JP4207460B2 - 圧電素子、及び、電歪アクチュエータ - Google Patents

圧電素子、及び、電歪アクチュエータ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、駆動信号の供給によって変形する圧電素子、及び、この圧電素子を駆動源として用いた電歪アクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】
圧電素子は、電気エネルギーの供給によって変形するものであり、例えば、液体噴射ヘッド、マイクロポンプ、発音体(スピーカ等)用の駆動素子として広く用いられている。ここで、液体噴射ヘッドは、圧力室内の液体に圧力変動を生じさせることでノズル開口から液滴を吐出させるものであり、例えば、プリンタ等の画像記録装置に用いられる記録ヘッド、液晶ディスプレーの製造に用いられる液晶噴射ヘッド、カラーフィルタの製造に用いられる色材噴射ヘッド等がある。また、マイクロポンプは、極く微量の液体を扱うことができる超小型のポンプであり、例えば、極く少量の薬液を送出する際に用いられる。
【0003】
このような液体噴射ヘッドやマイクロポンプに用いられる重要な部品の一つに、振動板の表面に圧電素子を設けた電歪アクチュエータがある。この電歪アクチュエータは圧力室となる空部を有する圧力室形成基板に取り付けられ、圧力室の一部を振動板で区画する。そして、液滴を吐出したり、液体を送出したりする際には、圧電素子に駆動パルスを供給してこの圧電素子及び振動板(即ち、圧力室の変形部分)を変形させ、圧力室の容積を変化させる。
【0004】
これらの液体噴射ヘッドやマイクロポンプにおいては、圧電素子の高周波駆動に対する強い要請がある。これは、液滴の高周波吐出を実現したり、送液能力を高めたりするためである。そして、圧電素子の高周波駆動を実現するためには、上記変形部分のコンプライアンスを従来よりも小さくし、且つ、圧電素子の変形量を従来よりも大きくする必要がある。これは、変形部分のコンプライアンスを小さくすると応答性が向上するため、従来よりも高い周波数での駆動が可能となること、及び、圧電素子の変形量を大きくすると圧力室の容積変化量が大きくなるため、吐出される液滴の量や送出される液体の量を増やすことができることによる。
【0005】
そして、変形部分のコンプライアンスと圧電素子の変形量の相反する特性を充足するものとして、多層構造の圧電素子が提案されている。例えば、特開平2−289352号公報には、圧電体層を上層圧電体と下層圧電体の2層構造とし、上層圧電体と下層圧電体の境界に駆動電極(個別電極)を形成すると共に、上層圧電体の外表面と下層圧電体の外表面とにそれぞれ共通電極を形成した構造の圧電素子が開示されている。同様に、特開平10−34924号公報にも多層構造の圧電素子が開示されている。
【0006】
上記多層構造の圧電素子では、上層圧電体と下層圧電体の境界に駆動電極が設けられているので、各層の圧電体には、駆動電極から各共通電極までの間隔(即ち、各層圧電体の厚さ)と、駆動電極と各共通電極の電位差とによって定まる強さの電場が付与される。このため、共通電極と駆動電極とで単層の圧電体を挟んだ単層構造の圧電素子と比べた場合、圧電素子全体の厚さを多少厚くして変形部分のコンプライアンスを小さくしても、従来と同じ駆動電圧で大きく変形させることができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記多層構造の圧電素子を単に用いただけでは、近年の高い要請に応え得る程度の特性は得られなかった。このため、実際の製品としては、単層の圧電体を共通電極と駆動電極とで挟んだ単層構造の圧電素子を用いることを余儀なくされている。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、多層構造の圧電素子における変形効率をより向上させることにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載のものは、互いに積層された上層圧電体と下層圧電体を有し、電場に応じて変形する圧電体層と、
互いに導通された共通上電極及び共通下電極と、駆動信号の供給源に導通される駆動電極を有し、前記圧電体層に付与される電場を発生する電極層とを備え、
前記上層圧電体と下層圧電体との間に駆動電極を形成し、駆動電極とは反対側となる下層圧電体の下部に共通下電極を、駆動電極とは反対側となる上層圧電体の上部に共通上電極をそれぞれ形成した圧電素子であって、
前記下層圧電体により共通下電極をその全幅を越えて覆うと共に、前記上層圧電体により駆動電極をその全幅を越えて覆い、
上層圧電体と下層圧電体の少なくとも一方について、駆動電極よりも幅方向外側に位置する端部領域の厚さを、駆動電極の幅内に位置する中央領域の厚さよりも薄くし
前記中央領域の上層圧電体の厚さを、中央領域の下層圧電体の厚さの3/4以下としたことを特徴とする。
ここで、「上、下」とあるのは、圧電素子が設けられる振動板等の支持部材を基準とした位置関係を示している。即ち、支持部材から近い側を「下」とし、支持部材から遠い側を「上」として示している。
【0010】
請求項2に記載のものは、前記上層圧電体及び下層圧電体は、端部領域にて幅方向外側に向かうほど薄く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子である。
【0011】
請求項3に記載のものは、駆動信号の供給に伴う中央領域の上層圧電体の変形度合いを、中央領域の下層圧電体の変形度合いよりも大きくしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧電素子である。
【0012】
請求項4に記載のものは、請求項1から請求項3の何れかに記載の圧電素子を、振動板表面に形成したことを特徴とする電歪アクチュエータである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ここでは、圧電素子を用いた記録ヘッド(液体噴射ヘッドの一種)を例に挙げて説明する。図1に例示するように、この記録ヘッド1は、流路ユニット2と、複数のアクチュエータユニット3…と、フィルム状の配線基板4とから概略構成されている。そして、流路ユニット2の表面に各アクチュエータユニット3…を横並びに接合し、流路ユニット2とは反対側のアクチュエータユニット3の表面に配線基板4を取り付けている。
【0015】
流路ユニット2は、図2の断面図に示すように、オリフィスとして機能するインク供給口5及びノズル連通口6の一部となる通孔を開設した供給口形成基板7と、共通インク室(共通液室の一種)8となる通孔及びノズル連通口6の一部となる通孔を開設したインク室形成基板9と、複数のノズル開口10…を開設したノズルプレート11から構成されている。これらの供給口形成基板7、インク室形成基板9、及び、ノズルプレート11は、例えば、ステンレス製の板材をプレス加工することで作製されている。なお、本実施形態では1つの流路ユニット2に3つのアクチュエータユニット3…が接合されているので、インク供給口5、ノズル連通口6、供給口形成基板7、共通インク室8等は、アクチュエータユニット3毎に合計3組形成されている。
【0016】
そして、流路ユニット2は、インク室形成基板9の一方の表面(図中下側)にノズルプレート11を、他方の表面(同上側)に供給口形成基板7をそれぞれ配置し、これらの供給口形成基板7、インク室形成基板9、及び、ノズルプレート11を接合することで作製される。例えば、シート状の接着剤によって各部材を接着することで作製される。
【0017】
上記のノズル開口10は、図3に示すように、所定ピッチで複数個列状に開設される。そして、列設された複数のノズル開口10…によってノズル列12が構成される。例えば、92個のノズル開口10…で1つのノズル列12が構成される。また、このノズル列12は、1つのアクチュエータユニット3に対して2列形成される。本実施形態の記録ヘッド1は3つのアクチュエータユニット3…を備えているため、1つの流路ユニット2に対して計6列のノズル列12…が横並びに形成される。
【0018】
アクチュエータユニット3は、ヘッドチップとも呼ばれる部材である。このアクチュエータユニット3は、図2に示すように、圧力室21となる通孔を開設した圧力室形成基板22と、圧力室21の一部を区画する振動板23と、供給側連通口24となる通孔及びノズル連通口6の一部となる通孔を開設した蓋部材25と、振動板23の表面に形成された圧電素子26とによって構成される。これら各部材の板厚に関し、圧力室形成基板22、及び、蓋部材25は、好ましくは50μm以上、より好ましくは100μm以上である。また、振動板23は、好ましくは50μm以下、より好ましくは3〜12μm程度である。
なお、このアクチュエータユニット3において、振動板23と圧電素子26が本発明の電歪アクチュエータを構成する。また、振動板23は圧電素子26が設けられる支持部材の一種である。
【0019】
このアクチュエータユニット3を作製するにあたり、まず、圧力室形成基板22の一方の表面に蓋部材25を、他方の表面に振動板23をそれぞれ配置し、これらの各部材を一体化する。これらの圧力室形成基板22、振動板23、及び、蓋部材25は、アルミナや酸化ジルコニウム等のセラミックスで作製されているので、焼成によって一体化される。例えば、グリーンシート(未焼成のシート材)に対して切削や打ち抜き等の加工を施して必要な通孔等を形成し、圧力室形成基板22、振動板23、及び、蓋部材25の各シート状前駆体を形成する。そして、各シート状前駆体を積層及び焼成することにより、各シート状前駆体は一体化されて1枚のシート状部材となる。そして、焼成後のシート状部材に対して圧電素子26等を形成することでセラミックスシートが作製される。
【0020】
この場合において、各シート状前駆体や圧電素子26は焼成により一体化されるので、特別な接着処理が不要である。また、各部材の接合面において高いシール性を得ることもできる。
【0021】
なお、1枚のセラミックスシートには、複数ユニット分の圧力室21…やノズル連通口6…等が形成されている。換言すれば、このセラミックスシートは、各アクチュエータユニット3…に切断される前のアクチュエータユニット母部材となる。例えば、1つのアクチュエータユニット3となるチップ領域を、1枚のセラミックスシート内にマトリクス状に複数設定する。そして、圧電素子26等の必要な部材を各チップ領域内に形成した後、このセラミックスシートをチップ領域毎に切断することで、複数のアクチュエータユニット3…が得られる。
【0022】
上記の圧力室21は、ノズル列12とは直交する方向に細長い空部であり、ノズル開口10に対応する複数形成されている。即ち、図3に示すように、ノズル列方向に列設されている。そして、各圧力室21…の一端は、供給側連通口24及びインク供給口5を通じて共通インク室8に連通している。また、供給側連通口24とは反対側の圧力室21の他端は、ノズル連通口6を通じて対応するノズル開口10に連通する。さらに、この圧力室21の一部(上側表面)は、振動板23によって区画されている。
【0023】
上記の圧電素子26は、所謂撓み振動モードの圧電素子であり、圧力室21とは反対側の振動板表面に圧力室21毎に形成されている。この圧電素子26は、圧力室長手方向に細長いブロック状であり、その幅は圧力室21の幅と略等しく、その長さは圧力室21の長さよりも多少長い。さらに、この圧電素子26は、その両端部が圧力室21の長手方向端部を越えるように配設されている。
【0024】
図4に示すように、各圧電素子26…はその幅方向に並べて設けられている。そして、圧電素子26の長手方向一側には、圧電素子26…毎に個別端子27…を設けている。この個別端子27は、上記した配線基板4の接点端子(図示せず)が導通される部分である。また、圧電素子26の長手方向他側には、共通電極の一部を構成する直線状の共通幹電極28をノズル列方向に延設している。
【0025】
本実施形態における圧電素子26は、図5に示すように、圧電体層31と共通枝電極32と駆動電極30等によって構成される多層構造であり、駆動電極30と共通枝電極32とによって圧電体層31を挟んでいる。なお、この圧電素子26の構造については、後で詳しく説明する。
【0026】
そして、駆動電極30には個別端子27を通じて駆動信号の供給源(図示せず)が導通され、共通枝電極32は共通幹電極28等を通じて例えば接地電位に調整される。この駆動電極30に駆動信号が供給されると、駆動電極30と共通枝電極32との間には電位差に応じた強さの電場が発生される。この電場を圧電体層31に付与すると、圧電体層31は電場の強さに応じて変形する。
即ち、駆動電極30の電位を高くする程、圧電体層31は電場と直交する方向に収縮し、圧力室21の容積を少なくするように振動板23を変形させる。一方、駆動電極30の電位を低くする程、圧電体層31は電界と直交する方向に伸長し、圧力室21の容積を増やすように振動板23を変形させる。
【0027】
このアクチュエータユニット3と上記の流路ユニット2とは、互いに接合される。例えば、供給口形成基板7と蓋部材25との間にシート状接着剤を介在させ、この状態でアクチュエータユニット3を流路ユニット2側に加圧することで接着される。
【0028】
上記構成の記録ヘッド1は、共通インク室8からインク供給口5、供給側連通口24、圧力室21、及び、ノズル連通口6を通じてノズル開口10に至る一連のインク流路がノズル開口10毎に形成されている。使用時においてこのインク流路内はインクで満たされており、圧電素子26を変形させることで対応する圧力室21が収縮或いは膨張し、圧力室21内のインクに圧力変動が生じる。このインク圧力を制御することで、ノズル開口10からインク滴を吐出させることができる。例えば、定常容積の圧力室21を一旦膨張させた後に急激に収縮させると、圧力室21の膨張に伴ってインクが充填され、その後の急激な収縮によって圧力室21内のインクが加圧されてインク滴が吐出される。
【0029】
ここで、高速記録のためには、より多くのインク滴を短時間で吐出させる必要がある。この要求に応えるためには、圧電素子26の剛性と駆動電圧とを考慮する必要がある。即ち、従来よりも高い周波数での駆動に耐えるため、剛性を従来よりも高める必要がある。また、高周波駆動を実現するにあたっては駆動電圧を高くすることは好ましくない。
【0030】
そこで、本実施形態では、多層構造の圧電素子26を用いている。以下、この点について説明する。
【0031】
まず、圧電素子26の構造について詳細に説明する。図5に示すように、圧電体層31は、圧力室長手方向に細長いブロック状に成形され、互いに積層された上層圧電体(外側圧電体)33及び下層圧電体(内側圧電体)34から構成される。また、共通枝電極32は、共通上電極(共通外電極)35及び共通下電極(共通内電極)36から構成される。そして、これらの共通枝電極32と駆動電極30とが電極層を構成する。
なお、ここでいう「上(外)」或いは「下(内)」とは、振動板23を基準とした位置関係を示している。即ち、「上(外)」とあるのは振動板23から遠い側を示し、「下(内)」とあるのは振動板23に近い側を示している。
【0032】
上記の駆動電極30は個別電極として機能し、上層圧電体33と下層圧電体34の境界に形成される。また、共通上電極35及び共通下電極36は、共通幹電極28と共に共通電極を構成する。即ち、この共通電極は、共通幹電極28から複数の共通枝電極32(共通上電極35,共通下電極36)…が延出形成された櫛歯状に形成されている。
【0033】
そして、共通下電極36は駆動電極30とは反対側の下層圧電体34の下部に形成され、共通上電極35は駆動電極30とは反対側の上層圧電体33の上部に形成される。即ち、この圧電素子26は、振動板23側から、共通下電極36、下層圧電体34、駆動電極30、上層圧電体33、共通上電極35の順で積層された多層構造であり、下層圧電体34により共通下電極36をその全幅を越えて覆うと共に、上層圧電体33により駆動電極30をその全幅を越えて覆っている。従って、駆動電極30は、両層圧電体33,34内に埋設された状態となる。さらに、駆動電極30と共通下電極36との間には電気絶縁性を有する下層圧電体34が存在する。この構成により、駆動電極30と共通下電極36との短絡を確実に防止できる。
【0034】
本実施形態における圧電体層31の厚さは、幅方向の中央部分にて、上層圧電体33と下層圧電体34の2層を合計して約17μmである。そして、共通枝電極32を含めた圧電素子26の全体の厚さは約20μmである。なお、従来の単層構造の圧電素子26は、素子全体の厚さが約15μmである。従って、圧電素子26の厚さが増したことから、その分だけ振動板23のコンプライアンスが小さくなっている。
【0035】
また、上記したように、圧電素子26の長さは圧力室21の長手方向の長さよりも長く、その長手方向両端部は圧力室21の端部を越えて形成されている。一方、圧電素子26の幅は、圧力室21の幅(内寸法)と同寸法に揃えられている。従って、各圧電素子26…は、圧力室21の長手方向を覆う状態で形成されていると表現することもできる。
【0036】
上記の共通上電極35及び共通下電極36は、駆動信号に拘わらず一定の電位、例えば接地電位に調整される。上記の駆動電極30は、供給された駆動信号に応じて電位を変化させる。従って、駆動信号の供給によって、駆動電極30と共通上電極35との間、及び、駆動電極30と共通下電極36との間には、それぞれ向きが反対の電場が生じる。
【0037】
そして、これらの各電極を構成する材料としては、例えば、金属単体、合金、電気絶縁性セラミックスと金属との混合物等の各種導体が選択されるが、焼成温度において変質等の不具合が生じないことが要求される。本実施形態では、共通上電極35に金を用い、共通下電極36及び駆動電極30に白金を用いている。
【0038】
上記の上層圧電体33と下層圧電体34は共に、例えばジルコン酸チタン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電材料によって作製されている。そして、上層圧電体33と下層圧電体34とは分極方向が反対である。このため、駆動信号印加時の伸縮方向が上層圧電体33と下層圧電体34とで揃い、支障なく変形することができる。即ち、上層圧電体33及び下層圧電体34は、駆動電極30の電位を高くする程に圧力室21の容積を少なくするように振動板23を変形させ、駆動電極30の電位を低くする程に圧力室21の容積を増やすように振動板23を変形させる。
【0039】
また、本実施形態では、圧電素子26を効率よく変形させるため、即ち、印加電圧に対する変形量を向上させるために、圧電素子26の幅方向外側の厚さを幅方向中央部分の厚さよりも薄く構成している。以下、詳細に説明する。
【0040】
図6は、圧電素子26を電極幅方向(短尺方向)に切断した図である。この図に示すように、圧電素子26は、その表面が円弧形状に盛り上がった断面形状を呈しており、幅方向中央が最も高く形成されている。即ち、図7に示す厚さt1uと厚さt1dの和が最も大きい。また、この圧電素子26は、幅方向中央から端部側に向かうにつれて厚さが徐々に薄くなっており、幅方向両端は横向きV字状に形成されている。
【0041】
この圧電素子26では、駆動電極30よりも幅方向外側に位置する端部領域WL,WRの厚さを、駆動電極30の幅内に位置する中央領域WCの厚さよりも薄く構成している。ここで、中央領域WCは、駆動電極30の両端のそれぞれから上下方向に設定される一対の第1仮想線L1,L1の範囲内の部分である。また、端部領域WL,WRは、第1仮想線L1よりも幅方向外側の部分である。そして、中央領域WCにおいて、駆動電極30よりも上の部分が上層圧電体33の中央領域(上中央領域33C,図7参照)であり、駆動電極30よりも下の部分が下層圧電体34の中央領域(下中央領域34C,図7参照)である。
【0042】
さらに、図6において、中央領域WCよりも左側の部分を左端部領域WLとし、中央領域WCよりも右側の部分を右端部領域WRとする。そして、左端部領域WLにおいて、駆動電極30の端部から圧電体層31の左端を結ぶ第2仮想線L2を設定し、この第2仮想線L2よりも上の部分が上層圧電体33の左端領域(上左端領域33L,図8参照)であり、駆動電極30よりも下の部分が下層圧電体34の左端領域(下左端領域34L,図8参照)である。同様に、右端部領域WRにおいて、駆動電極30の端部から圧電体層31の右端を結ぶ第2仮想線L2を設定し、この第2仮想線L2よりも上の部分が上層圧電体33の右端領域(上右端領域33R,図9参照)であり、駆動電極30よりも下の部分が下層圧電体34の右端領域(下右端領域34R,図9参照)である。
【0043】
本実施形態では、上層圧電体33と下層圧電体34の両方について、端部領域WL,WR(上左端領域33L,下左端領域34L,上右端領域33R,下右端領域34R)の厚さを中央領域WC(上中央領域33C,下中央領域34C)の厚さよりも薄くしている。ここで、各圧電体層33,34の厚さは均一ではないので、厚さを比較するにあたっては各領域毎の平均厚さで比較するのが好ましい。即ち、中央領域WCについては、図7に示す様に、厚さt2uから厚さt3uまでの平均を上中央領域33Cの厚さとし、厚さt2dから厚さt3dまでの平均を下中央領域34Cの厚さとする。そして、左端部領域WLについては、図8に示す様に、左端(厚さ略0)から厚さt2uまでの平均を上左端領域33Lの厚さとし、左端から厚さt2dまでの平均を下左端領域34Lの厚さとする。さらに、右端部領域WRについては、図9に示す様に、右端(厚さ略0)から厚さt3uまでの平均を上右端領域33Rの厚さとし、右端から厚さt3dまでの平均を下右端領域34Rの厚さとする。
【0044】
そして、本実施形態では、上左端領域33Lの厚さ及び上右端領域33Rの厚さを上中央領域33Cの厚さよりも薄く設定し、下左端領域34Lの厚さ及び下右端領域34Rの厚さを下中央領域34Cの厚さよりも薄く設定した点に特徴を有する。
例えば、各端部領域(33L,33R,34L,34R)の厚さを、中央領域(33C,34C)の厚さの70%〜90%とする。より好ましくは、各端部領域の厚さを、中央領域の厚さの75%〜85%とする。
これにより、端部領域WL,WRにおける各圧電体層33,34の応力が中央領域WCにおける各圧電体層33,34の応力よりも小さくなる。このため、端部領域WL,WRの部分が中央領域WCの部分よりも撓み易くなり、圧電素子26を効率よく変形させることができる。
【0045】
さらに、端部領域WL,WRにおいて各圧電体層33,34は、端部側に向かうにつれて厚さが漸次薄くなっているので、変形時における応力集中が生じ難い。また、その表面には段差がなく滑らかであり、共通上電極35を確実に形成することができる。これにより、欠損部の発生も防止できる。以上から、圧電素子26の信頼性を高めることができる。
【0046】
ところで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、中央領域WCの上層圧電体33(上中央領域33C)と中央領域WCの下層圧電体34(下中央領域34C)とを略同じ厚さに構成していたが、この構成に限定されるものではない。例えば、上中央領域33Cの厚さを下中央領域34Cの3/4以下に設定してもよい(以下、変形例という)。
【0048】
この変形例の圧電素子26では、駆動信号の供給に伴う上中央領域33Cの変形度合いを、下中央領域34Cの変形度合いよりも大きくすることができる。即ち、電極間の電位差が等しい場合、圧電体層31の厚さが薄くなるほどその圧電体層31に付与される電場が強くなるので、厚さが薄いほど変形量を大きくすることができる。そして、上中央領域33Cが下中央領域34Cよりも相対的に大きく撓むと、上中央領域33Cの方が振動板23から離隔しているため、その変形量が増幅されて振動板23に作用し、振動板23の変形量を大きくすることができる。
【0049】
例えば、上中央領域33Cと下中央領域34Cの積層高さ(要するに中央領域WCの厚さ)が同じであって、上中央領域33Cの方が下中央領域34Cよりも厚い構造の圧電素子26と比較すると、変形例の圧電素子26は相対的に変形量が大きい上中央領域33Cが振動板23から離れて位置しているのに対し、比較例の圧電素子26では相対的に変形量が大きい下中央領域34Cが振動板23の間近に位置する。そして、変形量が大きい圧電体層31が振動板23から離れている方が振動板23を大きく変形できるので、変形例の圧電素子26の方がより振動板23を大きく変形させることができる。
【0050】
また、上記した実施形態では、上層圧電体33と下層圧電体34の両方とも、端部領域WL,WRの厚さが中央領域WCの厚さよりも薄い構成を例示したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、上層圧電体33と下層圧電体34の少なくとも一方について、端部領域WL,WRの厚さを中央領域WCの厚さよりも薄くすることにより、同様の作用効果が得られる。
【0051】
また、上記した実施形態では、第2仮想線L2を設定することで端部領域WL,WRを上下方向に分割した例を説明したが、これらの端部領域において両圧電体層33,34は焼成によって一体化されてしまう。このため、端部領域WL,WRについては分割せずに厚さを測定し、この端部領域WL,WRの厚さと、上中央領域33Cと下中央領域34Cの厚さの加算値とを比較してもよい。
【0052】
また、以上は、記録ヘッド1を例に挙げて説明したが、本発明は、液晶噴射ヘッドや色材噴射ヘッド等といった他の液体噴射ヘッド、或いは、マイクロポンプ、発音体(スピーカ等)等の各種装置に用いられる電歪アクチュエータ、及び、圧電素子にも同様に適用することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば以下の効果を奏する。
即ち、下層圧電体により共通下電極をその全幅を越えて覆うと共に、上層圧電体により駆動電極をその全幅を越えて覆い、上層圧電体と下層圧電体の少なくとも一方について、駆動電極よりも幅方向外側に位置する端部領域の厚さを、駆動電極の幅内に位置する中央領域の厚さよりも薄くしたので、端部領域の応力を中央領域の応力よりも小さくすることができ、端部領域を撓み易くすることができる。これにより、圧電素子の変形効率をより高めることができる。しかも、前記中央領域の上層圧電体の厚さを、中央領域の下層圧電体の厚さの3/4以下としたので、上中央領域の変形度合いを、下中央領域の変形度合いよりも大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】記録ヘッドの構成を説明する分解斜視図である。
【図2】アクチュエータユニット及び流路ユニットを説明する断面図である。
【図3】ノズルプレートを説明する部分拡大図である。
【図4】アクチュエータユニットを圧電素子側から見た斜視図である。
【図5】(a)は圧電素子の平面図、(b)は長手方向に切断した圧電素子の断面図である。
【図6】圧電素子を幅方向に切断した断面図である。
【図7】圧電素子の中央領域を説明する部分拡大断面図である。
【図8】圧電素子の左端部領域を説明する部分拡大断面図である。
【図9】圧電素子の右端部領域を説明する部分拡大断面図である。
【符号の説明】
1 記録ヘッド
2 流路ユニット
3 アクチュエータユニット
4 配線基板
5 インク供給口
6 ノズル連通口
7 供給口形成基板
8 共通インク室
9 インク室形成基板
10 ノズル開口
11 ノズルプレート
12 ノズル列
21 圧力室
22 圧力室形成基板
23 振動板
24 供給側連通口
25 蓋部材
26 圧電素子
27 個別端子
28 共通幹電極
30 駆動電極
31 圧電体層
32 共通枝電極
33 上層圧電体
34 下層圧電体
35 共通上電極
36 共通下電極

Claims (4)

  1. 互いに積層された上層圧電体と下層圧電体を有し、電場に応じて変形する圧電体層と、
    互いに導通された共通上電極及び共通下電極と、駆動信号の供給源に導通される駆動電極を有し、前記圧電体層に付与される電場を発生する電極層とを備え、
    前記上層圧電体と下層圧電体との間に駆動電極を形成し、駆動電極とは反対側となる下層圧電体の下部に共通下電極を、駆動電極とは反対側となる上層圧電体の上部に共通上電極をそれぞれ形成した圧電素子であって、
    前記下層圧電体により共通下電極をその全幅を越えて覆うと共に、前記上層圧電体により駆動電極をその全幅を越えて覆い、
    上層圧電体と下層圧電体の少なくとも一方について、駆動電極よりも幅方向外側に位置する端部領域の厚さを、駆動電極の幅内に位置する中央領域の厚さよりも薄くし
    前記中央領域の上層圧電体の厚さを、中央領域の下層圧電体の厚さの3/4以下としたことを特徴とする圧電素子。
  2. 前記上層圧電体及び下層圧電体は、端部領域にて幅方向外側に向かうほど薄く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の圧電素子。
  3. 駆動信号の供給に伴う中央領域の上層圧電体の変形度合いを、中央領域の下層圧電体の変形度合いよりも大きくしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の圧電素子。
  4. 請求項1から請求項3の何れかに記載の圧電素子を、振動板表面に形成したことを特徴とする電歪アクチュエータ
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