JP2003322585A - 常時微動計測に基づく建物の健全性診断法 - Google Patents
常時微動計測に基づく建物の健全性診断法Info
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- JP2003322585A JP2003322585A JP2002127413A JP2002127413A JP2003322585A JP 2003322585 A JP2003322585 A JP 2003322585A JP 2002127413 A JP2002127413 A JP 2002127413A JP 2002127413 A JP2002127413 A JP 2002127413A JP 2003322585 A JP2003322585 A JP 2003322585A
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Abstract
(57)【要約】
【課題】 風力や交通振動等により励起される建物の常
時微動を計測し、その計測記録に含まれる建物全体の振
動成分のみを抽出することにより対象建物の振動特性を
同定し、建物内ならびに建物基礎部分に関する構造健全
性を評価する。 【解決手段】 ARMAモデルに移動平均項(MA項)
が付加されたARMAMAモデルを用い、振動センサに
より計測された建物の常時微動記録の中の任意のひとつ
の基準信号と残りの参照信号とのクロススペクトルを求
め、これら基準信号および参照信号の相関成分と無相関
部分とを分離して建物全体の振動成分のみを抽出する第
一の方法と、この第一の方法による結果から建物の振動
特性を同定する第二の方法と、建物の振動特性の同定結
果から建物および基礎部分の剛性を計算する第三の方法
とから成る。
時微動を計測し、その計測記録に含まれる建物全体の振
動成分のみを抽出することにより対象建物の振動特性を
同定し、建物内ならびに建物基礎部分に関する構造健全
性を評価する。 【解決手段】 ARMAモデルに移動平均項(MA項)
が付加されたARMAMAモデルを用い、振動センサに
より計測された建物の常時微動記録の中の任意のひとつ
の基準信号と残りの参照信号とのクロススペクトルを求
め、これら基準信号および参照信号の相関成分と無相関
部分とを分離して建物全体の振動成分のみを抽出する第
一の方法と、この第一の方法による結果から建物の振動
特性を同定する第二の方法と、建物の振動特性の同定結
果から建物および基礎部分の剛性を計算する第三の方法
とから成る。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、常時微動計測に基
づく建物の健全性診断法に関する。さらに詳述すると、
本発明は、地震や強風等の過大な外力あるいは構造材料
の経年劣化により発生する建物の損傷を振動計測に基づ
き判定する方法、あるいは新設もしくは構造補強された
建物の健全性を判定する方法の改良に関する。
づく建物の健全性診断法に関する。さらに詳述すると、
本発明は、地震や強風等の過大な外力あるいは構造材料
の経年劣化により発生する建物の損傷を振動計測に基づ
き判定する方法、あるいは新設もしくは構造補強された
建物の健全性を判定する方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】地震や強風等を受け被災した建物あるい
は新設もしくは構造補強された建物を対象として構造の
健全性を評価するための建物の健全性診断法がこれまで
種々提案されている。
は新設もしくは構造補強された建物を対象として構造の
健全性を評価するための建物の健全性診断法がこれまで
種々提案されている。
【0003】例えば特開平11−44615号公報で
は、地震時の建物の損傷をモニタするためのシステムが
提案されている。このシステムは、計算機により入力地
震波形と他の地震記録計から得られた建物の応答波形と
を求め、既に求められている伝達関数と比較することに
よって建物の健全性を診断するもので、構造専門家が実
際に目視検査しなくても診断することが可能である。こ
の場合、地表で測定された信号が系への入力信号となっ
ており、例えば屋上における信号と地表における信号と
から伝達関数を求めることができる。
は、地震時の建物の損傷をモニタするためのシステムが
提案されている。このシステムは、計算機により入力地
震波形と他の地震記録計から得られた建物の応答波形と
を求め、既に求められている伝達関数と比較することに
よって建物の健全性を診断するもので、構造専門家が実
際に目視検査しなくても診断することが可能である。こ
の場合、地表で測定された信号が系への入力信号となっ
ており、例えば屋上における信号と地表における信号と
から伝達関数を求めることができる。
【0004】ただし、建物は地震や強風を受けない通常
の状態であっても交通振動や風力、波浪、地球深部の振
動等さらには内部で動く人間の動き等を振動源として人
体には感じられないほど非常に小さな振幅で常に振動し
ていることが判っている(本明細書ではこのような微小
な振動のことを「常時微動」と呼ぶ)。これに対し、こ
のモニタシステムでは建物における常時微動が考慮され
ていないので地表で測った入力機の信号をインプットと
すると常時微動の影響が排除できない。この常時微動に
よる影響を排除するには例えば人のいない夜であって風
のない日にモニタリングする必要があるが、地震があっ
た後は夜を待たずにあるいは風が止むのを待たずにすぐ
建物の健全性を診断したいという要請があり、このよう
な要請を満たし得ない点でこのモニタシステムは問題で
ある。加えて、地震に基づいて建物の振動特性を評価す
るシステムの場合は地震時にしか測定が行えずデータ収
集が稀になってしまうという欠点がある。しかも、常時
微動を計測する方法に比べると計測可能な時間(すなわ
ち地震により揺れている時間)が極めて少なく、精度よ
く解析を行うことが困難である。
の状態であっても交通振動や風力、波浪、地球深部の振
動等さらには内部で動く人間の動き等を振動源として人
体には感じられないほど非常に小さな振幅で常に振動し
ていることが判っている(本明細書ではこのような微小
な振動のことを「常時微動」と呼ぶ)。これに対し、こ
のモニタシステムでは建物における常時微動が考慮され
ていないので地表で測った入力機の信号をインプットと
すると常時微動の影響が排除できない。この常時微動に
よる影響を排除するには例えば人のいない夜であって風
のない日にモニタリングする必要があるが、地震があっ
た後は夜を待たずにあるいは風が止むのを待たずにすぐ
建物の健全性を診断したいという要請があり、このよう
な要請を満たし得ない点でこのモニタシステムは問題で
ある。加えて、地震に基づいて建物の振動特性を評価す
るシステムの場合は地震時にしか測定が行えずデータ収
集が稀になってしまうという欠点がある。しかも、常時
微動を計測する方法に比べると計測可能な時間(すなわ
ち地震により揺れている時間)が極めて少なく、精度よ
く解析を行うことが困難である。
【0005】一方で、建物上で計測された常時微動には
建物の特性が含まれるため、これを計測・分析すること
により建物の特性を抽出できることが以前から知られて
いる。したがって、被害を受ける前の健全時とその後
(例えば被災後)とにおいて計測・分析をし、被災前後
の建物の特性を比較することにより建物の健全性を診断
することが可能である。このような常時微動計測に基づ
く建物の健全性診断法としては、例えば図7に示す建物
の1階の計測データを入力、他の階(例えば屋上)の計
測データを出力とし、その入力と出力の関係を評価する
ことで建物の特性を推定するような方法が採用されてい
る。
建物の特性が含まれるため、これを計測・分析すること
により建物の特性を抽出できることが以前から知られて
いる。したがって、被害を受ける前の健全時とその後
(例えば被災後)とにおいて計測・分析をし、被災前後
の建物の特性を比較することにより建物の健全性を診断
することが可能である。このような常時微動計測に基づ
く建物の健全性診断法としては、例えば図7に示す建物
の1階の計測データを入力、他の階(例えば屋上)の計
測データを出力とし、その入力と出力の関係を評価する
ことで建物の特性を推定するような方法が採用されてい
る。
【0006】従来、このような健全性診断法における解
法モデルとして、ARMAモデル(Autoregressive Movi
ng-Average model)が利用されている。ARMAモデル
は例えば数式1に示すように右辺第1項であるAR(Aut
oregressive)項と第2項であるMA(Moving-Average)項
の和として表現されるモデルで、各項の係数(この場
合、a1(k)、b1(k))に重み付けをして振動特性を表すス
ペクトルを得ようとするもので、このARMAモデルに
よればホワイトノイズをMA項中でe(t-k)として表すこ
とにより過去の値を参照することが可能となっている。
これにより、クロススペクトルの形状を推定してこの推
定結果から振動特性を同定するような診断法が行われて
いる。
法モデルとして、ARMAモデル(Autoregressive Movi
ng-Average model)が利用されている。ARMAモデル
は例えば数式1に示すように右辺第1項であるAR(Aut
oregressive)項と第2項であるMA(Moving-Average)項
の和として表現されるモデルで、各項の係数(この場
合、a1(k)、b1(k))に重み付けをして振動特性を表すス
ペクトルを得ようとするもので、このARMAモデルに
よればホワイトノイズをMA項中でe(t-k)として表すこ
とにより過去の値を参照することが可能となっている。
これにより、クロススペクトルの形状を推定してこの推
定結果から振動特性を同定するような診断法が行われて
いる。
【数1】
【0007】ここで一例を示すと、例えば図7に示すよ
うな建物においてARMAモデルにより振動特性を得よ
うとする場合、1階部分の応答を数式1のようなモデル
で表し、屋上部分の応答を数式2のようなモデルで表
し、これら各モデルにホワイトノイズをインプットとし
て入力し、各アウトプット(x1(t)、xR(t))を求めるこ
とによって振動特性を同定することが可能である。この
場合、数式1と数式2とにおけるインプット(この場合
はe(t-k)が該当)は互いに等しいものと仮定されて入力
されるので振動特性が抽出しやすいという利点がある。
うな建物においてARMAモデルにより振動特性を得よ
うとする場合、1階部分の応答を数式1のようなモデル
で表し、屋上部分の応答を数式2のようなモデルで表
し、これら各モデルにホワイトノイズをインプットとし
て入力し、各アウトプット(x1(t)、xR(t))を求めるこ
とによって振動特性を同定することが可能である。この
場合、数式1と数式2とにおけるインプット(この場合
はe(t-k)が該当)は互いに等しいものと仮定されて入力
されるので振動特性が抽出しやすいという利点がある。
【数2】
【0008】ところで、振動特性を同定する場合、常時
微動による影響を考慮し、建物の局所振動に関するノイ
ズ成分を取り除かないと精度が劣化するのは上述したと
おりである。したがって、例えば図7に示すように屋上
の室外機のような常時微動を生じさせる局所的な発生源
がある場合、これに起因するノイズ成分のみ分離し、建
物を揺らしている振動成分のみを残すようにする必要が
ある。
微動による影響を考慮し、建物の局所振動に関するノイ
ズ成分を取り除かないと精度が劣化するのは上述したと
おりである。したがって、例えば図7に示すように屋上
の室外機のような常時微動を生じさせる局所的な発生源
がある場合、これに起因するノイズ成分のみ分離し、建
物を揺らしている振動成分のみを残すようにする必要が
ある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
ARMAモデルによるとこのような局所的振動を本来の
振動成分から分離できないという問題がある。すなわ
ち、数式1あるいは数式2として示したARMAモデル
では、いずれの式においてもインプットを等しいと仮定
して入力していることから、ある特定の場所に全く異な
る振動源があるような場合(例えば図7の建物において
屋上に室外機が設置されているような場合)、これに起
因する振動(常時微動)を計測データから分離すること
ができない。このため、1階部分と屋上部分とで共通す
ることのない無相関成分(つまり局所的なノイズ成分)
を除去することができず、診断精度がその分だけ劣ると
いう問題を有している。
ARMAモデルによるとこのような局所的振動を本来の
振動成分から分離できないという問題がある。すなわ
ち、数式1あるいは数式2として示したARMAモデル
では、いずれの式においてもインプットを等しいと仮定
して入力していることから、ある特定の場所に全く異な
る振動源があるような場合(例えば図7の建物において
屋上に室外機が設置されているような場合)、これに起
因する振動(常時微動)を計測データから分離すること
ができない。このため、1階部分と屋上部分とで共通す
ることのない無相関成分(つまり局所的なノイズ成分)
を除去することができず、診断精度がその分だけ劣ると
いう問題を有している。
【0010】また、常時微動計測に基づいて建物の健全
性を診断する従来の方法の場合、図8に示すように建物
の揺れは建物の下方の地盤から伝播する振動に励起され
て水平方向に振動すると仮定され、このように地盤の水
平振動のみにより励起されている場合には精度の良い結
果が得られる。例えば、建物の1階の入力振動波形がそ
のままインプットになる地震の場合には適切な診断が可
能である。しかし、現実には図9に示すように建物の上
部に作用する風力によっても建物の振動は励起され、ま
た建物とともに地盤も変形するため基礎の回転を伴う振
動となっており、正確な計測を実施することが困難な複
数個の外力が地盤の水平振動と同時に建物に作用してい
る場合が多い。このような場合、入力信号=インプット
であるという前提が崩れ、その分だけ評価精度が低下せ
ざるを得ない。したがって、従来は無風に近い状態での
計測データのみを使用し、しかも地盤の変形は小さいと
みなして健全性診断を行っているような場合もある。
性を診断する従来の方法の場合、図8に示すように建物
の揺れは建物の下方の地盤から伝播する振動に励起され
て水平方向に振動すると仮定され、このように地盤の水
平振動のみにより励起されている場合には精度の良い結
果が得られる。例えば、建物の1階の入力振動波形がそ
のままインプットになる地震の場合には適切な診断が可
能である。しかし、現実には図9に示すように建物の上
部に作用する風力によっても建物の振動は励起され、ま
た建物とともに地盤も変形するため基礎の回転を伴う振
動となっており、正確な計測を実施することが困難な複
数個の外力が地盤の水平振動と同時に建物に作用してい
る場合が多い。このような場合、入力信号=インプット
であるという前提が崩れ、その分だけ評価精度が低下せ
ざるを得ない。したがって、従来は無風に近い状態での
計測データのみを使用し、しかも地盤の変形は小さいと
みなして健全性診断を行っているような場合もある。
【0011】さらに、振動センサにより計測された常時
微動記録には、建物全体に共通する振動成分だけでな
く、床および梁等の構造部材の振動成分や建物内部に設
置された稼動機械による振動成分等の局所的な振動成分
が含まれる場合があり、これらの場合には、複数の外力
により建物の応答が励起される状態になること、ならび
に常時微動記録には建物全体の振動成分に加えて局所的
な振動成分(例えば上述の室外機のようなファンやター
ビンなどの機械系に基づく振動成分)も含まれることか
ら入出力関係は複雑に交錯し、入出力関係に基づく評価
方法では建物の振動特性の評価精度が著しく低下するた
め、建物の健全性評価を実施することができないという
問題がある。
微動記録には、建物全体に共通する振動成分だけでな
く、床および梁等の構造部材の振動成分や建物内部に設
置された稼動機械による振動成分等の局所的な振動成分
が含まれる場合があり、これらの場合には、複数の外力
により建物の応答が励起される状態になること、ならび
に常時微動記録には建物全体の振動成分に加えて局所的
な振動成分(例えば上述の室外機のようなファンやター
ビンなどの機械系に基づく振動成分)も含まれることか
ら入出力関係は複雑に交錯し、入出力関係に基づく評価
方法では建物の振動特性の評価精度が著しく低下するた
め、建物の健全性評価を実施することができないという
問題がある。
【0012】加えて、建物が振動する際、建物が据え付
けられている地盤が実際には傾いた状態となり、例えば
建物の屋上で振動波形を計測する場合、地盤の傾きも併
せて検出している場合があるという問題もある。このよ
うな場合、水平方向の検出器では1階の部分における地
盤の傾きを検出することができず、この傾きが水平方向
検出器での入力となってその分だけ誤差が生じている。
けられている地盤が実際には傾いた状態となり、例えば
建物の屋上で振動波形を計測する場合、地盤の傾きも併
せて検出している場合があるという問題もある。このよ
うな場合、水平方向の検出器では1階の部分における地
盤の傾きを検出することができず、この傾きが水平方向
検出器での入力となってその分だけ誤差が生じている。
【0013】そこで、本発明は、基礎部分を含めた建物
全体の健全性を高精度で診断し信頼性の高い評価が可能
な常時微動計測に基づく建物の健全性診断法を提供する
ことを目的とする。
全体の健全性を高精度で診断し信頼性の高い評価が可能
な常時微動計測に基づく建物の健全性診断法を提供する
ことを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
め本発明者は種々の検討をし、上述のような問題点を改
善するため、入力信号と出力信号の相関と因果関係を求
めるための新しい解法モデルとして、従来知られている
ARMAモデルに更にMA(Moving-Average)を追加した
新しいモデルに想到し、このモデルによる新しいスペク
トル解析法について検討し、この結果、構造物の振動モ
ード同定への適用を見出すに至った(本明細書ではこの
モデルを「ARMAMAモデル(Autoregressive Movin
g-Average and Moving-Average model)」と呼ぶことに
する)。
め本発明者は種々の検討をし、上述のような問題点を改
善するため、入力信号と出力信号の相関と因果関係を求
めるための新しい解法モデルとして、従来知られている
ARMAモデルに更にMA(Moving-Average)を追加した
新しいモデルに想到し、このモデルによる新しいスペク
トル解析法について検討し、この結果、構造物の振動モ
ード同定への適用を見出すに至った(本明細書ではこの
モデルを「ARMAMAモデル(Autoregressive Movin
g-Average and Moving-Average model)」と呼ぶことに
する)。
【0015】ARMAMAモデルとは通常のARMAモ
デルにMA項すなわち移動平均項を付加したモデルであ
り、上述した数式1、数式2に対応するモデルを表せば
下記の数式3、数式4のようになる。
デルにMA項すなわち移動平均項を付加したモデルであ
り、上述した数式1、数式2に対応するモデルを表せば
下記の数式3、数式4のようになる。
【数3】
【数4】
ARMAMAモデルを用いた場合、各式(数式3と数式
4)に共通する信号(この場合、ホワイトノイズe(t-k)
が該当)が入力されることに加え、新しく追加されたM
A項にはそれぞれ別の信号(この場合、eR(t-k)とe1(t-
k))が入力されることにより局所的信号成分が加味され
た振動特性が得られる。そして、得られた振動特性から
クロススペクトル(複数の計測データの相関性に関する
周波数軸の関数)を得ることにより建物の局所振動に関
するノイズ成分が抽出されること、つまり、ARMAモ
デルとは異なり複数の時系列波形の相関成分と無相関成
分を分離し、これにより観測波形に特有の振動成分が含
まれる場合にもこれらを除去して複数の観測波形に共通
する成分が抽出されることが知見された。
4)に共通する信号(この場合、ホワイトノイズe(t-k)
が該当)が入力されることに加え、新しく追加されたM
A項にはそれぞれ別の信号(この場合、eR(t-k)とe1(t-
k))が入力されることにより局所的信号成分が加味され
た振動特性が得られる。そして、得られた振動特性から
クロススペクトル(複数の計測データの相関性に関する
周波数軸の関数)を得ることにより建物の局所振動に関
するノイズ成分が抽出されること、つまり、ARMAモ
デルとは異なり複数の時系列波形の相関成分と無相関成
分を分離し、これにより観測波形に特有の振動成分が含
まれる場合にもこれらを除去して複数の観測波形に共通
する成分が抽出されることが知見された。
【0016】本発明はかかる知見に基づくもので、請求
項1記載の発明は、風力や交通振動等により励起される
建物の常時微動を計測し、その計測記録に含まれる振動
成分から対象建物の振動特性を同定し、建物内ならびに
建物の基礎部分に関する構造の健全性を評価する常時微
動計測に基づく建物の健全性診断法において、ARMA
モデルに移動平均項(MA項)が付加されたARMAM
Aモデルを用い、振動センサにより計測された建物の常
時微動記録の中の任意のひとつの基準信号と残りの参照
信号とのクロススペクトルを求め、これら基準信号およ
び参照信号の相関成分と無相関部分とを分離して建物全
体の振動成分のみを抽出して建物の振動特性を同定する
ことを特徴とするものである。
項1記載の発明は、風力や交通振動等により励起される
建物の常時微動を計測し、その計測記録に含まれる振動
成分から対象建物の振動特性を同定し、建物内ならびに
建物の基礎部分に関する構造の健全性を評価する常時微
動計測に基づく建物の健全性診断法において、ARMA
モデルに移動平均項(MA項)が付加されたARMAM
Aモデルを用い、振動センサにより計測された建物の常
時微動記録の中の任意のひとつの基準信号と残りの参照
信号とのクロススペクトルを求め、これら基準信号およ
び参照信号の相関成分と無相関部分とを分離して建物全
体の振動成分のみを抽出して建物の振動特性を同定する
ことを特徴とするものである。
【0017】また、請求項2記載の発明は、風力や交通
振動等により励起される建物の常時微動を計測し、その
計測記録に含まれる振動成分から対象建物の振動特性を
同定し、建物内ならびに建物の基礎部分に関する構造の
健全性を評価する常時微動計測に基づく建物の健全性診
断法において、ARMAモデルに移動平均項(MA項)
が付加されたARMAMAモデルを用い、振動センサに
より計測された建物の常時微動記録の中の任意のひとつ
の基準信号と残りの参照信号とのクロススペクトルを求
め、これら基準信号および参照信号の相関成分と無相関
部分とを分離して建物全体の振動成分のみを抽出する第
一の方法と、この第一の方法による結果から建物の振動
特性を同定する第二の方法と、建物の振動特性の同定結
果から建物および基礎部分の剛性を計算する第三の方法
とから成り、第一の方法から第三の方法までにより得ら
れる評価時における建物の振動特性と剛性分布を、予め
同様の方法により推定された健全時における振動特性あ
るいは設計図面により計算された振動特性と比較するこ
とにより健全性を診断することを特徴とするものであ
る。
振動等により励起される建物の常時微動を計測し、その
計測記録に含まれる振動成分から対象建物の振動特性を
同定し、建物内ならびに建物の基礎部分に関する構造の
健全性を評価する常時微動計測に基づく建物の健全性診
断法において、ARMAモデルに移動平均項(MA項)
が付加されたARMAMAモデルを用い、振動センサに
より計測された建物の常時微動記録の中の任意のひとつ
の基準信号と残りの参照信号とのクロススペクトルを求
め、これら基準信号および参照信号の相関成分と無相関
部分とを分離して建物全体の振動成分のみを抽出する第
一の方法と、この第一の方法による結果から建物の振動
特性を同定する第二の方法と、建物の振動特性の同定結
果から建物および基礎部分の剛性を計算する第三の方法
とから成り、第一の方法から第三の方法までにより得ら
れる評価時における建物の振動特性と剛性分布を、予め
同様の方法により推定された健全時における振動特性あ
るいは設計図面により計算された振動特性と比較するこ
とにより健全性を診断することを特徴とするものであ
る。
【0018】ここでは、建物上の複数位置に振動センサ
を配置することにより計測された常時微動記録の中で、
任意のひとつの記録が基準信号、残りの記録が参照信号
とされる。そして、同じ建物中の異なる個所における時
刻歴波形(横軸は時間t、縦軸は振動)を掛け合わせる
ことによって両波形のうちの共通する成分のみが波形と
して示されたクロススペクトルが得られるので、基準信
号と参照信号の間のクロススペクトルをARMAMAモ
デルを用いた方法を用いて推定することにより、2つの
信号に共通に含まれる振動成分の中で基準信号を原因、
参照信号を結果とする因果律を満たすものが抽出され
る。このため、観測波形に特有の振動成分が含まれる場
合にもこれらを除去して複数の観測波形に共通する成分
のみを抽出できる。この抽出された振動成分より、基礎
部分を含めた建物の振動特性が同定される。この振動特
性を同様の方法で事前に得られている建物健全時の振動
特性(あるいは設計図面から推定される振動特性)と比
較することにより、建物および建物基礎部分の健全性が
損なわれているか否かが判定される。健全性が損なわれ
ていると判定された場合には、それら振動特性から建物
および基礎部分の剛性を算定し、建物健全時と評価時の
剛性分布を比較することにより健全性が損なわれている
位置と程度を判定する。
を配置することにより計測された常時微動記録の中で、
任意のひとつの記録が基準信号、残りの記録が参照信号
とされる。そして、同じ建物中の異なる個所における時
刻歴波形(横軸は時間t、縦軸は振動)を掛け合わせる
ことによって両波形のうちの共通する成分のみが波形と
して示されたクロススペクトルが得られるので、基準信
号と参照信号の間のクロススペクトルをARMAMAモ
デルを用いた方法を用いて推定することにより、2つの
信号に共通に含まれる振動成分の中で基準信号を原因、
参照信号を結果とする因果律を満たすものが抽出され
る。このため、観測波形に特有の振動成分が含まれる場
合にもこれらを除去して複数の観測波形に共通する成分
のみを抽出できる。この抽出された振動成分より、基礎
部分を含めた建物の振動特性が同定される。この振動特
性を同様の方法で事前に得られている建物健全時の振動
特性(あるいは設計図面から推定される振動特性)と比
較することにより、建物および建物基礎部分の健全性が
損なわれているか否かが判定される。健全性が損なわれ
ていると判定された場合には、それら振動特性から建物
および基礎部分の剛性を算定し、建物健全時と評価時の
剛性分布を比較することにより健全性が損なわれている
位置と程度を判定する。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成を図面に示す
実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0020】1.全体の説明
図1〜図4に本発明を適用した常時微動計測に基づく建
物の健全性診断法の一実施形態を示す。図1に、本実施
形態に係る健全性診断法の手順の流れ全体を示す。図1
に示すように、健全時(ダッシュなしの符号で示してい
る)あるいは評価時(健全時と異なるステップはダッシ
ュ付の符号で示している)における建物の常時微動記録
を、例えば建物上に設置された複数の振動センサ等によ
り計測する(ステップ1、ステップ1’)。その計測記
録からARMAMAモデルによるスペクトル解析法を用
いることにより(ステップ2)、基準信号と複数個の参
照信号の間のクロススペクトルならびに基準信号に関す
るパワースペクトル(単点の計測データの特性を表す周
波数軸の関数)を算定する(ステップ3、ステップ
3’)。次に、それらスペクトルの計算結果から振動特
性の同定法を用い(ステップ4)、固有振動数および固
有モード(構造物上の各計測点における振動振幅の大き
さの比を表すベクトル)を求めることによって建物の振
動特性を計算する(ステップ5、ステップ5’)。振動
特性の計算結果を健全時と評価時について比較すること
により(ステップ6)、建物全体の健全性の良否が判定
される(ステップ7)。建物の健全性が失われていると
判定された場合には、剛性分布の同定法を用いることに
より(ステップ8)、振動特性の計算結果から建物の剛
性分布を計算する(ステップ9、ステップ9’)。剛性
分布の計算結果を健全時と評価時について比較すること
により(ステップ10)、健全性に劣る位置とその程度
が判定される(ステップ11)。なお、新設もしくは構
造補強された建物の健全性を判定する場合には、図1の
健全時の振動特性および健全時の剛性分布には設計図面
から計算されたものをそれぞれ用いる。
物の健全性診断法の一実施形態を示す。図1に、本実施
形態に係る健全性診断法の手順の流れ全体を示す。図1
に示すように、健全時(ダッシュなしの符号で示してい
る)あるいは評価時(健全時と異なるステップはダッシ
ュ付の符号で示している)における建物の常時微動記録
を、例えば建物上に設置された複数の振動センサ等によ
り計測する(ステップ1、ステップ1’)。その計測記
録からARMAMAモデルによるスペクトル解析法を用
いることにより(ステップ2)、基準信号と複数個の参
照信号の間のクロススペクトルならびに基準信号に関す
るパワースペクトル(単点の計測データの特性を表す周
波数軸の関数)を算定する(ステップ3、ステップ
3’)。次に、それらスペクトルの計算結果から振動特
性の同定法を用い(ステップ4)、固有振動数および固
有モード(構造物上の各計測点における振動振幅の大き
さの比を表すベクトル)を求めることによって建物の振
動特性を計算する(ステップ5、ステップ5’)。振動
特性の計算結果を健全時と評価時について比較すること
により(ステップ6)、建物全体の健全性の良否が判定
される(ステップ7)。建物の健全性が失われていると
判定された場合には、剛性分布の同定法を用いることに
より(ステップ8)、振動特性の計算結果から建物の剛
性分布を計算する(ステップ9、ステップ9’)。剛性
分布の計算結果を健全時と評価時について比較すること
により(ステップ10)、健全性に劣る位置とその程度
が判定される(ステップ11)。なお、新設もしくは構
造補強された建物の健全性を判定する場合には、図1の
健全時の振動特性および健全時の剛性分布には設計図面
から計算されたものをそれぞれ用いる。
【0021】2.クロススペクトル計算法の説明
図1にステップ2として示したARMAMAモデルによ
るスペクトル解析法(第一の方法)について以下に説明
する。新たに考案されたARMAMAモデルは、建物上
で計測された常時微動記録の中で、2つの時系列信号を
x(t)、y(t)として、数式5、数式6として表される。
るスペクトル解析法(第一の方法)について以下に説明
する。新たに考案されたARMAMAモデルは、建物上
で計測された常時微動記録の中で、2つの時系列信号を
x(t)、y(t)として、数式5、数式6として表される。
【数5】
【数6】
ここで、e(t)、ex(t)およびey(t)は互いに無相関な定常
ホワイトノイズ、Ax(z-1)、Ay(z-1)、Cx(z-1)およびC
y(z-1)はAR(Autoregressive)演算子、Bx(z-1)、B y(z
-1)、Dx(z-1)およびDy(z-1)はMA(Moving-Average)演
算子、z-1は遅延演算子である。AR演算子とMA演算
子はz-1に関する多項式であり、例えばAx(z-1)、A
y(z-1)、Cx(z-1)およびCy(z-1)については数式7、数式
8で表される。
ホワイトノイズ、Ax(z-1)、Ay(z-1)、Cx(z-1)およびC
y(z-1)はAR(Autoregressive)演算子、Bx(z-1)、B y(z
-1)、Dx(z-1)およびDy(z-1)はMA(Moving-Average)演
算子、z-1は遅延演算子である。AR演算子とMA演算
子はz-1に関する多項式であり、例えばAx(z-1)、A
y(z-1)、Cx(z-1)およびCy(z-1)については数式7、数式
8で表される。
【数7】
【数8】
ここで、ax(j)、ay(j)、cx(j)およびcy(j)はAR係数、
nおよびmはAR次数である。ax(j)、ay(j)およびc
x(j)は、次式の拡張Yule-Walker方程式を満たす。
nおよびmはAR次数である。ax(j)、ay(j)およびc
x(j)は、次式の拡張Yule-Walker方程式を満たす。
【数9】
【数10】
【数11】
ここで、Rxy(τ)はx(t)とy(t)の相互相関関数、Rxx(τ)
はx(t)の自己相関関数であり、Rxy(τ)とRxx(τ)の推定
値が与えられれば、数式9、数式10および数式11よ
りax(j)、ay(j)およびcx(j)を決定できる。
はx(t)の自己相関関数であり、Rxy(τ)とRxx(τ)の推定
値が与えられれば、数式9、数式10および数式11よ
りax(j)、ay(j)およびcx(j)を決定できる。
【0022】数式5と数式6で示されるx(t)とy(t)に関
するクロススペクトルSxy(z-1)は、次の数式12で表さ
れる。
するクロススペクトルSxy(z-1)は、次の数式12で表さ
れる。
【数12】
一方で、x(t)のみに関するパワースペクトルSxx(z-1)
は、次の数式13で表される。
は、次の数式13で表される。
【数13】
数式12の右辺ならびに数式13の右辺第1項は、時系
列信号x(t)とy(t)に共通する振動成分を示し、数式13
の右辺第2項は時系列信号x(t)にのみ含まれる局所的な
振動成分を示す。したがって、数式12の右辺ならびに
数式13の右辺第1項を用いることにより、局所的な振
動成分を除去して建物全体に共通する振動成分のみを抽
出できる。
列信号x(t)とy(t)に共通する振動成分を示し、数式13
の右辺第2項は時系列信号x(t)にのみ含まれる局所的な
振動成分を示す。したがって、数式12の右辺ならびに
数式13の右辺第1項を用いることにより、局所的な振
動成分を除去して建物全体に共通する振動成分のみを抽
出できる。
【0023】数式12の右辺ならびに式13の右辺第1
項の分母に着目してAx(z)=0、Ay(z- 1)=0を満たす解をそ
れぞれz=-zxj、z=zyj(j=1〜n)とすると、数式12と数
式13は次式で表示できる。
項の分母に着目してAx(z)=0、Ay(z- 1)=0を満たす解をそ
れぞれz=-zxj、z=zyj(j=1〜n)とすると、数式12と数
式13は次式で表示できる。
【数14】
【数15】
ここで、zxjおよびzyjはSxx(z-1)の極と呼ばれる複素数
であり、それらに対応するβxyjおよびγxyj、βxxjお
よびγxxjは留数である。標準z変換に基づき、数式14
においてz=exp(iωΔ) (i;虚数単位、Δ;時間刻み)と
すれば、円振動数ωの関数としてクロススペクトルが得
られる。
であり、それらに対応するβxyjおよびγxyj、βxxjお
よびγxxjは留数である。標準z変換に基づき、数式14
においてz=exp(iωΔ) (i;虚数単位、Δ;時間刻み)と
すれば、円振動数ωの関数としてクロススペクトルが得
られる。
【0024】3.振動特性同定法の説明
上記のARMAMAモデルによるスペクトル解析法を利
用した振動特性の同定法(第二の方法)について以下に
説明する。
用した振動特性の同定法(第二の方法)について以下に
説明する。
【0025】建物上の複数の観測時系列からその振動モ
ードを同定する場合には、まず、数式14においてx(t)
を基準信号としてひとつの観測時系列に固定し、y(t)を
参照信号として複数個の観測時系列を順に選択すること
により複数個のクロススペクトルを推定する。数式14
において、( )内の第1項は参照信号y(t)を原因、基準
信号x(t)を結果とする因果律を満たすものであり、第2
項は基準信号x(t)を原因、参照信号y(t)を結果とする因
果律を満たすものである。したがって、基準信号x(t)を
固定して複数のクロススペクトルを算定している場合に
は、数式14の( )内の第2項を用いて基礎部分を含む
建物の振動特性を計算できる。すなわち、基礎部分を含
む建物のj次固有振動数fjとj次固有モード(j次固
有ベクトル)φjは次式により計算できる。
ードを同定する場合には、まず、数式14においてx(t)
を基準信号としてひとつの観測時系列に固定し、y(t)を
参照信号として複数個の観測時系列を順に選択すること
により複数個のクロススペクトルを推定する。数式14
において、( )内の第1項は参照信号y(t)を原因、基準
信号x(t)を結果とする因果律を満たすものであり、第2
項は基準信号x(t)を原因、参照信号y(t)を結果とする因
果律を満たすものである。したがって、基準信号x(t)を
固定して複数のクロススペクトルを算定している場合に
は、数式14の( )内の第2項を用いて基礎部分を含む
建物の振動特性を計算できる。すなわち、基礎部分を含
む建物のj次固有振動数fjとj次固有モード(j次固
有ベクトル)φjは次式により計算できる。
【数16】
【数17】
また、πは円周率、γxkjは参照信号を計測点kとした
ときのクロススペクトルによるγxyjの値であり、Tは
転置記号を示す。j次固有振動数fjとj次固有モード
φjとを示す数式16および数式17は、基準信号x(t)
を原因、参照信号y(t)を結果とする因果律から導かれて
いるため、建物に作用する外力とは無関係に成り立つ。
よって、建物の常時微動記録のように複数の外力により
建物の振動が励起されている場合であっても、固有振動
数や固有モード等の振動特性を精度良く計算できる。
ときのクロススペクトルによるγxyjの値であり、Tは
転置記号を示す。j次固有振動数fjとj次固有モード
φjとを示す数式16および数式17は、基準信号x(t)
を原因、参照信号y(t)を結果とする因果律から導かれて
いるため、建物に作用する外力とは無関係に成り立つ。
よって、建物の常時微動記録のように複数の外力により
建物の振動が励起されている場合であっても、固有振動
数や固有モード等の振動特性を精度良く計算できる。
【0026】4.損傷有無の判定
上記のARMAMAモデルによるスペクトル解析法(第
一の方法)ならびにこれを利用した振動特性の同定法
(第二の方法)より得られる評価時における建物の振動
特性を、予め同様の方法により推定された健全時におけ
る振動特性あるいは設計図面により計算された振動特性
と比較することにより、建物の健全性の良否の判定を実
施する。一般に建物の健全性が失われるとその固有振動
数は低下する性質があり、この性質を利用することによ
り建物の健全性の良否が判定できる。図2は、建物の健
全性の良否を固有振動数を評価指標として実施した例を
模式的に示す。まず、建物の竣工直後の常時微動記録か
ら上記第一の方法と第二の方法を用いて固有振動数を設
計図面による値と比較することにより、新設建物の健全
性を評価できる。また、地震等の過大な外力を受けた直
後に本発明にかかる診断法を実施し、その結果として固
有振動数が大きく低下していれば、建物の健全性が失わ
れていると診断する。その後、健全性が失われている部
分を補強し、再び本発明の診断法を実施した結果、その
固有振動数が健全時の値よりも低ければ建物の健全性は
未だ不足すると判定され、さらに補強を必要とすると判
断できる。さらに、本発明の診断法を定期的に実施し、
固有振動数の計算値が徐々に低下し、ある閾値を超えた
場合には、経年劣化により建物の健全性が失われたと判
定できる。
一の方法)ならびにこれを利用した振動特性の同定法
(第二の方法)より得られる評価時における建物の振動
特性を、予め同様の方法により推定された健全時におけ
る振動特性あるいは設計図面により計算された振動特性
と比較することにより、建物の健全性の良否の判定を実
施する。一般に建物の健全性が失われるとその固有振動
数は低下する性質があり、この性質を利用することによ
り建物の健全性の良否が判定できる。図2は、建物の健
全性の良否を固有振動数を評価指標として実施した例を
模式的に示す。まず、建物の竣工直後の常時微動記録か
ら上記第一の方法と第二の方法を用いて固有振動数を設
計図面による値と比較することにより、新設建物の健全
性を評価できる。また、地震等の過大な外力を受けた直
後に本発明にかかる診断法を実施し、その結果として固
有振動数が大きく低下していれば、建物の健全性が失わ
れていると診断する。その後、健全性が失われている部
分を補強し、再び本発明の診断法を実施した結果、その
固有振動数が健全時の値よりも低ければ建物の健全性は
未だ不足すると判定され、さらに補強を必要とすると判
断できる。さらに、本発明の診断法を定期的に実施し、
固有振動数の計算値が徐々に低下し、ある閾値を超えた
場合には、経年劣化により建物の健全性が失われたと判
定できる。
【0027】5.剛性分布推定法の説明
続いて、上記の第一の方法ならびに第二の方法から計算
された振動特性から建物(および基礎部分)の剛性分布
を計算し同定する方法(第三の方法)について以下に説
明する。
された振動特性から建物(および基礎部分)の剛性分布
を計算し同定する方法(第三の方法)について以下に説
明する。
【0028】基礎部分の水平変形と回転変形を考慮した
建物の振動モデルは、図3に示すようにモデル化でき
る。図3中の符号w1〜w3が示す矢印は各質量系m1
〜m3に対する風、符号gmが示す矢印は地面の動きを
表している。この振動モデルの質量行列をM、減衰行列
をC、剛性行列をKすると、j次固有方程式は次式で表
される。
建物の振動モデルは、図3に示すようにモデル化でき
る。図3中の符号w1〜w3が示す矢印は各質量系m1
〜m3に対する風、符号gmが示す矢印は地面の動きを
表している。この振動モデルの質量行列をM、減衰行列
をC、剛性行列をKすると、j次固有方程式は次式で表
される。
【数18】
ここで、λjはj次固有値、φjはj次固有モード(j次
固有ベクトル)である。数式18の減衰行列Cと剛性行
列Kについて、j次複素柔性行列Sjを次式で定義す
る。
固有ベクトル)である。数式18の減衰行列Cと剛性行
列Kについて、j次複素柔性行列Sjを次式で定義す
る。
【数19】
建物l層、基礎部分の水平ばねおよび回転ばねについ
て、剛性をkl、kHおよびkR、減衰の係数をcl、cHおよび
cR、j次複素柔性要素をsl,j、sH,jおよびsR,jとする
と、数式19より次の関係式が得られる。
て、剛性をkl、kHおよびkR、減衰の係数をcl、cHおよび
cR、j次複素柔性要素をsl,j、sH,jおよびsR,jとする
と、数式19より次の関係式が得られる。
【数20】
【数21】
【数22】
数式19を用いて、数式18のj次固有方程式は次式で
表される。
表される。
【数23】
図3の振動モデルに関しては、数式23のベクトル表示
式を要素ごとに展開し、それらを整理することにより、
次の関係式が得られる。
式を要素ごとに展開し、それらを整理することにより、
次の関係式が得られる。
【数24】
【数25】
【数26】
ここで、IRは基礎部分の回転慣性質量、mHは基礎部分の
質量、mkは建物k層の質量、Hkは建物k層の高さであ
り、これらの値は設計図面等から見積もることができ
る。また、φk,j、φR,jおよびφH,jはj次固有モード
(j次固有ベクトル)φjにおける建物k層の水平成
分、基礎部分の回転成分および水平成分にそれぞれ対応
する値であり、上記の第一の方法ならびに第二の方法に
より計算できる。したがって、数式24〜数式26を用
いることにより、図3の振動モデル各部位のj次複素柔
性要素の値を計算できる。
質量、mkは建物k層の質量、Hkは建物k層の高さであ
り、これらの値は設計図面等から見積もることができ
る。また、φk,j、φR,jおよびφH,jはj次固有モード
(j次固有ベクトル)φjにおける建物k層の水平成
分、基礎部分の回転成分および水平成分にそれぞれ対応
する値であり、上記の第一の方法ならびに第二の方法に
より計算できる。したがって、数式24〜数式26を用
いることにより、図3の振動モデル各部位のj次複素柔
性要素の値を計算できる。
【0029】一方、数式20〜数式22より、減衰の係
数と剛性はj次複素柔性要素とj次固有値λjを用い
て、次式で与えられる。
数と剛性はj次複素柔性要素とj次固有値λjを用い
て、次式で与えられる。
【数27】
【数28】
よって、数式24〜数式26による複素柔性要素の計算
値と上記の第一の方法および第二の方法によるj次固有
値の計算値を数式28に適用して、図3の振動モデルの
剛性分布を計算できる。
値と上記の第一の方法および第二の方法によるj次固有
値の計算値を数式28に適用して、図3の振動モデルの
剛性分布を計算できる。
【0030】6.損傷の位置と程度の判定
第一の方法および第二の方法による振動特性の計算結果
から第三の方法を用いて、評価時における建物の剛性分
布を計算する。剛性分布の計算結果を健全時と評価時に
ついて比較することにより、健全性に劣る位置とその程
度が判定される。また、新設もしくは構造補強された建
物の健全性を判定する場合には、健全時の振動特性およ
び健全時の剛性分布には、設計図面から計算されたもの
をそれぞれ用いる。
から第三の方法を用いて、評価時における建物の剛性分
布を計算する。剛性分布の計算結果を健全時と評価時に
ついて比較することにより、健全性に劣る位置とその程
度が判定される。また、新設もしくは構造補強された建
物の健全性を判定する場合には、健全時の振動特性およ
び健全時の剛性分布には、設計図面から計算されたもの
をそれぞれ用いる。
【0031】例えば、健全時と被災後とに建物の剛性分
布を調べて健全性を診断する場合において(図4参
照)、建物のある部分の健全性が失われるとその部分の
剛性が低下することが知られており、この性質を使用し
て健全性を診断することができる。図4において健全時
と被災後評価時の剛性分布を比較すると、1階の剛性の
みが大きく低下しており、1階部分の健全性が大きく低
下しているがその他の部分については健全性が保たれて
いると判断できる。
布を調べて健全性を診断する場合において(図4参
照)、建物のある部分の健全性が失われるとその部分の
剛性が低下することが知られており、この性質を使用し
て健全性を診断することができる。図4において健全時
と被災後評価時の剛性分布を比較すると、1階の剛性の
みが大きく低下しており、1階部分の健全性が大きく低
下しているがその他の部分については健全性が保たれて
いると判断できる。
【0032】なお、上述の実施形態は本発明の好適な実
施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発
明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能で
ある。
施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発
明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能で
ある。
【0033】
【実施例】構造物の常時微動記録に対して、前述のスペ
クトル解析法ならびに振動特性の同定法を実施した一例
を示す。対象構造物は発電所内の大型貯炭サイロであ
り、鉄筋コンクリート製の円筒シェル構造(内径46
m、高さ80m)である。計測時には、内部の石炭はほ
ぼ満載の状態(貯炭量:約7万トン)であった。計測点
はサイロの基礎板上と屋上に筒体円周に沿って30度ピ
ッチで設け、南側半面もしくは北側半面に分けて三成分
加速度計を設置し、それぞれ60分間の多点同時観測に
より応答データを取得した。その際、サイロの半面ずつ
の固有モードを全体のものに換算するため、サイロの東
側および西側の2点の計測点については、南側半面およ
び北側半面の両計測時でともに計測を実施した。
クトル解析法ならびに振動特性の同定法を実施した一例
を示す。対象構造物は発電所内の大型貯炭サイロであ
り、鉄筋コンクリート製の円筒シェル構造(内径46
m、高さ80m)である。計測時には、内部の石炭はほ
ぼ満載の状態(貯炭量:約7万トン)であった。計測点
はサイロの基礎板上と屋上に筒体円周に沿って30度ピ
ッチで設け、南側半面もしくは北側半面に分けて三成分
加速度計を設置し、それぞれ60分間の多点同時観測に
より応答データを取得した。その際、サイロの半面ずつ
の固有モードを全体のものに換算するため、サイロの東
側および西側の2点の計測点については、南側半面およ
び北側半面の両計測時でともに計測を実施した。
【0034】解析にあたっては、対象とする振動数範囲
を1.0〜6.0Hzとし、低振動数の同定精度を向上させる
ため加速度記録を速度波形に変換した後、200Hzの計
測データを12.5Hzで再サンプリングしたものを10分
間の小サンプルに分割して同定用のサンプルデータとし
た。クロススペクトルを算定する際には、屋上東側に設
置した加速度計の円筒法線方向(東西方向)もしくは接
線方向(南北方向)の水平成分を基準波形とした。AR
MAMAモデルの次数は、スペクトルの形状をFFT
(高速フーリエ変換)による推定値と比較することによ
り、n=m=20に決定した。また、AR係数は特異値
分解法を用いて推定し、最大特異値との比で1/100以上
の特異値のみを用いた。特に、AR係数の算定にあたっ
ては、基準波形と屋上の全ての計測点の水平二成分の間
の相互相関関数の推定値を用いた。
を1.0〜6.0Hzとし、低振動数の同定精度を向上させる
ため加速度記録を速度波形に変換した後、200Hzの計
測データを12.5Hzで再サンプリングしたものを10分
間の小サンプルに分割して同定用のサンプルデータとし
た。クロススペクトルを算定する際には、屋上東側に設
置した加速度計の円筒法線方向(東西方向)もしくは接
線方向(南北方向)の水平成分を基準波形とした。AR
MAMAモデルの次数は、スペクトルの形状をFFT
(高速フーリエ変換)による推定値と比較することによ
り、n=m=20に決定した。また、AR係数は特異値
分解法を用いて推定し、最大特異値との比で1/100以上
の特異値のみを用いた。特に、AR係数の算定にあたっ
ては、基準波形と屋上の全ての計測点の水平二成分の間
の相互相関関数の推定値を用いた。
【0035】図5は、基準点である東側計測点と参照点
のひとつである北側計測点の10分間の応答データを用
いて、南北成分および東西成分のクロススペクトルを算
定した結果であり、ARMAMAモデルによる推定結果
を実線で、ARMAモデルによる推定結果を破線で、F
FTによる結果を点でそれぞれ示した。また、図中の▼
印および番号は同定された振動特性に対応する共振峰を
示し、番号は固有振動数の小さいものから順に付した次
数を表す。なお、ARMAモデルによる推定は前述のA
RMAMAモデルによる推定と同じ解析条件で実施し、
FFTによる推定は、10分間の応答データを時間長2
0.48秒間、29セットのサンプルに分割して、それらの
アンサンブル平均を推定値とした。
のひとつである北側計測点の10分間の応答データを用
いて、南北成分および東西成分のクロススペクトルを算
定した結果であり、ARMAMAモデルによる推定結果
を実線で、ARMAモデルによる推定結果を破線で、F
FTによる結果を点でそれぞれ示した。また、図中の▼
印および番号は同定された振動特性に対応する共振峰を
示し、番号は固有振動数の小さいものから順に付した次
数を表す。なお、ARMAモデルによる推定は前述のA
RMAMAモデルによる推定と同じ解析条件で実施し、
FFTによる推定は、10分間の応答データを時間長2
0.48秒間、29セットのサンプルに分割して、それらの
アンサンブル平均を推定値とした。
【0036】同図によれば、ARMAMAモデルによる
クロススペクトルの推定結果はおおむねFFTによるも
のと一致した。一方で、ARMAモデルによる推定で
は、南北成分に関する図5(a)によれば、2.6Hz、
3.4Hzおよび4.0Hz付近の3つの共振峰はARMAM
AモデルならびにFFTによる推定結果と一致するもの
の、3.6Hz付近にも共振峰が現われている。この振動
成分は、基準波形に特有な成分を検出しているものと思
われる。
クロススペクトルの推定結果はおおむねFFTによるも
のと一致した。一方で、ARMAモデルによる推定で
は、南北成分に関する図5(a)によれば、2.6Hz、
3.4Hzおよび4.0Hz付近の3つの共振峰はARMAM
AモデルならびにFFTによる推定結果と一致するもの
の、3.6Hz付近にも共振峰が現われている。この振動
成分は、基準波形に特有な成分を検出しているものと思
われる。
【0037】次に、固有モードの同定結果について、屋
上の各計測点における水平面内の軌跡を表示したものを
図6に示す。図中における(fj,hj)はj次固有振動
数fj、減衰比hjの同定値を示している。ここで、これ
ら固有モードの中で、1次、3次および6次はクロスス
ペクトルの基準波形を東側計測点の南北成分としたとき
に、2次、4次および5次は東西成分としたときに、そ
れぞれ同定された結果である。1次および2次の振動特
性はそれぞれ南北方向および東西方向の並進振動モード
である。3次および4次はともに周方向次数2のオーバ
ル振動モードであるが、互いの振動軸は周方向に45度
傾いている。5次は周方向次数3のオーバル振動モード
となっている。6次には再び南北方向の並進振動モード
が表れているが、これは1次とは内部の石炭の挙動が異
なるものと推測される。このように、本実施形態で説明
した同定手法を貯炭サイロの常時微動記録に適用するこ
とにより、その振動特性を6次まで同定することができ
た。
上の各計測点における水平面内の軌跡を表示したものを
図6に示す。図中における(fj,hj)はj次固有振動
数fj、減衰比hjの同定値を示している。ここで、これ
ら固有モードの中で、1次、3次および6次はクロスス
ペクトルの基準波形を東側計測点の南北成分としたとき
に、2次、4次および5次は東西成分としたときに、そ
れぞれ同定された結果である。1次および2次の振動特
性はそれぞれ南北方向および東西方向の並進振動モード
である。3次および4次はともに周方向次数2のオーバ
ル振動モードであるが、互いの振動軸は周方向に45度
傾いている。5次は周方向次数3のオーバル振動モード
となっている。6次には再び南北方向の並進振動モード
が表れているが、これは1次とは内部の石炭の挙動が異
なるものと推測される。このように、本実施形態で説明
した同定手法を貯炭サイロの常時微動記録に適用するこ
とにより、その振動特性を6次まで同定することができ
た。
【0038】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、請求項
1記載の発明によると、観測波形に特有の振動成分が含
まれる場合にも、これらを除去して複数の観測波形に共
通する成分を抽出することができる。これによれば、常
時微動記録のように複数個の外力が建物に作用した場合
の振動計測記録であっても建物全体の振動特性ならびに
剛性分布を精度良く推定することができる。また、目視
で確認できる位置のみならず、例えば建物の基礎部分な
どのように目視では確認できない位置であってもその健
全性を精度よく評価することができる。したがって、基
礎部分を含めた建物全体の健全性を高精度で診断し信頼
性の高い評価をすることが可能である。
1記載の発明によると、観測波形に特有の振動成分が含
まれる場合にも、これらを除去して複数の観測波形に共
通する成分を抽出することができる。これによれば、常
時微動記録のように複数個の外力が建物に作用した場合
の振動計測記録であっても建物全体の振動特性ならびに
剛性分布を精度良く推定することができる。また、目視
で確認できる位置のみならず、例えば建物の基礎部分な
どのように目視では確認できない位置であってもその健
全性を精度よく評価することができる。したがって、基
礎部分を含めた建物全体の健全性を高精度で診断し信頼
性の高い評価をすることが可能である。
【0039】また、請求項2記載の発明によると、請求
項1記載の発明に加え、建物の健全性の良否の判定の結
果、健全性が満足されない場合には健全性が失われた部
位の判定ならびに非健全性の程度の判定をそれぞれ実施
し、建物内部および基礎部分に発生した損傷等を評価す
ることができる。
項1記載の発明に加え、建物の健全性の良否の判定の結
果、健全性が満足されない場合には健全性が失われた部
位の判定ならびに非健全性の程度の判定をそれぞれ実施
し、建物内部および基礎部分に発生した損傷等を評価す
ることができる。
【図1】本発明にかかる建物の健全性診断法の一実施形
態を示す全体のフローである。
態を示す全体のフローである。
【図2】建物の健全性の良否を固有振動数を評価指標と
して実施した例を模式的に示すグラフである。
して実施した例を模式的に示すグラフである。
【図3】基礎部分の水平変形と回転変形を考慮した建物
の振動モデルを示す図である。
の振動モデルを示す図である。
【図4】建物の振動特性の同定結果から建物および基礎
部分の剛性を計算する方法により建物の診断を実施した
例を模式的に示す図である。
部分の剛性を計算する方法により建物の診断を実施した
例を模式的に示す図である。
【図5】大型貯炭サイロにおける屋上応答のクロススペ
クトルを示すグラフであり、(a)は南北成分、(b)
は東西成分を示す。
クトルを示すグラフであり、(a)は南北成分、(b)
は東西成分を示す。
【図6】大型貯炭サイロにおける屋上応答の1次〜6次
の固有モードを(a)〜(f)に対応させて示した図で
ある。
の固有モードを(a)〜(f)に対応させて示した図で
ある。
【図7】診断対象となる建物のモデル図である。
【図8】従来の解析方法で仮定されてきた建物の揺れ方
を示すモデル図である。
を示すモデル図である。
【図9】実際の建物の揺れ方を示すモデル図である。
Claims (2)
- 【請求項1】 風力や交通振動等により励起される建物
の常時微動を計測し、その計測記録に含まれる振動成分
から対象建物の振動特性を同定し、前記建物内ならびに
前記建物の基礎部分に関する構造の健全性を評価する常
時微動計測に基づく建物の健全性診断法において、AR
MAモデルに移動平均項(MA項)が付加されたARM
AMAモデルを用い、振動センサにより計測された前記
建物の常時微動記録の中の任意のひとつの基準信号と残
りの参照信号とのクロススペクトルを求め、これら基準
信号および参照信号の相関成分と無相関部分とを分離し
て前記建物全体の振動成分のみを抽出して前記建物の振
動特性を同定することを特徴とする常時微動計測に基づ
く建物の健全性診断法。 - 【請求項2】 風力や交通振動等により励起される建物
の常時微動を計測し、その計測記録に含まれる振動成分
から対象建物の振動特性を同定し、前記建物内ならびに
前記建物の基礎部分に関する構造の健全性を評価する常
時微動計測に基づく建物の健全性診断法において、AR
MAモデルに移動平均項(MA項)が付加されたARM
AMAモデルを用い、振動センサにより計測された前記
建物の常時微動記録の中の任意のひとつの基準信号と残
りの参照信号とのクロススペクトルを求め、これら基準
信号および参照信号の相関成分と無相関部分とを分離し
て前記建物全体の振動成分のみを抽出する第一の方法
と、この第一の方法による結果から前記建物の振動特性
を同定する第二の方法と、前記建物の振動特性の同定結
果から前記建物および基礎部分の剛性を計算する第三の
方法とから成り、前記第一の方法から第三の方法までに
より得られる評価時における前記建物の振動特性と剛性
分布を、予め同様の方法により推定された健全時におけ
る振動特性あるいは設計図面により計算された振動特性
と比較することにより健全性を診断することを特徴とす
る常時微動計測に基づく建物の健全性診断法。
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JP7510831B2 (ja) | 2020-09-24 | 2024-07-04 | 株式会社竹中工務店 | 損傷推定装置及び損傷推定プログラム |
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2002
- 2002-04-26 JP JP2002127413A patent/JP3925910B2/ja not_active Expired - Fee Related
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