層圧電体35)と振動板14の間に位置
し、その先端(基電極44とは反対側の端部)は、図5
に示すように、共通上電極36と揃えられている。ま
た、上記の導通帯部46は、この共通下電極37を共通
上電極36に導通させる際に用いられる。即ち、この導
通帯部46は、共通上電極36の導通領域42aに近接
した位置に形成されており、図8(f)に示すように、
導通領域42aと導通帯部46とを跨いだ状態で半田や
ボンディングワイヤ等の導通部材47が設けられる。従
って、これらの両共通電極36,37を導通させるにあ
たっては、導通領域42aと導通帯部46の両方を跨が
せて導通部材47を形成するだけで足り、作業の簡素化
が図れ、且つ、自動化にも適する。
【0062】次に、図8を参照して、上記した共通上電
極36及び共通下電極37の形成手順と、各層圧電体3
4,35の分極処理とを説明する。なお、両共通電極3
6,37の形成と各層圧電体34,35の分極は一連の
工程(素子形成工程,切断工程,分極工程)で行われ
る。このため、その一連の工程について説明する。
【0063】素子形成工程では、分極処理される前の圧
電素子17(説明の便宜上「分極前圧電素子17」とも
いう。)を振動板14の表面に形成する。この素子形成
工程では、まず、図8(a)に示すように、支持部材の
一種である振動板14の表面に共通下電極37を形成す
る(第1工程)。本実施形態では、この共通下電極37
の形成を印刷法(厚膜印刷)によって行っている。この
ため、まず振動板14上の所定位置にマスクを載置し、
白金ペースト(電極材料の一種)をこのマスクを介して
上記した櫛歯状パターンに塗布する。白金ペーストを振
動板14上に塗布したならば、この白金ペーストを焼成
する。例えば、白金ペーストが塗布されたシート状部材
(焼成によって一体化された圧力室形成基板13,振動
板14,蓋部材16のシート状前駆体)を焼成炉に入れ
て所定温度で所定時間に亘って焼成する。この焼成によ
り、振動板14の表面には共通下電極37が形成され
る。なお、本実施形態では、この第1工程で導通電極3
9も振動板14の表面に形成している。
【0064】共通下電極37を形成したならば、次に、
図8(b)に示すように、その一部が共通下電極37の
一部の上に重なる状態で下層圧電体35を形成する(第
2工程)。ここでは、振動板14上の所定位置にマスク
を載置した後、圧電材料(例えば、ジルコン酸チタン酸
鉛)のペーストを振動板14の表面に所定パターンで塗
布する。具体的には、共通下電極37の枝電極45に重
ねて下層圧電体35となる圧電材料を塗布する。圧電材
料を塗布したならば、このペースト状の圧電材料を焼成
する。
【0065】その後は、図8(c)〜(e)に示すよう
に、同様な手順で、駆動電極33、上層圧電体34、共
通上電極36を順に形成する(第3工程〜第5工程)。
即ち、第3工程では、下層圧電体35の表面に白金ペー
スト(電極材料の一種)を塗布し、その後焼成すること
で駆動電極33を形成する。また、第4工程では、駆動
電極33を覆うように、下層圧電体35の上に重ねてペ
ースト状の圧電材料を塗布し、その後焼成することで上
層圧電体34を形成する。同様に、第5工程では、上層
圧電体34の表面に金ペースト(電極材料の一種)を塗
布し、その後焼成することで共通上電極36を形成す
る。
【0066】共通上電極36の形成により、分極前圧電
素子17が振動板14の表面に作製される。そして、分
極前圧電素子17を形成したならば、導通端子40等の
必要な部材を形成し、素子形成工程を終了する。この素
子形成工程が終了したならば、切断工程に移行する。こ
の切断工程では、各チップ領域毎にセラミックスシート
を切断し、複数のアクチュエータユニット3…を得る。
【0067】各アクチュエータユニット3…に切断した
ならば検査工程に移行し、圧電素子17を構成する各層
が正常に作製されたことを検査する。本実施形態では、
圧電体層(アクト)の寸法(例えば、厚さや幅)に相関
のある静電容量を、各層圧電体34,35毎に測定す
る。即ち、この検査工程では、まだ両共通電極36,3
7は導通されていないので、各層圧電体34,35毎に
静電容量を測定することができる。
【0068】そして、全ての圧電素子17…に対する検
査が終わったならば、測定した静電容量に基づいて、そ
のアクチュエータユニット3が、良品、或いは、不良品
であるのかを判断する。さらに、良品と判断されたアク
チュエータユニット3については、測定された静電容量
に基づいて分類する。例えば、アクチュエータユニット
3毎の平均静電容量に基づくランク分けを行ったり、静
電容量のばらつき範囲に基づくランク分けを行う。
【0069】アクチュエータユニット3を分類したなら
ば、作製された圧電素子17を分極処理する分極工程
(分極処理)を行う。この分極工程では、共通電極32
と駆動電極33とを用いて分極電圧を供給し、上層圧電
体34及び下層圧電体35を分極する。即ち、直流強電
界を加え、内部の電気双極子を一定方向に揃える。例え
ば、図9に示すように、選択スイッチS1を適宜切り替
えることで、共通上電極36及び共通下電極37の一方
を選択的に接地すると共に他方を電気的に浮遊状態(非
接続状態)とし、駆動電極33を電源に接続することで
分極を行う。この場合において、本実施形態では分極用
の接点を駆動電極33や各共通電極36,37で構成で
きるので、分極専用の端子を設ける必要がない。このた
め、作業性の向上が図れ、アクチュエータユニット3を
効率良く作製できる。ひいては、記録ヘッドを効率良く
作製できる。
【0070】この場合、分極処理は、使用予定の駆動電
圧よりも十分に高い電圧で行われる。本実施形態では、
駆動電圧が30V前後であるため、分極電圧は70V前
後に設定される。さらに、この分極電圧、及び、分極電
圧を供給する供給時間(分極処理時間)は、上層圧電体
34と下層圧電体35とで個別に設定される。例えば、
圧電定数を高く設定したい場合には、標準電圧よりも高
い分極電圧に設定し、標準処理時間よりも長い分極処理
時間に設定する。反対に、圧電定数を低く設定したい場
合には、標準電圧よりも低い分極電圧に設定し、標準処
理時間よりも短い分極処理時間に設定する。このよう
に、各層圧電体34,35に対して異なる分極条件を設
定することで、各圧電素子17に所望の圧電特性を付与
することができる。
【0071】例えば、駆動信号に対する上層圧電体34
の変形度合いを下層圧電体35よりも大きくしたい場合
には、上層圧電体34の分極率を下層圧電体35の分極
率よりも高くすればよい。従って、上層圧電体34の分
極時において、分極電圧を下層圧電体35に対する分極
電圧よりも高く設定したり、分極処理時間を下層圧電体
35に対する処理時間よりも長く設定したりすればよ
い。
【0072】各層圧電体34,35を分極したならば、
導通工程に移行する。この導通工程では、図8(f)に
示すように、分極処理後のアクチュエータユニット3に
対して半田付け等の導通処理を行い、共通上電極36と
共通下電極37とを導通させる。例えば、導通領域42
aと導通帯部46とを跨いだ状態で半田やボンディング
ワイヤ等の導通部材47を設ける。そして、この導通工
程の終了により、アクチュエータユニット3を製造する
一連の工程が終了する。
【0073】以上説明したように、本実施形態では、分
極処理において駆動電極33を通じて分極電圧を供給し
ているので作業性が良い。また、共通上電極36と共通
下電極37とが分極処理時において電気的に絶縁されて
いるので、上層圧電体34と下層圧電体35とを個別に
分極できる。このため、各層圧電体34,35を異なる
分極条件で分極することができる。例えば、分極電圧を
異ならせたり、分極時間を異ならせたりすることができ
る。さらに、測定処理においても共通上電極36と共通
下電極37とが電気的に絶縁されているので、1つの圧
電素子17における圧電体特性を上層圧電体34側と下
層圧電体35側とに分けて測定できる。これにより、圧
電体特性の揃った圧電アクチュエータ3を選別すること
ができ、製造上の不具合を高い精度で発見することがで
きる。
【0074】なお、以上は、共通上電極36と共通下電
極37の両方を櫛歯状電極によって構成した例を説明し
たが、少なくとも一方の共通電極36,37を圧電素子
17毎に個別に形成し、フレキシブル・フラット・ケー
ブル等の配線部材によって共通上電極36と共通下電極
37とを導通させてもよい。
【0075】図10(a)〜(c)に示した例は、共通
上電極36´を圧電素子17毎に個別に形成し、共通下
電極37´を櫛歯状に形成したものである。そして、共
通上電極36´と共通下電極37´とを導通するにあた
り、配線部材51を用いている点に特徴がある。即ち、
配線部材51の接続部には、図10(c)にその一部を
示すように導電層52を面状に形成し、この導電層52
を共通下電極37´(基電極)と各共通上電極36´…
との間に架け渡した状態で接合する。このように構成し
ても、分極処理で1つの圧電素子17を上層圧電体34
と下層圧電体35とに分けて分極できる。また、測定処
理において、圧電体特性を上層圧電体34と下層圧電体
35とに分けて測定できる。従って、圧電素子17に所
望の圧電特性を付与することができるし、圧電体特性の
揃った圧電アクチュエータ3を選別できる。
【0076】ところで、本発明は、上記実施形態に限定
されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて
種々の変形が可能である。
【0077】まず、分極処理に関し、上記実施形態で
は、上層圧電体34と下層圧電体35とを個別に分極す
る場合を例示したが、上層圧電体34と下層圧電体35
とを同時に分極してもよい。この場合、選択スイッチS
1を設けずに共通上電極36と共通下電極37とを接地
電位に調整し、駆動電極33を通じて分極電圧を供給す
る。このような方法を採ると、上層圧電体34と下層圧
電体35とを同時に分極できるので、作業の簡素化が図
れ、製造効率を向上させることができる。
【0078】また、以上は、液体噴射ヘッドの一種であ
る記録ヘッド、並びに、この記録ヘッドに用いられる圧
電素子及び電歪アクチュエータに本発明を適用した例を
説明したが、これに限定されるものではない。本発明
は、例えば、液晶噴射ヘッドや色材噴射ヘッド等といっ
た他の液体噴射ヘッド、及び、この液体噴射ヘッド用の
圧電素子及び電歪アクチュエータにも適用できる。ま
た、マイクロポンプや発音体用の圧電素子及び電歪アク
チュエータにも適用できる。
【0079】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば以
下の効果を奏する。即ち、上層圧電体及び下層圧電体を
分極するにあたり、共通上電極及び共通下電極と駆動電
極との間に分極電圧を供給するので、分極専用の端子を
設ける必要がなく、構成の簡素化が図れる。これによ
り、作業性が向上し製造効率を高めることができる。
【0080】また、共通上電極と駆動電極の間に供給さ
れる分極電圧と、共通下電極と駆動電極の間に供給され
る分極電圧とを異ならせた場合には、圧電素子に種々の
圧電特性を付与することができる。これにより、所望の
圧電特性を付与できる。
【0081】また、共通上電極と駆動電極の間と、共通
下電極と駆動電極の間とに同時に分極電圧を供給するこ
とで、上層圧電体と下層圧電体とを同時に分極するよう
にした場合には、作業性が向上し製造効率を高めること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヘッド本体の基本構造を説明する断面図であ
る。
【図2】ヘッド本体をノズルプレート側から見た図であ
る。
【図3】アクチュエータユニットの構造を説明する図で
あり、圧力室長手方向で切断した断面図である。
【図4】アクチュエータユニットの構造を説明する図で
あり、圧力室幅方向で切断した断面図である。
【図5】駆動電極の端部構造を説明する断面図である。
【図6】共通電極の端部構造を説明する断面図である。
【図7】共通電極の構造を説明する図であり、(a)は
共通上電極の平面図、(b)は共通下電極の平面図であ
る。
【図8】(a)〜(f)は、圧電素子の作成過程を説明
する模式図である。
【図9】圧電素子に対する分極処理を説明する模式図で
ある。
【図10】(a)〜(c)は、共通上電極を圧電素子毎
に形成し、配線部材によって共通上電極と共通下電極と
を導通させた例を説明する図である。
【図11】複数のヘッド本体を備えた記録ヘッドを説明
する図である。
【符号の説明】
1 ヘッド本体 2 流路ユニット 3 アクチュエータユニット 4 インク供給口 5 ノズル連通口 6 供給口形成基板 7 共通インク室 8 インク室形成基板 9 ノズル開口 10 ノズルプレート 11 ノズル列 12 圧力室 13 圧力室形成基板 14 振動板 15 供給側連通口 16 蓋部材 17 圧電素子 31 圧電体層 32 共通電極 33 駆動電極 34 上層圧電体 35 下層圧電体 36 共通上電極 37 共通下電極 38 圧力室隔壁 39 導通電極 40 供給端子 41 端子基板 42 共通上電極の基電極 43 共通上電極の枝電極 44 共通下電極の基電極 45 共通下電極の枝電極 46 共通下電極の導通帯部 47 導通部材 51 配線部材 52 導電層 61 取付ベース
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成15年6月10日(2003.6.1
0)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 圧電素子の製造方法及び圧電素子、電
歪アクチュエータの製造方法及び電歪アクチュエータ、
液体噴射ヘッドの製造方法及び液体噴射ヘッド
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、圧電素子、この圧
電素子を駆動源とする電歪アクチュエータ及び液体噴射
ヘッド、並びに、これらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】圧電素子は、電気エネルギーの供給によ
って変形するものであり、例えば、液体噴射ヘッド、マ
イクロポンプ、発音体(スピーカ等)用の駆動源として
広く用いられている。ここで、液体噴射ヘッドは、圧力
室内の液体に圧力変動を生じさせることでノズル開口か
ら液滴を吐出させるものであり、例えば、プリンタ等の
画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレ
ーの製造に用いられる液晶噴射ヘッド、カラーフィルタ
の製造に用いられる色材噴射ヘッド等がある。また、マ
イクロポンプは、極く微量の液体を扱うことができる超
小型のポンプであり、例えば、極く少量の薬液を送出す
る際に用いられる。
【0003】このような液体噴射ヘッドやマイクロポン
プに用いられる重要な部品の一つに、振動板の表面に圧
電素子を設けた電歪アクチュエータがある。この電歪ア
クチュエータは圧力室となる空部を有する圧力室形成基
板に取り付けられ、圧力室の一部を振動板で区画する。
そして、液滴を吐出したり、液体を送出したりする際に
は、圧電素子に駆動パルスを供給してこの圧電素子及び
振動板(即ち、圧力室の変形部分)を変形させ、圧力室
の容積を変化させる。
【0004】これらの液体噴射ヘッドやマイクロポンプ
においては、圧電素子の高周波駆動に対する強い要請が
ある。これは、液滴の高周波吐出を実現したり、送液能
力を高めたりするためである。そして、圧電素子の高周
波駆動を実現するためには、上記変形部分のコンプライ
アンスを従来よりも小さくし、且つ、圧電素子の変形量
を従来よりも大きくする必要がある。これは、変形部分
のコンプライアンスを小さくすると応答性が向上するた
め、従来よりも高い周波数での駆動が可能となること、
及び、圧電素子の変形量を大きくすると圧力室の容積変
化量が大きくなるため、吐出される液滴の量や送出され
る液体の量を増やすことができることによる。
【0005】そして、変形部分のコンプライアンスと圧
電素子の変形量の相反する特性を充足するものとして、
多層構造の圧電素子が提案されている。例えば、特開平
2−289352号公報には、圧電体層を上層圧電体と
下層圧電体の2層構造とし、上層圧電体と下層圧電体の
境界に駆動電極(個別電極)を形成すると共に、上層圧
電体の外表面と下層圧電体の外表面とにそれぞれ共通電
極を形成した構造の圧電素子が開示されている。同様
に、特開平10−34924号公報にも多層構造の圧電
素子が開示されている。
【0006】上記多層構造の圧電素子では、上層圧電体
と下層圧電体の境界に駆動電極が設けられているので、
各層の圧電体には、駆動電極から各共通電極までの間隔
(即ち、各層圧電体の厚さ)と、駆動電極と各共通電極
の電位差とによって定まる強さの電場が付与される。こ
のため、共通電極と駆動電極とで単層の圧電体を挟んだ
単層構造の圧電素子と比べた場合、圧電素子全体の厚さ
を多少厚くして変形部分のコンプライアンスを小さくし
ても、従来と同じ駆動電圧で大きく変形させることがで
きる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記多
層構造の圧電素子は現実に市販されるまでに至っていな
い。このため、実際の製品としては、単層の圧電体を共
通電極と駆動電極とで挟んだ単層構造の圧電素子を用い
ることを余儀なくされている。これには種々の要因が考
えられるが、多層構造の圧電素子について、効率よく製
造することや、各圧電素子に所望の圧電特性を付与する
ことが困難であったことも一因と考えられる。
【0008】本発明は、上記事情に鑑みてなされたもの
であり、その目的は、製造効率を向上させることにあ
る。また、多層構造の圧電素子について所望の圧電特性
を付与することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するために提案されたものであり、請求項1に記載の
ものは、圧電材料と電極材料とを積層して分極前圧電素
子を形成する素子形成工程と、この分極前圧電素子に分
極電圧を供給して分極する分極工程とを経て製造される
圧電素子の製造方法において、前記素子形成工程は、支
持部材の表面に第1の電極を形成する第1工程と、第1
電極に重ねて第1の圧電体を形成する第2工程と、
1の電極とは反対側の第1の圧電体の表面に第2の電極
を形成する第3工程と、第2の電極を覆うように第2の
圧電体を形成する第4工程と、第2の電極とは反対側の
第2の圧電体の表面に第3の電極を形成する第5工程と
を含み、前記分極工程は、前記第3の電極と第2の電極
の間、及び、第1の電極と第2の電極との間に分極電圧
を供給することで、第2の圧電体と第1の圧電体とを分
極することを特徴とする圧電素子の製造方法である。
【0010】請求項2に記載のものは、前記分極工程
で、第3の電極と第2の電極の間に供給される分極電圧
と、第1の電極と第2の電極の間に供給される分極電圧
とを異ならせたことを特徴とする請求項1に記載の圧電
素子の製造方法である。
【0011】請求項3に記載のものは、前記分極工程
で、第3の電極と第2の電極の間と、第1の電極と第2
電極の間とに個別に分極電圧を供給することで、第2
圧電体と第1の圧電体とを個別に分極することを特徴
とする請求項1または請求項2に記載の圧電素子の製造
方法である。
【0012】請求項4に記載のものは、前記分極工程
で、第3の電極と第2の電極の間と、第1の電極と第2
電極の間とに同時に分極電圧を供給することで、第2
圧電体と第1の圧電体とを同時に分極することを特徴
とする請求項1に記載の圧電素子の製造方法である。
【0013】請求項5に記載のものは、前記分極工程よ
りも後に、前記第3の電極及び第1の電極を導通する導
通工程を行うことを特徴とする請求項1から請求項4の
何れかに記載の圧電素子の製造方法である。
【0014】請求項6に記載のものは、請求項1から請
求項5の何れかに記載の製造方法で製造されたことを特
徴とする圧電素子である。
【0015】請求項7に記載のものは、圧電材料と電極
材料とを積層して振動板の表面に分極前圧電素子を形成
する素子形成工程と、この分極前圧電素子に分極電圧を
供給して分極する分極工程とを経て製造される電歪アク
チュエータの製造方法において、前記素子形成工程は、
振動板の表面に第1の電極を形成する第1工程と、第1
電極に重ねて第1の圧電体を形成する第2工程と、
1の電極とは反対側の第1の圧電体の表面に第2の電極
を形成する第3工程と、第2の電極を覆うように第2の
圧電体を形成する第4工程と、第2の電極とは反対側の
第2の圧電体の表面に第3の電極を形成する第5工程と
を含み、前記分極工程は、前記第3の電極と第2の電極
の間、及び、第1の電極と第2の電極との間に分極電圧
を供給することで、第2の圧電体と第1の圧電体とを分
極することを特徴とする電歪アクチュエータの製造方法
である。
【0016】請求項8に記載のものは、前記分極工程
で、第3の電極と第2の電極の間に供給される分極電圧
と、第1の電極と第2の電極の間に供給される分極電圧
とを異ならせたことを特徴とする請求項7に記載の電歪
アクチュエータの製造方法である。
【0017】請求項9に記載のものは、前記分極工程
で、第3の電極と第2の電極の間と、第1の電極と第2
電極の間とに個別に分極電圧を供給することで、第2
圧電体と第1の圧電体とを個別に分極することを特徴
とする請求項7または請求項8に記載の電歪アクチュエ
ータの製造方法である。
【0018】請求項10に記載のものは、前記分極工程
で、第3の電極と第2の電極の間と、第1の電極と第2
電極の間とに同時に分極電圧を供給することで、第2
圧電体と第1の圧電体とを同時に分極することを特徴
とする請求項7に記載の電歪アクチュエータの製造方法
である。
【0019】請求項11に記載のものは、前記分極工程
よりも後に、前記第3の電極及び第1の電極を導通する
導通工程を行うことを特徴とする請求項7から請求項1
0の何れかに記載の電歪アクチュエータの製造方法であ
る。
【0020】請求項12に記載のものは、請求項7から
請求項11の何れかに記載の製造方法で製造されたこと
を特徴とする電歪アクチュエータである。
【0021】請求項13に記載のものは、圧電材料と電
極材料とを積層して振動板の表面に分極前圧電素子を形
成する素子形成工程と、この分極前圧電素子に分極電圧
を供給して分極する分極工程とを経て製造される液体噴
射ヘッドの製造方法において、前記素子形成工程は、振
動板の表面に第1の電極を形成する第1工程と、第1の
電極に重ねて第1の圧電体を形成する第2工程と、第1
電極とは反対側の第1の圧電体の表面に第2の電極を
形成する第3工程と、第2の電極を覆うように第2の
電体を形成する第4工程と、第2の電極とは反対側の
2の圧電体の表面に第3の電極を形成する第5工程とを
含み、前記分極工程は、前記第3の電極と第2の電極の
間、及び、第1の電極と第2の電極との間に分極電圧を
供給することで、第2の圧電体と第1の圧電体とを分極
することを特徴とする液体噴射ヘッドの製造方法であ
る。
【0022】請求項14に記載のものは、前記分極工程
で、第3の電極と第2の電極の間に供給される分極電圧
と、第1の電極と第2の電極の間に供給される分極電圧
とを異ならせたことを特徴とする請求項13に記載の液
体噴射ヘッドの製造方法である。
【0023】請求項15に記載のものは、前記分極工程
で、第3の電極と第2の電極の間と、第1の電極と第2
電極の間とに個別に分極電圧を供給することで、第2
圧電体と第1の圧電体とを個別に分極することを特徴
とする請求項13または請求項14に記載の液体噴射ヘ
ッドの製造方法である。
【0024】請求項16に記載のものは、前記分極工程
で、第3の電極と第2の電極の間と、第1の電極と第2
電極の間とに同時に分極電圧を供給することで、第2
圧電体と第1の圧電体とを同時に分極することを特徴
とする請求項13に記載の液体噴射ヘッドの製造方法で
ある。
【0025】請求項17に記載のものは、前記分極工程
よりも後に、前記第3の電極及び第1の電極を導通する
導通工程を行うことを特徴とする請求項13から請求項
16の何れかに記載の液体噴射ヘッドの製造方法であ
る。
【0026】請求項18に記載のものは、請求項13か
ら請求項17の何れかに記載の製造方法で製造されたこ
とを特徴とする液体噴射ヘッドである。
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。ここでは、プリンタやプロッタ等
の画像記録装置に搭載される記録ヘッド(液体噴射ヘッ
ドの一種)を例に挙げて説明する。この記録ヘッドは、
例えば、図11に示すように、複数個のヘッド本体1…
を備え、これらのヘッド本体1…を取付ベース61に取
り付けて構成されている。
【0028】まず、図1及び図2に基づき、ヘッド本体
1の基本構造について説明する。このヘッド本体1は、
流路ユニット2とアクチュエータユニット3とから概略
構成されている。
【0029】流路ユニット2は、インク供給口(オリフ
ィス)4及びノズル連通口5の一部となる通孔を開設し
た供給口形成基板6と、共通インク室7となる通孔及び
ノズル連通口5の一部となる通孔を開設したインク室形
成基板8と、ノズル開口9…を副走査方向(記録ヘッド
が移動される主走査方向とは直交する方向)に沿って開
設したノズルプレート10から構成されている。これら
の供給口形成基板6、インク室形成基板8、及び、ノズ
ルプレート10は、例えば、ステンレス製の板材をプレ
ス加工することで作製されている。そして、流路ユニッ
ト2は、インク室形成基板8の一方の表面(図中下側)
にノズルプレート10を、他方の表面(同上側)に供給
口形成基板6をそれぞれ配置し、これらの供給口形成基
板6、インク室形成基板8、及び、ノズルプレート10
を接合することで作製される。例えば、シート状の接着
剤によって各部材6,8,10を接着することで作製さ
れる。
【0030】上記のノズル開口9は、図2に示すよう
に、所定ピッチで複数個列状に開設される。そして、列
設された複数のノズル開口9…によってノズル列11が
構成される。例えば、92個のノズル開口9…で1つの
ノズル列11が構成され、このノズル列11が横並びに
2列形成される。
【0031】アクチュエータユニット3は、ヘッドチッ
プとも呼ばれる部材である。このアクチュエータユニッ
ト3は、圧力室12となる通孔を開設した圧力室形成基
板13と、圧力室12の一部を区画する振動板14と、
供給側連通口15となる通孔及びノズル連通口5の一部
となる通孔を開設した蓋部材16と、駆動源としての圧
電素子17とによって構成される。これら各部材13,
14,16の板厚に関し、圧力室形成基板13、及び、
蓋部材16は、好ましくは50μm以上、より好ましく
は100μm以上である。また、振動板14は、好まし
くは50μm以下、より好ましくは3〜12μm程度で
ある。
【0032】なお、このアクチュエータユニット3にお
いて、振動板14と圧電素子17が本発明の電歪アクチ
ュエータを構成する。また、振動板14は、圧電素子1
7が設けられる支持部材の一種である。
【0033】そして、このアクチュエータユニット3
は、圧力室形成基板13の一方の表面に蓋部材16を、
他方の表面に振動板14をそれぞれ配置して各部材を接
合し、その後振動板14の表面に圧電素子17を形成す
ることで作製される。これらの中で圧力室形成基板1
3、振動板14、及び、蓋部材16は、アルミナや酸化
ジルコニウム等のセラミックスで作製されており、焼成
によって接合される。
【0034】これらの圧力室形成基板13,振動板1
4,蓋部材16の接合は、例えば次の手順で行われる。
まず、セラミックス原料、バインダー及び液媒等によっ
てセラミックスのスラリーを調整する。次に、ドクター
ブレード装置やリバースロールコーター装置等の一般的
な装置を用いて、スラリーをグリーンシート(未焼成の
シート材)に成形する。その後、このグリーンシートに
対して切削や打ち抜き等の加工を施して必要な通孔等を
形成し、圧力室形成基板13、振動板14、及び、蓋部
材16の各シート状前駆体を形成する。そして、各シー
ト状前駆体を積層及び焼成することにより、各シート状
前駆体を一体化して1枚のシート状部材を得る。この場
合、各シート状前駆体は一体焼成されるので、特別な接
着処理が不要である。また、各シート状前駆体の接合面
において高いシール性を得ることもできる。
【0035】また、1枚のシート状部材には、複数ユニ
ット分の圧力室12…やノズル連通口5…等が形成され
ている。換言すれば、1枚のシート状部材から複数のア
クチュエータユニット(ヘッドチップ)3…を作製す
る。例えば、1つのアクチュエータユニット3となるチ
ップ領域を1枚のシート状部材内にマトリクス状に複数
設定する。そして、圧電素子17等の必要な部材を各チ
ップ領域内に形成した後、このシート状部材(セラミッ
クスシート)をチップ領域毎に切断することで、複数の
アクチュエータユニット3…を得る。
【0036】上記の圧力室12は、ノズル列11とは直
交する方向に細長い空部であり、ノズル開口9に対応す
る複数形成されている。即ち、図2に示すように、ノズ
ル列方向に列設されている。そして、各圧力室12…の
一端は、ノズル連通口5を通じて対応するノズル開口9
に連通する。また、ノズル連通口5とは反対側の圧力室
12の他端は、供給側連通口15及びインク供給口4を
通じて共通インク室7に連通している。さらに、この圧
力室12の一部は、振動板14によって区画されてい
る。
【0037】上記の圧電素子17は、所謂撓み振動モー
ドの圧電素子であり、圧力室12とは反対側の振動板表
面に圧力室12毎に形成されている。この圧電素子17
の幅は圧力室12の幅と略等しく、長さは圧力室12の
長さよりも多少長い。そして、圧電素子17は、圧力室
12の長手方向を覆うように形成されている。この圧電
素子17は、例えば、図3に示すように、圧電体層31
と共通電極32と駆動電極33等によって構成される多
層構造であり、駆動電極33と共通電極32とによって
圧電体層31を挟んでいる。なお、この圧電素子17に
ついては、後で詳しく説明する。
【0038】上記の駆動電極33には駆動信号の供給源
(図示せず)が導通、即ち、電気的に接続される。ま
た、共通電極32は例えば接地電位に調整される。駆動
電極33に駆動信号が供給されると、駆動電極33と共
通電極32との間には電位差に応じた強さの電場が発生
される。この電場は圧電体層31に付与されるので、圧
電体層31は付与された電場の強さに応じて変形する。
即ち、駆動電極33の電位を高くする程、圧電体層31
は電場と直交する方向に収縮し、圧力室12の容積を少
なくするように振動板14を変形させる。一方、駆動電
極33の電位を低くする程、圧電体層31は電界と直交
する方向に伸長し、圧力室12の容積を増やすように振
動板14を変形させる。
【0039】そして、このアクチュエータユニット3と
上記の流路ユニット2とは、互いに接合される。例え
ば、供給口形成基板6と蓋部材16との間にシート状接
着剤を介在させ、この状態でアクチュエータユニット3
を流路ユニット2側に加圧することで接着される。
【0040】このように構成されたヘッド本体1には、
共通インク室7からインク供給口4、供給側連通口1
5、圧力室12、及び、ノズル連通口5を通じてノズル
開口9に至る一連のインク流路がノズル開口9毎に形成
されている。使用時においてこのインク流路内はインク
(液体の一種)で満たされている。そして、圧電素子1
7を変形させることで対応する圧力室12が収縮或いは
膨張し、圧力室12内のインクに圧力変動が生じる。こ
のインク圧力を制御することで、ノズル開口9からイン
ク滴を吐出させることができる。例えば、定常容積の圧
力室12を一旦膨張させた後に急激に収縮させると、圧
力室12の膨張に伴ってインクが充填され、その後の急
激な収縮によって圧力室12内のインクが加圧されてイ
ンク滴が吐出される。
【0041】ここで、高速記録のためには、より多くの
インク滴を短時間で吐出させる必要がある。この要求に
応えるためには、圧力室12を区画している部分の振動
板14及び圧電素子17(即ち、圧力室12における変
形部分)のコンプライアンスと、圧電素子17の変形量
とを考慮する必要がある。即ち、上記変形部分のコンプ
ライアンスが大きくなる程、変形に対する応答性が悪く
なり、高い周波数での駆動が困難になるからである。ま
た、変形部分のコンプライアンスが小さくなる程に、こ
の変形部分が変形し難くなって圧力室12の収縮量が少
なくなり、1滴のインク量が減ってしまうからである。
【0042】このような観点から、既に実用化されてい
る撓み振動モードの圧電素子を用いた記録ヘッドでは、
圧電素子は単層の圧電体を共通電極と駆動電極とで挟ん
だ単層構造のものが用いられており、最大応答周波数は
25kHz程度、最大インク滴量は13pL(ピコリッ
トル)程度であった。
【0043】そして、本実施形態では、多層構造の圧電
素子17を用いて振動板14のコンプライアンスを小さ
くし、さらに、この圧電素子17の構造を改良すること
により、必要量のインク滴を従来よりも高い周波数で吐
出可能にした。以下、この点について説明する。
【0044】まず、圧電素子17の構造について詳細に
説明する。図3に示すように、圧電体層31は、互いに
積層された上層圧電体(外側圧電体,第2の圧電体)3
4及び下層圧電体(内側圧電体,第1の圧電体)35か
ら構成される。また、共通電極32は、共通上電極(共
通外電極,第3の電極)36及び共通下電極(共通内電
,第1の電極)37から構成される。そして、この共
通電極32と駆動電極(個別電極,第2の電極)33と
が電極層を構成する。
【0045】なお、ここでいう「上(外)」或いは「下
(内)」とは、振動板14を基準とした位置関係を示し
ている。換言すれば、圧電素子17における振動板14
との接合面(圧電素子17の変形を出力するための作用
面とも表現できる。)を基準とした位置関係を示してい
る。そして、「上(外)」とあるのは振動板14から遠
い側を示し、「下(内)」とあるのは振動板14に近い
側を示している。
【0046】上記の駆動電極33は上層圧電体34と下
層圧電体35の境界に形成され、共通下電極37は下層
圧電体35と振動板14との間に形成される。また、共
通上電極36は駆動電極33(下層圧電体35)とは反
対側の上層圧電体34の表面に形成される。即ち、この
圧電素子17は、振動板側から、共通下電極37、下層
圧電体35、駆動電極33、上層圧電体34、共通上電
極36の順で積層された多層構造である。そして、圧電
体層31の厚さは上層圧電体34と下層圧電体35の2
層を合計して約17μmであり、共通電極32を含めた
圧電素子17の全体の厚さは約20μmである。なお、
従来の単層構造の圧電素子17にあっては、素子全体の
厚さが約15μmである。従って、圧電素子17の厚さ
が増したことから、その分だけ振動板14のコンプライ
アンスが小さくなっている。
【0047】上記の共通上電極36と共通下電極37
は、駆動信号に拘わらず一定の電位に調整される。本実
施形態において、これらの共通上電極36と共通下電極
37は、電気的に絶縁された状態で形成され、分極工程
の終了後に導通される。そして、これらの共通電極3
6,37は、例えば接地電位に調整される。上記の駆動
電極33は、駆動信号の供給源に導通され、供給された
駆動信号に応じて電位を変化させる。従って、駆動信号
が供給されると、駆動電極33と共通上電極36との
間、及び、駆動電極33と共通下電極37との間には、
それぞれ向きが反対の電場が生じる。
【0048】そして、これらの各電極33,36,37
を構成する材料としては、例えば、金属単体、合金、電
気絶縁性セラミックスと金属との混合物等の各種導体が
選択されるが、焼成温度において変質等の不具合が生じ
ないことが要求される。本実施形態では、共通上電極3
6に金を用い、共通下電極37及び駆動電極33に白金
を用いている。
【0049】上記の上層圧電体34と下層圧電体35は
共に、例えばジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を主成分
とする圧電材料によって作製されている。そして、上層
圧電体34と下層圧電体35とは分極方向が反対であ
る。このため、駆動信号供給時の伸縮方向が上層圧電体
34と下層圧電体35とで揃い、支障なく変形すること
ができる。即ち、上層圧電体34及び下層圧電体35
は、駆動電極33の電位を高くする程に圧力室12の容
積を少なくするように振動板14を変形させ、駆動電極
33の電位を低くする程に圧力室12の容積を増やすよ
うに振動板14を変形させる。
【0050】この多層構造の圧電素子17を効率よく変
形させるには、駆動信号の供給に伴う上層圧電体34の
変形度合いを下層圧電体35の変形度合いよりも大きく
することが好ましい。即ち、同じ駆動信号が供給された
場合に、上層圧電体34を下層圧電体35よりも大きく
変形させるようにすることが好ましい。これは、上層圧
電体34の方が振動板14から離隔しているため、その
変形量が増幅されて振動板14に作用し、振動板14の
変形量を大きくすることができるからである。そして、
振動板14を大きく変形できると、収縮時における圧力
室12の容積をより小さくでき、単に多層構造の圧電素
子17を用いた場合よりも、圧力室12の膨張時と収縮
時の容積差を広げることができる。その結果、インク滴
の吐出量を増やすことができる。
【0051】そして、上層圧電体34の変形度合いを下
層圧電体35の変形度合いよりも大きくするには、例え
ば、上層圧電体34の分極度合いを下層圧電体35の分
極度合いよりも大きくしたり、上層圧電体34の厚さt
p1を下層圧電体35の厚さtp2の3/4以下に設定
したりすればよい。
【0052】また、上記の共通上電極36には、他の電
極(駆動電極33,共通下電極37)よりも薄く、柔軟
性が高い電極材料を用いている。これは、この共通上電
極36が他の電極よりも大きく変形することに起因す
る。即ち、この共通上電極36は、上層圧電体34の表
面に形成されているので、他の電極よりも大きく変形す
る。このため、共通上電極36については、他の電極よ
りも柔らかい材料を用い、及び/又は、層厚を薄くする
ことで、変形の繰り返しによる破損を防止できる。ま
た、層厚を薄くしても電気抵抗が過度に高くならないよ
うに、導電性が良い電極材料を用いてもよい。
【0053】具体的に説明すると、電極材料に関して
は、上記したように、共通上電極36を金で作製し、駆
動電極33及び共通下電極37を白金で作製している。
そして、電極の厚さに関し、共通下電極37及び駆動電
極33は2〜3μmであるのに対し、共通上電極36
(te1)はその1/10程度(例えば、0.3μm)
にする。この構成により、共通上電極36を圧電素子1
7に追従させて変形させることができ、圧電素子17の
変形量が損なわれてしまう不具合を防止できる。また、
圧電素子17の変形が繰り返し行われても断線等の故障
が生じ難い。さらに、共通上電極36を通じて電流を効
率よく流すことができる。
【0054】そして、上記の駆動電極33は、図5に示
すように、圧電素子17の一方の端部で圧電素子17の
外側に露出し、導通電極39を通じて供給端子40に導
通されている。この供給端子40は、駆動信号を供給す
るための接点端子であり、駆動電極33毎に複数形成さ
れている。各供給端子40…には、フレキシブル・フラ
ット・ケーブル(FFC)が備える駆動信号供給用の接
点端子(図示せず)が導通される。従って、駆動信号
は、供給端子40及び導通電極39を通じて、対応する
駆動電極33に供給される。なお、導通電極39は、圧
電素子17の端面、振動板14の表面、及び、供給端子
40が設けられる端子基板41の表面に一連に形成され
ている。そして、上記したように、共通下電極37も振
動板14の表面に形成されているが、導通電極39と共
通下電極37との間には電極が形成されない断線領域X
を設けてあるので、導通電極39と共通下電極37とは
電気的に絶縁されている。
【0055】ところで、上記したように、圧電素子17
はノズル開口9毎に形成されるので、圧電素子17の数
は1つのノズル列11に対して92個となる。そして、
共通上電極36と共通下電極37は互いに導通される
が、両共通電極36,37を圧電素子17毎に導通させ
たのでは作業効率が悪く生産性の向上が図れない。その
一方で、共通電極32(36,37)の形成時に両共通
電極36,37を導通させてしまうと、上層圧電体34
と下層圧電体35の分極条件が分極電圧に応じて定まっ
てしまう。このため、所望の圧電特性を付与することが
困難である。
【0056】この点に鑑み、本実施形態では、共通上電
極36及び共通下電極37を、基電極と複数の枝電極と
からなる櫛歯状電極によって構成し、上層圧電体34と
下層圧電体35とを個別に分極処理した後に基電極同士
を導通させる構成としている。即ち、各共通電極36,
37に関し、電極形成時においては互いに電気的に絶縁
した状態とし、圧電体特性の測定処理の後に導通する構
成としている。以下、この点について説明する。
【0057】図5から図7に示すように、共通上電極3
6は、ノズル列方向に細長い直線帯状の基電極(幹電
極)42と、この基電極42の一側から圧電素子17
(上層圧電体34)の表面を覆うように一連に形成され
た複数の枝電極43…とから構成された櫛歯状電極によ
って構成される。
【0058】上記の基電極42は、振動板14の表面に
形成されており、その幅は全ての圧電素子17に対して
同時に駆動信号が供給されても支障なく電流を流せるよ
うに、枝電極43の幅よりも十分に広く設定されてい
る。そして、この基電極42の長手方向端部には、図7
(a)に点線で示すように、導通領域42a(導通部の
一種)を設けてある。この導通領域42aは、共通上電
極36と共通下電極37とを導通させる際に用いられる
(後述する)。また、各枝電極43…は、図6に示すよ
うに、圧電体層31の一端(基電極42に近い側の端
部)の傾斜面を通って上層圧電体34の表面に形成され
る。
【0059】各枝電極43…の先端(基電極42とは反
対側の端部)は、図5に示すように、上層圧電体34に
おける他端の手前に位置している。これは、枝電極43
と駆動電極33とが空中放電によって短絡してしまう不
具合を防止するためである。即ち、各枝電極43…の端
部と駆動電極33とを離隔した状態で形成することで、
両電極43,33間の短絡を防止することができる。
【0060】また、共通下電極37は、その全体が振動
板表面に形成され、図7(b)に示すように、ノズル列
方向に細長い直線帯状の基電極(幹電極)44と、この
基電極44の一側から各圧電素子17(下層圧電体3
5)毎に形成された複数の枝電極45…と、基電極44
の一端から枝電極45とは反対側に延設された導通帯部
46(導通部の一種)とから構成された櫛歯状電極によ
って構成される。
【0061】上記の基電極44は、全ての圧電素子17
に対して同時に駆動信号が供給されても支障なく電流を
流せるように、その幅が各枝電極45…よりも十分に広
く設定されている。そして、上記の枝電極45は、圧電
体層31(下層圧電体35)と振動板14の間に位置
し、その先端(基電極44とは反対側の端部)は、図5
に示すように、共通上電極36と揃えられている。ま
た、上記の導通帯部46は、この共通下電極37を共通
上電極36に導通させる際に用いられる。即ち、この導
通帯部46は、共通上電極36の導通領域42aに近接
した位置に形成されており、図8(f)に示すように、
導通領域42aと導通帯部46とを跨いだ状態で半田や
ボンディングワイヤ等の導通部材47が設けられる。従
って、これらの両共通電極36,37を導通させるにあ
たっては、導通領域42aと導通帯部46の両方を跨が
せて導通部材47を形成するだけで足り、作業の簡素化
が図れ、且つ、自動化にも適する。
【0062】次に、図8を参照して、上記した共通上電
極36及び共通下電極37の形成手順と、各層圧電体3
4,35の分極処理とを説明する。なお、両共通電極3
6,37の形成と各層圧電体34,35の分極は一連の
工程(素子形成工程,切断工程,分極工程)で行われ
る。このため、その一連の工程について説明する。
【0063】素子形成工程では、分極処理される前の圧
電素子17(説明の便宜上「分極前圧電素子17」とも
いう。)を振動板14の表面に形成する。この素子形成
工程では、まず、図8(a)に示すように、支持部材の
一種である振動板14の表面に共通下電極37を形成す
る(第1工程)。本実施形態では、この共通下電極37
の形成を印刷法(厚膜印刷)によって行っている。この
ため、まず振動板14上の所定位置にマスクを載置し、
白金ペースト(電極材料の一種)をこのマスクを介して
上記した櫛歯状パターンに塗布する。白金ペーストを振
動板14上に塗布したならば、この白金ペーストを焼成
する。例えば、白金ペーストが塗布されたシート状部材
(焼成によって一体化された圧力室形成基板13,振動
板14,蓋部材16のシート状前駆体)を焼成炉に入れ
て所定温度で所定時間に亘って焼成する。この焼成によ
り、振動板14の表面には共通下電極37が形成され
る。なお、本実施形態では、この第1工程で導通電極3
9も振動板14の表面に形成している。
【0064】共通下電極37を形成したならば、次に、
図8(b)に示すように、その一部が共通下電極37の
一部の上に重なる状態で下層圧電体35を形成する(第
2工程)。ここでは、振動板14上の所定位置にマスク
を載置した後、圧電材料(例えば、ジルコン酸チタン酸
鉛)のペーストを振動板14の表面に所定パターンで塗
布する。具体的には、共通下電極37の枝電極45に重
ねて下層圧電体35となる圧電材料を塗布する。圧電材
料を塗布したならば、このペースト状の圧電材料を焼成
する。
【0065】その後は、図8(c)〜(e)に示すよう
に、同様な手順で、駆動電極33、上層圧電体34、共
通上電極36を順に形成する(第3工程〜第5工程)。
即ち、第3工程では、下層圧電体35の表面に白金ペー
スト(電極材料の一種)を塗布し、その後焼成すること
で駆動電極33を形成する。また、第4工程では、駆動
電極33を覆うように、下層圧電体35の上に重ねてペ
ースト状の圧電材料を塗布し、その後焼成することで上
層圧電体34を形成する。同様に、第5工程では、上層
圧電体34の表面に金ペースト(電極材料の一種)を塗
布し、その後焼成することで共通上電極36を形成す
る。
【0066】共通上電極36の形成により、分極前圧電
素子17が振動板14の表面に作製される。そして、分
極前圧電素子17を形成したならば、導通端子40等の
必要な部材を形成し、素子形成工程を終了する。この素
子形成工程が終了したならば、切断工程に移行する。こ
の切断工程では、各チップ領域毎にセラミックスシート
を切断し、複数のアクチュエータユニット3…を得る。
【0067】各アクチュエータユニット3…に切断した
ならば検査工程に移行し、圧電素子17を構成する各層
が正常に作製されたことを検査する。本実施形態では、
圧電体層(アクト)の寸法(例えば、厚さや幅)に相関
のある静電容量を、各層圧電体34,35毎に測定す
る。即ち、この検査工程では、まだ両共通電極36,3
7は導通されていないので、各層圧電体34,35毎に
静電容量を測定することができる。
【0068】そして、全ての圧電素子17…に対する検
査が終わったならば、測定した静電容量に基づいて、そ
のアクチュエータユニット3が、良品、或いは、不良品
であるのかを判断する。さらに、良品と判断されたアク
チュエータユニット3については、測定された静電容量
に基づいて分類する。例えば、アクチュエータユニット
3毎の平均静電容量に基づくランク分けを行ったり、静
電容量のばらつき範囲に基づくランク分けを行う。
【0069】アクチュエータユニット3を分類したなら
ば、作製された圧電素子17を分極処理する分極工程
(分極処理)を行う。この分極工程では、共通電極32
と駆動電極33とを用いて分極電圧を供給し、上層圧電
体34及び下層圧電体35を分極する。即ち、直流強電
界を加え、内部の電気双極子を一定方向に揃える。例え
ば、図9に示すように、選択スイッチS1を適宜切り替
えることで、共通上電極36及び共通下電極37の一方
を選択的に接地すると共に他方を電気的に浮遊状態(非
接続状態)とし、駆動電極33を電源に接続することで
分極を行う。この場合において、本実施形態では分極用
の接点を駆動電極33や各共通電極36,37で構成で
きるので、分極専用の端子を設ける必要がない。このた
め、作業性の向上が図れ、アクチュエータユニット3を
効率良く作製できる。ひいては、記録ヘッドを効率良く
作製できる。
【0070】この場合、分極処理は、使用予定の駆動電
圧よりも十分に高い電圧で行われる。本実施形態では、
駆動電圧が30V前後であるため、分極電圧は70V前
後に設定される。さらに、この分極電圧、及び、分極電
圧を供給する供給時間(分極処理時間)は、上層圧電体
34と下層圧電体35とで個別に設定される。例えば、
圧電定数を高く設定したい場合には、標準電圧よりも高
い分極電圧に設定し、標準処理時間よりも長い分極処理
時間に設定する。反対に、圧電定数を低く設定したい場
合には、標準電圧よりも低い分極電圧に設定し、標準処
理時間よりも短い分極処理時間に設定する。このよう
に、各層圧電体34,35に対して異なる分極条件を設
定することで、各圧電素子17に所望の圧電特性を付与
することができる。
【0071】例えば、駆動信号に対する上層圧電体34
の変形度合いを下層圧電体35よりも大きくしたい場合
には、上層圧電体34の分極率を下層圧電体35の分極
率よりも高くすればよい。従って、上層圧電体34の分
極時において、分極電圧を下層圧電体35に対する分極
電圧よりも高く設定したり、分極処理時間を下層圧電体
35に対する処理時間よりも長く設定したりすればよ
い。
【0072】各層圧電体34,35を分極したならば、
導通工程に移行する。この導通工程では、図8(f)に
示すように、分極処理後のアクチュエータユニット3に
対して半田付け等の導通処理を行い、共通上電極36と
共通下電極37とを導通させる。例えば、導通領域42
aと導通帯部46とを跨いだ状態で半田やボンディング
ワイヤ等の導通部材47を設ける。そして、この導通工
程の終了により、アクチュエータユニット3を製造する
一連の工程が終了する。
【0073】以上説明したように、本実施形態では、分
極処理において駆動電極33を通じて分極電圧を供給し
ているので作業性が良い。また、共通上電極36と共通
下電極37とが分極処理時において電気的に絶縁されて
いるので、上層圧電体34と下層圧電体35とを個別に
分極できる。このため、各層圧電体34,35を異なる
分極条件で分極することができる。例えば、分極電圧を
異ならせたり、分極時間を異ならせたりすることができ
る。さらに、測定処理においても共通上電極36と共通
下電極37とが電気的に絶縁されているので、1つの圧
電素子17における圧電体特性を上層圧電体34側と下
層圧電体35側とに分けて測定できる。これにより、圧
電体特性の揃った圧電アクチュエータ3を選別すること
ができ、製造上の不具合を高い精度で発見することがで
きる。
【0074】なお、以上は、共通上電極36と共通下電
極37の両方を櫛歯状電極によって構成した例を説明し
たが、少なくとも一方の共通電極36,37を圧電素子
17毎に個別に形成し、フレキシブル・フラット・ケー
ブル等の配線部材によって共通上電極36と共通下電極
37とを導通させてもよい。
【0075】図10(a)〜(c)に示した例は、共通
上電極36´を圧電素子17毎に個別に形成し、共通下
電極37´を櫛歯状に形成したものである。そして、共
通上電極36´と共通下電極37´とを導通するにあた
り、配線部材51を用いている点に特徴がある。即ち、
配線部材51の接続部には、図10(c)にその一部を
示すように導電層52を面状に形成し、この導電層52
を共通下電極37´(基電極)と各共通上電極36´…
との間に架け渡した状態で接合する。このように構成し
ても、分極処理で1つの圧電素子17を上層圧電体34
と下層圧電体35とに分けて分極できる。また、測定処
理において、圧電体特性を上層圧電体34と下層圧電体
35とに分けて測定できる。従って、圧電素子17に所
望の圧電特性を付与することができるし、圧電体特性の
揃った圧電アクチュエータ3を選別できる。
【0076】ところで、本発明は、上記実施形態に限定
されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて
種々の変形が可能である。
【0077】まず、分極処理に関し、上記実施形態で
は、上層圧電体34と下層圧電体35とを個別に分極す
る場合を例示したが、上層圧電体34と下層圧電体35
とを同時に分極してもよい。この場合、選択スイッチS
1を設けずに共通上電極36と共通下電極37とを接地
電位に調整し、駆動電極33を通じて分極電圧を供給す
る。このような方法を採ると、上層圧電体34と下層圧
電体35とを同時に分極できるので、作業の簡素化が図
れ、製造効率を向上させることができる。
【0078】また、以上は、液体噴射ヘッドの一種であ
る記録ヘッド、並びに、この記録ヘッドに用いられる圧
電素子及び電歪アクチュエータに本発明を適用した例を
説明したが、これに限定されるものではない。本発明
は、例えば、液晶噴射ヘッドや色材噴射ヘッド等といっ
た他の液体噴射ヘッド、及び、この液体噴射ヘッド用の
圧電素子及び電歪アクチュエータにも適用できる。ま
た、マイクロポンプや発音体用の圧電素子及び電歪アク
チュエータにも適用できる。
【0079】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば以
下の効果を奏する。即ち、第2の圧電体及び第1の圧電
体を分極するにあたり、第3の電極及び第1の電極と
2の電極との間に分極電圧を供給するので、分極専用の
端子を設ける必要がなく、構成の簡素化が図れる。これ
により、作業性が向上し製造効率を高めることができ
る。
【0080】また、第3の電極と第2の電極の間に供給
される分極電圧と、第1の電極と第2の電極の間に供給
される分極電圧とを異ならせた場合には、圧電素子に種
々の圧電特性を付与することができる。これにより、所
望の圧電特性を付与できる。
【0081】また、第3の電極と第2の電極の間と、
1の電極と第2の電極の間とに同時に分極電圧を供給す
ることで、第2の圧電体と第1の圧電体とを同時に分極
するようにした場合には、作業性が向上し製造効率を高
めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヘッド本体の基本構造を説明する断面図であ
る。
【図2】ヘッド本体をノズルプレート側から見た図であ
る。
【図3】アクチュエータユニットの構造を説明する図で
あり、圧力室長手方向で切断した断面図である。
【図4】アクチュエータユニットの構造を説明する図で
あり、圧力室幅方向で切断した断面図である。
【図5】駆動電極の端部構造を説明する断面図である。
【図6】共通電極の端部構造を説明する断面図である。
【図7】共通電極の構造を説明する図であり、(a)は
共通上電極の平面図、(b)は共通下電極の平面図であ
る。
【図8】(a)〜(f)は、圧電素子の作成過程を説明
する模式図である。
【図9】圧電素子に対する分極処理を説明する模式図で
ある。
【図10】(a)〜(c)は、共通上電極を圧電素子毎
に形成し、配線部材によって共通上電極と共通下電極と
を導通させた例を説明する図である。
【図11】複数のヘッド本体を備えた記録ヘッドを説明
する図である。
【符号の説明】 1 ヘッド本体 2 流路ユニット 3 アクチュエータユニット 4 インク供給口 5 ノズル連通口 6 供給口形成基板 7 共通インク室 8 インク室形成基板 9 ノズル開口 10 ノズルプレート 11 ノズル列 12 圧力室 13 圧力室形成基板 14 振動板 15 供給側連通口 16 蓋部材 17 圧電素子 31 圧電体層 32 共通電極 33 駆動電極 34 上層圧電体 35 下層圧電体 36 共通上電極 37 共通下電極 38 圧力室隔壁 39 導通電極 40 供給端子 41 端子基板 42 共通上電極の基電極 43 共通上電極の枝電極 44 共通下電極の基電極 45 共通下電極の枝電極 46 共通下電極の導通帯部 47 導通部材 51 配線部材 52 導電層 61 取付ベース
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) B81C 3/00 H01L 41/08 U H01L 41/09 41/18 101D 41/187 B41J 3/04 103A // B05B 1/14 103H

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 圧電材料と電極材料とを積層して分極前
    圧電素子を形成する素子形成工程と、この分極前圧電素
    子に分極電圧を供給して分極する分極工程とを経て製造
    される圧電素子の製造方法において、 前記素子形成工程は、支持部材の表面に共通下電極を形
    成する第1工程と、共通下電極に重ねて下層圧電体を形
    成する第2工程と、共通下電極とは反対側の下層圧電体
    の表面に駆動電極を形成する第3工程と、駆動電極を覆
    うように上層圧電体を形成する第4工程と、駆動電極と
    は反対側の上層圧電体の表面に共通上電極を形成する第
    5工程とを含み、 前記分極工程は、前記共通上電極と駆動電極の間、及
    び、共通下電極と駆動電極との間に分極電圧を供給する
    ことで、上層圧電体と下層圧電体とを分極することを特
    徴とする圧電素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記分極工程で、共通上電極と駆動電極
    の間に供給される分極電圧と、共通下電極と駆動電極の
    間に供給される分極電圧とを異ならせたことを特徴とす
    る請求項1に記載の圧電素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記分極工程で、共通上電極と駆動電極
    の間と、共通下電極と駆動電極の間とに個別に分極電圧
    を供給することで、上層圧電体と下層圧電体とを個別に
    分極することを特徴とする請求項1または請求項2に記
    載の圧電素子の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記分極工程で、共通上電極と駆動電極
    の間と、共通下電極と駆動電極の間とに同時に分極電圧
    を供給することで、上層圧電体と下層圧電体とを同時に
    分極することを特徴とする請求項1に記載の圧電素子の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 前記分極工程よりも後に、前記共通上電
    極及び共通下電極を導通する導通工程を行うことを特徴
    とする請求項1から請求項4の何れかに記載の圧電素子
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1から請求項5の何れかに記載の
    製造方法で製造されたことを特徴とする圧電素子。
  7. 【請求項7】 圧電材料と電極材料とを積層して振動板
    の表面に分極前圧電素子を形成する素子形成工程と、こ
    の分極前圧電素子に分極電圧を供給して分極する分極工
    程とを経て製造される電歪アクチュエータの製造方法に
    おいて、 前記素子形成工程は、振動板の表面に共通下電極を形成
    する第1工程と、共通下電極に重ねて下層圧電体を形成
    する第2工程と、共通下電極とは反対側の下層圧電体の
    表面に駆動電極を形成する第3工程と、駆動電極を覆う
    ように上層圧電体を形成する第4工程と、駆動電極とは
    反対側の上層圧電体の表面に共通上電極を形成する第5
    工程とを含み、 前記分極工程は、前記共通上電極と駆動電極の間、及
    び、共通下電極と駆動電極との間に分極電圧を供給する
    ことで、上層圧電体と下層圧電体とを分極することを特
    徴とする電歪アクチュエータの製造方法。
  8. 【請求項8】 前記分極工程で、共通上電極と駆動電極
    の間に供給される分極電圧と、共通下電極と駆動電極の
    間に供給される分極電圧とを異ならせたことを特徴とす
    る請求項7に記載の電歪アクチュエータの製造方法。
  9. 【請求項9】 前記分極工程で、共通上電極と駆動電極
    の間と、共通下電極と駆動電極の間とに個別に分極電圧
    を供給することで、上層圧電体と下層圧電体とを個別に
    分極することを特徴とする請求項7または請求項8に記
    載の電歪アクチュエータの製造方法。
  10. 【請求項10】 前記分極工程で、共通上電極と駆動電
    極の間と、共通下電極と駆動電極の間とに同時に分極電
    圧を供給することで、上層圧電体と下層圧電体とを同時
    に分極することを特徴とする請求項7に記載の電歪アク
    チュエータの製造方法。
  11. 【請求項11】 前記分極工程よりも後に、前記共通上
    電極及び共通下電極を導通する導通工程を行うことを特
    徴とする請求項7から請求項10の何れかに記載の電歪
    アクチュエータの製造方法。
  12. 【請求項12】 請求項7から請求項11の何れかに記
    載の製造方法で製造されたことを特徴とする電歪アクチ
    ュエータ。
  13. 【請求項13】 圧電材料と電極材料とを積層して振動
    板の表面に分極前圧電素子を形成する素子形成工程と、
    この分極前圧電素子に分極電圧を供給して分極する分極
    工程とを経て製造される液体噴射ヘッドの製造方法にお
    いて、 前記素子形成工程は、振動板の表面に共通下電極を形成
    する第1工程と、共通下電極に重ねて下層圧電体を形成
    する第2工程と、共通下電極とは反対側の下層圧電体の
    表面に駆動電極を形成する第3工程と、駆動電極を覆う
    ように上層圧電体を形成する第4工程と、駆動電極とは
    反対側の上層圧電体の表面に共通上電極を形成する第5
    工程とを含み、 前記分極工程は、前記共通上電極と駆動電極の間、及
    び、共通下電極と駆動電極との間に分極電圧を供給する
    ことで、上層圧電体と下層圧電体とを分極することを特
    徴とする液体噴射ヘッドの製造方法。
  14. 【請求項14】 前記分極工程で、共通上電極と駆動電
    極の間に供給される分極電圧と、共通下電極と駆動電極
    の間に供給される分極電圧とを異ならせたことを特徴と
    する請求項13に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
  15. 【請求項15】 前記分極工程で、共通上電極と駆動電
    極の間と、共通下電極と駆動電極の間とに個別に分極電
    圧を供給することで、上層圧電体と下層圧電体とを個別
    に分極することを特徴とする請求項13または請求項1
    4に記載の液体噴射ヘッドの製造方法。
  16. 【請求項16】 前記分極工程で、共通上電極と駆動電
    極の間と、共通下電極と駆動電極の間とに同時に分極電
    圧を供給することで、上層圧電体と下層圧電体とを同時
    に分極することを特徴とする請求項13に記載の液体噴
    射ヘッドの製造方法。
  17. 【請求項17】 前記分極工程よりも後に、前記共通上
    電極及び共通下電極を導通する導通工程を行うことを特
    徴とする請求項13から請求項16の何れかに記載の液
    体噴射ヘッドの製造方法。
  18. 【請求項18】 請求項13から請求項17の何れかに
    記載の製造方法で製造されたことを特徴とする液体噴射
    ヘッド。
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