JP2002257671A - 微動観測による対象物の診断方法及び診断システム - Google Patents

微動観測による対象物の診断方法及び診断システム

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JP2002257671A JP2001393419A JP2001393419A JP2002257671A JP 2002257671 A JP2002257671 A JP 2002257671A JP 2001393419 A JP2001393419 A JP 2001393419A JP 2001393419 A JP2001393419 A JP 2001393419A JP 2002257671 A JP2002257671 A JP 2002257671A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 自然物或いは人工物である対象物の安全性や
健全性の診断を、簡易・迅速かつ安価に行う診断方法及
び診断システムを提供すること。 【解決手段】 対象物91の微動観測を行い、観測時刻
歴から注目時刻歴の算出を行う。さらにエネルギ伝達率
(RMS比)計算を行う(ステップ1007からステッ
プ1009)。突発的外力に対する安全性診断は、対象
物91の基準点変位予測を行い、前述したエネルギ伝達
率(RMS比)を用いて注目物理量の予測最大値を算出
し、許容最大変位と比較して安全性の診断を行う(ステ
ップ1010、ステップ1012、ステップ101
3)。健全性診断は、対象物91に期待されるエネルギ
伝達率(RMS比)と、前述した微動観測から算出した
エネルギ伝達率(RMS比)を比較することで、健全性
の診断を行う(ステップ1011、ステップ101
4)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自然物或いは人工
物である対象物の安全性や健全性を評価する、対象物の
診断方法及び診断システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】対象物(構造物、構築物などの人工物、
地盤、崖、岩石、樹木などの自然物)の安全性や健全性
を評価診断することは、防災、構造物の維持管理、構造
物の新改装時の中間・完了検査、地震等の突発的な外力
への事前・事後の対策等のために必要とされている。例
えば、構造物が地震動の作用によって破壊する危険性の
評価は、新築、改築後の品質検査、既存の構造物の維持
管理、修繕計画の立案、さらに、被災した構造物の使用
の可否、補強または取り壊しの必要性を判断する上で重
要である。前記対象物は、工場で大量に生産される製品
とは異なり、品質の評価、管理が困難である。
【0003】特に、突発的外力(地震、台風、爆発等)
の作用による破壊に対する危険性を評価することは、外
力の性質や大きさに不確定性が伴うこと、対象物に対し
て地震の外力を実際に作用させる試験が出来ないこと、
経年や使用条件により品質が変化することなどの理由で
極めて困難である。
【0004】従来、対象物が人工物である場合は、対象
物の安全性、健全性の評価や、対象物が地震動の作用に
よって破壊する危険性の評価には、(1)建設途中また
は完成直後に、対象物が設計図面に規定された通りに施
工されていることを目視によって確認する方法、或いは
対象物を打撃して打撃音等を判定する方法、(2)対象
物の設計図面または、現況調査によって作成した構造図
面、コア抜き検査によって得たコンクリート強度、対象
物の経過年数等の情報を総合し、構造計算した結果を集
計し、構造耐震指標(Is)、並びに累積強度指標CT、形
状指標SDを算出し、これらと過去の地震災害事例を分析
した結果の基準値の大小関係を比較することによって診
断する方法が日本建築防災協会によって基準化され広く
用いられている。
【0005】また、地震で対象物が被災した場合には、
(3)目視調査によって構造部材の損傷度、対象物の残
留変形等をチェックシートに記入し、これから計算した
スコアによって対象物の安全性を診断する緊急被災度判
定と呼ばれる方法も広く用いられている。
【0006】また、(4)対象物に起振機を搭載し弾性
波等を強制的に生じさせて評価する方法、(5)対象物
から自然に放出される赤外線などを利用して評価する方
法、(6)X線や電磁波等を用いて評価する方法、
(7)対象物に受振器を設置し微動観測を用いて評価す
る方法等が用いられている。
【0007】微動観測を用いた評価方法としては、
(8)受振器で測定された対象物の微動データのフーリ
エ振幅スペクトルの最大値(卓越周期)を、対象物(地
盤や構造物)の固有周期と考えてこれを評価指標とする
方法、(9)微動速度時刻歴の上下動部分と水平動部分
とのフーリエスペクトルの比、及び対象物の寸法を用い
て算出した結果を評価指標とする方法等がある。また、
(10)前記(9)の方法で算出したスペクトル比もし
くは、2つの観測時刻歴成分のフーリエスペクトル比を
伝達関数であると考えて、前記対象物の複数の観測点の
地震時の振動の最大値を予測し、これらの予測値に対象
物の寸法、形状等の幾何学条件を用いてさらに演算を加
えて、対象物の診断に必要な層間変形角の最大値等の数
値を計算する方法がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記
(1)の方法は、設計基準が地震の作用に対して十分な
強度を対象物に与えていることを前提としているが、日
本では、耐震設計基準の改定以前に建設された1000
万棟以上の建物が、現行基準では耐震性が不十分である
と判定される。また、目視、聴覚等の人間の五感を利用
するため、主観的な判断に依存する課題がある。
【0009】上記(2)の方法は、情報源とした図面や
計測値が実際の対象物の現状を十分に反映していない場
合、得られた指標が実際の安全性を表さないこと、時間
と費用が掛かること、経年劣化指標値を決定することに
主観が入る余地があること、対象物の耐震性の微妙な経
時変化等をモニタするには向かないことなどの課題があ
る。
【0010】上記(3)の方法は、目視検査が中心であ
るために主観的な判断に依存する可能性がある。また、
本来対象物の耐震性は対象とする地震動の大きさによっ
て異なるが、上記(2)と(3)の方法は、これを明確
に反映する方法ではない。
【0011】上記(4)の方法は、費用と時間がかかる
上に、起振機による強制振動のエネルギを対象物の応答
特性を確定する程十分に大きくとることが技術的、経済
的に困難な場合が多いなどの理由で実施例は橋梁などの
特殊な対象物に限られている。また、弾性波を強制的に
起こさせることで対象物への影響度が皆無とはいえな
い。また、対象物の特定な点に対する強制加振の物理的
効果は、実際の地震力が対象物の境界面から入力した場
合とは異なる。
【0012】上記(5)と(6)の方法は、対象物の表
面等の一部からの情報であり、対象物の健全性等の全般
的な診断に用いる程の情報量を得るには、多くの費用と
時間を要することが課題である。
【0013】上記(7)の微動観測を用いる方法のうち
(8)の方法では、卓越周期と対象物の安全性との相関
は、理論的にも統計的にも安全性の評価に用いることが
出来るほど高くはなく、精度が低いことが課題である。
(8)、(9)の方法とも、フーリエスペクトルは、測
定パラメータに依存し、凹凸が多く、この最大値の判定
は主観に頼らざるを得ない場合があり、客観的な指標と
は言いがたいこと、判定を自動化することが困難である
ことが課題である。上記(10)の方法は、時刻歴に対
して最大値等の統計的な指標を求める演算と、時刻歴と
対象物の寸法等の幾何学条件から、層間変形角等の注目
時刻歴を算出する演算は、極めて特殊な場合を除き、一
般には順序を入れ替えることによって結果が異なり、物
理的な意味がなくなるので、診断に用いるには適さない
という課題がある。
【0014】従来、微動観測は、安全性や健全性の診断
や評価に用いるというよりは、むしろ地盤や対象物の固
有振動周期を計測によって求める目的で実施されてい
る。そのため、測定器は、観測データの時刻歴やスペク
トルを表示する機能は備えているが、微動観測データを
詳細に分析するためには、データを持ち帰って計算、図
化を行う必要があり、時間と費用を要することが課題で
あった。
【0015】また、ビルのような対象物を診断対象とす
る場合、現行の耐震設計計算においても、過去の被災事
例の分析においても回転の影響を考慮することが重要で
あると認識され実行されているが、上記いずれの従来の
方法も対象物の回転に関しては直接の計算、計測を行っ
ていない。
【0016】本発明は、このような問題に鑑みてなわれ
たもので、その目的とするところは、自然物或いは人工
物である対象物の安全性や健全性の診断を、簡易・迅速
かつ安価に行う診断方法及び診断システムを提供するこ
とである。
【0017】
【課題を解決するための手段】前述した目的を達成する
ための第1の発明は、対象物に微動が加わった場合の、
前記対象物の伝達特性を表す指標として、エネルギ伝達
率(RMS比)というスカラ量を算出すること、観測時
刻歴から注目時刻歴を算出すること、前記エネルギ伝達
率(RMS比)を観測時刻歴もしくは注目時刻歴の方向
成分間の二乗平均値(RMS)の比として算出すること
を特徴とする対象物の診断方法である。第1の発明で
は、対象物に微動が加わった場合のエネルギ伝達率(R
MS比)を算出する。また、微動の観測時刻歴から注目
時刻歴を算出する。また、エネルギ伝達率(RMS比)
を観測時刻歴もしくは注目時刻歴の方向成分間の二乗平
均値(RMS)の比として算出する。
【0018】第2の発明は、対象物の微動を観測し、微
動時刻歴もしくは注目時刻歴のパワースペクトルが、前
記対象物に突発性外力が作用し、前記対象物が弾性的に
振舞うと考えた場合に前記対象物に生ずる時刻歴のパワ
ースペクトルとほぼ相似になるように、観測時間帯を選
択することを特徴とする対象物の診断方法である。第2
の発明では、対象物の微動時刻歴もしくは注目時刻歴の
パワースペクトルが、対象物に突発性外力が作用し対象
物が弾性的に振舞うと考えた場合に対象物に生ずる時刻
歴のパワースペクトルとほぼ相似になるように、観測時
間帯を選択する。
【0019】第3の発明は、対象物に微動が加わった場
合の、前記対象物の伝達特性を表す指標として、エネル
ギ伝達率(RMS比)というスカラ量を算出すること、
観測時刻歴から注目時刻歴を算出すること、前記エネル
ギ伝達率(RMS比)を観測時刻歴もしくは注目時刻歴
の方向成分間の二乗平均値(RMS)の比として算出す
ることを特徴とする対象物の診断システムである。第3
の発明では、第1の発明を実行する為の算出手段等を有
する。
【0020】第4の発明は、対象物の微動を観測し、微
動時刻歴もしくは注目時刻歴のパワースペクトルが、前
記対象物に突発性外力が作用し、前記対象物が弾性的に
振舞うと考えた場合に前記対象物に生ずる時刻歴のパワ
ースペクトルとほぼ相似になるように、観測時間帯を選
択することを特徴とする対象物の診断システムである。
第4の発明では、第2の発明を実行する為の算出手段等
を有する。
【0021】第5の発明は、対象物から観測される微動
観測値から注目物理量を算出する工程と、前記注目物理
量を用いてエネルギ伝達率(RMS比)を算出する工程
と、前記エネルギ伝達率(RMS比)と、前記対象物に
本来期待される期待エネルギ伝達率(RMS比)とを比
較する工程と、前記比較により前記対象物の状態を判定
する工程とを、具備することを特徴とする対象物の診断
方法である。第5の発明では、対象物に加わる微動の微
動観測値から注目物理量を算出し、さらに注目物理量か
らエネルギ伝達率(RMS比)を算出して、対象物に期
待されるエネルギ伝達率(RMS比)と比較することに
より、対象物の健全性を診断する。
【0022】第6の発明は、対象物から観測される微動
観測値から注目物理量を算出する工程と、前記注目物理
量を用いてエネルギ伝達率(RMS比)を算出する工程
と、前記対象物に突発的外力が加わると想定した時に前
記対象物の観測点又は平面の最大変位を予測する工程
と、前記エネルギ伝達率(RMS比)と前記最大変位と
から、前記注目物理量の予測最大値を算出する工程と
を、具備することを特徴とする対象物の診断方法であ
る。第6の発明では、対象物に加わる微動の微動観測値
から注目物理量を算出し、さらに注目物理量からエネル
ギ伝達率(RMS比)を算出する。また、対象物に突発
性外力が加わると想定した時の観測点又は平面の最大変
位を予測しエネルギ伝達率(RMS比)とから、注目物
理量の予測最大値を算出して、対象物の安全性を診断す
る指標とする。
【0023】第7の発明は、対象物の観測点又は平面に
設置する複数の受振器と、測定器とコンピュータとから
なり、前記複数の受振器は、前記対象物に加わる微動を
測定して前記測定器に送り、前記測定器は、前記微動観
測値を前記コンピュータに送り、前記コンピュータは、
前記微動観測値から注目物理量を算出する手段と、前記
注目物理量を用いてエネルギ伝達率(RMS比)を算出
する手段と、前記エネルギ伝達率(RMS比)と、前記
対象物に本来期待される期待エネルギ伝達率(RMS
比)とを比較する手段と、前記比較により前記対象物の
状態を判定する手段とを、具備することを特徴とする対
象物の診断システムである。第7の発明の診断システム
は、第5の発明の診断方法を実現するための診断システ
ムである。
【0024】第8の発明は、対象物の観測点又は平面に
設置する複数の受振器と、測定器とコンピュータとから
なり、前記複数の受振器は、前記対象物に加わる微動を
測定して前記測定器に送り、前記測定器は、前記微動観
測値を前記コンピュータに送り、前記コンピュータは、
前記微動観測値から注目物理量を算出する手段と、前記
注目物理量を用いてエネルギ伝達率(RMS比)を算出
する手段と、前記対象物に突発的外力が加わると想定し
た時に前記観測点又は平面の最大変位を予測する手段
と、前記エネルギ伝達率(RMS比)と前記最大変位と
から、前記注目物理量の予測最大値を算出する手段と
を、具備することを特徴とする対象物の診断システムで
ある。第8の発明の診断システムは、第6の発明の診断
方法を実現するための診断システムである。
【0025】第9の発明は、微動観測値から注目物理量
を算出する手段と、前記注目物理量を用いてエネルギ伝
達率(RMS比)を算出する手段と、前記エネルギ伝達
率(RMS比)と、前記対象物に本来期待される期待エ
ネルギ伝達率(RMS比)とを比較する手段と、前記比
較により前記対象物の状態を判定する手段とを、具備す
ることを特徴とするコンピュータである。第9の発明の
コンピュータは、第5の発明の診断方法を実現する。
【0026】第10の発明は、微動観測値から注目物理
量を算出する手段と、前記注目物理量を用いてエネルギ
伝達率(RMS比)を算出する手段と、前記対象物に突
発的外力が加わると想定した時に前記観測点又は平面の
最大変位を予測する手段と、前記エネルギ伝達率(RM
S比)と前記最大変位とから、前記注目物理量の予測最
大値を算出する手段とを、具備することを特徴とするコ
ンピュータである。第10の発明のコンピュータは、第
6の発明の診断方法を実現する。
【0027】第11の発明は、コンピュータを請求項2
0から請求項28に記載したコンピュータとして機能さ
せることを特徴とするプログラムである。第11の発明
のプログラムは、コンピュータを請求項20から請求項
28に記載したコンピュータとして機能させるものであ
り、このプログラムをネットワークを介して流通させる
こともできる。
【0028】第12の発明は、請求項29記載のプログ
ラムを記録した記録媒体である。第12の発明の記録媒
体は、請求項29記載のプログラムを記憶しており、こ
の記録媒体を流通させることもでき、またこのプログラ
ムをネットワークを介して流通させることもできる。
【0029】対象物とは、地盤、岩盤、崖、岩石、樹木
などの自然物、もしくは盛土、擁壁、ダム、護岸、橋
梁、桟橋、建物などの人工的に造られた構造物であり、
その安全性や健全性を診断する対象となるものをさす。
【0030】常時微動とは、対象物に常時生じている微
小な振動である。この振動エネルギは、対象物と外界と
の境界面から観測者の行為とは関係なく自然に入力され
る。空気と接している面からは風の影響により、水と接
している境界からは波浪、潮汐などの影響により、他の
対象物と接している境界からは他の対象物の作用によ
り、地盤と接している境界からは交通振動等の影響によ
り、振動エネルギが供給される。高層建物、搭、煙突な
どや、河川や海岸に位置する橋梁などでは、常時微動の
ほとんどのエネルギが風、水流や波浪などで供給されて
いる。従って、これらの対象物では常時微動によって地
震の影響を推定することは困難である。しかし、木造家
屋、中層の鉄筋コンクリート造ビルなど通常の対象物に
置いては、特に風雨が強い等の特殊な環境条件である場
合を除いて、常時微動のエネルギの大部分が地盤と対象
物の境界から入力していると考えてよいので、微動観測
によって得た情報から、地震動が作用した場合の対象物
の変位を計算によって求めることが出来る。また、高層
建築物等でも、地盤と対象物の境界から振動エネルギが
主に入力していると考えられる観測時間帯を選ぶことに
よって、地震動が作用した場合の変位を推定することが
できる。
【0031】観測点とは、対象物内部又は表面に観測者
が設定した点であり、この上に受振器を設置してその変
位時刻歴等を観測する位置を指す。観測時刻歴は、観測
点に設置した受振器で、対象物の常時微動を、変位、速
度、加速度等の時刻歴のアナログ振動として受振し、こ
れをAD変換してデジタル時刻歴として記録することに
より得られる時刻歴である。観測時間帯とは、一連の観
測時刻歴の観測された時間帯域(開始時刻、終了時刻、
継続時間)を言う。観測周波数帯域とは、受振器の特
性、信号のサンプル採取周波数等から決まる周波数帯域
であり、観測時刻歴が、実際の変位もしくは速度等であ
ると考えられる周波数帯域である。分析時間帯とは、観
測時間帯の部分集合であり、観測時刻歴を計算する時間
帯域である。分析周波数帯域とは、観測周波数帯域の部
分集合であり、観測時刻歴を計算する周波数帯域であ
る。
【0032】安全性とは、地震、大風、波浪などの突発
的な外力によるか、もしくは老朽化等の経年作用によっ
て、対象物が部分破壊もしくは全体破壊等を生ずること
に対しての安全性をさす。健全性とは、対象物の全部ま
たは一部が設計図書、他の調査結果、経験的な法則など
に照らして期待される性質または品質を有しているかど
うかを指す。
【0033】注目物理量とは、診断で注目する運動学、
弾性力学、構造力学上の量であり、対象物内部の点、平
面の変位もしくは相対変位、もしくは、対象物内部の点
間、平面間の相対回転角もしくは、対象物内部の平均圧
縮歪、平均せん断歪、平均曲げ歪、平均ねじり歪等の量
である。注目時刻歴とは、観測時刻歴、観測点の座標、
対象物の寸法等から計算した注目物理量の時刻歴であ
る。
【0034】基準点は、対象物と外界との境界面の近傍
に設置した観測点で、振動エネルギが外界から対象物へ
流入する流入量を測定する基準として用いる点である。
基準平面とは、上記の基準点と同じ役割を持つ平面であ
る。
【0035】対象物の層とは、対象物の変形性状を記述
するときに一体として考えることが出来る対象物の部分
である。例えば、建物であれば、通常各階の床、梁と
柱、壁で構成される構造部分を層と呼んでいる。新幹線
や在来線のコンクリートラーメン形式の高架橋のような
対象物の場合には、地表面からほぼ同じ高さの梁と柱で
構成される構造部分を層とすることが出来る。地盤にお
いてもほぼ同一の力学的特性をもつ地層を構造的な層と
して一体として考え変形性状を記述することが通常行わ
れている。層には、番号、厚さ、座標、および、せん断
剛性、減衰定数などの力学的物性値を付与し、層の内
部、境界に変位、速度などの属性を定義し、これらを注
目物理量とする。
【0036】層の間の境界は通常の対象物では、水平面
と鉛直面で構成される。通常は、層境界面は、変形しな
いものと仮定し、対象物の変形は層内部で起こり、層境
界面間の相対変位によって記述できると考える。一般
に、層境界の変位は時刻をパラメータとする時刻歴であ
り、並進方向に水平2成分、鉛直成分の合計3成分と、
同3方向廻りにそれぞれ回転成分を考えることができ
る。層間変位とは、層の境界間の相対変位である。層間
変形角とは、層境界間の水平並進2方向の相対変位を層
の厚さで除した値であり、層を構成する構造要素(部
材)の力学的な性状、破壊に対する安全性などに関する
多くの研究成果は、層間変位または、層間変形角を指標
として整理されている。観測平面を対象物の層境界面と
し、平均歪等を注目物理量とすることにより、容易に動
的構造解析などの他の方法による計算結果と比較するこ
とができる。
【0037】エネルギ伝達率は、対象物内の振動伝達特
性を表すスカラ量である。前記エネルギ伝達率(RMS
比)は、同じ時間帯上で定義された観測時刻歴の二乗平
均値と他の観測時刻歴の二乗平均値(RMS)との比で
ある。両者の時刻歴を線形システムの入力と出力である
と考えた時、入力時刻歴のパワースペクトルに相似な任
意の入力に対して、出力の二乗平均値(RMS)を与え
るという意味での伝達特性の指標となる。通常、基準点
又は基準平面のある観測時刻歴二乗平均値を分母とす
る。
【0038】基準推定変位量とは、対象物の安全性を評
価するときに考慮する突発的な外力の作用によって基準
点又は基準面に生ずると推定される最大変位量である。
【0039】地震による対象物の破壊の危険性を評価す
るに先立って、まず、対象物を事前に調査し、対象物の
変形を記述する層、地震力が入力する基準面を決定し、
これに対応して受振器(微動計)の設置位置を決定す
る。次に、設置した受振器(微動計)によって常時微動
データ(速度時刻歴または変位時刻歴)を記録し、この
データから注目する境界面間の相対変位時刻歴、回転角
時刻歴、基準面の変位時刻歴を計算し、これらのフーリ
エスペクトルを計算する。一般的には、線形システムの
理論を用いて、入力と出力のフーリエスペクトルの関係
から対象物が線形に挙動すると仮定したときの任意の入
力に対する応答を計算することができる。
【0040】本発明の方法では、常時微動に関する以下
の4つの仮定に基づいている。(1)常時微動を生じさ
せている外部からの振動エネルギの供給源の種類と大き
さの割合は、対象物の特徴と環境から推定することがで
きるので、観測時間帯を環境条件に応じて選択し、分析
時間帯と分析周波数帯を対象物の特徴に応じて選択すれ
ば、ある1種類の振動エネルギが卓越しており、これが
ある特定の境界面から入射していると考え得る観測時刻
歴を得ることができる。(2)常時微動は、振幅が1〜
10ミクロン程度と極めて小さいので、対象物の如何に
拘らず微小変形弾性振動論ならびに線形システムの理論
によって対象物の応答を記述することが可能である。
(3)対象物の特徴と環境から、地震、暴風などの突発
的な外力が入射する面を予め予測することができ、かつ
常時この面から突発的な外力と同種の微小な外力のエネ
ルギが入射している。(4)前記突発的な外力が入射し
た場合と、これに対応する微小な常時外力で生ずる基準
点もしくは基準面の微動変位時刻歴のパワースペクトル
は互いに相似になる観測時間帯がある。従って、以上か
ら観測時間帯等を選択することによって、前記突発的外
力に対応する微小な外力が卓越する微動観測を行うこと
が可能である。さらに、本発明の方法では、対象物の設
計に於いて通常設けられている次のような仮定を用い
て、簡単に対象物の地震動に対する応答を計算する。即
ち、(1)対象物の応答の各成分は互いに独立である。
(2)大地震等の大きな外力に対して対象物は非線形性
を呈するが、このときの最大応答を対象物が線形に振舞
うと仮定して計算した応答から、エネルギ一定則と呼ば
れている仮定を用いて計算することが出来る。(3)常
時微動によって生ずる対象物の変位は微小である。さら
に、本方法では、(4)対象物の地盤に近い層境界面で
観測される常時微動のスペクトルは、大地震で地盤や対
象物が線形に振舞うとした場合に観測されるであろうス
ペクトルと相似形であると仮定する。
【0041】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて、本発明の
実施の形態を詳細に説明する。まず、診断システム1に
ついて説明する。図1は診断システム1の構成図であ
る。図1に示すように、診断システム1は、受振器5、
測定器7、コンピュータ9などで構成される。受振器5
−1、受振器5−2、受振器5−3は構造物21の微動
観測を行う各層境界面3−1、層境界面3−2、層境界
面3−3に配置される。受振器5−1、受振器5−2、
受振器5−3と測定器7はケーブル11で、測定器7と
コンピュータ9は、ケーブル13で接続される。
【0042】受振器5−1、受振器5−2、受振器5−
3はその点の絶対速度、変位を測定する。受振器5−
1、受振器5−2、受振器5−3としては、例えばGE
O−SPACE社製のMPU3−4などを用い、測定器
7としては、AD変換機とアンプを用いる。受振器5と
測定器7は同一ケースに収めることも可能であるが、こ
の場合には、測定器7の振動やノイズが受振器5に感知
されないようにする。
【0043】図2は診断システム1で収集したデータの
変換のフローチャートである。図2に示すように、診断
システム1では、受振器5を使用して、微動すなわち層
境界面3の振動を測定し(ステップ201)、受振器5
で収集した変位、速度波形などのアナログデータを得る
(ステップ202)。このアナログデータをケーブル1
1を介して測定器7へ送信し、デジタル変換し、(ステ
ップ203)、デジタルデータを得る(ステップ20
4)。このデジタルデータをケーブル13を介してコン
ピュータ9に送信し、層間変位73や回転角83等を計
算する(ステップ205)。
【0044】ステップ205のコンピュータ9内のデー
タ処理では、繰り返し計算や収束計算等の複雑な数値演
算は必要としない。ソフトウェアとして通常の表計算ソ
フト(マイクロソフト社製のエクセル(商標名)など)
の組み込み関数を用いたり、C等のプログラミング言語
で簡単なプログラムを作って演算を行う。
【0045】このように、診断システム1を用いること
により、構造物21の微動データの計測から、数値指標
の算出まで短時間に低コストで実施することが出来る。
なお、ケーブル11およびケーブル13は、ワイヤレス
の通信手段とすることもできる。例えば、モデム等を介
してインターネット接続する。または、フロッピー(登
録商標)等によってデータを運搬する方法でも良い。
【0046】また、測定器7ならびにコンピュータ9の
設置位置は、建物内に限らず、同一のケースに収めてお
いても、互いに遠隔地にあっても良い。前者の場合に
は、計測場所で直ちに結果を得られる。後者の場合に
は、多数の建物のデータを同時に処理できる。後者の場
合でも、計算結果を計測器の表示装置に送信して表示す
れば、計測地点で直ちに結果を得られる。このように、
即時的に観測結果を評価できるので、受振器5の移動に
よる観測点の変更、観測時間帯の変更等が可能になる。
【0047】次に、図3に示す診断方法のフローチャー
トに沿って、図5および図6に示す構造物21を例とし
て診断方法を説明する。まず、構造物21の事前調査を
行い、受振器5の設置位置、基準面25を決定する(ス
テップ303)。図4は評価対象となる振動および構造
物21の概略図である。一般に、図4に示すように、基
準面25は、微動29または地震動31が入力する地表
面23に近い層27−4の層境界面とする。また、構造
物21の変形を記述する層27を選出し、隣り合う層2
7の層境界面3上に受振器5の設置位置を決定する。
【0048】診断例では、図5および図6に示す位置に
受振器5を設置する。図5および図6は診断例での受振
器5の設置位置である。受振器5は、中間階の層境界面
3−2から層境界面3−5と基準面25では、中央付近
に設置してある。また、屋上階(RF)の層境界面3−
1では、対角線上に3つの受振器5−1−1、受振器5
−1−2、受振器5−1−3を設置することにより、こ
の層の回転成分を計測する。ここでは、層境界面3−1
で構造物21全体のねじれ、回転の有無を計測したが、
必要に応じて中間階の層境界面3でも同様の計測を行
う。
【0049】受振器5により層境界面3の変位と基準面
25の変位を測定する(ステップ304)。図7は、構
造物21の変位を示す図である。図7の構造物21は変
形前の状態、構造物21aは変形後の状態を示す。微動
29により、基準面25が基準面25aの位置に変形し
た場合、原点33−1から原点33−1aまでの変位が
基準面25の層変位71−1である。同様に、原点33
−3から原点33−3aまでの変位が層境界面3−1の
層変位71−3である。基準面25と各層境界面3の層
変位71をそれぞれ求め、その時刻変化を層変位71の
時刻歴とする。なお、それぞれの原点33の速度時刻歴
から、基準面25と各層境界面3の層変位71の時刻歴
を算出してもよい。
【0050】次に、層間変位73の時刻歴及び回転角8
3の時刻歴を算出する(ステップ305)。層間変位7
3は、層境界面3の相対変位である。通常は、層境界面
3は、変形しないものと仮定し、構造物21の変形は層
27内部で起こり、層間変位73によって記述できると
考える。層間変位73は、隣り合う層境界面3の層変位
71のベクトルの差として求める。例えば、図7の層変
位71−1と層変位71−2の時刻歴のベクトルの差か
ら層間変位73の時刻歴のベクトルを求めると、
【0051】
【数1】
【0052】となる。層間変位73の時刻歴のベクトル
はx、y、zの各座標軸に従って3つの成分を持つ。例
えば、層変位71−1の時刻歴のy成分をy(t)、
層変位71−2の時刻歴のy成分をy(t)とする
と、層間変位73の時刻歴のy成分は、 d12y(t)=y(t)−y(t) ……(2) となる。同様にして、各層境界面3間の層間変位73の
時刻歴を算出する。
【0053】図8は構造物21の回転変位を示す図であ
る。図8に示すように、基準面25や層境界面3の変位
には、X軸41方向の水平成分、Y軸43方向の水平成
分、Z軸45方向の鉛直成分の他に、同3方向廻りの回
転成分がある。ある層境界面3内の埋め込み座標の慣性
系座標に対する回転角83の時刻歴をθ(t)、同じ
層境界面3内の埋めこみ座標の原点33の層変位71の
時刻歴をd(t)、任意の点の層変位71の時刻歴を
(t)、任意の点の埋めこみ座標値をrとする
と、次のような関係が成立する。ただし、演算記号×は
ベクトル積を表す。
【0054】
【数2】
【0055】通常は、層境界面3は平面であり、この面
内にX軸41、Y軸43を埋め込むので、例えば、図6
に示す層境界面3−1では、受振器5−1−3、受振器
5−1−1、受振器5−1−2を設置した3点の埋めこ
み座標であるA(Xa,Ya,0)、B(Xb,Yb,
0)、C(Xc,Yc,0)と、式(2)の関係とか
ら、層境界面3−1の埋め込み座標の原点33の層変位
71の時刻歴d(t)、回転角83の時刻歴θ
(t)のX、Y、Z成分を算出する。それぞれの成分
は、次のように表せる。
【0056】
【数3】
【0057】
【数4】
【0058】
【数5】
【0059】
【数6】
【0060】
【数7】
【0061】
【数8】
【0062】次に、エネルギ伝達率(RMS比)75
(変位)、エネルギ伝達率(RMS比)85(回転角)
を算出する(ステップ306)。一般に、時刻歴a
(t)の二乗平均値σは、式(10)で表される。
【0063】
【数9】
【0064】微動29による第i層と第j層の層間変位
73のx成分の二乗平均値をσdi jx、基準面25の
層変位71のx成分の二乗平均値をσbxとすると、第
i層と第j層の層間変位73のx成分の、基準面25の
層変位71に対するエネルギ伝達率(RMS比)75
(hdijx)は、 hdijx=σdijx/σbx ……(11) で算出される。y成分に関しても同様である。
【0065】図10は診断例での並進変位の実測・計算
結果を示す図である。診断例では、並進変位の層間変位
73の二乗平均値、エネルギ伝達率(RMS比)75の
算出結果は、図10に示す値となる。
【0066】また、微動29による第i層のx軸41回
りの回転角83の二乗平均値をσθ ix、基準面25の
層変位71の水平2成分の二乗平均値をσbxy(ただ
し、σbxy=(σbx +σby 1/2)とする
と、第i層のx軸41回りの回転角83の、基準面25
の層変位71に対するエネルギ伝達率(RMS比)85
θixは、 hθix=σθix/σbxy ……(12) で算出される。y軸周り、z軸周りについても同様であ
る。
【0067】図11は診断例での回転変位の実測・計算
結果を示す図である。診断例では、回転変位の回転角8
3の二乗平均値、エネルギ伝達率(RMS比)85の算
出結果は、図11に示す値となる。
【0068】ステップ303からステップ306と並行
して、地震動31の大きさを決定し(ステップ30
1)、地震動31の作用による基準面25の変位を算出
する(ステップ302)。図9は診断例での危険度の評
価対象となる地震動31のデータを示す図である。ここ
では、構造物21の近辺での兵庫県南部地震による地震
動31のデータを仮に使用する。ステップ301では、
図9に示すように、危険度判定の対象となる地震動31
の、構造物21の近辺での最大加速度51、最大速度5
3、中心周期55を決定する。ステップ302では、こ
れらのデータから基準面25の最大変位57を算出す
る。
【0069】次に、地震動31による地震時推定変位
(最大値)81、87を算出する(ステップ307)。
即ち、図9に示す評価の対象とする地震動31による基
準面25の最大変位57と、図10および図11にそれ
ぞれ示す微動観測結果63、微動観測結果84を用い
て、地震時推定変位(最大値)81および地震時推定変
位(最大値)87を算出する。
【0070】一般に、定常な不規則入力を受ける線形シ
ステムの入力をx(t)、出力をy(t)とすると、出
力の二乗平均値σと入力のパワースペクトル密度関数
(ω)の間には次のような関係がある。
【0071】
【数10】
【0072】H(ω)は、伝達関数と呼ばれている。定
常過程では、二乗平均値(平均パワーの平方根)と、あ
る継続時間の間に観測される最大値の期待値の間には次
の関係がある。
【0073】
【数11】
【0074】γは、ピーク係数と呼ばれる係数で定常過
程y(t)の継続時間Sと分布関数の関数である。定
常ガウス過程では、次のようになる。Tは、定常過程
の中心周期である。
【0075】
【数12】
【0076】
【数13】
【0077】一般に、構造物21を破壊するような地震
力31等の突発的な外力は、有限な継続時間と非定常な
スペクトルを持っている。パワースペクトル密度関数を
計算するときに式(14)から(16)までを用いて、
等価な継続時間Sを求め、これを用いて定常ガウス過
程を対応させることが出来るという研究成果がある。即
ち、パワースペクトル密度関数を計算するときに、次の
ように計算する。 S(ω)=|X(ω)|/(2πS)……(17) ただし、X(ω)は、x(t)のフーリエ変換である。即
ち、
【0078】
【数14】
【0079】また、伝達関数は、入力と出力のフーリエ
変換の商として、次のように計算される。 H(ω)=Y(ω)/X(ω) ……(19) ただし、出力のフーリエ変換も出力の時刻歴y(t)か
ら、式(18)の要領で計算される。
【0080】ステップ307では、簡便な方法として、
構造物21の地盤23に近い基準面25で観測される微
動29のスペクトルは、大地震で地盤23や構造物21
が線形に振舞うとした場合に観測されるであろうスペク
トルと相似形であると仮定する。すると、基準面25の
地震動31による入力x(t)のパワースペクトル密
度関数Sxg(ω)と微動29x(t)のパワースペ
クトル密度関数Sxb(ω)の間には、 Sxg(ω)=cxb(ω) ……(20) の関係が成立する。
【0081】この仮定を式(13)に用いると、地震動
31による層間変位の二乗平均値σ dgと微動29によ
る層間変位73の二乗平均値σdbも相似となる。 σdg =cσdb ……(21) 従って、地震動31による基準面25の層変位の二乗平
均値σと層間変位の二乗平均値σdgの間には、次の
関係がある。 σdg=cσdb=chσ=hcσ=hσ ……(22)
【0082】また、最大値の間にも、ピークファクター
を介して上記の式と同様の関係がある。即ち、受振器5
によって直接計測した、微動29による層間変位73の
時刻歴ならびに基準面25の層変位71の時刻歴から計
算したエネルギ伝達率(RMS比)75(h)と、地震
動31による基準面25の変位の二乗平均値σから、
地震動31による層間変位の二乗平均値σdgならびに
最大値γσdgを予測することができる。
【0083】このことから、対象とする地震動31によ
る基準面25のx成分の最大変位57をbxmaxとす
ると、地震動31によって生ずる第i層と第j層の層間
変位のx成分の最大値dijxmaxは、エネルギ伝達
率(RMS比)75hdij を用いて、 dijxmax=fhdijxxmax ……(23) で算出される。y成分に関しても同様である。
【0084】同様に、対象とする地震動31による基準
面25のx成分の最大変位57をb xmax、y成分の
最大変位57をbymaxとすると、地震動31によっ
て生ずる第i層の回転角89のx成分の最大値θ
ixmaxは、エネルギ伝達率(RMS比)85h
θixを用いて、 θixmax=fhθixxmax ……(24) で算出される(ただし、bmax=(bxmax +b
ymax 1/2)。y軸周り、z軸周りに関しても
同様に算出する。
【0085】式(23)で用いられているf67、式
(24)で用いられているf(図示せず)は、応答の非
線形性を考慮した係数である。f67は、降伏点変位d
と構造が非線形性を呈しないで線型システムとして挙
動したとして計算された変位、即ち、hdijx
xmax(図10の等価弾性変位65)を用いて、次の
ように表される。 f=1/2(η+1/η)、(ただし、η=hdijxxmax/dで、 η>1のときのみ用いる) ……(25) y成分に関しても同様である。
【0086】降伏点変位dは、通常、建物の場合に
は、層間変形角(層間変位を階高で除した値)にして、
200分の1から、100分の1であると考えられてい
る。式(24)で用いられているfも、f67と同様の
考え方で算出されるが、回転角に関しては具体的な研究
成果は現在のところは無いので、本方法ではf=1とし
ている。
【0087】上記の方法では、システムは線形であり、
変位成分は互いに独立で、入力は定常であると仮定して
いる。通常の構造物21の微動29に関しては、この仮
定は概ね現実にも当てはまる。構造物21が破壊するよ
うな大きな外力、例えば地震力31の作用を受けた場合
には、殆どの構造物21が著しい非線形性を呈する。ま
た、外力自体も、有限な継続時間を持ち著しい否定常性
をもつ。この問題に関して、構造力学と構造設計理論で
は、線形システムの定常過程に対する応答を基本に、非
線形、非定常効果を係数fによって考慮するという立場
をとっている。
【0088】本発明の方法は、この立場に添うものであ
り、通常用いられている上記非線形効果を表す係数fを
そのまま用いることが出来る。しかしながら、構造設計
基準で振動の各成分の連成や、非線形性を計算すること
が要求されている対象物に対しては、本発明の方法を適
用する場合に、ステップ307の説明の前半で述べた一
般的な方法や、3次元的な解析を行うことを考慮する必
要がある。
【0089】式(23)、式(24)の計算について診
断例を用いて具体的に述べると、例えば、図10におい
て、図9で示す最大変位57を仮に4cmとした場合、
最大変位57とエネルギ伝達率(RMS比)75を乗算
すると等価弾性変位65となる。そして、等価弾性変位
65にf67を掛けると弾塑性変位69dijmax
得られ、更に弾塑性変位69を層27の厚さで割ると層
間変形角82が得られる。また、図11において、図9
で示す最大変位57の水平2成分(x成分とy成分)の
二乗平均値とエネルギ伝達率(RMS比)85を乗算す
ると回転角89θimaxが得られる。
【0090】ステップ303からステップ307と並行
して、構造物21の危険度判定を行う上で重要な層、変
位成分、判定基準変位量を決定し(ステップ308)、
基準変形量(層間変位角、回転角)を算出する(ステッ
プ309)。即ち、構造物21の設計条件や、同種の対
象物の被災事例、実験データなどを収集し、ステップ3
01からステップ307の手順で算出した層間変形角8
2や回転角89などのデータに対する判定基準値を、そ
れらのデータを用いて決定する。
【0091】次に、危険度を判定する(ステップ31
0)。即ち、図10および図11に示す地震時推定変位
(最大値)81、地震時推定変位(最大値)87と、ス
テップ309で決定した判定基準値を比較し、構造物2
1の地震動31による危険度を判定する。図10に示す
層間変形角82は、弾塑性変位69を層27の厚さで除
した値であり、層27を構成する構造要素(部材)の力
学的な性状、破壊に対する安全性などに関する多くの研
究成果は、弾塑性変位69または、層間変形角82を指
標として整理される。
【0092】地震時の層間変形角82は、1%を超える
と層27の崩壊が生じる危険性が高いと考えられてい
る。図10に示すように、診断例では、地震動31によ
り生じると推定される層間変形角82が1%を超えるの
は、下線を付したX方向2階から4階までと、Y方向の全
ての階であり、本診断方法で崩壊の危険性があると判定
される。尚、2階X方向の層間変形角82は、0.99
%であり、1%をごく僅かしか下回っていないので、危
険と判定した。
【0093】図11に示すように、診断例での、回転変
位の地震時推定変位(最大値)87は、Y軸43、Z軸
45周りに関しては、1%程度であるので、構造物21
の基礎形式がべた基礎であることを考慮すると直ちに危
険であるとは言いがたい。X軸41周りには、3%の回
転が予測されている。この値は大きく、若干の塑性変形
(傾き)が残ると予測されるが、転倒の危険があるとは
言いがたい。
【0094】本方法と、既存の方法との整合性を確認す
るため、図10に日本建築防災協会の指針に従って計算
した耐震指標Is77、強度指標CT・SD79の値を
示す。建築防災協会指針では、耐震性指標Is77が
0.6を下回る場合、また、強度指標CT・SD79が
0.3を下回る場合、大地震でその層が崩壊する危険性
があると判定する。耐震指標Is77による判定、本方
法の層間変形角82による判定ともに、崩壊の危険性が
あるのは、X方向では2階から4階まで、Y方向では、
BF階の耐震指標Is77の0.61は基準値の0.6
0を極僅かしか上回っていないので危険性があると考え
ると、4階を除く全ての階であると判定される。
【0095】4階のY方向に関しては、本方法では危
険、耐震性指標Is77では安全と判定が分かれている
が、その他の全ての階と方向で両方法の判定は整合性が
ある。耐震性指標Is77の判定基準値は、地震動のエ
ネルギが大きくなるほど大きくなる。これを仮に現行の
0.6から0.78に上げて考えれば、両方法の判定結
果を完全に一致させることができる。これは、ここに例
示した実際の地震動31は、日本建築防災協会の指針作
成時点で用いられた過去の被災事例の地震動より大きか
ったとされている事実と整合する。
【0096】診断例の構造物21は、実際の地震動31
で2階と3階部分の柱にX方向の変形による大きな被害
を受けており、判定結果は被災状況にも適合している。
4階X方向とBFから3階までのY方向に関して、両方
法とも危険と判定されながら実際には大きな構造被害を
受けなかったが、2、3階がX方向に被災したことによ
って地震動31のエネルギが吸収され、上層階(4階)
とY方向の被害が小さかったと考えられる。このよう
に、部分的に被災した後の挙動に関して考慮していない
ことは、現行の設計法全般に共通する課題である。
【0097】このように、本実施の形態によれば、以下
のような効果を奏することができる。 (1)計測から計算と評価まで短時間に実施することが
出来る。計測は、機械の設置、計測でおよそ2時間程
度、計算は数分で終了する。日本建築防災協会の方法を
用いる場合には、構造図面データの入力、コンクリート
コア抜き試験の実施と評価等で通常は2週間程度、多量
に人員を投入し、コンクリート試験を短期間で実施して
も少なくとも2から3日は掛かる。
【0098】(2)計測から計算と評価まで低コストで
実施することが出来る。計測と計算に掛かるコストは、
機械の損料と人件費等であるが、従来の方法では、構造
物一棟あたり、数百万円要しているものが、本発明の方
法では、数十万円で出来る。
【0099】(3)各種の想定地震動31に対する危険
度を定量的に評価することが出来る。即ち、特定の地震
動31に対して基準面25の変位を計算し、これに対し
て本発明の方法を用いる。建築防災協会の方法では、過
去の大震災での被災事例の分析からIs=0.6を評価
基準としており、対象とする地震動31が明確ではない
ので、地震危険度のレベルを定量的に評価することが出
来なかった。本発明の方法を用いれば、どのような地震
動31に対して安全か危険かを定量的に判断することが
できる。
【0100】(4)層27並びに層間の回転角89に対
しても計測結果に基づいて、危険度を判定することが出
来る。日本建築防災協会の方法では、ねじれに関しては
直接の規定がない。しかし、建築設計基準では、新築建
物に対しては、ねじれに対する検討を行うことになって
おり、本発明の方法はこれに対応させることが出来る。
ねじれ、回転の対象物への影響に関しては現在も学会等
で盛んに研究が進んでいる分野であり、本発明の方法で
ねじれ、回転が予測できるので、学会等で得られた知見
を危険度判定に反映することが出来るという効果があ
る。
【0101】(5)対象物の耐震性に関する設計で用い
られている指標(層間変位、弾塑性変位69、回転角8
9など)を直接計測と計算で得ることが出来るので、建
物の地震危険度判定と設計を直接関連付けることができ
る。従来の方法は、耐震性指標(Is)、強度指標(C
tSd)(以上日本建築防災協会)スペクトル比、地震
危険度指標など、地震危険度判定専用の指標を計算して
いるので、耐震設計の理論的枠組み、実験データなどを
用いることが困難である。これに対して、本発明の方法
は、上記の膨大な知識の集積を地震危険度判定に直接用
いることを可能にする効果がある。
【0102】(6)想定地震動31に対する基準面25
の変位から、層間変位(弾塑性変位69)等を計算する
方法であるので、地震動31に対する正確な評価が出来
る。 (7)構造物21の非線形性を考慮して計算しているた
め、正確な評価ができる。これは、本発明の方法が設計
計算に用いられている理論的体系に準拠していることに
よる効果である。
【0103】(8)既存建物の地震危険度評価だけでな
く、建設中の建物の品質管理に用いることもできる。本
方法は、設計計算に用いられている指標を直接計測する
ので、建設途上または竣工後に建物が設計で期待した性
能を持つかどうかの評価に用いることが出来る。
【0104】次に、本発明の別の実施の形態について説
明する。前述の実施の形態では、人工的構造物に、地震
等の突発的外力が加わる時の該構造物の安全性を評価し
た。ここでは、評価対象を人工物だけでなく自然物にも
広げ、該対象物の微動観測を行うことで、安全性と健全
性とを評価する。安全性とは対象物の破壊の危険性を評
価することを指し、健全性とは対象物が設計上期待され
る性質や品質に対する達成度を評価することを指す。
【0105】図12は、本発明の別の実施の形態に係る
診断システム1を示す。対象物91は、人工的な構造物
に限らず、自然物である崖、岩石、地盤等を含む。対象
物91の内部や表面に複数の受振器5が設置される。受
振器5は、ケーブル11で測定器7に接続され、測定器
7はケーブル13でコンピュータ9に接続される。受振
器5や測定器7については図1で説明したので省略す
る。尚、受振器5と測定器7との接続、或いは測定器7
とコンピュータ9との接続は、無線通信手段による接続
であっても良い。
【0106】受振器5は、対象物91の任意の内部や表
面、或いは受振器5−7〜5−9のように対象物内の平
面3上に設置される。受振器5で得られるデータの変換
の手順は図2で示したものと同様であり、説明を省略す
る。
【0107】図13、14は、対象物91の観測点(即
ち受振器5の設置点)の配置計画の例を示す。受振器5
の設置点は、対象物91の特徴、環境条件、診断項目等
を考慮して、対象物91の注目点(もしくは注目面)、
基準点(もしくは基準面)に配置される。
【0108】図13は、対象物91が同一の基盤93
(地盤、岩盤、床等)に乗っていると考えられる場合で
ある。対象物内部に性質が変化している部分があれば、
その位置を診断する目的の受振器5の配置計画である。
例えば本実施の形態で微動による診断を行うと、A点・
C点とB点との微動時間歴の特性が異なることが判明す
る。即ち図13のB点近傍が、対象物性質変化部分95
であることが判明する。
【0109】さらに受振器5の位置を点Aから点A1、
点A2へ、点Cから点C1、点C2へと移動させて診断
を実施すると対象物の性質変化部分95を診断すること
ができる。
【0110】図14は対象物91と基盤93の間の境界
条件の違いを検出し診断を行う場合である。対象物上の
点A4、点B4、点C4と、それぞれの近傍の基盤93
上の点A3、点B3、点C3との間でエネルギ伝達率
(RMS比)を計算して診断を行う。
【0111】また、対象物91内部の性質の変化部分を
診断する場合は、図4から図6に示したように、対象物
91を層に分けて基準面、注目面を決めて観測点(受振
器5)を配置する。
【0112】次に、図15のフローチャートに従い、微
動による診断の手順を説明する。まず、安全性、健全性
を評価診断する対象物91と、その周辺環境の事前調査
を行う(ステップ1001)。
【0113】次に対象物91の診断項目を決定する(ス
テップ1002)。即ち診断項目が突発性外力に対する
安全性診断か、又は健全性診断かあるいは両方かを決定
する。
【0114】次に対象物91の注目物理量とこれを計算
する点、面、層等を決定する(ステップ1003)。注
目物理量とは、対象物内部の点や平面の変位もしくは相
対変位、点間の回転角、平均圧縮歪、平均せん断歪、平
均曲げ歪、平均ねじり歪等の量である。例えば前述の実
施例では、注目物理量が「層間変位」と「回転角」であ
った。建物や橋梁等の対象物では、設計計算で考慮する
層や部材を参考にして注目物理量とこれを計算する点、
面、層等を決定する。崖、地盤等の自然物でも、人工的
な対象物を対象とする場合と同様に、防災や補強等の設
計計算、安定計算で用いる力学的なモデルを参考にし
て、注目物理量とこれを計算する点、面、層等を決定す
る。
【0115】突発的外力を考慮する場合には、その入力
基準面と観測時間帯とを決定する(ステップ100
4)。
【0116】次にステップ1005は、本診断システム
1のソフトウエアの処理手順を示している。図16は、
ステップ1005の入力、計算、表示、出力を行う機能
を詳細に示しているので、以降図15、図16とを合わ
せて説明する。
【0117】入力項目として、観測計画(即ち観測点の
総数・位置、観測時間帯、観測周波数帯域、卓越振動エ
ネルギ、基準点、基準面、注目点、注目物理量、観測時
刻歴計算項目等)を決定する(ステップ1006)。こ
れは図16の観測点属性の入力2006に対応する。
【0118】次に、上記計画に基づいて、受振器5を対
象物91に設置し、微動観測を実施する(ステップ10
07)。即ち微動観測値から、図16の観測時刻歴20
03を得、同時に観測時間・観測周波数帯域2004、
分析時間・分析周波数帯域2005を決定する。分析時
間のデータの取り出しは、観測時間帯の中に分析開始時
刻と分析終了時刻とを設定することで行う。分析周波数
帯域のデータの取り出しは、分析時間の時刻歴に関して
FFT変換を行い、周波数領域のフィルタ演算を行い、
逆FFT変換によって注目時刻歴を計算する元になる分
析時間と分析周波数帯域の時刻歴データを得る。これら
の計算は予備計算ルーチン2013を利用する。
【0119】次に、注目時刻歴の計算(図16の201
1)と、パワースペクトルの計算を行い(ステップ10
08)、さらにエネルギ伝達率(RMS比)の計算(図
16の2012)を行う(ステップ1009)。以下詳
細に説明する。(即ち図16の計算ルーチン2009に
入る。)
【0120】常時微動は振幅が極めて小さく、対象物が
線形に応答していると仮定すると、入力(即ち観測時刻
歴)x(t)と、出力(即ち注目時刻歴)y(t)との間に
は、前述の式(13)から式(19)に示される関係が
ある。尚、式(13)から式(19)の例では入力(即
ち観測時刻歴)x(t)は構造物21の層変位71の時刻
歴に対応し、出力(即ち注目時刻歴)y(t)は、層間変
位73の時刻歴と回転角83の時刻歴に対応する。
【0121】従ってある観測時刻歴から、伝達関数H
(ω)を前述の式(13)から式(19)を用いて計算
し、任意の波形の基準点もしくは基準面での入力(即ち
観測時刻歴)x(t)に対する出力(即ち注目時刻歴)y
(t)を計算することができる。ただしこれは入力が基準
面に限られている場合であり、対象物91にその他の面
から入力がある場合にはこの効果も重ね合わせる必要が
ある。
【0122】前述の式(13)から式(19)を用いて
注目時刻歴の計算とパワースペクトルS(ω)の計算を
行い(ステップ1008)、続いてエネルギ伝達率(R
MS比)計算を行う(ステップ1009)。
【0123】エネルギ伝達率(RMS比)hは、入力で
ある観測時刻歴x(t)の二乗平均値σと、出力である
注目時刻歴y(t)の二乗平均値σとを用いて以下のよ
うに定義される。尚、σ、σは前述の式(10)で
定義される。 hxy=σ/σ ……(26)
【0124】エネルギ伝達率(RMS比)hは、微動観
測による基準点又は基準面の観測時刻歴の二乗平均値に
対する、注目時刻歴の二乗平均値の比である。二乗平均
値は、ピーク係数γを介して最大値と関係付けられるの
で、近似的には、最大値の比である。
【0125】突発性外力に対する安全性診断を行う場合
は、突発的外力に対する基準点変位の予測を行い(ステ
ップ1010)、図16の基準点変位(予測値)200
2を入力データとして入力する。微動観測値から算出し
たエネルギ伝達率(RMS比)hと、基準点変位(予測
値)2002とから、注目物理量の予測最大値の計算を
行う(ステップ1012)。
【0126】前述の式(20)から式(22)で説明し
たように、エネルギ伝達率(RMS比)hは、線形シス
テムの応答を計算する係数となる。即ち、観測時刻歴か
ら計算したエネルギ伝達率(RMS比)hxyと地震動
などの突発的外力によって生ずると予測される基準面変
位の二乗平均値σxgから、この外力によって生ずる注
目点もしくは層などの変位、歪等の時刻歴の二乗平均値
σyg並びに最大値γσygを予測することができる。
即ち以下の関係がある。 σyg=hxyσxg ……(27)
【0127】上記においては、システムは線形であり、
変位成分は互いに独立で入力は定常であると仮定してい
る。然しながら、対象物が破壊するような突発的な外力
の作用を受けた場合は、殆どの対象物が著しい非線形性
を呈する。また、突発的な外力自体も有限な継続時間を
持ち、著しい非線形性を持つ。この場合、構造力学と構
造設計理論では、線形システムの定常過程に対する応答
を基本に、非線形、非定常効果を係数によって考慮す
る。
【0128】突発的外力に対する注目物理量の予測最大
値を算出後、対象物91の安全性診断を行う(ステップ
1013)。対象物91が構造物21の場合は、算出し
た地震時推定変位(最大値)81、回転角の地震時推定
変位(最大値)87と、判定基準値(即ち図16に示す
許容最大変位2008)とを比較して安全性を診断す
る。
【0129】対象物91の健全性診断を行う場合は、対
象物91の構造が期待される状態であるかどうかを判定
する。即ち、対象物91に期待されるエネルギ伝達率
(RMS比)(期待値)の予測を行い(ステップ101
1)、微動観測で得たエネルギ伝達率(RMS比)と比
較することで、対象物91の健全性診断を行う(ステッ
プ1014)。即ち対象物91が、設計に相応して期待
される性質又は品質からどのくらいずれているかを判定
することで、対象物91の健全性の診断を行う。尚、対
象物91に期待されるエネルギ伝達率(RMS比)(期
待値)2007は診断者が入力する入力データ2001
(図16)である。
【0130】尚、微動観測時に、従来は測定器7等にフ
ーリエ振幅スペクトルを表示させて目視し、その形状か
ら微動の性質を経験的に判断したり、振幅最大値に対応
する周波数を卓越周波数と考えて診断指標にしたりし
て、分析を行っていた。本発明では、診断者が微動観測
時にパワースペクトルを観測と同時に、測定器7又はコ
ンピュータ9画面に表示させて目視する。さらに、中心
振動数とバンド幅指数を算出してスペクトル形状を定量
化して判断材料とする。即ち、任意の観測時刻歴x(t)
に対して、スペクトルの中心振動数ωは式(28)
で、バンド幅指数αは式(29)で表すことができる。
【0131】
【数15】
【0132】
【数16】
【0133】ただし、式(28)、式(29)のλ
は、観測時刻歴x(t)のパワースペクトルのI次モー
メントであり、式(30)で表される。
【0134】
【数17】
【0135】λは、x(t)の二乗平均値である。不規
則振動論によれば、中心振動数ωは、時刻歴の平均ゼ
ロクロス周波数の期待値になる。また、バンド幅指数α
は、1とゼロとの間を取り、正弦波でα=1、ホワイト
ノイズでα=0となる。これらの指標を用いることによ
り、観測者の主観に頼らずに、観測時刻歴の周波数特性
を評価することができる。
【0136】特に、従来はフーリエスペクトルの最大値
に対応する周波数を卓越周波数としていたが、この値は
統計的な意味が薄く観測によって変動する標本値の1つ
であった。これに対し中心振動数ωは、卓越周波数の
期待値になる。
【0137】注目時刻歴の算出(ステップ1008)
は、対象物91の特徴や注目する変位、歪に応じて任意
に定義し、計算することができる。例えば、対象物91
が建物や橋梁、地盤などのように水平な層に分けられ、
この層内のせん断、捻り、曲げなどの歪に注目して診断
を行う場合を例にして具体的な注目時刻歴の計算方法を
説明する。
【0138】対象物91を水平な平面で層に分割し、そ
の境界面に3つの観測点(受振器5)を設置する。微動
変位は微小であると仮定し、ある層境界面の埋め込んだ
座標系の慣性系座標に対する回転角時刻歴θ(t)
と、原点の変位時刻歴d(t)と、任意の点の変位時
刻歴d(t)と、任意の点の埋め込み座標値rには
前述の式(3)の関係が成立する。
【0139】また、3点それぞれの埋め込み座標の原点
の注目時刻歴、及び注目微動回転変位時刻歴のX、Y、
Z成分は、前述の式(4)から式(9)で表される。こ
れらの計算式を、観測点の観測時刻歴に適用し、観測点
(受振器5)の設置された平面の注目時刻歴を計算す
る。
【0140】さらに、注目時刻歴としての、微動層間変
位時刻歴、微動層間回転角時刻歴及び、層内の微動歪時
刻歴に注目して計算し診断する。微動層間変位時刻歴
は、層境界面iとjの間の相対変位時刻歴であり、前述
の式(1)で示される。(式(1)には、i=1、j=
2の場合が示されている。)
【0141】扁平な建物の中間階のように、層境界面の
回転運動に注目しなくても良い場合には、層境界面に1
つずつの受振器5を設置し、この変位の観測時刻歴を代
表点の変位とする。例えばy成分については、式(3
1)が成立する。 dijy(t)=y(t)−y(t) ……(31)
【0142】y(t)、y(t)は、それぞれ対象物内
の注目する層境界iとjの埋め込み座標の原点もしくは
代表点の微動変位時刻歴のy成分である。
【0143】また、層内のせん断歪もしくは軸歪は、層
間変位を層の厚さlで割ることで計算できる。また、
微動捩り率時刻歴ψijz(t)は、Z軸廻りの微動回転
角時刻歴の差と層厚lとを用いて式(32)で示され
る。 ψijz(t)=(θiz(t)−θjz(t))/lij……(32)
【0144】また、微動曲率時刻歴は、X軸とY軸廻り
の微動回転角時刻歴の差と、層厚l とを用いて式(3
3)、式(34)で示される。 ψijx(t)=(θix(t)−θjx(t))/lij……(33) ψijy(t)=(θiy(t)−θjy(t))/lij……(34)
【0145】以上のように、観測された観測時刻歴x
(t)に対する出力y(t)として注目時刻歴を計算し、さ
らにエネルギ伝達率(RMS比)hを計算してこれを指
標とし、対象物91の健全度診断および突発的な外力に
対する安全性診断行う。
【0146】ここで、図16に示した機能について説明
を補足する。本実施の形態のソフトウエアの機能は、図
16に示すように入力データ2001機能、計算ルーチ
ン2009機能、表示ルーチン2014機能、出力・転
送ルーチン2017機能からなる。
【0147】入力データ2001部で、観測者が入力す
るのは、基準点変位(予測値)2002、受振器5の設
置情報を含む観測点属性2006、エネルギ伝達率(R
MS比)(期待値)2007、安全性判定のための許容
最大変位(設計値)2008である。観測時刻歴200
3は、受振器5で観測されたデータである。観測時間・
観測周波数帯域2004、分析時間・分析周波数帯域2
005は、観測時刻歴2003から観測者が設定するデ
ータである。
【0148】計算ルーチン2009部は、本計算ルーチ
ン2010部と、予備計算ルーチン2013部とから成
る。本計算ルーチン2010は、注目時刻歴の計算20
11(図15のステップ1008)と、エネルギ伝達率
(RMS比)の計算2012(図15のステップ100
9)である。予備計算ルーチン2013は、数値情報の
高速フーリエ変換(FFT)や逆変換、フィルタ演算、
パワースペクトル計算、ゼロ点補正等の演算機能であ
り、本計算ルーチン2010計算時に、必要な予備計算
ルーチン2013を組み合わせて計算し演算の高速化を
図る。
【0149】表示ルーチン2014は、観測者や診断者
が、微動観測と同時に観測時刻歴をモニタし観測が正常
に実施されているかどうかを確認する。また観測時刻歴
が計測した属性を備えているか等の確認、診断に必要な
数値情報の確認、必要に応じた観測点の数・位置等の観
測計画の変更等を行う場合に用いる。
【0150】表示項目は、入力データ、観測時刻歴等を
表示(2015部)し、計算結果として時刻歴、パワー
スペクトル等を表示(2016部)する。
【0151】出力・転送ルーチン2017は、観測結果
や算出結果を、ハード記憶媒体や出力媒体に出力、或い
はインターネット等へ転送する。例えば遠隔地にいる診
断者が、観測と同時に診断することができる。
【0152】このように、本実施の形態によれば、以下
のような効果を奏することができる。(1)対象物の健
全性、安全性を、対象物に直接外力を作用させることな
く、迅速かつ安価に診断することができる。
【0153】(2)診断に用いる時刻歴相互の関係を二
乗平均値(RMS)の比であるエネルギ伝達率(RMS
比)という、計算が容易で、客観的で、物理的・不規則
振動論的に意味のある数値によって表現することによ
り、微動観測によって得られる情報を直接診断に用いる
ことを可能にした。
【0154】(3)微動観測によって得られた時刻歴か
ら、対象物の安全性、健全性の判断に必要な物理量の時
刻歴を直接計算することによって、微動観測によって得
られる情報を、直接診断に用いることを可能にした。
【0155】(4)注目時刻歴に、変位、層間変位、せ
ん断歪、曲げ歪等の通常の構造力学、安定計算、構造計
算で用いられている量を選択することで、本診断の経過
と結果を他の方法の結果と、容易に比較検討することが
できる。従って診断結果の信頼性を高め、他の方法と総
合した診断を行うことができる。
【0156】(5)微動観測中に観測状況をモニタし、
観測と平行して診断計算を行うことにより、健全性・安
全性の診断を迅速に行うことができる。
【0157】(6)微動観測中に、観測状況・診断結果
等の表示を基に、観測点や観測時間帯等の観測計画を変
更し、現場の制約条件下で最適な結果を得る観測と診断
を実施することができる。
【0158】(7)微動観測と診断の中間的なデータや
結果等をインターネット等で転送することによって、遠
隔地の診断者が診断に参加することができる。従って、
診断結果の信頼性を高め、観測点の配置等の診断計画の
最適化を迅速に行うことができる。
【0159】(8)対象物の安全性・健全性の診断に直
接関わる量を、注目時刻歴として算出し、注目時刻歴と
基準面の振動との関係をエネルギ伝達率(RMS比)に
よって表し、微動観測によって得られる情報を直接診断
に用いることを可能にした。
【0160】(9)観測時刻歴の周波数特性を、中心振
動数・バンド幅指数という指標を算出して表すことと
し、客観的な判断を可能にした。
【0161】尚、本発明は、実施例に示した例に限定さ
れることなく、他の分野においても応用することが可能
である。
【0162】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明に
よれば、対象物の微動観測から、エネルギ伝達率(RM
S比)を指標として用い、自然物或いは人工物である対
象物の安全性や健全性の診断を、簡易・迅速かつ安価に
行う診断方法及び診断システムを提供することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係る診断システム1の構成
【図2】診断システム1で収集したデータの変換のフロ
ーチャート
【図3】診断方法のフローチャート
【図4】評価対象となる振動および構造物21の概略説
明図
【図5】診断例での受振器5の設置位置を示す図
【図6】診断例での受振器5の設置位置を示す図
【図7】構造物21の変位を示す図
【図8】構造物21の変位を示す図
【図9】診断例での危険度の評価対象となる地震動31
のデータを示す図
【図10】診断例での並進変位の実測・計算結果を示す
【図11】診断例での回転変位の実測・計算結果を示す
【図12】第2の実施の形態に係る診断システム1の構
成図
【図13】観測点配置例1
【図14】観測点配置例2
【図15】診断システム1の処理を示すフローチャート
【図16】診断システム1のコンピュータ9の処理を示
すフローチャート
【符号の説明】
1………診断システム 3………層境界面 5………受振器 7………測定器 9………コンピュータ 21………構造物 23………地表面 25………基準面 29………微動 31………地震動 57………最大変位 73………層間変位 75………エネルギ伝達率(RMS比) 81………地震時推定変位(最大値) 83………回転角 85………エネルギ伝達率(RMS比) 87………地震時推定変位(最大値) 91………対象物 93………基盤 95………対象物の性質変化部分 97………A点 99………B点 101………C点 103………対象物表面

Claims (30)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 対象物に微動が加わった場合の、エネル
    ギ伝達率(RMS比)を算出する工程を具備することを
    特徴とする対象物の診断方法。
  2. 【請求項2】 前記エネルギ伝達率(RMS比)は、観
    測時刻歴もしくは、注目時刻歴の2つの方向成分の二乗
    平均値の比であることを特徴とする請求項1記載の対象
    物の診断方法。
  3. 【請求項3】 対象物の微動を観測し、観測時刻歴から
    注目時刻歴を算出する工程を具備することを特徴とする
    対象物の診断方法。
  4. 【請求項4】 対象物の微動を観測し、観測時刻歴もし
    くは注目時刻歴のパワースペクトルが、前記対象物に突
    発的外力が作用し、前記対象物が弾性的に振舞うと考え
    た場合に前記対象物に生ずる時刻歴のパワースペクトル
    とほぼ相似になるように、観測時間帯を選択することを
    特徴とする対象物の診断方法。
  5. 【請求項5】 対象物から観測される微動観測値から注
    目物理量を算出する工程と、 前記注目物理量を用いてエネルギ伝達率(RMS比)を
    算出する工程と、 前記エネルギ伝達率(RMS比)と、前記対象物に本来
    期待される期待エネルギ伝達率(RMS比)とを比較す
    る工程と、 前記比較により前記対象物の状態を判定する工程と、 を、具備することを特徴とする対象物の診断方法。
  6. 【請求項6】 対象物から観測される微動観測値から注
    目物理量を算出する工程と、 前記注目物理量を用いてエネルギ伝達率(RMS比)を
    算出する工程と、 前記対象物に突発的外力が加わると想定した時に前記対
    象物の観測点又は平面の最大変位を予測する工程と、 前記エネルギ伝達率(RMS比)と前記最大変位とか
    ら、前記注目物理量の予測最大値を算出する工程と、 を、具備することを特徴とする対象物の診断方法。
  7. 【請求項7】 前記注目物理量の予測最大値は、前記突
    発的外力と前記微動とのパワースペクトルが相似である
    と仮定して算出されることを特徴とする請求項5又は請
    求項6記載の対象物の診断方法。
  8. 【請求項8】 前記対象物の設計条件等から決定した判
    定基準値と、前記注目物理量の予測最大値とを比較して
    前記突発的外力による前記対象物の危険度を判定する工
    程を、更に具備することを特徴とする請求項6記載の対
    象物の診断方法。
  9. 【請求項9】 前記微動観測値は、前記観測点又は平面
    の変位、速度、加速度、角度のうち少なくとも1つであ
    ることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の対象物
    の診断方法。
  10. 【請求項10】 前記注目物理量は、前記観測点又は平
    面の変位、層間変位、回転角、歪のうち少なくとも1つ
    であることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の対
    象物の診断方法。
  11. 【請求項11】 対象物の観測点又は平面に設置する複
    数の受振器と、測定器とコンピュータとからなり、 前記複数の受振器は、前記対象物に加わる微動を測定し
    て前記測定器に送り、前記測定器は、前記微動観測値を
    前記コンピュータに送り、 前記コンピュータは、エネルギ伝達率(RMS比)を算
    出して、対象物の診断を行うことを特徴とする対象物の
    診断システム。
  12. 【請求項12】 前記コンピュータは、観測時刻歴から
    注目時刻歴を算出する手段を、更に具備することを特徴
    とする請求項11記載の対象物の診断システム。
  13. 【請求項13】 前記エネルギ伝達率(RMS比)は、
    観測時刻歴もしくは、注目時刻歴の2つの方向成分の二
    乗平均値の比であることを特徴とする請求項11記載の
    対象物の診断システム。
  14. 【請求項14】 対象物の観測点又は平面に設置する複
    数の受振器と、測定器とコンピュータとからなり、 前記複数の受振器は、前記対象物に加わる微動を測定し
    て前記測定器に送り、 前記測定器は、前記微動観測値を前記コンピュータに送
    り、 前記コンピュータは、 前記微動観測値から注目物理量を算出する手段と、 前記注目物理量を用いてエネルギ伝達率(RMS比)を
    算出する手段と、 前記エネルギ伝達率(RMS比)と、前記対象物に本来
    期待される期待エネルギ伝達率(RMS比)とを比較す
    る手段と、 前記比較により前記対象物の状態を判定する手段と、 を、具備することを特徴とする対象物の診断システム。
  15. 【請求項15】 対象物の観測点又は平面に設置する複
    数の受振器と、測定器とコンピュータとからなり、 前記複数の受振器は、前記対象物に加わる微動を測定し
    て前記測定器に送り、 前記測定器は、前記微動観測値を前記コンピュータに送
    り、 前記コンピュータは、 前記微動観測値から注目物理量を算出する手段と、 前記注目物理量を用いてエネルギ伝達率(RMS比)を
    算出する手段と、 前記対象物に突発的外力が加わると想定した時に前記観
    測点又は平面の最大変位を予測する手段と、 前記エネルギ伝達率(RMS比)と前記最大変位とか
    ら、前記注目物理量の予測最大値を算出する手段と、 を、具備することを特徴とする対象物の診断システム。
  16. 【請求項16】 前記注目物理量の予測最大値は、前記
    突発的外力と前記微動とのパワースペクトルが相似であ
    ると仮定して算出されることを特徴とする請求項15記
    載の対象物の診断システム。
  17. 【請求項17】 前記対象物の設計条件等から決定した
    判定基準値と、前記注目物理量の予測最大値とを比較し
    て前記突発的外力による前記対象物の危険度を判定する
    手段を、更に具備することを特徴とする請求項14又は
    請求項15記載の対象物の診断システム。
  18. 【請求項18】 前記微動観測値は、前記観測点又は平
    面の変位、速度、加速度、角度のうち少なくとも1つで
    あることを特徴とする請求項14又は請求項15記載の
    対象物の診断システム。
  19. 【請求項19】 前記注目物理量は、前記観測点又は平
    面の変位、層間変位、回転角、歪のうち少なくとも1つ
    であることを特徴とする請求項14又は請求項15記載
    の対象物の診断システム。
  20. 【請求項20】 エネルギ伝達率(RMS比)を算出し
    て、対象物の診断を行うことを特徴とするコンピュー
    タ。
  21. 【請求項21】 観測時刻歴から注目時刻歴を算出する
    手段を、更に具備することを特徴とする請求項20記載
    のコンピュータ。
  22. 【請求項22】 前記エネルギ伝達率(RMS比)は、
    観測時刻歴もしくは、注目時刻歴の2つの方向成分の二
    乗平均値の比であることを特徴とする請求項20記載の
    コンピュータ。
  23. 【請求項23】 微動観測値から注目物理量を算出する
    手段と、 前記注目物理量を用いてエネルギ伝達率(RMS比)を
    算出する手段と、 前記エネルギ伝達率(RMS比)と、前記対象物に本来
    期待される期待エネルギ伝達率(RMS比)とを比較す
    る手段と、 前記比較により前記対象物の状態を判定する手段と、 を、具備することを特徴とするコンピュータ。
  24. 【請求項24】 微動観測値から注目物理量を算出する
    手段と、 前記注目物理量を用いてエネルギ伝達率(RMS比)を
    算出する手段と、 前記対象物に突発的外力が加わると想定した時に前記観
    測点又は平面の最大変位を予測する手段と、 前記エネルギ伝達率(RMS比)と前記最大変位とか
    ら、前記注目物理量の予測最大値を算出する手段と、 を、具備することを特徴とするコンピュータ。
  25. 【請求項25】 前記注目物理量の予測最大値は、前記
    突発的外力と前記微動とのパワースペクトルが相似であ
    ると仮定して算出されることを特徴とする請求項24記
    載のコンピュータ。
  26. 【請求項26】 前記対象物の設計条件等から決定した
    判定基準値と、前記注目物理量の予測最大値とを比較し
    て前記突発的外力による前記対象物の危険度を判定する
    手段を、更に具備することを特徴とする請求項23又は
    請求項24記載のコンピュータ。
  27. 【請求項27】 前記微動観測値は、前記観測点又は平
    面の変位、速度、加速度、角度のうち少なくとも1つで
    あることを特徴とする請求項23又は請求項24記載の
    コンピュータ。
  28. 【請求項28】 前記注目物理量は、前記観測点又は平
    面の変位、層間変位、回転角、歪のうち少なくとも1つ
    であることを特徴とする請求項23又は請求項24記載
    のコンピュータ。
  29. 【請求項29】 コンピュータを請求項20から請求項
    28に記載したコンピュータとして、機能させることを
    特徴とするプログラム。
  30. 【請求項30】 請求項29記載のプログラムを記録し
    た記録媒体。
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