JP2006340717A - Gタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法及び評価用組成物、融合タンパク質、並びに、遺伝子 - Google Patents

Gタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法及び評価用組成物、融合タンパク質、並びに、遺伝子 Download PDF

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Abstract

【課題】被検化合物のGタンパク質共役型受容体(GPCR)に対する結合性を簡便かつハイスループットに評価する。
【解決手段】所望のGPCRのN末端側に折り畳み因子が連結され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結された融合タンパク質に、被検化合物を接触させ、次いで、前記Gタンパク質αサブユニットとGTP又はGTPアナログとの結合の有無を検出し、該検出結果によって前記被検化合物の前記GPCRに対する結合性を評価する。折り畳み因子の作用によりGPCRが可溶性の状態で解析でき、より簡便かつハイスループットにGPCRに対する結合性評価を行なうことができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、Gタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法及び評価用組成物、融合タンパク質、並びに、遺伝子に関し、さらに詳細には、折り畳み因子とGタンパク質共役型受容体との融合タンパク質を用いる簡便且つハイスループットなGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法、該評価方法に用いるための組成物、融合タンパク質、及び融合タンパク質をコードする遺伝子に関する。
細胞表面上の膜受容体タンパク質は、細胞外の情報を細胞内へ伝達する極めて重要な働きをしている。そのため、膜受容タンパク質に結合する物質はアゴニスト型医薬品やアンタゴニスト型医薬として候補物質となり、受容体タンパク質と被検化合物との結合性を解析することは、医薬品開発において極めて重要である。膜受容体タンパク質の中でも特にGタンパク質共役型受容体(G protein−coupled receptor。以下、「GPCR」と略記する。)は、現在市販されている低分子医薬品の約半数がこの受容体を標的としているため、医薬品開発において極めて注目を集めている。また、GPCRの約半数が、生体内で機能しているナチュラルリガンドが同定されていないオーファンGPCRであり、ナチュラルリガンドやその類縁化合物が新規医薬品の候補物質として期待されていることから、オーファンGPCRに対するリガンドのスクリーニングが熾烈を極めている。
GPCRは細胞膜を貫通して存在する受容体の1つであり、細胞膜を7回貫通し、そのN末端を細胞外に、C末端を細胞内に向けて存在している。GPCRは細胞外からリガンドの刺激を受け取り、細胞内のGタンパク質を活性化する機能を有する。Gタンパク質は、α、β、γの3種のサブユニットからなる3量体タンパク質であり、GPCRからの刺激を受け取ると、αサブユニットに結合していたGDP(グアノシン5’二リン酸)がGTP(グアノシン5’三リン酸)に置換され(GDP−GTP交換反応)、さらにαサブユニットがβ、γサブユニットから遊離する。遊離したGタンパク質αサブユニット−GTP結合体は、セカンドメッセンジャーを制御する細胞内の効果器を活性化すると共に、自分自身のGTPase活性によりGTPを加水分解し、αサブユニット−GDP結合体となり、再びβγサブユニットと会合し不活性型となる。
Gタンパク質αサブユニットは、そのGタンパク質の標的分子の種類によってGs、Gi、Gq、G12の4つのファミリーに分類されている。さらに、各ファミリーはメンバーに細分類されている。例えば、Giファミリーはαi-1〜4、αo-1〜2、αt-1〜2、αgust、αZの各メンバーに、G12ファミリーはα12、α13の各メンバーに細分類されている。
GPCRをターゲットとするリガンドのスクリーニングは、リガンドの候補となる被検化合物と所望のGPCRとの結合性を評価し、特異的に結合したものを選抜することにより行なわれる。結合性の評価方法は、大きく分けて、生きた動物細胞を用いる方法と、細胞膜画分を用いるインビトロの方法の2種類がある。動物細胞を用いる方法は、CHO細胞やHEK293細胞などの動物細胞に目的とするGPCR遺伝子を導入し、膜表面に発現させた細胞を用いてアッセイする方法である。すなわち、GPCRにリガンドが結合した際に共役するGタンパク質のシグナル伝達を介した細胞内カルシウム濃度変化やcAMPの濃度変化などのシグナル伝達を、蛍光プローブなどで検出する方法である。
細胞膜画分を用いるインビトロの方法は、GPCRとリガンドとの結合を検出する手段の違いによって、さらにいくつかに分類される。一つの例は、標識化したリガンド候補物質を用いる方法である。例えば、GPCRを膜表面に発現させた昆虫細胞や動物細胞から調製した細胞膜画分を基板上に固定化させ、リガンドの結合を検出する方法が開発されている。具体例としては、アミノプロピルシランコートしたスライドガラス上にGPCRが発現した膜画分を固定化したGPCRチップが開発されている(非特許文献1)。これは、放射性標識したリガンド候補物質を用いてGPCRとリガンドの結合を検出するものである。
リガンド候補物質を標識化しない方法としては、表面プラズモン共鳴法(SPR法)を用いてGPCRとリガンド候補物質との結合を検出する方法もある。
リガンド候補物質を標識化しない他の方法としては、GPCRとリガンドとの結合を、Gタンパク質への活性化に基づいて検出する方法が提案されている。例えば、GPCRのC末端にGタンパク質αサブユニットを連結させた融合タンパク質を、昆虫細胞に発現させ、該昆虫細胞から細胞膜画分を調製する。次に、該細胞膜画分を試料とし、リガンド候補物質と細胞膜画分中のGPCRとの結合にともなうGタンパク質αサブユニット上のGDP−GTP交換反応を、放射性標識したGTPを用いることにより検出し、GPCR−Gタンパク質αサブユニット−GTP連結体の形成を検出する方法が報告されている(非特許文献2)。
細胞膜画分を用いないインビトロの方法も提案されている。例えば、シャペロニンとGPCRとの融合タンパク質を構築し、該GPCRと被検化合物との結合性をSPR法で評価する方法が提案されている(特許文献1)。
特開2004−85542号公報 ファング(Fang)ら,ケムバイオケム(ChemBioChem),2002年,第3巻,p.987− 武田ら,ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of Biochemistry),2004年,第135巻,p.597−
しかし、生きた動物細胞を用いる方法は、GPCRの種類によっては動物細胞内で必要量が発現しないものが少なくなく、また、発現したとしても発現量を安定に制御することが困難という問題がある。また、GPCRの種類によっては共役するGタンパク質の種類が決まっているため、GPCR遺伝子だけでなく、対応するGタンパク質の遺伝子を細胞内に導入し、細胞内でシグナル伝達系を再構築する必要がある。さらに、これらの細胞を培養し、目的のタンパク質群を発現させるためには、費用、時間などがかさみ、培養途中のコンタミネーションの防止など熟練した操作が要求される。
また、標識化したリガンド候補物質を用いる方法は、あらかじめリガンド候補の全てに対して、蛍光標識等をする必要があり、操作が煩雑である。また、GPCRと非特異的に結合しているリガンド候補物質も検出してしまうため、リガンド候補物質に対して常に正しい評価ができるとは限らない。
また、SPR法を用いる方法は、リガンド候補物質を標識せずにすむ利点はあるものの、やはり、GPCRとリガンド候補物質との結合が特異的なものかどうかを判断することは困難である。これはシャペロニンとGPCRとの融合タンパク質を用いる方法でも同じである。
また、GPCR−Gタンパク質αサブユニット−GTPの複合体の形成を検出する方法は、放射性物質を使用するので特別な施設が必要であり、簡便でハイスループットな評価方法とは言えない。また、放射性標識の代わりに蛍光標識されたGTPを使用することも考えられるが、感度を上げるためには高価な細胞膜画分を大量に必要とするため、やはりハイスループット性に欠ける。
以上より、より簡便且つハイスループットなGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法が求められている。
上記した課題を解決するための請求項1に記載の発明は、被検化合物のGタンパク質共役型受容体に対する結合性を評価する方法であって、所望のGタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結された融合タンパク質に被検化合物を接触させたときの、前記Gタンパク質αサブユニットとGTP又はGTPアナログとの結合の有無を検出することにより、前記被検化合物の前記Gタンパク質共役型受容体に対する結合性を評価することを特徴とするGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法である。
また請求項2に記載の発明は、下記工程(1)〜(4)を包含することを特徴とする請求項1に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法である。
(1)前記融合タンパク質とGTP又はGTPアナログとを含有する反応液を調製する工程、
(2)工程(1)で調製した反応液に被検化合物を添加し、前記融合タンパク質に被検化合物を接触させる工程、
(3)工程(2)に続いて、前記Gタンパク質αサブユニットに結合したGTP又はGTPアナログの量を測定し、前記Gタンパク質αサブユニットとGTP又はGTPアナログとの結合の有無を検出する工程、
(4)工程(3)で前記Gタンパク質αサブユニットとGTP又はGTPアナログとの結合が検出された場合に、前記被検化合物は前記Gタンパク質共役型受容体に対する結合性を有すると評価する工程。
また請求項3に記載の発明は、前記工程(1)の反応液は、さらにGDPを含有することを特徴とする請求項2に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法である。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法においては、所望のGタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結された融合タンパク質を使用する。そして、被検化合物と融合タンパク質中のGPCRとの結合性を、Gタンパク質αサブユニットとGTP又はGTPアナログとの結合の有無をもって検出する。折り畳み因子は、他のタンパク質の折り畳み反応(フォールディング)を促進する作用を有するタンパク質の総称であり、この作用により他のタンパク質が正しく折り畳まれた可溶性タンパク質として得られる。したがって、本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法においては、融合タンパク質中のGPCRが可溶性タンパク質として存在することができる。その結果、不溶性の細胞膜画分を使用する従来の方法に比べて操作性がよい。さらに、組換えDNA技術によって当該融合タンパク質を生産することができるので、GPCRを多量に取得することができ、効率的である。なお、本発明における「折り畳み因子」には、マルトース結合タンパク質のように別の主な活性を持ちながらタンパク質を折り畳む作用も有するタンパク質も含むものとする。
請求項4に記載の発明は、前記折り畳み因子は、シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法である。
折り畳み因子は、酵素的に働くフォルダーゼと非酵素的に働く分子シャペロンとに分類される。シャペロニンは分子シャペロンの一種であり、分子量約6万のサブユニット(シャペロニンサブユニット)からなる複合タンパク質ある。代表的なシャペロニンは、シャペロニンサブユニット7〜9個からなるリング状構造体が2個重なった、総分子量80万〜100万程度のシリンダー状の巨大な複合タンパク質である。そして、シャペロニンはその内部に他のタンパク質を格納し、正しく折り畳むことができる。そして、本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法においては、シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体と、GPCRと、Gタンパク質αサブユニットとの融合タンパク質を用いる。かかる構成により、GPCRがシャペロニンの内部に格納されて折り畳まれ、より容易に可溶性の状態で存在することができる。さらに、シャペロニンサブユニットの遺伝子は単離されているものが多いので、組換えDNA技術によって当該融合タンパク質をより容易に生産することができる。
ここで、「シャペロニンサブユニット」という語は、単独の分子である場合(単独のシャペロニンサブユニット)の他に、融合タンパク質の一部である場合にも用いる。また、「シャペロニンサブユニット連結体」とは、2個以上のシャペロニンサブユニットがタンデムに連結された人工タンパク質をいう。さらに、N個のシャペロニンサブユニットからなるシャペロニンサブユニット連結体を、「シャペロニンサブユニットN回連結体」と呼ぶこととする。
請求項5に記載の発明は、前記シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体は、シングルリングを形成するものであることを特徴とする請求項4に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法である。
一般的なシャペロニンは、リング状構造体が2個重なったダブルリング構造を有しているが、リング状構造体1つからなる「シングルリング」のシャペロニンも知られている。そして、本発明のタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法においては、シングルリングを形成するシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体を用いる。かかる構成により、被検化合物がGPCRに結合する際の立体的な障害が少ない。
請求項6に記載の発明は、前記シャペロニンサブユニット連結体は、該シャペロニンサブユニットの由来によって決定される最適数のシャペロニンサブユニットが連結されたものであることを特徴とする請求項4又は5に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法である。
天然において、シャペロニンを形成しているシャペロニンサブユニットの合計数は、シャペロニンの由来によって概ね決まっている。例えば、細菌由来の場合は7個、古細菌由来の場合は8又は9個、真核生物由来の場合は8個(ミトコンドリア由来の場合は7個)である。すなわち、これらの数が各由来のシャペロニンにおける最適数である。そして、本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法においては、融合タンパク質中のシャペロニンサブユニット連結体が、該最適数のシャペロニンサブユニットからなる。かかる構成により、融合タンパク質がより安定なリング構造体を形成することができる。
請求項7に記載の発明は、前記シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体は、大腸菌由来のシャペロニンサブユニットからなることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法である。
大腸菌由来のシャペロニンはGroELと呼ばれ、その生化学的・物理化学的性質がよく研究されている。また、そのサブユニットの遺伝子も単離されている。したがって、本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法においては、融合タンパク質をコードする融合遺伝子を容易に構築することができ、融合タンパク質の調製が容易である。
請求項8に記載の発明は、前記GTPアナログは、GTP−γS又はGTP−PNPであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法である。
Gタンパク質αサブユニットはGTPase活性を有し、自身に結合したGTPを加水分解してGDPとして解離する作用を有する。本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法においては、加水分解が制限されたGTPアナログであるGTP−γS又はGTP−PNPを使用する。かかる構成により、より安定なGタンパク質αサブユニットとGTPアナログとの結合体を形成することができる。
請求項9に記載の発明は、前記GTP又はGTPアナログは、放射性標識されたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法である。
GPCRにリガンドが結合すると、Gタンパク質のαサブユニットに結合していたGDPがGTPと置換する(GDP−GTP交換反応)。この反応は、放射性標識されたGTP又はGTPアナログでも起こる。本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法においては、放射性標識されたGTP又はGTPアナログがGタンパク質αサブユニットに結合することを検出するので、感度が高い。
請求項10に記載の発明は、前記GTP又はGTPアナログは、蛍光標識されたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法である。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法においては、蛍光標識されたGTP又はGTPアナログを用いる。蛍光標識されたGTP又はGTPアナログは、Gタンパク質αサブユニットに結合すると強い蛍光を発し、遊離の状態ではクエンチングが起こり蛍光が弱まる。かかる構成により、Gタンパク質αサブユニットに結合した蛍光標識GTP又はGTPアナログが発する蛍光を正確に検出することができる。
請求項11に記載の発明は、Gタンパク質αサブユニットに結合したGTP又はGTPアナログと、結合しなかった遊離のGTP又はGTPアナログとを分離することなく、Gタンパク質αサブユニットに結合したGTP又はGTPアナログが発する蛍光を特異的に検出し、前記Gタンパク質αサブユニットとGTP又はGTPアナログとの結合の有無を検出することを特徴とする請求項10に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法である。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法においては、Gタンパク質αサブユニットに結合したGTP又はGTPアナログと、結合しなかった遊離のGTP又はGTPアナログとの分離、すなわちB/F分離を行なうことなくGタンパク質αサブユニットに結合したGTP又はGTPアナログが発する蛍光を特異的に検出する。かかる構成により、より簡便な操作でGタンパク質共役型受容体に対する結合性の評価を行なうことができる。
請求項12に記載の発明は、蛍光相関分光法又は蛍光偏光測定法によって、Gタンパク質αサブユニットに結合したGTP又はGTPアナログが発する蛍光を特異的に検出することを特徴とする請求項11に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法である。
かかる構成により、より高感度でGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価を行なうことができる。
請求項13に記載の発明は、前記融合タンパク質に代わって、Gタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結された融合タンパク質と、遊離のGタンパク質αサブユニットとを使用することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法である。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法では、Gタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結された融合タンパク質と、遊離のGタンパク質αサブユニットとを使用する。かかる構成により、融合タンパク質の分子量が小さくなり、融合タンパク質の調製が容易である。
請求項14に記載の発明は、請求項1〜12のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法に用いるための組成物であって、所望のGタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結された融合タンパク質を含有することを特徴とするGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物である。
本発明はGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物にかかり、所望のGタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結された融合タンパク質を含有する。本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物によれば、融合タンパク質中のGPCRが可溶性タンパク質として存在することができる。その結果、従来用いられていた不溶性の細胞膜画分(懸濁液)に比べて、容易かつ正確にGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価を行なうことができる。
請求項15に記載の発明は、請求項13に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法に用いるための組成物であって、Gタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結された融合タンパク質と、遊離のGタンパク質αサブユニットとを含有することを特徴とするGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物である。
本発明もGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物にかかり、Gタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結された融合タンパク質と、遊離のGタンパク質αサブユニットとを含有する。本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物においては、含有される融合タンパク質の分子量が小さいので、融合タンパク質の調製が容易である。
請求項16に記載の発明は、さらにGDPを含有することを特徴とする請求項14又は15に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物である。
また請求項17に記載の発明は、さらにGTP又はGTPアナログを含有することを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物である。
かかる構成により、被検化合物を用意するだけでGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価を行なうことができる。
請求項18に記載の発明は、前記GTP又はGTPアナログは、蛍光標識されたものであることを特徴とする請求項17に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物である。
かかる構成により、B/F分離を行なうことなくGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価を行なうことができる。
請求項19に記載の発明は、前記折り畳み因子は、シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体であることを特徴とする請求項14〜18のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物である。
また請求項20に記載の発明は、前記シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体は、シングルリングを形成するものであることを特徴とする請求項19に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物である。
また請求項21に記載の発明は、前記シャペロニンサブユニット連結体は、該シャペロニンサブユニットの由来によって決定される最適数のシャペロニンサブユニットが連結されたものであることを特徴とする請求項19又は20に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物である。
また請求項22に記載の発明は、前記シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体は、大腸菌由来のシャペロニンサブユニットからなることを特徴とする請求項19〜21のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物である。
かかる構成により、融合タンパク質中のGPCRがシャペロニンリング内に格納され、より容易に可溶性タンパク質として存在することができる。
請求項23に記載の発明は、Gタンパク質共役型受容体タンパク質のN末端側に折り畳み因子が結合され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結されていることを特徴とする融合タンパク質である。
本発明は融合タンパク質にかかり、Gタンパク質共役型受容体タンパク質のN末端側に折り畳み因子が結合され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結されていることを特徴とする。本発明の融合タンパク質によれば、融合タンパク質中のGPCRが折り畳まれ、可溶性の状態で存在することができるので、より簡便かつ正確に該GPCRに対する結合性評価を行なうことができる。
請求項24に記載の発明は、前記折り畳み因子は、シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体であることを特徴とする請求項23に記載の融合タンパク質である。
また請求項25に記載の発明は、前記シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体は、シングルリングを形成するものであることを特徴とする請求項24に記載の融合タンパク質である。
また請求項26に記載の発明は、前記シャペロニンサブユニット連結体は、該シャペロニンサブユニットの由来によって決定される最適数のシャペロニンサブユニットが連結されたものであることを特徴とする請求項24又は25に記載の融合タンパク質である。
また請求項27に記載の発明は、前記シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体は、大腸菌由来のシャペロニンサブユニットからなることを特徴とする請求項24〜26のいずれかに記載の融合タンパク質である。
かかる構成により、GPCRがシャペロニンリングの内部に格納され、より容易にGPCRが可溶性タンパク質として存在することができる。
請求項28に記載の発明は、請求項23〜27のいずれかに記載の融合タンパク質をコードする遺伝子である。
本発明の遺伝子は、Gタンパク質共役型受容体タンパク質のN末端側に折り畳み因子が結合され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結されている融合タンパク質をコードする。本発明の遺伝子を転写・翻訳することにより、GPCRに対する結合性評価に有用な該融合タンパク質を生産することができる。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法によれば、GPCRが可溶性の状態で解析するので、より簡便且つハイスループットにGPCRに対する結合性評価を行なうことができる。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物によれば、GPCRが可溶性の状態で存在するので、より簡便且つハイスループットにGPCRに対する結合性評価を行なうことができる。
本発明の融合タンパク質によれば、GPCRが可溶性の状態で存在することができるので、より簡便且つハイスループットにGPCRに対する結合性評価を行なうことができる。
本発明の遺伝子によれば、折り畳み因子とGPCRとGタンパク質αサブユニットとの融合タンパク質をより簡便に生産することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、詳しく説明する。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法においては、所望のGタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結された融合タンパク質を用いる。そして、該融合タンパク質に被検化合物を接触させ、そのときの前記Gタンパク質αサブユニットとGTP又はGTPアナログとの結合の有無を検出する。そして、その検出結果により、前記被検化合物の前記Gタンパク質共役型受容体に対する結合性を評価する。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法で用いる融合タンパク質は、所望のGタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結されたものである。これは、換言すれば、「折り畳み因子−所望のGPCR−Gタンパク質αサブユニット」の順で連結された融合タンパク質で、折り畳み因子側がN末端、Gタンパク質αサブユニット側がC末端となるものである。GPCRは疎水性が高いので単独では不溶性となるが、この融合タンパク質中のGPCRは、隣接する折り畳み因子の作用によって可溶性となる。その結果、従来のように不溶性の細胞膜画分を使用することなく、GPCRに対する結合性評価を行なうことができる。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法の好ましい実施形態は、4つの工程を包含する。第1の工程では、融合タンパク質とGTP又はGTPアナログとを含有する反応液を調製する。このとき、該反応液はさらにGDPを含有していることが好ましい。このとき、反応液中では、融合タンパク質中のGタンパク質αサブユニットとGTP又はGTPアナログとは結合せず、GTP又はGTPアナログが遊離状態で存在する。GDPが存在すると、GDPは融合タンパク質中のGタンパク質αサブユニットに結合している。
第2の工程では、第1の工程で調製した反応液に被検化合物を添加し、上記融合タンパク質に被検物質を接触させる。このとき、被検化合物が目的のリガンドであれば、該被検化合物が融合タンパク質中のGPCRに結合し、該GPCRに構造変化が起こる。その結果、融合タンパク質中のGタンパク質αサブユニットに、GTP又はGTPアナログが結合する。GDPが存在すると、融合タンパク質中のGタンパク質αサブユニットに結合していたGDPが、GTP又はGTPアナログと置き換わる(GDP−GTP交換反応)。一方、被検化合物が目的のリガンドでない場合はGPCRに結合しないので、GTP又はGTPアナログはGPCRに結合しない。
第3の工程では、第2の工程に続いて、Gタンパク質αサブユニットに結合したGTP又はGTPアナログの量を測定し、Gタンパク質αサブユニットとGTP又はGTPアナログとの結合の有無を検出する。換言すれば、Gタンパク質αサブユニットに結合したGTP又はGTPアナログと、遊離状態のGTP又はGTPアナログとを区別し、Gタンパク質αサブユニットに結合したGTP又はGTPアナログのみを選択的に測定する。そして、この測定結果をもってGタンパク質αサブユニットとGTP又はGTPアナログとの結合の有無を検出する。この際、Gタンパク質αサブユニットに結合したGTP又はGTPアナログのみを選択的に測定する方法として、後述する様々の実施形態が可能である。
第4の工程では、第3の工程で前記Gタンパク質αサブユニットとGTP又はGTPアナログとの結合が検出された場合に、上記被検化合物は上記Gタンパク質共役型受容体に対する結合性を有すると評価する。このようにしてGタンパク質共役型受容体に結合すると評価された被検化合物は、特定のGPCRに対するリガンドである可能性が高く、医薬品開発等に有用と考えられる。
好ましい実施形態では、GTP又はGTPアナログとして加水分解が制限されたGTPアナログを用いる。すなわち、そのようなGTPアナログは、Gタンパク質αサブユニットが有するGTPase活性により加水分解されにくい。該GTPアナログの例としては、GTPγSとGMP−PNP(GppNHp)が挙げられる。GTPγSは、GTPのγ位のPがSに置換されたGTPアナログである。またGMP−PNPは、GTPのγ位のリン酸結合に2級アミンが導入されたGTPアナログである。その他、GTPアナログとしては、トリニトロ基を有するGTPアナログなども用いることができる。
また、好ましい実施形態では、蛍光標識されたGTP又はGTPアナログを用いる。標識に用いる蛍光物質の例としては、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体などが挙げられる。特に、Gタンパク質αサブユニットに結合したときに、その蛍光強度が増強されるものが好ましい。例えば、モレキュラープローブ社から市販されているBODIPYR FL、BODIPY R6G、BODIPY TR、N-methylanthraniloyl(MANT) fluorophoreなどの蛍光プローブをGTP又はGTPアナログに結合させた蛍光標識体の場合、遊離状態ではGTPのもつクエンチング効果により蛍光が消光するが、Gタンパク質αサブユニットに結合した状態ではクエンチング効果が抑制され、本来持つ蛍光を発することが知られている。したがって、このような蛍光標識GTP又はGTPアナログを用いれば、遊離の蛍光標識GTP又はGTPアナログと、Gタンパク質αサブユニットに結合した蛍光標識GTP又はGTPアナログとを分離(B/F分離)することなく、一液系でGタンパク質αサブユニットに結合した蛍光標識GTP又はGTPアナログが発する蛍光を特異的に測定することができる。その結果、ハイスループット性の高いホモジニアスなアッセイを行うことが可能となる。
また、遊離状態ではクエンチングが起こる蛍光標識GTP又はGTPアナログを用いる場合は、蛍光相関分光法又は蛍光偏光法を用いることで、さらに高感度なアッセイが可能となる。例えば、蛍光相関分光法は、蛍光物質1分子レベルでそのブラウン運動を検出することができる測定方法であり、低分子化合物と高分子化合物のブラウン運動の違いを高感度に検出することができる。したがって、遊離の蛍光標識GTP又はGTPアナログ(低分子化合物)とG−タンパク質αサブユニットを介して融合タンパク質に結合した蛍光標識GTP又はGTPアナログ(高分子化合物)の違いを検出でき、B/F分離を行なうことなくさらに高感度な検出が可能である。一方、蛍光偏光法は、蛍光相関分光法や通常の蛍光分光法に比べて感度は劣るものの、やはり高分子化合物と低分子化合物の濃度変化を検出することができるため、B/F分離を行うことなく、ホモジニアスなアッセイが可能となる。なお、蛍光相関分光法や蛍光偏光法を適用するためには、GPCRやGタンパク質αサブユニットがコロイド状に分散するか可溶性の状態であることが必要であり、従来の不溶性の細胞膜画分を用いる方法では適用できない。
他方、GTP又はGTPアナログを放射性標識して用いることもできる。この場合は、B/F分離を行ない、Gタンパク質αサブユニットに結合した放射性標識GTP又はGTPアナログから発せられる放射線を検出する。
融合タンパク質に用いられる折り畳み因子は、分子シャペロンとフォルダーゼのいずれも使用可能である。分子シャペロンの例としては、シャペロニン、Hsp70等が挙げられ、フォルダーゼの例としては、ペプチジルプロリルシストランスイソメラーゼやプロテインジスルフィドイソメラーゼが挙げられるが、シャペロニンが特に好ましい。
シャペロニンは、グループ1型とグループ2型とに大別される。バクテリアや真核生物のオルガネラに存在するシャペロニンはグループ1型に分類され、いずれも分子量60kDaからなるシャペロニンサブユニット7つが環状に連なるリング構造を形成し、さらに2つのリングが2層構造を形成する、14量体のホモオリゴマーを形成する。これらはコシャペロニンと称される分子量約10kDaのタンパク質の環状7量体を補因子とする。一方、グループ2型シャペロニンは、真核生物の細胞質や古細菌にみられ、通常8〜9個のシャペロニンサブユニットからなるリングが2層に連なった16〜18量体のホモ、またはヘテロオリゴマーを形成している。本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法においては、融合タンパク質に含まれるシャペロニンとしてグループ1型及びグループ2型のいずれのシャペロニンも使用可能である。ここで、1型シャペロニンの例として、大腸菌由来のシャペロニンであるGroELのサブユニット(GroELサブユニット)の遺伝子の塩基配列と対応するアミノ酸配列を配列番号1に、対応するアミノ酸配列のみを配列番号2に示す。
バクテリア、古細菌由来のシャペロニンは、組換えDNA技術により、大腸菌の細胞質可溶性画分に大量生産させることがすでに可能である。さらに、そのようにして発現させた様々のシャペロニンサブユニットであっても、自己集合し、14〜18量体からなる2層リング構造のシャペロニン複合体を形成できることが、電子顕微鏡による観察でわかっている。
好ましい実施形態では、シャペロニンサブユニット連結体を使用する。すなわち、シャペロニンサブユニット連結体においても、単独のシャペロニンサブユニットを補充しながら、天然型シャペロニンと同様にリング構造を構成することがわかっている。そして、シャペロニンサブユニット連結体のC末端側に目的タンパク質を連結させた融合タンパク質において、その目的タンパク質がシャペロニンのキャビティー内に格納された状態で発現できることがわかっている(古谷ら,Protein Science,2005,14,341)。本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法で用いる融合タンパク質においても、このようなシャペロニンサブユニット連結体のC末端側に所望のGPCRを連結させ、さらに該GPCRのC末端側にGタンパク質αサブユニットを連結させることにより、該GPCRがシャペロニンのキャビティー内部に格納され、Gタンパク質αサブユニットがGPCRと連結した状態でシャペロニンキャビティー外部に提示させることが可能となる。また、シャペロニンサブユニットN回連結体の連結数(N)は、そのシャペロニンサブユニットの由来によって決定される最適数であることが特に好ましく、グループ1型シャペロニンのサブユニットを用いる場合には7個、グループ2型シャペロニンのサブユニットを用いる場合には8又は9個が好ましい。これらの最適数であれば、シャペロニンサブユニット連結体のみでシャペロニンリングを形成することができ、単独のシャペロニンサブユニットを補充する必要がない。
好ましい実施形態では、シングルリングを形成するシャペロニンを用いる。すなわち、近年、遺伝子工学的にアミノ酸変異を導入することにより、上述のような2層のリング構造を形成せず、シングルリングを形成するようなシャペロニンも得られるようになってきた。これらのシングルリングを形成するシャペロニンも、大腸菌の可溶性画分に大量発現することができ、ゲル濾過や電子顕微鏡及び画像解析等によって発現産物の大部分がシングルリングを構成していることが確認されている。そして、かかるシングルリングのシャペロニンでも他のタンパク質を収容できるキャビティーが充分に形成されることが確認されており、他のタンパク質の折り畳みを行うことができる(特開2004−43447号公報)。なお、真核生物のミトコンドリア由来のシャペロニン60は、通常、シングルリングとして精製されるため、特別の遺伝子操作なしで得ることができる(Viitanen et al.,1992,J.Biol.Chem.,267,695−698)。
また、人為的にシングルリングを形成させる手段としては様々な方法があり、いずれの手段を用いてもかまわない。最も一般的に用いられている方法は、リング間の疎水的相互作用や塩橋に寄与するアミノ酸に変異を導入することによって、リング間相互作用を抑制する方法である。例えば、大腸菌由来のシャペロニンGroEL(配列番号2)の場合、結晶構造解析より赤道ドメインの4つの荷電アミノ酸(R452、E461、S463、V464)がリング間の結合に強く寄与していていることが分かっている。そこで、452番目のアミノ酸残基(アルギニン)をグルタミン酸に、461(グルタミン酸)、463(セリン)、464番目(バリン)のアミノ酸残基をアラニンに置換することにより、リング間相互作用が軽減し、シングルリングを構成することが分かっている(Weissmanet al.,1995,Cell,83,577−587)。
さらに、様々な組み合わせのキメラシャペロニンを作製することによって、シャペロニンとしての機能を保持した状態のシングルリングシャペロニンを得ることもできる。例えば、大腸菌由来のシャペロニンGroELと根粒菌由来のシャペロニンとを用いてキメラシャペロニンを作製することによって、シングルリングシャペロニンを作製することができる(Jones et al.,1998,J.Mol. Biol.,282,789−800)。
また、本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法で用いる融合タンパク質において、シャペロニン等の折り畳み因子と所望のGPCRとが、リンカーとなるオリゴペプチドを介して連結されていてもよい。該オリゴペプチドの長さは2〜50アミノ酸程度が好ましい。同様に、所望のGPCRとGタンパク質αサブユニットとがリンカーとなるオリゴペプチドを介して連結されていてもよい。該オリゴペプチドの長さは1〜25アミノ酸程度が好ましい。
なお、本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法の他の様相として、融合タンパク質からGタンパク質αサブユニットが遊離されていてもよい。すなわち、所望のGPCRとGタンパク質αサブユニットとが連結されていない構成も可能である。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法は、全てのGPCRに適用可能である。例えば、クラスAに分類されるロドプシン型のGPCR、クラスBに分類されるセクレチンレセプター型のGPCR、クラスCに分類される代謝共役型GPCRまたはホルモンレセプター型GPCR、クラスDの真菌ホルモンレセプター型GPCR、クラスEのcAMPレセプター型GPCRなどに適用できる。また、本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法は、リガンドや、分類が未同定のオーファンレセプターにも適用できる。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法で用いる融合タンパク質に含まれるGタンパク質αサブユニットとしては、Gsファミリー、Giファミリー、Gqファミリー、及び、G12ファミリーに属する全てのαサブユニットが適用可能である。すなわち、Gsファミリーに属するαs-1〜4、αolf;Giファミリーに属するαi-1〜4、αo-1〜2、αt-1〜2、αgust、αZ;Gqファミリーに属するαq、α11、α14、α15、α16;G12ファミリーに属するα12、α13のいずれもが、本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法に適用可能である。ただし、GPCRとGタンパク質αサブユニットとの組み合わせは、リガンドの結合によるGPCRの構造変化に伴い、活性化することのできる(GDP及びGTPの親和性が変化するなど)Gタンパク質αサブユニットとの組み合わせであることが好ましい。その点において、Gqファミリーに属するα15及びα16は幅広く様々なGPCRと共役するためより好ましい。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法は、種々の用途に使用することができる。一つの用途は、オーファンGPCRに対するリガンドのスクリーニングである。例えば、アゴニスト型リガンドをスクリーニングする場合は、被検化合物とGPCRとの結合の有無を検出し、結合した候補化合物を所望のリガンドと判定することができる。具体的には、被検化合物が所望のアゴニスト型リガンドであれば、GPCRとの結合し、その結果、GTP又はGTPアナログがGタンパク質αサブユニットに結合するので、その結合性を蛍光強度等の増加をもって判定すればよい。一方、アンタゴニスト型リガンドをスクリーニングする場合は、既知のアゴニスト型リガンドと被検化合物とを反応系に共存させて競合的に結合させ、被検化合物とGPCRとの結合の有無を検出し、結合した候補化合物を所望のリガンドと判定することができる。具体的には、被検化合物が所望のアンタゴニスト型リガンドであれば、競合的結合により既知のリガンドの結合量が減少し、その結果、Gタンパク質αサブユニットに結合するGTP又はGTPアナログが減少するので、その結合性を蛍光強度等の減少をもって判定すればよい。本方法を用いたリガンドのスクリーニングによれば、より効率的に薬物候補となるリガンドをスクリーニングすることができる。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法の他の用途としては、ターゲットバリデーションが挙げられる。これは、既知又は未知の複数のGPCRに対して、ある目的のリガンドを用いて本方法を適用し、リガンドが結合したGPCRを選抜するものである。本方法を用いたターゲットバリデーションによれば、リガンドの作用機序の解明を効率的に行なうことができる。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法を具体的に行なう手順の例を、図1(a)〜(c)の模式図を参照しながら説明する。この例では、折り畳み因子として、シングルリングを形成するGroELサブユニット7回連結体を用いる。また、GTPアナログとして、蛍光標識したGTPγSを用いる。なお、図1(a)〜(c)において、GroELサブユニット7回連結体は「GroEL」と、所望のGPCRは「GPCR」と、Gタンパク質αサブユニットは「α」と、GTPγSは「GTP」と、GDPは「GDP」と、被検化合物は「L」と表示されている。
まず最初に、GroELサブユニット7回連結体と所望のGPCRとGタンパク質αサブユニットとの融合タンパク質を準備する。該融合タンパク質においては、シャペロニンサブユニットによるシングルリング構造体の内部にGPCRが格納され、Gタンパク質αサブユニットが外部に露出している(図1(a))。次に、試験管内で、該融合タンパク質とGDPと蛍光標識したGTPγSとを、適宜の緩衝液中で共存させる(図1(b))。このとき、該融合タンパク質中のGタンパク質αサブユニットにGDPが結合し、蛍光標識GTPγSは遊離している。また、クエンチングにより遊離の蛍光標識GTPγSから発せられる蛍光の強度は小さい。
次に、試験管内に被検化合物を添加する。このとき、被検化合物がGPCRに対する結合性を有するものであれば、GDP−GTP交換反応が起こり、蛍光標識GTPγSがGタンパク質αサブユニットに結合する。さらに、クエンチングが解消されて、結合した蛍光標識GTPγSから強い蛍光が発せられる(図1(c))。一方、蛍光標識GTPγSがGタンパク質αサブユニットに結合しない場合は、GDP−GTP交換反応は起こらないのでクエンチング状態のままである。
次に、B/F分離を行なわずに反応液の蛍光強度を測定する。すなわち、クエンチングが解消されて、蛍光標識GTPγSから強い蛍光が発せられる場合は、反応液全体の蛍光強度が増大する。一方、クエンチング状態の場合は、反応液全体の蛍光強度に変化は起こらない。よって、反応液全体の蛍光強度が増大したときに、被検化合物がGPCRに対する結合性を有すると評価することができる。この例では、反応液の蛍光強度を直接測定したが、この反応液を蛍光相関分光法又は蛍光偏光測定法に供してもよい。
なお、GPCRのN末端側にシャペロニンサブユニット7回連結体が連結された融合タンパク質と、遊離のGタンパク質αサブユニットとを用いても、図1(a)〜(c)と同様の手順でGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価を行なうことができる。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性の解析用組成物は、所望のGタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結された融合タンパク質を含有するものである。さらに、本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性の解析用組成物は、さらに、GDP、GTP又はGTPアナログを含んでいてもよい。また、折り畳み因子がシャペロニン又はシャペロニンサブユニット連結体で、シャペロニンサブユニットの合計数が最適数未満の場合は、単独のシャペロニンサブユニットを加えてもよい。これにより、融合タンパク質が補充された単独のシャペロニンサブユニットを伴ってリング構造体を形成することが可能となる。さらに、本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性の解析用組成物の形状は、適宜の緩衝液等に溶解させた溶液でもよく、凍結乾燥物でもよい。
また、本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性の解析用組成物の他の様相として、融合タンパク質からGタンパク質αサブユニットが遊離されていてもよい。すなわち、GPCRとGタンパク質αサブユニットとが連結されていない構成も可能である。
本発明の融合タンパク質は、Gタンパク質共役型受容体タンパク質のN末端側に折り畳み因子が結合され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結されているものである。本発明の融合タンパク質は、上記したGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法及び評価用組成物の主要な構成をなす。
本発明の融合タンパク質を製造する方法としては、シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体の遺伝子と、GPCR遺伝子と、Gタンパク質αサブユニット遺伝子を連結した融合遺伝子を作成し、該融合遺伝子を転写・翻訳させる方法が代表的である。好ましくは、該融合遺伝子を発現ベクターに組み込み、該組換えベクターを適宜の宿主に導入して形質転換体を作製し、該形質転換体内で発現させる。このときに用いる宿主としては特に限定はなく、例えば、バクテリア、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞等の細胞の他、動物個体、植物個体又は昆虫個体等も用いることができる。この中でも、培養コストが安価であり、培養日数が短く、培養操作が簡便な点から、バクテリア又は酵母が好ましく、特に、大腸菌が取り扱いの容易さの面でより好ましい。
ただし、一般的に、大腸菌では10kb以上の発現ベクター(プラスミド)を保有すると、プラスミドのコピー数が減少し、結果的に組換えタンパク質の生産量が低下することがある。折り畳み因子としてシャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体を用いる場合を例に挙げると、シャペロニンサブユニットが8個連結したシャペロニンサブユニット8回連結体の場合、その遺伝子をプラスミドに組み込むと、プラスミドのサイズは15kbp以上になる。しかし、このサイズのプラスミドは、大腸菌内で安定に保持されない可能性がある。したがって、大腸菌を宿主として用いる場合は、プラスミドに導入する融合遺伝子の大きさ、すなわち、シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体をコードする遺伝子の大きさ(連結数)、GPCR遺伝子の大きさ、及びGタンパク質αサブユニット遺伝子の大きさを考慮し、大腸菌内で安定に保持されるようサイズを選択すべきである。
また、大腸菌などの宿主で発現される融合タンパク質が巨大な場合は、転写されたmRNAの特定のリボヌクレアーゼによる分解、翻訳された融合タンパク質のプロテアーゼによる分解と、2段階の切断を受ける可能性がある。かかる場合には、例えば、mRNAの分解に関与するリボヌクレアーゼをコードするRNaseE遺伝子を欠損させた宿主を用いることでmRNAの分解を抑制することが可能である。また、翻訳後のプロテーゼによる分解を抑制するために、宿主細胞を15〜25℃の低温で培養したり、lon、ompT等のプロテアーゼの構造遺伝子を欠損させた大腸菌を宿主として用いることができる。
また、シャペロニンサブユニット連結体の遺伝子には、シャペロニンサブユニット遺伝子が繰り返し含まれるため、それを含むプラスミドが不安定となり、特に宿主とシャペロニンの由来生物が同じであるときには、プラスミドDNAとゲノムDNAの相同組換えが起こる可能性がある。宿主として大腸菌を用いる場合は、遺伝子の相同組換えに関する遺伝子であるrecAを欠損させた宿主を用いることで、プラスミドの安定性を向上させ、相同組換えを抑制することができる。
形質転換体内で融合タンパク質を発現させる方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、薬剤耐性遺伝子を有する発現ベクターを用いる場合は、対応の薬剤を含有する培地を用いて、形質転換体を培養することができる。このようにして、形質転換体内で融合タンパク質を発現させた後、該形質転換体を回収する。さらに回収した形質転換体を破砕して体抽出液を調製し、該菌体抽出液から融合タンパク質を精製する。
精製の手順としては、例えば、硫安塩析によって菌体抽出液中の融合タンパク質を沈殿させ、沈殿を回収した後、適当な緩衝液に溶解し、疎水クロマトグラフィーやイオン交換クロマトグラフィーによって融合タンパク質の存在するフラクションを回収する。これらを限外ろ過によって濃縮した後、濃縮液を5〜50mM程度の塩化マグネシウム及び50〜300mM程度の塩化ナトリウム又は塩化カリウムが含有された緩衝液を展開液としてゲルろ過を行い、排除限界直後のピークを回収することによって融合タンパク質を精製することができる。
さらに高度な精製が必要な場合は、融合タンパク質のN末端及びC末端にそれぞれ異なる2種類のタグをペプチド結合を介して付加しておくことが好ましい。例えば、融合タンパク質のN末端に6〜10個のヒスチジンが並んだヒスチジンタグを連結し、さらに、C末端に配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるFLAGタグを連結する。この場合、精製のファーストステップとしてニッケル等の金属キレートカラムを用いれば、N末端にヒスチジンタグの付加されていないタンパク質は除去され、さらにセカンドステップとして抗FLAG抗体を用いたアフィニティクロマトグラフィーによってC末端側にFLAGタッグの付加タンパク質は除去される。したがって、N末端及びC末端にそれぞれヒスチジンタグ及びFLAGタグが付加された融合タンパク質のみが精製されることになる。N末端及びC末端に付加されるタグとしてはヒスチジンタグ、FLAGタグ以外でもよく、他のタグとしては、例えば、Strepタグ、Sタグ等が挙げられる。
また、宿主を用いない方法として、バクテリア、真核生物抽出液等を用いた無細胞翻訳系(例えば、Spirin, A.S., 1991, Science 11, 2656−2664: Falcone, D. et al., 1991, Mol. Cell. Biol. 11, 2656−2664)でも、融合タンパク質を可溶性タンパク質として発現させることが可能である。
本発明の遺伝子は、本発明の融合タンパク質、すなわち、Gタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結された融合タンパク質をコードするものである。本発明の遺伝子は、折り畳み因子の遺伝子と、GPCRの遺伝子と、Gタンパク質αサブユニットの遺伝子とを連結することにより、製造することができる。例えば、折り畳み因子の遺伝子として、各由来のシャペロニンの遺伝子がすでに単離されている。また、各GPCRの遺伝子は米国Mammalian Gene Collection(MGC)などの遺伝資源保存機関で入手可能である。さらに、Gタンパク質αサブユニットの遺伝子も同様にMGCで入手可能である。
以下に実施例を掲げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
1.シングルリングGroEL7回連結融合タンパク質の発現系構築
大腸菌K12株ゲノムを鋳型とし、配列番号4に示されるプライマーGro−F1と配列番号5に示されるプライマーGro−R1をプライマー対としてPCRを行い、大腸菌シャペロニンGroELサブユニット遺伝子を含むDNA断片を増幅した。さらに、該増幅DNA断片をpT7blueTベクター(ノバジェン社)に導入した。次に、GroEL遺伝子中のDraIII−BamHI部分(1328〜1487番)を同制限酵素で切り出した後、配列番号6で表される塩基配列からなる2本鎖DNAを代わりに組み込み、GroELの452番目のアルギニン(R)をグルタミン酸(E)に、461番目のグルタミン酸(E)をアラニン(A)に、463番目のセリン(S)をアラニン(A)に、及び464番目のバリン(V)をアラニン(A)に置換する変異を導入した。これにより、シングルリングを形成する変異型GroELのサブユニットをコードする遺伝子SRIIをpT7blueTベクター中にクローニングできた。
pTrc99A発現ベクター(アマシャムファルマシア社)のNcoI/HindIIIサイトに配列番号7で表される塩基配列からなる2本鎖DNAを挿入し、pTrc99ALTCFベクターを構築した。これにより、NcoI、XbaI、ペプチドリンカーサイト(トロンビン翻訳サイト)、BglIIサイト、スペーサー配列、XhoIサイト、ペプチドリンカーサイト(エンテロキナーゼ(Ek)翻訳サイト)、その下流に、転写翻訳されてFLAGタグとなる塩基配列(FLAGサイト)及び終始コドン、さらにその下流にHindIIIサイトが導入された。すなわち、pTrc99ALTCFベクターによれば、NcoIサイトのATGが開始コドンとなった場合、各制限酵素サイトにORFを導入したときに、正しい読み枠となる。
上記で得られたSRII遺伝子をSpeI/XbaIで処理し、あらかじめXbaI処理しておいたpTrc99ALTCFベクターに、SRII遺伝子が正しい方向に翻訳されるように導入した。さらに、得られたベクターをXbaI処理し、同様にSpeI/XbaI処理して得られたSRII遺伝子を正しく翻訳されるように導入することにより、変異型GroELサブユニット遺伝子が2回連結された発現ベクターpTrc(SRII)2TCFを構築した。同様の手順を繰り返し、SRII遺伝子が一方向に7回連結した遺伝子断片が挿入された発現ベクターpTrc(SRII)7TCFを構築した。発現ベクターpTrc(SRII)7TCFの構成を図2に示す。図中、「groEL」はSRII遺伝子、「PS」はペプチドリンカーサイト、「CS」はクローニングサイト、「FLAG」はFLAGペプチドサイトを表す。すなわち、発現ベクターpTrc(SRII)7TCFはtrcプロモーターの下流に、順に、7個のSRII遺伝子((SRII)7)、ペプチドリンカーサイト(トロンビン翻訳サイト)、BglIIサイト、スペーサー配列、XhoIサイト、ペプチドリンカーサイト(Ek翻訳サイト)、FLAGペプチドサイト、終始コドン、及びターミネーターを有する。そして、BglII−XhoIサイトに目的タンパク質の遺伝子を挿入することにより、変異型GroELサブユニット7回連結体と目的タンパク質との融合タンパク質を発現することができる。なお、2つのペプチドリンカーサイトはいずれもプロテアーゼ(トロンビンとエンテロキナーゼ)の認識アミノ酸配列をコードするものであるが、本実施例では単なるペプチドリンカーをコードする塩基配列として機能する。
発現ベクターpTrc(SRII)7TCFを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、形質転換体を得た。この形質転換体を、カルベニシリン(100μg/mL)を含む2×Y.T.培地(16g/L バクトトリプトン、10g/L 酵母エキス、5g/L NaCl)で23℃、110rpmで24時間回転培養した。培養後、菌体を回収し、超音波処理により菌体を破砕した。菌体破砕液を遠心分離して上清を回収し、SDS−PAGEに供し、クマシーブリリアントブルーにてゲルを染色した。その結果、SRIIの7回連結体(SRII)7が可溶性画分に大量に発現していることが確認できた。また、得られた(SRII)7の上清をNative−PAGEで分析した結果、シングルリングとして存在していることが確認できた。
2.融合タンパク質の発現
ヒトエンドセリンA受容体(ヒトETAR)をモデルGPCRとし、ヒトETARのN末端側に変異型GroELサブユニット7回連結体(折り畳み因子)が連結され且つC末端側にGタンパク質α15サブユニット(Gタンパク質αサブユニット)が連結された融合タンパク質を、以下の手順で調製した。
ヒトETAR遺伝子のcDNAクローンを、OriGene社より入手した(アクセッションナンバー NM_001957、配列番号8)。このcDNAクローンを鋳型とし、配列番号9で表されるプライマーと配列番号10で表されるプライマーをプライマー対としてPCRを行い、ヒトETAR遺伝子を含むDNA断片を増幅した。この増幅DNA断片の両端にはプライマーに由来するBglIIサイト(5’末端)とXhoIサイト(3’末端)が導入された。この増幅DNA断片を、あらかじめBglII及びXhoIで消化したpTrc(SRII)7ベクターに導入し、pTrc(SRII)7ETARFベクターを作製した。
ヒトGタンパク質α15サブユニット(以下、単に「ヒトGタンパク質α15」、「α15」等と略記する。)のcDNAクローンを、OriGene社より入手した(アクセッションナンバー NM_002068、配列番号11)。このcDNAクローンを鋳型とし、配列番号12で表されるプライマーと配列番号13で表されるプライマーをプライマー対としてPCRを行い、ヒトGタンパク質α15遺伝子を含むDNA断片を増幅した。この増幅DNA断片の両端にはプライマーに由来するXhoIサイトが導入された。この増幅DNA断片を、あらかじめXhoIで消化したpTrc(SRII)7ETARFベクターに導入し、pTrc(SRII)7ETARG15Fベクターを作製した。本ベクターに含まれる融合遺伝子の構成の概略を図3に、対応する融合タンパク質の構成の概略を図4に示す。図3で、「groEL」は変異型GroELサブユニット遺伝子、「etar」はヒトETAR遺伝子、「g15」はヒトGタンパク質α15遺伝子を表す。また、図4で、「GroEL」は変異型GroELサブユニット、「ETAR」はヒトETAR,「G15」はヒトGタンパク質α15を表す。すなわち、pTrc(SRII)7ETARG15Fベクターは、変異型GroELサブユニット7回連結体遺伝子(SRII)7の下流に、ヒトETAR遺伝子、さらに下流にヒトGタンパク質α15遺伝子が連結された融合遺伝子を有する。そして、該融合遺伝子が発現することにより、「ヒトETARのN末端側に変異型GroELサブユニット7回連結体が連結され且つC末端側にヒトGタンパク質α15が連結された融合タンパク質」(以下、「SR−ETAR−G15」と略記することがある。)が生産される。なお、該融合遺伝子においては、(SRII)7とヒトETAR遺伝子との間にペプチドリンカーサイト(トロンビン翻訳サイト)があり、さらに、ヒトGタンパク質α15遺伝子の下流にペプチドリンカーサイト(エンテロキナーゼ翻訳サイト)及びFLAGペプチドサイトが連結されている。
pTrc(SRII)7ETARG15Fベクターを大腸菌BLR(DE3)株に導入し、形質転換体を得た。この形質転換体を上記1と同様にして培養し、菌体破砕後、上清を回収した。この上清に対して、抗FLAG抗体固定化ビーズ(シグマ社製)を用いて免疫沈降反応を行った。その結果、「変異型GroELサブユニット7回連結体−ヒトETAR−ヒトGタンパク質α15」の融合タンパク質(SR−ETAR−G15)の分子量に相当する510kDa付近の位置にバンドが検出された。これにより、目的の融合タンパク質(SR−ETAR−G15)が大腸菌可溶性画分に発現されることが確認された。
3.融合タンパク質の精製
10% 硫酸アンモニウム/10mM リン酸ナトリウム緩衝液で平衡化したHiTrap Butyl FFカラム 5mL(アマシャムファルマシア社)に、上記2で調製した菌体破砕液の上清を供した。次に、10mM リン酸ナトリウム緩衝液で溶出し、融合タンパク質を含む画分を回収した。この画分を、10mM CaCl2及び100mM NaClを含む50mM Tris−HCl(pH7.4)緩衝液に対して透析を行った。次に、透析内液を同じ緩衝液で平衡化した抗FLAG抗体カラム(シグマ社製)に供し、アフィニティクロマトグラフィーを行った。カラムを同緩衝液で洗浄後、1mM EDTAを含む溶液で融合タンパク質を溶出した。さらに、50mM HEPES-Tris(pH7.4)緩衝液であらかじめ平衡化したTSKgel G4000SWXLを用いたゲル濾過に供し、目的の融合タンパク質を精製した。
融合タンパク質を用いたリガンドの結合性評価とスクリーニング
1mM EGTA、1mM DTT、100mM NaCl、5mM MgCl2、0.02μL BODIPY FL GTPγS(モレキュラープローブ社)、及び3μM GDPを含む10mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝液200μLに、実施例1で精製した変異型GroELサブユニット7回連結体−ヒトETAR−ヒトGタンパク質α15融合タンパク質を200nMとなるように添加し、ヒトETARに対する結合性評価用組成物を調製した。この組成物に、エンドセリンA(被検化合物)を終濃度1nMとなるように添加し、20℃でインキュベートした。反応液中の蛍光強度(励起波長485nm/蛍光波長530nm)を測定したところ、エンドセリンA添加前と比較して蛍光強度が約3倍上昇していた。これは、GDPに代わってBODIPY FL GTPγSがヒトGタンパク質α15に結合したことを示し、エンドセリンAがヒトETARに結合したことを示していた。一方、1nM エンドセリンAを添加しなかったコントロール実験区では、蛍光強度の上昇は見られなかった。これにより、エンドセリンAがヒトETARに対する結合性を有すると評価した。
以上より、実施例1の融合タンパク質を用いて、ヒトETARに対するリガンドがスクリーニングできることが示された。
1.融合タンパク質の発現系構築
ヒトETARをモデルGPCRとし、ヒトETARのN末端側に変異型GroELサブユニット7回連結体(折り畳み因子)が連結され且つC末端側にGタンパク質αo-1サブユニット(Gタンパク質αサブユニット)が連結された融合タンパク質を、以下の手順で調製した。
ヒトGタンパク質αo−1サブユニット(以下、単に「ヒトGタンパク質αo」、「αo」等と略記する。)のcDNAクローンをATCCより入手した(ATCCナンバー 7496723、配列番号14)。このcDNAクローンを鋳型とし、配列番号15で表されるプライマーと配列番号16で表されるプライマーをプライマー対としてPCRを行い、ヒトGタンパク質αo遺伝子を含むDNA断片を増幅した。この増幅DNA断片の両端にはプライマーに由来するXhoIサイトが導入された。この増幅DNA断片を、あらかじめXhoIで消化した実施例1のpTrc(SRII)7ETARFベクターに導入し、pTrc(SRII)7ETARGoFベクターを作製した。本ベクターに含まれる融合遺伝子の構成は、図3に示される融合遺伝子においてヒトGタンパク質α15遺伝子(g15)に代わってヒトGタンパク質αo遺伝子が融合されたものである。そして、該融合遺伝子が発現することにより、「ヒトETARのN末端側に変異型GroELサブユニット7回連結体が連結され且つC末端側にヒトGタンパク質αoが連結された融合タンパク質」(以下、「SR−ETAR−Go」と略記することがある。)が生産される。
2.融合タンパク質の発現
pTrc(SRII)7ETARGoFベクターを、実施例1と同様の方法で大腸菌BLR(DE3)株に導入し、形質転換体を得た。この形質転換体を実施例1と同様の培地にて25℃で約40時間培養し、菌体の懸濁液を得た。この菌懸濁液を、Bugbuster(ノバジェン社)とリゾチームとの混液を用いた界面活性剤法に供し、菌破砕液を回収した。この上清に対して、抗FLAG抗体固定化ビーズ(シグマ社製)を用いて免疫沈降反応を行った。菌体破砕液上清についてSDS−PAGEにより発現を評価した。結果を図5(a)に示す。図5(a)はSDS−PAGEの結果を表す写真である。すなわち、「ヒトETARのN末端側に変異型GroELサブユニット7回連結体が連結され且つC末端側にヒトGタンパク質αoが連結された融合タンパク質」(SR−ETAR−Go)の分子量に相当する510kDa付近の位置にバンドが検出された(矢印参照)。これにより、目的の融合タンパク質(SR−ETAR−Go)が大腸菌可溶性画分に発現されることが確認された。
3.融合タンパク質の精製
上記2の菌体破砕液上清を、実施例1と同様のHiTrap Butyl FFカラムによる疎水性クロマトグラフィー、及び、TSKgel G4000SWXLによるゲル濾過に供し、SR−ETAR−Goを精製した。
4.融合タンパク質とナチュラルリガンドとの結合性
精製したSR−ETAR−Goを、0.01% トリトン305を含むTris−HCl緩衝液(pH7.5;150mM NaCl,10mM MgCl2,1mM EDTA、1mM GDPを含む)に終濃度44μg/mLとなるように溶解した。この溶液に125Iで放射性標識したエンドセリン−1(以下、「RIエンドセリン−1」と略記する。)(終濃度:0.01〜0.7nM)を添加し、37℃で18時間インキュベートした。SR−ETAR−Goに結合しなかった遊離のRI標識エンドセリン−1を遠心ゲル濾過カラムにより除去した後、SR−ETAR−Goに結合したRIエンドセリン−1の濃度(B)をγカウンターにより定量した。遊離の(未結合の)RIエンドセリン−1の濃度(F)については、結合したRIエンドセリン−1の濃度(B)の値を用いて算出した。なお、SR−ETAR−Goと非特異的に結合したRIエンドセリン−1の濃度について、未標識の100μM エンドセリン−1存在下で同様の操作により測定し、バックグラウンド値とした。縦軸をB/F、横軸をB(pM)としてスキャッチャードプロットを作成した(図6)。このスキャッチャードプロットからSR−ETAR−Goに特異的に結合するRIエンドセリン−1の結合定数を算出したところ、275pMであった。この値は、動物細胞等で発現させたヒトETARとエンドセリン−1の結合定数とほぼ同等であった。
以上より、SR−ETAR−Go中のヒトETARがエンドセリン−1との結合性を保持していることが確認された。
5.融合タンパク質中Gタンパク質の活性評価
150mM NaCl、10mM MgCl2、1mM EDTA、及び0.02μL BODIPY FL GTPγSを含む10mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝液200μLに、精製したSR−ETAR−Goを終濃度75μg/mLとなるように添加した。37℃でインキュベートした後、反応液中の蛍光強度(励起波長485nm/蛍光波長530nm)を経時的に測定した。コントロールとして、SR−ETAR−Goの代わりに「変異型GroELサブユニット7回連結体−ヒトETAR」融合タンパク質を用いたもの(コントロール1)、及び、SR−ETAR−Goを含む反応液に1mM GDPをさらに添加したもの(コントロール2)についても併せて評価した。測定結果を図7に示す。図7は、蛍光強度と経過時間との関係を表すグラフである。すなわち、コントロール1の場合には蛍光強度の上昇は見られなかったが、SR−ETAR−Goを含む組成物を用いた実験区(図7では「実施例」と表示)では蛍光強度の上昇が見られた。これは、SR−ETAR−Go中のGタンパク質αoに蛍光標識GTPγS(BODIPY FL GTPγS)が結合することにより、蛍光強度が上昇したことを示していた。一方、コントロール2の場合には蛍光強度の上昇は見られなかった。これは、1mM GDPの添加によりSR−ETAR−Go中のGタンパク質αoへの蛍光標識GTPγSの結合が阻害されたことを示していた。
以上より、SR−ETAR−Go中のGタンパク質αoがGDP及びGTPγSとの結合性を保持していることが確認された。
融合タンパク質を用いたリガンドの結合性評価とスクリーニング
150mM NaCl、10mM MgCl2、1mM EDTA、0.02μL BODIPY FL GTPγS、及び100μM GDPを含む10mM Tris−HCl(pH7.5)緩衝液200μLに、実施例3で精製したSR−ETAR−Goを終濃度75μg/mLとなるように添加し、ヒトETARに対する結合性評価用組成物を調製した。この組成物に、エンドセリン−1(被検化合物)を終濃度1μMとなるように添加し、25℃で3時間インキュベートした。インキュベート後、反応液中の蛍光強度(励起波長485nm/蛍光波長530nm)を測定した。コントロールとして、上記の結合性評価用組成物からエンドセリン−1を抜いた組成物を用いたものについても同様に測定した。測定結果を図8に示す。図8は各実験区における蛍光強度を表すグラフである。すなわち、上記の結合性評価用組成物を用いた実験区(図8では「実施例」と表示)ではコントロールと比較して高い蛍光強度を示した。これは、GDPに代わってBODIPY FL GTPγSがヒトGタンパク質αoに結合したことを示し、エンドセリン−1がヒトETARに結合したことを示していた。
以上より、実施例3の融合タンパク質を用いて、ヒトETARに対するリガンドがスクリーニングできることが示された。
1.融合タンパク質の発現系構築
ヒトエンドセリンB受容体(ヒトETBR)をモデルGPCRとし、ヒトETBRのN末端側に変異型GroELサブユニット7回連結体(折り畳み因子)が連結され且つC末端側にGタンパク質αoサブユニット(Gタンパク質αサブユニット)が連結された融合タンパク質を、以下の手順で調製した。
ヒトETBRのcDNAクローンを、Mammalian Gene Collectionより入手した(アクセッションナンバー BC014472、配列番号17)。このcDNAクローンを鋳型とし、配列番号18で表されるプライマーと配列番号19で表されるプライマーをプライマー対としてPCRを行い、ヒトETBR遺伝子を含むDNA断片を増幅した。この増幅DNA断片のN末端にはプライマーに由来するFbaIサイトが、C末端にはXhoIサイトがそれぞれ導入された。この増幅DNA断片を、あらかじめBglII/XhoIで消化した実施例3のpTrc(SRII)7ETARGoFベクターに導入した。これにより、pTrc(SRII)7ETARGoFベクター中のヒトETAR遺伝子がヒトETBR遺伝子に入れ替わり、pTrc(SRII)7ETBRGoFベクターが作製された。本ベクターに含まれる融合遺伝子の構成は、図3に示される融合遺伝子において、ヒトETAR遺伝子(etar)に代わってヒトETBR遺伝子、ヒトGタンパク質α15遺伝子(g15)に代わってヒトGタンパク質αo遺伝子が融合されたものである。そして、該融合遺伝子が発現することにより、「ヒトETBRのN末端側に変異型GroELサブユニット7回連結体が連結され且つC末端側にヒトGタンパク質αoが連結された融合タンパク質」(以下、「SR−ETBR−Go」と略記することがある。)が生産される。
2.融合タンパク質の発現
実施例3と同様にしてpTrc(SRII)7ETBRGoFベクターを大腸菌BLR(DE3)株に導入し、形質転換体を得た。実施例3と同様にしてこの形質転換体を培養し、菌体破砕液上清を調製・回収した。菌体破砕液上清についてSDS−PAGEにより発現を評価した。結果を図5(b)に示す。図5(b)SDS−PAGEの結果を表す写真である。すなわち、「ヒトETBRのN末端側に変異型GroELサブユニット7回連結体が連結され且つC末端側にヒトGタンパク質αoが連結された融合タンパク質」(SR−ETBR−Go)の分子量に相当する510kDa付近の位置にバンドが検出された(矢印参照)。これにより、目的の融合タンパク質(SR−ETBR−Go)が大腸菌可溶性画分に発現されることが確認された。
3.融合タンパク質の精製
実施例3と同様にして、上記2の菌体破砕液上清からSR−ETBR−Goを精製した。
1.融合タンパク質の発現系構築
ヒト由来Vasoactive Intestinal Polypeptide受容体(ヒトVIP1R)をモデルGPCRとし、ヒトVIP1RのN末端側に変異型GroELサブユニット7回連結体(折り畳み因子)が連結され且つC末端側にGタンパク質αi-1サブユニット(Gタンパク質αサブユニット)が連結された融合タンパク質を、以下の手順で調製した。
ヒトVIP1RのcDNAクローンを、Mammalian Gene Collectionより入手した(アクセッションナンバー BC064424、配列番号20)。このcDNAクローンを鋳型とし、配列番号21で表されるプライマーと配列番号22で表されるプライマーをプライマー対としてPCRを行い、ヒトVIP1R遺伝子を含むDNA断片を増幅した。この増幅DNA断片のN端にはプライマーに由来するBglIIサイトが、C末端にはXhoIサイトがそれぞれ導入された。この増幅DNA断片を、あらかじめBglII/XhoIで消化した実施例1のpTrc(SRII)7TCFベクターに導入し、pTrc(SRII)7VIP1RFベクターを作製した。
さらに、pTrc(SRII)7VIP1RFベクターのVIP1R遺伝子の下流にGタンパク質αi-1サブユニット遺伝子を導入するために、ヒトGタンパク質αi-1サブユニット(以下、単に「ヒトGタンパク質αi」、「αi」等と略記する。)のcDNAクローンを、ATCCより入手した(アクセッションナンバー BC026326、配列番号23)。このcDNAクローンを鋳型とし、配列番号24で表されるプライマーと配列番号25で表されるプライマーをプライマー対としてPCRを行い、ヒトGタンパク質αi遺伝子を含むDNA断片を増幅した。この増幅DNA断片の両端にはプライマーに由来するXhoIサイトが導入された。この増幅DNA断片を、あらかじめXhoIで消化した上記pTrc(SRII)7VIP1RFベクターに導入し、pTrc(SRII)7VIP1RGiFベクターを作製した。本ベクターに含まれる融合遺伝子の構成は、図3に示される融合遺伝子において、ヒトETAR遺伝子(etar)に代わってヒトVIP1R遺伝子、ヒトGタンパク質α15遺伝子(g15)に代わってヒトGタンパク質αi遺伝子が融合されたものである。そして、該融合遺伝子が発現することにより、「ヒトVIP1RのN末端側に変異型GroELサブユニット7回連結体が連結され且つC末端側にヒトGタンパク質αiが連結された融合タンパク質」(以下、「SR−VIP1R−Gi」と略記することがある。)が生産される。
2.融合タンパク質の発現
実施例3と同様にしてpTrc(SRII)7VIP1RGiFベクターを大腸菌BLR(DE3)株に導入し、形質転換体を得た。実施例3と同様にしてこの形質転換体を培養し、菌体破砕液上清を調製・回収した。菌体破砕液上清についてSDS−PAGEにより発現を評価した。結果を図5(c)に示す。図5(c)はSDS−PAGEの結果を表す写真である。すなわち、「ヒトVIP1RのN末端側に変異型GroELサブユニット7回連結体が連結され且つC末端側にヒトGタンパク質αiが連結された融合タンパク質」(SR−VIP1R−Gi)の分子量に相当する510kDa付近の位置にバンドが検出された(矢印参照)。これにより、目的の融合タンパク質(SR−VIP1R−Gi)が大腸菌可溶性画分に発現されることが確認された。
3.融合タンパク質の精製
実施例3と同様にして、上記2の菌体破砕液上清からSR−VIP1R−Giを精製した。
本発明のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法を具体的に行なう手順を表す模式図であり、(a)は、GroELサブユニット7回連結体と所望のGPCRとGタンパク質αサブユニットとの融合タンパク質の構造を表す模式図であり、(b)は、融合タンパク質とGDPと蛍光標識したGTPγSとを、適宜の緩衝液中で共存させた状態を表す模式図であり、(c)は、添加した被検化合物がGPCRに結合し、GDP−GTP交換反応が起こり、結合した蛍光標識GTPγSから強い蛍光が発せられる状態を表す模式図である。 発現ベクターpTrc(SRII)7TCFの主要部の構成を表す模式図である。 実施例1で構築したpTrc(SRII)7ETARG15Fべクターに含まれる融合遺伝子の構造の概略を表す模式図である。 図3の融合遺伝子に対応する融合タンパク質の構造の概略を表す模式図である。 (a)は実施例3におけるSDS−PAGEの結果を表す写真、(b)は実施例5におけるSDS−PAGEの結果を表す写真、(c)は実施例6におけるSDS−PAGEの結果を表す写真である。 実施例3で作成したスキャッチャードプロットを表すグラフである。 実施例3で作成した蛍光強度と経過時間との関係を表すグラフである。 実施例4で作成した各実験区における蛍光強度を表すグラフである。

Claims (28)

  1. 被検化合物のGタンパク質共役型受容体に対する結合性を評価する方法であって、所望のGタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結された融合タンパク質に被検化合物を接触させたときの、前記Gタンパク質αサブユニットとGTP又はGTPアナログとの結合の有無を検出することにより、前記被検化合物の前記Gタンパク質共役型受容体に対する結合性を評価することを特徴とするGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法。
  2. 下記工程(1)〜(4)を包含することを特徴とする請求項1に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法。
    (1)前記融合タンパク質とGTP又はGTPアナログとを含有する反応液を調製する工程、
    (2)工程(1)で調製した反応液に被検化合物を添加し、前記融合タンパク質に被検化合物を接触させる工程、
    (3)工程(2)に続いて、前記Gタンパク質αサブユニットに結合したGTP又はGTPアナログの量を測定し、前記Gタンパク質αサブユニットとGTP又はGTPアナログとの結合の有無を検出する工程、
    (4)工程(3)で前記Gタンパク質αサブユニットとGTP又はGTPアナログとの結合が検出された場合に、前記被検化合物は前記Gタンパク質共役型受容体に対する結合性を有すると評価する工程。
  3. 前記工程(1)の反応液は、さらにGDPを含有することを特徴とする請求項2に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法。
  4. 前記折り畳み因子は、シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法。
  5. 前記シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体は、シングルリングを形成するものであることを特徴とする請求項4に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法。
  6. 前記シャペロニンサブユニット連結体は、該シャペロニンサブユニットの由来によって決定される最適数のシャペロニンサブユニットが連結されたものであることを特徴とする請求項4又は5に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法。
  7. 前記シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体は、大腸菌由来のシャペロニンサブユニットからなることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法。
  8. 前記GTPアナログは、GTP−γS又はGTP−PNPであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法。
  9. 前記GTP又はGTPアナログは、放射性標識されたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法。
  10. 前記GTP又はGTPアナログは、蛍光標識されたものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法。
  11. Gタンパク質αサブユニットに結合したGTP又はGTPアナログと、結合しなかった遊離のGTP又はGTPアナログとを分離することなく、Gタンパク質αサブユニットに結合したGTP又はGTPアナログが発する蛍光を特異的に検出し、前記Gタンパク質αサブユニットとGTP又はGTPアナログとの結合の有無を検出することを特徴とする請求項10に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法。
  12. 蛍光相関分光法又は蛍光偏光測定法によって、Gタンパク質αサブユニットに結合したGTP又はGTPアナログが発する蛍光を特異的に検出することを特徴とする請求項11に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法。
  13. 前記融合タンパク質に代わって、Gタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結された融合タンパク質と、遊離のGタンパク質αサブユニットとを使用することを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法。
  14. 請求項1〜12のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法に用いるための組成物であって、所望のGタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結された融合タンパク質を含有することを特徴とするGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物。
  15. 請求項13に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価方法に用いるための組成物であって、Gタンパク質共役型受容体のN末端側に折り畳み因子が連結された融合タンパク質と、遊離のGタンパク質αサブユニットとを含有することを特徴とするGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物。
  16. さらにGDPを含有することを特徴とする請求項14又は15に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物。
  17. さらにGTP又はGTPアナログを含有することを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物。
  18. 前記GTP又はGTPアナログは、蛍光標識されたものであることを特徴とする請求項17に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物。
  19. 前記折り畳み因子は、シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体であることを特徴とする請求項14〜18のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物。
  20. 前記シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体は、シングルリングを形成するものであることを特徴とする請求項19に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物。
  21. 前記シャペロニンサブユニット連結体は、該シャペロニンサブユニットの由来によって決定される最適数のシャペロニンサブユニットが連結されたものであることを特徴とする請求項19又は20に記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物。
  22. 前記シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体は、大腸菌由来のシャペロニンサブユニットからなることを特徴とする請求項19〜21のいずれかに記載のGタンパク質共役型受容体に対する結合性評価用組成物。
  23. Gタンパク質共役型受容体タンパク質のN末端側に折り畳み因子が結合され且つC末端側にGタンパク質αサブユニットが連結されていることを特徴とする融合タンパク質。
  24. 前記折り畳み因子は、シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体であることを特徴とする請求項23に記載の融合タンパク質。
  25. 前記シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体は、シングルリングを形成するものであることを特徴とする請求項24に記載の融合タンパク質。
  26. 前記シャペロニンサブユニット連結体は、該シャペロニンサブユニットの由来によって決定される最適数のシャペロニンサブユニットが連結されたものであることを特徴とする請求項24又は25に記載の融合タンパク質。
  27. 前記シャペロニンサブユニット又はシャペロニンサブユニット連結体は、大腸菌由来のシャペロニンサブユニットからなることを特徴とする請求項24〜26のいずれかに記載の融合タンパク質。
  28. 請求項23〜27のいずれかに記載の融合タンパク質をコードする遺伝子。
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