明細 ΐ 組換え抗体の製造方法 技術分野
本発明は、 大量生産が困難であった完全な組換え抗体を宿主生物系又は無細胞翻訳系で 効率的に発現させることができ、 精製も容易な組換え抗体の製造方法に関する。
近年、 生物が外来細胞等の外来物質の侵入を克服又は除去する一連の過程が、 徐々に明 らかにされつつある。 その過程の重要な部分に外来物質に特異的に結合する抗体の産生を 挙げることができる。
抗体は、 外来タンパク質、 糖タンパク質、 細胞又はその他の抗原性外来物質に反応して 眷椎動物免疫系により産生される特異的な免疫グロブリンポリぺプチドである。 ' 一般的な哺乳動物の抗体については、 以前より幅広く研究が行われており、 IgG、 I -As IgM、 I gD及び I gEの 5つのクラスに分類することができ、 各クラスによつ て大きさ、 電荷、 アミノ酸組成、 糖含量等が異なることが知られている。 また、 IgG及 び IgAについては、 その構造の違いによって、 更にそれぞれ、 IgGl、 IgG2、 I gG3、 IgG4及び IgAl、 I gA2のサブクラスが存在する。
これらの抗体はいずれも、 4本鎖構造からなる基本構造単位をとり、 全てのクラス及び サブクラスに共通である分子量約 20000 Daの 2本の抗体軽鎖と、 クラスやサブクラ スによって分子量や構造が異なる分子量 50000〜7700 ODaの 2本の抗体重鎖と から構成されている。
抗体の中でも、 I gGは典型的な基本構造をとる。 I gGは抗体軽鎖内に 2つ、 抗体重 鎖内に 4つの鎖内ジスルフィ ド結合を有する。 このジスルフィ 卜'結合で形成されたぺプチ ドのループは、 約 110個のアミノ酸残基からなるドメインの中央部分に位置しており、 抗体重鎖、 抗体軽鎖ともにドメインの最初の N末端側が可変領域に相当し、 抗体重鎖では 残りの 3つのドメインが、 抗体軽鎖では残りの 1つのドメインが不変領域となっている。 また、 X線結晶構造解析から、 I gGは Y型の構造を有することがわかっており、 これは 電子顕微鏡観察によっても確認されている。 従って、 IgGの構造は、 抗体重鎖の N末端
の 2つのドメインと抗体軽鎖の類似したドメインとが対になって会合して F a b領域を形 成し、 2本の抗体重鎖の残りのドメインが F c領域を形成している。
抗体の持つ非常に特異性の高い抗原認識及び補体活性化等のエフェクター機能を積極的 に利用して、 体内に侵入した外来物質に対して、 自発的な抗体産生だけではなく、 体外か ら大量に抗体を投与することにより外来物質を排除するという抗体治療薬が以前より提唱 されている。 特に近年では、 ヒトゲノムの解析がほぼ終了したことにより、 新たな抗体治 療薬の標的が発見されることが予想され、 新しい抗体治療薬が次々と登場するものと考え られている。
このような治療学的な観点からは、 単一のリンパ球クローンから生産された原抗原の特 定のェピト一プに対して特異的なモノクローナル抗体が用いられることが多い。
かかるモノクローナル抗体を生産する系としては、 これまで、 チャイニーズハムスター 卵巣細胞 (CHO細胞) を代表とする組換え哺乳動物発現系が主に使用されてきた。 しか し、 抗体治療薬は他の医薬品と比べて投与する量が桁違いに多いことから、 CHO細胞を 使用する現在の製造方法では、 近い将来の抗体治療薬の種類及び普及の拡大に伴う需用の 増カロに対しては供給不足となることが懸念されている。
これに対して、 ャギ、 ヒヅジや、 ダイズ、 トウモロコシ等のトランスジェニヅク動-植 物を用いる抗体生産技術も研究が進められ、 生産効率の向上が図られているが、 その安全 性や依然として低い生産性等の問題のため全幅の信頼を得られるには至っていない (Z e i t 1 i n, L. e t a l., 1998, Nat. Bi o t e chno l. 16,
184- 185)
一方、 安価でかつ安全な抗体の製造方法として、 宿主として大腸菌を用いた抗体生産系 が長年にわたって検討されている。 増殖能に優れる大腸菌を用いることにより、 工業的に 効率よく抗体を生産することが期待されている。 しかしながら、 宿主として大腸菌を用い て抗体の生産を行う場合、 抗体重鎖の不変領域 (Fc領域) が細胞質内で難溶性であるた め、 大腸菌内で不溶性粒子を構成してしまうことから、 これまでのところ、 大腸菌による 抗体発現は、 F c領域を除去した s c Fvや Fab等の抗体断片に限定されていた。 これ らの抗体断片は、 Fc領域を欠如しているため、 抗原との結合後に起こる補体の活性化に 伴う免疫応答による標的パクテリァの溶菌等を行うことはできず、 抗体治療薬としては、 充分な性能を発揮できていない。
また、 上記抗体断片の発現についても、 その N末端にシグナル配列を付与してペリブラ
ズム領域に発現させることが常套手段である。 しかしながら、 ぺリプラズム領域は細胞質 領域と比較して、非常に狭い領域であるため、タンパク質が発現される量も非常に少なく、 たとえ、 発現量が増やせたとしても、 封入体となってしまう。 細胞質内に抗体を可溶体と して発現させようとする試みもいくつか報告されている。 タンパク質のフォールディング に関与する分子シャぺ口ンと抗体遗伝子を細胞質内で共発現発現させることで、 組換え抗 体の封入体形成を防ぎ、 可溶型の収量を増大させる工夫や、 宿主大腸菌としてチォレドキ シン還元酵素欠損株を用いる方法などが提案されている (日本国公開特許公報 特開平 9 — 220092号、 Ploba, Gene 159, 203 -, 1995年)。 しか しながら、 これらの方法は、 可溶型の抗体を得ることができるとはいえ、 その収量は lm g/培地 1リットル程度と低く (Lev y、 Protein Express ion a nd Purif icat ion 23, 338-, 2001年)、 さらに生産効率の 良い方法が必要とされている。
本発明は、 上記現状に鑑み、 大量生産が困難であった完全な組換え抗体を宿主生物系又 は無細胞翻訳系で効率的に発現させることができ、 精製も容易な組換え抗体の製造方法を 提供することを目的とする。 発明の開示
本発明は、 上記現状に鑑み、 大量生産が困難であった完全な組換え抗体を宿主生物系又 は無細胞翻訳系で効率的に発現させることができ、 精製も容易な組換え抗体の製造方法を 提供することを目的とする。
本発明は、 シャぺロニン遺伝子と抗体重鎖遺伝子及び/又は抗体軽鎖遺伝子とを含む遺 伝子を転写 ·翻訳することによって、 抗体重鎖及び Z又は抗体軽鎖をシャぺ口ニンとぺプ チド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させ、 前記融合タンパク質から切 出した抗体重鎖及び抗体軽鎖を用いて抗体を構成する組換え抗体の製造方法であって、 前 記融合タンパク質において、 シャぺ口ニンは 1個又は 2〜 10個のシャぺ口ニンサブュニ ヅトが互いにペプチド結合を介して連結したシャぺ口ニン連結体であり、 上記シャぺロニ ンサブユニットの N末端、 C末端、 又は/及び連結したシャぺ口ニンサブユニット同士の 連結部に、 ぺプチド結合を介して抗体重鎖及び Z又は抗体軽鎖が連結されていることを特 徴とする組換え抗体の製造方法である。 好ましくは、 少なくとも前記シャぺ口ニン連結体 と抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖が連結している融合タンパク質を含む、 5〜10個のシャ
ぺロニンサブュニットからなるシャぺ口ニンリングが、 リング面を介して非共有結合的に 会合した 2層構造を形成しており、 前記抗体重鎖及び Z又は抗体軽鎖は、 前記シャぺロニ ンリングの内部に収納されていることを特徴とする組換え抗体の製造方法を基本とする。 得られたシャぺロニン及び抗体の融合夕ンパク質から、 重鎖及び軽鎖抗体断片をそれそれ 切り出し、 インビトロで両者を再構成させることを特徴とする。
すなわち、 本発明は、
( 1 ) シャぺ口ニン遺伝子と抗体重鎖遺伝子及び Z又は抗体軽鎖遺伝子とを含む遺伝子 を転写 ·翻訳することによって、 抗体重鎖及び Z又は抗体軽鎖をシャぺ口ニンとペプチド 結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させ、 前記融合タンパク質から切出し た抗体重鎖及び抗体軽鎖を用いて抗体を構成する組換え抗体の製造方法であって、 前記融 合タンパク質において、 シャぺ口ニンは 1個又は 2〜 1 0個のシャぺ口ニンサブュニヅト が互いにぺプチド結合を介して連結したシャぺ口ニン連結体であって、 抗体重鎖及び/又 は抗体軽鎖は上記シャぺ口ニンサブユニットの N末端、 C末端、 及び Z又は連結したシャ ぺロニンサブュニヅト同士の連結部に、 ペプチド結合を介して連結されていることを特徴 とする組換え抗体の製造方法、
( 2 ) 前記融合タンパク質において、 シャぺ口ニンは 5〜 1 0個のシャぺ口ニンサブュ ニヅトからなる 2つのシャぺロニンリングが、 リング面を介して非共有結合的に会合した 2層構造を形成しており、 前記抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖は、 前記シャぺ口ニンリング の内部に収納されていることを特徴とする上記 ( 1 ) に記載の組換え抗体の製造方法、
( 3 ) 少なくとも、 シャぺ口ニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を 組込んだ発現ベクターを作製する工程 1と、 工程 1で得られた発現べクタ一を宿主に導入 しシャぺ口ニン一抗体重鎖融合夕ンパク質を発現する工程 2と、 工程 2で得られたシャぺ 口ニン一抗体重鎖融合タンパク質から抗体重鎖を切出す工程 3と、 シャぺ口ニンと抗体軽 鎖との融合夕ンパク質をコ一ドする遺伝子を組込んだ発現べクタ一を作製する工程 1 'と、 工程 1 ' で得られた発現べクタ一を宿主に導入しシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕ンパク質 を発現する工程 2 ' と、 工程 2 ' で得られたシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合タンパク質から 抗体軽鎖を切出す工程 3, と、 切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程 4とを有することを特徴とする上記 (1 ) 又は (2 ) に記載の組換え抗体の製造方法、
( 4 ) 少なくとも、 シャぺ口ニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及 びシャぺ口ニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子とを組込んだ発現べク
夕一を作製する工程 1と、 工程 1で得られた発現ベクターを宿主に導入しシャぺ口ニン一 抗体重鎖融合夕ンパク質とシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕ンパク質とを発現する工程 2 と、 工程 2で得られたシャぺロニンー抗体重鎖融合タンパク質と前記シャぺロニン一抗体 軽鎖融合夕ンパク質とから抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出す工程 3と、 切出された抗体重鎖 と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程 4とを有することを特徴とする上記( 1 )又は( 2 ) に記載の組換え抗体の製造方法、
( 5 ) 少なくとも、 シャぺ口ニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子、 及びシャぺ口ニンと抗体軽鎖との融合夕ンパク質をコードする遺伝子とを組込んだ発現べ クタ一を作製する工程 1と、 工程 1で得られた発現べクタ一を宿主に導入しシャぺ口ニン —抗体重鎖一抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程 2と、 工程 2で得られたシャぺ口 ニン—抗体重鎖一抗体軽鎖融合夕ンパク質から抗体重鎖一抗体軽鎖複合体を切出す工程 3 と、 工程 3で得られた抗体重鎖一抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程 4とを有するこ とを特徴とする上記 ( 1 ) 又は (2 ) に記載の組換え抗体の製造方法、
( 6 ) 少なくとも、 同一宿主内で共存.複製可能な 2種の異なるプラスミ ドに、 シャぺ 口ニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャぺ口ニンと抗体軽鎖と の融合夕ンパク質をコードする遺伝子を各々組込んだ発現べクタ一を作製する工程 1と、 工程 1で得られた 2種類の発現べク夕一を同一宿主に導入しシャぺロニンー抗体重鎖融合 タンパク質とシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕ンパク質とを発現する工程 2と、 工程 2で得 られたシャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質とシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合タンパク質 とから抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出す工程 3と、 切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗 体を構成する工程 4とを有することを特徴とする上記 ( 1 ) 又は (2 ) に記載の組換え抗 体の製造方法、
( 7 ) 少なくとも同一宿主内で共存 ·複製可能な 2種の異なるプラスミ ドに、 シャぺ口 ニンと抗体重鎖との融合夕ンパク質をコードする遺伝子及びシャぺ口ニンと抗体軽鎖との 融合タンパク質をコードする遺伝子を各々組込んだ発現ベクターを作製する工程 1と、 ェ 程 1で得られた 2種類の発現ベクターを同一宿主に導入しシャぺ口ニン—抗体重鎖一抗体 軽鎖融合タンパク質を発現する工程 2と、 工程 2で得られたシャぺ口ニン一抗体重鎖ー抗 体軽鎖融合タンパク質から抗体重鎖一抗体軽鎖複合体を切出す工程 3と、 工程 3で得られ た抗体重鎖一抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程 4とを有することを特徴とする上記
( 1 ) 又は ( 2 ) に記載の組換え抗体の製造方法、
(8) シャぺ口ニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖の数比が n: 1 (nは 1〜9) である融合 タンパク質をコードする遺伝子を組込んだベクターと、 1個又は 2〜 4個連結したシャぺ 口ニンのみをコードする遺伝子を組込んだベクタ一とを宿主細胞に形質転換して共発現さ せることを特徴とする上言己 ( 1) 又は (2) に記載の組換え抗体の製造方法、
(9) 切出された抗体重鎖と抗体軽鎖、 又は、 抗体重鎖—抗体軽鎖複合体から抗体を構 成する工程 4において、前記抗体に特異的な抗原を添加することを特徴とする上記( 3 )、
(4)、 (5)、 (6)、 又は (7) 記載の組換え抗体の製造方法、
( 10) シャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質、 シャぺ口ニン一抗体軽鎖融合タンパ ク質又はシャぺ口ニン一抗体重鎖一抗体軽鎖融合タンパク質は、 シャぺ口ニンと抗体重鎖 及び/又は抗体軽鎖との連結部に限定分解型プロテァ一ゼの切断配列を有することを特徴 とする上記 (1) 〜 (9) のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法、
(1 1) シャぺ口ニンサブュニヅト同士の連結部に限定分解型プロテア一ゼの切断配列 を有することを特徴とする上記 (1) 〜 (10) のいずれかに記載の組換え抗体の製造方 法、
(12) シャぺ口ニンは、 バクテリア、 古細菌又は真核生物に由来することを特徴とす る上記 (1) 〜 (1 1) のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法、
( 13) 宿主は、 バクテリア、 酵母、 動物細胞、 植物細胞、 昆虫細胞、 動物個体、 植物 個体又は昆虫個体であることを特徴とする上記 ( 1) 〜 (12) のいずれかに記載の組換 え抗体の製造方法、
(14) 無細胞翻訳系で行うことを特徴とする上記 ( 1) 〜 (12) のいずれかに記載 の組換え抗体の製造方法、
( 15) 抗体重鎖及び抗体軽鎖は、 ヒト型抗体重鎖及びヒト型抗体軽鎖、 ヒト化抗体重 鎖及びヒト化抗体軽鎖、 又は、 ヒト由来の不変領域とヒト以外の哺乳動物由来の可変領域 とを有する非ヒ卜/ヒ卜キメラ抗体重鎖及びヒト由来の不変領域とヒト以外の哺乳動物由 来の可変領域とを有する非ヒト /ヒトキメラ抗体軽鎖であることを特徴とする上記 (1) 〜 (14) のいずれかに記載の組換え抗体の製造方法、
に関する。 図面の簡単な説明
図 1は、 大腸菌シャぺ口ニンの構造を示す模式図である。
図 2は、 本発明の組換え抗体の製造方法の実施態様を示す模式図である。
図 3は、 本発明の組換え抗体の製造方法の実施態様を示す模式図である。
図 4は、 本発明の組換え抗体の製造方法の実施態様を示す模式図である。
図 5は、 サブュニヅト構成数 4個の古細菌由来のシャぺロニン連結体を発現させるべク ターの構成例を示す図である。
図 6は、 シャぺ口ニン一抗体重鎖及びシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕ンパク質の発現、 及び、 プロテアーゼによる切り出し例を示す図である。
図 7は、 抗体重鎖及び抗体軽鎖のィンビトロ再構成を示す図である。
図 8は、 再構成して得られた抗体の抗原認識能を示す図である。 発明を実施するための最良の形態 ,
本発明の組換え抗体の製造方法では、 まず、 シャぺ口ニン遺伝子と抗体重鎖遺伝子及び 又は抗体軽鎖遺伝子とを含む遺伝子を転写 ·翻訳することによって、 抗体重鎖及び Z又 は抗体軽鎖をシャぺ口ニンとぺプチド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現 させる。
上記シャぺ口ニンとは、 細胞に熱ショック等のストレスを与えることにより誘導される 分子シャペロンと呼ばれるタンパク質群のなかで、 分子量が約 6 O k D aのもののことで あり、 ノ クテリア、 古細菌及び真核生物の全ての生物に存在し、 タンパク質の折り畳み支 援ゃ変性防御の機能を有するものである。
上記シャぺ口ニンは、 図 1に示したように、 1 0〜2 0個のサブユニットからなる 2層 のリング構造 (以下、 構造体をシャぺ口ニン複合体、 リングをシャぺ口ニンリングともい う) を形成する。 例えば、 図 1に示した大腸菌シャぺ口ニンの場合、 内径 4 . 5 nm、 高 さ 1 4 . 5 nmの空洞 (キヤビティ) を有する。 バクテリア、 古細菌由来のシャぺ口ニン は、 遺伝子工学的に大腸菌細胞質可溶性画分にシャぺ口ニン複合体として容易に大量生産 させることが可能であり、 このことは、 様々のシャぺ口ニンが大腸菌でも自己集合してシ ャぺロニン複合体を形成できることを示している。
X線結晶構造解析によれば、 上記シャぺ口ニン複合体の立体構造は、 シャぺ口ニンの N 末端及び C末端はともにキヤビティ側に位置し、 フレキシビリティの高い構造となってい る。 特に C末端の少なくとも 2 0アミノ酸はフレキシビリティの高い構造を示す (G e o r g eら、 2 0 0 0、 C e l l、 1 0 0、 5 6 1— 5 7 3 )。
本発明の組換え抗体の製造方法では、 抗体重鎖及び/又は抗体軽鎖をシャぺ口ニンとぺ プチド結合を介して連結させた融合タンパク質として発現させる。 しかも、 抗体重鎖及び z又は抗体軽鎖を上記シャぺロニンリングの内部に収納させれば、 抗体重鎖及び抗体軽鎖 は細胞内環境から保護され、 プロテア一ゼによる消化を受けにくくすることができる。 ま た、 通常の発現時に見られるように発現した抗体重鎖及び抗体軽鎖の折り畳み中間体同士 が多数会合することはなく、個々にシャぺロニン複合体のキヤビティ内に納められるため、 封入体形成も抑えられる。
上記融合夕ンパク質におけるシャぺ口ニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖の連結パタ一ンとし ては、抗体重鎖又は抗体軽鎖がシャぺロニン複合体のキヤビティ内に確実に納まるように、 シャぺ口ニンの N末端、 C末端、 及び Z又は、 シャぺ口ニン同士の連結間に抗体重鎖又は 抗体軽鎖が配置されることが好ましい。
本発明の組換え抗体の製造方法によれば、 抗体重鎖及び抗体軽鎖をシャぺ口ニンとの融 合夕ンパク質として大量発現させることにより、 従来法の問題点であった宿主細胞内での 抗体重鎖不変領域の不溶性等の問題を解消することができ、 得られた融合夕ンパク質から シャぺ口ニンを切り離した後、 生体外で抗体重鎖と抗体軽鎖とを構成することにより、 こ れまで大量生産できなかつた完全型の抗体を得ることが可能となる。
上記シャぺ口ニンとしては、 ノ、'クテリア、 古細菌及び真核生物に由来することが好まし い。
上記シャぺ口ニンとしては、 リング構造への自己集合能が維持されていれば、 野生型の みならずアミノ酸変異体も使用可能である。 例えば、 シャぺ口ニンの各サブュニヅトの会 合力が弱められた変異体を用いた場合、 格納された抗体重鎖又は抗体軽鎖の回収がより容 易になる。 また、 宿主としてバクテリアを用いてシャぺ口ニン構造体を発現させる場合、 宿主と同じバクテリア由来のシャぺ口ニンを用いれば、 発現量が多く抗体生産の効率が向 上することから、 宿主と同じ由来のシャぺ口ニンを用いることが好ましい。
シャぺ口ニン複合体を形成するためのサブュニヅトの数としては、 複合体を形成するこ とができる数であれば特に制限はなく、 1個又は複数個のサブユニットを用いることがで きる。 さらに、 複数個の場合は 2〜1 0個が好ましい。 また、 サブュニヅ卜の数は用いる シャぺ口ニンの由来によって最適の数を選択することも可能である。 すなわち、 シャぺ口 ニン複合体の構造は由来生物によって若干相違する。 例えば、 バクテリア由来のシャぺ口 ニンリングのサブュニヅト構成数は 7個であり、 古細菌由来のシャぺ口ニンリングでは 8
〜9個、 真核生物由来のシャぺ口ニンリングでは 8個である。 したがって、 本発明におい て、 バクテリア由来のシャぺ口ニンを用いるときはサブユニットの数を 7個、 古細菌由来 のシャぺ口ニンを用いるときはサブュニヅトの数を 8 ~ 9個、 真核生物由来のシャぺロニ ンを用いるときはサブュニヅトの数を 8個とすれば、 より確実にシャぺロニン複合体を形 成することができる。
本発明では、 使用するシャぺ口ニンの由来により、 シャぺ口ニンと抗体重鎖又は抗体軽 鎖の数の比を選択することが好ましい。 シャぺ口ニン:抗体重鎖又はシャぺ口ニン:抗体 軽鎖の比としては、 1 : 1〜1 2 : 1が可能であるが、好ましくは 1 : 1〜9 : 1である。 9 : 1よりもシャぺ口ニンの数の比が大きくなると、 発現する抗体重鎖又は抗体軽鎖の実 質的な生産量が少なくなるとともに、 シャぺ口ニンによるリング構造の形成も困難となる ことがある。
具体的には、 シャぺロニンサプュニヅトの構成数が 7個であるバクテリア由来のシャぺ 口ニンを用いる場合には、 シャぺ口ニン複合体の構造形成のしゃすさからシャぺ口ニン: 抗体重鎖又はシャぺ口ニン:抗体軽鎖の数の比は、 1 : 1又は 7 : 1であることが好まし く、 シャぺ口ニンサブュニヅ卜の構成数が 8個である古細菌由来のシャぺ口ニンを用いる 場合には、 シャぺ口ニン複合体の構造形成のしゃすさからシャぺ口ニン:抗体重鎖又はシ ャぺロニン:抗体軽鎖の比は、 1 : 1、 2 : 1、 4 : 1又は 8 : 1であることが好ましい。 本発明の組換え抗体の製造方法としては、 例えば、 シャぺ口ニンと抗体重鎖及び/又は 抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を組込んだ発現べクタ一を作製し、 この 発現べク夕一を宿主に導入して抗体重鎖及び Z又は抗体軽鎖をシャぺロニンとぺプチド結 合を介して連結させた融合タンパク質として発現させ、 この融合タンパク質から抗体重鎖 と抗体軽鎖とを切出し、 切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する方法が挙げ られる。 この際、 シャぺ口ニン一抗体重鎖、 及び、 シャぺ口ニン一抗体軽鎖の発現プラス ミドを各々の宿主に導入し、 各々を別々の宿主で発現させてもかまわないし、 後述するよ うな方法で、 同一宿主に両遺伝子導入し、 同一宿主内で両者を発現させてもかまわない。 ただし、 一般的に、 大腸菌等では発現プラスミドは 1 O k b p以上の大きさになるとコ ピー数が減少し、 結果的に目的タンパク質の発現量が低下することがある。 例えば、 シャ ぺロニンが 8つ連結した融合タンパク質を 1つのプラスミドで生産しょうとすると、 発現 プラスミドは 1 5 k b p以上にもなり、 効率的な発現ができないことがある。
従って、 プラスミドを導入するにあたっては、 シャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質
をコードする遺伝子の大きさ、 シャぺ口ニン一抗体軽鎖融合タンパク質をコードする遺伝 子の大きさ及びシャぺ口ニンのみをコードする遺伝子の大きさ;得ようとするシャぺロニ ン一抗体重鎖融合タンパク質又はシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕ンパク質におけるシャぺ 口ニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖との数比等を考慮することが必要となる。
更に、 上述のシャぺ口ニンリングを構成するシャぺ口ニンサブュニヅ卜の数がシャぺ口 ニンの由来生物によって決まることを利用すれば、 後述するように融合夕ンパク質内で抗 体重鎖一抗体軽鎖複合体を形成させることもできる。
宿主発現系については、 秀潤社「バイォ実験ィラストレイテヅド」 シリ一ズを参照する ことができる。
本発明の組換え抗体の製造方法としては特に限定されないが、例えば、下記( A;)〜( E ) の方法が好適である。
組換え抗体の製造方法 (A) は、 少なくとも、 シャぺ口ニンと抗体重鎖との融合タンパ ク質をコードする遺伝子を組込んだ発現べクタ一を作製する工程 1と、 工程 1で得られた 発現べクタ一を宿主に導入しシャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質を発現する工程 2 と、 シャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質より抗体重鎖を切出す工程 3、 及び、 シャぺ 口ニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を組込んだ発現べクタ一を作製 する工程 1 ' と、 工程 1, で得られた発現べクタ一を宿主に導入しシャぺ口ニン一抗体軽 鎖融合タンパク質を発現する工程 2, と、 シャぺ口ニン一抗体軽鎖融合タンパク質より抗 体重鎖を切出す工程 3 ' と、 切出された抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程 4 とを有する。
この方法は、 別々の工程で作製した抗体重鎖と抗体軽鎖とを、 インビトロで再構成する ものである。 この方法の概念図をシャぺ口ニンリングのサブュニヅト構成数が 8個である 古細菌由来のシャぺ口ニンを用いる場合を例として図 2に示した。
組換え抗体の製造方法 (B ) は、 少なくとも、 シャぺ口ニンと抗体重鎖との融合タンパ ク質をコードする遺伝子及びシャぺ口ニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺 伝子とを組込んだ発現ベクターを作製する工程 1と、 工程 1で得られた発現ベクターを宿 主に導入しシャぺロニンー抗体重鎖融合夕ンパク質とシャぺロニンー抗体軽鎖融合夕ンパ ク質とを発現する工程 2と、 シャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質とシャぺ口ニン一抗 体軽鎖融合タンパク質とから抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出す工程 3と、 切出された抗体重 鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する工程 4とを有する。
の方法では、 例えば、 図 3 ( a) に示したように、 シャぺ口ニンリングのシャぺロニ :ヅ卜の構成数が 8個である古細菌由来のシャぺ口ニンを用いる場合において、 シャぺ口ニン:抗体重鎖及びシャぺ口ニン:抗体軽鎖の比が 8 : 1となるようにシャぺ口 ニン一抗体重鎖融合夕ンパク質をコ一ドする遺伝子及びシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕ン パク質をコードする遺伝子を組込んだ発現べク夕一を作製し、宿主細胞に形質転換を行う。 その結果、 宿主細胞内では 1つのシャぺロニンリング内に抗体重鎖又は抗体軽鎖が 1つ格 納された融合タンパク質が発現する。 この方法では、 シャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパ ク質及びシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合タンパク質が宿主細胞内に同時に存在しているた め、 シャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質及びシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合タンパク質 を同時に精製することが可能であり、 また、 それに続く重鎖及び軽鎖の切り出しも同時に 行うことができる。
組換え抗体の製造方法 (C ) は、 少なくとも、 シャぺ口ニンと抗体重鎖との融合タンパ ク質をコードする遺伝子及びシャぺ口ニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺 伝子とを組込んだ発現ベクターを作製する工程 1と、 工程 1で得られた発現べクタ一を宿 主に導入しシャぺ口ニン一抗体重鎖一抗体軽鎖融合タンパク質とを発現する工程 2と、 シ ャぺロニン一抗体重鎖—抗体軽鎖融合夕ンパク質より抗体重鎖一抗体軽鎖複合体を切出す 工程 3と、 工程 3で得られた抗体重鎖一抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程 4とを有 する。
この方法では、 例えば、 図 3 ( b ) に示したように、 シャぺ口ニンリングのシャぺロニ ンサブユニットの構成数が 7個であるバクテリア由来のシャぺ口ニンを用いる場合におい て、 シャぺ口ニン:抗体重鎖の比及びシャぺ口ニン:抗体軽鎖の比がそれぞれ 4 : 1及び 3 : 1となるようにシャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質をコードする遺伝子及びシャ ベロニン—抗体軽鎖融合タンパク質をコードする遺伝子を組込んだ発現べクタ一を作製 し、 宿主細胞に形質転換を行う。 その結果、 宿主細胞内では 1つのシャぺ口ニンリング内 に抗体重鎖及び抗体軽鎖が 1つずつ格納された融合夕ンパク質が発現し、 抗体重鎖と抗体 軽鎖はシャぺロニンリング内において複合体を形成することができる。 この方法では、 シ ャぺロニン一抗体重鎖一抗体軽鎖融合タンパク質が宿主細胞内に存在しているため、 シャ ぺロニンから切出すことにより、 抗体重鎖一抗体軽鎖複合体の回収が可能である。 更に、 この方法では、 抗体重鎖一抗体軽鎖間や抗体重鎖一抗体重鎖間のジスルフィド結合を形成 させ、 完全型抗体を構成する際に、 誤ったジスルフィ ド結合の形成を抑制することが可能
となるため、 完全型抗体の収率増加に有効である。
組換え抗体の製造方法 (D ) は、 少なくとも、 同一宿主内で共存 ·複製可能な 2種の異 なるプラスミドに、 シャぺ口ニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及び シャぺ口ニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を各々組込んだ発現べク ターを作製する工程 1と、 工程 1で得られた 2種類の発現べクターを同一宿主に導入しシ ャぺロニン一抗体重鎖融合夕ンパク質とシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕ンパク質とを発現 する工程 2と、 シャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質とシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕 ンパク質より抗体重鎖と抗体軽鎖とを切出す工程 3と、 切出された抗体重鎖と抗体軽鎖と から抗体を構成する工程 4とを有する。
この方法では、 例えば、 図 4 ( a ) に示したように、 シャぺ口ニンリングのシャぺロニ ンサブュニヅ卜の構成数が 8個である古細菌由来のシャぺ口ニンを用いる場合において、 シャぺ口ニン:抗体重鎖及びシャぺ口ニン:抗体軽鎖の比が 8 : 1となるようにシャぺ口 ニン一抗体重鎖融合夕ンパク質をコードする遺伝子及びシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕ン パク質をコ一ドする遺伝子とを各々組込んだ発現ベクターを作製し、 同一の宿主細胞に形 質転換を行い共発現させる。 その結果、 宿主細胞内では 1つのシャぺ口ニンリング内に抗 体重鎖又は抗体軽鎖が 1つ格納された融合タンパク質が発現する。 この方法によれば、 シ ャぺロニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコ一ドする遺伝子とシャぺ口ニンと抗体軽鎖 との融合夕ンパク質をコ一ドする遺伝子とを 1つの発現べク夕一に組込む方法に比べて、 発現べクタ一の巨大化を防止し、 そのコピー数の減少を抑制することにより、 発現量の低 下を防ぐことができる。 この方法においては、 シャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質及 びシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕ンパク質が 1つの宿主細胞内に同時に存在しているた め、 シャぺ口ニン一抗体重鎖融合夕ンパク質及びシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕ンパク質 を同時に精製することが可能であり、 また、 それに続く重鎖及び軽鎖の切り出しも同時に fi1うことができる。
組換え抗体の製造方法 (E ) は、 少なくとも同一宿主内で共存 ·複製可能な 2種の異な るプラスミドに、 シャぺ口ニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子及びシ ャぺロニンと抗体軽鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子を各々組込んだ発現べクタ 一を作製する工程 1と、 工程 1で得られた 2種類の発現べクタ一を同一宿主に導入しシャ ベロニン一抗体重鎖一抗体軽鎖融合タンパク質を発現する工程 2と、 シャぺ口ニン一抗体 重鎖—抗体軽鎖融合夕ンパク質より抗体重鎖-抗体軽鎖複合体を切出す工程 3と、 工程 3
で得られた抗体重鎖—抗体軽鎖複合体から抗体を構成する工程 4とを有する。 この方法では、 例えば、 図 4 ( b ) に示したようにシャぺ口ニンリングのシャぺ口ニン サブュニットの構成数が 7個であるバクテリア由来のシャぺ口ニンを用いる場合におい て、 シャぺ口ニン:抗体重鎖の比が 4 : 1となるシャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質 をコードする遺伝子を組込んだ発現べクターとシャぺ口ニン:抗体軽鎖の比が 3 : 1とな るシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕ンパク質をコ一ドする遺伝子を組込んだ発現べク夕一と を作製し、 これらを用いて同一の宿主細胞を形質転換して共発現させる。 その結果、 宿主 細胞内では 1つのシャぺロニンリング内に抗体重鎖及び抗体軽鎖が 1つずつ格納されたシ ャぺロニン一抗体重鎖一抗体軽鎖融合夕ンパク質が発現し、 抗体重鎖と抗体軽鎖はシャぺ 口ニンリング内において複合体を形成することができる。 この方法によれば、 発現べク夕 一の巨大化を防止し、 そのコピー数の減少を抑制することにより、 発現量の低下を防く、こ とができる。 この方法では、 シャぺ口ニン一抗体重鎖一抗体軽鎖融合タンパク質が宿主細 胞内に存在しているため、 シャぺ口ニンから切出すことにより、 抗体重鎖一抗体軽鎖複合 体の回収が可能である。 更に、 この方法では、 抗体重鎖—抗体軽鎖間や抗体重鎖一抗体重 鎖間のジスルフィド結合を形成させ、 完全型抗体を構成する際に、 誤ったジスルフィ ド結 合の形成を抑制することが可能となるため、 完全型抗体の収率増加に有効である。
また、 本発明の組換え抗体の製造方法としては、 同一宿主内で共存 ·複製可能な 2種の 異なるプラスミドに、 シャぺ口ニンと抗体重鎖との融合タンパク質をコードする遺伝子又 はシャぺ口ニンと抗体軽鎖との融合夕ンパク質をコードする遺伝子と、 シャぺ口ニンのみ をコ一ドする遺伝子を各々組込み、 これらのプラスミドを同一の宿主に導入する方法も好 ましい。 この方法によれば、 シャペロン複合体の構造を制御することができる。 例えば、 シャぺ口ニンと抗体重鎖又は抗体軽鎖の数比が 4 : 1である融合タンパク質をコードする 遺伝子を組込んだベクタ一と、 1個又は 2〜4個連結したシャぺ口ニンのみをコードする 遺伝子を組込んだベクタ一とを宿主細胞に形質 換して共発現させることになる。 その結 果、 1つのシャぺロニンリング内に抗体重鎖又は抗体軽鎖が 1つ格納された融合夕ンパク 質が宿主細胞内で発現する。 この方法は、 発現べクタ一の巨大化を防止し、 そのコピー数 の減少を抑制することにより、 発現量の低下を防ぐことができる。
上記宿主としては特に限定されず、 例えば大腸菌等のバクテリア、 その他の原核細胞、 酵母、 昆虫細胞、 哺乳動物培養細胞、 植物培養細胞、 及び、 トランスジエニック動 '植物 等が挙げられる。 なかでも、 高い細月包増殖特性を有し、 培養操作が簡便でかつ培養に用い
る栄養源等のコストが安価であることから、大腸菌等のノ クテリァゃ酵母等が好適である。 また、 宿主の細胞質内、 細胞外のいずれに発現させてもかまわないが、 大量に発現させる 場合には細胞内に発現させる方が望ましい。
さらに、バクテリァ、真核生物抽出液等を用いた無細胞翻訳系(例えば、 S p i r i n, A. S., 1991, Sc ience 11, 2656-2664: Falco ne , D. e t a 1 1991, Mo 1. Cel l. Biol. 11,
2656-2664)でも、 シャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質、 シャぺ口ニン一 抗体軽鎖融合夕ンパク質及びシャぺ口ニン一抗体重鎖一抗体軽鎖融合夕ンパク質を可溶性 夕ンパク質として発現させることが可能である。
本発明の組換え抗体の製造方法では、発現したシャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質、 シャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕ンパク質又はシャぺ口ニン一抗体重鎖一抗体軽鎖融合夕ン パク質を精製し、 次いで抗体重鎖、 抗体軽鎖又は抗体重鎖一抗体軽鎖複合体を切り出す。 シャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質とシャぺ口ニン一抗体軽鎖融合タンパク質とを 同一宿主内で共発現させた場合には、 シャぺ口ニン一抗体重鎖融合夕ンパク質とシャぺ口 ニン一抗体軽鎖融合タンパク質を同時に精製することが可能であり、 またそれに続く抗体 重鎖及び抗体軽鎖の切り出しも同時に行うことができる。
また、 シャぺ口ニン一抗体重鎖一抗体軽鎖融合タンパク質を発現させた場合には、 シャ ぺロニンリングの中で抗体重鎖一抗体軽鎖複合体が形成されていることから、 精製後、 抗 体重鎖一抗体軽鎖複合体として回収することが可能である。
発現したシャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質、 シャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕ンパ ク質又はシャぺ口ニン一抗体重鎖一抗体軽鎖融合タンパク質を精製する方法としては特に 限定されず、 従来公知の方法を用いることができ、 例えば、 以下のような方法等が挙げら れる。
即ち、 まず、 宿主内でシャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質、 シャぺ口ニン一抗体軽 鎖融合タンパク質又はシャぺ口ニン一抗体重鎖—抗体軽鎖融合タンパク質を発現させた 後、 宿主細胞を適当な緩衝液中で破砕し、 得られた上清を疎水ク口マトグラフィ一ゃィォ ン交換クロマトグラフィ一によって融合タンパク質の存在するフラクションを回収する。 次いで、 得られたフラクションを限外ろ過によって濃縮した後、 濃,縮液を 5〜50mM程 度の塩化マグネシウム及び 50〜30 OmM程度の塩化ナトリゥム又は塩化力リウムが含 有された緩衝液を展開液としてゲルろ過を行い、 排除限界直後のピークを回収することに
よってシャぺ口ニン一抗体重鎖融合夕ンパク質、 シャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕ンパク質 又はシャぺ口ニン一抗体重鎖一抗体軽鎖融合夕ンパク質を精製することができる。
シャぺ口ニン一抗体重鎖融合夕ンパク質、 シャぺ口ニン一抗体軽鎖融合夕ンパク質又は シャぺロニンー抗体重鎖一抗体軽鎖融合夕ンパク質の N末端又は C末端に 6 ~ 1 0個のヒ スチジンが並んだ夕ヅグを連結させた場合には、 ニッケル等の金属キレートカラムにより 簡便で効率的に精製することができる。 ただし、 最終的に得られた抗体を治療薬として用 いるためには、 ヒスチジン夕グの除去の必要性が発生する可能性があるため、 抗体重鎖又 は抗体軽鎖を融合させていないペプチド末端にヒスチジン夕グを連結することが好まし い。
シャぺ口ニンが耐熱性のものである場合には、 宿主細胞を破砕した上澄みを 6 0〜8 0 °Cで熱処理することにより、 大部分の宿主由来タンパク質は沈殿するので、 シャぺ口ニン 一抗体重鎖融合タンパク質、 シャぺ口ニン一抗体軽鎖融合タンパク質又はシャぺ口ニン一 抗体重鎖一抗体軽鎖融合タンパク質の精製をより簡略ィ匕することができる。 抗体重鎖、 抗 体軽鎖及び抗体重鎖—抗体軽鎖複合体は熱に対して不安定であるが、 シャぺロニンの空洞 内部に保持されているので、 変性することはない。
本発明の組換え抗体の製造方法では、 次いで、 精製したシャぺ口ニン一抗体重鎖融合夕 ンパク質、 シャぺ口ニン一抗体軽鎖融合タンパク質又はシャぺ口ニン一抗体重鎖一抗体軽 鎖融合タンパク質から抗体重鎖、 抗体軽鎖又は抗体重鎖—抗体軽鎖複合体を切り出す。 切り出しの方法としては特に限定されず、 例えば、 以下のような方法が挙げられる。 即ち、 精製し、 回収した画分を E D T A (エチレンジァミン四酢酸) 処理した後、 マグ ネシゥム及び A T Pが入っていない緩衝液に対して透析を行いマグネシゥム及び A T Pを 除去する。 多くのシャぺ口ニンサブユニット間の会合は、 マグネシウムイオン及び A T P によって安定ィ匕されていることから、 マグネシウムイオン及び A T Pを除去することによ り、 シャぺ口ニンサブユニット間の相互作用は解除され立体構造は壊れ、 抗体重鎖、 抗体 軽鎖又は抗体重鎖—抗体軽鎖複合体が露出する。
予め、 シャぺ口ニン一抗体重鎖融合タンパク質、 シャぺ口ニン一抗体軽鎖融合タンパク 質又はシャぺ口ニン一抗体重鎖一抗体軽鎖融合タンパク質において、 シャぺ口ニンと抗体 重鎖又は抗体軽鎖との連結部が限定分解型プロテアーゼの切断配列を有するようにしてお けば、 透析内液にトロンビン等の限定分解型プロテア一ゼを作用させることにより極めて 容易に抗体重鎖又は抗体軽鎖を切り出すことができるので好ましい。
また、 予めシャぺ口ニン構造体のシャぺ口ニンサブュニットの連結部が限定分解型プロ テアーゼの切断配列を有するようにしておけば、 透析内液にトロンビン等の限定分解型プ 口テァ一ゼを作用させることによりシャぺロニンの立体構造が崩壊し、 極めて容易に抗体 重鎖又は抗体軽鎖を切り出すことができるので好ましい。
このようにして切断された抗体重鎖、 抗体軽鎖及び抗体重鎖一抗体軽鎖複合体は、 ィォ ン交換クロマトグラフィ一、 疎水クロマトグラフィー又は種々のァフィニィテイクロマト グラフィ一に供することによつて容易に回収することができる。
本発明の組換え抗体の製造方法では、 最後に切り出された抗体重鎖と抗体軽鎖、 又は、 抗体重鎖一抗体軽鎖複合体から抗体を構成する。
抗体重鎖と抗体軽鎖とから抗体を構成する方法としては特に限定されないが、 例えば、 生体外で行う方法としては以下のような方法が挙げられる。
即ち、 切り出された抗体重鎖と抗体軽鎖の混合物を 1 O mMジチオトレイトール (D T T ) 等の緩和な条件下で還元することによって各々の分子内ジスルフィ ド結合を維持した 状態で抗体重鎖と抗体軽鎖とを完全に解離し、 ゲルろ過または透析等により D T Tの除去 した後、 空気酸化することにより抗体重鎖一抗体軽鎖及び抗体重鎖—抗体重鎖間のジスル フィ ド結合の形成させ、 抗体を構成させる。
また、 空気酸化の際に、 目的とする抗体が認識する抗原を添加すれば、 抗体重鎖と抗体 軽鎖との会合が促進され、 抗体の収率が向上するので好ましい。
本発明の組換え抗体の製造方法によれば、従来の方法ではできなかった、完全な抗体を、 大量かつ容易に製造することができる。
本発明の組換え抗体の製造方法により製造される抗体としては特に限定されないが、 製 造した抗体を医薬として使用する場合には、 その安全性や生体内における半減期等の点か ら完全ヒト型抗体が好ましい。 しかし、 ヒト以外の哺乳動物由来抗体の抗原結合部位だけ を残してヒト由来の抗体に置換したヒト化抗体や、 ヒト由来の不変領域とヒト以外の哺乳 動物由来の可変領域を有する非ヒトノヒトキメラ抗体も好適である。 また、 抗体重鎖は抗 体軽鎖に比べて難発現性であることから、 抗体重鎖のみを本発明の方法により得、 通常の 直接発現法で得た抗体軽鎖と生体外で構成して完全抗体を得てもよい。 実施例
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、 本発明はこれらの実施例のみに
限定されるものではない。
実施例 1 (シャぺロニン連結体の発現系構築)
配列番号 1に示されたシャぺロニン サブユニット (TCP 3)遺伝子を Thermo coccus KS— 1株ゲノムを銪型とする PCR (Po lymerase c ha i n react ion) によってクローニングした。 T C P ?遺伝子が一方向に 4回連結 した遺伝子断片が挿入された T 7プロモーターを有する発現ベクター pETDH (TCP β) 4を構築した (図 5)。 シャぺ口ニン遺伝子を 4つ連結させた更に下流には、 ァフィ二 ティ一タグをコードする遺伝子を挿入するためのサイトとして、 Spe I及び Hp a Iを 設けた。 また、 シャぺ口ニン遺伝子連結部と上記 Spe Iサイトの間に、 翻訳されてプレ シジョンプロテアーゼとなるサイトを、 Hp a Iサイ卜の下流には翻訳されてヒスチジン 6残基からなるヒスチジンタグとなるサイトをそれそれ設けた (図 5)。 実施例 2 (抗体重鎖の発現)
配列番号 2に示したヒト由来抗 HB s (B型肝炎ウィルス表層タンパク)抗体の重鎖(A bH)遺伝子を PCR法により増幅した。 PCR産物の 5' 末端には S p e Iサイトを、 3, 末端には Hp a Iサイトをそれそれ設けた。 この PC R産物を Spe Iおよび Hp a ェ処理し、 あらかじめ同制限酵素で処理した発現ベクター pETDH (TCP/?) 4に組 込んだ。 これにより、 シャぺ口ニン/?サブユニット TCP 54量体と AbHとの融合タン パク質を合成する発現ベクター pETDH (TCP/?) 4 ' AbHを構築した。
得られた発現べクタ一 pETDH (TCP/?) 4 · AbHを大腸菌 BL21 (DE 3) 株に導入し、 カルペニシリン ( 100 g/mL) を含む 2XY. T. 培地 (パクトトリ プトン 16 g、酵母エキス 10g、 NaCl 5 gZL)で 30°C、 24時間培養し、 シャぺ口ニン/?サブュニヅト TCP/? 4量体と AbHとの融合タンパク質を発現させた。 次いで、菌体を 25 mM HEPE S緩衝液/ ImM EDTA (pH 6. 8)に懸濁し、 超音波処理にて菌体を破砕後、 その可溶性画分を SDS— PAGEに供した。 クマシーブ リリアントブルー染色によって分析した結果、 シャぺ口ニン^サブュニット TCP 54量 体と AbHとの融合タンパク質に相当するサイズのバンドが検出された (図 6 (a))。 上 記可溶性画分を 25 mM Tr i s - HC 1緩衝液 (pH7. 0) に透析後、 二ッケルキ レ一トセファロースカラム (アマシャムバイオサイエンス社) にアプライした。 ImMィ ミダゾ一ルを含有する 25 mM Tr is— HC1緩衝液( p H 7.0 )で充分に洗浄後、
10 OmMィミダゾ一ルを含有する同緩衝液でニッケルキレ一トセファロ一スに吸着した 画分を溶出した。 得られた精製画分を透析によってイミダゾ一ルを除き、 プレシジョンプ 口テアーセ (P resc i s s i on prot e as e) (アマシャムノ ィォサイエンス 社) 処理 (4 C、 20時間) することにより、 シャぺ口ニン連結体と AbHとを切断した (図 6 (b))。 SDS - PAGEヽ 及び、 抗ヒト I g G抗体 (HRPコンジユゲー卜) を 用いたウェス夕一ンブロヅティングを行った結果、 AbHに相当するバンドが特異的に検 出された。 このことから AbHが TCP/? 4量体との融合タンパク質として大腸菌可溶性 画分に発現することがわかった。 実施例 3 (抗体軽鎖の発現)
実施例 2に示した抗体重鎖遺伝子の代わりに配列番号 3に示したヒト由来抗 H B s (B 型肝炎ウィルス表層タンパク) 抗体の軽鎖 (AbL) 遺伝子を PCR法で増幅し、 同様の 方法で発現べクタ一 pETDH (TCP 5) 4に組込んだ。 これにより、 シャぺ口ニン/? サブュニヅト T C P ^ 4量体と Ab Lとの融合夕ンパク質を合成する発現ベクター p E T DH (TCP 5) 4 ' AbLを構築した。 得られた発現ベクターを用い、 実施例 2と同様 の方法でシャぺ口ニン/?サブュニヅト T CP/? 4量体と AbLとの融合タンパク質を発現 させた (図 6 (c))。 さらに、 同様の方法でプレシジョンプロテア一ゼ処理の後 SD S— PAGEを行い (図 6 (d))、 ウェス夕一ンブロヅティングを行った結果、 AbLに相当 するバンドが特異的に検出された。 このことから AbLが TCP ^ 4量体との融合タンパ ク質として大腸菌可溶性画分に発現することがわかった。 実施例 4 (抗体重鎖及び軽鎖のアセンブリ一)
実施例 2及び実施例 3で得られた抗体重鎖および抗体軽鎖を含むタンパク質溶液を混合 し、 非還元条件下で 4 °Cにて 3時間透析した。 透析後、 プロティン Gビーズ懸濁液を添加 し、 室温にて 60分間攪拌することにより、 重鎖及び軽鎖がアセンブリーした抗体をビ一 ズ上に回収した。 ビーズを PBSで洗浄後、 さらに l O OmM グリシン一HC1緩衝液 (pH2. 5) で 10分間ビーズをインキュベートし、 上清を回収した。 得られた画分を SDS— PAGEによって分離後、 ウエスタンブロヅティングによって分析した。 重鎖の みの反応液についてはビーズ吸着画分に大部分が回収されたのに対し (図 7 レーン 1, 2 ).軽鎖のみの反応液については、ほとんどが非吸着画分に回収された(図 Ί レーン 3,
4)。一方、重鎖及び軽鎖の混合液については、 ビーズ吸着画分に重鎖だけでなく軽鎖も同 時に検出された(図 7 レーン 5, 6)o このことは軽鎖が重鎖と結合していることを示す ものであり、 両者が正しくアセンブリ一していることを示唆するものと考えられた。 実施例 5 (組換え抗体の抗原認識)
実施例 4でアセンブリ一して得られた抗 HBs抗体 (I gG) の抗原認識能は、 ELI S A法において一次抗体として機能するか否かで評価した。 すなわち、 B型肝炎ウィルス 表層タンパク質を固定化した 96穴プレートを 50%ブロックエース (雪印乳業社) にて 固定化し、 PBSにて洗浄後、 実施例 4で得られた抗 HBs抗体を含むタンパク質溶液を 一次抗体として添加し、 室温にて 3時間インキュベートした。 PBSにて洗浄後、 2次抗 体として抗ヒト I gG— HRPコンジュゲートを含む PBSでインキュベートした。 PB Sにて洗浄後、 HHPの基質として ABTS液を加え、 5分間インキュベート後、 プレー トリ—ダ一にて 0 D 405を測定した。
抗原として HB sの代わりにリゾチームを用いたところ、 それに対する結合はほとんど 見られなかった。 それに対し、 抗原である HBsに対しては特異的に結合していることが わかった (図 8 (a))。 重鎖及び軽鎖をアセンブリ一した抗体の結合活性は、 重鎖のみで 評価したものと比べて結合力が高く (図 8 (b))、 重鎖と軽鎖が正しくアセンブリ一して いることが示された。 軽鎖のみで同様の操作を行ったものについてはほとんど抗原との結 合は示さなかった (図 8 (c))。 実施例 6 (無細胞翻訳系による(TCP^) 4とヒト抗体重鎖の融合タンパク質の合成) 無細胞翻訳系発現ベクター p I VEX 2. 3 (ロシュダイァグノスティヅクス社) に T CP ? 4回連結体と抗 HB sヒ卜抗体重鎖の融合夕ンパク質をコ一ドする遺伝子を導入 し、 pIV (TCP ?) 4 ' A bHを構築した。 Rapid Trans lat ion S s t em RTS 500 (ロシュダイァグノスティヅクス社)を用いてタンパク質 合成を行った。 反応方法は本無細胞翻訳システムの Inst ruct ion Manua 1 (Vers ion 1, June 200◦) に従った。反応終了後、 反応液からニッケ ルキレートクロマトグラフィーによって精製した後、 25mM MgC 1 及び 200m M KC1を含む 50mM T r i s— H C 1緩衝液 (p H 7. 5) に対して透析した。 透析内液に存在する融合夕ンパク質を透過型電子顕微鏡で観察した結果、 シャぺロニン特
有のリング構造が見られた。 精製された融合タンパク質より実施例 3と同様にプレシジョ ンプロテアーゼで切り出した。 本サンプルを SDS— PAGEに供した後、 実施例 3と同 様にウェス夕一ンブロヅティングすると、 分子量相当の約 53 KD aのバンドが検出され た。 A bH単独で発現させた場合は、 不溶性画分に HabHは蓄積した。 以上のように、 本発明の融合タンパク質を用いる発現は無細胞翻訳系においても有効であった。 実施例 7 (無細胞翻訳系による(TCP/?) 4とヒト抗体軽鎖の融合タンパク質の合成) 無細胞翻訳系発現べク夕一 PIVEX2. 3 (ロシュダイァグノスティヅクス社) に T 〇? ?4回連結体と抗11:63ヒト抗体軽鎖 (AbL) の融合タンパク質をコードする遺伝 子を導入し pi V (TCP 3) 4 · AbLを構築した。 Rapid Trans lat i on Sysy t em RTS 500を用いてタンパク質合成を行った。反応方法は本無 糸田月包翻訳システムの I n s t ru c t i o n Manual (Vers ion 1, J u ne 2000)に従った。反応終了後、反応液からニヅケルキレートク口マトグラフィ一 によって精製した後、 25mM MgC 1
2、及び 20 OmM KC1を含む 50mM T
1緩衝液 (pH7. 5) に対して透析した。 透析内液に存在する融合タンパ ク質を透過型電子顕微鏡で観察した結果、 シャぺ口ニン特有のリング構造が見られた。 精 製された融合夕ンパク質より実施例 3と同様にプレシジョンプロテア一ゼで切り出した。 本サンプルを SD S— PAGEに供した後、 ウェス夕一ンブロッテイングすると分子量相 当の約 29 kD aのバンドが検出された。 AbL単独で発現させた場合は、 不溶性画分に AbLは蓄積した。 以上のように、 本発明の融合タンパク質を用いる発現は無細胞翻訳系 においても有効であった。 産業上の利用可能性
本発明によれば、 大量生産が困難であつた完全な組換え抗体を宿主生物系又は無細胞翻 訳系で効率的に発現させることができ、精製も容易な組換え抗体の製造方法を提供できる。 本発明は宿主生物の細胞質に発現するので、 大量の抗体を発現することができる。