JP2003334073A - 蛋白質の製造方法 - Google Patents

蛋白質の製造方法

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JP2003334073A
JP2003334073A JP2002143172A JP2002143172A JP2003334073A JP 2003334073 A JP2003334073 A JP 2003334073A JP 2002143172 A JP2002143172 A JP 2002143172A JP 2002143172 A JP2002143172 A JP 2002143172A JP 2003334073 A JP2003334073 A JP 2003334073A
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JP
Japan
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protein
chaperonin
cochaperonin
host
producing
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Application number
JP2002143172A
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English (en)
Inventor
Junichi Hata
純一 秦
Masahiro Furuya
昌弘 古谷
Akiko Tougi
彰子 東儀
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Sekisui Chemical Co Ltd
Original Assignee
Sekisui Chemical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 目的蛋白質とシャペロニンとの複合体を安定
化させ、目的蛋白質をシャペロニンの立体構造内部に完
全に納めることにより、目的蛋白質が宿主細胞に対して
何らかの毒性を有する場合であっても安定して目的蛋白
質を大量に得ることのできる蛋白質の製造方法を提供す
る。 【解決手段】 少なくとも、同一宿主内で共存・複製可
能な2種の異なるプラスミドに、シャペロニンと目的蛋
白質との融合蛋白質をコードする遺伝子及びコシャペロ
ニンをコードする遺伝子とをそれぞれ組み込む工程と、
前記遺伝子が組込まれた2種のプラスミドを同一宿主に
導入する工程と、前記プラスミドが導入された宿主内で
前記融合蛋白質と前記コシャペロニンとを共発現させる
工程とを有する蛋白質の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、目的蛋白質とシャ
ペロニンとの複合体を安定化させ、目的蛋白質をシャペ
ロニンの立体構造内部に完全に納めることにより、目的
蛋白質が宿主細胞に対して何らかの毒性を有する場合で
あっても安定して目的蛋白質を大量に得ることのできる
蛋白質の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】これまでにバクテリア、酵母、昆虫、動
植物細胞、トランスジェニック動物、トランスジェニッ
ク植物等多くの宿主生物での組み換え蛋白質発現系が検
討されてきた。なかでもバクテリアを宿主細胞とした組
み換え蛋白質の製造方法は、その増殖速度の速さ等から
医薬品原料の工業スケール生産の標準システムとなって
いる。
【0003】しかし、これらの従来の組み換え蛋白質発
現系では、活性型蛋白質を大量に得ることが困難な場合
が多くあった。例えば、目的蛋白質が宿主細胞に対して
何らかの毒性を有する場合には、発現が抑制されて発現
量が低下したり、細胞増殖量が低下したりする。また、
目的蛋白質が可溶性蛋白質として発現する場合には、宿
主のプロテアーゼによって分解されてしまい生産量が極
めて少なくなることがあった。更に、目的蛋白質が発現
しても折り畳みがうまくいかない場合には、可溶化が困
難な封入体を形成してしまい、人工的に可溶化して再折
り畳みを行っても最終的に得られる活性型蛋白質の量は
極めて少なくなってしまうことがあった。
【0004】目的蛋白質が宿主細胞に対して何らかの毒
性を有する場合の対策としては、例えば、発現誘導剤や
温度によって目的蛋白質の発現を厳密に制御可能なベク
ターを用いた方法が検討されている。これは、目的蛋白
質を発現していない状態で宿主細胞を定常期まで増殖さ
せた後、イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシ
ド(IPTG)等の発現誘導物質を添加したり、培養温
度を変化させたりすることによって、菌体内で目的蛋白
質を発現させる二段階培養法である。しかしながら、こ
の方法では菌体増殖ステージにおいて、目的蛋白質の発
現を完全に抑制することは困難であり、微量に目的蛋白
質が発現することによって菌体増殖や発現量が低下する
ことがあるという問題があった。
【0005】目的蛋白質が宿主のプロテアーゼによって
分解されてしまう場合の対策としては、例えば、lo
n、ompTのようなプロテアーゼ構造遺伝子の一部を
欠損させた大腸菌を宿主として用いる方法が考案されて
いる。しかしながら、大腸菌において現在判明している
プロテアーゼは30種類以上あるため、一部の構造遺伝
子を欠損させただけではプロテアーゼ分解の影響を回避
することは困難であり、また、宿主のプロテアーゼを全
て欠損させてしまうと他の弊害が起こるため、根本的な
解決法とはなっていない。
【0006】目的蛋白質が封入体を形成する場合の対策
としては、目的蛋白質をグルタチオン−S−トランスフ
ェラーゼ(GST)やチオレドキシン−マルトース結合
蛋白質等との融合蛋白質として発現させる方法;大腸菌
が宿主である場合には、ペリプラズム内に目的蛋白質を
発現させる方法等が考案されている。しかしながら、こ
れらの方法でも、封入体の形成を高効率で解消するのは
困難であった。また、蛋白質の折り畳み反応を支援する
蛋白質群である分子シャペロンと共発現させ、可溶性画
分への発現量を増大させる方法も考案されている。しか
しながら、活性型蛋白質の量は飛躍的には増加しないの
が現状であった。
【0007】これに対して、目的蛋白質をヒートショッ
クプロテインの1種であるシャペロニンとの融合蛋白質
としてシャペロニンの立体構造内部に納めることによ
り、目的蛋白質の宿主への毒性発現、封入体形成、プロ
テアーゼによる分解の問題を解消し、目的蛋白質を可溶
性蛋白質として大量に発現させる方法が提案されてい
る。この方法によれば、用いる宿主や目的蛋白質ごとに
発現条件を試行錯誤で検討する必要もなく、大量の目的
蛋白質を得ることができる。しかしながら、シャペロニ
ン−目的蛋白質の融合蛋白質は、分子量が巨大であるた
め宿主細胞内で不安定となりやすく、シャペロニン内部
に目的蛋白質が完全には納まらないことがあり、とりわ
け目的蛋白質が宿主細胞に対して何らかの毒性を有する
場合には発現量が低下する傾向があり、シャペロニンを
安定化させる方法が求められていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に
鑑み、目的蛋白質とシャペロニンとの複合体を安定化さ
せ、目的蛋白質をシャペロニンの立体構造内部に完全に
納めることにより、目的蛋白質が宿主細胞に対して何ら
かの毒性を有する場合であっても安定して目的蛋白質を
大量に得ることのできる蛋白質の製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、少なくとも、
同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミド
に、シャペロニンと目的蛋白質との融合蛋白質をコード
する遺伝子及びコシャペロニンをコードする遺伝子とを
それぞれ組み込む工程と、前記遺伝子が組込まれた2種
のプラスミドを同一宿主に導入する工程と、前記プラス
ミドが導入された宿主内で前記融合蛋白質と前記コシャ
ペロニンとを共発現させる工程とを有する蛋白質の製造
方法である。以下に本発明を詳述する。
【0010】本発明の蛋白質の製造方法は、シャペロニ
ンと目的蛋白質との融合蛋白質をコードする遺伝子及び
コシャペロニンをコードする遺伝子を2種の異なるプラ
スミドに組み込み、これを同一宿主に導入するシャペロ
ニンと目的蛋白質との融合蛋白質とコシャペロニンとを
共発現させるものである。上記シャペロニンとは、細胞
に熱ショック等のストレスを与えることにより誘導され
る分子シャペロンと呼ばれる蛋白質群のなかで、分子量
が約60kDaのもののことであり、バクテリア、古細
菌、及び真核生物の全ての生物に存在し、蛋白質の折り
畳み支援や変性防御の機能を有するものである。
【0011】上記シャペロニンは、グループ1型とグル
ープ2型とに大別される。バクテリアや真核生物のオル
ガネラに存在するシャペロニンはグループ1型に分類さ
れ、いずれも14量体のホモオリゴマーで、コシャペロ
ニンと称される分子量約10kDaの蛋白質の環状7量
体を補因子とする。一方、グループ2型シャペロニン
は、真核生物の細胞質や古細菌にみられるが、それらの
構造や機能に関しては不明な点が多く残されており、グ
ループ1型のコシャペロニンに相当する蛋白質も現在の
ところ見つかっていない。
【0012】グループ1型シャペロニンのなかでも研究
が最も進んでいるのが大腸菌由来のシャペロニンGro
ELである。GroELは、補因子であるコシャペロニ
ンGroESとともに働き、蛋白質の折り畳みを助ける
作用をしており、それらの構造及び機能が近年、明らか
にされつつある。以下に、シャペロニンGroELとコ
シャペロニンGroESとを例として、本発明の蛋白質
の製造方法の機構を説明する。
【0013】シャペロニンGroELは、分子量約60
kDaのサブユニット7つからなるリングがうしろ向き
に結合した14量体構造をとっており、それぞれのリン
グの中央に内径45Å、高さ70Åの空洞を有する構造
となっている。シャペロニンGroELの1つのサブユ
ニットは、頂上、中間、赤道ドメインの3つのドメイン
から構成されており、コシャペロニンGroES及び蛋
白質の結合部位は頂上ドメインにあり、ATPの結合部
位は赤道付近に存在している。
【0014】シャペロニンGroELとコシャペロニン
GroESとによる蛋白質の折り畳みの機構は、現在の
ところ以下のように考えられている。すなわち、まず、
シャペロニンGroELに蛋白質が結合する。次に、A
TPが同じ側のリング(シスリング)に結合するとコシ
ャペロニンGroESがシスリングに結合し、シャペロ
ニンGroELの構造変化が起こりGroEL−Gro
ES複合体の内部に内径80Å、高さ80Åの巨大な空
洞ができ、内容積はコシャペロニンGroES結合前の
約2倍となる。このGroEL−GroES複合体の構
造内部に蛋白質が閉じ込められ、親水的な空洞内部にお
いてポリペプチドは折り畳みを開始する。折り畳みの過
程において、ATPは徐々にADPへ加水分解される
(Weissman et al.,1996,Cel
l,84,481−490,Zhaohui et a
l.,1997,Nature,388,741−75
0)。
【0015】上記シャペロニンGroELのX線結晶構
造解析によって明らかにされた立体構造は、N末端及び
C末端はともにキャビティ側に位置し、フレキシビリテ
ィの高い構造となっている(Braig et a
l.,1994,Nature,371,578−58
6)。特にC末端の23残基は結晶内で決まった構造を
とっていないため結晶解析で見えていないが、空洞内部
に張り出し、フレキシビリティの高い構造をとってい
る。一方、コシャペロニンGroESはN末端及びC末
端が共にリングの外側に位置しており、サブユニットの
C末端は隣接するコシャペロニンGroESサブユニッ
トのN末端と約6Åの距離で近接している(Hunt
et al.,1996,Nature,379,37
−45)。
【0016】本発明の蛋白質の製造方法は、上述のシャ
ペロニンとコシャペロニンとの複合体の構造内部に蛋白
質が閉じ込められることを利用して、目的蛋白質を確実
にシャペロニン−コシャペロニン複合体の空洞内部に納
めることにより、目的蛋白質の宿主への毒性、プロテア
ーゼによる分解、封入体の形成の問題を解消し、可溶性
蛋白質として大量発現させる方法である。すなわち、目
的蛋白質が宿主生物にとって重要な自然機構を阻害する
性質を有するものであっても、シャペロニン−コシャペ
ロニン複合体により生体内環境から仕切られているため
阻害作用を発現することもない。また、強力なプロモー
ターによって発現が誘導された時に見られるように、蛋
白質の折り畳み中間体同士が多数会合することなく個々
にシャペロニン−コシャペロニン複合体のキャビティに
固定されるため、封入体の形成も抑えられる。更に、シ
ャペロニンは宿主生物の細胞質又は体液等の可溶性画分
へ発現するため、シャペロニン−コシャペロニン複合体
内部に格納された蛋白質が膜結合性又は膜貫通性の蛋白
質であっても膜へ移行し宿主生物の膜構造を破壊するこ
ともなく、宿主生物に対する毒性は発現しない。また、
いかなる蛋白質も同一のシャペロニンリングに格納され
ているため、同一条件で発現制御及び精製が可能であ
る。更に、本来シャペロニン−コシャペロニン複合体は
単に外部環境から仕切られたスペースを提供するだけで
なく、蛋白質折り畳み機能を有するため、目的蛋白質の
折り畳みも正常に行われ、かつ構造が安定することも期
待できる。本発明の蛋白質の製造方法により製造される
蛋白質であって、シャペロニン及びコシャペロニンから
なる構造の内部に、シャペロニンとペプチド結合を介し
て封入されている蛋白質もまた、本発明の1つである。
【0017】本発明の蛋白質の製造方法において用いら
れるシャペロニンとしては特に限定されないが、コシャ
ペロニンが発見されているバクテリア及び真核生物に由
来するものが好適である。また、コシャペロニンとして
は、選択したシャペロニンに対応するものを用いる。
【0018】本発明の蛋白質の製造方法においては、目
的蛋白質はまずシャペロニンとの融合蛋白質として得ら
れる。上記融合蛋白質におけるシャペロニンと目的蛋白
質の連結パターンとしては、目的蛋白質がシャペロニン
−コシャペロニン複合体のキャビティ内に確実に納まる
ように、目的蛋白質はシャペロニンのN末端、C末端又
はシャペロニン同士の間にペプチド結合を介して連結さ
れていることが好ましい。また、目的蛋白質の宿主に対
する毒性が極めて高い又は宿主のプロテアーゼによる消
化を極めて受けやすい場合には、目的蛋白質は、複数の
シャペロニン連結間に連結されることがより好ましい。
【0019】通常、シャペロニン−コシャペロニン複合
体の蛋白質折り畳み反応は、基質蛋白質(シングルポリ
ペプチドとして)と1:1で起こるため、シャペロニン
による折り畳み機能を発現させるには、シャペロニン−
コシャペロニン複合体に1個の目的蛋白質が格納される
よう融合蛋白質を設計することが好ましい。
【0020】また、グループ1型シャペロニン複合体の
構造については、いずれもシャペロニンリングのサブユ
ニット数は7個であり、シャペロニン複合体の構造形成
のしやすさからシャペロニン:目的蛋白質の数比が1:
1又は7:1となるように融合蛋白質を設計することが
好ましい。すなわち、融合蛋白質においては、シャペロ
ニンはそのN回連結体(Nは1〜20)となるように設
計することが好ましい。同様に、コシャペロニンも、N
回連結体(Nは1〜20)となるように設計することが
好ましい。ただし、目的蛋白質の形状や分子量によって
は上記以外の数比としてもかまわない。
【0021】本発明の蛋白質の製造方法は、同一宿主内
で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、シャペ
ロニンと目的蛋白質との融合蛋白質をコードする遺伝子
及びコシャペロニンをコードする遺伝子をそれぞれ組み
込む工程を有する。
【0022】上記プラスミドとしては、宿主細胞内で高
効率で発現可能なものであれば特に限定されない。ま
た、2種のプラスミドは、異なる薬剤耐性及び複製領域
を有することが好ましい。これにより、2種類の薬剤の
存在下で共発現することにより、シャペロニン−コシャ
ペロニン複合体の構造を制御することが可能となる。例
えば、シャペロニンと目的蛋白質の数比が7:1である
融合蛋白質を生産する場合においては、シャペロニン遺
伝子を7個連結し、更にその5’側又は3’側に目的蛋
白質をコードする遺伝子を組み込んだプラスミドと、コ
シャペロニンをコードする遺伝子を組み込んだプラスミ
ドとを作製する。このプラスミドを同一宿主内で共発現
させることにより、宿主細胞内で空洞内部に目的蛋白質
を収納したシャペロニン−コシャペロニン複合体が発現
できる。
【0023】本発明の蛋白質の製造方法では、次いで、
上記遺伝子が組込まれた2種のプラスミドを、同一宿主
に導入する。上記宿主としては特に限定ないが、例え
ば、バクテリア、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細
胞、動物個体、植物個体又は昆虫個体等が好適である。
なかでも、培養コストが安価であり、培養日数が短く、
培養操作が簡便な点から、バクテリア又は酵母がより好
適である。
【0024】本発明の蛋白質製造方法において発現され
る蛋白質複合体は、分子量が65〜600kDaと巨大
であるため、転写されたmRNAの特定のリボヌクレア
ーゼによる分解、翻訳された融合蛋白質のプロテアーゼ
による分解と、2段階の切断を受ける可能性がある。か
かる場合には、例えば、mRNAの分解に関与するリボ
ヌクレアーゼをコードするRNaseE遺伝子を欠損さ
せた宿主を用いることでmRNAの分解は抑制可能であ
る。また、翻訳後のプロテーゼによる分解を抑制するた
めには、15〜25℃の低温で発現させたり、lon、
ompT等のプロテアーゼの構造遺伝子を欠損させた大
腸菌を宿主として用いることが好ましい。
【0025】また、本発明の蛋白質の製造方法では、ベ
クターとして用いるプラスミドにシャペロニン又はコシ
ャペロニンの繰返し配列が含まれるため、プラスミドが
不安定となったり、特に宿主細胞とシャペロニン又はコ
シャペロニンの由来生物が同じであるときにはプラスミ
ドDNAとゲノムDNAの相同組換えが起こったりする
可能性がある。しかし、宿主として大腸菌を用いる場合
は、遺伝子の相同組換えに関する遺伝子であるRecA
を欠損させた宿主を用いることで、プラスミドの安定性
を向上させ、相同組換えを抑制することができる。
【0026】本発明の蛋白質の製造方法では、次いで、
上記プラスミドが導入された宿主内で融合蛋白質とコシ
ャペロニンとを共発現させる。これにより、シャペロニ
ン−コシャペロニン複合体の構造内部に目的蛋白質が閉
じ込められた複合体が得られる。プラスミドを導入した
宿主内で融合蛋白質を発現させる方法としては特に限定
されず、公知の方法を用いることができ、例えば、予め
プラスミドにコードされていた薬剤耐性遺伝子に対応す
る薬剤を含有する培地中で宿主を培養する方法等が挙げ
られる。また、2種のプラスミドにコードされる薬剤耐
性遺伝子がそれぞれ異なっている場合には、この2種類
の薬剤の存在下で宿主を培養することにより、効率よ
く、融合蛋白質を発現させることができる。
【0027】このようにして融合蛋白質を発現させた
後、細胞を回収し破砕し、上清を回収して、精製を行
う。融合蛋白質は分子量が約840〜960KDaの巨
大蛋白質であるため、40%飽和程度の硫安塩析によっ
て沈殿させることができる。塩析により沈殿した融合蛋
白質を回収した後、適当な緩衝液に溶解し、疎水クロマ
トグラフィーやイオン交換クロマトグラフィーによって
融合蛋白質の存在するフラクションを回収する。これら
を限外ろ過によって濃縮した後、濃縮液を5〜50mM
程度の塩化マグネシウム及び50〜300mM程度の塩
化ナトリウム又は塩化カリウムが含有された緩衝液を展
開液としてゲルろ過を行い、排除限界直後のピークを回
収することによって融合蛋白質を精製することができ
る。
【0028】融合蛋白質のN末端又はC末端に6〜10
個のヒスチジンが並んだヒスチジンタグを連結させた場
合には、ニッケル等の金属キレートカラムを用いれば、
融合蛋白質の回収はより簡便で効率的である。また、用
いるシャペロニンに対する抗体を用いて、免疫沈降又は
アフィニティクロマトグラフィーを行うことによっても
迅速・簡便に精製することが可能である。ただし、リン
グ構造を形成した融合蛋白質のみを回収するためには、
これらにイオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過を組
み合わせることが好ましい。融合蛋白質のリング構造が
不安定な場合は、精製の過程でマグネシウム及びATP
を存在させておくことで、リング構造である融合蛋白質
を効率的に回収することが可能である。なお、目的蛋白
質の回収のみが目的である場合は、融合蛋白質は必ずし
も均一に精製する必要はなく、粗精製サンプルにEDT
A処理を施した後、プロテアーゼを作用させ、目的蛋白
質に応じた精製操作を施せば良い。目的蛋白質にメチオ
ニンが存在しない場合は、シャペロニンと目的蛋白質と
の間にメチオニンを存在させることによって、CNBr
によって切断可能なので、融合蛋白質をEDTA処理及
び透析するという操作は必要ない。
【0029】次いで、精製した融合蛋白質から目的蛋白
質を切り出す。シャペロニンのサブユニット間の会合
は、マグネシウムイオン及びATPによって安定化され
ている。従って得られた融合蛋白質から目的蛋白質のみ
を分離する場合には、上記のようにして回収した画分を
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)で処理した後、マ
グネシウム及びATPが入っていない緩衝液に対して透
析を行いマグネシウム及びATPを取り除く。これによ
ってシャペロニンサブユニット間の相互作用は解除され
立体構造は壊れ、目的蛋白質が露出する。
【0030】大腸菌由来のシャペロニンGroELを用
いた場合には、隣接するサブユニット間の会合が強固で
あるため、立体構造を崩し、目的蛋白質を露出すること
が困難である場合がある。この場合、サブユニット間の
会合は、疎水的相互作用及び静電相互作用によって引き
起こされるため、これらに寄与するアミノ酸をいくつか
改変したシャペロニンサブユニットを用いることによっ
て、隣接サブユニット間の会合を弱めることが可能であ
る。
【0031】また、透析内液にトロンビン等の限定分解
型プロテアーゼを作用させ、目的蛋白質とシャペロニン
との切断を行ってもよい。この反応液をイオン交換クロ
マトグラフィーや疎水クロマトグラフィー、又は、抗体
を用いるアフィニィティクロマトグラフィーに供するこ
とによって容易に高純度の目的蛋白質を回収することが
できる。
【0032】目的蛋白質が膜結合性又は膜貫通性蛋白質
である場合には、目的蛋白質とシャペロニンの切断によ
って不溶化することもあるが、不溶化物のみを遠心分離
によって回収した後、疎水性アルキル鎖がオクチル(C
8)からドデシル(C12)あたりの長さである非イオ
ン性界面活性剤等を用いると、ミセルの直径がほぼ生体
膜の相応し、可溶化しやすい。上記非イオン性界面活性
剤としては、例えば、β−オクチルグルコシド、Tri
tonX−100、NonidetP−40、Twee
n20等が挙げられる。
【0033】本発明の蛋白質の製造方法の対象となる目
的蛋白質としては特に限定されないが、例えば、B型肝
炎ウィルス、C型肝炎ウィルス、HIV、インフルエン
ザ等の病原性ウィルスゲノムにコードされる蛋白質(外
被蛋白質、コア蛋白質、プロテアーゼ、逆転写酵素、イ
ンテグラーゼ等);scFV(単鎖抗体)、Fab、
(Fab)2 及び完全抗体型である治療・診断用抗
体;7回膜貫通型受容体(G蛋白質共役型受容体)、血
小板増殖因子、血液幹細胞成長因子、肝細胞成長因子、
トランスフォーミング成長因子、神経成長・栄養因子、
線維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子等の成長因
子に属するもの、腫瘍壊死因子、インターフェロン、イ
ンターロイキン、エリスロポエチン、顆粒球コロニー刺
激因子、マクロファージ・コロニー刺激因子、アルブミ
ン、ヒト成長ホルモン等に属するもの等が挙げられる。
その他にも、ヒト、マウス等高等動物由来の疾病関連遺
伝子産物の全てが本発明の蛋白質の製造方法の目的蛋白
質となり得る。また、化学プロセス食品加工、その他の
産業分野に有効な酵素、蛋白質も本発明の蛋白質の製造
方法の対象である。
【0034】本発明の蛋白質の製造方法によれば、従来
の方法では目的蛋白質が宿主細胞に対して何らかの毒性
を有していたり、宿主のプロテアーゼによって分解され
てしまったり、可溶化が困難な封入体を形成してしまっ
たりすることにより大量発現が困難であった蛋白質であ
っても、容易に大量に製造することができる。
【0035】
【実施例】以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説
明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるもの
ではない。
【0036】(実施例1) (大腸菌シャペロニンGroEL連結体融合HBs抗原
及びGroESの共発現)大腸菌K12株ゲノムを鋳型
とするPCR(Polymerase chainre
action)法によって、大腸菌シャペロニンGro
EL遺伝子をクローニングした。このGroEL遺伝子
を用いて、GroEL遺伝子がそれぞれ一方向に1、
2、3、4、5、6又は7回連結した遺伝子断片が挿入
されたtrcプロモーター、pBR322由来複製領域
及びアンピシリン耐性遺伝子を有する発現ベクターpT
rc(GroEL)n(nは1〜7)を構築した。
【0037】得られた発現ベクターpTrc(GroE
L)nを大腸菌BL21(DE3)株に導入しカルベニ
シリン(100μg/mL)を含む2XY.T.培地
(バクトトリプトン16g、酵母エキス10g、NaC
l5g/L)で23℃、110rpmで24時間回転培
養し、シャペロニン連結体を発現させた。培養終了後、
回収した菌体を超音波で破砕した。遠心分離で上清を回
収後、SDS−PAGEによって分析した結果、(Gr
oEL)n が可溶性画分に大量発現していることが確
認できた。
【0038】同様に、鋳型として大腸菌K12株を用い
て、大腸菌由来コシャペロニンGroES遺伝子をクロ
ーニングした。得られたGroES遺伝子断片を、tr
cプロモーターを有する発現ベクターに挿入し、更にこ
のプロモーター及びrrnBターミネーター領域を含む
GroES発現領域を、p15A由来の複製領域及びク
ロラムフェニコール耐性遺伝子を有するベクターに挿入
することによってGroES発現ベクターpACYCG
roESを構築した。
【0039】得られた発現ベクターpACYCGroE
Sを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、クロラムフ
ェニコール(75μg/mL)を含む2XY.T.培地
で23℃、110rpmで24時間回転培養し、Gro
ESの発現を行った。培養終了後、菌体を回収し、超音
波で破砕した。遠心分離で上清を回収後、SDS−PA
GEによって分析した結果、GroESが可溶性画分に
大量発現していることが確認できた。
【0040】B型肝炎ウィルス表面抗原(HBs)遺伝
子をPCR法によって5’末端にNheIサイトを、
3’末端にXhoIサイトを設け、NheI及びXho
I処理が施されたpTrc(GroEL)7に導入し、
GroEL7量体とHBs(C末端に6残基のヒスチジ
ンが導入される)の融合蛋白質を合成する発現ベクター
pTrc(GroEL)7・HBsを構築した。
【0041】得られた発現ベクターpTrc(GroE
L)7・HBs及びpACYCGroESをBL21
(DE3)株に形質転換した後、カルベニシリン(10
0μg/mL)とクロラムフェニコール(75μg/m
L)とを含む2XY.T.培地で23℃、110rpm
で24時間回転培養し、GroEL−HBs抗原融合蛋
白質とGroESとの共発現を行った。
【0042】大腸菌破砕物の可溶性画分をSDS−PA
GEによって分離後、クマシーブリラントブルー染色に
よって分析した結果、GroEL−HBs抗原融合蛋白
質に相当するサイズのバンドが検出された。また、SD
S−PAGE後、ブロッティングメンブランに転写し、
抗HBs抗原ポリクローナル抗体を用いてウエスターン
ブロッティングを行った結果、GroEL7量体のみを
発現させた大腸菌抽出液では陰性であったが、融合蛋白
質の場合のみ、そのサイズ相当(約440KDa)の陽
性バンドが検出された。このことからHBs抗原がGr
oEL7量体との融合蛋白質として大腸菌可溶性画分に
発現することがわかった。HBs抗原単独での発現実験
では、大腸菌の可溶性画分にも沈殿画分にも同様のウエ
スターンブロッティングで陰性であった。また、コント
ロールとしてGroELとHBs抗原の融合蛋白質のみ
を発現させた場合、SDS−PAGEとウエスターンブ
ロッティングの結果から、GroEL−GroES共発
現法に比べてはるかに発現量は少ないと判断できた。
【0043】以上のことから、シャペロニンとHBs抗
原の融合蛋白質とコシャペロニンは互いに集合すること
によって複合体を形成し、HBs抗原をキャビティ内部
に完全に格納することによってHBsを大量発現させる
ことができるが、融合蛋白質のみでは立体障害やシャペ
ロニンリング構造の不安定さによってHBs抗原の大腸
菌に対する毒性が生じ、発現に抑制がかかったと考えら
れる。本実施例の発現法によって大腸菌培養液1L当た
り約70mgのHBsが可溶性画分に発現していた。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、目的蛋白質とシャペロ
ニンとの複合体を安定化させ、目的蛋白質をシャペロニ
ンの立体構造内部に完全に納めることにより、目的蛋白
質が宿主細胞に対して何らかの毒性を有する場合であっ
ても安定して目的蛋白質を大量に得ることのできる蛋白
質の製造方法を提供できる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B024 AA20 BA80 CA07 GA11 HA01 HA20 4B064 AG01 CA19 CC24 DA01 4H045 AA10 AA20 BA41 CA11 EA60 FA74

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも、同一宿主内で共存・複製可
    能な2種の異なるプラスミドに、シャペロニンと目的蛋
    白質との融合蛋白質をコードする遺伝子及びコシャペロ
    ニンをコードする遺伝子とをそれぞれ組み込む工程と、
    前記遺伝子が組込まれた2種のプラスミドを同一宿主に
    導入する工程と、前記プラスミドが導入された宿主内で
    前記融合蛋白質と前記コシャペロニンとを共発現させる
    工程とを有することを特徴とする蛋白質の製造方法。
  2. 【請求項2】 融合蛋白質においては、シャペロニンは
    そのN回連結体(Nは1〜20)であり、目的蛋白質は
    前記シャペロニンのN末端、C末端又はシャペロニン同
    士の間にペプチド結合を介して連結されていることを特
    徴とする請求項1記載の蛋白質の製造方法。
  3. 【請求項3】 コシャペロニンは、N回連結体(Nは1
    〜20)であることを特徴とする請求項1又は2記載の
    蛋白質の製造方法。
  4. 【請求項4】 シャペロニンは、バクテリア又は真核生
    物に由来することを特徴とする請求項1、2又は3記載
    の蛋白質の製造方法。
  5. 【請求項5】 宿主は、バクテリア、酵母、動物細胞、
    植物細胞、昆虫細胞、動物個体、植物個体又は昆虫個体
    であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の
    蛋白質の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1、2、3、4又は5記載の蛋白
    質の製造方法により製造される蛋白質であって、シャペ
    ロニン及びコシャペロニンからなる構造の内部に、シャ
    ペロニンとペプチド結合を介して封入されていることを
    特徴とする蛋白質。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN114395576B (zh) * 2020-08-31 2023-11-14 南京工业大学 一种提高梭菌中蛋白表达效率的方法

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