JP2003334853A - 表面平滑性に優れる表面加飾用アクリル樹脂フィルム - Google Patents

表面平滑性に優れる表面加飾用アクリル樹脂フィルム

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JP2003334853A
JP2003334853A JP2002145868A JP2002145868A JP2003334853A JP 2003334853 A JP2003334853 A JP 2003334853A JP 2002145868 A JP2002145868 A JP 2002145868A JP 2002145868 A JP2002145868 A JP 2002145868A JP 2003334853 A JP2003334853 A JP 2003334853A
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resin film
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Hiroshi Koyama
浩士 小山
Yosuke Tsukuda
陽介 佃
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Sumitomo Chemical Co Ltd
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Sumitomo Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 表面のうねりが抑えられ、良好な意匠性を発
現し得る表面加飾用アクリル樹脂フィルムを提供し、こ
のフィルムが最表層に配置された積層成形品を提供す
る。 【解決手段】 フィルム表面の山頂平均間隔Sが200
μm 以上であり、かつフィルム表面から任意に選択され
たm箇所におけるそれぞれの山頂平均間隔SをSS1
SS2、……SSk、……SSmとしたときに、下式で定
義される山頂平均間隔Sの変動率σが20%以下である
アクリル樹脂フィルムが提供される。 ただし、p及びqは1からmまでの数であるが、p≠q
である。表面に印刷が施されている上記のアクリル樹脂
フィルム、また、絵柄を有する熱可塑性樹脂フィルムの
絵柄上に上記のアクリル樹脂フィルムが積層された積層
フィルムも提供され、さらに、これらいずれかのフィル
ムが表層に一体化されたアクリル樹脂フィルム積層射出
成形品も提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表面加飾に好適に
用いられるアクリル樹脂フィルムに関するものである。
さらに詳しくは、表面平滑性に優れたアクリル樹脂フィ
ルムであって、印刷性に優れ、意匠性の良好な表面加飾
用アクリル樹脂フィルムに関するものである。本発明は
また、このアクリル樹脂フィルムを表面に配置した積層
成形品にも関係している。
【0002】
【従来の技術】従来より、自動車の内装、家庭電器製品
の外装などには、射出成形による樹脂成形体が広く用い
られている。かかる成形体を装飾するために、例えば、
射出成形同時貼合と呼ばれる手法が採用されている。射
出成形同時貼合法には、装飾が施された樹脂フィルム又
は積層フィルムを射出成形の雌雄金型間に挿入し、その
金型の一方の側から溶融樹脂を射出して、射出成形体を
形成すると同時にその成形体に上記の樹脂フィルムを貼
合する方法や、装飾が施された樹脂フィルム又は積層フ
ィルムを、真空成形等で予備賦形してから射出成形金型
内に挿入し、そこに溶融樹脂を射出して、射出された樹
脂とフィルムとを一体化する方法(インサート成形法と
も呼ばれる)、装飾が施された樹脂フィルム又は積層フ
ィルムを射出成形金型内での真空成形や圧空成形等によ
り予備賦形した後、そこに溶融樹脂を射出して、射出さ
れた樹脂とフィルムとを一体成形する方法(インモール
ド成形法とも呼ばれる)などがある。このような射出成
形同時貼合法は、例えば、特公昭 63-6339号公報、特公
平 4-9647 号公報、特開平 7-9484 号公報などに記載さ
れている。
【0003】フィルムへの装飾方法としては、印刷によ
り絵柄を付与する方法や、絵柄を有する熱可塑性樹脂シ
ート又はフィルムを積層する方法が多く用いられてい
る。また、上記の射出成形同時貼合法には、耐候性に優
れるとともに、表面光沢、表面硬度及び表面平滑性も良
好であることから、アクリル樹脂フィルムが好ましく採
用されている。
【0004】ところで、この射出成形同時貼合法におい
ては、表層となるべき樹脂フィルムに従来のアクリル樹
脂フィルムを用いた場合、フィルム表面のうねりが影響
し、最表面にあるアクリル樹脂フィルム層を通して絵柄
を見たときに、像が歪んで見えたり凹凸感が生じたりす
るため、その改善が望まれていた。特開平 8-323934号
公報や特開平 11-147237号公報には、メタクリル樹脂に
アクリル系ゴム粒子が配合され、射出成形同時貼合に好
適に用いられるアクリル樹脂フィルムが開示されている
が、表面のうねりを小さく抑制する手法については具体
的に記載されていない。また、これらの公報に記載され
たフィルムを、必要によっては印刷を施して用い、射出
成形同時貼合法により他の熱可塑性樹脂の表面を加飾し
た場合、あるいは、これらのフィルムを、絵柄を有する
他の熱可塑性樹脂のシート若しくはフィルムの絵柄上に
積層し、当該他の熱可塑性樹脂側に射出成形同時貼合法
により熱可塑性樹脂を射出貼合した場合には、深み感は
増すものの、絵柄の像の歪みや凹凸感が発現することが
あった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、うねりを抑え
た、良好な意匠性を発現し得る表面加飾用アクリル樹脂
フィルムの開発が強く要望されていた。したがって本発
明の目的は、表面のうねりが抑えられ、良好な意匠性を
発現し得る表面加飾用アクリル樹脂フィルムを提供する
ことにある。本発明のもう一つの目的は、このアクリル
樹脂フィルムを最表層として配置し、意匠性に優れたア
クリル樹脂フィルム積層成形品を提供することにある。
【0006】このような状況に鑑み、本発明者らは鋭意
研究を行った結果、フィルム表面の山頂平均間隔が特定
値を示し、かつその変動率が一定範囲内にあるアクリル
樹脂フィルムとすれば、うねりが小さく、像の歪みのな
い表面加飾用フィルムが得られ、優れた意匠性を発現で
きること、また当該フィルムを用いた積層フィルムも種
々の成形に適すること、さらには当該フィルムを表面に
有する射出成形品は、下層の絵柄等に歪みや凹凸感がな
く、深み感があって意匠性に優れたものとなることを見
出した。これらの知見をもとに、さらに種々の検討を加
えて本発明を完成するに至った。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明によれ
ば、少なくとも片方の面において、フィルム表面の山頂
平均間隔Sが200μm 以上であり、かつフィルム表面
から任意に選択されたm箇所におけるそれぞれの山頂平
均間隔SをSS1、SS2、……SSk、……SSmとした
ときに、下式(I)で定義される山頂平均間隔Sの変動
率σが20%以下であるアクリル樹脂フィルムが提供さ
れる。
【0008】
【0009】ただし、p及びqは1からmまでの数であ
るが、p≠qである。
【0010】このフィルムは有利には、Tダイから溶融
押出しされたアクリル樹脂を、2本の鏡面ロールに接触
させ、線圧300N/cm以上の押し付け圧力にて挟み込
んだ状態で製膜される。
【0011】またこのアクリル樹脂フィルムは、その片
面に印刷を施して意匠層とするか、あるいは絵柄を有す
る熱可塑性樹脂フィルムの絵柄上に積層して、表面加飾
に用いるのが有利である。そこで本発明によれば、表面
に印刷が施されている上記のアクリル樹脂フィルムが提
供され、また、絵柄を有する熱可塑性樹脂フィルムの絵
柄上に上記のアクリル樹脂フィルムが積層されている積
層フィルムも提供される。
【0012】これらの表面加飾用フィルムは、射出成形
品の表層を構成するのに有利に使用される。そこで本発
明によれば、上記のアクリル樹脂フィルム又は積層フィ
ルムが表層に一体化されたアクリル樹脂フィルム積層成
形品も提供される。積層フィルムを用いる場合は、アク
リル樹脂フィルムが最表層となるように配置される。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明のアクリル樹脂フィルムは、その少なくと
も片方の面において、山頂平均間隔Sが200μm 以上
であり、かつ前記式(I)で定義される山頂平均間隔S
の変動率σが20%以下となるようにする。
【0014】山頂平均間隔Sは、正確には、局部的山頂
平均間隔(Mean spacing of localpeaks of the profil
e)とも呼ぶべきものであって、次のとおりに定義され
る。すなわち、表面粗さ計により求められる粗さ曲線か
ら、ある測定長さLを抜き取り、その抜き取った部分の
隣接する局部的山頂の間隔をSi とし、間隔の総数をn
としたとき、次の式(II)から求められる値Sを長さの
単位で表したものが、山頂平均間隔である。
【0015】
【0016】図1に示す粗さ曲線の例をもとに説明する
と、フィルム面に平行な方向をX座標、フィルムの厚み
方向をZ座標とし、X方向の測定長さLに対してn+1
個の山がある場合に、隣接する山頂の間隔をS1、S2
……Si、……Snとすると、間隔の総数はn個になる。
そして、n個の間隔の平均値が、山頂平均間隔Sとな
る。なお、山及び谷の判定基準として、最大高さRy
10%未満の高さのものは、一つの独立した山及び谷と
はみなされない。また、山頂の間隔の最小値は、測定長
さLの1%とし、それ以下のものは一つの山とみなされ
ない。
【0017】山頂平均間隔は、以前の ISO 468-1982 に
規定されており、この規格は1998年に廃止され、その主
要部分は ISO 4287-1997に引き継がれているが、山頂平
均間隔Sは、新規格 ISO 4287-1997に記載されていな
い。ただ、市販の表面粗さ計により測定できる値であ
り、しかも表面のうねり状態を表す指標として有効であ
ることから、本明細書では、上のように定義される山頂
平均間隔Sを使用することとする。なお、ISO 4287-199
7 を翻訳した日本語規格が、JIS B 0601-2001 である。
山頂平均間隔Sとは異なる別の横方向パラメータに、輪
郭曲線要素の平均長さ(Mean width of the profile el
ement )があるが、これは、ISO 4287-1997及び JIS B
0601-2001 に、それぞれ断面曲線、粗さ曲線及びうねり
曲線から求められるパラメータPSm、RSm及びWSm
として規定されている。先に述べた山及び谷と判断する
最小高さ及び最小間隔は、この輪郭曲線要素の平均長さ
において規定されているものと同じである。
【0018】上記のように定義され、あるいは測定され
るフィルム表面の山頂平均間隔Sが200μm 以上であ
れば、表面から見た場合のクリア感の観点から好ましい
ものとなる。山頂平均間隔Sが200μm を下回ると、
うねりというよりも、むしろ表面が荒れている状態を表
し、表面での光の乱反射により白く濁ってクリア感を喪
失する。この山頂平均間隔Sは、300μm 以上、さら
には400μm 以上であるのが、より好ましい。また、
前記式(I)で定義される山頂平均間隔Sの変動率σ
は、外観上の凹凸感を抑制し、さらには絵柄の歪みを抑
制する観点から、20%以下とされる。山頂平均間隔S
の変動率σが20%を越えると、像のゆがみが激しくな
り、意匠性を損なう。変動率σは、10%以下であるの
がより好ましい。
【0019】表面粗さ計の構造上、図1に示される測定
長さLをあまり大きくとることはできない。そこで、フ
ィルム表面における任意の何箇所か、好ましくは少なく
とも10箇所について、前記の式(II)で定義される山
頂平均間隔Sを測定し、その中の最小値をもって、その
フィルムの測定面の山頂平均間隔Sとすればよい。そし
て、これら複数箇所の測定データに基づいて、前記式
(I)から山頂平均間隔Sの変動率σを算出すればよ
い。
【0020】なお、本発明では、アクリル樹脂フィルム
の少なくとも片面において、山頂平均間隔Sが200μ
m 以上であり、かつその変動率σが20%以下となるよ
うにするが、フィルムの両面ともこの条件を満たすよう
にするのが一層好ましい。
【0021】このような山頂平均間隔Sが200μm 以
上、好ましくは300μm 以上、さらに好ましくは40
0μm 以上で、その変動率σが20%以下、好ましくは
10%以下のアクリル樹脂フィルムとするためには、例
えば、後述するように、所定の粒子径を有するゴム粒子
を含有させ、かつそのゴム粒子を含有するアクリル樹脂
組成物を溶融押出しした後に、その押し出されたフィル
ム状物に所定の線圧がかかるように、鏡面ロール又は鏡
面ベルトで挟み込んで製膜するのが好ましい。
【0022】本発明のアクリル樹脂フィルムは、メタク
リル樹脂中にゴム粒子が分散したアクリル樹脂組成物で
構成される。このメタクリル樹脂は、メタクリル酸エス
テルの単独重合体や、それを主成分とする共重合体であ
ることができる。メタクリル酸エステルとしては、通常
メタクリル酸のアルキルエステルが用いられ、そのアル
キル基は、炭素数1〜4程度でよい。共重合体とする場
合は、メタクリル樹脂の共重合成分として有利であるこ
とが知られているアクリル酸エステルや、芳香族ビニル
化合物、ビニルシアン化合物などが用いられる。
【0023】このメタクリル樹脂は、より具体的には、
炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキ
ル50〜100重量%と、アクリル酸エステル0〜50
重量%と、これらに共重合可能な他のビニル単量体の少
なくとも1種0〜49重量%とからなる単量体の重合に
より得られる熱可塑性重合体であるのが好ましい。ここ
で、アクリル酸エステルは、より好ましくは 0.1〜5
0重量%の範囲、さらに好ましくは 0.5〜50重量%
の範囲で用いられ、したがって、メタクリル酸アルキル
のより好ましい共重合割合は 50〜99.9重量%の範
囲、さらに好ましい共重合割合は 50〜99.5重量%
の範囲である。なお、本明細書において単に「単量体」
というときは、ある単量体1種からなる場合のみなら
ず、複数の単量体が混合された状態、いわゆる単量体混
合物も包含するものとする。
【0024】上記の熱可塑性重合体を構成するメタクリ
ル酸アルキルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、
メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどが挙げら
れるが、特にメタクリル酸メチルが好ましく用いられ
る。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸
メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリ
ル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸
ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸
2−ヒドロキシエチルなどが挙げられる。アクリル酸エ
ステルのなかでは、特にアルキルエステルが好適であ
り、そのアルキル基は炭素数1〜8程度でよいが、アル
キル基の炭素数が多いものほど、少量の共重合でガラス
転移温度を下げることができる。また、メタクリル酸ア
ルキル及び/又はアクリル酸エステルに共重合可能な他
のビニル単量体としては、従来からメタクリル樹脂の分
野で知られている各種単量体が使用でき、例えば、主成
分となるメタクリル酸アルキル以外のメタクリル酸エス
テル、具体的には、メタクリル酸シクロヘキシル、メタ
クリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル
酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエ
チルなど、さらには、アクリル酸やメタクリル酸のよう
な不飽和脂肪酸、スチレンやα−メチルスチレンのよう
な芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルやメタクリロ
ニトリルのようなビニルシアン化合物、無水マレイン
酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドな
どが挙げられる。
【0025】メタクリル樹脂としては、前述のとおり、
炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキ
ル50〜100重量%、より好ましくは 50〜99.9
重量%と、アクリル酸エステル0〜50重量%、より好
ましくは 0.1〜50重量%と、これらに共重合可能な
他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49重量%とか
らなる単量体を重合させて得られるものが好適であり、
この範囲に入る重合体を単独で、又は2種以上の重合体
の混合物として用いることができる。このメタクリル樹
脂は、ガラス転移温度が40℃以上であるのが好まし
く、さらには60℃以上のガラス転移温度を有するもの
が一層好ましい。メタクリル樹脂のガラス転移温度が4
0℃未満では、得られるフィルムの耐熱性が低くなるた
め、実用上好ましくない。ガラス転移温度は、メタクリ
ル酸エステルと共重合される他の単量体の種類と量を変
化させることにより、適宜設定できる。なお、メタクリ
ル酸メチルの単独重合体のガラス転移温度は約106℃
であるので、メタクリル酸エステルとしてメタクリル酸
メチルを用いる場合、得られるメタクリル樹脂のガラス
転移温度は、通常106℃以下となる。
【0026】メタクリル樹脂の重合方法は特に限定され
ず、通常の懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の方法で行
うことができる。また、好適なガラス転移温度を得るた
め、又は好適なフィルムへの成形性を示す粘度を得るた
めに、重合時に連鎖移動剤を使用することが好ましい。
連鎖移動剤の量は、単量体の種類及び組成に応じて、適
宜決定すればよい。
【0027】このようなメタクリル樹脂にゴム粒子を分
散させるのであるが、このゴム粒子は、本発明で規定す
る山頂平均間隔S及びその変動率σを満たすフィルムと
するためには、その平均粒子径が0.05μm 以上0.3
μm 以下の範囲にあるのが好まく、0.05μm 以上0.
2μm 以下であるのがさらに好ましい。ゴム粒子の平均
粒子径がこの範囲にあると、フィルムの製膜性が安定す
るとともに、フィルム自体の柔軟性や取扱い性の面でも
優れるものとなる。ゴム粒子の平均粒子径があまり小さ
いと、フィルムに必要な柔軟性が欠如し、取扱い性が低
下する傾向になり、一方、その平均粒子径があまり大き
いと、表面平滑性が低下し、透明感が損なわれ、意匠性
の低下を招く結果になる。
【0028】また、このゴム粒子は、アクリル系のもの
が好ましく、より具体的には、アクリル酸アルキル 5
0〜99.9重量%と、これに共重合可能な他のビニル
単量体の少なくとも1種0〜49.9重量%と、共重合
性の架橋性単量体0.1〜10重量%とからなる単量体
の重合で得られる弾性共重合体の層を有する重合体10
0重量部の存在下に、メタクリル酸エステル50〜10
0重量%と、アクリル酸エステル0〜50重量%と、こ
れらに共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種
0〜49重量%とからなる単量体10〜400重量部を
重合させることにより、後者の単量体からの重合層を前
記弾性共重合体の表面に少なくとも1層結合してなり、
前記弾性共重合体層の平均粒子径が0.05μm 以上0.
3μm 以下のゴム含有重合体が有利に用いられる。この
重合の際、反応条件を調節して、弾性共重合体層の平均
粒子径が0.05μm 以上0.3μm 以下となるようにす
る。
【0029】このゴム粒子は、例えば、弾性共重合体用
の上記成分を乳化重合法等により、少なくとも一段の反
応で重合させて弾性共重合体を得、この弾性共重合体の
存在下、上記したメタクリル酸エステルを含む単量体を
乳化重合法等により、少なくとも一段の反応で重合させ
て製造することができる。このような複数段階の重合に
より、後段で用いるメタクリル酸エステルを含む単量体
は弾性共重合体にグラフト共重合され、グラフト鎖を有
する架橋弾性共重合体が生成する。すなわち、このゴム
粒子は、アクリル酸アルキルをゴムの主成分として含む
多層構造を有するグラフト共重合体となる。なお、弾性
共重合体の重合を二段以上で行う場合、又はその後のメ
タクリル酸エステルを主成分とする単量体の重合を二段
以上で行う場合には、いずれも、各段の単量体組成では
なく、全体としての単量体組成が上記範囲内にあればよ
い。
【0030】上記のゴム粒子において、弾性共重合体を
構成するために用いるアクリル酸アルキルとしては、例
えば、アルキル基の炭素数が1〜8のものが挙げられ
る。なかでも、アクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチ
ルヘキシルのような、アルキル基の炭素数4〜8のもの
が好ましい。
【0031】弾性共重合体を構成するために所望に応じ
て用いられ、アクリル酸アルキルに共重合可能な他のビ
ニル単量体は、1分子内に重合性炭素−炭素二重結合を
1個有する単官能の化合物であり、具体的には、メタク
リル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シク
ロヘキシルのようなメタクリル酸エステル、スチレンの
ような芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルのような
ビニルシアン化合物などが、好適なものとして挙げられ
る。
【0032】弾性共重合体を構成するために用いる共重
合性の架橋性単量体は、1分子内に重合性炭素−炭素二
重結合を少なくとも2個有するものであればよく、例え
ば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオ
ールジメタクリレートのようなグリコール類の不飽和カ
ルボン酸ジエステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸
アリル、ケイ皮酸アリルのような不飽和カルボン酸のア
ルケニルエステル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジア
リル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌ
レートのような多塩基酸のポリアルケニルエステル、ト
リメチロールプロパントリアクリレートのような多価ア
ルコールの不飽和カルボン酸エステル、ジビニルベンゼ
ンなどを挙げることができる。なかでも、不飽和カルボ
ン酸のアルケニルエステルや多塩基酸のポリアルケニル
エステルが好ましい。これらの架橋性単量体は、それぞ
れ単独で、又は必要により2種以上組み合わせて使用す
ることができる。
【0033】以上のような、アクリル酸アルキルを主体
とする単量体の重合により得られる弾性共重合体には、
メタクリル酸エステル50〜100重量%と、アクリル
酸エステル0〜50重量%と、これらに共重合可能な他
のビニル単量体の少なくとも1種0〜49重量%とから
なる単量体をグラフトさせる。弾性共重合体にグラフト
させる単量体の主成分であるメタクリル酸エステルとし
ては、メタクリル酸のアルキルエステルが好ましく、例
えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタ
クリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メ
タクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。任意に用
いられるアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリ
ル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、ア
クリル酸シクロヘキシルのような、アクリル酸のアルキ
ルエステルが挙げられ、またメタクリル酸エステル及び
/又はアクリル酸エステルに共重合可能で、任意に用い
られる他のビニル単量体としては、例えば、スチレンの
ような芳香族ビニル化合物や、アクリロニトリルのよう
なビニルシアン化合物などが挙げられる。
【0034】グラフトさせる単量体は、前記弾性共重合
体の層が表面となった重合体100重量部に対して、好
ましくは10〜400重量部、より好ましくは20重量
部以上、またより好ましくは200重量部以下の割合で
使用し、一段以上の反応で重合することができる。ここ
で、グラフトさせる単量体の使用量を10重量部以上と
することにより、弾性共重合体の凝集が生じにくくな
り、フィルムとした際の透明性が良好となる。また、グ
ラフトさせる単量体の量があまり多くなると、ゴム粒子
を分散させた樹脂全体の流動性の低下が起こり、フィル
ム成膜が困難となり好ましくないことから、前記弾性共
重合体の層が表面となった重合体100重量部あたり、
好ましくは400重量部以下、より好ましくは200重
量部以下とする。
【0035】前記弾性共重合体層の内側に、メタクリル
酸エステルを主体とする硬質重合体層を設けて、少なく
とも3層からなる多層構造のゴム粒子とすることもでき
る。この場合には、最内層を構成する硬質層の単量体を
最初に重合させ、得られる硬質重合体の存在下で、上記
の弾性共重合体を構成する単量体を重合させ、さらに得
られる弾性共重合体の存在下で、上記のメタクリル酸エ
ステルを主体とし、グラフトされる単量体を重合させれ
ばよい。このような最内層を硬質重合体層とする少なく
とも3層構造のゴム粒子は、フィルムとしたときの弾性
率や表面硬度などの点で、より好ましいものである。
【0036】ここで、最内層となる硬質重合体層は、メ
タクリル酸エステル70〜100重量%と、それに共重
合可能な他のビニル単量体0〜30重量%とからなる単
量体を重合させたものが好ましい。メタクリル酸エステ
ルとしては、メタクリル酸のアルキルエステル、特にメ
タクリル酸メチルが有利である。任意に用いられる他の
ビニル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、ア
クリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロ
ヘキシルのようなアクリル酸エステル、スチレンのよう
な芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルのようなビニ
ルシアン化合物などが挙げられる。また他のビニル単量
体の一つとして、共重合性の架橋性単量体を用いるのも
有効である。架橋性単量体としては、先に弾性共重合体
を構成する成分として例示したのと同様の、1分子内に
重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する化合
物を用いることができる。
【0037】硬質重合体を最内層とし、弾性共重合体を
中間層とし、そして硬質のグラフト重合体を最外層とす
る3層構造のゴム粒子は、例えば、特公昭 55-27576 号
公報(= USP 3,793,402)に開示されている。特に、同
公報の実施例3に記載のものは、好ましい組成の一つで
ある。このような少なくとも3層からなる多層構造のゴ
ム粒子とする場合、最外層としてグラフトさせるメタク
リル酸エステル主体の単量体の量10〜400重量部
は、最内層となる硬質重合体及び中間層となる弾性共重
合体の合計100重量部を基準とすればよい。
【0038】ゴム粒子の平均粒子径は、重合開始剤の種
類や量、また重合時間などを調節することによって、
0.05μm 以上0.3μm 以下の範囲内で適当な値に設
定すればよい。なお、ゴム粒子の平均粒子径は、そのゴ
ム粒子をメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、その
断面において、酸化ルテニウムによるゴム成分の染色を
施し、電子顕微鏡で観察して、染色された粒子外層部の
直径から求めることができる。すなわち、アクリル酸ア
ルキルを主成分とする弾性共重合体層を含むゴム粒子を
メタクリル樹脂に混合し、その断面を酸化ルテニウムで
染色すると、母相のメタクリル樹脂は染色されず、ゴム
粒子の最外層にメタクリル酸エステル主体の硬質層があ
る場合はその硬質層も母体樹脂と混和して染色されず、
アクリル酸アルキルを主成分とする弾性共重合体層のみ
が染色されるので、こうして染色され、電子顕微鏡でほ
ぼ円形状に観察される部分の直径から粒子径を求めるこ
とができる。弾性共重合体層の内側に硬質重合体層が存
在する場合は、最内層の硬質重合体も染色されず、その
外側の弾性重合体層が染色された2層構造の状態で観察
されることになるが、この場合のゴム粒子の平均粒子径
は、2層構造の外側、すなわち弾性重合体層の外径で考
えればよい。
【0039】メタクリル樹脂中にゴム粒子を分散させて
アクリル樹脂フィルムとするのであるが、両者の割合
は、メタクリル樹脂を50〜95重量部、そしてゴム粒
子を5〜50重量部の範囲で用いるのが好ましい。ゴム
粒子の量が少なすぎると、フィルム化するのが困難にな
り、またその量が多すぎると、適当な表面硬度が得られ
にくくなる。
【0040】このゴム粒子は、その中に占める前記した
アクリル酸エステル主体の弾性共重合体が、全ての成
分、すなわち、メタクリル樹脂及びゴム粒子の合計10
0重量部を基準に、5〜35重量部となるようにするの
が好ましい。さらには、この弾性共重合体は、メタクリ
ル樹脂及びゴム粒子の合計100重量部を基準に10重
量部以上、また25重量部以下となるようにするのがよ
り好ましい。メタクリル樹脂とゴム粒子の合計100重
量部あたり弾性共重合体の量が5重量部以上となるよう
にすれば、フィルムが脆くなることなく、製膜性を向上
させることができる。一方、弾性共重合体の量があまり
多くなると、フィルムの透明性や表面硬度が失われる傾
向となる。
【0041】メタクリル樹脂中にゴム粒子が分散したア
クリル樹脂フィルムは、通常の添加剤、例えば、紫外線
吸収剤、有機系染料、顔料、無機系色素、酸化防止剤、
帯電防止剤、界面活性剤などを含有してもよい。なかで
も紫外線吸収剤は、耐候性に優れた積層成形品を与える
ことから、好ましく用いられる。紫外線吸収剤として
は、例えば、一般に用いられるベンゾトリアゾール系紫
外線吸収剤、2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸
収剤、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤など
が挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤とし
て、具体的には、2,2′−メチレンビス〔4−(1,
1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベン
ゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(5−
メチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリ
アゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,
α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリ
アゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒド
ロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−
(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェ
ニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−
(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニ
ル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−
(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニ
ル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロ
キシ−5′−tert−オクチルフェニル)−2H−ベンゾ
トリアゾールなどが例示される。2−ヒドロキシベンゾ
フェノン系紫外線吸収剤として、具体的には、2−ヒド
ロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ
−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒド
ロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ
−4′−クロロベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキ
シ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロ
キシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノンなどが例示
される。またサリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収
剤として、具体的には、p−tert−ブチルフェニルサリ
チル酸エステル、p−オクチルフェニルサリチル酸エス
テルなどが例示される。
【0042】これらの紫外線吸収剤は、それぞれ単独
で、又は2種以上混合して用いることができる。紫外線
吸収剤を配合する場合、その量は、メタクリル樹脂及び
ゴム粒子の合計100重量部を基準に、通常0.1重量
部以上であり、好ましくは0.3重量部以上、また好ま
しくは2重量部以下である。
【0043】以上説明したメタクリル樹脂及びゴム粒子
を混合し、必要に応じてその他の添加剤を配合した樹脂
組成物をフィルム化することにより、アクリル樹脂フィ
ルムが製造される。フィルム化の方法としては、溶融流
延法、Tダイ法やインフレーション法のような溶融押出
法、カレンダー法などが挙げられる。なかでも、上記混
合物を、例えばTダイから溶融押出しし、得られるフィ
ルム状物の少なくとも片面をロール又はベルトに接触さ
せて製膜する方法は、表面性状の良好なフィルムが得ら
れる点で好ましい。とりわけ、フィルムの表面平滑性及
び表面光沢性を向上させる観点からは、上記混合物を溶
融押出しして得られるフィルム状物の両面をロール表面
又はベルト表面に接触させてフィルム化するロール冷却
押出成形法又はベルト冷却押出成形法が好ましい。この
際に用いるロール又はベルトは、いずれも金属製である
のが好ましい。またロール又はベルトは、その表面が鏡
面となっているものが好ましい。
【0044】このようにフィルムの両面から鏡面で押し
付ける場合、その圧力が高いほど、表面平滑なフィルム
が得られる。例えば、両面を二本の金属ロールで挟み込
む押出成形法において、好ましい金属ロールの挟み込み
圧力は、フィルムにかかる線圧として、300N/cm以
上となるようにするのが好ましく、さらには500N/
cm以上となるようにするのが一層好ましい。線圧がこれ
より低い場合は、ロール鏡面の転写性が劣り、十分な表
面平滑性が得られず、延いては、本発明で規定する山頂
平均間隔Sが大きく、その変動率σの小さいフィルムが
得られにくくなる。そこで好ましい形態として、上記メ
タクリル樹脂及びゴム粒子を含有するアクリル樹脂組成
物をTダイから溶融押出しした後、2本の鏡面ロールに
接触させて挟み込んだ状態で、製膜する方法、特に上記
の線圧をかけて製膜する方法が挙げられる。
【0045】本発明のフィルムは一般に、絵柄等が片面
に印刷されるか、着色した状態、又は絵柄を有する熱可
塑性樹脂フィルムの絵柄上に積層した状態で、射出成形
同時貼合に用いられることが多い。また、予めフィルム
に真空成形等の熱成形によって形状を付与したものを、
射出成形同時貼合に用いることもある。このアクリル樹
脂フィルムの片面に絵柄などの印刷を施す場合、印刷法
としては、シルク印刷法、スクリーン印刷法、シルクス
クリーン印刷法、グラビア印刷法などの一般的な印刷法
が挙げられるが、特に限定されるものではない。さらに
本発明のフィルムを多層フィルムの最外層として用いて
もよい。つまり本発明のフィルムに、塩化ビニルフィル
ム、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン
共重合)樹脂フィルム等の他の樹脂フィルムを裏打ちし
て多層フィルムとすることも可能である。
【0046】本発明のフィルムは、その厚みが50〜6
00μm 、さらには100〜600μm の範囲にあるこ
とが望ましい。このフィルムは通常、片面に絵柄等を印
刷して意匠層とした状態、片面に着色層を設けて意匠層
とした状態、又は、絵柄を有する熱可塑性樹脂フィルム
の絵柄上に積層して意匠層を設けた状態で、意匠層が設
けられた面を射出成形金型の後で溶融射出される樹脂側
に向けて配置される。これは、最終成形品となった状態
で、透明なアクリル樹脂フィルム層(クリアー層)によ
る意匠層の深みを出すことを目的としているためであ
る。つまり、透明なアクリル樹脂フィルム層の下に意匠
層を存在させることにより、深み感のある外観が得られ
る。アクリル樹脂フィルム層の厚みがあまり小さいと、
意匠層の深みが乏しくなるため好ましくない。また、工
業的に射出成形同時貼合を金型内で実施しようとすれ
ば、連続的にフィルムを金型内に供給する方式が望まし
いが、アクリル樹脂フィルムの厚みが600μm を越え
ると、連続的なロール状で巻けなくなるため、好ましく
ない。
【0047】工業的に望ましい生産方式として、射出成
形金型に連続的にフィルムを供給する場合には、アクリ
ル樹脂フィルムの巻き重量の低減及び真空成形時の賦型
性の観点から、このフィルムの厚みは100〜200μ
m の範囲とするのが一層好ましい。一方、アクリル樹脂
フィルムの厚みが200μm を超える場合には、枚葉で
金型内に供給するのが有利である。
【0048】本発明のアクリル樹脂フィルムを用いた射
出成形同時貼合法について説明すると、上記のアクリル
樹脂フィルムを射出成形の雌雄金型間に挿入し、その金
型の一方の側から溶融樹脂を射出して、射出成形体を形
成すると同時にその成形体に上記フィルムを貼合する方
法、このフィルムを予備成形してから射出成形金型内に
挿入し、金型の一方の側から溶融樹脂を射出してフィル
ムと一体化する方法、このフィルムを射出成形金型内で
予備成形した後、その金型の一方の側から溶融樹脂を射
出してフィルムと一体化する方法などが採用できる。
【0049】最初に掲げた、未成形のフィルムそれ自体
を射出成形の雌雄金型間に挿入し、その一方の面側に溶
融樹脂を射出する方法を、狭義の意味で射出成形同時貼
合法と呼ぶこともあるが、本明細書では、その他の方法
も含めて、フィルムそれ自体又はその予備成形物が配置
された射出成形金型に、一方の側から溶融樹脂を射出し
て樹脂とフィルムを一体貼合する方法を、広く射出成形
同時貼合法と呼ぶことにする。
【0050】二番目に掲げた、フィルムを予備成形して
から射出成形金型内に挿入し、金型の一方の側から溶融
樹脂を射出する方法は、インサート成形法とも呼ばれ
る。この場合は、予め熱成形によってフィルムに形状を
付与したものを、射出成形同時貼合に用いることにな
る。すなわち、まずアクリル樹脂フィルムを予備成形
し、予備成形されたフィルムを射出成形金型に挿入した
後、本体となる熱可塑性樹脂が射出される。予備成形の
ための熱成形としては、真空成形、圧空成形、真空圧空
成形などが採用される。真空成形によって予備成形する
場合についてさらに具体的に説明すると、射出成形用金
型の形状に適合するようにアクリル樹脂フィルムを真空
成形機にて成形した後、その真空成形された三次元形状
のフィルムを射出成形用金型キャビティの内面に密着さ
せ、金型の型締めを行った後に、熱可塑性樹脂を射出
し、アクリル系樹脂フィルムと熱可塑性樹脂とを貼合さ
せることになる。
【0051】三番目に掲げた、フィルムを射出成形金型
内で予備成形した後、その金型の一方の側から溶融樹脂
を射出する方法は、インモールド成形法とも呼ばれる。
この場合は、例えば、インモールド成形可能な金型を取
り付けた射出成形機を用い、フィルムの送り出し装置、
そのフィルムの加熱装置及び吸引装置(例えば真空ポン
プ)を備えた射出成形用金型のキャビティ内面に、フィ
ルムをその透明層がキャビティ内面と接するように密着
させた後に、熱可塑性樹脂を射出成形することになる。
【0052】このような、インサート成形法やインモー
ルド成形法などを包含する射出成形同時貼合法は、例え
ば、特公昭 63-6339号公報、特公平 4-9647 号公報、特
開平7-9484 号公報などに記載の方法に準じて行うこと
ができる。射出成形の際の樹脂温度や射出圧力等の条件
は、用いる樹脂の種類等を勘案して適宜設定される。こ
の際、アクリル樹脂フィルムの片面に印刷層や着色層か
らなる意匠層を有する場合は、その意匠層が射出成形さ
れる樹脂側となるように、換言すればアクリル樹脂フィ
ルムが最表面となるように配置される。
【0053】本発明のアクリル樹脂フィルムを射出成形
同時貼合に適用するにあたり、金型内に溶融射出される
樹脂としては、例えば、ABS(アクリロニトリル−ブ
タジエン−スチレン共重合)樹脂、ポリカーボネート樹
脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂などが使用
可能であるが、でき上がる最終製品の耐衝撃性、寸法安
定性などの観点からは、ABS樹脂又はポリカーボネー
ト樹脂を選択することが望ましい。
【0054】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらの実施例によって限定される
ものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び
部は、特記ないかぎり重量基準である。
【0055】実施例1 メタクリル樹脂として、メタクリル酸メチル97.8%
及びアクリル酸メチル2.2% のモノマー組成からバル
ク重合法により得られた樹脂のペレット(ガラス転移温
度103℃)を用いた。またゴム粒子としては、特公昭
55-27576 号公報(= USP 3,793,402)の実施例3に準
じて製造され、最内層がメタクリル酸メチルに少量のメ
タクリル酸アリルを用いて重合された架橋重合体、中間
層がアクリル酸ブチルを主成分としてさらにスチレン及
び少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された軟質の
弾性共重合体、最外層がメタクリル酸メチルに少量のア
クリル酸エチルを用いて重合された硬質重合体からなる
球形3層構造であり、弾性共重合体層の平均粒子径が
0.20μmのものを用いた。
【0056】上に示したメタクリル樹脂ペレット70部
とゴム粒子30部とをスーパーミキサーで混合し、二軸
押出機で溶融混錬して、ペレットとした。次いでこのペ
レットを、東芝機械(株)製の65mmφ一軸押出機を用
い、設定温度275℃のT型ダイを介して押し出し、8
0℃に温度設定された鏡面を有する二本のポリシングロ
ールで押し付け圧力980N/cmにてフィルムの両面か
ら挟み込んで冷却し、厚さ120μm のアクリル樹脂フ
ィルムを得た。このときのフィルム製膜の状態を図2
(A)に模式的な断面図で示す。すなわち、T型ダイ1
からフィルム状に押し出された溶融樹脂は、キャストロ
ール3とタッチロール4で挟み込まれた状態で冷却され
てフィルム2となり、さらに冷却ロール5を経た後、図
示しない引取りロールで巻き取られる。得られたフィル
ムの表面粗さを以下に示す方法で測定し、両面それぞれ
の測定結果を表1に示した。また、このフィルムの片面
に印刷を施した後、反対面より印刷の意匠性を以下に示
す基準で評価し、結果を併せて表1に示した。
【0057】〔フィルムの表面粗さの測定〕(株)東京
精密製の表面粗さ計“サーフコム 570A ”を用いて、カ
ットオフを0.8mmとし、測定触針を半径3μmのものと
して、前記式(II)で定義される山頂平均間隔Sを測定
する。この際、測定長さLは1mmとする。ここまでは、
上記表面粗さ計により自動的に測定、計算される。そし
て、フィルムの片面について任意に選んだ10箇所を測
定し、その最小値をその面の山頂平均間隔Sとする。さ
らに、これら10個のデータから、全ての2個ずつのデ
ータについて、前記式(I)に基づいて山頂平均間隔S
の変動率σを求め、その最大値をその面の山頂平均間隔
Sの変動率σとする。以上の測定をフィルムの両面につ
いて行う。
【0058】〔印刷フィルムの意匠性評価〕フィルムに
施した印刷の視認性を評価し、像の歪みがなく、印刷が
波打って見えない、つまり、高い意匠性が発現されたも
のは○、像の歪みがあり、印刷が波打って見えるものは
×とする。
【0059】比較例1 T型ダイを介して押し出した樹脂を、80℃に温度設定
された鏡面を有する一本のポリシングロールに添わせる
ことで冷却する方法によりアクリル樹脂フィルムを作製
したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、アクリ
ル樹脂フィルムを得た。このときのフィルム成膜の状態
を図2(B)に模式的な断面図で示す。すなわち、T型
ダイ1からフィルム状に押し出された溶融樹脂は、片面
がキャストロール3に接触し、他面は空気層に開放され
た状態で冷却されてフィルム2となり、さらに冷却ロー
ル5を経た後、図示しない引取りロールで巻き取られ
る。得られたフィルムの表面粗さを実施例1と同様の方
法で測定し、両面それぞれの測定結果を表1に示した。
またこのフィルムに、実施例1と同様にして印刷を施
し、意匠性を評価した。結果を併せて表1に示した。
【0060】
【表1】 a 片面:図2でキャストロール3に接触した面。b 他面:実施例1は、図2(A)でタッチロール4に接
触した面、比較例1は、図2(B)で空気層に開放して
冷却した面。
【0061】
【発明の効果】本発明のアクリル樹脂フィルムは、優れ
た表面平滑性を有し、それに伴って良好なクリア感を発
現する表面加飾フィルムとなる。また、このフィルムに
印刷を施した場合、印刷の像の歪みがなく、優れた意匠
性を発現することができる。そしてこのアクリル樹脂フ
ィルムは、樹脂成形品、特に射出成形品を製造する際、
その表面に一体貼合する方法に適用することにより、意
匠性の高い成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】表面粗さ曲線の例を模式的に示す図である。
【図2】(A)は実施例1における、そして(B)は比
較例1における、それぞれフィルム成膜の状態を模式的
に示す断面図である。
【符号の説明】
X……フィルム面に平行な座標軸、 Z……フィルムの厚み方向の座標軸、 L……測定長さ、 S1〜Sn……山頂間隔、 1……T型ダイ、 2……フィルム、 3……キャストロール、 4……タッチロール、 5……冷却ロール。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F100 AK01A AK25B BA02 BA07 BA15 HB00 HB00A JB16A JK15 JK15B 4F207 AA21 AG01 AG03 KA01 KA17 KK64

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フィルム表面の山頂平均間隔Sが200μ
    m 以上であり、かつフィルム表面から任意に選択された
    m箇所におけるそれぞれの山頂平均間隔SをSS1、S
    2、……SSk、……SSmとしたときに、式 (ただし、p及びqは1からmまでの数であるが、p≠
    qである)で定義される山頂平均間隔Sの変動率σが2
    0%以下であることを特徴とするアクリル樹脂フィル
    ム。
  2. 【請求項2】アクリル樹脂をTダイから溶融押出しした
    後、2本の鏡面ロールに接触させ、線圧300N/cm以
    上の押し付け圧力で挟み込んだ状態で製膜してなる請求
    項1記載のアクリル樹脂フィルム。
  3. 【請求項3】表面に印刷が施されている請求項1又は2
    記載のアクリル樹脂フィルム。
  4. 【請求項4】絵柄を有する熱可塑性樹脂フィルムの絵柄
    上に、請求項1又は2記載のアクリル樹脂フィルムが積
    層されていることを特徴とする積層フィルム。
  5. 【請求項5】請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル
    樹脂フィルムが最表層に配置されてなることを特徴とす
    るアクリル樹脂フィルム積層成形品。
  6. 【請求項6】請求項4記載の積層フィルムが、そのアク
    リル樹脂フィルムを最表層として配置されてなることを
    特徴とするアクリル樹脂フィルム積層成形品。
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