JP2004081199A - 組換え抗体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課 題】大量生産が困難であった完全な組換え抗体を宿主生物系又は無細胞翻訳系で効率的に発現させることができ、精製も容易な組換え抗体の製造方法を提供すること
【解決手段】シャペロニン遺伝子と抗体重鎖遺伝子及び/又は抗体軽鎖遺伝子とを含む遺伝子を転写・翻訳することによって、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をシャペロニンとペプチド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させ、前記融合タンパク質から切出した抗体重鎖及び抗体軽鎖を用いて抗体を構成する組換え抗体の製造方法であって、
前記融合タンパク質において、シャペロニンは2〜10個のシャペロニンサブユニットが互いにペプチド結合を介して連結したシャペロニン連結体であって、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖は上記シャペロニンサブユニットのN末端、C末端、及び/又は連結したシャペロニンサブユニット同士の連結部に、ペプチド結合を介して連結されていることを特徴とする組換え抗体の製造方法。
【選択図】 なし
【解決手段】シャペロニン遺伝子と抗体重鎖遺伝子及び/又は抗体軽鎖遺伝子とを含む遺伝子を転写・翻訳することによって、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をシャペロニンとペプチド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させ、前記融合タンパク質から切出した抗体重鎖及び抗体軽鎖を用いて抗体を構成する組換え抗体の製造方法であって、
前記融合タンパク質において、シャペロニンは2〜10個のシャペロニンサブユニットが互いにペプチド結合を介して連結したシャペロニン連結体であって、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖は上記シャペロニンサブユニットのN末端、C末端、及び/又は連結したシャペロニンサブユニット同士の連結部に、ペプチド結合を介して連結されていることを特徴とする組換え抗体の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大量生産が困難であった完全な組換え抗体を宿主生物系又は無細胞翻訳系で効率的に発現させることができ、精製も容易な組換え抗体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生物が外来細胞等の外来物質の侵入を克服又は除去する一連の過程が、徐々に明らかにされつつある。その過程の重要な部分に外来物質に特異的に結合する抗体の産生を挙げることができる。
抗体は、外来タンパク質、糖タンパク質、細胞又はその他の抗原性外来物質に反応して脊椎動物免疫系により産生される特異的な免疫グロブリンポリペプチドである。
【0003】
一般的な哺乳動物の抗体については、以前より幅広く研究が行われており、IgG、IgA、IgM、IgD及びIgEの5つのクラスに分類することができ、各クラスによって大きさ、電荷、アミノ酸組成、糖含量等が異なることが知られている。また、IgG及びIgAについては、その構造の違いによって、更にそれぞれ、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4及びIgA1、IgA2のサブクラスが存在する。
【0004】
これらの抗体はいずれも、4本鎖構造からなる基本構造単位をとり、全てのクラス及びサブクラスに共通である分子量約20000Daの2本の抗体軽鎖と、クラスやサブクラスによって分子量や構造が異なる分子量50000〜77000Daの2本の抗体重鎖とから構成されている。
【0005】
抗体の中でも、IgGは典型的な基本構造をとる。
IgGは抗体軽鎖内に2つ、抗体重鎖内に4つの鎖内ジスルフィド結合を有する。このジスルフィド結合で形成されたペプチドのループは、約110個のアミノ酸残基からなるドメインの中央部分に位置しており、抗体重鎖、抗体軽鎖ともにドメインの最初のN末端側が可変領域に相当し、抗体重鎖では残りの3つのドメインが、抗体軽鎖では残りの1つのドメインが定常領域となっている。また、X線結晶構造解析から、IgGはY型の構造を有することがわかっており、これは電子顕微鏡観察によっても確認されている。従って、IgGの構造は、抗体重鎖のN末端の2つのドメインと抗体軽鎖の類似したドメインとが対になって会合してFab領域を形成し、2本の抗体重鎖の残りのドメインがFc領域を形成している。
【0006】
抗体の持つ非常に特異性の高い抗原認識及び補体活性化等のエフェクター機能を積極的に利用して、体内に侵入した外来物質に対して、自発的な抗体産生だけではなく、体外から大量に抗体を投与することにより外来物質を排除するという抗体治療薬が以前より提唱されている。特に近年では、ヒトゲノムの解析がほぼ終了したことにより、新たな抗体治療薬の標的が発見されることが予想され、新しい抗体治療薬が次々と登場するものと考えられている。
【0007】
このような治療学的な観点からは、単一のリンパ球クローンから生産された原抗原の特定のエピトープに対して特異的なモノクローナル抗体が用いられることが多い。
かかるモノクローナル抗体を生産する系としては、これまで、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)を代表とする組換え哺乳動物発現系が主に使用されてきた。しかし、抗体治療薬は他の医薬品と比べて投与する量が桁違いに多いことから、CHO細胞を使用する現在の製造方法では、近い将来の抗体治療薬の種類及び普及の拡大に伴う需用の増加に対しては供給不足となることが懸念されている。
【0008】
これに対して、ヤギ、ヒツジや、ダイズ、トウモロコシ等のトランスジェニック動・植物を用いる抗体生産技術も研究が進められ、生産効率の向上が図られているが、その安全性や依然として低い生産性等の問題のため全幅の信頼を得られるには至っていない(非特許文献1)
【0009】
一方、安価でかつ安全な抗体の製造方法として、宿主として大腸菌を用いた抗体生産系が長年にわたって検討されている。増殖能に優れる大腸菌を用いることにより、工業的に効率よく抗体を生産することが期待されている。しかしながら、宿主として大腸菌を用いて抗体の生産を行う場合、抗体重鎖の定常領域(Fc領域)が細胞質内で難溶性であるため、大腸菌内で不溶性粒子を構成してしまうことから、これまでのところ、大腸菌による抗体発現は、Fc領域を除去したscFvやFab等の抗体断片に限定されていた。これらの抗体断片は、Fc領域を欠如しているため、抗原との結合後に起こる補体の活性化に伴う免疫応答による標的バクテリアの溶菌等を行うことはできず、抗体治療薬としては、充分な性能を発揮できなかった。
【0010】
また、上記抗体断片の発現についても、そのN末端にシグナル配列を付与してペリプラズム領域に発現させることが常套手段である。しかしながら、ペリプラズム領域は細胞質領域と比較して、非常に狭い領域であるため、タンパク質が発現される量も非常に少なく、たとえ、発現量が増やせたとしても、封入体となってしまう。細胞質内に抗体を可溶体として発現させようとする試みもいくつか報告されている。タンパク質のフォールディングに関与する分子シャペロンと抗体遺伝子を細胞質内で共発現発現させることで、組み換え抗体の封入体形成を防ぎ、可溶型の収量を増大させる工夫や、宿主大腸菌としてチオレドキシン還元酵素欠損株を用いる方法などが提案されている(特許文献1、非特許文献2)。しかしながら、これらの方法は、可溶型の抗体を得ることができるとはいえ、その収量は1mg/培地1リットル程度と低く(非特許文献3)、さらに生産効率の良い方法が必要とされていた。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−220092
【非特許文献1】
Zeitlin,L. et al., 1998, Nat.Biotechnol.16,184−185
【非特許文献2】
Ploba、 Gene 159,203−、1995年
【非特許文献3】
Levy、Protein Expression and Purification 23,338−, 2001年
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、大量生産が困難であった完全な組換え抗体を宿主生物系又は無細胞翻訳系で効率的に発現させることができ、精製も容易な組換え抗体の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シャペロニン遺伝子と抗体重鎖遺伝子及び/又は抗体軽鎖遺伝子とを含む遺伝子を転写・翻訳することによって、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をシャペロニンとペプチド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させ、前記融合タンパク質から切出した抗体重鎖及び抗体軽鎖を用いて抗体を構成する組換え抗体の製造方法であって、前記融合タンパク質において、シャペロニンは2〜10個のシャペロニンサブユニットが互いにペプチド結合を介して連結したシャペロニン連結体であり、上記シャペロニンサブユニットのN末端、C末端、又は/及び連結したシャペロニンサブユニット同士の連結部に、ペプチド結合を介して抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖が連結されていることを特徴とする組換え抗体の製造方法である。好ましくは、少なくとも前記シャペロニン連結体と抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖が連結している融合タンパク質を含む、5〜10個のシャペロニンサブユニットからなるシャペロニンリングが、リング面を介して非共有結合的に会合した2層構造を形成しており、前記抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖は、前記シャペロニンリングの内部に収納されていることを特徴とする組換え抗体の製造方法を基本とする。得られたシャペロニン及び抗体の融合タンパク質から、重鎖及び軽鎖抗体断片をそれぞれ切り出し、インビトロで両者を再構成させることを特徴とする。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1) シャペロニン遺伝子と抗体重鎖遺伝子及び/又は抗体軽鎖遺伝子とを含む遺伝子を転写・翻訳することによって、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をシャペロニンとペプチド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させ、前記融合タンパク質から切出した抗体重鎖及び抗体軽鎖を用いて抗体を構成する組換え抗体の製造方法であって、
前記融合タンパク質において、シャペロニンは2〜10個のシャペロニンサブユニットが互いにペプチド結合を介して連結したシャペロニン連結体であって、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖は上記シャペロニンサブユニットのN末端、C末端、及び/又は連結したシャペロニンサブユニット同士の連結部に、ペプチド結合を介して連結されていることを特徴とする組換え抗体の製造方法、
(2)前記融合タンパク質において、シャペロニンは5〜10個のシャペロニンサブユニットからなる2つのシャペロニンリングが、リング面を介して非共有結合的に会合した2層構造を形成しており、前記抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖は、前記シャペロニンリングの内部に収納されていることを特徴とする上記(1)に記載の組換え抗体の製造方法、
(3) 少なくとも、
シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、
工程1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質を発現する工程2と、
工程2で得られたシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質から抗体重鎖を切出す工程3と、
シャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製する工程1’と、
工程1’で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質を発現する工程2’と、
工程2’で得られたシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質から抗体軽鎖を切出す工程3’と、
切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程4とを有する
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の組換え抗体の製造方法、
(4) 少なくとも、
シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子とを組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、
工程1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程2と、
工程2で得られたシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質と前記シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とから抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出す工程3と、
切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程4とを有する
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の組換え抗体の製造方法、
(5) 少なくとも、
シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子、及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子とを組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、
工程1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程2と、
工程2で得られたシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質から抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を切出す工程3と、
工程3で得られた抗体重鎖−抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程4とを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組換え抗体の製造方法。
(6) 少なくとも、
同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を各々組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、
工程1で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程2と、
工程2で得られたシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とから抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出す工程3と、
切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程4とを有する
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の組換え抗体の製造方法、
(7) 少なくとも
同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を各々組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、
工程1で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を発現する工程2と、
工程2で得られたシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質から抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を切出す工程3と、
工程3で得られた抗体重鎖−抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程4とを有する
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の組換え抗体の製造方法
に関する。
【0015】
また、本発明は、
(8)シャペロニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖の数比がn:1(nは1〜9)である融合タンパク質をコードする遺伝子を組込んだベクターと、1個又は2〜4個連結したシャペロニンのみをコードする遺伝子を組込んだベクターとを宿主細胞に形質転換して共発現させることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の組み換え抗体の製造方法、
(9) 切出された抗体重鎖と抗体軽鎖、又は、抗体重鎖−抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程4において、前記抗体に特異的な抗原を添加することを特徴とする上記(3)〜(8)のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法、
(10) シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質は、シャペロニンと抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖との連結部に限定分解型プロテアーゼの切断配列を有することを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法、
(11) シャペロニンサブユニット同士の連結部に限定分解型プロテアーゼの切断配列を有することを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法、
(12) シャペロニンは、バクテリア、古細菌又は真核生物に由来することを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法、
(13) 宿主は、バクテリア、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体、植物個体又は昆虫個体であることを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法、
(14) 無細胞翻訳系で行うことを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法、
(15) 抗体重鎖及び抗体軽鎖は、ヒト型抗体重鎖及びヒト型抗体軽鎖、ヒト化抗体重鎖及びヒト化抗体軽鎖、又は、ヒト由来の不変領域とヒト以外の哺乳動物由来の可変領域とを有する非ヒト/ヒトキメラ抗体重鎖及びヒト由来の不変領域とヒト以外の哺乳動物由来の可変領域とを有する非ヒト/ヒトキメラ抗体軽鎖であることを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法
に関する。
以下に本発明を詳述する。
【0016】
本発明の組換え抗体の製造方法では、まず、シャペロニン遺伝子と抗体重鎖遺伝子及び/又は抗体軽鎖遺伝子とを含む遺伝子を転写・翻訳することによって、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をシャペロニンとペプチド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させる。
上記シャペロニンとは、細胞に熱ショック等のストレスを与えることにより誘導される分子シャペロンと呼ばれるタンパク質群のなかで、分子量が約60kDaのもののことであり、バクテリア、古細菌及び真核生物の全ての生物に存在し、タンパク質の折り畳み支援や変性防御の機能を有するものである。
【0017】
上記シャペロニンは、図1に示したように、10〜20個のサブユニットからなる2層のリング構造(以下、構造体をシャペロニン複合体、リングをシャペロニンリングともいう)を形成する。例えば、図1に示した大腸菌シャペロニンの場合、内径4.5nm、高さ14.5nmの空洞(キャビティ)を有する。バクテリア、古細菌由来のシャペロニンは、遺伝子工学的に大腸菌細胞質可溶性画分にシャペロニン複合体として容易に大量生産させることが可能であり、このことは、様々のシャペロニンが大腸菌でも自己集合してシャペロニン複合体を形成できることを示している。
【0018】
X線結晶構造解析によれば、上記シャペロニン複合体の立体構造は、シャペロニンのN末端及びC末端はともにキャビティ側に位置し、フレキシビリティの高い構造となっている。特にC末端の少なくとも20アミノ酸はフレキシビリティの高い構造を示す(Georgeら、2000、Cell、100、P.561−573)。
【0019】
本発明の組換え抗体の製造方法では、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をシャペロニンとペプチド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させる。しかも、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖を上記シャペロニンリングの内部に収納させれば、抗体重鎖及び抗体軽鎖は細胞内環境から保護され、プロテアーゼによる消化を受けにくくすることができる。また、通常の発現時に見られるように発現した抗体重鎖及び抗体軽鎖の折り畳み中間体同士が多数会合することはなく、個々にシャペロニン複合体のキャビティ内に納められるため、封入体形成も抑えられる。
【0020】
上記融合タンパク質におけるシャペロニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖の連結パターンとしては、抗体重鎖又は抗体軽鎖がシャペロニン複合体のキャビティ内に確実に納まるように、シャペロニンのN末端、C末端、及び/又は、シャペロニン同士の連結間に抗体重鎖又は抗体軽鎖が配置されることが好ましい。
【0021】
本発明の組換え抗体の製造方法によれば、抗体重鎖及び抗体軽鎖をシャペロニンとの融合タンパク質として大量発現させることにより、従来法の問題点であった宿主細胞内での抗体重鎖定常領域の不溶性等の問題を解消することができ、得られた融合タンパク質からシャペロニンを切り離した後、生体外で抗体重鎖と抗体軽鎖とを構成することにより、これまで大量生産できなかった完全型の抗体を得ることが可能となる。
【0022】
上記シャペロニンとしては、バクテリア、古細菌及び真核生物に由来することが好ましい。
上記シャペロニンとしては、リング構造への自己集合能が維持されていれば、野生型のみならずアミノ酸変異体も使用可能である。例えば、シャペロニンの各サブユニットの会合力が弱められた変異体を用いた場合、格納された抗体重鎖又は抗体軽鎖の回収がより容易になる。また、宿主としてバクテリアを用いてシャペロニン構造体を発現させる場合、宿主と同じバクテリア由来のシャペロニンを用いれば、発現量が多く抗体生産の効率が向上することから、宿主と同じ由来のシャペロニンを用いることが好ましい。
【0023】
ただし、上記シャペロニン複合体の構造は由来生物によって若干相違する。例えば、バクテリア由来のシャペロニンリングのサブユニット構成数は7個であり、古細菌由来のシャペロニンリングでは8〜9個、真核生物由来のシャペロニンリングでは8個である。
本発明では、使用するシャペロニンの由来により、シャペロニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖の数の比を選択することが好ましい。シャペロニン:抗体重鎖又はシャペロニン:抗体軽鎖の比としては、1:1〜12:1が可能であるが、好ましくは1:1〜9:1である。9:1よりもシャペロニンの数の比が大きくなると、発現する抗体重鎖又は抗体軽鎖の実質的な生産量が少なくなるとともに、シャペロニンによるリング構造の形成も困難となることがある。
【0024】
具体的には、シャペロニンサブユニットの構成数が7個であるバクテリア由来のシャペロニンを用いる場合には、シャペロニン複合体の構造形成のしやすさからシャペロニン:抗体重鎖又はシャペロニン:抗体軽鎖の数の比は、1:1又は7:1であることが好ましく、シャペロニンサブユニットの構成数が8個である古細菌由来のシャペロニンを用いる場合には、シャペロニン複合体の構造形成のしやすさからシャペロニン:抗体重鎖又はシャペロニン:抗体軽鎖の比は、1:1、2:1、4:1又は8:1であることが好ましい。
【0025】
本発明の組換え抗体の製造方法としては、例えば、シャペロニンと抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製し、この発現ベクターを宿主に導入して抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をシャペロニンとペプチド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させ、この融合タンパク質から抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出し、切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する方法が挙げられる。この際、シャペロニン−抗体重鎖、及び、シャペロニン−抗体軽鎖の発現プラスミドを各々の宿主に導入し、各々を別々の宿主で発現させてもかまわないし、後述するような方法で、同一宿主に両遺伝子導入し、同一宿主内で両者を発現させてもかまわない。
【0026】
ただし、一般的に、大腸菌等では発現プラスミドは10kbp以上の大きさになるとコピー数が減少し、結果的に目的タンパク質の発現量が低下することがある。例えば、シャペロニンが8つ連結した融合タンパク質を1つのプラスミドで生産しようとすると、発現プラスミドは15kbp以上にもなり、効率的な発現ができないことがある。
従って、プラスミドを導入するにあたっては、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質をコードする遺伝子の大きさ、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質をコードする遺伝子の大きさ及びシャペロニンのみをコードする遺伝子の大きさ;得ようとするシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質におけるシャペロニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖との数比等を考慮することが必要となる。
更に、上述のシャペロニンリングを構成するシャペロニンサブユニットの数がシャペロニンの由来生物によって決まることを利用すれば、後述するように融合タンパク質内で抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を形成させることもできる。
宿主発現系については、秀潤社「バイオ実験イラストレイテッド」シリーズを参照することができる。
【0027】
本発明の組換え抗体の製造方法としては特に限定されないが、例えば、下記(1)〜(5)の方法が好適である。
上記組換え抗体の製造方法(1)は、少なくとも、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、工程1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質を発現する工程2と、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質より抗体重鎖を切出す工程3、及び、シャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製する工程1’と、工程1’で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質を発現する工程2’と、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質より抗体重鎖を切出す工程3’と、切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程4とを有する。
この方法は、別々の工程で作製した抗体重鎖と抗体軽鎖とを、インビトロで再構成するものである。この方法の概念図をシャペロニンリングのサブユニット構成数が8個である古細菌由来のシャペロニンを用いる場合を例として図2−1に示した。
【0028】
上記組換え抗体の製造方法(2)は、少なくとも、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子とを組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、工程1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程2と、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とから抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出す工程3と、切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程4とを有する。
【0029】
この方法では、例えば、図3−2に示したように、シャペロニンリングのシャペロニンサブユニットの構成数が8個である古細菌由来のシャペロニンを用いる場合において、シャペロニン:抗体重鎖及びシャペロニン:抗体軽鎖の比が8:1となるようにシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製し、宿主細胞に形質転換を行う。その結果、宿主細胞内では1つのシャペロニンリング内に抗体重鎖又は抗体軽鎖が1つ格納された融合タンパク質が発現する。この方法では、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質が宿主細胞内に同時に存在しているため、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質を同時に精製することが可能であり、また、それに続く重鎖及び軽鎖の切り出しも同時に行うことができる。
【0030】
上記組換え抗体の製造方法(3)は、少なくとも、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子とを組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、工程1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程2と、シャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質より抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を切出す工程3と、工程3で得られた抗体重鎖−抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程4とを有する。
この方法では、例えば、図3−3に示したように、シャペロニンリングのシャペロニンサブユニットの構成数が7個であるバクテリア由来のシャペロニンを用いる場合において、シャペロニン:抗体重鎖の比及びシャペロニン:抗体軽鎖の比がそれぞれ4:1及び3:1となるようにシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製し、宿主細胞に形質転換を行う。その結果、宿主細胞内では1つのシャペロニンリング内に抗体重鎖及び抗体軽鎖が1つずつ格納された融合タンパク質が発現し、抗体重鎖と抗体軽鎖はシャペロニンリング内において複合体を形成することができる。この方法では、シャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質が宿主細胞内に存在しているため、シャペロニンから切出すことにより、抗体重鎖−抗体軽鎖複合体の回収が可能である。更に、この方法では、抗体重鎖−抗体軽鎖間や抗体重鎖−抗体重鎖間のジスルフィド結合を形成させ、完全型抗体を構成する際に、誤ったジスルフィド結合の形成を抑制することが可能となるため、完全型抗体の収率増加に有効である。
【0031】
上記組換え抗体の製造方法(4)は、少なくとも、同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を各々組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、工程1で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程2と、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質より抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出す工程3と、切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程4とを有する。
【0032】
この方法では、例えば、図4−4に示したように、シャペロニンリングのシャペロニンサブユニットの構成数が8個である古細菌由来のシャペロニンを用いる場合において、シャペロニン:抗体重鎖及びシャペロニン:抗体軽鎖の比が8:1となるようにシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質をコードする遺伝子とを各々組み込んだ発現ベクターを作製し、同一の宿主細胞に形質転換を行い共発現させる。その結果、宿主細胞内では1つのシャペロニンリング内に抗体重鎖又は抗体軽鎖が1つ格納された融合タンパク質が発現する。この方法によれば、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子とシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子とを1つの発現ベクターに組み込む方法に比べて、発現ベクターの巨大化を防止し、そのコピー数の減少を抑制することにより、発現量の低下を防ぐことができる。この方法においては、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質が1つの宿主細胞内に同時に存在しているため、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質を同時に精製することが可能であり、また、それに続く重鎖及び軽鎖の切り出しも同時に行うことができる。
【0033】
上記組換え抗体の製造方法(5)は、少なくとも同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を各々組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、工程1で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を発現する工程2と、シャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質より抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を切出す工程3と、工程3で得られた抗体重鎖−抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程4とを有する。
この方法では、例えば、図4−5に示したようにシャペロニンリングのシャペロニンサブユニットの構成数が7個であるバクテリア由来のシャペロニンを用いる場合において、シャペロニン:抗体重鎖の比が4:1となるシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターとシャペロニン:抗体軽鎖の比が3:1となるシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターとを作製し、これらを用いて同一の宿主細胞を形質転換して共発現させる。その結果、宿主細胞内では1つのシャペロニンリング内に抗体重鎖及び抗体軽鎖が1つずつ格納されたシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質が発現し、抗体重鎖と抗体軽鎖はシャペロニンリング内において複合体を形成することができる。この方法によれば、発現ベクターの巨大化を防止し、そのコピー数の減少を抑制することにより、発現量の低下を防ぐことができる。この方法では、シャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質が宿主細胞内に存在しているため、シャペロニンから切出すことにより、抗体重鎖−抗体軽鎖複合体の回収が可能である。更に、この方法では、抗体重鎖−抗体軽鎖間や抗体重鎖−抗体重鎖間のジスルフィド結合を形成させ、完全型抗体を構成する際に、誤ったジスルフィド結合の形成を抑制することが可能となるため、完全型抗体の収率増加に有効である。
【0034】
また、本発明の組換え抗体の製造方法としては、同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子又はシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子と、シャペロニンのみをコードする遺伝子を各々組込み、これらのプラスミドを同一の宿主に導入する方法も好ましい。この方法によれば、シャペロン複合体の構造を制御することができる。例えば、シャペロニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖の数比が4:1である融合タンパク質をコードする遺伝子を組込んだベクターと、1個又は2〜4個連結したシャペロニンのみをコードする遺伝子を組込んだベクターとを宿主細胞に形質転換して共発現させることになる。その結果、1つのシャペロニンリング内に抗体重鎖又は抗体軽鎖が1つ格納された融合タンパク質が宿主細胞内で発現する。この方法は、発現ベクターの巨大化を防止し、そのコピー数の減少を抑制することにより、発現量の低下を防ぐことができる。
【0035】
上記宿主としては特に限定されず、例えば大腸菌等のバクテリア、その他の原核細胞、酵母、昆虫細胞、哺乳動物培養細胞、植物培養細胞、及び、トランスジェニック動・植物等が挙げられる。なかでも、高い細胞増殖特性を有し、培養操作が簡便でかつ培養に用いる栄養源等のコストが安価であることから、大腸菌等のバクテリアや酵母等が好適である。また、宿主の細胞質内、細胞外のいずれに発現させてもかまわないが、大量に発現させる場合には細胞内に発現させる方が望ましい。
さらに、バクテリア、真核生物抽出液等を用いた無細胞翻訳系(例えば、Spirin, A.S., 1991, Science 11, 2656−2664: Falcone, D. et al., 1991, Mol. Cell. Biol. 11, 2656−2664)でも、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質及びシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を可溶性タンパク質として発現させることが可能である。
【0036】
本発明の組換え抗体の製造方法では、発現したシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を精製し、次いで抗体重鎖、抗体軽鎖又は抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を切り出す。
シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とを同一宿主内で共発現させた場合には、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質を同時に精製することが可能であり、またそれに続く抗体重鎖及び抗体軽鎖の切り出しも同時に行うことができる。
また、シャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を発現させた場合には、シャペロニンリングの中で抗体重鎖−抗体軽鎖複合体が形成されていることから、精製後、抗体重鎖−抗体軽鎖複合体として回収することが可能である。
【0037】
発現したシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を精製する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、以下のような方法等が挙げられる。
即ち、まず、宿主内でシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を発現させた後、宿主細胞を適当な緩衝液中で破砕し、得られた上清を疎水クロマトグラフィーやイオン交換クロマトグラフィーによって融合タンパク質の存在するフラクションを回収する。次いで、得られたフラクションを限外ろ過によって濃縮した後、濃縮液を5〜50mM程度の塩化マグネシウム及び50〜300mM程度の塩化ナトリウム又は塩化カリウムが含有された緩衝液を展開液としてゲルろ過を行い、排除限界直後のピークを回収することによってシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を精製することができる。
【0038】
シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質のN末端又はC末端に6〜10個のヒスチジンが並んだタッグを連結させた場合には、ニッケル等の金属キレートカラムにより簡便で効率的に精製することができる。ただし、最終的に得られた抗体を治療薬として用いるためには、ヒスチジンタグの除去の必要性が発生する可能性があるため、抗体重鎖又は抗体軽鎖を融合させていないペプチド末端にヒスチジンタグを連結することが好ましい。
【0039】
シャペロニンが耐熱性のものである場合には、宿主細胞を破砕した上澄みを60〜80℃で熱処理することにより、大部分の宿主由来タンパク質は沈殿するので、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質の精製をより簡略化することができる。抗体重鎖、抗体軽鎖及び抗体重鎖−抗体軽鎖複合体は熱に対して不安定であるが、シャペロニンの空洞内部に保持されているので、変性することはない。
【0040】
本発明の組換え抗体の製造方法では、次いで、精製したシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質から抗体重鎖、抗体軽鎖又は抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を切り出す。
切り出しの方法としては特に限定されず、例えば、以下のような方法が挙げられる。
即ち、精製し、回収した画分をEDTA(エチレンジアミン四酢酸)処理した後、マグネシウム及びATPが入っていない緩衝液に対して透析を行いマグネシウム及びATPを除去する。多くのシャペロニンサブユニット間の会合は、マグネシウムイオン及びATPによって安定化されていることから、マグネシウムイオン及びATPを除去することにより、シャペロニンサブユニット間の相互作用は解除され立体構造は壊れ、抗体重鎖、抗体軽鎖又は抗体重鎖−抗体軽鎖複合体が露出する。
【0041】
予め、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質において、シャペロニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖との連結部が限定分解型プロテアーゼの切断配列を有するようにしておけば、透析内液にトロンビン等の限定分解型プロテアーゼを作用させることにより極めて容易に抗体重鎖又は抗体軽鎖を切り出すことができるので好ましい。
【0042】
また、予めシャペロニン構造体のシャペロニンサブユニットの連結部が限定分解型プロテアーゼの切断配列を有するようにしておけば、透析内液にトロンビン等の限定分解型プロテアーゼを作用させることによりシャペロニンの立体構造が崩壊し、極めて容易に抗体重鎖又は抗体軽鎖を切り出すことができるので好ましい。
【0043】
このようにして切断された抗体重鎖、抗体軽鎖及び抗体重鎖−抗体軽鎖複合体は、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー又は種々のアフィニィティクロマトグラフィーに供することによって容易に回収することができる。
【0044】
本発明の組換え抗体の製造方法では、最後に切り出された抗体重鎖と抗体軽鎖、又は、抗体重鎖−抗体軽鎖複合体から抗体を構成する。
抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する方法としては特に限定されないが、例えば、生体外で行う方法としては以下のような方法が挙げられる。
即ち、切り出された抗体重鎖と抗体軽鎖の混合物を10mMジチオトレイトール(DTT)等の緩和な条件下で還元することによって各々の分子内ジスルフィド結合を維持した状態で抗体重鎖と抗体軽鎖とを完全に解離し、ゲルろ過または透析等によりDTTの除去した後、空気酸化することにより抗体重鎖−抗体軽鎖及び抗体重鎖−抗体重鎖間のジスルフィド結合の形成させ、抗体を構成させる。また、空気酸化の際に、目的とする抗体が認識する抗原を添加すれば、抗体重鎖と抗体軽鎖との会合が促進され、抗体の収率が向上するので好ましい。
【0045】
本発明の組換え抗体の製造方法によれば、従来の方法ではできなかった、完全な抗体を、大量かつ容易に製造することができる。
本発明の組換え抗体の製造方法により製造される抗体としては特に限定されないが、製造した抗体を医薬として使用する場合には、その安全性や生体内における半減期等の点から完全ヒト型抗体が好ましい。しかし、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の抗原結合部位だけを残してヒト由来の抗体に置換したヒト化抗体や、ヒト由来の不変領域とヒト以外の哺乳動物由来の可変領域を有する非ヒト/ヒトキメラ抗体も好適である。また、抗体重鎖は抗体軽鎖に比べて難発現性であることから、抗体重鎖のみを本発明の方法により得、通常の直接発現法で得た抗体軽鎖と生体外で構成して完全抗体を得てもよい。
【0046】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
実施例1
(シャペロニン連結体の発現系構築)
配列番号1に示されたシャペロニンβサブユニット(TCPβ)遺伝子をThermococcus KS−1株ゲノムを鋳型とするPCR(Polymerase chain reaction)によってクローニングした。TCPβ遺伝子が一方向に4回連結した遺伝子断片が挿入されたT7プロモーターを有する発現ベクターpETDH(TCPβ)4を構築した(図3)。シャペロニン遺伝子を4つ連結させた更に下流には、アフィニティータグをコードする遺伝子を挿入するためのサイトとして、SpeI及びHpaIを設けた。また、シャペロニン遺伝子連結部と上記SpeIサイトの間に、翻訳されてプレシジョンプロテアーゼとなるサイトを、HpaIサイトの下流には翻訳されてヒスチジン6残基からなるヒスチジンタグとなるサイトをそれぞれ設けた(図3)。
【0048】
実施例2
(抗体重鎖の発現)
配列番号2に示したヒト由来抗HBs(B型肝炎ウイルス表層タンパク)抗体の重鎖(AbH)遺伝子をPCR法により増幅した。PCR産物の5‘末端にはSpeIサイトを、3’末端にはHpaIサイトをそれぞれ設けた。このPCR産物をSpeIおよびHpaI処理し、あらかじめ同制限酵素で処理した発現ベクターpETDH(TCPβ)4に組込んだ。これにより、シャペロニンβサブユニットTCPβ4量体とAbHとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpETDH(TCPβ)4・AbHを構築した。
【0049】
得られた発現ベクターpETDH(TCPβ)4・AbHを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、カルベニシリン(100μg/ml)を含む2XY.T.培地(バクトトリプトン 16g、酵母エキス 10g、NaCl 5g/L)で30℃、24時間培養し、シャペロニンβサブユニットTCPβ4量体とAbHとの融合蛋白質を発現させた。次いで、菌体を25mM HEPES緩衝液/1mM EDTA(pH6.8)に懸濁し、超音波処理にて菌体を破砕後、その可溶性画分をSDS−PAGEに供した。クマシーブリラントブルー染色によって分析した結果、シャペロニンβサブユニットTCPβ4量体とAbHとの融合蛋白質に相当するサイズのバンドが検出された(図6−1)。上記可溶性画分を25mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)に透析後、ニッケルキレートセファロースカラムにアプライした。1mMイミダゾールを含有する25mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)で充分に洗浄後、100mMイミダゾールを含有する同緩衝液でニッケルキレートセファロースに吸着した画分を溶出した。得られた精製画分を透析によってイミダゾールを除き、プレシジョンプロテアーゼ処理(4℃、20時間)することにより、シャペロニン連結体とAbHとを切断した(図6−2)。SDS−PAGE、及び、抗ヒトIgG抗体(HRPコンジュゲート)を用いたウエスターンブロッティングを行った結果、AbHに相当するバンドが特異的に検出された。このことからAbHがTCPβ4量体との融合蛋白質として大腸菌可溶性画分に発現することがわかった。
【0050】
実施例3
(抗体軽鎖の発現)
実施例2に示した抗体重鎖遺伝子の代わりに配列番号3に示したヒト由来抗HBs(B型肝炎ウイルス表層タンパク)抗体の軽鎖(AbL)遺伝子をPCR法で増幅し、同様の方法で発現ベクターpETDH(TCPβ)4に組み込んだ。これにより、シャペロニンβサブユニットTCPβ4量体とAbLとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpETDH(TCPβ)4・AbLを構築した。得られた発現ベクターを用い、実施例2と同様の方法でシャペロニンβサブユニットTCPβ4量体とAbLとの融合蛋白質を発現させた(図6−3)。さらに、同様の方法でプレシジョンプロテアーゼ処理の後SDS−PAGEを行い(図6−4)、ウエスターンブロッティングを行った結果、AbLに相当するバンドが特異的に検出された。このことからAbLがTCPβ4量体との融合蛋白質として大腸菌可溶性画分に発現することがわかった。
【0051】
実施例4
(抗体重鎖及び軽鎖のアセンブリー)
実施例2及び実施例3で得られた抗体重鎖および抗体軽鎖を含むタンパク質溶液を混合し、非還元条件下で4℃にて3時間透析した。透析後、プロテインGビーズ懸濁液を添加し、室温にて60分間攪拌することにより、重鎖及び軽鎖がアセンブリーした抗体をビーズ上に回収した。ビーズをPBS緩衝液で洗浄後、さらに100mM グリシン−HCl緩衝液(pH2.5)で10分間ビーズをインキュベートし、上清を回収した。得られた画分をSDS−PAGEによって分離後、ウエスタンブロッティングによって分析した。重鎖のみの反応液についてはビーズ吸着画分に大部分が回収されたのに対し(図7 レーン1,2)、軽鎖のみの反応液については、ほとんどが非吸着画分に回収された(図7 レーン3,4)。一方、重鎖及び軽鎖の混合液については、ビーズ吸着画分に重鎖だけでなく軽鎖も同時に検出された(図7 レーン5,6)。このことは軽鎖が重鎖と結合していることを示すものであり、両者が正しくアセンブリーしていることを示唆するものと考えられた。
【0052】
実施例5
(組み換え抗体の抗原認識)
実施例4でアセンブリーして得られた抗HBs抗体(IgG)の抗原認識能は、ELISA法において一次抗体として機能するか否かで評価した。すなわち、B型肝炎ウイルス表層蛋白質を固定化した96穴プレートを50%ブロックエースにて固定化し、PBSにて洗浄後、実施例4で得られた抗HBs抗体を含むタンパク質溶液を一次抗体として添加し、室温にて3時間インキュベートした。PBSにて洗浄後、2次抗体として抗ヒトIgG−HRPコンジュゲートを含むPBSでインキュベートした。PBSにて洗浄後、HRPの基質としてABTS液を加え、5分間インキュベート後、プレートリーダーにてOD405を測定した。
【0053】
抗原としてHBsの代わりにリゾチームを用いたところ、それに対する結合はほとんど見られなかった。それに対し、抗原であるHBsに対しては特異的に結合していることがわかった(図8−1)。重鎖及び軽鎖をアセンブリーした抗体の結合活性は、重鎖のみで評価したものと比べて結合力が高く(図8−2)、重鎖と軽鎖が正しくアセンブリーしていることが示された。軽鎖のみで同様の操作を行ったものについてはほとんど抗原との結合は示さなかった(図8−3)。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、大量生産が困難であった完全な組換え抗体を宿主生物系又は無細胞翻訳系で効率的に発現させることができ、精製も容易な組換え抗体の製造方法を提供できる。本発明は宿主生物の細胞質に発現するので、大量の抗体を発現することができる。
【0055】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】大腸菌シャペロニンの構造を示す模式図である。
【図2】本発明の組換え抗体の製造方法の実施態様を示す模式図である。
【図3】本発明の組換え抗体の製造方法の実施態様を示す模式図である。
【図4】本発明の組換え抗体の製造方法の実施態様を示す模式図である。
【図5】サブユニット構成数4個の古細菌由来のシャペロニン連結体を発現させるベクターの構成例を示す図である。
【図6】シャペロニン−抗体重鎖及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質の発現、及び、プロテアーゼによる切り出し例を示す図である。
【図7】抗体重鎖及び抗体軽鎖のインビトロ再構成を示す図である。
【図8】再構成して得られた抗体の抗原認識能を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、大量生産が困難であった完全な組換え抗体を宿主生物系又は無細胞翻訳系で効率的に発現させることができ、精製も容易な組換え抗体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、生物が外来細胞等の外来物質の侵入を克服又は除去する一連の過程が、徐々に明らかにされつつある。その過程の重要な部分に外来物質に特異的に結合する抗体の産生を挙げることができる。
抗体は、外来タンパク質、糖タンパク質、細胞又はその他の抗原性外来物質に反応して脊椎動物免疫系により産生される特異的な免疫グロブリンポリペプチドである。
【0003】
一般的な哺乳動物の抗体については、以前より幅広く研究が行われており、IgG、IgA、IgM、IgD及びIgEの5つのクラスに分類することができ、各クラスによって大きさ、電荷、アミノ酸組成、糖含量等が異なることが知られている。また、IgG及びIgAについては、その構造の違いによって、更にそれぞれ、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4及びIgA1、IgA2のサブクラスが存在する。
【0004】
これらの抗体はいずれも、4本鎖構造からなる基本構造単位をとり、全てのクラス及びサブクラスに共通である分子量約20000Daの2本の抗体軽鎖と、クラスやサブクラスによって分子量や構造が異なる分子量50000〜77000Daの2本の抗体重鎖とから構成されている。
【0005】
抗体の中でも、IgGは典型的な基本構造をとる。
IgGは抗体軽鎖内に2つ、抗体重鎖内に4つの鎖内ジスルフィド結合を有する。このジスルフィド結合で形成されたペプチドのループは、約110個のアミノ酸残基からなるドメインの中央部分に位置しており、抗体重鎖、抗体軽鎖ともにドメインの最初のN末端側が可変領域に相当し、抗体重鎖では残りの3つのドメインが、抗体軽鎖では残りの1つのドメインが定常領域となっている。また、X線結晶構造解析から、IgGはY型の構造を有することがわかっており、これは電子顕微鏡観察によっても確認されている。従って、IgGの構造は、抗体重鎖のN末端の2つのドメインと抗体軽鎖の類似したドメインとが対になって会合してFab領域を形成し、2本の抗体重鎖の残りのドメインがFc領域を形成している。
【0006】
抗体の持つ非常に特異性の高い抗原認識及び補体活性化等のエフェクター機能を積極的に利用して、体内に侵入した外来物質に対して、自発的な抗体産生だけではなく、体外から大量に抗体を投与することにより外来物質を排除するという抗体治療薬が以前より提唱されている。特に近年では、ヒトゲノムの解析がほぼ終了したことにより、新たな抗体治療薬の標的が発見されることが予想され、新しい抗体治療薬が次々と登場するものと考えられている。
【0007】
このような治療学的な観点からは、単一のリンパ球クローンから生産された原抗原の特定のエピトープに対して特異的なモノクローナル抗体が用いられることが多い。
かかるモノクローナル抗体を生産する系としては、これまで、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)を代表とする組換え哺乳動物発現系が主に使用されてきた。しかし、抗体治療薬は他の医薬品と比べて投与する量が桁違いに多いことから、CHO細胞を使用する現在の製造方法では、近い将来の抗体治療薬の種類及び普及の拡大に伴う需用の増加に対しては供給不足となることが懸念されている。
【0008】
これに対して、ヤギ、ヒツジや、ダイズ、トウモロコシ等のトランスジェニック動・植物を用いる抗体生産技術も研究が進められ、生産効率の向上が図られているが、その安全性や依然として低い生産性等の問題のため全幅の信頼を得られるには至っていない(非特許文献1)
【0009】
一方、安価でかつ安全な抗体の製造方法として、宿主として大腸菌を用いた抗体生産系が長年にわたって検討されている。増殖能に優れる大腸菌を用いることにより、工業的に効率よく抗体を生産することが期待されている。しかしながら、宿主として大腸菌を用いて抗体の生産を行う場合、抗体重鎖の定常領域(Fc領域)が細胞質内で難溶性であるため、大腸菌内で不溶性粒子を構成してしまうことから、これまでのところ、大腸菌による抗体発現は、Fc領域を除去したscFvやFab等の抗体断片に限定されていた。これらの抗体断片は、Fc領域を欠如しているため、抗原との結合後に起こる補体の活性化に伴う免疫応答による標的バクテリアの溶菌等を行うことはできず、抗体治療薬としては、充分な性能を発揮できなかった。
【0010】
また、上記抗体断片の発現についても、そのN末端にシグナル配列を付与してペリプラズム領域に発現させることが常套手段である。しかしながら、ペリプラズム領域は細胞質領域と比較して、非常に狭い領域であるため、タンパク質が発現される量も非常に少なく、たとえ、発現量が増やせたとしても、封入体となってしまう。細胞質内に抗体を可溶体として発現させようとする試みもいくつか報告されている。タンパク質のフォールディングに関与する分子シャペロンと抗体遺伝子を細胞質内で共発現発現させることで、組み換え抗体の封入体形成を防ぎ、可溶型の収量を増大させる工夫や、宿主大腸菌としてチオレドキシン還元酵素欠損株を用いる方法などが提案されている(特許文献1、非特許文献2)。しかしながら、これらの方法は、可溶型の抗体を得ることができるとはいえ、その収量は1mg/培地1リットル程度と低く(非特許文献3)、さらに生産効率の良い方法が必要とされていた。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−220092
【非特許文献1】
Zeitlin,L. et al., 1998, Nat.Biotechnol.16,184−185
【非特許文献2】
Ploba、 Gene 159,203−、1995年
【非特許文献3】
Levy、Protein Expression and Purification 23,338−, 2001年
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑み、大量生産が困難であった完全な組換え抗体を宿主生物系又は無細胞翻訳系で効率的に発現させることができ、精製も容易な組換え抗体の製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シャペロニン遺伝子と抗体重鎖遺伝子及び/又は抗体軽鎖遺伝子とを含む遺伝子を転写・翻訳することによって、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をシャペロニンとペプチド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させ、前記融合タンパク質から切出した抗体重鎖及び抗体軽鎖を用いて抗体を構成する組換え抗体の製造方法であって、前記融合タンパク質において、シャペロニンは2〜10個のシャペロニンサブユニットが互いにペプチド結合を介して連結したシャペロニン連結体であり、上記シャペロニンサブユニットのN末端、C末端、又は/及び連結したシャペロニンサブユニット同士の連結部に、ペプチド結合を介して抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖が連結されていることを特徴とする組換え抗体の製造方法である。好ましくは、少なくとも前記シャペロニン連結体と抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖が連結している融合タンパク質を含む、5〜10個のシャペロニンサブユニットからなるシャペロニンリングが、リング面を介して非共有結合的に会合した2層構造を形成しており、前記抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖は、前記シャペロニンリングの内部に収納されていることを特徴とする組換え抗体の製造方法を基本とする。得られたシャペロニン及び抗体の融合タンパク質から、重鎖及び軽鎖抗体断片をそれぞれ切り出し、インビトロで両者を再構成させることを特徴とする。
【0014】
すなわち、本発明は、
(1) シャペロニン遺伝子と抗体重鎖遺伝子及び/又は抗体軽鎖遺伝子とを含む遺伝子を転写・翻訳することによって、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をシャペロニンとペプチド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させ、前記融合タンパク質から切出した抗体重鎖及び抗体軽鎖を用いて抗体を構成する組換え抗体の製造方法であって、
前記融合タンパク質において、シャペロニンは2〜10個のシャペロニンサブユニットが互いにペプチド結合を介して連結したシャペロニン連結体であって、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖は上記シャペロニンサブユニットのN末端、C末端、及び/又は連結したシャペロニンサブユニット同士の連結部に、ペプチド結合を介して連結されていることを特徴とする組換え抗体の製造方法、
(2)前記融合タンパク質において、シャペロニンは5〜10個のシャペロニンサブユニットからなる2つのシャペロニンリングが、リング面を介して非共有結合的に会合した2層構造を形成しており、前記抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖は、前記シャペロニンリングの内部に収納されていることを特徴とする上記(1)に記載の組換え抗体の製造方法、
(3) 少なくとも、
シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、
工程1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質を発現する工程2と、
工程2で得られたシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質から抗体重鎖を切出す工程3と、
シャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製する工程1’と、
工程1’で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質を発現する工程2’と、
工程2’で得られたシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質から抗体軽鎖を切出す工程3’と、
切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程4とを有する
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の組換え抗体の製造方法、
(4) 少なくとも、
シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子とを組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、
工程1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程2と、
工程2で得られたシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質と前記シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とから抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出す工程3と、
切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程4とを有する
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の組換え抗体の製造方法、
(5) 少なくとも、
シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子、及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子とを組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、
工程1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程2と、
工程2で得られたシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質から抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を切出す工程3と、
工程3で得られた抗体重鎖−抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程4とを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組換え抗体の製造方法。
(6) 少なくとも、
同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を各々組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、
工程1で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程2と、
工程2で得られたシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とから抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出す工程3と、
切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程4とを有する
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の組換え抗体の製造方法、
(7) 少なくとも
同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を各々組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、
工程1で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を発現する工程2と、
工程2で得られたシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質から抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を切出す工程3と、
工程3で得られた抗体重鎖−抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程4とを有する
ことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の組換え抗体の製造方法
に関する。
【0015】
また、本発明は、
(8)シャペロニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖の数比がn:1(nは1〜9)である融合タンパク質をコードする遺伝子を組込んだベクターと、1個又は2〜4個連結したシャペロニンのみをコードする遺伝子を組込んだベクターとを宿主細胞に形質転換して共発現させることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の組み換え抗体の製造方法、
(9) 切出された抗体重鎖と抗体軽鎖、又は、抗体重鎖−抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程4において、前記抗体に特異的な抗原を添加することを特徴とする上記(3)〜(8)のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法、
(10) シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質は、シャペロニンと抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖との連結部に限定分解型プロテアーゼの切断配列を有することを特徴とする上記(1)〜(9)のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法、
(11) シャペロニンサブユニット同士の連結部に限定分解型プロテアーゼの切断配列を有することを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法、
(12) シャペロニンは、バクテリア、古細菌又は真核生物に由来することを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法、
(13) 宿主は、バクテリア、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体、植物個体又は昆虫個体であることを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法、
(14) 無細胞翻訳系で行うことを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法、
(15) 抗体重鎖及び抗体軽鎖は、ヒト型抗体重鎖及びヒト型抗体軽鎖、ヒト化抗体重鎖及びヒト化抗体軽鎖、又は、ヒト由来の不変領域とヒト以外の哺乳動物由来の可変領域とを有する非ヒト/ヒトキメラ抗体重鎖及びヒト由来の不変領域とヒト以外の哺乳動物由来の可変領域とを有する非ヒト/ヒトキメラ抗体軽鎖であることを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法
に関する。
以下に本発明を詳述する。
【0016】
本発明の組換え抗体の製造方法では、まず、シャペロニン遺伝子と抗体重鎖遺伝子及び/又は抗体軽鎖遺伝子とを含む遺伝子を転写・翻訳することによって、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をシャペロニンとペプチド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させる。
上記シャペロニンとは、細胞に熱ショック等のストレスを与えることにより誘導される分子シャペロンと呼ばれるタンパク質群のなかで、分子量が約60kDaのもののことであり、バクテリア、古細菌及び真核生物の全ての生物に存在し、タンパク質の折り畳み支援や変性防御の機能を有するものである。
【0017】
上記シャペロニンは、図1に示したように、10〜20個のサブユニットからなる2層のリング構造(以下、構造体をシャペロニン複合体、リングをシャペロニンリングともいう)を形成する。例えば、図1に示した大腸菌シャペロニンの場合、内径4.5nm、高さ14.5nmの空洞(キャビティ)を有する。バクテリア、古細菌由来のシャペロニンは、遺伝子工学的に大腸菌細胞質可溶性画分にシャペロニン複合体として容易に大量生産させることが可能であり、このことは、様々のシャペロニンが大腸菌でも自己集合してシャペロニン複合体を形成できることを示している。
【0018】
X線結晶構造解析によれば、上記シャペロニン複合体の立体構造は、シャペロニンのN末端及びC末端はともにキャビティ側に位置し、フレキシビリティの高い構造となっている。特にC末端の少なくとも20アミノ酸はフレキシビリティの高い構造を示す(Georgeら、2000、Cell、100、P.561−573)。
【0019】
本発明の組換え抗体の製造方法では、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をシャペロニンとペプチド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させる。しかも、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖を上記シャペロニンリングの内部に収納させれば、抗体重鎖及び抗体軽鎖は細胞内環境から保護され、プロテアーゼによる消化を受けにくくすることができる。また、通常の発現時に見られるように発現した抗体重鎖及び抗体軽鎖の折り畳み中間体同士が多数会合することはなく、個々にシャペロニン複合体のキャビティ内に納められるため、封入体形成も抑えられる。
【0020】
上記融合タンパク質におけるシャペロニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖の連結パターンとしては、抗体重鎖又は抗体軽鎖がシャペロニン複合体のキャビティ内に確実に納まるように、シャペロニンのN末端、C末端、及び/又は、シャペロニン同士の連結間に抗体重鎖又は抗体軽鎖が配置されることが好ましい。
【0021】
本発明の組換え抗体の製造方法によれば、抗体重鎖及び抗体軽鎖をシャペロニンとの融合タンパク質として大量発現させることにより、従来法の問題点であった宿主細胞内での抗体重鎖定常領域の不溶性等の問題を解消することができ、得られた融合タンパク質からシャペロニンを切り離した後、生体外で抗体重鎖と抗体軽鎖とを構成することにより、これまで大量生産できなかった完全型の抗体を得ることが可能となる。
【0022】
上記シャペロニンとしては、バクテリア、古細菌及び真核生物に由来することが好ましい。
上記シャペロニンとしては、リング構造への自己集合能が維持されていれば、野生型のみならずアミノ酸変異体も使用可能である。例えば、シャペロニンの各サブユニットの会合力が弱められた変異体を用いた場合、格納された抗体重鎖又は抗体軽鎖の回収がより容易になる。また、宿主としてバクテリアを用いてシャペロニン構造体を発現させる場合、宿主と同じバクテリア由来のシャペロニンを用いれば、発現量が多く抗体生産の効率が向上することから、宿主と同じ由来のシャペロニンを用いることが好ましい。
【0023】
ただし、上記シャペロニン複合体の構造は由来生物によって若干相違する。例えば、バクテリア由来のシャペロニンリングのサブユニット構成数は7個であり、古細菌由来のシャペロニンリングでは8〜9個、真核生物由来のシャペロニンリングでは8個である。
本発明では、使用するシャペロニンの由来により、シャペロニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖の数の比を選択することが好ましい。シャペロニン:抗体重鎖又はシャペロニン:抗体軽鎖の比としては、1:1〜12:1が可能であるが、好ましくは1:1〜9:1である。9:1よりもシャペロニンの数の比が大きくなると、発現する抗体重鎖又は抗体軽鎖の実質的な生産量が少なくなるとともに、シャペロニンによるリング構造の形成も困難となることがある。
【0024】
具体的には、シャペロニンサブユニットの構成数が7個であるバクテリア由来のシャペロニンを用いる場合には、シャペロニン複合体の構造形成のしやすさからシャペロニン:抗体重鎖又はシャペロニン:抗体軽鎖の数の比は、1:1又は7:1であることが好ましく、シャペロニンサブユニットの構成数が8個である古細菌由来のシャペロニンを用いる場合には、シャペロニン複合体の構造形成のしやすさからシャペロニン:抗体重鎖又はシャペロニン:抗体軽鎖の比は、1:1、2:1、4:1又は8:1であることが好ましい。
【0025】
本発明の組換え抗体の製造方法としては、例えば、シャペロニンと抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製し、この発現ベクターを宿主に導入して抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をシャペロニンとペプチド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させ、この融合タンパク質から抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出し、切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する方法が挙げられる。この際、シャペロニン−抗体重鎖、及び、シャペロニン−抗体軽鎖の発現プラスミドを各々の宿主に導入し、各々を別々の宿主で発現させてもかまわないし、後述するような方法で、同一宿主に両遺伝子導入し、同一宿主内で両者を発現させてもかまわない。
【0026】
ただし、一般的に、大腸菌等では発現プラスミドは10kbp以上の大きさになるとコピー数が減少し、結果的に目的タンパク質の発現量が低下することがある。例えば、シャペロニンが8つ連結した融合タンパク質を1つのプラスミドで生産しようとすると、発現プラスミドは15kbp以上にもなり、効率的な発現ができないことがある。
従って、プラスミドを導入するにあたっては、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質をコードする遺伝子の大きさ、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質をコードする遺伝子の大きさ及びシャペロニンのみをコードする遺伝子の大きさ;得ようとするシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質におけるシャペロニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖との数比等を考慮することが必要となる。
更に、上述のシャペロニンリングを構成するシャペロニンサブユニットの数がシャペロニンの由来生物によって決まることを利用すれば、後述するように融合タンパク質内で抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を形成させることもできる。
宿主発現系については、秀潤社「バイオ実験イラストレイテッド」シリーズを参照することができる。
【0027】
本発明の組換え抗体の製造方法としては特に限定されないが、例えば、下記(1)〜(5)の方法が好適である。
上記組換え抗体の製造方法(1)は、少なくとも、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、工程1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質を発現する工程2と、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質より抗体重鎖を切出す工程3、及び、シャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製する工程1’と、工程1’で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質を発現する工程2’と、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質より抗体重鎖を切出す工程3’と、切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程4とを有する。
この方法は、別々の工程で作製した抗体重鎖と抗体軽鎖とを、インビトロで再構成するものである。この方法の概念図をシャペロニンリングのサブユニット構成数が8個である古細菌由来のシャペロニンを用いる場合を例として図2−1に示した。
【0028】
上記組換え抗体の製造方法(2)は、少なくとも、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子とを組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、工程1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程2と、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とから抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出す工程3と、切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程4とを有する。
【0029】
この方法では、例えば、図3−2に示したように、シャペロニンリングのシャペロニンサブユニットの構成数が8個である古細菌由来のシャペロニンを用いる場合において、シャペロニン:抗体重鎖及びシャペロニン:抗体軽鎖の比が8:1となるようにシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製し、宿主細胞に形質転換を行う。その結果、宿主細胞内では1つのシャペロニンリング内に抗体重鎖又は抗体軽鎖が1つ格納された融合タンパク質が発現する。この方法では、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質が宿主細胞内に同時に存在しているため、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質を同時に精製することが可能であり、また、それに続く重鎖及び軽鎖の切り出しも同時に行うことができる。
【0030】
上記組換え抗体の製造方法(3)は、少なくとも、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子とを組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、工程1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程2と、シャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質より抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を切出す工程3と、工程3で得られた抗体重鎖−抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程4とを有する。
この方法では、例えば、図3−3に示したように、シャペロニンリングのシャペロニンサブユニットの構成数が7個であるバクテリア由来のシャペロニンを用いる場合において、シャペロニン:抗体重鎖の比及びシャペロニン:抗体軽鎖の比がそれぞれ4:1及び3:1となるようにシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製し、宿主細胞に形質転換を行う。その結果、宿主細胞内では1つのシャペロニンリング内に抗体重鎖及び抗体軽鎖が1つずつ格納された融合タンパク質が発現し、抗体重鎖と抗体軽鎖はシャペロニンリング内において複合体を形成することができる。この方法では、シャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質が宿主細胞内に存在しているため、シャペロニンから切出すことにより、抗体重鎖−抗体軽鎖複合体の回収が可能である。更に、この方法では、抗体重鎖−抗体軽鎖間や抗体重鎖−抗体重鎖間のジスルフィド結合を形成させ、完全型抗体を構成する際に、誤ったジスルフィド結合の形成を抑制することが可能となるため、完全型抗体の収率増加に有効である。
【0031】
上記組換え抗体の製造方法(4)は、少なくとも、同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を各々組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、工程1で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程2と、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質より抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出す工程3と、切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程4とを有する。
【0032】
この方法では、例えば、図4−4に示したように、シャペロニンリングのシャペロニンサブユニットの構成数が8個である古細菌由来のシャペロニンを用いる場合において、シャペロニン:抗体重鎖及びシャペロニン:抗体軽鎖の比が8:1となるようにシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質をコードする遺伝子とを各々組み込んだ発現ベクターを作製し、同一の宿主細胞に形質転換を行い共発現させる。その結果、宿主細胞内では1つのシャペロニンリング内に抗体重鎖又は抗体軽鎖が1つ格納された融合タンパク質が発現する。この方法によれば、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子とシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子とを1つの発現ベクターに組み込む方法に比べて、発現ベクターの巨大化を防止し、そのコピー数の減少を抑制することにより、発現量の低下を防ぐことができる。この方法においては、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質が1つの宿主細胞内に同時に存在しているため、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質を同時に精製することが可能であり、また、それに続く重鎖及び軽鎖の切り出しも同時に行うことができる。
【0033】
上記組換え抗体の製造方法(5)は、少なくとも同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を各々組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、工程1で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を発現する工程2と、シャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質より抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を切出す工程3と、工程3で得られた抗体重鎖−抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程4とを有する。
この方法では、例えば、図4−5に示したようにシャペロニンリングのシャペロニンサブユニットの構成数が7個であるバクテリア由来のシャペロニンを用いる場合において、シャペロニン:抗体重鎖の比が4:1となるシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターとシャペロニン:抗体軽鎖の比が3:1となるシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターとを作製し、これらを用いて同一の宿主細胞を形質転換して共発現させる。その結果、宿主細胞内では1つのシャペロニンリング内に抗体重鎖及び抗体軽鎖が1つずつ格納されたシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質が発現し、抗体重鎖と抗体軽鎖はシャペロニンリング内において複合体を形成することができる。この方法によれば、発現ベクターの巨大化を防止し、そのコピー数の減少を抑制することにより、発現量の低下を防ぐことができる。この方法では、シャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質が宿主細胞内に存在しているため、シャペロニンから切出すことにより、抗体重鎖−抗体軽鎖複合体の回収が可能である。更に、この方法では、抗体重鎖−抗体軽鎖間や抗体重鎖−抗体重鎖間のジスルフィド結合を形成させ、完全型抗体を構成する際に、誤ったジスルフィド結合の形成を抑制することが可能となるため、完全型抗体の収率増加に有効である。
【0034】
また、本発明の組換え抗体の製造方法としては、同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子又はシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子と、シャペロニンのみをコードする遺伝子を各々組込み、これらのプラスミドを同一の宿主に導入する方法も好ましい。この方法によれば、シャペロン複合体の構造を制御することができる。例えば、シャペロニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖の数比が4:1である融合タンパク質をコードする遺伝子を組込んだベクターと、1個又は2〜4個連結したシャペロニンのみをコードする遺伝子を組込んだベクターとを宿主細胞に形質転換して共発現させることになる。その結果、1つのシャペロニンリング内に抗体重鎖又は抗体軽鎖が1つ格納された融合タンパク質が宿主細胞内で発現する。この方法は、発現ベクターの巨大化を防止し、そのコピー数の減少を抑制することにより、発現量の低下を防ぐことができる。
【0035】
上記宿主としては特に限定されず、例えば大腸菌等のバクテリア、その他の原核細胞、酵母、昆虫細胞、哺乳動物培養細胞、植物培養細胞、及び、トランスジェニック動・植物等が挙げられる。なかでも、高い細胞増殖特性を有し、培養操作が簡便でかつ培養に用いる栄養源等のコストが安価であることから、大腸菌等のバクテリアや酵母等が好適である。また、宿主の細胞質内、細胞外のいずれに発現させてもかまわないが、大量に発現させる場合には細胞内に発現させる方が望ましい。
さらに、バクテリア、真核生物抽出液等を用いた無細胞翻訳系(例えば、Spirin, A.S., 1991, Science 11, 2656−2664: Falcone, D. et al., 1991, Mol. Cell. Biol. 11, 2656−2664)でも、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質及びシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を可溶性タンパク質として発現させることが可能である。
【0036】
本発明の組換え抗体の製造方法では、発現したシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を精製し、次いで抗体重鎖、抗体軽鎖又は抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を切り出す。
シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とを同一宿主内で共発現させた場合には、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質を同時に精製することが可能であり、またそれに続く抗体重鎖及び抗体軽鎖の切り出しも同時に行うことができる。
また、シャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を発現させた場合には、シャペロニンリングの中で抗体重鎖−抗体軽鎖複合体が形成されていることから、精製後、抗体重鎖−抗体軽鎖複合体として回収することが可能である。
【0037】
発現したシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を精製する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、以下のような方法等が挙げられる。
即ち、まず、宿主内でシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を発現させた後、宿主細胞を適当な緩衝液中で破砕し、得られた上清を疎水クロマトグラフィーやイオン交換クロマトグラフィーによって融合タンパク質の存在するフラクションを回収する。次いで、得られたフラクションを限外ろ過によって濃縮した後、濃縮液を5〜50mM程度の塩化マグネシウム及び50〜300mM程度の塩化ナトリウム又は塩化カリウムが含有された緩衝液を展開液としてゲルろ過を行い、排除限界直後のピークを回収することによってシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を精製することができる。
【0038】
シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質のN末端又はC末端に6〜10個のヒスチジンが並んだタッグを連結させた場合には、ニッケル等の金属キレートカラムにより簡便で効率的に精製することができる。ただし、最終的に得られた抗体を治療薬として用いるためには、ヒスチジンタグの除去の必要性が発生する可能性があるため、抗体重鎖又は抗体軽鎖を融合させていないペプチド末端にヒスチジンタグを連結することが好ましい。
【0039】
シャペロニンが耐熱性のものである場合には、宿主細胞を破砕した上澄みを60〜80℃で熱処理することにより、大部分の宿主由来タンパク質は沈殿するので、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質の精製をより簡略化することができる。抗体重鎖、抗体軽鎖及び抗体重鎖−抗体軽鎖複合体は熱に対して不安定であるが、シャペロニンの空洞内部に保持されているので、変性することはない。
【0040】
本発明の組換え抗体の製造方法では、次いで、精製したシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質から抗体重鎖、抗体軽鎖又は抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を切り出す。
切り出しの方法としては特に限定されず、例えば、以下のような方法が挙げられる。
即ち、精製し、回収した画分をEDTA(エチレンジアミン四酢酸)処理した後、マグネシウム及びATPが入っていない緩衝液に対して透析を行いマグネシウム及びATPを除去する。多くのシャペロニンサブユニット間の会合は、マグネシウムイオン及びATPによって安定化されていることから、マグネシウムイオン及びATPを除去することにより、シャペロニンサブユニット間の相互作用は解除され立体構造は壊れ、抗体重鎖、抗体軽鎖又は抗体重鎖−抗体軽鎖複合体が露出する。
【0041】
予め、シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質において、シャペロニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖との連結部が限定分解型プロテアーゼの切断配列を有するようにしておけば、透析内液にトロンビン等の限定分解型プロテアーゼを作用させることにより極めて容易に抗体重鎖又は抗体軽鎖を切り出すことができるので好ましい。
【0042】
また、予めシャペロニン構造体のシャペロニンサブユニットの連結部が限定分解型プロテアーゼの切断配列を有するようにしておけば、透析内液にトロンビン等の限定分解型プロテアーゼを作用させることによりシャペロニンの立体構造が崩壊し、極めて容易に抗体重鎖又は抗体軽鎖を切り出すことができるので好ましい。
【0043】
このようにして切断された抗体重鎖、抗体軽鎖及び抗体重鎖−抗体軽鎖複合体は、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー又は種々のアフィニィティクロマトグラフィーに供することによって容易に回収することができる。
【0044】
本発明の組換え抗体の製造方法では、最後に切り出された抗体重鎖と抗体軽鎖、又は、抗体重鎖−抗体軽鎖複合体から抗体を構成する。
抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する方法としては特に限定されないが、例えば、生体外で行う方法としては以下のような方法が挙げられる。
即ち、切り出された抗体重鎖と抗体軽鎖の混合物を10mMジチオトレイトール(DTT)等の緩和な条件下で還元することによって各々の分子内ジスルフィド結合を維持した状態で抗体重鎖と抗体軽鎖とを完全に解離し、ゲルろ過または透析等によりDTTの除去した後、空気酸化することにより抗体重鎖−抗体軽鎖及び抗体重鎖−抗体重鎖間のジスルフィド結合の形成させ、抗体を構成させる。また、空気酸化の際に、目的とする抗体が認識する抗原を添加すれば、抗体重鎖と抗体軽鎖との会合が促進され、抗体の収率が向上するので好ましい。
【0045】
本発明の組換え抗体の製造方法によれば、従来の方法ではできなかった、完全な抗体を、大量かつ容易に製造することができる。
本発明の組換え抗体の製造方法により製造される抗体としては特に限定されないが、製造した抗体を医薬として使用する場合には、その安全性や生体内における半減期等の点から完全ヒト型抗体が好ましい。しかし、ヒト以外の哺乳動物由来抗体の抗原結合部位だけを残してヒト由来の抗体に置換したヒト化抗体や、ヒト由来の不変領域とヒト以外の哺乳動物由来の可変領域を有する非ヒト/ヒトキメラ抗体も好適である。また、抗体重鎖は抗体軽鎖に比べて難発現性であることから、抗体重鎖のみを本発明の方法により得、通常の直接発現法で得た抗体軽鎖と生体外で構成して完全抗体を得てもよい。
【0046】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0047】
実施例1
(シャペロニン連結体の発現系構築)
配列番号1に示されたシャペロニンβサブユニット(TCPβ)遺伝子をThermococcus KS−1株ゲノムを鋳型とするPCR(Polymerase chain reaction)によってクローニングした。TCPβ遺伝子が一方向に4回連結した遺伝子断片が挿入されたT7プロモーターを有する発現ベクターpETDH(TCPβ)4を構築した(図3)。シャペロニン遺伝子を4つ連結させた更に下流には、アフィニティータグをコードする遺伝子を挿入するためのサイトとして、SpeI及びHpaIを設けた。また、シャペロニン遺伝子連結部と上記SpeIサイトの間に、翻訳されてプレシジョンプロテアーゼとなるサイトを、HpaIサイトの下流には翻訳されてヒスチジン6残基からなるヒスチジンタグとなるサイトをそれぞれ設けた(図3)。
【0048】
実施例2
(抗体重鎖の発現)
配列番号2に示したヒト由来抗HBs(B型肝炎ウイルス表層タンパク)抗体の重鎖(AbH)遺伝子をPCR法により増幅した。PCR産物の5‘末端にはSpeIサイトを、3’末端にはHpaIサイトをそれぞれ設けた。このPCR産物をSpeIおよびHpaI処理し、あらかじめ同制限酵素で処理した発現ベクターpETDH(TCPβ)4に組込んだ。これにより、シャペロニンβサブユニットTCPβ4量体とAbHとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpETDH(TCPβ)4・AbHを構築した。
【0049】
得られた発現ベクターpETDH(TCPβ)4・AbHを大腸菌BL21(DE3)株に導入し、カルベニシリン(100μg/ml)を含む2XY.T.培地(バクトトリプトン 16g、酵母エキス 10g、NaCl 5g/L)で30℃、24時間培養し、シャペロニンβサブユニットTCPβ4量体とAbHとの融合蛋白質を発現させた。次いで、菌体を25mM HEPES緩衝液/1mM EDTA(pH6.8)に懸濁し、超音波処理にて菌体を破砕後、その可溶性画分をSDS−PAGEに供した。クマシーブリラントブルー染色によって分析した結果、シャペロニンβサブユニットTCPβ4量体とAbHとの融合蛋白質に相当するサイズのバンドが検出された(図6−1)。上記可溶性画分を25mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)に透析後、ニッケルキレートセファロースカラムにアプライした。1mMイミダゾールを含有する25mM Tris−HCl緩衝液(pH7.0)で充分に洗浄後、100mMイミダゾールを含有する同緩衝液でニッケルキレートセファロースに吸着した画分を溶出した。得られた精製画分を透析によってイミダゾールを除き、プレシジョンプロテアーゼ処理(4℃、20時間)することにより、シャペロニン連結体とAbHとを切断した(図6−2)。SDS−PAGE、及び、抗ヒトIgG抗体(HRPコンジュゲート)を用いたウエスターンブロッティングを行った結果、AbHに相当するバンドが特異的に検出された。このことからAbHがTCPβ4量体との融合蛋白質として大腸菌可溶性画分に発現することがわかった。
【0050】
実施例3
(抗体軽鎖の発現)
実施例2に示した抗体重鎖遺伝子の代わりに配列番号3に示したヒト由来抗HBs(B型肝炎ウイルス表層タンパク)抗体の軽鎖(AbL)遺伝子をPCR法で増幅し、同様の方法で発現ベクターpETDH(TCPβ)4に組み込んだ。これにより、シャペロニンβサブユニットTCPβ4量体とAbLとの融合蛋白質を合成する発現ベクターpETDH(TCPβ)4・AbLを構築した。得られた発現ベクターを用い、実施例2と同様の方法でシャペロニンβサブユニットTCPβ4量体とAbLとの融合蛋白質を発現させた(図6−3)。さらに、同様の方法でプレシジョンプロテアーゼ処理の後SDS−PAGEを行い(図6−4)、ウエスターンブロッティングを行った結果、AbLに相当するバンドが特異的に検出された。このことからAbLがTCPβ4量体との融合蛋白質として大腸菌可溶性画分に発現することがわかった。
【0051】
実施例4
(抗体重鎖及び軽鎖のアセンブリー)
実施例2及び実施例3で得られた抗体重鎖および抗体軽鎖を含むタンパク質溶液を混合し、非還元条件下で4℃にて3時間透析した。透析後、プロテインGビーズ懸濁液を添加し、室温にて60分間攪拌することにより、重鎖及び軽鎖がアセンブリーした抗体をビーズ上に回収した。ビーズをPBS緩衝液で洗浄後、さらに100mM グリシン−HCl緩衝液(pH2.5)で10分間ビーズをインキュベートし、上清を回収した。得られた画分をSDS−PAGEによって分離後、ウエスタンブロッティングによって分析した。重鎖のみの反応液についてはビーズ吸着画分に大部分が回収されたのに対し(図7 レーン1,2)、軽鎖のみの反応液については、ほとんどが非吸着画分に回収された(図7 レーン3,4)。一方、重鎖及び軽鎖の混合液については、ビーズ吸着画分に重鎖だけでなく軽鎖も同時に検出された(図7 レーン5,6)。このことは軽鎖が重鎖と結合していることを示すものであり、両者が正しくアセンブリーしていることを示唆するものと考えられた。
【0052】
実施例5
(組み換え抗体の抗原認識)
実施例4でアセンブリーして得られた抗HBs抗体(IgG)の抗原認識能は、ELISA法において一次抗体として機能するか否かで評価した。すなわち、B型肝炎ウイルス表層蛋白質を固定化した96穴プレートを50%ブロックエースにて固定化し、PBSにて洗浄後、実施例4で得られた抗HBs抗体を含むタンパク質溶液を一次抗体として添加し、室温にて3時間インキュベートした。PBSにて洗浄後、2次抗体として抗ヒトIgG−HRPコンジュゲートを含むPBSでインキュベートした。PBSにて洗浄後、HRPの基質としてABTS液を加え、5分間インキュベート後、プレートリーダーにてOD405を測定した。
【0053】
抗原としてHBsの代わりにリゾチームを用いたところ、それに対する結合はほとんど見られなかった。それに対し、抗原であるHBsに対しては特異的に結合していることがわかった(図8−1)。重鎖及び軽鎖をアセンブリーした抗体の結合活性は、重鎖のみで評価したものと比べて結合力が高く(図8−2)、重鎖と軽鎖が正しくアセンブリーしていることが示された。軽鎖のみで同様の操作を行ったものについてはほとんど抗原との結合は示さなかった(図8−3)。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、大量生産が困難であった完全な組換え抗体を宿主生物系又は無細胞翻訳系で効率的に発現させることができ、精製も容易な組換え抗体の製造方法を提供できる。本発明は宿主生物の細胞質に発現するので、大量の抗体を発現することができる。
【0055】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】大腸菌シャペロニンの構造を示す模式図である。
【図2】本発明の組換え抗体の製造方法の実施態様を示す模式図である。
【図3】本発明の組換え抗体の製造方法の実施態様を示す模式図である。
【図4】本発明の組換え抗体の製造方法の実施態様を示す模式図である。
【図5】サブユニット構成数4個の古細菌由来のシャペロニン連結体を発現させるベクターの構成例を示す図である。
【図6】シャペロニン−抗体重鎖及びシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質の発現、及び、プロテアーゼによる切り出し例を示す図である。
【図7】抗体重鎖及び抗体軽鎖のインビトロ再構成を示す図である。
【図8】再構成して得られた抗体の抗原認識能を示す図である。
Claims (15)
- シャペロニン遺伝子と抗体重鎖遺伝子及び/又は抗体軽鎖遺伝子とを含む遺伝子を転写・翻訳することによって、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をシャペロニンとペプチド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させ、前記融合タンパク質から切出した抗体重鎖及び抗体軽鎖を用いて抗体を構成する組換え抗体の製造方法であって、
前記融合タンパク質において、シャペロニンは2〜10個のシャペロニンサブユニットが互いにペプチド結合を介して連結したシャペロニン連結体であって、抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖は上記シャペロニンサブユニットのN末端、C末端、及び/又は連結したシャペロニンサブユニット同士の連結部に、ペプチド結合を介して連結されていることを特徴とする組換え抗体の製造方法。 - 前記融合タンパク質において、シャペロニンは5〜10個のシャペロニンサブユニットからなる2つのシャペロニンリングが、
リング面を介して非共有結合的に会合した2層構造を形成しており、前記抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖は、前記シャペロニンリングの内部に収納されている
ことを特徴とする請求項1に記載の組換え抗体の製造方法。 - 少なくとも、
シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、
工程1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質を発現する工程2と、
工程2で得られたシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質から抗体重鎖を切出す工程3と、
シャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製する工程1’と、
工程1’で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質を発現する工程2’と、
工程2’で得られたシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質から抗体軽鎖を切出す工程3’と、
切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程4とを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組換え抗体の製造方法。 - 少なくとも、
シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子とを組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、
工程1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程2と、
工程2で得られたシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質と前記シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とから抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出す工程3と、
切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程4とを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組換え抗体の製造方法。 - 少なくとも、
シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子、及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子とを組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、
工程1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程2と、
工程2で得られたシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質から抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を切出す工程3と、
工程3で得られた抗体重鎖−抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程4とを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組換え抗体の製造方法。 - 少なくとも、
同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を各々組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、
工程1で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程2と、
工程2で得られたシャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質とシャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質とから抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出す工程3と、
切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程4とを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組換え抗体の製造方法。 - 少なくとも
同一宿主内で共存・複製可能な2種の異なるプラスミドに、シャペロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャペロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を各々組み込んだ発現ベクターを作製する工程1と、
工程1で得られた2種類の発現ベクターを同一宿主に導入しシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質を発現する工程2と、
工程2で得られたシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質から抗体重鎖−抗体軽鎖複合体を切出す工程3と、
工程3で得られた抗体重鎖−抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程4とを有する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の組換え抗体の製造方法。 - シャペロニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖の数比がn:1(nは1〜9)である融合タンパク質をコードする遺伝子を組込んだベクターと、1個又は2〜4個連結したシャペロニンのみをコードする遺伝子を組込んだベクターとを宿主細胞に形質転換して共発現させることを特徴とする請求項1又は2に記載の組み換え抗体の製造方法。
- 切出された抗体重鎖と抗体軽鎖、又は、抗体重鎖−抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程4において、前記抗体に特異的な抗原を添加することを特徴とする請求項3、4、5、6、又は7記載の組換え抗体の製造方法。
- シャペロニン−抗体重鎖融合タンパク質、シャペロニン−抗体軽鎖融合タンパク質又はシャペロニン−抗体重鎖−抗体軽鎖融合タンパク質は、シャペロニンと抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖との連結部に限定分解型プロテアーゼの切断配列を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法。
- シャペロニンサブユニット同士の連結部に限定分解型プロテアーゼの切断配列を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法。
- シャペロニンは、バクテリア、古細菌又は真核生物に由来することを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法。
- 宿主は、バクテリア、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体、植物個体又は昆虫個体であることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法。
- 無細胞翻訳系で行うことを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法。
- 抗体重鎖及び抗体軽鎖は、ヒト型抗体重鎖及びヒト型抗体軽鎖、ヒト化抗体重鎖及びヒト化抗体軽鎖、又は、ヒト由来の不変領域とヒト以外の哺乳動物由来の可変領域とを有する非ヒト/ヒトキメラ抗体重鎖及びヒト由来の不変領域とヒト以外の哺乳動物由来の可変領域とを有する非ヒト/ヒトキメラ抗体軽鎖であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法。
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