JP2003346897A - 電 池 - Google Patents

電 池

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JP2003346897A
JP2003346897A JP2002157996A JP2002157996A JP2003346897A JP 2003346897 A JP2003346897 A JP 2003346897A JP 2002157996 A JP2002157996 A JP 2002157996A JP 2002157996 A JP2002157996 A JP 2002157996A JP 2003346897 A JP2003346897 A JP 2003346897A
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JP
Japan
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lithium
negative electrode
electrolyte
salt
secondary battery
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JP2002157996A
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English (en)
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Atsumichi Kawashima
敦道 川島
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Publication date
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    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 特性を向上させることができる電池を提供す
る。 【解決手段】 外装缶11内に収容された円板状の正極
12と外装カップ13内に収容された円板状の負極14
とが、セパレータ15を介して積層されている。セパレ
ータ15には、溶媒に電解質塩が溶解された電解液が含
浸されている。電解液には、陽イオンおよび陰イオンの
双方を有する分子内塩が添加されており、リチウムイオ
ンがこの分子内塩の陰イオンに配位することにより負極
14に輸送される。よって、リチウムイオンの配位に起
因する溶媒の分解が抑制されると共に、効率よくリチウ
ムイオンが輸送される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、正極および負極と
共に、溶媒に電解質塩が溶解された電解液を備えた電池
に係り、特に、電極反応種としてリチウム(Li)など
を用いた電池に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、カメラ一体型VTR(ビデオテー
プレコーダ),デジタルスチルカメラ,携帯電話,携帯
情報端末あるいはラップトップコンピュータなどのポー
タブル電子機器が広く普及し、これらの小型化および軽
量化が図られている。それに伴い、これらの電子機器の
ポータブル電源として、電池、特に二次電池のエネルギ
ー密度を向上させるための研究開発が活発に進められて
いる。中でも、負極活物質として炭素材料を用い、電解
質に非水溶媒を用いたリチウムイオン二次電池は、従来
の水系電解液二次電池である鉛電池あるいはニッケルカ
ドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得ら
れ、また充放電を繰り返しても容量の低下の度合いが小
さいことから広く実用化されている。
【0003】しかし、リチウムイオン二次電池では、主
にその作動原理に起因してエネルギー密度に限界がある
ため、ポータブル電子機器の高機能化および高性能化に
伴う消費電力の増大に対応することが難しい。そこで、
負極活物質としてリチウム金属を用いたリチウム二次電
池の実用化が期待されている。
【0004】ところが、リチウム二次電池は、充放電を
繰り返した際の放電容量の劣化が大きく、実用化が難し
いという問題があった。この容量劣化は、溶媒と負極に
析出したリチウムとの反応による電解質の劣化、または
充放電に寄与しないリチウム化合物の生成に起因する内
部抵抗の上昇などによって生じる。
【0005】そこで本出願人は、負極の容量がリチウム
の吸蔵および離脱による容量成分と、リチウムの析出お
よび溶解による容量成分との和により表される二次電池
を新たに開発した(国際公開WO 01/22519 A1パンフレッ
ト参照)。これは、負極にリチウムを吸蔵および離脱す
ることが可能な炭素材料を用い、充電の途中において炭
素材料の表面にリチウムを析出させるようにしたもので
ある。この二次電池によれば、高エネルギー密度を達成
しつつ、サイクル特性を向上させることが期待できる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この二
次電池でもリチウム二次電池と同様に負極にリチウムを
析出させるので、析出したリチウムと溶媒との反応が生
じ、リチウムイオン二次電池と比較すると、充放電を繰
り返した際の放電容量の劣化が大きいという問題があっ
た。すなわち、リチウムの吸蔵・離脱とリチウムの析出
・溶解とを利用した二次電池を実用化するには、更なる
特性の向上を図る必要があり、それには特に電解質の化
学的安定性などの特性を向上させることが重要である。
【0007】なお、これまでにも、電解質の特性を向上
させる研究開発が行われている。例えば、リチウム二次
電池においては、溶媒として炭酸エステル系のものを用
いたときに放電容量の低下が顕著に見られることに着目
して、溶媒として、炭酸エステル系のものに代えてエー
テル系のものを用いることにより、溶媒とリチウム金属
との反応性を低減させた二次電池が提案されている。ま
た、電解質として、液状のものの代わりにリチウムイオ
ン導電性を有する高分子化合物を用いた二次電池も提案
されている。しかし、エーテル系の溶媒を用いた二次電
池の場合、従来の正極材料であるコバルト酸リチウムに
よりエーテル系の溶媒が酸化されてしまうため、正極に
は容量の小さい酸化バナジウム系の材料を用いる必要が
あった。このために、エーテル系の溶媒を用いた二次電
池は、従来のリチウムイオン二次電池と比較して容量が
小さくなってしまうという問題があった。また、電解質
に高分子化合物を用いた二次電池では、高分子化合物の
イオン導電性が低温において小さいという問題があっ
た。
【0008】また、リチウムの吸蔵・離脱とリチウムの
析出・溶解を利用した二次電池においては、溶媒とし
て、化学的に安定な炭酸エチレンを用いることが提案さ
れている。ところが、この炭酸エチレンでも、分解が見
られるという問題があった。この炭酸エチレンの分解
は、化1に示したように、まず炭酸エチレン分子にリチ
ウムイオンが配位し、それからリチウムイオンが配位し
た炭酸エチレン分子が負極で還元されることにより生じ
る。
【0009】
【化1】
【0010】そこで、リチウムイオンが炭酸エチレンに
配位しないように、炭酸エチレンよりもリチウムイオン
との親和性が大きく、かつリチウム金属と反応しない物
質を添加することにより炭酸エチレンの分解を抑制する
ことが考えられている。このような物質としては、陰イ
オンを分子内に有する物質、例えば、トリフルオロメタ
ンスルホン酸イオンが挙げられる。このトリフルオロメ
タンスルホン酸イオンには、例えば化2に示しようにリ
チウムイオンが配位する。その結果生成されるトリフル
オロメタンスルホン酸リチウムは、炭酸エチレンに対す
る溶解度が大きい一方、中性であるため、電極間におけ
るリチウムイオンの輸送効率が小さい。よって、トリフ
ルオロメタンスルホン酸イオンを添加しても、十分に電
池特性を向上させることは困難である。
【0011】
【化2】
【0012】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたも
ので、その目的は、特性を向上させることができる電池
を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明による電池は、正
極および負極と共に、溶媒に電解質塩が溶解された電解
液を備えたものであって、電解液は、分子内に陽イオン
と陰イオンとを有する分子内塩を含むものである。
【0014】本発明による電池では、電解質塩の解離に
より生じたイオンが分子内塩と結合して錯体のイオンを
形成し、電解液内を輸送される。よって、電解質塩の解
離により生じたイオンが溶媒に配位することが防止さ
れ、電極における溶媒の分解が抑制される。また、電解
質塩の解離により生じたイオンは分子内塩により効率よ
く輸送される。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】図1は、本発明の一実施の形態に係る二次
電池の断面構造を表すものである。この二次電池はいわ
ゆるコイン型といわれるものであり、外装缶11内に収
容された円板状の正極12と外装カップ13内に収容さ
れた円板状の負極14とが、セパレータ15を介して積
層されたものである。外装缶11および外装カップ13
の周縁部は絶縁性のガスケット16を介してかしめるこ
とにより密閉されている。外装缶11および外装カップ
13は、例えば、ステンレスあるいはアルミニウム(A
l)などの金属によりそれぞれ構成されている。
【0017】正極12は、例えば、対向する一対の面を
有する正極集電体12aの片面に正極合剤層12bが設
けられた構造を有している。正極集電体12aは、例え
ば、アルミニウム箔,ニッケル(Ni)箔あるいはステ
ンレス箔などの金属箔により構成されている。正極合剤
層12bは、例えば、軽金属であるリチウムを吸蔵およ
び離脱することが可能な正極材料を含んで構成されてい
る。
【0018】リチウムを吸蔵および離脱することが可能
な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物,リチウ
ム硫化物あるいはリチウムを含む層間化合物などのリチ
ウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合
して用いてもよい。特に、エネルギー密度を高くするに
は、一般式Lix MO2 で表されるリチウム複合酸化物
あるいはリチウムを含んだ層間化合物が好ましい。な
お、Mは1種類以上の遷移金属が好ましく、具体的に
は、コバルト(Co),ニッケル,マンガン(Mn),
鉄,アルミニウム,バナジウム(V)およびチタン(T
i)のうちの少なくとも1種が好ましい。xは、電池の
充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.
10の範囲内の値である。また、他にも、スピネル型結
晶構造を有するマンガンスピネル(LiMn2 4 )、
あるいはオリビン型結晶構造を有するリン酸鉄リチウム
(LiFePO4 )なども高いエネルギー密度を得るこ
とができるので好ましい。
【0019】リチウムを吸蔵および離脱することが可能
な正極材料としては、また、他の金属化合物あるいは高
分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、例え
ば、酸化チタン、酸化バナジウムあるいは二酸化マンガ
ンなどの酸化物、または硫化チタンあるいは硫化モリブ
デンなどの二硫化物が挙げられ、高分子材料としては、
例えば、ポリアニリンあるいはポリチオフェンが挙げら
れる。
【0020】正極合剤層12bは、また、例えば導電剤
を含んでおり、必要に応じて更に結着剤を含んでいても
よい。導電剤としては、例えば、黒鉛,カーボンブラッ
クあるいはケッチェンブラックなどの炭素材料が挙げら
れ、そのうちの1種または2種以上が混合して用いられ
る。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であ
れば金属材料あるいは導電性高分子材料などを用いるよ
うにしてもよい。結着剤としては、例えば、スチレンブ
タジエン系ゴム,フッ素系ゴムあるいはエチレンプロピ
レンジエンゴムなどの合成ゴム、またはポリフッ化ビニ
リデンなどの高分子材料が挙げられ、そのうちの1種ま
たは2種以上が混合して用いられる。
【0021】負極14は、例えば、対向する一対の面を
有する負極集電体14aの片面に負極合剤層14bが設
けられた構造を有している。負極集電体14aは、例え
ば、銅(Cu)箔,ニッケル箔あるいはステンレス箔な
どの金属箔により構成されている。
【0022】負極合剤層14bは、軽金属であるリチウ
ムを吸蔵および離脱することが可能な負極材料のいずれ
か1種または2種以上を含んで構成されており、必要に
応じて、例えば正極合剤層12bと同様の結着剤を含ん
でいてもよい。
【0023】なお、本明細書において軽金属の吸蔵・離
脱というのは、軽金属イオンがそのイオン性を失うこと
なく電気化学的に吸蔵・離脱されることを言う。これ
は、吸蔵された軽金属が完全なイオン状態で存在する場
合のみならず、完全なイオン状態とは言えない状態で存
在する場合も含む。これらに該当する場合としては、例
えば、黒鉛に対する軽金属イオンの電気化学的なインタ
カレーション反応による吸蔵が挙げられる。また、金属
間化合物を含む合金への軽金属の吸蔵、あるいは合金の
形成による軽金属の吸蔵も挙げることができる。
【0024】リチウムを吸蔵および離脱することが可能
な負極材料としては、例えば、黒鉛,難黒鉛化性炭素あ
るいは易黒鉛化性炭素などの炭素材料が挙げられる。こ
れら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非
常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共
に、良好な充放電サイクル特性を得ることができるので
好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエ
ネルギー密度を得ることができ好ましい。
【0025】黒鉛としては、例えば、真密度が2.10
g/cm3 以上のものが好ましく、2.18g/cm3
以上のものであればより好ましい。なお、このような真
密度を得るには、(002)面のC軸結晶子厚みが1
4.0nm以上であることが必要である。また、(00
2)面の面間隔は0.340nm未満であることが好ま
しく、0.335nm以上0.337nm以下の範囲内
であればより好ましい。なお、黒鉛は、天然黒鉛でも人
造黒鉛でもよい。
【0026】難黒鉛化性炭素としては、(002)面の
面間隔が0.37nm以上、真密度が1.70g/cm
3 未満であると共に、空気中での示差熱分析(differen
tialthermal analysis ;DTA)において700℃以
上に発熱ピークを示さないものが好ましい。
【0027】リチウムを吸蔵および離脱することが可能
な負極材料としては、また、リチウムと合金を形成可能
な金属元素あるいは半金属元素の単体、合金または化合
物が挙げられる。これらは高いエネルギー密度を得るこ
とができるので好ましく、特に、炭素材料と共に用いる
ようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると
共に、優れた充放電サイクル特性を得ることができるの
でより好ましい。なお、本明細書において、合金には2
種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金
属元素と1種以上の半金属元素とからなるものも含め
る。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間
化合物あるいはそれらのうち2種以上が共存するものが
ある。
【0028】このような金属元素あるいは半金属元素と
しては、スズ(Sn),鉛(Pb),アルミニウム,イ
ンジウム(In),ケイ素(Si),亜鉛(Zn),ア
ンチモン(Sb),ビスマス(Bi),カドミウム(C
d),マグネシウム(Mg),ホウ素(B),ガリウム
(Ga),ゲルマニウム(Ge),ヒ素(As),銀
(Ag),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y)
またはハフニウム(Hf)が挙げられる。これらの合金
あるいは化合物としては、例えば、化学式MasMbt
Liu 、あるいは化学式Map Mcq Mdr で表される
ものが挙げられる。これら化学式において、Maはリチ
ウムと合金を形成可能な金属元素および半金属元素のう
ちの少なくとも1種を表し、MbはリチウムおよびMa
以外の金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1
種を表し、Mcは非金属元素の少なくとも1種を表し、
MdはMa以外の金属元素および半金属元素のうちの少
なくとも1種を表す。また、s、t、u、p、qおよび
rの値はそれぞれs>0、t≧0、u≧0、p>0、q
>0、r≧0である。
【0029】中でも、4B族の金属元素あるいは半金属
元素の単体、合金または化合物が好ましく、特に好まし
いのはケイ素あるいはスズ、またはこれらの合金あるい
は化合物である。これらは結晶質のものでもアモルファ
スのものでもよい。
【0030】このような合金あるいは化合物について具
体的に例を挙げれば、LiAl,AlSb,CuMgS
b,SiB4 ,SiB6 ,Mg2 Si,Mg2 Sn,N
2Si,TiSi2 ,MoSi2 ,CoSi2 ,Ni
Si2 ,CaSi2 ,CrSi2 ,Cu5 Si,FeS
2 ,MnSi2 ,NbSi2 ,TaSi2 ,VS
2 ,WSi2 ,ZnSi2 ,SiC,Si3 4 ,S
2 2 O,SiOv (0<v≦2),SnOw (0<
w≦2),SnSiO3 ,LiSiOあるいはLiSn
Oなどがある。
【0031】リチウムを吸蔵および離脱することが可能
な負極材料としては、更に、他の金属化合物あるいは高
分子材料が挙げられる。他の金属化合物としては、酸化
鉄,酸化ルテニウムあるいは酸化モリブデンなどの酸化
物や、あるいはLiN3 などが挙げられ、高分子材料と
してはポリアセチレン,ポリアニリンあるいはポリピロ
ールなどが挙げられる。
【0032】また、この二次電池では、充電の過程にお
いて、開回路電圧(すなわち電池電圧)が過充電電圧よ
りも低い時点で負極14にリチウム金属が析出し始める
ようになっている。つまり、開回路電圧が過充電電圧よ
りも低い状態において負極14にリチウム金属が析出し
ており、負極14の容量は、リチウムの吸蔵・離脱によ
る容量成分と、リチウム金属の析出・溶解による容量成
分との和で表される。従って、この二次電池では、リチ
ウムを吸蔵・離脱可能な負極材料とリチウム金属との両
方が負極活物質として機能し、リチウムを吸蔵・離脱可
能な負極材料はリチウム金属が析出する際の基材となっ
ている。
【0033】なお、過充電電圧というのは、電池が過充
電状態になった時の開回路電圧を指し、例えば、日本蓄
電池工業会(電池工業会)の定めた指針の一つである
「リチウム二次電池安全性評価基準ガイドライン」(S
BA G1101)に記載され定義される「完全充電」
された電池の開回路電圧よりも高い電圧を指す。また換
言すれば、各電池の公称容量を求める際に用いた充電方
法、標準充電方法、もしくは推奨充電方法を用いて充電
した後の開回路電圧よりも高い電圧を指す。具体的に
は、この二次電池では、例えば開回路電圧が4.2Vの
時に完全充電となり、開回路電圧が0V以上4.2V以
下の範囲内の一部においてリチウムを吸蔵・離脱可能な
負極材料の表面にリチウム金属が析出している。
【0034】これにより、この二次電池では、高いエネ
ルギー密度を得ることができると共に、サイクル特性お
よび急速充電特性を向上させることができるようになっ
ている。これは、負極14にリチウム金属を析出させる
という点では負極にリチウム金属あるいはリチウム合金
を用いた従来のリチウム二次電池と同様であるが、リチ
ウムを吸蔵・離脱可能な負極材料にリチウム金属を析出
させるようにしたことにより、次のような利点が生じる
ためであると考えられる。
【0035】第1に、従来のリチウム二次電池ではリチ
ウム金属を均一に析出させることが難しく、それがサイ
クル特性を劣化させる原因となっていたが、リチウムを
吸蔵・離脱可能な負極材料は一般的に表面積が大きいの
で、この二次電池ではリチウム金属を均一に析出させる
ことができることである。第2に、従来のリチウム二次
電池ではリチウム金属の析出・溶解に伴う体積変化が大
きく、それもサイクル特性を劣化させる原因となってい
たが、この二次電池ではリチウムを吸蔵・離脱可能な負
極材料の粒子間の隙間にもリチウム金属が析出するので
体積変化が少ないことである。第3に、従来のリチウム
二次電池ではリチウム金属の析出・溶解量が多ければ多
いほど上記の問題も大きくなるが、この二次電池ではリ
チウムを吸蔵・離脱可能な負極材料によるリチウムの吸
蔵・離脱も充放電容量に寄与するので、電池容量が大き
いわりにはリチウム金属の析出・溶解量が小さいことで
ある。第4に、従来のリチウム二次電池では急速充電を
行うとリチウム金属がより不均一に析出してしまうので
サイクル特性が更に劣化してしまうが、この二次電池で
は充電初期においてはリチウムを吸蔵・離脱可能な負極
材料にリチウムが吸蔵されるので急速充電が可能となる
ことである。
【0036】これらの利点をより効果的に得るために
は、例えば、開回路電圧が過充電電圧になる前の最大電
圧時において負極14に析出するリチウム金属の最大析
出容量は、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料の充電
容量能力の0.05倍以上3.0倍以下であることが好
ましい。リチウム金属の析出量が多過ぎると従来のリチ
ウム二次電池と同様の問題が生じてしまい、少な過ぎる
と充放電容量を十分に大きくすることができないからで
ある。また、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可能な負極
材料の放電容量能力は、150mAh/g以上であるこ
とが好ましい。リチウムの吸蔵・離脱能力が大きいほど
リチウム金属の析出量は相対的に少なくなるからであ
る。なお、負極材料の充電容量能力は、例えば、リチウ
ム金属を対極として、この負極材料を負極活物質とした
負極について0Vまで定電流・定電圧法で充電した時の
電気量から求められる。負極材料の放電容量能力は、例
えば、これに引き続き、定電流法で10時間以上かけて
2.5Vまで放電した時の電気量から求められる。
【0037】セパレータ15は、正極12と負極14と
を隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、
リチウムイオンを通過させるものである。このセパレー
タ15は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリ
プロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多
孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成され
ており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とさ
れていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜
はショート防止効果に優れ、かつシャットダウン効果に
よる電池の安全性向上を図ることができるので好まし
い。特に、ポリエチレンは、100℃以上160℃以下
の範囲内においてシャットダウン効果を得ることがで
き、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレ
ータ15を構成する材料として好ましい。また、ポリプ
ロピレンも好ましく、他にも化学的安定性を備えた樹脂
であればポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合
させたり、またはブレンド化することで用いることがで
きる。
【0038】セパレータ15には、液状の電解質である
電解液が含浸されている。この電解液は、溶媒と、この
溶媒に溶解された電解質塩であるリチウム塩とを含んで
構成されている。なお、電解液としては、25℃におけ
る固有粘度が10.0mPa・s以下のものが好まし
い。高い導電率を得ることができるからである。
【0039】溶媒としては、従来より使用されている種
々の非水溶媒を用いることができる。具体的には、炭酸
プロピレン,炭酸エチレン,炭酸ジエチル,炭酸ジメチ
ルあるいは炭酸エチルメチルなどの炭酸エステル、また
はγ−ブチロラクトンなどのエステル、またはテトラヒ
ドロピラン,テトラヒドロフランあるいは1,2−ジメ
トキシエタンなどのエーテルなどが挙げられる。
【0040】リチウム塩としては、例えば、ヘキサフル
オロリン酸リチウム(LiPF6 )、テトラフルオロホ
ウ酸リチウム(LiBF4 ),過塩素酸リチウム(Li
ClO4 )、ヘキサフルオロヒ酸リチウム(LiAsF
6 ),トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF3
SO3 Li)、ビス[ トリフルオロメタンスルホニル]
イミドリチウム((CF3 SO2 2 NLi),トリス
(トリフルオロメタンスルホニル)メチルリチウム
((CF3 SO2 3 CLi)あるいはビス[ ペンタフ
ルオロエタンスルホニル] イミドリチウム((C2 5
SO2 2 NLi)などが挙げられ、これらのいずれか
1種または2種以上を混合して用いてもよい。中でも、
後述する分子内塩として、カルボン酸あるいはスルホン
酸の誘導体を用いる場合には、電解液に不溶の塩を生成
させる虞がない(C2 5 SO2 2NLiを用いるこ
とが好ましい。
【0041】これらリチウム塩の含有量(濃度)は溶媒
に対して0.5mol/kg以上3.0mol/kg以
下の範囲内であることが好ましい。この範囲外ではイオ
ン伝導度の極端な低下により十分な電池特性が得られな
くなる虞があるからである。
【0042】この電解液は、また、添加剤として分子内
塩を含んでいる。この分子内塩は、陰イオンにリチウム
イオンを配位させて陽イオンの錯体となることにより、
リチウムイオンを溶媒に配位させることなく負極14に
輸送するものである。なお、分子内塩とは、1つの分子
内に陽イオンと陰イオンとを有し、それぞれのイオンが
共有結合で結ばれている化合物のことをいう。通常の塩
は陽イオンと陰イオンとは独立しており、溶媒に溶解す
るとそれぞれのイオンは分離されるが、分子内塩では溶
媒に溶解しても分子同士が解離するだけで共有結合で結
ばれた陽イオンと陰イオンとは対になったままである。
【0043】このような分子内塩を含むことにより、こ
の二次電池では、リチウムイオンの配位に起因する溶媒
の分解を抑制することが可能となっている。また、溶媒
ではなく、分子内塩によりリチウムイオンを輸送するこ
とが可能なため、リチウムイオンの輸送効率が高くなっ
ている。
【0044】分子内塩としては、例えば、溶媒と反応せ
ず、また正極12における不可逆的酸化分解あるいは負
極14における不可逆的還元分解をしないものが好まし
い。このような分子内塩としては、例えば、化3,化
4,化5,化6あるいは化7に示した構造式を有するカ
ルボン酸誘導体、または化8,化9,化10,化11あ
るいは化12に示した構造式を有するスルホン酸誘導体
が挙げられる。
【0045】
【化3】
【0046】
【化4】
【0047】
【化5】
【0048】
【化6】
【0049】
【化7】
【0050】
【化8】
【0051】
【化9】
【0052】
【化10】
【0053】
【化11】
【0054】
【化12】
【0055】上記化3〜12において、R1〜R24は
炭化水素基または炭化水素基に含まれる水素の少なくと
も一部がハロゲンで置換された基を表す。なお、R1〜
24は多重結合を持たない飽和鎖式基または飽和鎖式基
に含まれる水素の一部がハロゲンで置換された基である
ことが好ましい。多重結合を有すると電子を受け取りや
すく充電状態の負極14で還元反応が起きる可能性があ
るからである。また水素の一部がハロゲン以外の元素、
例えば酸素や窒素で置換されると、それらの原子の非共
有電子対から電子が奪われやすく、充電状態の正極12
で酸化反応が起きる可能性があるからである。
【0056】また、R1〜R24に含まれる炭素の数
は、1以上18以下であることが好ましく、1以上3以
下であることがより好ましい。炭素数が多くなると電解
液に分子内塩が溶解しにくくなるからである。
【0057】このような好ましい組成を有する分子内塩
としては、例えば、化13に示したトリメチル(カルボ
キシメチル)アンモニウム、あるいは例えばトリエチル
アミンとγ−プロパンスルトンとから合成される化14
に示したトリエチル(スルホプロピル)アンモニウムな
どが挙げられる。これら以外にも、化15に示したトリ
ゴネリンも好ましい。
【0058】
【化13】
【0059】
【化14】
【0060】
【化15】
【0061】電解液における分子内塩の含有量(濃度)
は、0.1mol/kg以上0.6mol/kg以下の
範囲内であることが好ましい。この範囲内においてより
高い効果を得ることができるからである。
【0062】なお、電解液に代えて、高分子化合物また
は無機化合物よりなる保持体に電解液を保持させた電解
質を用いてもよい。電解液(すなわち溶媒,電解質塩お
よび添加剤)については上述のとおりである。高分子化
合物としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフ
ッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンとポリヘキサフ
ルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエ
チレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレン
オキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスフ
ァゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル
アルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル
酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニ
トリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンあるいはポリカ
ーボネートが挙げられる。特に、電気化学的安定性の点
からは、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデ
ン、ポリヘキサフルオロプロピレンあるいはポリエチレ
ンオキサイドの構造を持つ高分子化合物を用いることが
望ましい。電解液に対する高分子化合物の添加量は、両
者の相溶性によっても異なるが、通常、電解液の5質量
%〜50質量%に相当する高分子化合物を添加すること
が好ましい。なお、分子内塩とリチウム塩の含有量と
は、電解液の場合と同様である。
【0063】この二次電池は、例えば、次のようにして
製造することができる。
【0064】まず、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可能
な正極材料と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤
を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン
などの溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリー
とする。この正極合剤スラリーを正極集電体12aに塗
布し溶剤を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより
圧縮成型して正極合剤層12bを形成し、正極合剤層1
2bが形成された正極集電体12aを所定の形状に打ち
抜くことにより正極12を作製する。
【0065】次いで、例えば、リチウムを吸蔵・離脱可
能な負極材料と、結着剤とを混合して負極合剤を調製
し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの
溶剤に分散してペースト状の負極合剤スラリーとする。
この負極合剤スラリーを負極集電体14aに塗布し溶剤
を乾燥させたのち、ロールプレス機などにより圧縮成型
して負極合剤層14bを形成し、負極合剤層14bが形
成された負極集電体14aを所定の形状に打ち抜くこと
により負極14を作製する。
【0066】そののち、例えば、負極14、電解質が含
浸されたセパレータ15および正極12を積層して、外
装カップ13と外装缶11との中に入れ、それらをかし
める。これにより、図1に示した二次電池が形成され
る。
【0067】この二次電池は次のように作用する。
【0068】この二次電池では、充電を行うと、正極合
剤層12bからリチウムイオンが離脱し、セパレータ1
5に含浸された電解液を介して、まず、負極合剤層14
bに含まれるリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料に吸
蔵される。更に充電を続けると、開回路電圧が過充電電
圧よりも低い状態において、充電容量がリチウムを吸蔵
・離脱可能な負極材料の充電容量能力を超え、リチウム
を吸蔵・離脱可能な負極材料の表面にリチウム金属が析
出し始める。そののち、充電を終了するまで負極14に
はリチウム金属が析出し続ける。これにより、負極合剤
層14bの外観は、例えばリチウムを吸蔵・離脱可能な
負極材料として炭素材料を用いる場合、黒色から黄金
色、更には白銀色へと変化する。
【0069】次いで、放電を行うと、まず、負極14に
析出したリチウム金属がイオンとなって溶出し、セパレ
ータ15に含浸された電解液を介して、正極合剤層12
bに吸蔵される。更に放電を続けると、負極合剤層14
b中のリチウムを吸蔵・離脱可能な負極材料に吸蔵され
たリチウムイオンが離脱し、電解液を介して正極合剤層
12bに吸蔵される。よって、この二次電池では、いわ
ゆるリチウム二次電池およびリチウムイオン二次電池の
両方の特性、すなわち高いエネルギー密度および良好な
充放電サイクル特性が得られる。
【0070】特に本実施の形態では、電解液に分子内塩
を含んでいるので、分子内塩の陰イオンにリチウムイオ
ンが配位されて分子内塩−リチウム錯体が生成される。
例えば、トリメチル(カルボキシメチル)アンモニウム
を含む場合、化16に示したように分子内塩−リチウム
錯体が生成される。分子内塩−リチウム錯体は陽イオン
であるために正極12と負極14との電位差に応じて負
極14に輸送され、負極14において還元されることに
よりリチウム金属と分子内塩になる。この分子内塩は、
拡散により正極12へ戻り、再び、リチウムイオンが配
位され、分子内塩−リチウム錯体となる。よって、リチ
ウムイオンが溶媒に配位し、負極14において溶媒が分
解されてしまうことが防止される。また、リチウムイオ
ンは効率よく負極14に輸送され、リチウムイオンの高
い輸送効率が得られる。
【0071】
【化16】
【0072】このように本実施の形態によれば、電解液
が分子内塩を含むようにしたので、リチウムイオンを分
子内塩の陰イオンに配位させて、負極14に輸送するこ
とができる。よって、リチウムイオンの配位に起因する
溶媒の分解を抑制することができる。また、分子内塩に
よりリチウムイオンを輸送することができ、リチウムイ
オンの輸送効率を高くすることができる。すなわち、放
電容量およびサイクル特性などを向上させることができ
る。
【0073】従って、従来ではサイクル特性を改善する
ために放電容量を犠牲にして安定な電極構造を採用する
場合もあったが、本実施の形態によれば、その必要がな
いため、不安定な電極構造を有する二次電池をも実用化
することができる。
【0074】また、ラップトップコンピュータ,携帯電
話,ビデオカメラ,デジタルスチルカメラあるいは携帯
情報端末などのポータブル機器、電気自動車または電動
アシスト自転車などにおける1回の充電に対する使用可
能時間を延ばすことができる。よって、二次電池を交換
する頻度を減少させることができため、省資源、低費用
を実現することもできる。
【0075】また、従来と同等の使用可能時間を維持す
るのに、従来と同等の体積や重量が不要なため、電池を
小型化することもできる。
【0076】特に、本実施の形態において、電解液にお
ける分子内塩の含有量を0.1mol/kg以上0.6
mol/kg以下とするようにすれば、より高い効果を
得ることができる。
【0077】なお、上記実施の形態では、負極14の容
量がリチウムの吸蔵・離脱による容量成分と、リチウム
の析出・溶解による容量成分との和により表される二次
電池を例に挙げて説明したが、他の構成を有する二次電
池についても、電解液に分子内塩を含むようにすれば、
同様の効果を得ることができる。すなわち、放電容量お
よびサイクル特性を向上させることができる。
【0078】他の構成を有する二次電池としては、例え
ば、負極の容量がリチウムの吸蔵・離脱による容量成分
で表されるいわゆるリチウムイオン二次電池や、あるい
は負極の容量がリチウム金属の析出・溶解による容量成
分で表されるいわゆるリチウム二次電池が挙げられる。
リチウムイオン二次電池は、例えば、リチウムを吸蔵・
離脱可能な負極材料の量が正極材料に対して相対的に多
く、充電の途中において負極にリチウム金属が析出しな
いことを除き、上記二次電池と同様の構成を有し、同様
にして製造することができる。また、リチウム二次電池
は、例えば、負極がリチウム金属などにより構成される
ことを除き、上記二次電池と同様の構成を有し、同様に
して製造することができる。
【0079】但し、負極14の容量がリチウムの吸蔵・
離脱による容量成分と、リチウムの析出・溶解による容
量成分との和により表される二次電池、または負極の容
量がリチウム金属の析出・溶解による容量成分で表され
るいわゆるリチウム二次電池に適用する場合において、
より高い効果を得ることができる。
【0080】
【実施例】更に、本発明の具体的な実施例について、図
1を参照して詳細に説明する。
【0081】実施例1〜4として、負極14の容量が、
リチウムの吸蔵・離脱による容量成分と、リチウムの析
出・溶解による容量成分との和により表される二次電池
を作製した。
【0082】まず、正極材料であるリチウム・コバルト
複合酸化物(LiCoO2 )90質量部と、導電剤であ
るグラファイト6質量部と、結着剤であるポリフッ化ビ
ニリデン4質量部とを混合して正極合剤を調製した。続
いて、この正極合剤を溶剤であるN−メチル−2−ピロ
リドンに分散させて正極合剤スラリーとし、厚み20μ
mのアルミニウム箔よりなる正極集電体12aに均一に
塗布して乾燥させ、正極合剤層12bを形成した。その
のち、正極合剤層12bが形成された正極集電体12a
を打ち抜くことにより、直径15mm、厚み0.072
5mmの円盤状の正極12を作製した。
【0083】また、負極材料である黒鉛90質量部と、
結着剤であるポリフッ化ビニリデン10質量部とを混合
して負極合剤を調整した。続いて、この負極合剤を溶剤
であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて負極合
剤スラリーとし、厚み15μmの銅箔よりなる負極集電
体14aに均一に塗布して乾燥させ、負極合剤層14b
を形成した。そののち、負極合剤層14bが形成された
負極集電体14aを打ち抜くことにより、直径16m
m、厚み0.0511mmの円盤状の負極14を作製し
た。なお、正極12および負極14を作製する際には、
リチウムの吸蔵・離脱に依存する電池容量が3.3mA
h、リチウムの析出・溶解に依存する電池容量が1.3
mAhとなるように、正極12と負極14との厚みを調
整した。
【0084】更に、炭酸エチレンと炭酸ジメチルとを等
質量で混合した溶媒に、電解質塩として(C2 5 SO
2 2 NLiを1.0mol/kgの含有量で溶解させ
たものに、分子内塩としてトリメチル(カルボキシメチ
ル)アンモニウムまたはトリエチル(スルホプロピル)
アンモニウムを添加することにより電解液を作製した。
その際、電解液における分子内塩の含有量は、実施例1
〜4で表1に示したように変化させた。
【0085】
【表1】
【0086】次いで、外装カップ13に負極14および
厚み25μmの微多孔性ポリプロピレンフィルムよりな
るセパレータ15をこの順で置き、この上から電解液を
注入し、正極12を入れた外装缶11を被せたのち、外
装カップ13および外装缶11の周縁部をポリプロピレ
ンよりなるガスケット16を介してかしめることによ
り、直径20.0mm、高さ1.6mmのコイン型の電
池を作製した。その際、外装カップ13にはステンレス
よりなるものを用い、外装缶11にはアルミニウム,ス
テンレスおよびニッケルが内側からこの順で積層されて
なるものを用いた。
【0087】得られた実施例1〜4の二次電池につい
て、充放電試験を行い、10サイクル目,20サイクル
目および30サイクル目の放電容量維持率を求めた。そ
の際、充電は、1.3mAの定電流で電池電圧が4.2
Vに達するまで行ったのち、4.2Vの定電圧で電流が
0.01mAに達するまで行い、放電は、1.3mAの
定電流で電池電圧が3.0Vに達するまで行った。な
お、10サイクル目,20サイクル目および30サイク
ル目放電容量維持率は、それぞれ1サイクル目の放電容
量(初回放電容量)に対する10サイクル目,20サイ
クル目および30サイクル目の放電容量の比率(%)と
して算出した。得られた結果を表1に示す。
【0088】また、本実施例に対する比較例として、電
解液に分子内塩を添加しないことを除き、他は本実施例
と同様にして二次電池を作製した。比較例の二次電池に
ついても、本実施例と同様にして、放電容量維持率を調
べた。それらの結果も表1に示す。
【0089】表1から分かるように、トリメチル(カル
ボキシメチル)アンモニウムを含む実施例1、およびト
リエチル(スルホプロピル)アンモニウムを含む実施例
2〜4によれば、それらを含まない比較例に比べて、高
い放電容量維持率が得られた。すなわち、電解液にトリ
メチル(カルボキシメチル)アンモニウムまたはトリエ
チル(スルホプロピル)アンモニウムを含むようにすれ
ば充放電サイクル特性を向上させることができることが
分かった。
【0090】また、実施例2〜4の結果から、放電容量
維持率は、トリエチル(スルホプロピル)アンモニウム
の含有量を増加させると大きくなり、極大値を示したの
ち小さくなる傾向が見られた。すなわち、電解液におけ
るトリエチル(スルホプロピル)アンモニウムの含有量
を0.1mol/kg以上0.6mol/kgの範囲内
とすれば、より高い効果を得られることが分かった。
【0091】なお、上記実施例では、分子内塩について
具体的に例を挙げて説明したが、上述した結果は、分子
内塩の分子構造に起因するものと考えられる。よって、
他の分子内塩を用いても同様の結果を得ることができ
る。また、上記実施例では、電解液を用いる場合につい
て説明したが、高分子化合物または無機化合物よりなる
保持体に電解液を保持させた電解質を用いても同様の結
果を得ることができる。
【0092】以上、実施の形態および実施例を挙げて本
発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施
例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例
えば、上記実施の形態および実施例においては、軽金属
としてリチウムを用いる場合について説明したが、ナト
リウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他のアル
カリ金属、またはマグネシウムあるいはカルシウム(C
a)などのアルカリ土類金属、またはアルミニウムなど
の他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を
用いる場合についても、本発明を適用することができ、
同様の効果を得ることができる。その際、軽金属を吸蔵
および離脱することが可能な負極材料、正極材料、非水
溶媒、あるいは電解質塩などは、その軽金属に応じて選
択される。但し、軽金属としてリチウムまたはリチウム
を含む合金を用いるようにすれば、現在実用化されてい
るリチウムイオン二次電池との電圧互換性が高いので好
ましい。なお、軽金属としてリチウムを含む合金を用い
る場合には、電解質中にリチウムと合金を形成可能な物
質が存在し、析出の際に合金を形成してもよく、また、
負極にリチウムと合金を形成可能な物質が存在し、析出
の際に合金を形成してもよい。
【0093】また、上記実施の形態および実施例におい
ては、コイン型の二次電池を具体的に挙げて説明した
が、本発明は、円筒型、ボタン型、角型あるいはラミネ
ートフィルムなど外装部材を用いた他の形状を有する二
次電池、または正極および負極を電解質を介して巻回し
た巻回構造などの他の構造を有する二次電池についても
同様に適用することができる。また、二次電池に限ら
ず、一次電池などの他の電池についても適用することが
できる。
【0094】
【発明の効果】以上説明したように請求項1ないし請求
項5のいずれか1項に記載の電池によれば、電解液に分
子内塩を含むようにしたので、電解質塩の解離により生
じたイオンと分子内塩とで錯体のイオンを形成させるこ
とができる。よって、電解質塩の解離により生じたイオ
ンが溶媒に配位することを防止することができ、電極に
おける溶媒の分解を抑制することができる。また、電解
質塩の解離により生じたイオンの輸送効率を高くするこ
とができる。従って、放電容量およびサイクル特性を向
上させることができる。
【0095】特に、請求項5記載の電池によれば、電解
液における分子内塩の含有量を0.1mol/kg以上
0.6mol/kg以下となるようにしたので、より高
い効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を
表す断面図である。
【符号の説明】
11…外装缶、12…正極、12a…正極集電体、12
b…正極合剤層、13…外装カップ、14…負極、14
a…負極集電体、14b…負極合剤層、15…セパレー
タ、16…ガスケット

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 正極および負極と共に、溶媒に電解質塩
    が溶解された電解液を備えた電池であって、 前記電解液は、分子内に陽イオンと陰イオンとを有する
    分子内塩を含むことを特徴とする電池。
  2. 【請求項2】 前記負極の容量は、軽金属の吸蔵および
    離脱による容量成分と、軽金属の析出および溶解による
    容量成分との和により表されることを特徴とする請求項
    1記載の電池。
  3. 【請求項3】 前記軽金属は、リチウムを含み、 前記電解液は、前記分子内塩としてトリメチル(カルボ
    キシメチル)アンモニウムを含むと共に、前記電解質塩
    としてビス[ペンタフルオロエタンスルホニル]イミド
    リチウムを含むことを特徴とする請求項2記載の電池。
  4. 【請求項4】 前記軽金属は、リチウムを含み、 前記電解液は、前記分子内塩としてトリエチル(スルホ
    プロピル)アンモニウムを含むと共に、前記電解質塩と
    してビス[ペンタフルオロエタンスルホニル]イミドリ
    チウムを含むことを特徴とする請求項2記載の電池。
  5. 【請求項5】 前記電解液における前記分子内塩の含有
    量は、0.1mol/kg以上0.6mol/kg以下
    であることを特徴とする請求項1記載の電池。
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