JP2017163984A - 苦味評価のための融合タンパク質および苦味評価方法 - Google Patents

苦味評価のための融合タンパク質および苦味評価方法 Download PDF

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【課題】苦味受容体とGタンパク質の融合タンパク質を安定発現する形質転換細胞を用いて新たな苦味の評価系を構築し、客観性および再現性の高い苦味評価方法を提供すること。
【解決手段】苦味受容体TAS2Rと、該苦味受容体に共役するGタンパク質αサブユニットとを含む融合タンパク質を安定発現する形質転換細胞を用い、該形質転換細胞に被験物質を接触させる工程と、該形質転換細胞内のカルシウム濃度を測定する工程を含むことを特徴とする被験物質の苦味評価方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、苦味評価のための融合タンパク質および苦味評価方法に関する。
飲食物の風味の評価方法としては、専らヒトの感覚に頼った官能評価が利用されている。官能評価は、官能検査、官能試験とも呼ばれ、ヒトの感覚(視覚、聴覚、味覚、臭覚、触覚)を使って対象物を評価するものであり、総合的な風味の評価には適しているが、経験、年齢、個人差、感覚疲労、体調・気分等の生理的変化などの主観的要素が評価に影響する欠点がある。そのため、より客観的な評価が可能であり、再現性が高い評価系の開発が望まれている。
甘み、うま味および苦味の伝達には、軟口蓋や舌に存在している味蕾にある味細胞に発現しているGタンパク質共役受容体(GPCR)が関与することが知られている。GPCRは、ヒトでは約750種のGPCR遺伝子があり、ヒトゲノム中での最大のスーパーファミリーである。750種の約半分は匂いを感ずる嗅覚受容体である。残り半分は、光や味物質、ホルモン、神経伝達物質などを認識する受容体である。ヒトGPCRのうち約150種類は、働きが分かっていないオーファン受容体であるとされている。またGPCRは、アミノ酸配列や機能の類似性に基づいて6つのサブグループに分類されている。GPCRは、Gタンパク質と共役して、カルシウムイオンなどのセカンドメッセンジャーを介し、情報を伝達する。Gタンパク質はGs、Gi、Gq、Gtなどのファミリーに分類され、それぞれ役割が異なっている。また、Gタンパク質は、Gα、Gβ、Gγのサブユニットから構成されている。例えば、Gqファミリーのαサブユニット(Gqα)はホスホリパーゼC-βの活性化に関わっている。
ヒトにおける苦味の認識は、苦味受容体、Taste type 2 receptor(TAS2R, T2R)で受容されていることが知られている。TAS2RはGPCRの一種であり、光受容を担うロドプシンに代表されるクラスAに属している。ヒトではおよそ25種類の苦味受容体が機能しているとされている。他のGPCRと同様に、TAS2Rに共役するGタンパク質は、Gα、Gβ、Gγのサブユニットから構成されており、Gαにグアノシン5’二リン酸(GDP)が結合していると、Gタンパク質は不活性型として三量体構造Gαβγを取ってTAS2Rと結合している。苦味物質がTAS2Rに結合すると、Gαに結合していたGDPがGTPに置換されて、GαとGβγ二量体、TAS2Rに解離する。解離したGα、Gβγ二量体はそれぞれが別のエフェクター分子に作用してシグナルを伝達すると考えられている。味細胞におけるGαは主にガストデューシン(gustducin)とされており、苦味受容体はガストデューシンと共役し、細胞内のセカンドメッセンジャーを介する情報伝達過程を経て、細胞内のカルシウム濃度が上昇し苦味シグナルを伝達することが知られている。
苦味受容体の活性化を検出する方法としては、他の一般的なGPCRと同様、細胞内のカルシウム動態測定がよく用いられている。このような細胞ベースのアッセイは、苦味物質や苦味調節物質の発見および検証に好ましい。培養細胞に一過性にTAS2Rおよびそれに共役するGαを発現させる方法もあるが、より安定した再現性のある結果を得るためには、TAS2RとGαの両者を安定発現させた細胞を用いた方法が望ましい。
Gαの中でもGα16は、HEK293細胞など哺乳類細胞において内在性のβ/γサブユニットと複合体を形成することができ、HEK293細胞を用いた評価系において感度のよい測定を可能とするが、味覚受容体との共役には適していない。一方、苦味受容体はガストデューシンと共役する。このことから、Gα15またはGα16の最後の44個のアミノ酸をガストデューシンの44個のアミノ酸に置換したキメラGαタンパク質を用いて、味覚シグナルを測定した例がある(特許文献1)。
GPCRとGαを融合タンパク質として発現させる方法を用いることによって、その受容体のリガンドの同定や機能の解明を実践できることが知られている(特許文献2、非特許文献1)。しかし、これらは、GABA受容体やβ2アドレナリン受容体の例であり、アミノ酸配列も機能も異なる味覚受容体について苦味物質や苦味調節物質の苦味応答性を安定して測定できる系は確立されていない。さらに、苦味受容体の中には、オーファン受容体の中に含まれ未同定の受容体があり、実際、苦味受容体との対応が未だ明らかでない苦味成分が多数残されている。
特表2006−524483号公報 特表2002−510480号公報
Bertin B, Freissmuth M, Jockers R, Strosberg AD, Marullo S., Cellular signaling by an agonist-activated receptor/Gs alpha fusion protein, Proc Natl Acad Sci U S A. 1994 Sep 13;91(19):8827-31
本発明は、苦味受容体とGタンパク質の融合タンパク質を安定発現する形質転換細胞を用いて新たな苦味の評価系を構築し、客観性および再現性の高い苦味評価方法を提供することを課題とする。また、本発明は、当該苦味評価方法に用いる新たな苦味の評価系を構築するための融合タンパク質、ポリヌクレオチド、発現ベクター、形質転換細胞を提供することを課題とする。
本発明は、上記課題を解決するために、以下の各発明を包含する。
[1]苦味受容体TAS2Rと、該苦味受容体に共役するGタンパク質αサブユニットとを含む融合タンパク質。
[2]前記Gタンパク質αサブユニットが、Gqファミリーのαサブユニットとガストデューシンのキメラタンパク質である前記[1]に記載の融合タンパク質。
[3]前記GqファミリーのαサブユニットがGα15またはGα16である前記[2]に記載の融合タンパク質。
[4]配列番号1、3、5、7、9、25または27に示されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を有する前記[3]に記載の融合タンパク質。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
[6]前記[5]に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
[7]前記[6]に記載の発現ベクターが導入されている形質転換細胞。
[8]前記[1]〜[4]のいずれかに記載の融合タンパク質を安定発現する前記[7]に記載の形質転換細胞。
[9]前記[7]または[8]に記載の形質転換細胞に被験物質を接触させる工程と、該形質転換細胞内のカルシウム濃度を測定する工程を含むことを特徴とする被験物質の苦味評価方法。
[10]前記[7]または[8]に記載の形質転換細胞に苦味物質と被験物質を接触させる工程と、該形質転換細胞内のカルシウム濃度を測定する工程と、得られたカルシウム濃度を苦味物質のみを接触させた形質転換細胞内のカルシウム濃度と比較し、カルシウム濃度を増加または低下させる被験物質を選択する工程を含む苦味調節物質のスクリーニング方法。
本発明によれば、客観性および再現性の高い苦味評価方法を提供することができる。また、本発明によれば、当該苦味評価方法に用いる新たな苦味の評価系を構築するための融合タンパク質、ポリヌクレオチド、発現ベクター、形質転換細胞を提供することができる。さらに、本発明の形質転換細胞を用いた苦味調節物質のスクリーニング方法を提供することができる。
ヒト苦味受容体と改変型Gα16gust40との融合遺伝子を挿入した発現ベクターの構造を示した図である。 TAS2R16-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて検出したサリシンの苦味応答の経時変化を示した図である。 TAS2R16-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて検出したサリシンの苦味応答に基づいて、サリシン添加濃度と応答強度の関係を示した図である。 TAS2R14-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて検出したアリストロキア酸の苦味応答の経時変化を示した図である。 TAS2R14-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて検出したアリストロキア酸の苦味応答に基づいて、アリストロキア酸添加濃度と応答強度の関係を示した図である。 TAS2R38-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて検出したフェニルチオカルバミド(PTC)の苦味応答の経時変化を示した図である。 TAS2R38-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて検出したフェニルチオカルバミド(PTC)の苦味応答に基づいて、フェニルチオカルバミド(PTC)添加濃度と応答強度の関係を示した図である。 TAS2R44-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて検出したアリストロキア酸の苦味応答の経時変化を示した図である。 TAS2R10-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて検出したククルビタシンBの苦味応答の経時変化を示した図である。 TAS2R10-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて検出したククルビタシンBの苦味応答に基づいて、ククルビタシンB添加濃度と応答強度の関係を示した図である。 TAS2R39-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて検出したエピカテキンガレートの苦味応答の経時変化を示した図である。 TAS2R39-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて検出したエピカテキンガレートの苦味応答に基づいて、エピカテキンガレート添加濃度と応答強度の関係を示した図である。 TAS2R46-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて検出したピクロトキシニンの苦味応答の経時変化を示した図である。 TAS2R46-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて検出したピクロトキシニンの苦味応答に基づいて、ピクロトキシニン添加濃度と応答強度の関係を示した図である。
〔融合タンパク質〕
本発明は、苦味受容体TAS2Rと、該苦味受容体に共役するGタンパク質αサブユニットとを含む融合タンパク質を提供する。本発明の融合タンパク質に含まれる苦味受容体は、TAS2Rファミリーに属するものであればどのような動物由来のTAS2Rでもよい。なかでも、ヒト、霊長類、げっ歯類、家畜(ウシ、ウマ、ブタ等)、ペット(イヌ、ネコ等)由来のTAS2Rが好ましい。特にヒトを対象とする飲食品の開発に利用する場合は、ヒトのTAS2Rを用いることが好ましい。
TAS2Rファミリーには多くの種類があり、ヒトでは25種類(TAS2R1、TAS2R3、TAS2R4、TAS2R5、TAS2R7、TAS2R8、TAS2R9、TAS2R10、TAS2R13、TAS2R14、TAS2R16、TAS2R38、TAS2R39、TAS2R40、TAS2R41、TAS2R42、TAS2R43、TAS2R44、TAS2R45、TAS2R46、TAS2R47、TAS2R48、TAS2R49、TAS2R50、TAS2R60)のTAS2Rが知られている(Chandrashekar J et al., The receptors and cells for mammalian taste. Nature, 2006; 444; 288-294)。本発明者らは、TAS2R10、TAS2R14、TAS2R16、TAS2R38、TAS2R39、TAS2R43、TAS2R44およびTAS2R46を用いて融合タンパク質を作製し、目的の効果を奏することを確認している。それゆえ、ヒトの他のTAS2Rや他の動物のTAS2Rを用いて作製した融合タンパク質も目的の効果を奏することが容易に推認できる。公知のTAS2Rのアミノ酸配列およびそれをコードする遺伝子の塩基配列は、公知のデータベース(DDBJ/GenBank/EMBL)等から取得することができる。
本発明の融合タンパク質に含まれるGタンパク質αサブユニットは、融合される苦味受容体に共役することができ、かつホスホリパーゼCを活性化するαサブユニットであることが好ましい。このようなGタンパク質αサブユニットとして、Gqファミリーのαサブユニットとガストデューシンのキメラタンパク質を好適に用いることができる。Gqファミリーのαサブユニットは、Gタンパク質共役型受容体(GPCR)と共役してホスホリパーゼCを活性化するαサブユニットであり、ガストデューシンは、TAS2Rが苦味物質と結合すると共役するGタンパク質αサブユニットであることが知られている。それゆえ、Gqファミリーのαサブユニットとガストデューシンのキメラタンパク質は、本発明の融合タンパク質に含まれるGタンパク質αサブユニットとして好適である。
Gqファミリーのαサブユニットには、Gαq、Gα11、Gα14、Gα15およびGα16が含まれ、これらはいずれも本発明の融合タンパク質に含まれるGタンパク質αサブユニットとして好適に用いることができる。好ましくは、Gα15またはGα16である。一般に、ヒトの遺伝子はGα16と称され、マウスやらラットのオルソログはGα15と称される。Gqファミリーのαサブユニットおよびガストデューシンはどのような動物由来のものでもよいが、ヒト、霊長類、げっ歯類、家畜(ウシ、ウマ、ブタ等)、ペット(イヌ、ネコ等)由来のものを好適に用いることができる。公知のGqファミリーのαサブユニットおよび公知のガストデューシンのアミノ酸配列およびそれをコードする遺伝子の塩基配列は、公知のデータベース(DDBJ/GenBank/EMBL)等から取得することができる。表1にヒト、マウス、ラット、ウシ、チンパンジー、アカゲザルのGα15またはGα16の塩基配列およびアミノ酸配列のアクセッション番号を示す。表2に、ヒト、マウス、ラット、ウシ、チンパンジー、アカゲザルのガストデューシンの塩基配列およびアミノ酸配列のアクセッション番号を示す。
Gqファミリーのαサブユニットとガストデューシンのキメラタンパク質は、GqファミリーのαサブユニットのC末端側の約36〜約44アミノ酸がガストデューシンのC末端側の約36〜約44アミノ酸に置換されたものを好適に用いることができる。より好ましくは、GqファミリーのαサブユニットのC末端側の約38〜約42アミノ酸がガストデューシンのC末端側の約38〜約42アミノ酸に置換されたものである。このようなGqファミリーのαサブユニットとガストデューシンのキメラタンパク質として、例えば特表2006−524483やUedaらの論文(Ueda T,et al., J. Neurosci,23,7376-7380(2003))に記載のキメラタンパク質を好適に用いることができる。
本発明の融合タンパク質において、TAS2RはN末端側に配置され、Gタンパク質αサブユニットはC末端側に配置される。本発明の融合タンパク質はTAS2RおよびGタンパク質αサブユニット以外のアミノ酸配列を含んでいてもよく、このようなアミノ酸配列としては、例えばタグ配列、リンカー配列、マーカー配列などが挙げられる。
本発明の融合タンパク質は、配列番号1、3、5、7、9、25または27に示されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を有することが好ましい。配列番号1に示されるアミノ酸配列はTAS2R14-改変型Gα16gust40融合タンパク質のアミノ酸配列、配列番号3に示されるアミノ酸配列はTAS2R16-改変型Gα16gust40融合タンパク質のアミノ酸配列、配列番号5に示されるアミノ酸配列はTAS2R38-改変型Gα16gust40融合タンパク質のアミノ酸配列、配列番号7に示されるアミノ酸配列はTAS2R43-改変型Gα16gust40融合タンパク質のアミノ酸配列、配列番号9に示されるアミノ酸配列はTAS2R14-改変型Gα16gust40融合タンパク質のアミノ酸配列、配列番号25に示されるアミノ酸配列はTAS2R10-改変型Gα16gust40融合タンパク質のアミノ酸配列、配列番号27に示されるアミノ酸配列はTAS2R39-改変型Gα16gust40融合タンパク質のアミノ酸配列である(実施例参照)。本発明の融合タンパク質は、配列番号1、3、5、7、9、25または27に示されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列以外の配列を含んでいてもよい。例えば、マーカー配列、タグ配列、リンカー配列などを含んでいてもよい。また、本発明の融合タンパク質は、配列番号1、3、5、7、9、25または27に示されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列のみからなるものであってもよい。
配列番号1に示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列が挙げられる。「1〜数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加された」とは、部位特異的突然変異誘発法等の公知の変異ペプチド作製法により欠失、置換もしくは付加できる程度の数(好ましくは10個以下、より好ましくは7個以下、さらに好ましくは5個以下)のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されることを意味する。このような変異タンパク質は、公知の変異ポリペプチド作製法により人為的に導入された変異を有するタンパク質に限定されるものではなく、天然に存在するタンパク質を単離精製したものであってもよい。また、実質的に同一のアミノ酸配列は、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも80%同一、より好ましくは少なくとも85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列が挙げられる。配列番号3、5、7、9、25または27に示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列も同様である。
配列番号1に示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する融合タンパク質としては、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有する融合タンパク質と実質的に同質の活性を有する融合タンパク質が好ましい。具体的には、融合タンパク質のTAS2R部分が苦味物質と結合した際の細胞内カルシウム濃度の変化量が、配列番号1に示されるアミノ酸配列からなる融合タンパク質と同等(例えば、約0.5〜2倍)であることが挙げられる。配列番号3、5、7、9、25または27に示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有する融合タンパク質も同様である。
本発明の融合タンパク質は、公知の遺伝子工学的手法により、本発明の融合タンパク質をコードする遺伝子を発現可能に挿入した組み換え発現ベクターを構築し、これを適当な宿主細胞に導入して組み換えタンパク質として発現させ、精製することにより製造することができる。また、本発明の融合タンパク質は、本発明の融合タンパク質をコードする遺伝子と公知のIn vitro転写・翻訳系(例えば、ウサギ網状赤血球、コムギ胚芽または大腸菌由来の無細胞タンパク質合成系等)を用いて、製造することができる。
〔ポリヌクレオチド〕
本発明のポリヌクレオチドは、上記本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドであればよい。ポリヌクレオチドは、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在することができる。ポリヌクレオチドは、二本鎖でもよく一本鎖でもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNAと RNAとのハイブリッドのいずれであってもよい。一本鎖の場合は、コード鎖(センス鎖)または非コード鎖(アンチセンス鎖)のいずれであってもよい。また、本発明のポリヌクレオチドは、その5’側または3’側でタグ標識(タグ配列またはマーカー配列)をコードするポリヌクレオチドに融合されていてもよい。さらに、非翻訳領域(UTR)の配列やベクター配列(発現ベクター配列を含む)などの配列を含むものであってもよい。
本発明のポリヌクレオチドは、公知のDNA合成法やPCR法等によって取得することができる。具体的には、例えば、TAS2Rをコードする遺伝子、Gqファミリーのαサブユニットをコードする遺伝子、ガストデューシンをコードする遺伝子の塩基配列情報を公知のデータベース(DDBJ/GenBank/EMBL)等から取得し、目的の遺伝子領域を増幅するためのプライマーを設計し、対応する動物のゲノムDNAまたはcDNA等を鋳型にしてPCR等を行い、その後に公知の遺伝子組換え技術を用いて各DNAを融合することにより、取得することができる。
配列番号1、3、5、7、9、25または27に示されるアミノ酸配列からなる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、例えば、それぞれ、配列番号2、4、6、8、10、26または28に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられるがこれに限定されない。配列番号1、3、5、7、9、25または27に示されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドであれば塩基配列は限定されない。好ましいポリヌクレオチドとしては、例えば、配列番号2、4、6、8、10、26または28に示される塩基配列のいずれかと80%同一、より好ましくは少なくとも85%、90%、92%、95%、96%、97%、98%または99%同一である塩基配列からなるポリヌクレオチドが挙げられる。
〔発現ベクター〕
本発明は、上記本発明の融合タンパク質を製造するため、または宿主に発現させるために使用される発現ベクターを提供する。本発明の発現ベクターは、本発明の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むものであれば特に限定されないが、RNAポリメラーゼの認識配列を有するプラスミドベクターが好ましい。発現ベクターの作製方法としては、プラスミド、ファージ、またはコスミドなどを用いる方法が挙げられるが特に限定されない。ベクターの具体的な種類は限定されず、宿主細胞中で発現可能なベクターを適宜選択することができる。すなわち、宿主細胞の種類に応じて、確実に本発明のポリヌクレオチドを発現させるために適宜プロモーター配列を選択し、これと本発明のポリヌクレオチドを各種プラスミド等に組み込んだベクターを発現ベクターとして用いればよい。本発明の発現ベクターを用いて形質転換された宿主を、培養、栽培または飼育した後、培養物などから慣用的な手法(例えば、濾過、遠心分離、細胞の破砕、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなど)に従って、本発明の融合タンパク質を回収、精製することができる。
発現ベクターは、少なくとも1つの選択マーカーを含むことが好ましい。このようなマーカーとしては、真核生物細胞培養についてはジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性遺伝子、大腸菌および他の細菌における培養についてはテトラサイクリン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。上記選択マーカーを用いれば、本発明のポリヌクレオチドが宿主細胞に導入されたか否か、さらには宿主細胞中で確実に発現しているか否かを確認することができる。あるいは、例えばオワンクラゲ由来の緑色蛍光タンパク質GFP(Green Fluorescent Protein)をマーカーとして用い、本発明の融合タンパク質をGFP融合タンパク質として発現させてもよい。
〔形質転換細胞〕
本発明は、上記本発明の発現ベクターが導入された形質転換細胞を提供する。本発明の形質転換細胞(以下、「本発明の細胞」という)は、本発明の融合タンパク質を一過性に発現するものでもよいが、本発明の融合タンパク質を安定発現するものが好ましい。宿主となる細胞は特に限定されず、本発明の発現ベクターが導入されて本発明の融合タンパク質を発現できる細胞であればどのような細胞も好適に用いることができる。例えば、大腸菌等の細菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが挙げられる。本発明の細胞を後述する苦味物質の評価に用いる場合は、哺乳動物細胞を用いることが好ましい。本発明の発現ベクターを宿主細胞に導入する方法、すなわち形質転換法も特に限定されるものではなく、電気穿孔法、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法等の従来公知の方法を好適に用いることができる。
本発明の細胞は、TAS2RとGタンパク質αサブユニットとの融合タンパク質を発現する細胞であるので、TAS2RとGタンパク質αサブユニットを別々の発現ベクターを用いて導入した共発現細胞と比較して、作製のステップを大幅に削減できる点で非常に有利である。すなわち、共発現細胞を作製する場合、1つ目の発現ベクターを導入して高発現細胞を選択した後、2つ目の発現ベクターを導入して再び高発現細胞を選択するという2段階のステップを行う必要がある。通常、発現ベクターを導入して安定性の良い高発現細胞を選択し取得するために1か月以上を要するため、導入された2つの遺伝子について、安定性の高い高発現細胞を選択し取得するためには2〜3か月を要する。また、共発現細胞では、細胞のゲノム上にランダムに二つの遺伝子が入るので、その遺伝子の挿入数や安定性、発現量が揃わない可能性が高い。実際に共発現細胞は、継代を繰り返すと導入した遺伝子が欠落し、苦味物質の検出感度が大幅に低下することを本発明者らは経験している(実施例6参照)。
これに対して本発明の細胞は、1つの発現ベクターを導入して高発現細胞を選択する1つのステップのみで作製することができると共に、TAS2RとGタンパク質αサブユニットの発現量は常に均等である。さらに、TAS2RとGタンパク質αサブユニットが繋がった1つのタンパク質として接近した場で発現しているので、互いに共役する効率が高いと考えられる。それゆえ、本発明の細胞は、以下の苦味の評価方法および苦味調節物質のスクリーニング方法における評価系として、非常に有用である。
〔苦味評価方法〕
本発明は、上記本発明の細胞を用いる苦味評価方法を提供する。本発明の苦味評価方法は、本発明の細胞に被験物質を接触させる工程および被験物質を接触させた細胞における細胞内カルシウム濃度を測定する工程を含むものであればよい。本発明の苦味評価方法により、被験物質が苦味を感じさせる物質であるか否かを評価することができる。また、本発明の苦味評価方法により、被験物質により生体が感知する苦味の程度(強さ)を評価することができる。
被験物質は特に限定されないが、ヒトに経口摂取される可能性のある物質であることが好ましい。具体的には、例えば飲食品に含まれる成分、医薬品に含まれる成分などが挙げられる。本発明の細胞に被験物質を接触させる方法としては、例えば本発明の細胞を培養している培地に被験物質を添加する方法が挙げられる。被験物質は培地に直接添加してもよく、適当な溶媒に溶解または懸濁して添加してもよい。また、被験物質を接触させない対照群を設けることが好ましい。
細胞内カルシウム濃度を測定する方法は特に限定されず、市販の試薬やキットを好適に用いることができる。被験物質との接触後に細胞内カルシウム濃度が上昇すれば、当該被験物質は苦味物質であると判断することができる。また、細胞内カルシウム濃度の上昇レベルが高い被験物質は苦味の程度が強いと判断することができる。
〔苦味調節物質のスクリーニング方法〕
本発明は、上記本発明の細胞を用いる苦味調節物質のスクリーニング方法を提供する。本発明のスクリーニング方法は、本発明の細胞に苦味物質および被験物質を接触させる工程、苦味物質および被験物質を接触させた細胞における細胞内カルシウム濃度を測定する工程、および得られたカルシウム濃度を苦味物質のみを接触させた本発明の細胞における細胞内カルシウム濃度と比較し、カルシウム濃度を増加または低下させる被験物質を選択する工程を含むものであればよい。
被験物質は特に限定されないが、経口摂取した際に毒性を発現しない物質が好ましい。本発明の細胞に苦味物質および被験物質を接触させる方法としては、例えば本発明の細胞を培養している培地に苦味物質および被験物質を添加する方法が挙げられる。苦味物質および被験物質は培地に直接添加してもよく、適当な溶媒に溶解または懸濁して添加してもよい。溶媒に溶解または懸濁する場合、両者の混合溶液を用いてもよく、それぞれ別の溶液にして用いてもよい。本発明のスクリーニング方法では、別途苦味物質のみを接触させる対照群を設ける。
細胞内カルシウム濃度を測定する方法は特に限定されず、市販の試薬やキットを好適に用いることができる。苦味物質のみを接触させた細胞の細胞内カルシウム濃度と比較して、被験物質を同時に接触させた細胞の細胞内カルシウム濃度が低下していれば、当該被験物質は苦味抑制作用を有すると判断できる。被験物質が細胞内カルシウム濃度を低下させる程度は特に限定されないが、例えば、苦味物質のみを接触させた細胞の細胞内カルシウム濃度を50%以下に低下させる被験物質が好ましく、25%以下に低下させる被験物質がより好ましい。
一方、苦味物質のみを接触させた細胞の細胞内カルシウム濃度と比較して、被験物質を同時に接触させた細胞の細胞内カルシウム濃度が増加していれば、当該被験物質は苦味増強作用を有すると判断できる。被験物質が細胞内カルシウム濃度を増加させる程度は特に限定されないが、例えば、苦味物質のみを接触させた細胞の細胞内カルシウム濃度を25%以上増加させる被験物質が好ましく、50%以上増加させる被験物質がより好ましい。
本発明のスクリーニング方法において、被験物質自身が苦味を有するか否かを確認する工程を設けてもよい。被験物質自身の苦味の有無を確認する工程は、上記本発明の苦味評価方法と同じ工程により確認することができる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1:ヒト苦味受容体遺伝子のクローニング〕
TAS2R14(塩基配列:配列番号11、アミノ酸配列:配列番号12)、TAS2R16(塩基配列:配列番号13、アミノ酸配列:配列番号14)、TAS2R38(塩基配列:配列番号15、アミノ酸配列:配列番号16)、TAS2R43(塩基配列:配列番号17、アミノ酸配列:配列番号18)、TAS2R44(塩基配列:配列番号19、アミノ酸配列:配列番号20)、TAS2R10(塩基配列:配列番号29、アミノ酸配列:配列番号30)、TAS2R39(塩基配列:配列番号31、アミノ酸配列:配列番号32)およびTAS2R46は、GenBankに登録されている配列情報を基に、ヒトゲノムDNA (BD Clontech)を鋳型として、PCR法により各遺伝子を増幅した。各受容体のコード領域のN末端側に、ラットソマトスタチン タイプ3の最初の45アミノ酸をタグ配列(塩基配列:配列番号21、アミノ酸配列:配列番号22)として付加し、pEAK10ベクター(Edge Biosystems)のAsc I-Not Iサイトに組込んだ。
〔実施例2:改変型Gα16gust40遺伝子のクローニング〕
苦味受容体は生体内では、ガストデューシンのようなGi型のGタンパク質と共役するが、Gα15やGα16のようなGq型のGタンパク質とは共役しないことが知られている。一方で、Gq型のGタンパク質はHEK293細胞のような哺乳類細胞において内在性のβ/γと複合体を形成することができ、ガストデューシンのようなGi型のGタンパク質よりも、より感度の高いシグナル伝達を可能とする。したがって、宿主細胞において、Gα16のようなGq型のαサブユニットのC末端側のアミノ酸配列をガストデューシンのようなGi型のαサブユニットのアミノ酸配列と置換したキメラタンパク質を苦味受容体と共に強制発現させることにより、細胞内のカルシウム濃度動態が観察できる。
ヒトGα16とヒトガストデューシンは、ともにORIGENEより購入した[GNA15 (NM_002068) Human cDNA Clone, GNAT3 (NM_001102386) Human cDNA Clone]。まず初めに、文献[Ueda T,et al., J. Neurosci,23,7376-7380(2003)]に従い、Gα16のアミノ酸配列のC末端側の40アミノ酸をガストデューシンのC末端側の40アミノ酸に置換させたキメラαサブユニットをコードする遺伝子を作製するため、購入したプラスミドを鋳型として各遺伝子をPCR法にて増幅し、pEAK10ベクター(Edge Biosystems)のEco RI-Not Iサイトに組込んだ。さらにGα16とガストデューシンの繋ぎ目のアミノ酸配列に対して部位特異的変異を導入して改変型Gα16gust40であるGα16(1-331)-AlaGluThr-Gustducin(317-354)を作製した(塩基配列:配列番号23、アミノ酸配列:配列番号24)。
〔実施例3:ヒト苦味受容体と改変型Gα16gust40との融合遺伝子の作製〕
融合遺伝子はClontechのIn-FusionTM Advantage PCR Cloning Kitを用いて作製した。最初にマニュアルに従って、実施例2で作成した改変型Gα16gust40/pEAK10ベクターをinverse PCRにより線状化した。次に作製した線状ベクターの末端と相同な配列を5’末端側に付加させた目的遺伝子を増幅するためのPrimerを設計し、SSTR3タグ-TAS2Rの遺伝子を増幅した。In-Fusion反応により、これらの遺伝子断片を融合させて、大腸菌に形質転換を行った。得られたコロニーを培養してプラスミドの精製を行い、そのDNA配列を確認して、目的の融合遺伝子を含むプラスミドを得た(図1参照)。
〔実施例4:苦味受容体と改変型Gα16gust40の融合遺伝子発現細胞の作製〕
TAS2R14、TAS2R16、TAS2R38、TAS2R43、TAS2R44、TAS2R10、TAS2R39およびTAS2R46の融合タンパク質をそれぞれ発現させたHEK293T細胞は次のように作製した。まず初めに各融合遺伝子を含んだプラスミドを制限酵素(Bgl IIまたはPme I)にて切断し、線状化した。HEK293T細胞(GE Healthcare等より入手可能)は60mm dishに4〜7 x 105 細胞数になるよう播いて、37℃、5%CO2を保持したインキュベーター内で培養しておいた。翌日、線状化プラスミド(6 μg)とLipofectamine 2000(15 μl)を別々のチューブ内にて各500 μlのOPTI-MEM(Invitrogen Corporation)に加えておき、室温にて5分間静置後、両者を混合した。20分後にこの混合液を静かにHEK293T細胞に添加し、CO2インキュベーター内で培養した。24時間後、細胞を常法に従って、dishより剥がし、培地で適宜希釈を行い、一部を12枚の100mm dishに播き直した。24時間の培養後、puromycinが最終濃度 10 μg/mlになるよう添加し、薬剤選抜を開始した。数日おきにpuromycinを加えた新鮮な培地に交換しながら、約3週間程度培養を継続した。薬剤耐性の細胞がそれぞれコロニーとして生育してくるので、順次ピッキングし、それぞれを個別に24穴もしくは6穴のプレート内に移し、培養を継続して増殖させ、25 cm2もしくは75 cm2のフラスコで培養後、ストックを作製した。計20〜30個のコロニーから取得した各セルラインのストックは、順次解凍して培養を行い、各受容体に応じたアゴニストである苦味成分を添加するスクリーニングアッセイを実施し、最も応答強度が高いセルラインを選んだ。
〔実施例5:苦味評価〕
(1)細胞内カルシウム濃度変化の測定
苦味受容体と改変型Gα16gust40の融合タンパク質を発現しているHEK293T細胞に苦味物質を投与すると、苦味を感知した苦味受容体は融合している改変型Gα16gust40と共役しPLCβ2を活性化させて、細胞内カルシウム量を増加させる。上記で作製した各細胞をアッセイの前日に96穴プレートに播種し、培養を開始した。24時間後に培養物から培地を取り除き、アッセイ用のバッファーに交換した(50 μL)。バッファーの組成は、10 mM 4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid (HEPES), 130 mM NaCl, 10 mM glucose, 5 mM KCl, 2 mM CaCl2, 1.2 mM MgCl2, pH7.4(NaOHにて調整)である。
次にFLIPR Calcium Assay Kit(Molecular Devices)の細胞内カルシウム蛍光指示薬Calcium 5を同バッファーで希釈し、各ウェルへ50 μLずつ添加後、CO2インキュベーター内で静置した。50分後に、37℃に設定しておいたFlexStation(Molecular Devices)装置内にプレートを移し、励起波長485nmにおける検出波長525nmの蛍光強度測定を開始した。測定開始から18秒後に、苦味物質溶液100 μLを添加し、細胞内カルシウム濃度変化を検出した。解析は、測定開始時から終了までの90秒間における蛍光強度の変化量の最大値(ΔF)を細胞の応答強度とした。各物質の応答強度はバッファーのみを添加した時の(ΔF)を差し引いて算出した。
(2)TAS2R16-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞による苦味評価
ヒトTAS2R16はサリシンやゲンチオビオースなどのβグルコピラノシドを特異的に認識する苦味受容体であることが知られている。そこで、TAS2R16-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて、サリシンのTAS2R16に対する苦味応答を検出した。サリシンは最終濃度が最大10 mMの濃度から3倍希釈のシリーズで添加した。
結果を図2に示した。図2において縦軸はサリシンを添加した際に生じる蛍光強度の変化量を示し、横軸は時間(秒)を示す。また、図2のデータから、サリシンの濃度とその投与により生じた蛍光強度の変化量をバッファーのみで生じた蛍光強度の変化量で差し引いたものを応答強度としてその関係を図3に示した。図3において縦軸はサリシンを添加した際に生じる蛍光強度の最大変化量(ΔF)−バッファーのみで生じる蛍光強度の最大変化量(ΔF)を示し、横軸はサリシンの最終濃度を示す。サリシンは濃度依存性の応答を示したことから、TAS2R16-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞は苦味の評価に使用できることが示された。
(3)TAS2R14-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞による苦味評価
ヒトTAS2R14は様々な苦味に応答する比較的特異性の低い苦味受容体であることが知られている。そこで、TAS2R14-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて、アリストロキア酸のTAS2R14に対する苦味応答を検出した。アリストロキア酸は最終濃度が最大10 μMの濃度から3倍希釈のシリーズで添加した。
結果を図4および図5に示した。アリストロキア酸は濃度依存性の応答を示したことから、TAS2R14-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞は苦味の評価に使用できることが示された。
(4)TAS2R38-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞による苦味評価
ヒトTAS2R38はフェニルチオカルバミド(PTC)の苦味受容体であることが知られている。またTAS2R38は一塩基多型により苦味応答性が全く異なることが報告されている(Curr Biol. 2005 Feb 22;15(4):322-7)。そこで、TAS2R38-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて、PTCのTAS2R38に対する苦味応答を検出した。PTCは最終濃度が最大100 μMの濃度から3倍希釈のシリーズで添加した。
結果を図6および図7に示した。PTCは濃度依存性の応答を示したことから、TAS2R38-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞は苦味の評価に使用できることが示された。
(5)TAS2R43-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞およびTAS2R44-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞による苦味評価
ヒトTAS2R43とTAS2R44はヒト苦味受容体の中で最も相同性が高く、また応答する苦味物質も共通しているものが多い。そこで、TAS2R44-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて、アリストロキア酸のTAS2R44に対する苦味応答を検出した。アリストロキア酸は最終濃度が最大10 μMの濃度から3倍希釈のシリーズで添加した。
結果を図8に示した。アリストロキア酸は濃度依存性の応答を示したことから、TAS2R44-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞は苦味の評価に使用できることが示された。結果を示していないが、アリストロキア酸はTAS2R43-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞に対しても同様の反応を示した。
(6)TAS2R10-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞による苦味評価
ヒトTAS2R10は様々な苦味に応答する比較的特異性の低い苦味受容体であることが知られている。そこで、TAS2R10-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて、ククルビタシンBのTAS2R10に対する苦味応答を検出した。ククルビタシンBは最終濃度が最大66.5μMの濃度から3倍希釈のシリーズで添加した。
結果を図9および図10に示した。ククルビタシンBは濃度依存性の応答を示したことから、TAS2R10-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞は苦味の評価に使用できることが示された。
(7)TAS2R39-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞による苦味評価
ヒトTAS2R39は様々な苦味に応答する比較的特異性の低い苦味受容体であることが知られている。そこで、TAS2R39-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて、エピカテキンガレートのTAS2R39に対する苦味応答を検出した。エピカテキンガレートは最終濃度が最大150 μMの濃度から2倍希釈のシリーズで添加した。
結果を図11および図12に示した。ククルビタシンBは濃度依存性の応答を示したことから、TAS2R39-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞は苦味の評価に使用できることが示された。
(8)TAS2R46-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞による苦味評価
ヒトTAS2R46は様々な苦味に応答する比較的特異性の低い苦味受容体であることが知られている。そこで、TAS2R46-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞を用いて、ピクロトキシニンのTAS2R46に対する苦味応答を検出した。ピクロトキシニンは最終濃度が最大5 mMの濃度から3倍希釈のシリーズで添加した。
結果を図13および図14に示した。ピクロトキシニンは濃度依存性の応答を示したことから、TAS2R46-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞は苦味の評価に使用できることが示された。
〔実施例6:苦味受容体およびガストデューシンの共発現細胞との比較〕
ヒトTAS2R16遺伝子を挿入した発現ベクターと、ヒトガストデューシン遺伝子を挿入した発現ベクターを別々にHEK293T細胞に挿入し、ヒトTAS2R16とヒトガストデューシンを安定発現するセルラインを選択した。具体的には、先ずpEAK10ベクターに組込んだソマトスタチンタグ付加ヒトTAS2R16(実施例1に記載)を、実施例4で示した方法と同様の手法によりHEK293T細胞に導入した。ピューロマイシン添加培地で生育し得られた各セルラインに対して、改変型Gα16gust40を一過性に発現させて、サリシンに対する最も応答強度の高いセルラインを選択した。次にその選抜したTAS2R16発現細胞セルラインに、改変型Gα16gust40/pcDNA4/TOを導入し安定発現させた。導入方法は実施例4とほぼ同様であるが、プラスミドはNru Iにて線状化を行い、また選択培地はピューロマイシンとともにゼオシンを最終濃度が400 μg/mlになるよう添加したものを使用した。Gα16gust40/pcDNA4/TOは実施例2に記載した改変型Gα16gust40/pEAK10からIn-FusionTM Advantage PCR Cloning Kitを用いてpcDNA4/TOベクター(invitrogen)のEco RI-Xho Iサイトにサブクローニングして作製した。得られた薬剤耐性の細胞セルラインについて、サリシンを投与し、応答性の高いセルラインをTAS2R16と改変型Gα16gust40の共発現細胞として選択した。
共発現細胞の2セルラインと、TAS2R16-改変型Gα16gust40融合タンパク質発現細胞の1セルラインを長期継代培養し、定期的にサリシンの苦味応答を検出し、検出感度の変化を調べた。具体的には、共発現細胞のセルラインは、ピューロマイシンとゼオシンを添加した培地で、融合タンパク質発現細胞はピューロマイシン添加培地にてそれぞれ培養を継続した。実施例5に記載したように、適時アッセイの前日に各セルラインを96穴プレートに播種し、24時間後にアッセイ用のバッファーに交換後、FLIPR Calcium Assay Kitを用いてサリシン投与による細胞内カルシウムの濃度変化を測定した。
結果を表3に示した。共発現細胞のセルライン#3は遅くとも20世代までに検出感度が低下し、セルライン#13は遅くとも35世代までに検出感度が低下した。一方、融合タンパク質発現細胞(セルライン#2)は、32世代まで検出感度の低下は認められていない。
なお本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。

Claims (10)

  1. 苦味受容体TAS2Rと、該苦味受容体に共役するGタンパク質αサブユニットとを含む融合タンパク質。
  2. 前記Gタンパク質αサブユニットが、Gqファミリーのαサブユニットとガストデューシンのキメラタンパク質である請求項1に記載の融合タンパク質。
  3. 前記GqファミリーのαサブユニットがGα15またはGα16である請求項2に記載の融合タンパク質。
  4. 配列番号1、3、5、7、9、25または27に示されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を有する請求項3に記載の融合タンパク質。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド。
  6. 請求項5に記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
  7. 請求項6に記載の発現ベクターが導入されている形質転換細胞。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載の融合タンパク質を安定発現する請求項7に記載の形質転換細胞。
  9. 請求項7または8に記載の形質転換細胞に被験物質を接触させる工程と、該形質転換細胞内のカルシウム濃度を測定する工程を含むことを特徴とする被験物質の苦味評価方法。
  10. 請求項7または8に記載の形質転換細胞に苦味物質と被験物質を接触させる工程と、該形質転換細胞内のカルシウム濃度を測定する工程と、得られたカルシウム濃度を苦味物質のみを接触させた形質転換細胞内のカルシウム濃度と比較し、カルシウム濃度を増加または低下させる被験物質を選択する工程を含む苦味調節物質のスクリーニング方法。
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