JP2003335893A - 有孔発泡プラスチック - Google Patents

有孔発泡プラスチック

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洋幸 栗原
Takanori Yumoto
隆範 湯本
Shintaro Hara
慎太郎 原
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 吸音性能を付与した発泡プラスチックの開
発。 【構成】 加熱発泡により成形される樹脂フォーム材で
あって、面積が1mm2以上、開孔率3%〜25%で貫
通せずに開いている孔を有することを特徴とする有孔発
泡プラスチック。フォーム材の厚さに対して、10%〜
150%の長さで貫通せずに開いている孔を片側のみに
有することを特徴とする、上記に記載された有孔発泡プ
ラスチック。フォーム材の開孔側に、シート状吸音材が
積層されていることを特徴とする、上記に記載の有孔発
泡プラスチック。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種用途に使用さ
れる発泡プラスチックに関する。
【0002】
【従来の技術】冷蔵を要する物品の断熱輸送や保管箱、
物品包装のための充填材、保護材、衝撃緩和材など、熱
可塑性樹脂フォーム材、熱硬化性樹脂フォーム材、いわ
ゆる発泡プラスチックは広く様々な用途で使用されてい
る。
【0003】しかしながら、通常の製法により製造され
た発泡プラスチックは通気性が無く、従って吸音性能を
ほとんど有さない。
【0004】一方、優れた衝撃緩和性を利用して、自動
車の衝突時などの衝撃から車室内の乗員を保護するた
め、発泡プラスチックが使用される場合がある。
【0005】また、本出願人からは、発泡プラスチック
を芯材に使用した自動車フロアの嵩上げ材を特許出願し
ている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、吸音
性能を付与した発泡プラスチックを開発することを課題
とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】かかる課題を解決せんと
して、本発明者らは鋭意研究の結果、発泡成形された発
泡プラスチックに、特定面積以上の孔を特定の開孔率で
貫通せずして開けた発泡プラスチックを開発したもので
あり、しかして本発明の要旨は以下に存する。
【0008】加熱発泡により成形される樹脂フォーム材
であって、面積が1mm2以上、開孔率3%〜25%で
貫通せずに開いている孔を有することを特徴とする有孔
発泡プラスチック。フォーム材の厚さに対して、10%
〜150%の長さで貫通せずに開いている孔を片側のみ
に有することを特徴とする、上記に記載された有孔発泡
プラスチック。フォーム材の開孔側に、シート状吸音材
が積層されていることを特徴とする、上記に記載の有孔
発泡プラスチック。フォーム材の非開孔側に、制振材が
積層されていることを特徴とする、上記に記載の有孔発
泡プラスチック。フォーム材の開孔側に、シート状吸音
材が積層されており、フォーム材の非開孔側に、制振材
が積層されていることを特徴とする、上記に記載の有孔
発泡プラスチック。
【0009】本発明になる発泡プラスチックは、公知の
各種熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を原材料として、製法
としてはビーズ発泡法、押出発泡法、常圧発泡法、加圧
発泡法等が知られているが、本発明における発泡プラス
チックは、いずれの製法で得られる発泡プラスチックも
使用することができる。熱可塑性樹脂としては、ポリプ
ロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、
塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニ
ル共重合体樹脂等を例示することができる。熱硬化性樹
脂としては、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、フェノール
樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂等を例示することが
できる。
【0010】押出発泡法では、核となる粒状、ペレット
状の樹脂と、発泡剤として低沸点炭化水素、ハロゲン化
炭化水素、化学発泡剤等が定量に計量されて、押出機に
よって発泡され、一定寸法に切断して定尺のボードなど
の形状のフォーム材となる。常圧発泡法は、混合、押出
を経て放射線架橋、あるいは化学架橋を経て、フォーム
材を得る方法である。加圧発泡は、加圧架橋によりまず
発泡性の架橋体を生成させて、これを常圧で発泡させる
という方法を取るものである。
【0011】ビーズ発泡法においては、製法の第1段階
は発泡ビーズを製造することである。現在広く行われて
いる発泡ビーズの製法は、重合法と含浸法である。重合
法は、主としてブタン、ペンタンなどの飽和炭化水素系
の発泡剤と触媒とを、使用する樹脂のモノマーに加え
て、重合容器の中で懸濁重合することにより得られる。
含浸法は、ペレット状、あるいは球状の使用する樹脂を
分散溶液とともに圧力釜に入れ、プロパン、ブタン等の
飽和炭化水素系の発泡剤を圧入し、攪拌することにより
発泡剤を樹脂に浸透、拡散させることで得られる。
【0012】これらの従来公知の方法により得られる発
泡プラスチックは、通常通気性が全く無いか、あるいは
ほとんど無いといって良い程度であるため、吸音性能は
ほとんど期待できない。そこで本発明では、面積が1m
2以上の孔が、開孔率3%〜25%、より好ましく
は、開孔率12%〜20%で開いている発泡プラスチッ
クを開発したものである。1つの孔の面積は1mm2
上である必要がある。1mm2未満の面積であると、必
要な吸音効果が得られない。また開孔率は、3%〜25
%が適当であり、3%未満であると十分な吸音性能が得
られない虞れがある。25%を超えると発泡プラスチッ
クの強度が低下し、割れやすくなる等の問題が発生する
虞れがある。
【0013】開ける孔は、貫通しておらず、また発泡プ
ラスチックの片側にのみ開いていることが好ましい。孔
の向きとしては、発泡プラスチック表面から垂直に開い
ていても、角度を持ち斜めに開いていても、更には孔の
内径断面積が変化してもよい。開ける孔が貫通していな
いことにより、孔による吸音効果が発生すると同時に、
発泡プラスチックが元来有している遮音効果を低下させ
ることなく維持することが可能となる。
【0014】発泡プラスチックに表面孔を開けるには、
いくつか方法が考えられるが、その1は、発泡成形時に
針状、棒状の突起物を有する発泡成形型内で発泡成形を
行う方法である。突起物の径、長さを調節することによ
り、形成される孔の長さ、開孔率などを調節することが
できる。その2は、発泡成形後のフォーム材に、針状
物、棒状物を刺す、らせん刃を有するドリルによる切削
などの任意の後加工方法により、発泡プラスチックの厚
さ方向に孔を開けることである。この際に、針状物、棒
状物等を加熱することにより、容易に細い孔を形成する
ことが可能である。
【0015】本発明の発泡プラスチックは、単体であっ
ても必要十分な吸音性能を有するものであるが、孔を開
けている開孔側面に、シート状の吸音材を積層すること
により、一層の吸音効果の向上を得ることができる。シ
ート状の吸音材は特に限定されないが、布、不織布、レ
ジンフェルト、熱可塑フェルト、ニードルフェルト、ポ
リウレタン等の各種樹脂フォーム材等が例示できる。な
お、後加工により孔をあける場合、上記のシート状吸音
材を積層した後、シート状吸音材の上から発泡プラスチ
ックを貫通しない孔をあけても差し支えない。また、孔
を開けていない側の面に、アスファルト系制振材、ゴム
シート系制振材、熱可塑性樹脂系制振材、熱硬化性樹脂
系制振材などの各種制振材を積層することにより、吸音
効果と同時に制振効果を付与することができ、相乗的な
防音効果が期待できる。
【0016】本発明になる有孔発泡プラスチックは、優
れた吸音性を有するため、衝撃緩和、断熱性と同時に、
吸音性能を必要とする個所に使用することが特に有効で
ある。例えば建築用断熱材に使用することで断熱性に加
えて吸音性能を付与して、快適な室内空間を得ることが
でき、自動車のダッシュパネル下部に使用される衝突の
衝撃緩衝材に使用することで、エンジンルームからの騒
音を吸音する効果を追加できる。また、自動車のフロア
嵩上げ材に使用することで、車室内騒音の低減にも効果
を発揮することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の理解に供するため、以下
に実施例を記載する。いうまでもなく、本発明は以下の
実施例に限定されるものではない。
【0018】
【実施例1】ポリスチレンモノマーより発泡ビーズを生
成し、この発泡ビーズを使用して、型内部に長さ10〜
17mm、面積が20mm2である針状物を多数設置さ
れた成形型内に注入し、蒸気加熱発泡、乾燥工程を経
て、厚さ30mmの直方体の発泡ポリスチレンフォーム
材を得た。この発泡ポリスチレンフォーム材には、面積
20mm2の片側に開いた非貫通孔が多数形成され、片
側面の開孔率は12%であった。
【0019】
【実施例2】ポリエチレンモノマーより発泡ビーズを生
成し、この発泡ビーズを使用して成形型内に注入し、蒸
気加熱発泡、乾燥工程を経て、厚さ30mmの直方体の
発泡ポリエチレンフォーム材を得た。この発泡エチレン
フォーム材に、多数の針状物を有する200℃に加熱さ
れた金属成形冶具を刺し、面積30mm2の片側のみ開
いた非貫通孔を形成し、片側面の開孔率は20%であっ
た。
【0020】
【実施例3】ポリプロピレンモノマーより発泡ビーズを
生成し、この発泡ビーズを使用して成形型内に注入し、
蒸気加熱発泡、乾燥工程を経て、厚さ30mmの直方体
の発泡ポリプロピレンフォーム材を得た。この発泡ポリ
プロピレンフォーム材に、多数の針状物を有する200
℃に加熱された金属成形冶具を刺し、片側にのみ開いた
面積20mm2の非貫通孔を形成し、開孔率は15%で
あった。このフォーム材の孔が開いている側の面に、厚
さ20mmのレジンフェルトからなるシート状吸音材を
積層した。
【0021】
【実施例4】ポリプロピレンモノマーより発泡ビーズを
生成し、この発泡ビーズを使用して成形型内に注入し、
蒸気加熱発泡、乾燥工程を経て、厚さ30mmの直方体
の発泡ポリプロピレンフォーム材を得た。この発泡ポリ
プロピレンフォーム材に、らせん刃を有するドリルによ
り、片側にのみ開いた面積20mm2の非貫通孔を形成
し、開孔率は13%であった。このフォーム材の孔が開
いていない側の面に、厚さ3mmのアスファルト系制振
シート状を積層した。
【0022】
【実施例5】ポリプロピレンモノマーより発泡ビーズを
生成し、この発泡ビーズを予め厚さ2mmのゴムシート
を載置した成形型内に注入し、蒸気加熱発泡、乾燥工程
を経て、厚さ2mmのゴムシートが積層された、厚さ3
0mmの直方体の発泡ポリプロピレンフォーム材を得
た。この発泡ポリプロピレンフォーム材に厚さ5mmの
ニードルフェルトを積層し、該ニードルフェルトの上か
ら、らせん刃を有するドリルにより、片側にのみ開いた
面積20mm2の非貫通孔を形成し、開孔率は13%で
あった。
【0023】
【比較例1】ポリスチレンモノマーより発泡ビーズを生
成し、この発泡ビーズを成形型内に注入し、蒸気加熱発
泡、乾燥工程を経て、厚さ30mmの直方体の発泡ポリ
スチレンフォーム材を得た。
【0024】
【比較例2】比較例1と同じ発泡ポリスチレンフォーム
材に、1つの孔の面積が20mm2の貫通孔を、開孔率
20%となるようにあけた。
【0025】
【試験方法1】実施例1〜5、及び比較例1〜2のフォ
ーム材を、JIS A1406 に規定される「残響室法吸
音率の測定法」により、特定周波数における吸音率を測
定した。
【0026】
【試験方法2】実施例1〜5、及び比較例1〜2のフォ
ーム材を、JIS A1416 に規定される「実験室にお
ける音響透過損失測定方法」により、特定周波数におけ
る遮音効果を測定した。
【0027】
【結果】実施例1〜5の吸音率は、次の通りであった。
単位は%
【表1】 実施例1〜5の遮音効果は、次の通りであった。単位は
dB
【表2】 実施例1〜実施例5の有孔フォーム材は、いずれも比較
例1の樹脂フォーム材と比較して、可聴範囲の周波数帯
域において最小で3%〜最大で80%の吸音率の向上が
認められ、比較例2の貫通孔を有する樹脂フォーム材と
比較しても同等若しくはそれ以上の吸音率が認められ
た。一方実施例1〜実施例5の有孔フォーム材は、いず
れも比較例2の貫通孔を有する樹脂フォーム材と比較し
て、可聴範囲の周波数帯域において最大で約20dBの
遮音効果の向上が認められ、比較例1の樹脂フォーム材
と比較しても同等若しくはそれ以上の遮音効果が認めら
れた。
【0028】
【発明の効果】本発明になる発泡プラスチックは、従来
はなし得なかった衝撃緩和性、あるいは断熱性と、吸音
性の両立を果たすものであり、更に吸音効果と遮音効果
の双方を有する画期的とも言える防音性能を示すもので
あり、自動車用各種防音材をはじめとして、建築用途
等、各種産業用に幅広い応用が考えられるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明になる有孔発泡プラスチックの断面図で
ある。
【図2】本発明になるシート状吸音材を積層した有孔発
泡プラスチックの断面図である。
【図3】本発明になる制振材を積層した有孔発泡プラス
チックの断面図である。
【図4】本発明になるシート状吸音材、及び制振材を積
層した有孔発泡プラスチックの断面図である。 1:有孔発泡プラスチック 2:シート状吸音材 3:
制振材
フロントページの続き Fターム(参考) 4F074 AA17 AA24 AA32 CA32 CA49 CE02 DA57 4F100 AK12 AR00B AR00C BA02 BA03 BA07 BA10A BA10B BA10C BA43A DJ01A GB90 JH01 JH01B JH02C JK20 YY00A

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】加熱発泡により成形される樹脂フォーム材
    であって、1つの孔の面積が1mm2以上、開孔率3%
    〜25%で貫通せずに開いている孔を有することを特徴
    とする有孔発泡プラスチック。
  2. 【請求項2】フォーム材の厚さに対して、10%〜15
    0%の長さで貫通せずに開いている孔を片側のみに有す
    ることを特徴とする、請求項1に記載された有孔発泡プ
    ラスチック。
  3. 【請求項3】フォーム材の開孔側に、シート状吸音材が
    積層されていることを特徴とする、請求項1又は2に記
    載の有孔発泡プラスチック。
  4. 【請求項4】フォーム材の非開孔側に、制振材が積層さ
    れていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の有
    孔発泡プラスチック。
  5. 【請求項5】フォーム材の開孔側に、シート状吸音材が
    積層されており、フォーム材の非開孔側に、制振材が積
    層されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載
    の有孔発泡プラスチック。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2006265294A (ja) * 2005-03-22 2006-10-05 Sekisui Plastics Co Ltd 穴あき熱可塑性樹脂発泡体とその製造方法及びその利用
JP2007136966A (ja) * 2005-11-21 2007-06-07 Asahi Fiber Glass Co Ltd ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造方法

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