JP4754764B2 - アクリル系樹脂フィルム及びそれを積層した射出成形品 - Google Patents

アクリル系樹脂フィルム及びそれを積層した射出成形品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル系樹脂フィルム、その片面に他の熱可塑性樹脂層を設けた積層フィルム、及びそれらのフィルムを用いたアクリル系樹脂フィルム積層射出成形品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車の内装、家庭電器製品の外装などには、射出成形による成形体が広く用いられている。かかる成形体を装飾するために、例えば、射出成形同時貼合と呼ばれる手法が採用されている。射出成形同時貼合法には、必要に応じて装飾が施された樹脂フィルムを射出成形の雌雄金型間に挿入し、その金型の一方の側から溶融樹脂を射出して、射出成形体を形成すると同時にその成形体に上記の樹脂フィルムを一体貼合する方法、必要に応じて装飾が施された樹脂フィルムを、真空成形等により予備賦形してから射出成形金型内に挿入し、そこに溶融樹脂を射出して、射出された樹脂をフィルムと一体化する方法(インサート成形法とも呼ばれる)、必要に応じて装飾が施された樹脂フィルムを、射出成形金型内で予備賦形した後、そこに溶融樹脂を射出して、射出された樹脂をフィルムと一体化する方法(インモールド成形法とも呼ばれる)などがある。このような射出成形同時貼合法は、例えば、特公昭 63-6339号公報、特公平 4-9647 号公報、特開平 7-9484 号公報などに記載されている。
【0003】
こうした射出成形同時貼合法には、耐候性に優れるとともに、表面光沢、表面硬度及び表面平滑性も良好であることから、アクリル系樹脂フィルムが好ましく採用されている。例えば、特開平 8-323934 号公報や特開平 10-279766号公報には、ゴム粒子が配合され、射出成形同時貼合に用いられるアクリル系樹脂フィルムが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、この射出成形同時貼合法においては、表層となるべき樹脂フィルムを予備賦形した後、あるいは溶融樹脂を射出成形した後に、通常、予備賦形品又は射出成形品の周辺に残る、一般に耳部フィルムと呼ばれる表層樹脂フィルムを打ち抜き等の加工により除去する工程が入る。そして、従来のアクリル系樹脂フィルムを用いた場合、このような作業によりフィルムに応力がかかって白化する現象が発生し、薄く白濁して意匠性が損なわれることから、その改善が望まれていた。さらに、これらの成形方法以外でも、マーキングフィルム用途における常温での垂直曲げ貼合加工や引張り貼合加工時などにおいて、一般にアクリルフィルムが白化を起こすことが指摘されており、その改善が望まれていた。
【0005】
一方、製膜されたフィルムは一般に、その端部、いわゆる耳を切り落とすことが行われるが、この際、製膜ラインでカッター刃を当てて耳を切り落とすことができれば、生産性の向上につながる。このように製膜ラインでカッター刃を当ててフィルムの進行方向と平行に切断する作業は、一般にスリットと呼ばれる。また、広幅で押し出されるフィルムを何分割かして横幅の狭いフィルムとして巻き取ることもあり、この場合にもスリットが行われる。ところが、アクリルフィルムは一般に、スリット性が良好とはいえず、製膜ラインでカッター刃を当てると破断してしまうこともあった。製膜ラインでのスリットができない場合は、製膜されたフィルムを一旦コイル状に巻き取った後、それを巻き戻しながら耳を切り落とすことになり、生産性が大きく低下する。メタクリル樹脂に対し、平均粒子径が0.2〜0.4μm 程度である比較的大粒径のゴム粒子を30重量%程度配合して耐衝撃性を高めれば、製膜ラインでのスリットが可能となるが、このような組成では、フィルムに応力がかかった場合に白化してしまい、前述した問題点の解決につながらない。
【0006】
そこで本発明者らは、打ち抜き加工や常温垂直曲げ、常温引張り加工などの際に、応力が集中してもフィルムの白化が少なく、高い意匠性を維持するアクリル系樹脂フィルムを開発すべく、鋭意研究を行った結果、平均粒子径の異なる2種類のゴム粒子を特定割合でメタクリル樹脂中に分散させたフィルムは、応力の集中に際してもフィルムが白濁することが少なく、高い意匠性を維持できること、また当該フィルムを用いた積層フィルムも種々の成形に適すること、さらには当該フィルムを表面に有する射出成形品は、深み感等の意匠性に優れることを見出し、そしてかかる特定組成とすれば、フィルム製膜時のスリット加工においてもフィルム破断を起こしにくく、容易に耳落としなどのスリット加工を施して製膜できることを併せて見出し、本発明に至った。
【0007】
したがって、本発明の目的の一つは、応力が集中してもフィルムの白化が少なく、高い意匠性が維持できるアクリル系樹脂フィルムを提供することにある。本発明のもう一つの目的は、製膜ラインでのスリット加工が可能で、しかも上記したような応力が集中した場合でもフィルムの白化が少ないアクリル系樹脂フィルムを提供することにある。本発明のさらにもう一つの目的は、かかるアクリル系樹脂フィルムを一つの層とし、射出成形同時貼合に好適に用いられる積層フィルムを提供することにある。さらに本発明のもう一つ別の目的は、かかるアクリル系樹脂フィルム又は積層フィルムを用いて、深み感等の意匠性に優れるアクリル系樹脂フィルム積層射出成形品を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明によれば、メタクリル樹脂10〜49.9重量部 、平均粒子径が0.2〜0.4μmである第一のゴム粒子0.1〜20重量部、及び平均粒子径が0.18μm 以下である第二のゴム粒子50〜89.9重量部を含有する樹脂組成物からなり、厚さが500μm 以下であるアクリル系樹脂フィルムが提供される。このフィルムは着色されていてもよい。
【0009】
そしてこれらのアクリル系樹脂フィルムは、その片面に他の熱可塑性樹脂層を少なくとも1層設けて、積層フィルムとすることができる。そこで本発明によれば、上記のアクリル系樹脂フィルムの片面に、他の熱可塑性樹脂層が少なくとも1層設けられてなる積層フィルムも提供される。
【0010】
これらのアクリル系樹脂フィルム又は積層フィルムは、射出成形品の表層を構成するフィルムとして有用である。そこで本発明によれば、上記のアクリル系樹脂フィルム又は積層フィルムからなる射出成形同時貼合用フィルムも提供され、さらには、当該射出成形同時貼合用フィルムが表層に一体化されたアクリル系樹脂フィルム積層射出成形品も提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明では、フィルムを構成する樹脂組成物中のメタクリル樹脂の量を49.9重量% 以下とし、そこに2種類のゴム粒子を配合する。メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルの単独重合体や、メタクリル酸エステルを主成分とする共重合体であることができる。メタクリル酸エステルとしては、通常メタクリル酸のアルキルエステルが用いられ、そのアルキル基は、炭素数1〜4程度でよい。共重合体とする場合は、メタクリル樹脂の共重合成分として有利であることが知られているアクリル酸エステルや、芳香族ビニル化合物、ビニルシアン化合物などが用いられる。
【0012】
メタクリル樹脂は、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキル50〜100重量%と、アクリル酸エステル0〜50重量%と、これらと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49重量%とからなる単量体の重合によって得られ、ガラス転移温度が40℃以上の熱可塑性重合体である。ここで、アクリル酸エステルは、より好ましくは 0.1〜50重量%、さらに好ましくは1〜50重量%の範囲で用いられ、そこで、メタクリル酸アルキルのより好ましい共重合割合は50〜99.9重量% の範囲、さらに好ましい共重合割合は50〜99重量%の範囲である。また、このメタクリル樹脂のガラス転移温度は、より好ましくは60℃以上である。なお、本明細書において、単に「単量体」というときは、ある単量体1種からなる場合のみならず、複数の単量体が混合された状態も包含するものとする。
【0013】
この熱可塑性重合体の製造に用いられるメタクリル酸アルキルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルなどが挙げられるが、特にメタクリル酸メチルが好ましい。アクリル酸エステルとしては、通常アルキルエステルが用いられ、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどが挙げられる。また、メタクリル酸アルキル及び/又はアクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体としては、従来からこの分野で知られている各種単量体が使用でき、例えば、芳香族ビニル化合物やビニルシアン化合物などが挙げられる。
【0014】
メタクリル樹脂は前述のとおり、好ましくは、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキル50〜100重量%、より好ましくは 50〜99.9重量%と、アクリル酸エステル0〜50重量%、より好ましくは 0.1〜50重量%と、これらと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49重量%とからなる単量体を重合させて得られる熱可塑性重合体であり、この範囲に入る重合体を単独で、又は2種以上の重合体の混合物として用いることができる。この熱可塑性重合体は、ガラス転移温度が40℃以上であればよく、好ましくは60℃以上のガラス転移温度を有するものである。熱可塑性重合体のガラス転移温度が40℃未満では、得られるフィルムの耐熱性が低くなるため、実用上好ましくない。ガラス転移温度は、メタクリル酸アルキルと共重合される他の単量体の種類と量を変化させることにより、適宜設定できる。
【0015】
上記熱可塑性重合体の重合方法は特に限定されないが、通常の懸濁重合、乳化重合、塊状重合等の方法で行うことができる。また、好適なガラス転移温度を得るため、又は好適なフィルムへの成形性を示す粘度を得るために、重合時に連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤の量は、単量体の種類及び組成により、適宜決定すればよい。
【0016】
このようなメタクリル樹脂に、2種類のゴム粒子が配合される。これらのうち第一のゴム粒子は、平均粒子径が0.2〜0.4μm のものであり、第二のゴム粒子は、平均粒子径が0.18μm以下のものである。第一のゴム粒子の平均粒子径が0.4μmよりも大きいと、得られるフィルムの透明性が悪化し、また0.2μm未満であると、本発明における2種類のゴム粒子の使用量では、得られるフィルムの耐衝撃性が小さく、引き裂き強度が低下するため、製膜時のスリット加工においてフィルムの破断を起こしやすく、製膜性に問題を生じる傾向となる。第一のゴム粒子は、好ましくは0.2〜0.3μm の平均粒子径を有するものである。一方、第二のゴム粒子の平均粒子径が0.18μmよりも大きいと、得られるフィルムに応力が集中する加工を施す際に白濁が起こりやすくなり、意匠性が低下する。第二のゴム粒子は、好ましくは0.05〜0.18μm の平均粒子径を有するものである。
【0017】
これら第一のゴム粒子及び第二のゴム粒子は、それぞれ、好ましくは、アクリル酸アルキル 50〜99.9重量%と、これと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49.9重量%と、共重合性の架橋性単量体0.1〜10重量%とからなる単量体を重合して得られる層を有する弾性共重合体100重量部の存在下に、メタクリル酸エステル50〜100重量%と、アクリル酸エステル0〜50重量%と、これらと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49重量%とからなる単量体10〜400重量部を重合させることにより、後者の単量体からの重合層を前記弾性共重合体の表面に少なくとも1層結合してなるゴム含有重合体であり、この際、重合条件の変更により、平均粒子径の異なるものを製造することができる。
【0018】
このゴム含有重合体は、例えば、弾性共重合体用の上記成分を乳化重合法等により、少なくとも一段の反応で重合させて弾性共重合体を得、この弾性共重合体の存在下、上記したメタクリル酸エステルを含む単量体を乳化重合法等により、少なくとも一段の反応で重合させて製造することができる。このような複数段階の重合により、後段で用いるメタクリル酸エステルを含む単量体は弾性共重合体にグラフト共重合され、グラフト鎖を有する架橋弾性共重合体が生成する。すなわち、このゴム含有重合体は、アクリル酸アルキルをゴムの主成分として含む多層構造を有するグラフト共重合体となる。なお、弾性共重合体の重合を二段以上で行う場合、又はその後のメタクリル酸エステルを主成分とする単量体の重合を二段以上で行う場合には、いずれも、各段の単量体組成ではなく、全体としての単量体組成が上記範囲内にあればよい。
【0019】
上記のゴム含有重合体において、弾性共重合体を構成するために用いるアクリル酸アルキルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜8のものが挙げられる。なかでも、アクリル酸ブチルやアクリル酸2−エチルヘキシルのような、アルキル基の炭素数が4〜8のものが好ましい。
【0020】
ゴム含有重合体において、弾性共重合体を構成するために所望に応じて用いられ、アクリル酸アルキルと共重合可能な他のビニル単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシルのようなメタクリル酸アルキル、スチレン、アクリロニトリルなどが好ましい。
【0021】
ゴム含有重合体において、弾性共重合体を構成するために用いる共重合性の架橋性単量体は、1分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有するものであればよく、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレートのようなグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルのような不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートのような多塩基酸のポリアルケニルエステル、トリメチロールプロパントリアクリレートのような多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル、ジビニルベンゼンなどを挙げることができる。なかでも、不飽和カルボン酸のアルケニルエステルや多塩基酸のポリアルケニルエステルが好ましい。これらの架橋性単量体は、それぞれ単独で、又は必要により2種以上組み合わせて使用することができる。
【0022】
以上のような、アクリル酸アルキルを主体とする単量体の重合により得られる弾性共重合体には、メタクリル酸エステル50〜100重量%と、アクリル酸エステル0〜50重量%と、これらと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49重量%とからなる単量体をグラフトさせる。弾性共重合体にグラフトさせるメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸のアルキルエステルが好ましく、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシルなどが挙げられる。アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシルのようなアクリル酸アルキルが挙げられ、またメタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルに共重合可能な他のビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、アクリロニトリルなどが挙げられる。
【0023】
グラフトさせる単量体は、弾性共重合体100重量部に対し、好ましくは10〜400重量部、より好ましくは20〜200重量部使用し、少なくとも一段以上の反応で重合することができる。ここでグラフトさせる単量体の使用量を10重量部以上にすると、弾性共重合体の凝集が生じにくく、透明性が良好となる。
【0024】
また、上記の弾性共重合体層のさらに内側には、メタクリル酸エステルを主体とする硬質重合体層を設けることができる。この場合には、最内層を構成する硬質層の単量体をまず重合させ、得られる硬質重合体の存在下で、上記の弾性共重合体を構成する単量体を重合させ、さらに得られる弾性共重合体の存在下で、上記のメタクリル酸エステルを主体とし、グラフトさせる単量体を重合させればよい。ここで、最内層となる硬質層は、メタクリル酸エステル70〜100重量%と、それと共重合可能な他のビニル単量体0〜30重量%とからなる単量体を重合させたものが好ましい。この際、他のビニル単量体の一つとして、共重合性の架橋性単量体を用いるのも有効である。メタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキル、特にメタクリル酸メチルが有効である。このような3層構造のゴム含有重合体は、例えば、特公昭 55-27576 号公報(= USP 3,793,402)に開示されている。特に、同公報の実施例3に記載のものは、好ましい組成の一つである。
【0025】
本発明においては、このようにして製造され、平均粒子径の異なる2種類のゴム粒子(ゴム含有重合体)を用いる。それぞれについて、上記した2層構造、3層構造のいずれも用い得るが、特に、相対的に平均粒子径の大きい第一のゴム粒子は、上記した3層構造のものとするのが有利である。相対的に平均粒子径の小さい第二のゴム粒子は、2層構造、3層構造のいずれであってもよい。相対的に平均粒子径の大きい第一のゴム粒子を3層構造のものとし、相対的に平均粒子径の小さい第二のゴム粒子を2層構造のものとするのも有効である。相対的に平均粒子径の大きい第一のゴム粒子は、フィルムに優れた耐衝撃性を付与する作用を有する。また、相対的に平均粒子径の小さい第二のゴム粒子は、フィルムに優れた柔軟性及び伸度を付与する作用を有する。ゴム粒子の平均粒子径は、重合開始剤の種類や量、また重合時間などを調節することによって、適当な値に設定することが可能である。
【0026】
フィルムを構成する樹脂組成物におけるメタクリル樹脂及び2種類のゴム粒子の配合割合は重要であり、本発明では、これらメタクリル樹脂及び2種類のゴム粒子の合計100重量部を基準に、メタクリル樹脂を 10〜49.9重量部、平均粒子径が0.2〜0.4μmである第一のゴム粒子を0.1〜20重量部とし、そして平均粒子径が0.18μm 以下である第二のゴム粒子を50〜89.9重量部とする。相対的に平均粒子径の大きい第一のゴム粒子の量が20重量部を超えると、応力が集中したときの白化が現れやすくなる。また、相対的に平均粒子径の小さい第二のゴム粒子の量を50重量部以上とすることにより、特に応力が集中したときの白化を防止する効果が顕著に発揮される。ただ、その量があまり多くなると、フィルムの表面硬度が低下するため、89.9重量部 以下とされる。そこで、母相となるメタクリル樹脂は、49.9重量部 以下とされるが、一方でフィルムの表面硬度の低下を防ぐために10重量部以上とされる。
【0027】
ゴム粒子の平均粒子径は、それぞれのゴム粒子を単独でメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、その断面において、酸化ルテニウムによるゴム成分の染色を施し、電子顕微鏡で観察して、染色された粒子外層部の直径から求めることができる。すなわち、アクリル酸アルキルを主成分とする弾性共重合体層を含むゴム粒子をメタクリル樹脂に混合し、その断面を酸化ルテニウムで染色すると、母相のメタクリル樹脂は染色されず、ゴム粒子の最外層にメタクリル酸エステル主体の硬質層がある場合はその硬質層も母体樹脂と混和して染色されず、アクリル酸アルキルを主成分とする弾性共重合体層のみが染色されるので、こうして染色され、電子顕微鏡でほぼ円形状に観察される部分の直径から、粒子径を求めることができる。弾性共重合体層の内側に硬質重合体層が存在する場合は、最内層の硬質重合体も染色されず、その外側の弾性共重合体層が染色された2層構造の状態で観察されることになるが、この場合のゴム粒子の平均粒子径は、2層構造の外側、すなわち弾性共重合体層の外径で考えればよい。
【0028】
2種類のゴム粒子(ゴム含有重合体)中の弾性共重合体の量の合計は、全ての成分、すなわち、メタクリル樹脂(熱可塑性樹脂)及び2種類のゴム粒子(ゴム含有重合体)の合計100重量部を基準に、20〜70重量部であるのが好ましい。さらには、全ての成分の合計100重量部を基準に、弾性共重合体は30〜60重量部であるのがより好ましい。メタクリル樹脂と2種類のゴム粒子の合計100重量部あたり弾性共重合体の量の合計が20重量部以上となるようにすれば、フィルムを脆くすることがなく、製膜性を向上させることができる。一方、メタクリル樹脂と2種類のゴム粒子の合計100重量部あたり弾性共重合体の量の合計が70重量部を越えると、フィルムの表面硬度が失われる傾向となる。
【0029】
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、通常の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、有機系染料、無機系染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤などを含有してもよい。なかでも紫外線吸収剤は、より長時間の耐候性に優れた積層成形体を与える点で好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、例えば、一般に用いられるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤などが挙げられる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として具体的には、2,2′−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−5′−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが例示される。2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤として具体的には、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4′−クロロベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノンなどが例示される。また、サリチル酸フェニルエステル系紫外線吸収剤として具体的には、p−tert−ブチルフェニルサリチル酸エステル、p−オクチルフェニルサリチル酸エステルなどが例示される。
【0030】
これらの紫外線吸収剤は、それぞれ単独で、又は2種以上混合して用いることができる。紫外線吸収剤を配合する場合、メタクリル樹脂及び2種類のゴム粒子の合計100重量部を基準に、通常0.1重量部以上であり、好ましくは0.3重量部以上、また2重量部以下である。
【0031】
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、以上説明したメタクリル樹脂及び2種類のゴム粒子を含む混合物をフィルム化することにより、製造される。そして、得られる樹脂フィルムは一般に、上記のメタクリル樹脂を母相とし、その中に上記2種類のゴム粒子が分散したものとなる。フィルムの製造法としては、溶融流延法、Tダイ法やインフレーション法のような溶融押出法、カレンダー法など、いずれの方法を用いてもよい。特に、フィルムの表面平滑性及び表面光沢性を向上させる観点からは、上記混合物を溶融押出成形して得られるフィルム状物の両面をロール表面又はベルト表面に接触させてフィルム化する方法が好ましい。この際に用いるロール又はベルトは、いずれも金属製であるのが好ましい。
【0032】
また前述したとおり、フィルム化の工程においては一般に、耳を切り落とすためのスリット加工が行われるが、その際カッター刃を押し当てても、本発明で規定する組成で製造されたフィルムは、破断が起こりにくく、スリット性が良好となる。広幅で押し出されるフィルムにカッター刃を当て、何分割かして横幅の狭いフィルムとして巻き取ることも可能である。
【0033】
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、その厚さを500μm 以下とする。厚さが500μm を超えると、剛性が大きくなり、ラミネート性、ハンドリング性、二次加工性が低下し、フィルムとしての使用が困難になるとともに、単位面積あたりの単価も増大し、経済的に不利となる。さらには、フィルムとしての安定的な生産も比較的難しくなる。特に、フィルムの厚さは50〜300μm の範囲にあるのが好ましく、さらには75〜200μm がより好ましい。厚さを50μm 以上とすることにより、当該フィルムを最表層に有する成形品外観として、十分な深み感を得ることができる。
【0034】
本発明のアクリル系樹脂フィルムは着色されていてもよい。着色法としては、メタクリル樹脂と2種類のゴム粒子との混合物自体に顔料又は染料を含有させ、フィルム化前の樹脂自体を着色する方法、アクリル系樹脂フィルムを、染料が分散した液中に浸漬して着色させる染色法などが挙げられるが、特に限定されるものではない。アクリル系樹脂フィルムが着色される場合には、その表面に印刷される図形等に用いられる色彩を選択的に着色することで、色彩の同じ図形等については印刷を省略できるという効果が得られる。なお、アクリル系樹脂フィルムの透明性を保ったまま着色するのも有効である。
【0035】
本発明のアクリル系樹脂フィルム又は着色されたアクリル系樹脂フィルムは、少なくとも一方の面に絵柄などの印刷を施してもよい。印刷は、深みのある印刷模様を与えるうえで、別の熱可塑性樹脂と接する側に施すのが好ましい。すなわち、透明なアクリル系樹脂フィルム層(クリアー層)の下に印刷層を存在させれば、クリアー層を通してその下の印刷層を見ることになるため、深み感のある加飾状態が得られる。
【0036】
本発明のアクリル系樹脂フィルム又は着色されたアクリル系樹脂フィルムの片面には、他の熱可塑性樹脂層を少なくとも1層積層してもよい。別の熱可塑性樹脂との積層一体成形法としては、例えば、本発明で規定するアクリル系樹脂と別の熱可塑性樹脂とをそれぞれ別個に、予めフィルム状に成形しておき、加熱ロール間で連続的にラミネートする方法、プレスで熱圧着する方法、圧空又は真空成形すると同時に積層する方法、接着層を介在させてラミネートする方法(ウェットラミネーション)、予めシート状又はフィルム状に成形されたアクリル系樹脂フィルム基材に、Tダイから溶融押出した熱可塑性樹脂をラミネートする方法などが挙げられる。これらの方法を用いる場合、フィルム状に成形されたアクリル系樹脂は、もう一方の熱可塑性樹脂基材と貼合される側の面に、例えば、コロナ処理などが施されてもよいし、接着層が設けられてもよい。
【0037】
本発明のアクリル系樹脂フィルムとの積層に適した熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、他の(メタ)アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)樹脂などが挙げられる。
【0038】
本発明のアクリル系樹脂フィルム、着色されたアクリル系樹脂フィルム又はアクリル系樹脂フィルムの片面に他の熱可塑性樹脂層を少なくとも1層積層した積層フィルムは、射出成形同時貼合用フィルムとして好ましく用いられ、例えば、別の熱可塑性樹脂と一体成形することにより、成形品の最表層に配置される。
【0039】
かかる一体成形法としては、特に限定されるものではないが、前述した射出成形同時貼合法と呼ばれる手法が有利に採用される。射出成形同時貼合法についてさらに詳しく説明すると、上記いずれかのフィルムを射出成形の雌雄金型間に挿入し、その金型の一方の側から溶融樹脂を射出して、射出成形体を形成すると同時にその成形体に上記フィルムを貼合する方法や、このフィルムを予備賦形してから射出成形金型内に挿入し、その金型の一方の側から溶融樹脂を射出してフィルムと一体化する方法、このフィルムを射出成形金型内で予備賦形した後、その金型の一方の側から溶融樹脂を射出してフィルムと一体化する方法などが採用できる。
【0040】
最初に掲げた、未成形のフィルムそれ自体を射出成形の雌雄金型間に挿入し、その一方の面側に溶融樹脂を射出する方法を、狭義の意味で射出成形同時貼合法と呼ぶこともあるが、本明細書では、その他の方法も含めて、フィルムそれ自体又はその予備賦形物が配置された射出成形金型に、一方の側から溶融樹脂を射出して樹脂とフィルムを一体貼合する方法を、広く射出成形同時貼合法と呼ぶことにする。
【0041】
二番目に掲げた、フィルムを予備賦形してから射出成形金型内に挿入し、金型の一方の側から溶融樹脂を射出する方法は、インサート成形法とも呼ばれる。この場合は、予め熱成形によってフィルムに形状を付与したものを射出成形同時貼合に用いることになる。すなわち、まずフィルムを予備成形し、予備賦形されたフィルムを射出成形金型に挿入した後、本体となる熱可塑性樹脂が射出される。予備賦形のための熱成形としては、真空成形、圧空成形、真空圧空成形などが採用される。真空成形によって予備賦形する場合についてさらに具体的に説明すると、射出成形用金型の形状に適合するようにフィルムを真空成形機にて成形した後、その真空成形された三次元形状のフィルムを射出成形用金型キャビティの内面に密着させ、金型の型締めを行った後に、熱可塑性樹脂を射出し、フィルムと熱可塑性樹脂とを貼合させることになる。
【0042】
三番目に掲げた、フィルムを射出成形金型内で予備賦形した後、その金型の一方の側から溶融樹脂を射出する方法は、インモールド成形法とも呼ばれる。この場合は、例えば、インモールド成形可能な金型を取り付けた射出成形機を用い、フィルムの送り出し装置、そのフィルムの加熱装置及び吸引装置(例えば真空ポンプ)を備えた射出成形用金型のキャビティ内面に、フィルムをその透明層がキャビティ内面と接するように密着させた後に、熱可塑性樹脂を射出成形することになる。
【0043】
このような、インサート成形法やインモールド成形法などを包含する射出成形同時貼合法は、例えば、特公昭 63-6339号公報、特公平 4-9647 号公報、特開平 7-9484 号公報などに記載の方法に準じて行うことができる。射出成形の際の樹脂温度や射出圧力等の条件は、用いる樹脂の種類等を勘案して適宜設定される。この際、アクリル系樹脂フィルムの片面に印刷層や他の熱可塑性樹脂の層が設けられている場合は、これらの層が射出成形される樹脂側となるように、換言すれば、アクリル系樹脂フィルムが最表面となるように配置される。
【0044】
こうして得られる成形品は、その最表層に本発明のアクリル系樹脂フィルムが積層された状態で、深み感、表面硬度、表面平滑性などに優れたものとなる。また、成形品を得るまでのいずれかの段階で、あるいは成形品を得た後の後加工の段階で、応力の集中があっても、表面白濁を起こしにくく、良好な意匠性を維持する効果が奏される。
【0045】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら制限されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり重量基準である。また、ゴム粒子の平均粒子径は、以下の方法で測定した。
【0046】
〔ゴム粒子の平均粒子径の測定〕
ゴム粒子をメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、得られたフィルムを適当な大きさに切り出し、切片を 0.5%四酸化ルテニウム水溶液に室温で15時間浸漬し、ゴム粒子部分を染色する。さらに、ミクロトームを用いて約80nmの厚さにサンプルを切断した後、透過型電子顕微鏡で写真撮影を行う。この写真から無作為に100個の染色されたゴム粒子部を選択し、その各々の粒子径を算出した後、その平均値を平均粒子径とする。
【0047】
実施例1
メタクリル樹脂として、メタクリル酸メチル97.8% 及びアクリル酸メチル2.2% のモノマー組成からバルク重合法により得られた樹脂のペレット(ガラス転移温度104℃)を用いた。
【0048】
第一のゴム粒子としては、特公昭 55-27576 号公報(= USP 3,793,402)の実施例3に準じて製造され、最内層がメタクリル酸メチルに少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された架橋重合体、中間層がアクリル酸ブチルを主成分としてさらにスチレン及び少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された軟質の弾性共重合体、最外層がメタクリル酸メチルに少量のアクリル酸エチルを用いて重合された硬質重合体からなる球形3層構造であり、平均粒子径が0.22μmのものを用いた。この第一のゴム粒子における中間層の弾性共重合体は、このゴム粒子全体のうち48.9%であった。
【0049】
第二のゴム粒子としては、特公昭 55-27576 号公報(= USP 3,793,402)の実施例3に準ずるが、最内層の架橋重合体層を形成することなく製造され、内層がアクリル酸ブチルを主成分としてさらにスチレン及びメタクリル酸アリルを用いて重合された軟質の弾性共重合体、外層がメタクリル酸メチルに少量のアクリル酸エチルを用いて重合された硬質重合体からなる球形2層構造であり、平均粒子径が0.145μmのものを用いた。この第二のゴム粒子における内層の弾性共重合体は、このゴム粒子全体のうち72.2%であった。
【0050】
上記のメタクリル樹脂ペレット30部と、第一のゴム粒子5部と、第二のゴム粒子65部とをスーパーミキサーで混合し、二軸押出機にて溶融混錬してペレットとした。次いでこのペレットを、東芝機械(株)製の65mmφ一軸押出機で溶融し、設定温度275℃のT型ダイスを介して押し出し、ポリシングロールに両面が完全に接するようにして冷却し、厚さ125μm のアクリル系樹脂フィルムを得た。このフィルムにおいて、第一のゴム粒子中の弾性共重合体と第二のゴム粒子中の弾性共重合体との合計は、49.4% となる。このフィルムについて以下の試験を行い、結果を表1に示した。
【0051】
〔強制白化試験〕
恒温室中に23℃で一昼夜保持したフィルムにつき、 JIS K 7113-1995「プラスチックの引張試験方法」に従って引張試験を行い、引張破壊伸びを測定する。次に、同じフィルムであるが別の試験片について同様の引張試験を行い、先に求めた引張破壊伸びの寸前で試験を停止して、そのときのフィルムの白化度を測定し、これをストレス白化の指標とする。白化度は、 JIS K 7105-1981「プラスチックの光学的特性試験方法」に従って曇価(ヘイズ)を測定し、引張試験前のフィルムの曇価H1 と引張試験後のフィルムの曇価H2 から、試験前後における曇価の差ΔH(=H2−H1)を求めることにより、決定する。ΔHが大きいほど、引張試験に伴う白化が顕著に発生したこと、すなわち、ストレスによる白化が顕著であることを意味する。さらに、この引張試験後のフィルムを目視で評価し、意匠性良好なものを○、意匠性に欠けるものを×と表示した。
【0052】
〔柔軟性試験〕
JIS K 5400-1990 「塗料一般試験方法」の「8.塗膜の抵抗性に関する試験方法」、「8.1 耐屈曲性」に従って、フィルムの耐屈曲性を評価する。柔軟性があったものを○、試験片が破断し、柔軟性に欠けるものを×と表示した。
【0053】
〔鉛筆硬度試験〕
JIS K 5400-1990 「塗料一般試験方法」の「8.塗膜の抵抗性に関する試験方法」、「8.4 鉛筆引っかき値」に従って、フィルムの表面硬度を評価する。
【0054】
〔製膜時スリット性試験〕
製膜ライン中にカッター刃を挿入してスリット性を評価する。スリットできたものを○、スリット面に亀裂が発生し、1時間あたり数回のフィルムの破断が発生したものを△、カッター刃の挿入と同時にフィルム破断が起こり、スリットできなかったものを×と表示した。
【0055】
実施例2
実施例1において、第一のゴム粒子の量を3部、第二のゴム粒子の量を67部に変更し、その他は実施例1に準じて、厚さ125μm のアクリル系樹脂フィルムを作製した。このフィルムにおいて、第一のゴム粒子中の弾性共重合体と第二のゴム粒子中の弾性共重合体との合計は、49.8% となる。得られたフィルムについて実施例1と同様の試験を行い、結果を表1に示した。
【0056】
実施例3
実施例1において、メタクリル樹脂ペレットの量を15部、第一のゴム粒子の量を5部、第二のゴム粒子の量を80部に変更し、その他は実施例1に準じて、厚さ125μm のアクリル系樹脂フィルムを作製した。このフィルムにおいて、第一のゴム粒子中の弾性共重合体と第二のゴム粒子中の弾性共重合体との合計は60.2% となる。得られたフィルムについて実施例1と同様の試験を行い、結果を表1に示した。
【0057】
実施例4
実施例1において、メタクリル樹脂ペレットの量を40部、第一のゴム粒子の量を5部、第二のゴム粒子の量を55部に変更し、その他は実施例1に準じて、厚さ125μm のアクリル系樹脂フィルムを作製した。このフィルムにおいて、第一のゴム粒子中の弾性共重合体と第二のゴム粒子中の弾性共重合体との合計は42.2% となる。得られたフィルムについて実施例1と同様の試験を行い、結果を表1に示した。
【0058】
実施例5
第二のゴム粒子として、内層がアクリル酸ブチルを主成分としてさらにスチレン及び少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された軟質のゴム弾性体、外層がメタクリル酸メチルに少量のアクリル酸エチルを用いて重合された硬質重合体からなる球形2層構造であり、平均粒子径が0.09μmのものを用いた。このゴム粒子における内層の弾性共重合体は、このゴム粒子全体のうち68.2% であった。
【0059】
実施例1における第二のゴム粒子を、上記の平均粒子径0.09μmのものに変更し、その他は実施例1に準じて、厚さ125μm のアクリル系樹脂フィルムを作製した。このフィルムにおいて、第一のゴム粒子中の弾性共重合体と第二のゴム粒子中の弾性共重合体との合計は、46.8% となる。得られたフィルムについて実施例1と同様の試験を行い、結果を表1に示した。
【0060】
実施例6
第一のゴム粒子として、特公昭 55-27576 号公報(= USP 3,793,402)の実施例3に準じて製造され、最内層がメタクリル酸メチルに少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された架橋重合体、中間層がアクリル酸ブチルを主成分としてさらにスチレン及び少量のメタクリル酸アリルを用いて重合された軟質の弾性共重合体、最外層がメタクリル酸メチルに少量のアクリル酸エチルを用いて重合された硬質重合体からなる球形3層構造であり、平均粒子径が0.28μmのものを用いた。このゴム粒子における中間層の弾性共重合体は、このゴム粒子全体のうち47.5%であった。
【0061】
実施例1における第一のゴム粒子を、上記の平均粒子径0.28μmのものに変更し、その他は実施例1に準じて、厚さ125μm のアクリル系樹脂フィルムを作製した。このフィルムにおいて、第一のゴム粒子中の弾性共重合体と第二のゴム粒子中の弾性共重合体との合計は、49.3% となる。得られたフィルムについて実施例1と同様の試験を行い、結果を表1に示した。
【0062】
実施例7
実施例1の操作を繰り返すが、T型ダイスの吐出口厚みとポリシングロールの間隙を調節して、厚さ300μm のアクリル系樹脂フィルムを作製した。得られたフィルムについて実施例1と同様の試験を行い、結果を表1に示した。
【0063】
比較例1
実施例1において、メタクリル樹脂ペレットの量を5部、第一のゴム粒子の量を10部、第二のゴム粒子の量を85部に変更し、その他は実施例1に準じて、厚さ125μm のアクリル系樹脂フィルムを作製した。このフィルムにおいて、第一のゴム粒子中の弾性共重合体と第二のゴム粒子中の弾性共重合体との合計は66.3% となる。得られたフィルムについて実施例1と同様の試験を行い、結果を表1に示した。
【0064】
比較例2
実施例1において、メタクリル樹脂ペレットの量を70部、第一のゴム粒子の量を5部、第二のゴム粒子の量を25部に変更し、その他は実施例1に準じて、厚さ125μm のアクリル系樹脂フィルムを作製した。このフィルムにおいて、第一のゴム粒子中の弾性共重合体と第二のゴム粒子中の弾性共重合体との合計は20.5% となる。得られたフィルムについて実施例1と同様の試験を行い、結果を表1に示した。
【0065】
比較例3
実施例1において、メタクリル樹脂ペレットの量を30部、第一のゴム粒子の量を30部、第二のゴム粒子の量を40部に変更し、その他は実施例1に準じて厚さ125μm のアクリル系樹脂フィルムを作製した。このフィルムにおいて、第一のゴム粒子中の弾性共重合体と第二のゴム粒子中の弾性共重合体との合計は43.6% となる。得られたフィルムについて実施例1と同様の試験を行い、結果を表1に示した。
【0066】
【表1】
Figure 0004754764
【0067】
実施例8
実施例1に準じて作製した厚さ125μm のアクリル系樹脂フィルムを、印刷フィルムを間に挟んで、厚さ300μm のABS樹脂フィルムに重ね合わせ、熱プレス機にて貼合して、積層フィルムを作製した。この積層フィルムについて、以下の方法で評価を行い、結果を表2に示した。
【0068】
〔意匠性評価〕
被試験物の意匠性を目視により評価し、意匠性良好なものを○、意匠性に欠けるものを×と表示した。ここで意匠性は、表面光沢性、下層印刷への深み感等の一般的、総合的判断とした。
【0069】
〔打ち抜き試験〕
恒温室中に23℃で一昼夜保持したフィルムから、打ち抜き刃による打ち抜き加工により、 JIS K 7113-1995「プラスチックの引張試験方法」に記載の1号形試験片を作製し、試験片の端部を目視で評価した。白化の発生がないか、あるいは白化が軽微で意匠性良好なものを○、白化が発生し、意匠性に欠けるものを×と表示した。
【0070】
実施例9
実施例5に準じて作製した厚さ125μm のアクリル系樹脂フィルムを、印刷フィルムを間に挟んで、厚さ300μm のABS樹脂フィルムに重ね合わせ、熱プレス機にて貼合して、積層フィルムを作製した。この積層フィルムについて、実施例8と同様の方法で評価を行い、結果を表2に示した。
【0071】
実施例10
実施例6に準じて作製した厚さ125μm のアクリル系樹脂フィルムを、印刷フィルムを間に挟んで、厚さ300μm のABS樹脂フィルムに重ね合わせ、熱プレス機にて貼合して、積層フィルムを作製した。この積層フィルムについて、実施例8と同様の方法で評価を行い、結果を表2に示した。
【0072】
実施例11
実施例1に準じて作製した厚さ125μm のアクリル系樹脂フィルムの片面に印刷フィルムを貼合した状態で、アクリル系樹脂フィルムが金型面に押し付けられる側となるようにして射出成形金型内に入れ、その裏面(印刷フィルム側)にABS樹脂を3mm厚さで射出して成形体を得た。このときの金型温度は50℃、射出成形圧力は1,150kg/cm2、ABS樹脂温度は230℃であった。得られた成形体について、実施例8と同様に意匠性評価及び打ち抜き試験を行い、結果を表2に示した。
【0073】
比較例4
比較例1に準じて作製した厚さ125μm のアクリル系樹脂フィルムを、印刷フィルムを間に挟んで、厚さ300μm のABS樹脂フィルムに重ね合わせ、熱プレス機にて貼合して、積層フィルムを作製した。この積層フィルムについて、実施例8と同様の方法で評価を行い、結果を表2に示した。
【0074】
比較例5
比較例1に準じて作製した厚さ125μm のアクリル系樹脂フィルムの片面に印刷フィルムを貼合した状態で、アクリル系樹脂フィルムが金型面に押し付けられる側となるようにして射出成形金型内に入れ、その裏面(印刷フィルム側)にABS樹脂を3mm厚さで射出して成形体を得た。このときの金型温度は50℃、射出成形圧力は1,150kg/cm2、ABS樹脂温度は230℃であった。得られた成形体について、実施例8と同様に意匠性評価及び打ち抜き試験を行い、結果を表2に示した。
【0075】
【表2】
Figure 0004754764
【0076】
【発明の効果】
本発明によれば、射出成形品の最表層とするのに適したアクリル系樹脂フィルムが提供され、このアクリル系樹脂フィルムは、応力の集中があっても白濁することがなく、良好な意匠性を維持できる。さらにこのフィルムは、製膜ラインでスリットすることも可能である。そして、このフィルムを用いた積層フィルムも種々の成形に適し、さらに、このアクリル系樹脂フィルムが最表層に一体化された熱可塑性樹脂射出成形品は、深み感等の意匠性に優れたものとなる。

Claims (7)

  1. メタクリル樹脂10〜49.9重量部、平均粒子径が0.2〜0.4μmである第一のゴム粒子0.1〜5重量部、及び平均粒子径が0.18μm以下である第二のゴム粒子50〜89.9重量部を含有する樹脂組成物からなり、厚さが500μm以下であることを特徴とするアクリル系樹脂フィルムであって、
    メタクリル樹脂は、炭素数1〜4のアルキル基を有するメタクリル酸アルキル50〜100重量%と、アクリル酸エステル0〜50重量%と、これらと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49重量%とからなる単量体の重合によって得られ、ガラス転移温度が40℃以上の熱可塑性重合体であり、
    第一のゴム粒子及び第二のゴム粒子はそれぞれ、アクリル酸アルキル50〜99.9重量% と、これと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49.9重量%と、共重合性の架橋性単量体0.1〜10重量%とからなる単量体の重合により得られる層を有する弾性共重合体100重量部の存在下に、メタクリル酸エステル50〜100重量%と、アクリル酸エステル0〜50重量%と、これらと共重合可能な他のビニル単量体の少なくとも1種0〜49重量%とからなる単量体10〜400重量部を重合させることにより、後者の単量体からの重合層を前記弾性共重合体の表面に少なくとも1層結合してなるゴム含有重合体であり、
    第一のゴム粒子及び第二のゴム粒子中の弾性共重合体の量の合計は、上記メタクリル樹脂、第一のゴム粒子及び第二のゴム粒子の合計100重量部を基準に、20〜70重量部であるアクリル系樹脂フィルム。
  2. 第一のゴム粒子は、弾性共重合体層の内側に、メタクリル酸エステルを主体とする硬質重合体層を有する3層構造である請求項記載のアクリル系樹脂フィルム。
  3. メタクリル樹脂に2種類のゴム粒子を混合し、これを溶融押出成形して得られるフィルム状物の両面をロール表面又はベルト表面に同時に接触した状態で成形してなる請求項1または2のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
  4. 着色されている請求項1〜のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルム。
  5. 請求項1〜のいずれかに記載のアクリル系樹脂フィルムの片面に、他の熱可塑性樹脂層が少なくとも1層設けられてなることを特徴とする積層フィルム。
  6. 請求項1〜のいずれかに記載のフィルムからなる射出成形同時貼合用フィルム。
  7. 請求項記載のフィルムが、そのアクリル系樹脂フィルム面が表面となるように、熱可塑性樹脂射出成形品の表層に一体化されていることを特徴とする、アクリル系樹脂フィルム積層射出成形品。
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