JP2005269935A - 蛋白質の生産方法 - Google Patents

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JP2005269935A JP2004085488A JP2004085488A JP2005269935A JP 2005269935 A JP2005269935 A JP 2005269935A JP 2004085488 A JP2004085488 A JP 2004085488A JP 2004085488 A JP2004085488 A JP 2004085488A JP 2005269935 A JP2005269935 A JP 2005269935A
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Junichi Hata
純一 秦
Masahiro Furuya
昌弘 古谷
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英樹 田口
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Abstract

【課題】 宿主細胞中で組換え蛋白質として発現させた場合に活性型蛋白質を発現させる
ことが困難であった蛋白質を、活性型蛋白質として発現させることができ、かつ、効率的
に目的蛋白質の発現及びその精製を行うことができる新たな蛋白質の生産方法を提供する

【解決手段】 シャペロニンをコードする遺伝子及び目的蛋白質をコードする遺伝子が連
結した遺伝子と、コシャペロニンをコードする遺伝子とを、同一宿主細胞内で転写・翻訳
することによって、前記目的蛋白質及び前記シャペロニンがペプチド結合を介して連結し
た融合蛋白質と、前記コシャペロニンとを、前記目的蛋白質が前記シャペロニン及び前記
コシャペロニンにより形成される空洞内に格納された融合蛋白質−コシャペロニン複合体
として発現させる蛋白質の生産方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、宿主細胞中で組換え蛋白質として発現させた場合に活性型蛋白質を発現させる
ことが困難であった蛋白質を、活性型蛋白質として発現させることができ、かつ、効率的
に目的蛋白質の発現及びその精製を行うことができる新たな蛋白質の生産方法に関する。
これまでにバクテリア、酵母、昆虫、動植物細胞、トランスジェニック動・植物等の多く
の宿主生物において組換え蛋白質発現系が確立されてきたが、なかでもバクテリアを宿主
細胞とした組換え蛋白質生産は、その増殖速度の速さ等から医薬品原料を工業スケールで
生産する際の標準システムとなっている。しかし、従来開発されてきた組換え蛋白質発現
系においては活性型蛋白質を大量に得ることが困難である場合が多々ある。例えば、目的
蛋白質が宿主細胞に対してなんらかの毒性を有する場合は、目的蛋白質の発現が抑制され
たり、細胞増殖量が低下したりする。また、目的蛋白質が可溶性蛋白質として発現しても
宿主プロテアーゼによって分解されてしまい生産量が極めて少なくなる場合もある。更に
、目的蛋白質が発現しても折り畳みがうまくいかず、可溶化が困難な封入体が形成されて
しまい、一旦形成された封入体を可溶化して再折り畳みを行っても最終的に得られる活性
型蛋白質の量が極めて少ない場合も少なくない。
宿主細胞に対して毒性を有する蛋白質を生産する場合、発現誘導剤を用いたり温度を調節
したりすることによって目的蛋白質の発現を厳密に制御することが可能なベクターを用い
た生産方法が検討されている。これは、目的蛋白質を発現していない状態で宿主細胞を定
常期付近まで増殖させた後、Isopropyl−β−D−thiogalactopy
ranoside(IPTG)等の発現誘導剤を添加したり、培養温度を変化させたりす
ることによって、宿主細胞内で目的蛋白質を発現させる二段階培養法等である。しかし、
発現を誘導する前の宿主細胞増殖ステージにおいて、目的蛋白質の発現を完全に抑制する
ことは困難であり、微量の目的蛋白質が発現することによって宿主に毒性を及ぼし、宿主
細胞増殖や目的蛋白質の発現量が低下する場合も多い。
また、発現した目的蛋白質が宿主のプロテアーゼによって分解されてしまうという問題を
解決する方法として、例えば大腸菌を宿主とする場合では、lon、ompT等の2〜3
種類のプロテアーゼ構造遺伝子の一部を欠損させた変異株を用いる方法が考案されている
が、大腸菌において現在判明しているプロテアーゼは30種類以上あるので、これらの2
〜3種類の構造遺伝子を欠損させただけでプロテアーゼ分解の影響を回避できる場合は少
なく、また、宿主のプロテアーゼを全て欠損させると宿主細胞の増殖が大幅に阻害される
等の他の弊害が起こるので、この問題を根本的に解決することはできていない。
目的蛋白質が封入体として発現される場合は、目的蛋白質をグルタチオン−S−トランス
フェラーゼ(GST)やチオレドキシン、マルトース結合蛋白質等との融合蛋白質として
発現させる方法や、大腸菌が宿主である場合はペリプラズム内に目的蛋白質を発現させる
方法等が試みられているが、封入体形成が高効率で解消される場合は少なかった。また、
蛋白質の折り畳み反応を支援する蛋白質群である分子シャペロンと目的蛋白質とを共発現
させ、可溶性画分への目的蛋白質の発現量を増大させる方法も考案されているが、多くの
場合は活性型蛋白質の飛躍的な増加が認められなかった。
以上のように従来の蛋白質発現技術には、目的蛋白質の宿主に対する毒性、目的蛋白質の
宿主プロテアーゼによる分解や封入体形成といった大きな問題があったので、発現させよ
うとする蛋白質の種類によっては全く発現しなかったり、発現量が著しく少なくなったり
する場合があり、蛋白質ごとに発現条件を試行錯誤し変更する必要があった。
そこで、目的蛋白質をシャペロニン(約60kDa分子シャペロン、ヒートショックプロ
テイン60kDa、サーモゾーム)との融合蛋白質として発現させて、目的蛋白質をシャ
ペロニンのリング構造内部に納めることにより、目的蛋白質の宿主への毒性発現、封入体
形成、及び、宿主のプロテアーゼによる分解という問題を解消し、目的蛋白質を可溶性蛋
白質として大量に発現させることができる組換え蛋白質の生産法が提案されている。しか
し、その一方で、目的蛋白質が膜蛋白質等であり宿主に対して毒性を及ぼす場合は、シャ
ペロニンの空洞から目的蛋白質が一時的に放出されることにより宿主の増殖が低下し、そ
のため、目的蛋白質の生産性が著しく減少してしまうことも多い。この問題を解決するた
めに、シャペロニンと共にその空洞を構成するコシャペロニン(約10kDa分子シャペ
ロニン、ヒートショックプロテイン10kDa)(非特許文献1)を、宿主細胞内でシャ
ペロニンと目的蛋白質との融合蛋白質と同時に共発現させることによって、その空洞内部
への目的蛋白質の格納性を向上させた組換え蛋白質生産法も提案されている。しかし、一
般的な大腸菌由来のシャペロニンとコシャペロニンとの場合、その結合は約8秒間しか維
持されないため、すぐにコシャペロニンの解離が起こり、上記問題を改善するのは困難で
あった。
Taguchi et al.,1991, J.Bio.Chem.,266(33),22411−22418
本発明は、上記現状に鑑み、宿主細胞中で組換え蛋白質として発現させた場合に活性型蛋
白質を発現させることが困難であった蛋白質を、活性型蛋白質として発現させることがで
き、かつ、効率的に目的蛋白質の発現及びその精製を行うことができる新たな蛋白質の生
産方法を提供することを目的とする。
本発明は、シャペロニンをコードする遺伝子及び目的蛋白質をコードする遺伝子が連結し
た遺伝子と、コシャペロニンをコードする遺伝子とを、同一宿主細胞内で転写・翻訳する
ことによって、上記目的蛋白質及び上記シャペロニンがペプチド結合を介して連結した融
合蛋白質と、上記コシャペロニンとを、上記目的蛋白質が上記シャペロニン及び上記コシ
ャペロニンにより形成される空洞内に格納されている融合蛋白質−コシャペロニン複合体
として発現させる蛋白質の生産方法である。
以下に本発明を詳述する。
細胞に熱ショック等のストレスを与えると、一般的に分子シャペロンと呼ばれる蛋白質群
の発現が誘導される。これらはエネルギー物質であるATPの存在下又は非存在下で蛋白
質の折り畳みを支援したり、構造安定化に貢献したりするものである。分子シャペロンの
中でも、その分子量が約60kDaのものはシャペロニンと称され、バクテリア、古細菌
、及び、真核生物の全ての生物に存在し、蛋白質の折り畳み支援や変性防御の機能を有し
ている。
一般的に、シャペロニンは14〜18個のサブユニットからなる2層のリング構造を形成
し、それぞれのリングの内部に空洞(キャビティ)を有している。シャペロニンはこの空
洞内部に、ポリペプチドや変性蛋白質を一時的に格納し、ATPの加水分解に共役して、
格納した蛋白質の折り畳み構造形成を助ける機能を有している。
これらのシャペロニンはグループ1型とグループ2型とに大別される。バクテリアや真核
生物のオルガネラに存在するシャペロニンはグループ1型に分類され、コシャペロニンと
称される分子量約10kDaの蛋白質の1層環状複合体を補因子として、蛋白質の折り畳
みを促進する。例えば、大腸菌由来のシャペロニンであるGroELでは、まず、片側の
リングに変性蛋白質が結合する。これをシスリングと称し、反対側のリングをトランスリ
ングと称する。このシスリングにGroELのコシャペロニンであるGroES及びAT
Pが結合すると変性蛋白質は図1に示すようなGroEL及びGroESから構成される
複合体の空洞(キャビティ)内部に閉じ込められる。その後、シスリングに結合したAT
PがGroELのATPase活性により約8秒間かけてADPに加水分解され、この間
に空洞内部の変性蛋白質の折り畳みが進行する。加水分解されたADPがシスリングに結
合した状態で、トランスリングにATPが結合すると、シスリングに結合したGroES
及びADPが解離し、空洞内部で折り畳まれた蛋白質が放出される(田口、2002、蛋
白質 核酸 酵素、47、1196−1202)。
一方、グループ2型シャペロニンは、真核生物の細胞質や古細菌に存在し、それらの構造
や機能に関しては不明な点が多く残されており、グループ1型のコシャペロニンに相当す
る蛋白質も現在のところ見つかっていない。
種々の細胞由来のシャペロニンの立体構造が、近年、X線結晶構造解析によって詳細に解
明されつつある。シャペロニンの立体構造は、隣接するサブユニット間及びリング間で、
アミノ酸間の疎水的相互作用及び静電相互作用が働くことにより形成される。また、シャ
ペロニンのN末端及びC末端はともに空洞側に位置し、フレキシビリティの高い構造とな
っており、特に大腸菌由来のシャペロニンGroELでは、C末端の少なくとも23アミ
ノ酸がフレキシビリティの高い構造を示すことが明らかにされている。
また、大腸菌由来のシャペロニンでは、GroEL−GroES−ADP複合体の構造が
明らかにされている。GroELにGroESが結合することによって、GroELの構
造が劇的に変化し、GroESの結合前に比べて、GroEL−GroESにより形成さ
れるキャビティの体積が大きくなり、キャビティ内部の表面に露出しているアミノ酸残基
も結合前は疎水性残基であるのに対して結合後は親水性残基へと変化し、格納された基質
の折り畳みに適した環境を形成することが明らかにされている(Xu et al.,1
997,Nature,388,741−750)。
バクテリア由来のシャペロニンは、遺伝子組換え手法によって、大腸菌細胞質可溶性画分
に大量生産させることが可能である。更に、精製した発現産物を電子顕微鏡を用いて観察
することによって、様々のバクテリア由来のシャペロニンが大腸菌においても自己集合し
、14量体からなる2層のリング構造を形成することが解明されている。
本発明の蛋白質の生産方法では、シャペロニンをコードする遺伝子及び目的蛋白質をコー
ドする遺伝子が連結した遺伝子と、コシャペロニンをコードする遺伝子とを、同一宿主細
胞内で転写・翻訳することによって、目的蛋白質及びシャペロニンがペプチド結合を介し
て連結した融合蛋白質と、コシャペロニンとを発現させる。
上記シャペロニン及び上記コシャペロニンとしては、両者が強固に結合してシャペロニン
−コシャペロニン複合体を構成した状態で精製することが可能なものであれば特に限定さ
れず、いずれの生物由来のものでも使用することができる。なかでも、好熱性バクテリア
であるThermus thermophilus由来のものや、大腸菌K−12株由来
のもの等が好適に用いられる。
上記Thermus thermophilus由来のシャペロニン及びコシャペロニン
は、シャペロニン:コシャペロニンが1:1の割合で強固に結合した複合体として精製す
ることが可能である(Taguchi et al.,1991, J.Bio.Che
m.,266(33),22411−22418)。
また、上記シャペロニンとして大腸菌K−12株由来のものを使用する場合は、ATP加
水分解に必要なAsp398をAlaに置換したシャペロニン(Asp398Ala変異
体)を使用することにより、人為的にシャペロニン−コシャペロニン複合体を安定化させ
ることができる。大腸菌K−12株由来のシャペロニンのAsp398をAlaに置換す
ると、コシャペロニンが結合しているシスリングに結合したATPは加水分解されず、シ
ャペロニンのシスリングにATPが結合した状態が維持されるため、トランスリングに対
してATPが結合できなくなり、その結果シスリングからのコシャペロニンの解離が起こ
りにくくなる(Xu et al.,1997,Nature,388,741−750
)。
更に、上記シャペロニンとして大腸菌K−12株由来のものを使用する場合は、リング間
相互作用に寄与する4つの荷電アミノ酸(R452、E461、S463、V464)の
うち、452番目のアミノ酸であるアルギニンをグルタミン酸に、461、463、46
4番目のアミノ酸をアラニンに置換したものを使用することによっても、人為的にシャペ
ロニン−コシャペロニン複合体を安定化させることができる。大腸菌K−12株由来のシ
ャペロニンの4つの荷電アミノ酸(R452、E461、S463、V464)を上記の
ように置換すると、本来2層リング構造で存在するシャペロニンを1層リング化すること
ができ、1層リング化されたシャペロニンは、ATP及びコシャペロニン存在下で、シャ
ペロニン及びコシャペロニンにより形成される空洞内に変性蛋白質を格納するが、その後
コシャペロニンの解離に必要な反対側のリングでのATPの加水分解が起こらないため、
コシャペロニンの解離が著しく起こりにくくなる。
上記目的蛋白質としては特に限定されず、例えば、B型肝炎ウィルス、C型肝炎ウィルス
、HIV、インフルエンザ等の病原性ウィルスゲノムにコードされる蛋白質(外被蛋白質
、コア蛋白質、プロテアーゼ、逆転写酵素、インテグラーゼ等);scFV(単鎖抗体)
、Fab、(Fab)、完全抗体等の抗体;G蛋白質共役型受容体(7回膜貫通型受容
体)、チロシンカイネース型受容体、イオンチャネル型受容体、核内ホルモン受容体等の
受容体;血小板増殖因子、血液幹細胞成長因子、肝細胞成長因子、トランスフォーミング
成長因子、神経成長・栄養因子、線維芽細胞成長因子、インスリン様成長因子等の成長因
子に属するもの;腫瘍壊死因子、インターフェロン、インターロイキン、エリスロポエチ
ン、顆粒球コロニー刺激因子、マクロファージ・コロニー刺激因子、アルブミン、ヒト成
長ホルモン等に属するもの等が挙げられる。その他、ヒト、マウス等の高等動物由来の疾
病関連遺伝子産物の全てが、本発明における目的蛋白質となり得る。また、化学プロセス
食品加工や、その他の産業分野に有効な酵素等の蛋白質も本発明における目的蛋白質とな
り得る。
本発明の蛋白質の生産方法は、目的蛋白質を完全にシャペロニン−コシャペロニン複合体
のキャビティ内に格納することが可能であるので、なかでも、コシャペロニンと安定な複
合体を形成せず、単にシャペロニンに融合させた従来の系では発現が困難であった、宿主
に対して毒性を及ぼすG蛋白質共役型受容体、チロシンカイネース型受容体、イオンチャ
ネル型受容体等のような膜貫通型若しくは膜結合型蛋白質、又はそれ以外にも、核内ホル
モン受容体等に好適である。
上記シャペロニンのリング構造は、その由来生物によって異なっており、例えば、バクテ
リア由来でありグループ1型に属するシャペロニンのリングにおいては、リングを構成す
るシャペロニンサブユニットの数は7個である。従って、上記融合蛋白質におけるシャペ
ロニンサブユニットと目的蛋白質との数の比は、使用するシャペロニンの由来により適宜
選択することが好ましい。シャペロニンサブユニット:目的蛋白質の比は1:1〜12:
1まで採りうるが、グループ1型のシャペロニンを用いた場合、シャペロニンサブユニッ
ト:目的蛋白質=7:1であることが好ましい。シャペロニンサブユニットの連結数が7
を超えると、発現した融合蛋白質中の目的蛋白質の実質的な生産量が少なくなるとともに
、リング構造の形成も困難になることがある。但し、目的蛋白質の形状や分子量によって
は上記以外の比が適することもある。
上記融合蛋白質におけるシャペロニンと目的蛋白質との連結パターンとしては、目的蛋白
質がシャペロニンのキャビティ内に納まるように、シャペロニンのN末端、C末端、又は
、シャペロニンサブユニット同士の間に、ペプチド結合を介して連結していることが好ま
しい。
上記目的蛋白質の宿主に対する毒性が極めて強い場合や、上記目的蛋白質が宿主プロテア
ーゼによる消化を極めて受けやすい場合は、複数のシャペロニンサブユニット間に目的蛋
白質を配置することが好ましい。
上記目的蛋白質がN末端に膜移行のためのシグナル配列を有する膜貫通型蛋白質や膜結合
型蛋白質である場合は、シャペロニンのN末端に目的蛋白質を連結すると、翻訳後にシャ
ペロニンに格納される前に目的蛋白質が膜に移行してしまう可能性がある。従って、この
ような場合は、上記目的蛋白質が膜に移行する前にシャペロニンのキャビティ内に格納す
るように、シャペロニンのC末端に目的蛋白質を連結することが好ましい。
また、上記融合蛋白質の精製を容易にするために、融合蛋白質のN末端又はC末端に6〜
10個のヒスチジンが並んだタッグを連結させてもよい。上記融合蛋白質のN末端又はC
末端にヒスチジンタッグが連結されている場合は、ヒスチジンとニッケル等との親和性を
利用して、ニッケル等の金属キレートカラムを用いることにより、より簡便で効率的に融
合蛋白質を回収することができる。
また、シャペロニンと目的蛋白質との間、更には、シャペロニンサブユニット同士の間に
、トロンビン、エンテロカイネース、活性型血液凝固第10因子等の限定分解型プロテア
ーゼの切断配列を介在させることが好ましい。シャペロニンと目的蛋白質との間等に限定
分解型プロテアーゼの切断配列を介在させることにより、シャペロニンと目的蛋白質とを
容易に切り離すことができる。
更に、上記目的蛋白質にメチオニン残基が存在しない場合には、シャペロニンと目的蛋白
質との間にメチオニン残基を介在させることが好ましい。シャペロニンと目的蛋白質との
間にメチオニン残基が介在すると、CNBr処理によって容易にシャペロニンと目的蛋白
質とを切り離すことができる。
上記シャペロニンをコードする遺伝子及び目的蛋白質をコードする遺伝子が連結した遺伝
子、即ち、融合蛋白質をコードする遺伝子は、制限酵素を用いる方法、PCRによる方法
等の一般的に用いられる遺伝子工学的手法を用いて作製することができる。
本発明における発現方法としては、既存の宿主−ベクター系を用いる方法を使用すること
ができる。
上記既存の宿主−ベクター系を用いる方法としては、例えば、(1)一種類の発現プラス
ミドにシャペロニンをコードする遺伝子及び目的蛋白質をコードする遺伝子を連結した遺
伝子とコシャペロニンをコードする遺伝子とを導入し、得られた発現プラスミドにより宿
主細胞を形質転換し、発現させる方法や、(2)異なる複製領域及び異なる薬剤耐性遺伝
子を有する2種類の発現プラスミドに、シャペロニンをコードする遺伝子及び目的蛋白質
をコードする遺伝子を連結した遺伝子と、コシャペロニンをコードする遺伝子とを別々に
導入し、得られた2種類の発現プラスミドを用いて、2種類の薬剤存在下で宿主細胞を形
質転換し、発現させる方法等が挙げられる。一般的に、宿主が大腸菌等である場合では、
発現プラスミドが巨大になるとコピー数が減少し、結果的に目的蛋白質の発現量が低下す
ることがある。従って、宿主細胞内で、例えばシャペロニンサブユニットが7つ連結して
いる融合蛋白質を生産する場合、発現プラスミドは12kbp以上になるので、コシャペ
ロニンをコードする遺伝子と、シャペロニンをコードする遺伝子及び目的蛋白質をコード
する遺伝子を連結した遺伝子とは、異なるベクターに導入することが、効率的な発現のた
めに好ましい。
上記宿主としては特に限定されず、例えば、大腸菌等の細菌、その他の原核細胞、酵母、
昆虫細胞、哺乳動物培養細胞、植物培養細胞、及び、トランスジェニック動・植物等が挙
げられる。なかでも、培養コストが安価である点、培養日数が短い点、培養操作が簡便な
点等から、細菌及び酵母が好ましい。
本発明の蛋白質の生産方法では、得られる融合蛋白質の分子量が約60〜550kDaと
巨大であるので、転写されたmRNAが特定のリボヌクレアーゼによる分解を受けたり、
翻訳された融合蛋白質がプロテアーゼによる2段階の切断を受けたりする可能性がある。
従って、例えば、上記宿主が大腸菌である場合は、mRNAの分解に関与するリボヌクレ
アーゼであるRNaseE遺伝子を欠損させた大腸菌を用いることが好ましい。このよう
な変異株を用いることにより、mRNAの分解を抑制することが可能となる。また、上記
宿主として、lon、ompT等のプロテアーゼ構造遺伝子を欠損させた大腸菌を用いる
ことも好ましい。このような変異株を用いることにより、翻訳後のプロテーゼによる分解
を抑制することが可能となる。なお、上記融合蛋白質を15〜25℃の低温で発現させる
ことによっても、翻訳後のプロテーゼによる分解を抑制することが可能である。
また、本発明においては、融合蛋白質の発現ベクターにシャペロニンの繰返し配列が含ま
れるため、発現プラスミドが不安定になったり、特に宿主細胞とシャペロニンとの由来生
物が同じであるときは、プラスミドDNAとゲノムDNAとの相同組換えが起こったりす
る可能性がある。従って、宿主として大腸菌を用いる場合は、遺伝子の相同組換えに関与
する遺伝子であるRecA遺伝子を欠損させた宿主を用いることが好ましい。このような
変異株を用いることにより、プラスミドの安定性が向上し、相同組換えを抑制することが
可能となる。
本発明の蛋白質の生産方法では、融合蛋白質と、コシャペロニンとを、目的蛋白質がシャ
ペロニン及びコシャペロニンにより形成される空洞内に格納された融合蛋白質−コシャペ
ロニン複合体として発現させる。なお、本発明において、「融合蛋白質−コシャペロニン
複合体として発現させる」とは、融合蛋白質−コシャペロニン複合体として安定した状態
を維持したまま発現させることを意味する。ここで、「安定した状態」とは、例えば、融
合蛋白質−コシャペロニン複合体の状態を保持したまま精製することが可能な程度に安定
であることを意味する。従って、変異等を行っていない通常の大腸菌由来のシャペロニン
−コシャペロニン複合体であるGroEL−GroES複合体のように約8秒間で解離し
てしまう場合は本発明に含まれない。
本発明においては、発現された目的蛋白質はシャペロニン及びコシャペロニンにより形成
される空洞内に格納されているので、目的蛋白質が膜蛋白質等であり宿主に対して毒性を
及ぼす場合であっても、目的蛋白質が宿主の増殖を妨げることはない。
本発明により得られた融合蛋白質−コシャペロニン複合体、融合蛋白質、又は、目的蛋白
質は、例えば、以下のようにして精製することができる。
まず、融合蛋白質−コシャペロニン複合体を発現した宿主細胞を回収・破砕し、上清を回
収する。次いで、回収した上清から硫安塩析によって融合蛋白質−コシャペロニン複合体
を沈殿させる。この際、融合蛋白質−コシャペロニン複合体は分子量が約490〜600
kDaの巨大蛋白質複合体であるので、40%飽和程度の硫安塩析によって沈殿させるこ
とができる。沈殿した蛋白質を回収した後、適当な緩衝液に溶解し、疎水クロマトグラフ
ィーやイオン交換クロマトグラフィー等のカラム等を用いる蛋白質の精製方法によって融
合蛋白質の存在するフラクションを回収する。回収した融合蛋白質の存在するフラクショ
ンを限外ろ過によって濃縮した後、得られた濃縮液に対し、5〜50mM程度の塩化マグ
ネシウム及び50〜300mM程度の塩化ナトリウム又は塩化カリウムを含有する緩衝液
を展開液としてゲルろ過を行い、排除限界直後のピークを回収することによって融合蛋白
質の発現を確認し、融合蛋白質−コシャペロニン複合体を精製することができる。
一般にシャペロニン−コシャペロニン複合体の安定性はADP存在下で上昇するので、上
記融合蛋白質を融合蛋白質−コシャペロニン複合体の状態で精製する際には、精製系にA
DPを添加してもよい。
上記融合蛋白質のN末端又はC末端に6〜10個のヒスチジンが並んだタッグを連結させ
た場合には、ニッケル等の金属キレートカラムを用いることにより、より簡便で効率的に
融合蛋白質を回収することができる。また、上記シャペロニンに対する抗体を用いた免疫
沈降又はアフィニティクロマトグラフィーによっても、迅速・簡便に融合蛋白質を精製す
ることができる。
また、上記シャペロニンがThermus thermophilus由来等の耐熱性の
ものである場合は、宿主細胞の抽出液を60〜80℃で熱処理することにより大部分の宿
主由来蛋白質を沈殿させることができるので、融合蛋白質の精製をより簡略化することが
できる。この際、上記目的蛋白質自身が耐熱性のものでなくとも、シャペロニンの空洞内
部に保持されているので、目的蛋白質が変性することはない。
本発明により得られた融合蛋白質の形態は透過型電子顕微鏡によって観察することができ
る。目的蛋白質がシャペロニンリングに格納されている場合、外径14〜16nm程度の
シャペロニン特有のリング構造が観察される。また、融合蛋白質を、融合蛋白質−コシャ
ペロニン複合体の状態で精製した場合、透過型電子顕微鏡観察では、フットボール型と呼
ばれるシャペロニン−コシャペロニン複合体の構造を観察することができる。なお、融合
蛋白質のリング構造が不安定な場合は、多くのシャペロニンサブユニット間の会合はマグ
ネシウムイオン及びATPによって安定化されているので、精製の過程でマグネシウム及
びATPを共存させておくことで、融合蛋白質のリング構造を安定化することができる。
上記融合蛋白質−コシャペロニン複合体からコシャペロニンを解離させるには、例えば、
試料を4℃程度の低温におく方法(コールドショック)、適度な塩濃度の緩衝液で透析す
る方法等を用いることができる。また、シャペロニンとコシャペロニンとの結合は、マグ
ネシウムイオンによって安定化されているので、そのキレート剤であるEDTA等を添加
することによって更に効率よく解離させることが可能である。
回収した上記融合蛋白質を含有する画分をEDTA処理した後、マグネシウム及びATP
が入っていない緩衝液に対して透析を行うことにより、融合蛋白質の空洞内から目的蛋白
質を出すことができる。即ち、上記の透析処理によってシャペロニンサブユニット間の相
互作用は解除されシャペロニンのリング構造は壊れ、目的蛋白質が露出する。
シャペロニンと目的蛋白質との間、又は、シャペロニンサブユニット同士の間にトロンビ
ン、エンテロカイネース、活性型血液凝固第10因子等の限定分解型プロテアーゼの切断
配列が配置されている場合は、融合蛋白質を限定分解型プロテアーゼで消化することによ
りシャペロニンと目的蛋白質とを切り離すことができる。
また、シャペロニンと目的蛋白質との間にメチオニン残基を介在させた場合には、CNB
r処理によって容易に目的蛋白質をシャペロニンから切り離すことができる。
本発明において、目的蛋白質の回収のみが目的である場合は、必ずしも融合蛋白質を均一
に精製する必要はなく、コールドショック等によってコシャペロニンを解離させた粗精製
サンプルに、直接、限定分解型プロテアーゼを作用させる等の精製操作を施してもよい。
上記目的蛋白質が膜結合性又は膜貫通性蛋白質である場合には、目的蛋白質とシャペロニ
ンとの間が切断されることによって、目的蛋白質が不溶化することもあるが、疎水性アル
キル鎖がオクチル(C8)からドデシル(C12)程度の長さの非イオン性界面活性剤等
により形成されるミセルの直径はほぼ生体膜の厚さに相応するので、不溶化物のみを遠心
分離によって回収した後、これらの非イオン性界面活性剤等を添加することにより、不溶
化した目的蛋白質を可溶化することができる。上記非イオン性界面活性剤としては、例え
ば、β―オクチルグルコシド、Triton X−100、Nonidet P−40、
Tween20等が挙げられる。
上記融合蛋白質−コシャペロニン複合体は、いかなる目的蛋白質がシャペロニン及びコシ
ャペロニンにより形成される空洞内に格納されていようと、その表面の性質は同じである
ので、画一的な条件で結晶化することができる。上記融合蛋白質−コシャペロニン複合体
の結晶化はハンギングドロップ法によって行うことができる。即ち、緩衝液に溶かした1
0mg/ml程度の融合蛋白質溶液10μlに、硫酸アンモニウム、ポリエチレングリコ
ール(PEG)等の沈殿剤を飽和より低い濃度になるように加えて薄いガラス板の上に置
き、これを逆さにして小さな容器(リザーバー)の上にのせて密封する。容器中には沈殿
剤溶液約1mlを入れておく。蒸気の拡散によって融合蛋白質−コシャペロニン複合体溶
液と容器の中とがゆっくりと平衡に達する。上記融合蛋白質−コシャペロニン複合体溶液
の塩濃度は水がリザーバー中に逃げていくので上昇する。飽和点を過ぎると融合蛋白質−
コシャペロニン複合体がゆっくりと析出してくる。pHや塩濃度条件が適当であると融合
蛋白質−コシャペロニン複合体溶液中に融合蛋白質の結晶が生じてくる。例えば、融合蛋
白質に用いられたシャペロニンが大腸菌由来のGroELである場合、2.5mM AD
Pを含有する10mg/mlの融合蛋白質−コシャペロニン複合体溶液に等容の3.6%
PEG6K、200mM MgCl、50mM KClを含有する100mM Tri
s−HCl(pH8.0)緩衝液を添加する条件下で結晶化を行うことができる。
本発明で得られた融合蛋白質−コシャペロニン複合体を結晶化し、得られた結晶を用いた
X線結晶構造解析を行うことによって上記目的蛋白質の立体構造を解析することができる
。上記結晶は、X線結晶構造解析により、融合蛋白質−コシャペロニン複合体の3次元構
造及び/又は全原子空間配置を解明し得る品質を有することが好ましい。X線結晶構造解
析により、3次元構造及び/又は全原子空間配置を解明し得る品質とは、例えば、融合蛋
白質−コシャペロニン複合体が動的光散乱で単一のピークであり、更に、Native−
PAGEでシングルバンドとして検出される程度の品質を意味する。
上記X線結晶構造解析におけるX線源としては、実験室レベルでは、銅又はモリブデンに
電子を衝突させたときに発生する特性X線を使用する。特別に強いX線や任意の波長のX
線を必要とする場合はシンクロトロン放射光を利用する。また、我が国では第3世代放射
光施設であるSPring−8を利用することで従来より鮮明な回折斑点が得られ、誤差
の少ない測定が可能である。X線回折の強度測定はX線フィルムやイメージングプレート
(IP)等の2次元検出器によって行うのが一般的である。X線を当てながら結晶を回転
させることで多くの回折線が発生する。IPを用いる場合、記録された回折パターンをス
キャンして数値化し、コンピューターに蓄積させることができる。
得られた結晶の重原子同型置換体結晶を複数作製し、これらに元の結晶と同じ波長のX線
を当て、重原子を組み込むことによる回折強度変化を利用して元の結晶の反射の位相を決
定する。反射の位相が決まれば、電子密度を求めることが可能である。但し、原子位置決
定までの解析を行うには少なくとも2.8Åの分解能が要求される。2〜2.8Åの分解
能の電子密度図があれば分子モデルを組み立てることが可能となる。
X線結晶構造解析により解析された融合蛋白質−コシャペロニン複合体の3次元構造及び
/又は全原子空間配置と、シャペロニン−コシャペロニン複合体の3次元構造及び/又は
全原子空間配置とを比較することにより、目的蛋白質の3次元構造及び/又は全原子空間
配置を目的蛋白質だけを結晶化しX線を照射することにより解析する場合に比べて迅速に
解析することができる。
上記結晶に対して、これらの一連のX線結晶構造解析の手法を用いることで、目的蛋白質
を単離する必要なく、目的蛋白質がシャペロニン及びコシャペロニンにより形成される空
洞内に格納されている状態で、直接目的蛋白質の立体構造を解析することが可能である。
上記融合蛋白質−コシャペロニン複合体を結晶化し、得られた結晶を用いてX線結晶構造
解析を行うことによって上記目的蛋白質の立体構造を解析する目的蛋白質の立体構造解析
法もまた、本発明の1つである。
また、本発明における目的蛋白質がG蛋白質共役型受容体(GPCR)等の膜貫通型受容
体や核内ホルモン受容体等の受容体である場合、受容体に対するリガンド物質や受容体に
特異的に結合する抗体等と受容体との相互作用を、上記の立体構造解析法を利用すること
により解析することが可能である。
即ち、上記のようにして得られた目的蛋白質の立体構造と、目的蛋白質にリガンド物質を
結合させた場合の目的蛋白質の立体構造とを比較することにより、目的蛋白質とリガンド
物質との結合状態を解析することができる。更に、目的蛋白質とリガンド物質との結合状
態を、分子レベルで解析し、結合の相互作用に関与するリガンド物質の官能基をコンピュ
ータ上で種々の異なった官能基に置換し、その結合状態をシミュレートすることにより得
られた結果に従い、実際に、相互作用に関与するリガンド物質の官能基を改変することで
、目的蛋白質との親和性が強固になった新規リガンド物質を作製することが可能である。
また、既に目的蛋白質の立体構造が決定されており、その目的蛋白質がDruggabl
eである場合、DOCKやFlexXを用いたバーチャルスクリーニングによって、化合
物ライブラリのなかから、目的蛋白質のリガンド結合部位に結合しうるリガンド物質を探
索することも可能である。また、その際、リガンド物質のADMEを考慮して設計すると
なお好適である。
本発明の目的蛋白質の立体構造解析法を利用することによって得られる目的蛋白質の機能
に影響を及ぼすリガンド物質もまた、本発明の1つである。上記リガンド物質としては、
例えば、抗体やペプチド及び低分子化合物等が挙げられる。
本発明によれば、目的蛋白質を、目的蛋白質及びシャペロニンの融合蛋白質とコシャペロ
ニンとの複合体として発現させて、目的蛋白質をシャペロニン及びコシャペロニンにより
形成される空洞内に格納することにより、目的蛋白質の宿主への毒性の発現、プロテアー
ゼによる分解及び封入体の形成の問題を解決し、可溶性蛋白質として大量発現させること
ができる。また、本発明によれば、いかなる蛋白質も同一の条件により、精製、結晶化及
び構造解析を行うことができるので、これらの工程を従来よりはるかに迅速に行うことが
できる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定
されるものではない。
実施例1
(Thermus thermophilus由来シャペロニン連結体の発現)
プライマーセットとして、5’及び3’末端にそれぞれSpeI及びXbaIサイトを設
けた5’−tgccactagtatggcgaagatcctggtgtt−3’、及
び、5’−tgcctctagagaagtccatgtccccggc−3’を用いて
Thermus thermophilus HB8(ATCC27634)株ゲノムを
鋳型とするPCR(Polymerase chain reaction)によって、
Thermus thermophilus HB8(ATCC27634)株由来シャ
ペロニンTherm Cpn60遺伝子をクローニングした(配列番号1)。pBR32
2由来の複製領域及びアンピシリン耐性を有するpTrc99A発現ベクター(アマシャ
ムバイオサイエンス社製)を用いて、取得したTherm CPN60遺伝子が一方向に
1、2、3、4、5、6又は7回連結した遺伝子断片が挿入された発現ベクターpTrc
(Cpn60)n(nは1〜7)を構築した。同様に、鋳型としてThermus th
ermophilus HB8(ATCC27634)株を、プライマーセットとして5
’及び3’末端にそれぞれSpeI及びXbaIサイトを設けた5’−tgccacta
gtatggccgcggaggtgaaga−3’、及び、5’−tgcctctag
attactgcaggaccgcaagca−3’を用いて、Thermus the
rmophilus HB8(ATCC27634)株由来コシャペロニンTherm
Cpn10遺伝子をクローニングした(配列番号2)。得られたTherm Cpn10
遺伝子断片を、trcプロモーターを有する発現ベクターに挿入し、更にこのプロモータ
ー及びrrnBターミネーター領域を含有するTherm Cpn10発現領域を、p1
5A由来の複製領域及びクロラムフェニコール耐性遺伝子を有するベクターに挿入するこ
とによってTherm Cpn10発現ベクターpACYCCpn10を構築した。Th
erm Cpn60七回連結体及びTherm Cpn10を発現する両ベクターを大腸
菌BLR(DE3)株に導入しカルベニシリン(100μg/ml)及びクロラムフェニ
コール(20μg/ml)を含有する2XY.T.培地(バクトトリプトン 16g、酵
母エキス 10g、NaCl 5g/L)で25℃、110rpmで24時間培養し、T
herm Cpn60七回連結体及びTherm Cpn10を発現させた。培養終了後
、回収した菌体を超音波で破砕し、遠心分離で上清を回収後、SDS−PAGE及びクマ
シーブリリアントブルー染色によって分析した結果、Therm Cpn60七回連結体
及びTherm Cpn10が可溶性画分に大量発現していることが確認できた。また、
得られた菌体破砕液上清をNATIVE−PAGEで分析した結果、シャペロニンリング
を形成した状態で存在していることが確認できた。
実施例2
(Therm Cpn60融合エンドセリンA受容体の発現)
実施例1に示したTherm Cpn60七回連結体発現ベクターpTrc(Cpn60
の七番目のCpn60遺伝子の3’末端をXbaI消化し、化学合成DNAを挿入す
ることによって、Thrombin認識配列、BglII及びXhoI消化可能なクローニ
ングサイト、FLAG Tagの配列を付加したpTrc(Cpn60TCFを作製
した。
エンドセリンA受容体(ETR)遺伝子にPCRによって5’末端にBglIIサイトを
、3’末端にXhoIサイトを設けたものを(配列番号3)、BglII及びXhoI処理
が施されたpTrc(Cpn60TCFに導入し、Therm Cpn60の七回連
結体とETRとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpTrc(Cpn60TCF
・ETRを構築した。本ベクターを、あらかじめTherm Cpn10発現ベクター
であるpACYCCpn10が組み込まれた大腸菌BLR(DE3)株に形質転換した後
、カルベニシリン(100μg/ml)及びクロラムフェニコール(20μg/ml)を
含有する2XY.T.培地で25℃、110rpmで24時間培養し、融合蛋白質の発現
を行った。10mM MgCl及び20mM KClを含有する50mM Tris−
HCl緩衝液(pH7.8)中で菌体を超音波破砕し、5000g、20分間遠心分離を
行い、大腸菌破砕液上清及び沈殿を調製した。大腸菌破砕液の上清をSDS−PAGEに
よって分離後、クマシーブリリアントブルー染色によって分析した結果、Therm C
pn60七回連結体融合ETRに相当する460kDaのバンド及びTherm Cp
10に相当するサイズである約10kDaのバンドが検出された。また、SDS−PA
GE後、ブロッティングメンブランに転写し、抗FLAG Tagモノクローナル抗体(
ANTI−FLAG M2 Monoclonal Antibody、シグマ)を用い
てウエスターンブロッティングを行った結果、Therm Cpn607回連結体のみを
発現させた大腸菌破砕液上清では陰性であったが、融合蛋白質の場合のみ、そのサイズ相
当(約460kDa)の陽性バンドが検出された。このことからETRがTherm
Cpn60七回連結体との融合蛋白質として上清すなわち大腸菌可溶性画分に発現するこ
とがわかった。ETR単独での発現実験では、大腸菌の破砕液上清も沈殿も同様のウエ
スターンブロッティングで陰性であった。本実施例の発現法によって大腸菌培養液1L当
たり約5mgのETRが可溶性画分に発現していると推定できた。
実施例3
(ETRのThrombinによる切り出し)
実施例2に示した発現ベクターpTrc(Cpn60TCF−ETR及びpACY
CCpn10を形質転換し、Therm Cpn60七回連結体融合ETR及びThe
rm Cpn10を発現させた大腸菌破砕液を5000g、20分間遠心分離を行うこと
によって、破砕液上清を得た。得られた上清を75℃、30分間熱処理を行った後、30
000g、30分間遠心分離を行った。得られたTherm Cpn60七回連結体融合
ETR及びTherm Cpn10を含有する蛋白質溶液の精製度をSDS−PAGE
で確認した後、透過型電子顕微鏡による観察を行ったところフットボール型を横からみた
シャペロニン−コシャペロニン複合体の形態を認めることができ、Therm Cpn
七回連結体融合ETR及びTherm Cpn10が複合体を構成していることを確
認できた。
更に、得られたTherm Cpn60七回連結体融合ETR−Therm Cpn
複合体を含有する蛋白質溶液を終濃度で10mMとなるようにEDTAを添加した後、
同濃度のEDTAを含有する展開液を用いてG3000SWXL(東ソー社製)によるゲ
ルろ過を行い、排除限界付近のフラクションを取得することによって、Therm Cp
60七回連結体融合ETRとTherm Cpn10とを分離した。得られたThe
rm Cpn60七回連結体融合ETRを、PBS緩衝液で透析した後、10unit
s−Thrombin/mg融合蛋白質となるようにThrombinを添加し、25℃
、12時間静置し、その後、SDS−PAGEによる分析を行ったところ、ETRに相
当する42kDa付近にバンドが認められた。また、実施例2と同様に得られたバンドに
対して抗FLAG Tag抗体を用いてウエスターンブロッティングを行った結果陽性で
あり、ETRが融合蛋白質から切り出されていることが確認できた。
本発明は、上述の構成よりなるので、宿主細胞中で組換え蛋白質として発現させた場合に
活性型蛋白質を発現させることが困難であった蛋白質を、活性型蛋白質として発現させる
ことができ、かつ、効率的に目的蛋白質の発現及びその精製を行うことができる。
GroEL及びGroESから構成される複合体を示す図である。

Claims (9)

  1. シャペロニンをコードする遺伝子及び目的蛋白質をコードする遺伝子が連結した遺伝子と
    、コシャペロニンをコードする遺伝子とを、同一宿主細胞内で転写・翻訳することによっ
    て、前記目的蛋白質及び前記シャペロニンがペプチド結合を介して連結した融合蛋白質と
    、前記コシャペロニンとを、前記目的蛋白質が前記シャペロニン及び前記コシャペロニン
    により形成される空洞内に格納された融合蛋白質−コシャペロニン複合体として発現させ
    ることを特徴とする蛋白質の生産方法。
  2. シャペロニンは、シャペロニンサブユニットの7回連結体であり、
    目的蛋白質は、前記シャペロニンのN末端、C末端、又は、前記シャペロニンサブユニッ
    ト同士の間に、ペプチド結合を介して連結していることを特徴とする請求項1記載の蛋白
    質の生産方法。
  3. 融合蛋白質中のシャペロニンと目的蛋白質との間に限定分解型プロテアーゼの切断配列を
    介在させて、前記融合蛋白質を前記限定分解型プロテアーゼにより消化し、前記シャペロ
    ニンと前記目的蛋白質とを切り離すことを特徴とする請求項1又は2記載の蛋白質の生産
    方法。
  4. シャペロニン及びコシャペロニンは、サーマス サーモフィラス(Thermus th
    ermophilus)由来であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の蛋白質の
    生産方法。
  5. シャペロニン及びコシャペロニンは、大腸菌K−12株由来であり、
    シャペロニンは、Asp398Ala変異体である
    ことを特徴とする請求項1、2又は3記載の蛋白質の生産方法。
  6. 目的蛋白質は、G蛋白質共役型受容体、チロシンカイネース型受容体、イオンチャネル型
    受容体、又は、それらの断片であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の
    蛋白質の生産方法。
  7. 目的蛋白質は、核内ホルモン受容体又はその断片であることを特徴とする請求項1、2、
    3、4又は5記載の蛋白質の生産方法。
  8. 目的蛋白質及びシャペロニンがペプチド結合を介して連結した融合蛋白質と、コシャペロ
    ニンとからなり、前記目的蛋白質が前記シャペロニン及び前記コシャペロニンにより形成
    される空洞内に格納された融合蛋白質−コシャペロニン複合体を結晶化し、得られた結晶
    に対してX線結晶構造解析を行うことにより前記目的蛋白質の立体構造を解析することを
    特徴とする目的蛋白質の立体構造解析法。
  9. 請求項8記載の目的蛋白質の立体構造解析法を利用することによって得られることを特徴
    とする目的蛋白質の機能に影響を及ぼすリガンド物質。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009526529A (ja) * 2006-02-15 2009-07-23 ノボザイムス バイオポリマー アクティーゼルスカブ 低分子量ヒアルロン酸の生成

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