JP2010071423A - 遊星ローラ式トラクションドライブ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】太陽ローラ3の周りに自転および公転可能に配置された複数の遊星ローラ5と、複数の遊星ローラ5の外側に配置され、太陽ローラ3とともに遊星ローラ5を挟持するリングローラ7と、を備えている遊星ローラ式トラクションドライブ1であって、リングローラ7に微小クラックが発生したことを検知する電気抵抗検知装置19が備えられていることを特徴とする。
【選択図】図3
Description
キャリアおよび太陽ローラには、それぞれ回転可能に支持された軸(キャリア支持軸、太陽軸)が固着されている。これらの軸の一方の軸に入力された動力は、太陽ローラ、遊星ローラおよびリングローラを介して他方の軸に伝達される。(たとえば、特許文献1参照。)
歯の噛み合いを基本とした機構であるために、回転精度の向上に製作技術上の制限がある歯車式に比べて、そのような制限のない遊星ローラ式トラクションドライブは、高回転精度、低騒音、高効率である。
このため、遊星ローラ式トラクションドライブは、比較的高トルクを求めない分野を中心として各種産業機械分野における駆動系に広く用いられている。
また、リングローラを遊星ローラの外側に装着した後、そのU字形状の両側面を押圧し、遊星ローラと接触する内周面をクラウニング変形させ、リングローラの内径を一様に縮小する。この変形量は、遊星ローラとの接触部分にのみ拘束されるので、各ローラ間に法線力を与えることになる。
リングローラは初期条件として大きな引張力が作用している状態で、遊星ローラによって、引張力と圧縮力とを交互に繰り返し受けるので、リングローラは、硬い材料で形成されていることもあいまって割れることがある。
リングローラが割れると、それが、たとえ、部分的であっても、その破片がローラ間に噛み込んで多大な損傷を与える恐れがある。
また、大きな損傷を受けると遊星ローラ式トラクションドライブの修理等に多大な時間を要するので、製造停止時間が長くなる。
このため、リングローラに割れが発生する状態であることを早期に、たとえば、微小クラックの状態で検知し、早期に修理等の対応が行なえることが求められている。
本発明にかかる遊星ローラ式トラクションドライブは、太陽ローラの周りに自転および公転可能に配置された複数の遊星ローラと、複数の該遊星ローラの外側に配置され、前記太陽ローラとともに該遊星ローラを挟持するリングローラと、を備えている遊星ローラ式トラクションドライブであって、前記リングローラに微小クラックが発生したことを検知する検知部材が備えられていることを特徴とする。
なお、検知部材は、運転中常時クラックを検知するようにしてもよいし、運転停止時に、言い換えると、間欠的に検知するようにしてもよい。
具体的には、剛性の変化によってリングローラの遊星ローラに対する押付け力が変化する。これに伴い遊星ローラの通過状態が変化するので、リングローラの振動状態が変化する。振動の加速度、変位量、振幅等を測定し、その変化によってクラックの発生の有無が判定できる。
また、リングローラの遊星ローラに対する押付け力が変化し、遊星ローラの通過状態が変化すると、入力側と出力側との関係が変化するので、この変化を測定し、クラックの発生の有無が判定できる。
たとえば、入力側の回転速度が一定の場合、出力側の回転速度が変化する。出力回転速度を測定し、その変化によってクラックの発生の有無が判定できる。
また、入力側および出力側の軸部に半径方向の振れが発生し易くなる。この振れ量の変化を測定し、その変化によってクラックの発生の有無が判定できる。
さらに、入力側および出力側の軸部に作用する軸トルクが変化する。この軸トルクの変化を測定し、その変化によってクラックの発生の有無が判定できる。入力側の軸部を駆動モータで駆動している場合、この駆動モータを駆動する電流の変化を測定するようにしてもよい。
これらは、運転中常時実施することができる。
また、剛性の変化によって振動の固有値が変化するので、固有値を測定し、その変化によってクラックの発生の有無が判定できる。
さらに、剛性の変化によって応力状態が変化するので、応力を測定し、その変化によってクラックの発生の有無が判定できる。
これにより遊星ローラ式トラクションドライブが大きく損傷することを防止でき、早期に、修理等の対応がとれるので、信頼性を向上させることができる。
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態にかかる遊星ローラ式トラクションドライブ1について、図1〜図3に基づいて説明する。
図1は、遊星ローラ式トラクションドライブ1の横断面図を示す。図2は、図1のX−X断面図である。
リングローラ7の断面形状は、U字形状をしている。リングローラ7の内径は、複数の遊星ローラ5の外側端が形成する包絡線よりも大きくされている。
リングローラ7は、複数の遊星ローラ5の外側に軸線方向に挿入された後、その両側面に予圧Fが加えられる。これにより、リングローラ7の内周面にはクラウニング変形が形成され、リングローラ7の内径が一様に縮小する。この変形量は、遊星ローラ7との接触部分のみに拘束されるので、リングローラ7と遊星ローラ5との接触部分、および、遊星ローラ5と太陽ローラ3との接触部分には、これに基づく法線力が予圧Fに比例して発生する。したがって、予圧Fを調整することによって、ローラ間に作用する法線力を任意にかつ正確に設定することができる。
電気抵抗検知装置19には、電圧計21と、直流電源23と、抵抗25と、が備えられている。これら電圧計21、直流電源23および抵抗25が、リングローラ7の2点を結ぶ結線に直列に接続されている。言い換えると、電圧計21、直流電源23、抵抗25、およびリングローラ7が直列に接続されている。
抵抗25は、一定の抵抗値をもっているので、リングローラ7の抵抗の大きさによって電圧計21で測定される電圧は変化する。
遊星ローラ式トラクションドライブ1が減速機として使用される場合には、太陽軸9を入力軸とし、リングローラ7を固定する。これにより、太陽軸9の回転は太陽ローラ3を経て、各遊星ローラ5に伝達される。遊星ローラ5が太陽ローラ3とリングローラ7との間を自転することによって遊星ローラ5は太陽ローラ3の周りを公転する。
遊星ローラ5の公転によってキャリア11が回転するので、減速された回転が出力軸であるキャリア支持軸13に伝達される。
リングローラ7の電気抵抗が変化すると、電気抵抗検知装置19の電圧計の検出値が、変化する。したがって、電気抵抗検知装置19が測定した電圧が変化すると、クラックが発生したと判定できる。
電気抵抗検知装置19は、運転中も、常時測定できるので、リングローラ7のクラック発生をより早期に判断することができる。したがって、より微小クラックの状態でクラックの発生を把握できる。
これにより、遊星ローラ式トラクションドライブ1に対して早期に、修理等の対応がとれるので、遊星ローラ式トラクションドライブ1を用いている産業機械等への影響を軽微とすることができ、信頼性を向上させることができる。
なお、電気抵抗検知装置19は、例示したものであるので、リングローラ7の電気抵抗の変化を測定する手段としては種々の手段を用いることができる。
次に、本発明の第二実施形態について、図4および図5を用いて説明する。
本実施形態は、リングローラ7のクラックを検出する方法が第一実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態のものと同じ部分については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
本実施形態では、リングローラ7の背面に、加速度計(検知部材)27が取り付けられている。
加速度計27は、リングローラ7が振動するときの加速度を検出する。
加速度計27で検出された振動加速度は、運転開始時に測定された加速度の自乗平均値(rms値)を初期状態とする。
これに伴い、図5に示されるように、加速度計27が測定する加速度のレベルが変化する。この変化が発生するとクラック発生31と判定する。
加速度計27は、運転中も、常時測定できるので、リングローラ7のクラック発生をより早期に判断することができる。したがって、より微小クラックの状態でクラックの発生を把握できる。
これにより、遊星ローラ式トラクションドライブ1に対して早期に、修理等の対応がとれるので、遊星ローラ式トラクションドライブ1を用いている産業機械等への影響を軽微とすることができ、信頼性を向上させることができる。
なお、本実施形態では、振動の加速度を測定する加速度計27を用いているが、これは振動の変位を測定する変位計を用いてもよいし、振動の振幅を測定するようにしてもよい。
次に、本発明の第三実施形態について、図6を用いて説明する。
本実施形態は、リングローラ7のクラックを検出する方法が第一実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態のものと同じ部分については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
本実施形態では、リングローラ7の側面に、加速度計(検知部材)27が取り付けられている。
加速度計27は、リングローラ7が振動するときの加速度を検出する。この加速度計27は、運転停止中に、たとえば、対向する側面を打撃33し、リングローラ7が振動する時の振動の加速度、すなわち、リングローラ7の振動固有値を測定する。
この変化が発生するとクラックが発生したと判定する。
これにより、遊星ローラ式トラクションドライブ1に対して早期に、修理等の対応がとれるので、遊星ローラ式トラクションドライブ1を用いている産業機械等への影響を軽微とすることができ、信頼性を向上させることができる。
次に、本発明の第四実施形態について、図7および図8を用いて説明する。
本実施形態は、リングローラ7のクラックを検出する方法が第一実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態のものと同じ部分については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
本実施形態では、図7に示されるように、リングローラ7の背面に、応力が変化するとクラックが発生する応力塗料膜(検知部材)35を塗布している。また、図8に示されるように、リングローラ7の背面に、応力を測定するひずみゲージ(検知部材)37を貼り付けている。
すなわち、応力塗料膜35およびひずみゲージ37はリングローラ7の応力の変化を検知するものである。
この変化が発生するとクラックが発生したと判定する。
これにより、遊星ローラ式トラクションドライブ1に対して早期に、修理等の対応がとれるので、遊星ローラ式トラクションドライブ1を用いている産業機械等への影響を軽微とすることができ、信頼性を向上させることができる。
次に、本発明の第五実施形態について、図9を用いて説明する。
本実施形態は、リングローラ7のクラックを検出する方法が第一実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態のものと同じ部分については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
本実施形態では、リングローラ7の側面に、超音波探傷による欠陥検出装置(検知部材)39が取り付けられている。
欠陥検出装置39は、超音波探傷によって、リングローラ7にクラック等の欠陥があるかを検出することができる。
これにより、遊星ローラ式トラクションドライブ1に対して早期に、修理等の対応がとれるので、遊星ローラ式トラクションドライブ1を用いている産業機械等への影響を軽微とすることができ、信頼性を向上させることができる。
次に、本発明の第六実施形態について、図10および図11を用いて説明する。
本実施形態は、リングローラ7のクラックを検出する方法が第一実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態のものと同じ部分については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
本実施形態では、入力軸、たとえば、太陽軸9にその回転速度(回転数)を検出する速度計(検知部材)41が、出力軸、たとえば、キャリア支持軸13にその回転速度(回転数)を検出する速度計(検知部材)43が取り付けられている。通常入力回転速度は一定で運転されることが多いので、回転速度の計測は、速度計43でのみ行われるようにしてもよい。図11は、この速度計43で測定した出力回転速度の変化を示している。
これに伴い、図11に示されるように、速度計43が測定する回転速度のレベルが変化する。この変化45が発生するとクラック発生と判定する。
速度計41,43は、運転中も、常時測定できるので、リングローラ7のクラック発生をより早期に判断することができる。したがって、より微小クラックの状態でクラックの発生を把握できる。
これにより、遊星ローラ式トラクションドライブ1に対して早期に、修理等の対応がとれるので、遊星ローラ式トラクションドライブ1を用いている産業機械等への影響を軽微とすることができ、信頼性を向上させることができる。
〔第七実施形態〕
次に、本発明の第七実施形態について、図12〜図14を用いて説明する。
本実施形態は、リングローラ7のクラックを検出する方法が第一実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態のものと同じ部分については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
本実施形態では、入力軸、たとえば、太陽軸9には、それを回転駆動する駆動モータ47が備えられている。駆動モータ47には、モータ電流を検出する電流計(検知部材)49が取り付けられている。
図13は、この電流計49で測定したモータ電流の時間経過に伴う変化を示している。
図14は、この軸トルク計51で測定したキャリア支持軸13の軸トルクの時間経過に伴う変化を示している。
電流計49および軸トルク計51は、いずれか一方だけを取り付けてもよい。また、軸トルク計51は、キャリア支持軸13にではなく、太陽軸9に取り付けるようにしてもよい。
これに伴い、図14に示されるように、軸トルク計51が測定するキャリア支持軸13の軸トルクのレベルが変化する。この変化55が発生するとクラック発生と判定する。
太陽軸9に作用する軸トルクが変化すると、太陽軸9を駆動する駆動モータ47の負荷が変化するので、駆動モータ47を作動するモータ電流が変化する。
これに伴い、図13に示されるように、電流計49が測定するモータ電流のレベルが変化する。この変化53が発生するとクラック発生と判定する。
このように、電流計49および/または軸トルク計51は、微小クラックの状態で検知できるので、遊星ローラ式トラクションドライブ1が大きく損傷することを防止できる。
これにより、遊星ローラ式トラクションドライブ1に対して早期に、修理等の対応がとれるので、遊星ローラ式トラクションドライブ1を用いている産業機械等への影響を軽微とすることができ、信頼性を向上させることができる。
〔第八実施形態〕
次に、本発明の第八実施形態について、図15および図16を用いて説明する。
本実施形態は、リングローラ7のクラックを検出する方法が第一実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態のものと同じ部分については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
本実施形態では、出力軸、たとえば、キャリア支持軸13にその半径方向の変位を検出する変位計(検知部材)57が取り付けられている。変位計57は、半径方向からキャリア支持軸13に接触もしくは非接触にてキャリア支持軸13の半径方向(図15の紙面に沿った方向)への移動量を計測するものである。
図16は、この変位計57で測定したキャリア支持軸13の軸振れの時間経過に対する変化を示している。
変位計57は、入力軸、たとえば、太陽軸9に取り付けるようにしてもよい。
これに伴い、図16に示されるように、変位計57が測定するキャリア支持軸13の軸振れのレベルが変化する。この変化59が発生するとクラック発生と判定する。
変位計57は、運転中も、常時測定できるので、リングローラ7のクラック発生をより早期に判断することができる。したがって、より微小クラックの状態でクラックの発生を把握できる。
これにより、遊星ローラ式トラクションドライブ1に対して早期に、修理等の対応がとれるので、遊星ローラ式トラクションドライブ1を用いている産業機械等への影響を軽微とすることができ、信頼性を向上させることができる。
次に、本発明の第九実施形態について、図17を用いて説明する。
本実施形態は、リングローラ7のクラックを検出する方法が第一実施形態のものと異なるので、ここではこの異なる部分について主として説明し、前述した第一実施形態のものと同じ部分については重複した説明を省略する。
なお、第一実施形態と同じ部材には同じ符号を付している。
本実施形態では、リングローラ7にAE検出装置(検知部材)61が取り付けられている。AE検出装置61は、リングローラ7の側面に取り付けられたリングローラ7が発生する弾性波を検知するAEセンサ63と、AEセンサの検出した信号を可視化するAE計測器65とを備えている。
アコースティックエミッションが発生すると、AEセンサ63がそれを検出し、AE計測器65が可視化するとともにアコースティックエミッションの検出を報知する。
このアコースティックエミッションが発生するとクラックが発生したと判定する。
AE検出装置61は、運転中も、常時測定できるので、リングローラ7のクラック発生をより早期に判断することができる。したがって、より微小クラックの状態でクラックの発生を把握できる。
これにより、遊星ローラ式トラクションドライブ1に対して早期に、修理等の対応がとれるので、遊星ローラ式トラクションドライブ1を用いている産業機械等への影響を軽微とすることができ、信頼性を向上させることができる。
3 太陽ローラ
5 遊星ローラ
7 リングローラ
19 電気抵抗検知装置
27 加速度計
35 応力塗料膜
37 ひずみゲージ
39 欠陥検出装置
41 速度計
43 速度計
45 AE検出装置
Claims (5)
- 太陽ローラの周りに自転および公転可能に配置された複数の遊星ローラと、
複数の該遊星ローラの外側に配置され、前記太陽ローラとともに該遊星ローラを挟持するリングローラと、を備えている遊星ローラ式トラクションドライブであって、
前記リングローラに微小クラックが発生したことを検知する検知部材が備えられていることを特徴とする遊星ローラ式トラクションドライブ。 - 前記検知部材は、前記リングローラの電気抵抗を計測するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の遊星ローラ式トラクションドライブ。
- 前記検知部材は、前記リングローラの剛性の変動を計測するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の遊星ローラ式トラクションドライブ。
- 前記検知部材は、超音波探傷装置であることを特徴とする請求項1に記載の遊星ローラ式トラクションドライブ。
- 前記検知部材は、アコースティックエミッションを検知するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の遊星ローラ式トラクションドライブ。
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