JP4047763B2 - 分子間相互作用解析法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬品開発等に必要なタンパク質とそのリガンド物質との分子間相互作用、特に受容体タンパク質とリガンド物質(阻害剤候補物質)の結合力を解析する分子間相互作用解析法に関する。
【0002】
【従来の技術】
受容体タンパク質に強く結合する物質は、受容体タンパク質の阻害剤医薬として有望であることから、受容体タンパク質とリガンド物質との結合力を解析することは医薬品開発において極めて重要である。
【0003】
従来、膜受容体タンパク質のような受容体タンパク質は組み換えDNA技術によって動物細胞や大腸菌等の宿主の膜画分に発現させ、その膜画分又はリポソーム等で再構成した精製標品を得て、アッセイに使用していた。しかし、膜受容体等の膜タンパク質は精製が困難であり、またリポソーム等で再構成するのも技術的に困難であった。また、未精製の膜画分を用いようとしても、粗精製品では結合の特異性を見極めるのが難しいという問題点があった。
【0004】
また、組み換えDNA技術によって宿主の膜画分に膜受容体タンパク質を発現させるにあたっても、産生された膜タンパク質受容体が宿主細胞の膜画分に蓄積してしまい、膜機能が阻害され毒性を発現することから、大量生産が困難であるという問題点があった。
【0005】
更に、受容体タンパク質とリガンド物質との結合力の解析にあたっては、金薄膜表面に受容体タンパク質を物理的又は化学的に固定化し、リガンド物質との結合に伴う質量変化を表面プラズモン共鳴シグナルとして検出し、相互作用を解析する方法が考えられているが、受容体タンパク質を金薄膜表面への固定化すると活性が低下してしまうという問題点もあった。
【0006】
現在ではヒトゲノムシーケンスが完了し、その解析もかなり行われ、受容体タンパク質の一種である膜受容体タンパク質の中でもGタンパク質共役型レセプタータンパク質(GPCR)は創薬のターゲットとなってきている。GPCRは少なくとも800種類存在すると考えられていることから、数多くの受容体タンパク質等を画一的な方法で簡便に安定的に調製し、アッセイに提供することが可能なレセプタ・リガンドアッセイ技術の開発が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、医薬品開発等に必要なタンパク質とそのリガンド物質との分子間相互作用、特にGPCRをはじめとする膜受容体タンパク質等の受容体タンパク質とリガンド物質(阻害剤候補物質)の結合力を解析する分子間相互作用解析法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シャペロニン遺伝子N回連結体(Nは1〜12)と目的タンパク質遺伝子とを含む遺伝子を転写・翻訳してなる、シャペロニンと目的タンパク質とがペプチド結合を介して連結した融合タンパク質と、目的タンパク質に対するリガンド物質との結合を解析する分子間相互作用解析法である。
以下に本発明を説明する。
【0009】
本発明の分子間相互作用解析法では、シャペロニン遺伝子N回連結体(Nは1〜12)遺伝子と目的タンパク質遺伝子とを含む遺伝子を転写・翻訳することによって、シャペロニンと目的タンパク質とがペプチド結合を介して連結した融合タンパク質を合成する。
上記シャペロニンとは、細胞に熱ショック等のストレスを与えるとにより誘導される、エネルギー物質であるATPの存在下又は非存在下でタンパク質の折り畳みを支援したり、構造安定化に貢献したりする分子シャペロンと呼ばれるタンパク質群のなかで、特に分子量が約60kDaのもののことであり、細菌、古細菌及び真核生物の全ての生物に存在し、タンパク質の折り畳み支援や変性防御の機能を有するものである。
【0010】
シャペロニンは図1に示したように、14〜18個のサブユニットからなる2層のリング構造(以下、構造体をシャペロニン複合体、リングをシャペロニンリングという)を形成する。例えば図1に示した大腸菌シャペロニンの場合、内径4.5nm、高さ14.5nmの空洞(キャビティ)を有する。シャペロニンリングのキャビティは60kDaの球状タンパク質一つが充分に納まる空間を有する。シャペロニン複合体は、このキャビティに様々なタンパク質の折り畳み中間体や変性タンパク質を一時的に納める機能を有し、タンパク質の折り畳み構造が形成されるとATPの分解と共役して納めていたタンパク質をキャビティから放出させる。
【0011】
細菌、古細菌由来のシャペロニンは、遺伝子工学的に大腸菌細胞質可溶性画分にシャペロニン複合体として容易に大量生産させることが可能である。このことは、様々のシャペロニンが大腸菌でも自己集合し、14〜18量体からなる2層リング構造のシャペロニン複合体を形成できることを示している。
【0012】
X線結晶構造解析によれば、上記シャペロニン複合体の立体構造は、シャペロニンのN末端及びC末端がともにキャビティ側に位置し、フレキシビリティの高い構造となっている。特にC末端の少なくとも20アミノ酸はフレキシビリティの高い構造を示す(Georgeら、2000、Cell、100、P.561−573)。
【0013】
本発明では、目的とするタンパク質をシャペロニンとの融合タンパク質として確実にシャペロニンリングのキャビティ内部に納めることにより、目的タンパク質の宿主への毒性、プロテアーゼによる分解及び封入体の形成を解消し、可溶性タンパク質として大量発現させることができる。すなわち、融合タンパク質として発現した目的タンパク質はシャペロニンリングのキャビティ内に納められることによって生体内環境から保護され、プロテアーゼによる消化を受けにくくなる。
【0014】
この時、目的タンパク質が宿主生物にとって重要な自然機構を阻害する性質を有するものであってもシャペロニンリングで生体内環境から仕切られているため阻害作用を発現することもない。また、強力なプロモーターによって発現が誘導された時にみられるようにタンパク質の折り畳み中間体同士が多数会合することなく、個々にシャペロニンリングのキャビティ内に固定されるため、宿主生物を用いた発現及び無細胞翻訳系に見られる封入体形成も抑えられる。また、シャペロニンは宿主生物の細胞質あるいは体液等の可溶性画分へ発現するため、シャペロニンリングに格納されたタンパク質が膜結合性又は膜貫通性のタンパク質であっても膜へ移行し宿主生物の膜機能を阻害することもなく、宿主生物に対する毒性は発現しない。また、いかなるタンパク質も同一のシャペロニンリングに格納されているため、同一の精製条件で融合タンパク質として精製可能である。
【0015】
更に、シャペロニン複合体は単に外部環境から仕切られたスペースを提供するだけでなく、タンパク質折り畳み機能を有するため、目的タンパク質の折り畳みも正常に行われ、かつ構造が安定することも期待できる。通常、シャペロニン複合体のタンパク質折り畳み反応は基質タンパク質(シングルポリペプチドとして)と1:1で起こるため、本発明においてシャペロニンによる折り畳み機能を発現させるには、シャペロニンリング又はシャペロニン複合体に1個の目的タンパク質が格納されるよう融合タンパク質を設計することが好ましいが、目的タンパク質の分子量によっては2分子以上格納させてもよい。
【0016】
上記シャペロニンとしては、細菌、古細菌及び真核生物いずれの由来のものでも使用可能である。上記シャペロニンとしては、リング構造への自己集合能が維持されていれば、野生型のみならずアミノ酸変異体も使用可能である。
【0017】
ただし、上記シャペロニン複合体の構造は由来生物によって若干相違する。例えば、細菌由来のシャペロニンリングのシャペロニンサブユニットの構成数は7個であり、古細菌由来のそれは8〜9個、真核生物由来のものは8個である。例えば、サブユニット構成数8個である古細菌由来のシャペロニンを用い、シャペロニン:目的タンパク質の数比2:1である融合タンパク質は、発現した融合タンパク質が4つ集まってシャペロニンリングを形成する。シャペロニン:目的タンパク質の数比4:1の融合タンパク質では、発現した融合タンパク質が2つ集まってシャペロニンリングを形成する。よって、シャペロニンの比率が高くなればなるほど、シャペロニン複合体のキャビティ内に格納可能な目的タンパク質の分子サイズは大きくなる。目的タンパク質が宿主細胞質にさらされる危険性を避けるためには、目的タンパク質1に対しシャペロニンが2以上が好ましい。シャペロニンリングは更に会合し、2層リングの構造をもつシャペロニン複合体を形成する。
【0018】
従って本発明では、使用するシャペロニンの由来により、シャペロニンと目的タンパク質の数の比を選択することが好ましい。シャペロニン:目的タンパク質の比は1:1〜12:1まで可能であるが、このましくは1:1〜9:1である。9:1よりもシャペロニンの比が大きくなると、発現する目的タンパク質の実質的な生産量が少なくなるとともに、シャペロニンによるリング形成も困難となることがある。
【0019】
具体的にはシャペロニンサブユニットの構成数が7個である細菌由来のシャペロニンを用いる場合には、シャペロニン複合体の構造形成のしやすさからシャペロニン:目的タンパク質の比は1:1又は7:1であることが好ましく、シャペロニンサブユニット構成数が8個である古細菌由来のシャペロニンを用いる場合には、シャペロニン複合体の構造形成のしやすさからシャペロニン:目的タンパク質の数の比は1:1、2:1、4:1又は8:1であることが好ましい。
【0020】
ただし、目的タンパク質の形状や分子量によっては上記以外の数比であってもよい。
例えば、大腸菌由来シャペロニンと目的タンパク質の比率が3:1である融合タンパク質であってもこれらが2又は3分子会合することによりリング構造を形成することもできる。
【0021】
上記融合タンパク質におけるシャペロニンと目的タンパク質の連結パターンとしては、目的タンパク質がシャペロニン複合体のキャビティ内に確実に納まるように、シャペロニンのN末端及び/又はC末端に結合することが好ましい。また、目的タンパク質がホモ又はヘテロ2量体で活性を発現する場合には、N末端及びC末端にそれぞれ同種又は異種の目的タンパク質が1サブユニットずつ結合することが好ましい。
また、目的タンパク質が宿主に対する毒性が極めて高い、又は、宿主プロテアーゼによる消化を極めて受けやすい場合には、目的タンパク質は複数のシャペロニン連結間に結合することが好ましい。
図2にサブユニット構成数が8個である古細菌由来のシャペロニンを用いた場合の融合タンパク質の設計例を示した。
【0022】
Mg−ATPの存在化では、シャペロニンは1mg/mL以上の高濃度で2層シャペロニンリングが更にリング面を介して可逆的に重合し、繊維状構造を形成する場合がある(Trent, J.D. et al.,1997,Proc.Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94,5383−5388: Furutani, M. et al., 1998, J. Biol. Chem. 273, 28399−28407)。本発明では融合タンパク質は生体内において高濃度で発現するため、繊維状構造が形成される可能性が有り、このことにより、目的タンパク質が宿主生物に毒性があってもシャペロニンリング内への格納が促進され、目的タンパク質の高度発現が達成される可能性がある。繊維状構造が形成されても希釈することによってシャペロニン二層リング構造に解離する。
【0023】
本発明において、シャペロニン遺伝子N回連結体(Nは1〜12)と目的タンパク質遺伝子とを含有する遺伝子を転写・翻訳することによって、シャペロニンと目的タンパク質とがペプチド結合を介して連結した融合タンパク質を合成する方法としては特に限定されないが、シャペロニン遺伝子N回連結体(Nは1〜12)及び目的タンパク質遺伝子をプラスミドに組み込み、このプラスミドをベクターとして宿主に導入する方法が好適である。
【0024】
ただし、一般的に、大腸菌等では発現プラスミドは10kb以上になるとコピー数が減少し、結果的に目的タンパク質の発現量が低下することがある。例えば、シャペロニンが8つ連結した融合タンパク質を1つのプラスミドで生産しようとすると、発現プラスミドは15kbp以上にもなり、効率的な発現ができないことがある。従って、プラスミドを導入するにあたっては、シャペロニン遺伝子N回連結体(Nは1〜12)遺伝子の大きさと目的タンパク質遺伝子の大きさ、得ようとする融合タンパク質におけるシャペロニンと目的タンパク質との数比等を考慮することが必要となる。
【0025】
具体的には、例えば、同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、融合タンパク質をコードする遺伝子と、シャペロニンのみをコードする遺伝子とをそれぞれに組み込み、これらのプラスミドを同一の宿主に導入する方法が好ましい。この方法によれば、シャペロニン複合体の構造を制御することができる。例えば、シャペロニンと目的タンパク質の数比が4:1である融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだベクターと、1個又は2〜4個連結したシャペロニンのみをコードする遺伝子を組み込んだベクターとを導入して共発現させることにより、シャペロニンと目的タンパク質の数比が8:1のシャペロニンリングを形成することが可能である。この方法は、プラスミドの巨大化を防止し、プラスミドコピー数の減少を防止することにより、発現量が低下するのを防ぐことができることから特に好ましい。
【0026】
プラスミドを導入した宿主内で融合タンパク質を発現させる方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、予めプラスミドにコードされていた薬剤耐性遺伝子に対応する薬剤を含有する培地中で宿主を培養する方法等が挙げられる。また、2種類のプラスミドを用いる場合であって、各々のプラスミドにコードされる薬剤耐性遺伝子がそれぞれ異なっている場合には、この2種類の薬剤の存在下で培養することにより、効率よく、融合タンパク質を発現させることができる。
【0027】
上記宿主としては特に限定されず、例えば大腸菌等の細菌、その他の原核細胞、酵母、昆虫細胞、哺乳動物培養細胞、植物培養細胞、及びトランスジェニック動・植物等が挙げられる。なかでも、高い細胞増殖特性を有し、培養操作が簡便でかつ培養に用いる栄養源等のコストが安価であることから、大腸菌等の細菌や酵母等が好適である。また、細菌、真核生物抽出液等を用いた無細胞翻訳系(例えばSpirin, A.S., 1991, Science 11, 2656−2664: Falcone, D. et al., 1991, Mol. Cell. Biol. 11, 2656−2664)でも、融合タンパク質を可溶性タンパク質として発現させることが可能である。
【0028】
また、上記融合タンパク質は、分子量が約65〜600kDaと巨大であるため、転写されたmRNAの特定のリボヌクレアーゼによる分解、翻訳された融合タンパク質のプロテアーゼによる2段階の切断を受ける可能性がある。この場合には、例えば、大腸菌を宿主として用いる場合はmRNAの分解に関与するリボヌクレアーゼであるRNaseE遺伝子を欠損させた大腸菌を宿主として用いることにより、mRNAの分解を抑制することが可能である(Grunberg−Manago,M.,1999,Annu.Rev.Gen.,33,193−227)。更に、翻訳後切断については、15〜25℃の低温で発現させたり、例えばlon、ompT(Phillips et al. 1984, J. Bacteriol 159,283−287)、又は、Clp、HslVU(Kanemori,M.et al.,1997,J.Bacteriol.,179,7219)等のプロテアーゼの構造遺伝子を欠損させた大腸菌を宿主として用いたりすることにより制御することが可能である。
【0029】
本発明の分子間相互作用解析法では、上述のようにして発現した融合タンパク質を精製して用いる。精製する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、以下のような方法等が挙げられる。
宿主内で融合タンパク質を発現させた後、細胞を回収し破砕し、上清を回収する。シャペロニン複合体は分子量が約840〜960KDaの巨大タンパク質であるため、40%飽和程度の硫安塩析によって沈殿させることができる。塩析により沈澱した融合タンパク質を回収した後、適当な緩衝液に溶解し、疎水クロマトグラフィーやイオン交換クロマトグラフィーによって融合タンパク質の存在するフラクションを回収する。これらを限外ろ過によって濃縮した後、濃縮液を5〜50mM程度の塩化マグネシウム及び50〜300mM程度の塩化ナトリウム又は塩化カリウムが含有された緩衝液を展開液としてゲルろ過を行い、排除限界直後のピークを回収することによって融合タンパク質を精製することができる。
【0030】
融合タンパク質のN末端又はC末端に6〜10個のヒスチジンが並んだヒスチジンタッグを連結させた場合には、ニッケル等の金属キレートカラムを用いれば、融合タンパク質の回収はより簡便で効率的である。また、用いるシャペロニンに対する抗体を用いて、免疫沈降又はアフィニティクロマトグラフィーによっても迅速・簡便に精製することが可能である。ただし、リング構造を形成した融合タンパク質のみを回収するためには、これらにイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過を組み合わせることが好ましい。
【0031】
シャペロニンが耐熱性のものである場合には、宿主の抽出液を60〜80℃で熱処理することによって大部分の宿主由来タンパク質を沈殿させることができ、融合タンパク質の精製をより簡略化させることができる。このとき、目的タンパク質自身が耐熱性を有していなくとも、シャペロニンの空洞内部に保持されているので、変性することはない。
【0032】
上記いずれの方法によっても、得られた精製融合タンパク質の形態は透過型電子顕微鏡によって観察可能である。目的タンパク質がシャペロニンリングに格納されている場合、外径14〜16nm程度のシャペロニン特有のリング構造が観察される。融合タンパク質のリング構造が不安定な場合は、精製の過程でマグネシウム及びATPを存在させておくことで、リング構造である融合タンパク質を効率的に回収することが可能である。
【0033】
目的タンパク質が膜結合性タンパク質又は膜貫通性タンパク質である場合には、融合タンパク質を精製した後、疎水性アルキル鎖がオクチル(C8)からドデシル(C12)である非イオン性界面活性剤等を作用させると、ミセルの直径がほぼ生体膜の相応し、シャペロニン内部で正しい構造を形成しやすい。上記非イオン性界面活性剤として、例えば、β−オクチルグルコシド、TritonX−100、Nonidet P−40、Tween20等が挙げられる。
【0034】
本発明の分子間相互作用解析法では、このようにして得られた融合タンパク質を用いて、目的タンパク質とそのリガンド物質との結合力を解析する。上記解析の方法としては特に限定されず従来公知の方法を用いることができ、例えば、蛍光共鳴エネルギー移動法、表面プラズモン共鳴シグナル法、水晶振動子を用いる方法等が挙げられる。なかでも、融合タンパク質と目的タンパク質のリガンド物質とのいずれか一方をセンサーチップ等の金属膜の表面に固定化した後、他方を作用させることによって結合体を形成させ、作用前後の質量変化を表面プラズモン共鳴シグナル法により検出する方法が好ましい。
【0035】
融合タンパク質又は目的タンパク質のリガンド物質を物理吸着又は化学結合によって金薄膜の表面に固定化する方法としては特に限定されず、化学結合としては、例えば、金薄膜の表面にカルボキシメチル基を導入し、融合タンパク質中のシャペロニンのアミノ基又はリガンド物質のアミノ基、チオール基、アルデヒド基と結合させる方法等が挙げられる。
【0036】
通常、タンパク質を担体に固定化すると、蛋白が変性したり、配向性が悪くなったりして活性が低下する場合が多い。しかし、本発明では、目的タンパク質がシャペロニンによって保護され、かつ、シャペロニンを介して固定化されているため、変性することはない。また、シャペロニンが固定化されれば、シャペロニンキャビティの内径が5nm程度あるため、リガンド物質が低分子化合物であれば受容体とリガンド物質とが充分に相互作用することのできる空間が維持されている。
【0037】
金薄膜表面に固定化された融合タンパク質又はリガンド物質に、リガンド物質又は融合タンパク質が結合して結合体が形成すると、質量変化が生じることから、この作用の前後の質量変化を表面プラズモン共鳴(SPR)シグナルとして検出することができる。すなわち、金属・液界面を光励起すると表面プラズモン共鳴(SPR)が発生する。生体分子の固定化されていない側の金薄膜に光を全反射させるように当てると、反射光の一部に反射光強度が低下した部分が観察される(SPRシグナル発生)。この光の暗い部分の現れる角度(屈折率変化)は、金属膜上での質量に依存する。金属膜上で融合タンパク質とリガンド物質との結合体が生成すると質量変化が生じ、光の暗い部分がシフトする。逆に解離により質量が減少すれば屈折率は元に戻る。すなわち、金属膜表面での質量変化を縦軸に採り、質量変化をリアルタイムでモニターすることが可能である。
【0038】
本発明の分子間相互作用解析法の対象となるタンパク質としては特に限定されず、例えば、セレトニンレセプター等の7回膜貫通型受容体(Gタンパク質共役型受容体:GPCR)等の膜受容体タンパク質、抗体、触媒抗体、タンパク質リン酸化酵素、プロテアーゼ等が挙げられる。
【0039】
本発明の分子間相互作用解析法によれば、目的タンパク質をシャペロニンとペプチド結合を介して結合した融合タンパク質の形で宿主細胞内に産生させるため、目的タンパク質が膜受容体タンパク質であっても、宿主生物に対する毒性が発現したり、宿主細胞のプロテアーゼによる消化を受けることなく、しかも、精製が非常に容易であることから、大量の目的タンパク質を容易に得ることができる。更に、目的タンパク質をシャペロニンと結合した融合タンパク質の形で金属膜の表面に結合させることにより、目的タンパク質の活性が低下してしまうということもない。
本発明の分子間相互作用解析法によれば、極めて容易に、タンパク質とリガンドとの相互作用を解析することができる。
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
実施例1
(古細菌シャペロニンTCPNβ8回連結体とセロトニンレセプターの融合タンパク質の発現)
配列1に示された古細菌シャペロニン(TCP)遺伝子の8回連結体発現ベクターpTCP8を作製した。次いで、配列2に示されたヒトセロトニンレセプター(5HT1A)遺伝子をPCRによって5’末端にNheIサイトを、3’末端にXhoIサイトを設け、NheI及びXhoI処理が施されたpTCP8に導入し、TCP8回連結体と5HT1Aの融合タンパク質を合成する発現ベクターpTCP8・5HT1Aを構築した。
【0042】
本発現ベクターpTCP8・5HT1Aを大腸菌BL21(DE3)株に形質転換した後、融合タンパク質の発現を行った。なお、コントロールとして発現ベクターpTCP8、及び5HT1A遺伝子単独を組み込んだ発現ベクターpTHT1Aをそれぞれ大腸菌BL21(DE3)株に形質転換した後、タンパク質の発現も行った。
【0043】
各大腸菌抽出液の上清と沈澱画分をSDS−PAGEによって分離した後、ブロッティングメンブランに転写し、抗5HT1Aポリクロナル抗体を用いてウエスターンブロッティングを行った。その結果、発現ベクターpTCP8・5HT1A保持の大腸菌抽出液サンプルのみにおいて、可溶性画分に融合タンパク質の分子量相当(約280KDa)の位置に強くバンドが検出された。一方、発現ベクターpTCP8又はpTHT1A保持の大腸菌抽出液サンプルでは可溶性画分には検出されなかった。ただし、pTHT1A保持の大腸菌抽出液サンプルでは不溶性画分に弱い強度のバンドが検出された。以上のことから、5HT1A遺伝子は単独では大腸菌可溶性画分で発現することはできないが、TCP8回連結体との融合蛋白として発現させることで、可溶性蛋白として発現することがわかった。
【0044】
次に、発現ベクターpTCP8・5HT1A保持の大腸菌抽出液を塩析し、塩析により沈澱した融合タンパク質を回収した後、50mMTris−HCl(pH7.5)緩衝液に溶解し、5mMMgCl/50 mMTris−HCl(pH7.5)に透析した。透析後、透析内液をDEAE−セファロース及びTSKgel SuperQ−5PWカラムによるアニオン交換クロマトグラフィー及びSuperose6(アマシャムファルマシアバイオテック社)によるゲルろ過によって融合タンパク質を精製した。
【0045】
精製標品を透過型電子顕微鏡によって観察したところ、シャペロニン特有のリング構造が観察された。以上のことから、5HT1AはTCPのキャビティ内部に1分子ごとに格納されることによって可溶性画分に発現したと考えられる。
【0046】
実施例2
(表面プラズモン共鳴シグナルによるセロトニンと古細菌シャペロニン・セロトニンレセプター融合タンパク質の結合状態の解析)
実施例1にて調製した融合タンパク質を、金薄膜がコートされたセンサーチップ表面に固定化した。なお、固定化は、予め金薄膜の表面にカルボキシメチル基を導入しておき、融合タンパク質中のシャペロニンのアミノ基と結合させることにより行った。
【0047】
得られたセンサーチップを、表面プラズモン共鳴シグナル解析装置(ビアコア社製、BIACORE X)にセットし、リガンドサンプルとして10〜100nMのセロトニン溶液をフローセルに流してリガンド物質を結合させた後、pH2.5のグリシン溶液によって解離させた。
この結合・解離に伴う質量変化をリアルタイムで測定し、解析ソフトウウェアBIAevaluation9.1(ビアコア社)によって解離定数(Kd)を算出したところ13.7nMであった。
【0048】
なお、コントロール実験として、TCP8回連結体のみをセンサーチップに固定化して同様の実験を行ったところ、セロトニンとの結合は全く検出されなかった。以上のことから、セロトニンレセプターはシャペロニンキャビティ内部に収納された融合タンパク質の状態でもセロトニンと強く結合できる構造をとっていると考えられた。
【0049】
実施例3
(大腸菌シャペロニンGroEL7回連結体とセロトニンレセプターの融合タンパク質の発現)
配列3に示された大腸菌シャペロニンGroEL7回連結体発現ベクターpTr(GroE)7を作製した。次いで、配列2に示されたヒトセロトニンレセプター(5HT1A)遺伝子をPCRによって5’末端にNheIサイトを、3’末端にXhoIサイトを設け、NheI及びXhoI処理が施された発現ベクターpTr(GroE)7に組み込み、GroEL7回連結体と5HT1Aの融合タンパク質を合成する発現ベクターpTr(GroE)7・5HT1Aを構築した。
【0050】
発現ベクターpTr(GroE)7・5HT1Aを大腸菌BL21(DE3)株に形質転換した後、融合タンパク質の発現を行った。なお、コントロールとして発現ベクターpTr(GroE)7及び5HT1A遺伝子単独を組み込んだ発現ベクターpTHT1Aをそれぞれ大腸菌BL21(DE3)株に形質転換した後、タンパク質の発現も行った。
【0051】
各大腸菌抽出液の上清と沈澱画分をSDS−PAGEによって分離した後、ブロッティングメンブランに転写し、抗5HT1Aポリクロナル抗体を用いてウエスターンブロッティングを行った。
その結果、発現ベクターpTr(GroE)7・5HT1A保持の大腸菌抽出液サンプルのみにおいて、可溶性画分に融合タンパク質の分子量相当(約280KDa)の位置に強くバンドが検出された。一方、発現ベクターpTr(GroE)7又はpTHT1A保持の大腸菌抽出液サンプルでは可溶性画分には検出されなかった。ただし、pTHT1A保持の大腸菌抽出液サンプルでは不溶性画分に弱い強度のバンドが検出された。以上のことから、5HT1A遺伝子は単独では大腸菌可溶性画分で発現することはできないが、GroEL7回連結体との融合蛋白として発現させることで、可溶性蛋白として発現することがわかった。
以上のことから、5HT1A遺伝子は単独では大腸菌可溶性画分で発現することはできないが、GroEL7回連結体との融合蛋白として発現させることで、可溶性蛋白として発現することがわかった。
【0052】
次に、発現ベクターpTr(GroE)7・5HT1A保持の大腸菌抽出液を塩析し、塩析により沈澱した融合タンパク質を回収した後、50mMTris−HCl(pH7.5)緩衝液に溶解し、5mMMgCl/50mMTris−HCl(pH7.5)に透析した。透析後、透析内液をDEAE−セファロース及びTSKgel SuperQ−5PWカラムによるアニオン交換クロマトグラフィー及びSuperose6(アマシャムファルマシアバイオテック社)によるゲルろ過によって融合タンパク質を精製した。
【0053】
精製標品を透過型電子顕微鏡によって観察したところ、シャペロニン特有のリング構造が観察された。以上のことから、5HT1AはGroELのキャビティ内部に1分子ごとに格納されることによって可溶性画分に発現したと考えられる。
【0054】
実施例4
(表面プラズモン共鳴シグナルによるセロトニンと大腸菌シャペロニン・セロトニンレセプター融合タンパク質の結合状態の解析)
実施例3にて調製した融合タンパク質を、金薄膜がコートされたセンサーチップ表面に固定化した。なお、固定化は、予め金薄膜の表面にカルボキシメチル基を導入しておき、融合タンパク質中のシャペロニンのアミノ基と結合させることにより行った。
【0055】
得られたセンサーチップを、表面プラズモン共鳴シグナル解析装置(ビアコア社製、BIACORE X)にセットし、リガンドサンプルとして10〜100nMのセロトニン溶液をフローセルに流してリガンド物質を結合させた後、pH2.5のグリシン溶液によって解離させた。
この結合・解離に伴う質量変化をリアルタイムで測定し、解析ソフトウウェアBIAevaluation9.1(ビアコア社)によって解離定数(Kd)を算出したところ15.3nMであった。
【0056】
なお、コントロール実験として、TCP8回連結体のみをセンサーチップに固定化して同様の実験を行ったところ、セロトニンとの結合は全く検出されなかった。以上のことから、セロトニンレセプターはシャペロニンキャビティ内部に収納された融合タンパク質の状態でもセロトニンと強く結合できる構造をとっていると考えられた。
【0057】
実施例5
(無細胞翻訳系による(TCPβ)4とセロトニンレセプターの融合タンパク質の合成)
無細胞翻訳系発現ベクターpIVEX2.3(ロシュダイアグノスティックス社)にTCPβ4回連結体とセロトニンレセプター(5HT1A)の融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだpIV(TCPβ)4・5HT1Aを構築した。
【0058】
このpIV(TCPβ)4・5HT1AをもとにRapid Translation System RTS500(ロシュダイアグノスティック社)を用いてタンパク質合成を行った。反応方法はこの無細胞翻訳システムのInstruction Manual (Version 1, June 2000)に従った。反応終了後、反応液からニッケルキレートクロマトグラフィーによって精製した。
【0059】
精製された融合タンパク質を5mMMgCl2/1mMDTT/50mMTris−HCl(pH7.5)緩衝液に透析後、透析内液を透過型電子顕微鏡で観察したところ、シャペロニン特有のリング構造が見られた。
【0060】
実施例6
(表面プラズモン共鳴シグナルによるセロトニンと古細菌シャペロニン・セロトニンレセプター融合タンパク質の結合状態の解析)
実施例5にて調製した融合タンパク質を、金薄膜がコートされたセンサーチップ表面に固定化した。なお、固定化は、予め金薄膜の表面にカルボキシメチル基を導入しておき、融合タンパク質中のシャペロニンのアミノ基と結合させることにより行った。
【0061】
得られたセンサーチップを、表面プラズモン共鳴シグナル解析装置(ビアコア社製、BIACORE X)にセットし、リガンドサンプルとして10〜100nMのセロトニン溶液をフローセルに流してリガンド物質を結合させた後、pH2.5のグリシン溶液によって解離させた。
この結合・解離に伴う質量変化をリアルタイムで測定し、解析ソフトウウェアBIAevaluation9.1(ビアコア社)によって解離定数(Kd)を算出したところ16.3nMであった。
【0062】
以上のことから、無細胞合成系で合成された古細菌シャペロニン・セロトニンレセプター融合タンパク質においても、セロトニンレセプターはシャペロニンキャビティ内部に収納された融合タンパク質の状態でもセロトニンと強く結合できる構造をとっていると考えられた。
【0063】
実施例7
(シングルリングGroELの作製)
大腸菌K12株ゲノムを鋳型とするPCR(Polymerase chainreaction)によって、大腸菌シャペロニンGroEL遺伝子をクローニングした。得られたGroELをDraIII及びBamHIで消化し、更にGroELの452番目のアミノ酸をグルタミン酸に、461、463、464番目のアミノ酸をアラニンに置換するよう設計された合成DNAを挿入することによってシングルリングを構成するGroEL、SR1を得た。pTrc99A発現ベクター(アマシャムファルマシア社製)を用いて、取得したSR1が一方向に1、2、3、4、5、6及び7回連結した遺伝子断片が挿入された発現ベクターpTrc(SR1)n(nは1〜7)を構築した。各発現ベクターを大腸菌BL21(DE3)株に導入しカルベニシリン(100μg/ml)を含む2XY.T.培地(バクトトリプトン 16g、酵母エキス 10g、NaCl 5g/L)で23℃、110rpmで24時間培養し、シャペロニン連結体を発現させた。培養終了後、回収した菌体を超音波で破砕し、遠心分離で上清を回収後、SDS−PAGE及びにクマシーブリリアントブルー染色によって分析した結果、(SR1)n(nは1〜7)が可溶性画分に大量発現していることが確認できた。
【0064】
実施例8
(シングルリングGroEL融合GPCRの発現)
ヒト由来の膜蛋白質である5種のG蛋白質共役型受容体(GPCR)である、セロトニン受容体(HT1aR)遺伝子、エンドセリンA受容体(ETAR)遺伝子、エンドセリンB受容体(ETBR)遺伝子、Vasoactive Intestinal Peptide1受容体(VIP1R)遺伝子、及び、CD97遺伝子に、PCRによって5’末端にNheIサイトを、3’末端にXhoIサイトを設け、NheI及びXhoI処理が施されたpTrc(SRI)7に導入し、更に、C末端にFLAGタッグを付加した発現ベクターpTrc(SR1)7HT1aRF、pTrc(SR1)7ETARF、pTrc(SR1)7TCFETBRF、pTrc(SR1)7VIP1RF、及び、pTrc(SR1)7CD97Fを作製した。得られた発現ベクターで大腸菌BLR(DE3)株を形質転換し、実施例7と同条件で発現を行った。超音波による菌体破砕後、上清を遠心分離によって回収し、抗FLAG抗体固定化ビーズ(シグマ社製)を用いて免疫沈降反応を行った。5種全てのGPCRについて、いずれも融合蛋白質として470kDa付近にバンドが確認でき、またそれら全てが、抗FLAG抗体に対して結合した。このことから、これら5種のGPCRの全てが大腸菌可溶性画分に発現することが確認できた。
【0065】
実施例9
(表面プラズモン共鳴法によるSR1七量体及びエンドセリンA受容体の融合タンパク質とエンドセリン−1との結合状態の解析)
金薄膜を蒸着し、その金薄膜上にリンカー層を介して結合したデキストランにカルボキシルメチル基が導入されたセンサーチップ(ビアコア社製、センサーチップCM5)にエンドセリン−1(ペプチド研究所、H−Cys−Ser−Cys−Ser−Ser−Leu−Met−Asp−Lys−Glu−Cys−Val−Tyr−Phe−Cys−His−Leu−Asp−Ile−Ile−Trp−OH)を、センサーチップ上のカルボキシル基とエンドセリン−1のアミノ基とを共有結合させることにより、センサーチップ上に固定した。得られたセンサーチップを、表面プラズモン共鳴解析装置(ビアコア社製、BIACORE X)にセットし、サンプルとして実施例8で得られた100μgのシングルリングGroEL七量体融合エンドセリンA受容体溶液をフローセルに流した。この、エンドセリン−1とエンドセリンA受容体との結合・解離に伴う質量変化をリアルタイムで測定し、エンドセリン−1とエンドセリンA受容体との特異的結合を検出した。また、対照として、エンドセリンA受容体を融合していないシングルリングGroEL七量体、シングルリング化を行っていないダブルリング構造のGroEL七量体融合エンドセリンA受容体、及び、シングルリング化を行っていないダブルリング構造のGroEL七量体も同様にフローセルに流し、エンドセリン−1との結合・解離に伴う質量変化を測定した。結果、図3に示すようにエンドセリン−1とシングルリングGroEL七量体融合エンドセリンA受容体と間の相互作用が確認でき、また、エンドセリン−1とシングルリングGroEL七量体との間に相互作用を認めることができなかったことから、エンドセリン−1とシングルリングGroEL七量体融合エンドセリンA受容体中のエンドセリンA受容体が特異的に結合したことがわかった。一方、ダブルリング構造のGroEL七量体融合エンドセリンA受容体、ダブルリング構造のGroEL七量体は、エンドセリン−1との相互作用を認めることができなかったことから、GroELのシングルリング化がエンドセリンA受容体のリガンド結合活性には有効であることが確認できた。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、医薬品開発等に必要なタンパク質とそのリガンド物質との分子間相互作用、特にGPCRをはじめとする膜受容体タンパク質等の受容体タンパク質とリガンド物質(阻害剤候補物質)の結合力を解析する分子間相互作用解析法を提供できる。
【配列表】
Figure 0004047763
Figure 0004047763
Figure 0004047763
Figure 0004047763

【図面の簡単な説明】
【図1】大腸菌シャペロニンの構造を示す模式図である。
【図2】サブユニット構成数が8個である古細菌由来のシャペロニンを用いた場合の融合タンパク質の設計例を示す模式図である。
【図3】エンドセリン−1固定化センサーチップを用いたエンドセリン−1と(SR1)7ETAR及び(SR1)7間における相互作用の測定結果を示す図である。

Claims (7)

  1. シャペロニン遺伝子N回連結体(Nは1〜12)と目的タンパク質遺伝子とを含む遺伝子を転写・翻訳してなる、シャペロニンと目的タンパク質とがペプチド結合を介して連結した融合タンパク質と、目的タンパク質に対するリガンド物質との結合を解析することを特徴とする分子間相互作用解析法。
  2. 融合タンパク質は、目的蛋白質がシャペロニンN回連結体(Nは1〜12)のN末端、C末端及び/又は複数のシャペロニン連結間に結合していることを特徴とする請求項1の分子間相互作用解析法。
  3. 融合タンパク質は、目的タンパク質がシャペロニンN回連結体(Nは1〜12)のN末端及びC末端に結合したものであって、両末端に結合した前記目的タンパク質は同種又は異種のものであることを特徴とする請求項1又は2記載の分子間相互作用解析法。
  4. 融合タンパク質は、シャペロニンのリング構造内部に目的タンパク質が格納された構造を有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の分子間相互作用解析法。
  5. 融合タンパク質と目的タンパク質に対するリガンド物質との結合の解析は、前記融合タンパク質と前記目的タンパク質のリガンド物質とのいずれか一方をセンサーチップ上に固定化した後、他方を作用させることによって結合体を形成させ、作用前後の質量変化を表面プラズモン共鳴シグナル法により検出することにより行うことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の分子間相互作用解析法。
  6. 融合タンパク質を無細胞蛋白合成系で調製することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の分子間相互作用解析法。
  7. 目的タンパク質はGタンパク質共役型膜受容体であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載の分子間相互作用解析法。
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