JP2002303609A - 固体内部の振動検査装置 - Google Patents

固体内部の振動検査装置

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JP2002303609A
JP2002303609A JP2001099496A JP2001099496A JP2002303609A JP 2002303609 A JP2002303609 A JP 2002303609A JP 2001099496 A JP2001099496 A JP 2001099496A JP 2001099496 A JP2001099496 A JP 2001099496A JP 2002303609 A JP2002303609 A JP 2002303609A
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Kageyoshi Katakura
景義 片倉
Kazuhiro Moriguchi
和弘 森口
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Koden Electronics Co Ltd
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Koden Electronics Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 励振部の固体表面との接触部の形状を変える
ことにより、打撃角の状況や検査対象物の表面の形状に
影響されにくい励振部を提供することにある。 【解決手段】 固体内部の振動検査装置の励振部と固体
表面との接触部は、鋼材等の検査対象物より硬い材質で
できている。この接触部の構成は、球面状、前記励振部
中の駆動部材部より広い面積を有した平面状または、前
記駆動部材部より狭い面を有するものとなっている。こ
のような接触部を構成することにより、励振部と接触す
る角度が大きい場合、固体表面が粗い場合または、固体
表面の微小面積を励振することで微小な異常部の診断を
行う場合における検査精度の向上を図ることができる。
さらに、励振部は、自重を平衡させる構成とされ、天井
や垂直の壁面等の励振部にかかる重力の方向が垂直に励
振する時と異なる時にも、励振部と固体表面との接触を
確実に行なう構成となっている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、コンクリ−ト構造
物の内部診断などに利用される固体内部の振動検査装置
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、コンクリ−ト構造物の劣化が問題
になっており、その内部の診断が必要とされている。従
来、コンクリ−ト内部の診断手法として、超音波を利用
する方法が種々提案されてきた。特開平7−20097
号公報には、エア−シリンダを使用したハンマでコンク
リ−ト製品を軽打し、この時発生する音波の音圧レベル
を騒音計で検出して良品か欠陥品かを判別する方法が開
示されている。
【0003】また、特開2000−2692号公報に
は、コンクリ−ト構造物の内部に超音波を入射し、伝播
する超音波をこの構造物の表面に接触させた加速度計を
用いて受信し、この受信した超音波の周波数スペクトル
を分析することによってコンクリ−ト構造物の内部の空
洞の発生の有無を検査する方法が開示されている。この
方法では、鋼球を所定の高さから被検査対象物の表面に
落下させることによって超音波を入射させている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来のコンクリ−
ト内部の診断方法では、エアシリンダを使用したハンマ
でコンクリ−トの表面を打撃している。しかしながら、
エアシリンダによるハンマの動きは緩慢なため、コンク
リ−ト表面に長時間にわたって留まることになり、表面
を2回以上打撃する場合がある。この結果、受信される
振動が後続の打撃によって乱され、検査精度が、低下す
るという問題が生じる。
【0005】従って、本発明の一つの目的は、励振の時
点と、励振された振動の受信の期間とを同期させること
により、不要な振動の受信を排除し、検査精度を高める
ように構成されている。
【0006】また、エアシリンダで駆動されるハンマの
コンクリ−ト表面への接触時間が長引くと、このハンマ
がコンクリ−ト内に励振された振動に対する負荷として
作用する。この結果、ハンマの質量などが励振される振
動の特性に影響を及ぼし、検査の精度を低下させるとい
う問題がある。鋼球を所定の高さから落下させる方法は
接触時間が長引くという問題はないが、鋼球が表面に衝
突した後の位置の管理が難しく、このため、ベルトコン
ベアなどの搬送機構によって一定速度で流れていく製品
の自動検査などにおいて、検査対象の製品に一定の周期
で振動を発生させることが困難になるという問題があ
る。
【0007】従って、本発明の他の目的は、励振機構が
診断対象の固体中に励振した振動に対して負荷として作
用しない、すなわち、固体中に自由振動の励振が可能
で、しかも一定周期での振動の発生が可能な診断装置を
提供することにある。
【0008】エアシリンダで駆動されるハンマのコンク
リ−ト表面への打撃角が異なると、コンクリ−トの内部
が同じ状況でも、打撃力が変わってしまう。また、検査
対象のコンクリ−トの表面が粗い場合においては、ハン
マとコンクリ−ト表面との接触面積がコンクリ−トの表
面の粗さの違いにより異なる。さらに、コンクリ−ト内
部の微小な異常部を診断する場合、前記接触面積が異常
部の面積(断面積)より大きいと微小な異常部を見つけ
にくいなどの問題がある。
【0009】従って、本発明の他の目的は、励振部の固
体表面との接触部の形状を変えることにより、打撃角の
状況や検査対象物の表面の形状に影響されにくい励振部
を提供することにある。
【0010】また、天井や垂直の壁面等の固体内部に自
由振動を励振するに際しては、励振部にかかる重力の方
向が垂直に励振する時と異なるため、励振部が固体表面
に接触した状態から該固体表面を圧迫することが困難で
あるという問題がある。従って、本発明のさらに他の目
的は、励振部と固体表面との接触を確実に行なうことを
目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記従来技術の課題を解
決する本発明に係わる固体内部の振動検査装置は、検査
対象の固体中に振動を発生させる励振部と、この固体中
の振動を検出して電気信号に変換する受信部と、この受
信部が受信した振動の特性を分析し、検査結果として出
力する検査部と、上記各部の動作を制御する制御部とを
備えている。そして、制御部は、励振部による励振の時
点と受信部による振動の受信の期間とを同期させる手段
を備えることにより、励振部による打撃時等で生ずる二
度打ちなどの不要振動の受信を回避し、検査精度の向上
を図っている。
【0012】本発明に係わる固体内部の振動検査装置の
励振部は、圧電体又は磁歪体の高速の伸縮を利用して固
体表面に接触した状態から固体表面を圧迫する手段を備
えることにより、この内部に自由振動を励振し、かつ周
期的な圧迫を可能にするように構成されている。
【0013】本発明に係わる固体内部の振動検査装置の
励振部と固体表面との接触部は、鋼材等の検査対象物よ
り硬い材質でできており、前記励振部中の駆動部材部よ
り広い面積を有した平面状または、球面状に構成され
る。さらに、固体表面の微小面積を励振することで微小
な異常部の診断を行う構成としている。前記励振部中の
駆動部材部より狭い面を有することにより、固体表面が
粗い場合、励振部と接触する角度が大きい場合または、
固体表面の微小面積を励振することで微小な異常部の診
断を行う場合における検査精度の向上を図っている。
【0014】本発明に係わる励振部は、自重を平衡させ
る構成とされ、天井や垂直の壁面等の励振部にかかる重
力の方向が垂直に励振する時と異なる時にも、励振部と
固体表面との接触を確実に行なう構成となっている。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明の好適な実施の形態によれ
ば、励振部は、圧電体が積層状になったものをその共振
周波数の交流電力で励振する手段を備えている。
【0016】検査部は、受信部が受信した振動を線形予
測法によって分析し、共振周波数と共振のQ値とに基づ
いて振動特性を検査する手段を備えることにより、共振
周波数とQの算定が容易であるという線形予測法の特徴
を活かすように構成されている。
【0017】検査結果は、良品又は不良品のうちの少な
くとも一つを含む診断結果として出力されることによ
り、人手の介入を必要としない自動検査を可能とするよ
うに構成されている。
【0018】検査は、予め抽出され登録された良品と不
良品の振動の特性と前記検査部が分析した振動の特性と
を比較することによって行なわれる。
【0019】励振部と受信部の固体上の位置を制御する
手段と、これらの位置を検出する手段を更に備えること
により、固体上の検査箇所を自動的に変更可能なように
構成されている。
【0020】
【実施例】図1は、本発明の一実施例の固体内部の振動
検査装置の全体構成を、斜線を付して示す検査対象物と
共に示す機能ブロック図であり、10は励振部、20は
受信部、30は信号処理部、40は信号分析部、50は
診断出力部、60は制御部、70は検査部である。
【0021】図2は、図1中の励振部10の構成の一例
を示す断面図であり、11は駆動部、12は駆動部保持
キャップ、13は引張スプリング、14はリ−ド線であ
る。
【0022】駆動部11は、図12乃至14で示すよう
に、駆動部材部11Aと圧迫部11Bとで構成されてい
る。駆動部材部11Aの好適な一例として、積層圧電体
が、また、他の好適な例として、ニッケル等の磁歪体な
どが使用可能である。
【0023】圧迫部11Bは、鋼材等の検査対象物より
硬い材質で構成されている。図12は、検査対象の固体
表面と接触する圧迫部11Bの形状が駆動部材部11よ
り広い面積を有した平面状に構成されている例である。
図13は、検査対象の固体表面と接触する圧迫部11B
の形状が球面状に構成されている例である。また、図1
4は、検査対象の固体表面と接触する圧迫部11Bの形
状が駆動部材部11より狭い面で構成されている例であ
る。斜線を付して示された検査対象物中の空白部は微小
な異常部を示す。
【0024】図3は、前記の好適な駆動部11(例え
ば、積層圧電体)にリ−ド線14を介して供給される駆
動電圧の波形の一例を示す波形図である。この駆動電圧
は、単一パルス波形あるいは積層圧電体の共振周波数と
ほぼ一致した周波数の交流電圧が数波長分連続したバ−
スト信号から成る。最も強い駆動を行うものとして、図
3に例示するように、2乃至3波長分連続したバ−スト
信号が最適である。
【0025】図2の(A)に示すような初期状態におい
て、診断対象の固体の表面上に接触静止し、駆動部11
に、リ−ド線14を介して、図3に例示したような波形
の駆動電圧が供給されると、駆動部11が急激に伸縮
し、診断対象の固体は駆動部11に押される。これによ
り、(B)に示すように、駆動部11によって診断対象
の固体は変形する。
【0026】その後、(C)に示すように、駆動部11
は、診断対象の固体からの強い反発力によって急速に上
昇し、次いで引張スプリング13の圧力により、図2の
(A)に示すような初期状態が復元される。駆動部11
が急速に診断対象の固体の表面から離れることにより、
これが固体内に励振された振動の負荷として作用するこ
とがなくなり、検査対象の固体内に負荷の影響を受けな
い自由振動が励振される。
【0027】このようにして検査対象の固体内に励振さ
れた振動は、受信部20に受信される。図4は、受信部
20の構成の一例を示す断面図であり、これは、電極層
に挟まれた圧電磁器21と、振動結合層22とから構成
される。圧電磁器21は、抽出される振動の最高周波数
である10kHz以上の共振周波数を有する厚み共振モ
−ドの構成が選択される。また、振動結合層22は、
油、水、軟質プラスチック、スライムなどの液体、固体
あるいは半固体状の層で構成される。固体内の振動は振
動結合体22を介して圧電磁器21に受信され、電気信
号に変換される。
【0028】このように、圧電磁器21が固体の表面に
じかに接触せず、軟質の振動結合層22を介在させてい
るので、この圧電磁器21と検査対象の固体の表面との
間の相対的な移動が可能になる。この実施例では、励振
部10と受信部20とが図示しない移動機構によって検
査対象のコンクリ−ト構造物などの固体の表面上を連動
して移動せしめられる。これにより、固体の異なる箇所
について振動特性が抽出される。
【0029】受信部20に受信され、電気信号に変換さ
れた振動波形は、信号処理部30に供給される。図5
は、信号処理部30の構成の一例を示す機能ブロック図
であり、これは、前段の増幅部31と、後段の濾波部3
2とから構成されている。前段の増幅部31では、制御
部60から供給される同期信号に同期して一定時間だけ
増幅機能が有効になる。この結果、励振部10による再
接触などによって後発的に発生することのある振動によ
る不要な信号の処理を排除する。
【0030】増幅部31は、圧電磁器21から出力され
る低周波の信号を忠実に増幅するために高い入力インピ
−ダンスが必要であり、通常、1MΩ、好適には10M
Ω以上の入力インピ−ダンスを有する。診断対象のコン
クリ−トなどの固体中の自由振動周波数は、通常10k
Hz以下であるため、濾波部32は10kHz以下の周
波数の信号のみを通過させる低域通過特性を有してい
る。また、この濾波部32は、50Hzのハムの混入を
阻止する機能も有している。
【0031】信号処理部30から供給される信号を処理
する信号分析部40は、図6に示すように、A/D変換
部41、信号記憶部42および、演算部43から成る。
A/D変換部41に供給されるアナログ信号は、100
kHz以下のサンプリング周波数でディジタル信号に変
換され、信号記憶部42に記憶される。このA/D変換
部41は、制御部60から供給される同期信号に同期し
て一定時間にわたるA/D変換処理を開始することによ
り、励振部10による再接触などによって後発的に発生
する振動による不要な信号のディジタル化を排除する。
演算部43は、信号記憶部42から読み出したディジタ
ル信号に対して、信号分析を行う。この信号分析にはフ
−リエ変換が使用される。
【0032】本発明者は、振動特性の分析の他の手法と
して、線形予測の手法が好適であることを見い出した。
この線形予測法は全極モデルであり、受信信号が各共振
モ−ドに分解される。この線形予測法は、コンクリ−ト
内の自由振動のような複数の固有振動の合成によって構
成される固体中の振動特性を分析し、その特徴を抽出す
るのに最適の分析手法である。
【0033】本発明者は、また、この線形予測分析の最
大次数は、コンクリ−トの診断においては、通常、20
0次程度で十分であることを見い出した。さらに、診断
対象の次数の推定は、赤池の情報規範(AIC)によっ
て自動判定され、通常のコンクリ−ト診断においては、
平均50程度であることも、本発明によって明らかにな
った。
【0034】線形予測法においては、過去の受信信号X
n−Mから現在の受信信号Xの予測値 が算定され
る。ここで、 =X+ε =an−1+an−2+・・・+an−M …(1) であり、εは予測誤差雑音である。
【0035】この関係は行列形式において、
【0036】(1)式の両辺にX行列を乗算することに
より、次式を得る。 となり、相関行列Rおよび相関ベクトルrに関する以下
の関係となる。
【0037】
【0038】(4)式を解くことにより、未知数である
予測係数aが求まる。このような線形予測を用いるス
ペクトル分析の処理の全体を図9に示す。図9に示した
入力信号Xを出力信号εに変換する処理の伝達関数
F(z)は、z変換により、 F(z)=1−(a−1+a−2+・・+a−M) …(5) として与えられる。ここで、出力εは予測誤差雑音で
あり、一様分布スペクトルであるため、この伝達特性F
(z)は入力信号Xの周波数特性の逆特性となってい
る。
【0039】従って入力信号Xの周波数特性X(z)
は、 X(z) =1/F(z) =1/〔1−(a−1+a−2+・・・+a−M)〕 …(6) として与えられる。
【0040】このように、線形予測法を使用すると、受
信信号の周波数特性X(z)が得られるが、この関数の
分母の根を算定することにより、さらに、各固有振動数
の周波数とその共振時のQ値を得ることができる。X
(z)の分母を0とする方程式の根をbとすると、 X(z) =1/〔(1−b−1)(1−b −1)(1−b−1)(1−b −1) ・・・(1−bM/2−1)(1−bM/2 −1)〕 …(7) であり、それぞれの根がそれぞれの共振点に対応する。
【0041】このb=zなる関係からそれぞれの固有
振動数の周波数とその共振におけるQ値が算定される。
これらの値は、固体中の状況に直接対応した値であり、
固体対象物の良否判定における最も有用な指数である。
このような共振分析処理も、信号分析部40内の演算部
43で行われる。
【0042】図1の制御部60は、図8に例示するよう
に、制御信号発生部61および位置計測部62から構成
されている。制御信号発生部61は、図1の励振部1
0、信号分析部40の同期動作を制御する制御信号を発
生し、励振部10と信号分析部40に供給する。位置制
御部62は、励振部10の位置を制御するための制御信
号を励振部10に供給する。
【0043】図7は、診断出力部50の構成を示すブロ
ック図である。この診断出力部50は、判定部51、判
定条件設定部52、画像出力部53、音声出力部54お
よび位置表示部55を備えている。判定部51では、前
段の信号分析部40から供給される信号分析結果と、判
定条件設定部52で設定中の設定内容とを比較すること
によって良否の判定を行う。この判定は、制御部60か
らの制御信号に同期して行われる。
【0044】この判定部51の判定結果は、画像出力部
53や、音声出力部54から出力される。また、判定部
51は、この良否の判定結果と制御部60から受けた励
振部10の位置の情報と、固体対象物の構造図面とを位
置表示部55に重畳させて表示する。
【0045】図10は、大きさ30cm×30cm、厚
さ5cm、のコンクリ−ト板を診断対象物として選択
し、この実施例の構成により、計測期間中は励振部が固
体表面から離れるようにして励振し、この励振に同期し
て信号を受信した場合の波形(A)と、励振部10の構
成を変更することにより圧迫部11Bが再度コンクリ−
ト板に接触するように励振すると共に、制御部から供給
される同期信号から所定時間経過した後も信号処理部3
0や信号分析部40を機能させた場合の信号波形(B)
とを例示している。
【0046】図10(A)の波形をFFT(高速フ−リ
エ変換)した場合の、周波数スペクトルは図11(A)
に示すようになり、特徴的な鋭いスペクトルが明瞭に観
察される。一方、図10(B)の波形をFFTした場合
の周波数スペクトルは図11(B)に示すようになり、
対象の特徴を明瞭には示さない複雑なスペクトルとな
る。このことから、本発明の構成によって、計測期間中
は励振部が固体の表面から離れるように自由振動励振
し、この励振に同期して自由振動を受信することによ
り、対象の固体の特徴抽出が行われることになる。
【0047】図11の(A)に示すような信号分析によ
って抽出された特徴的なスペクトルが、良品と不良品の
双方について、判定条件設定部52を通して判定部51
に登録される。判定部51は、診断対象から線形予測法
に従って抽出されたスペクトルを登録中のスペクトルと
比較し、これが登録中の良品のスペクトルと類似してい
れば、良品の判定結果を出力し、これが登録中の不良品
のそれと類似していれば不良品の判定結果を出力する。
【0048】以上、FFTを適用する構成による結果を
例示した。しかしながら、このFFTは、線形予測法あ
るいはこれと類似する最大エントロピ−法、ARMA
法、パ−コ−ル分析法など他の手法により代用すること
も当然可能である。
【0049】また、受信した振動の特性を分析し、良否
の診断結果を出力する構成を例示した。しかしながら、
周波数スペクトルなど振動の特性の分析結果をそのまま
表示装置などに出力し、この表示デ−タを検査作業者が
目視によって検査することにより良否を診断するという
構成を採用することもできる。
【0050】図15は、励振部10の他の実施例を説明
する構成図である。11は駆動部、110は平衡用重
り、112は、平衡用部材、113は平衡用支点、11
4は押圧用バネ、115は支持構造体、116は移動用
車輪である。図15(A)は初期状態を示す図である。
この実施例において、駆動部11は平衡用重り110と
ほぼ平衡が取られており、自重が打ち消された状態とな
っている。このため、駆動部11と検査対象の固体表面
とは押圧用バネ114により規定される小さな圧力で接
触させられている。
【0051】図15(B)は、駆動部11に図3に例示
する波形の駆動電圧を供給した際の励振部10の動作を
示す図である。駆動部11が急激に伸縮し、検査対象の
固体表面は、駆動部11に押され変形する。この時、平
衡用重り110は、平衡用支点113を支点として駆動
部11の伸長分と平衡が取れるように移動する。
【0052】その後図15(C)に示すように、駆動部
11は検査対象の固体からの強い反発力により急速に上
昇する。次いで、押圧用バネ114の圧力により図15
(A)の初期状態に戻る。図2で説明したように駆動部
11が急速に検査対象の固体から離れることにより、駆
動部11は、検査対象の固体内に励振された振動の負荷
として働くことがない。
【0053】上述のように、駆動部11は平衡用重り1
10とほぼ平衡が取られており、駆動部11の自重が打
ち消された状態となっている。このため、トンネルの天
井や、垂直な壁などどのような方向の検査対象物におい
ても、検査対象物の表面から駆動部11が駆動開始時に
離れていることがない。
【0054】図16は、励振部10のさらに他の実施例
を説明する構成図である。11は駆動部、114は押圧
用バネ、120は液体保持枠、130は平衡用液体であ
る。ここで、駆動部11と平衡用液体130とはほぼ同
じ比重とされる。これにより、駆動部11は、平衡用液
体130の浮力により自重がほぼ打ち消され、駆動部1
1と検査対象の固体表面とは押圧用バネ114により規
定される小さな圧力で接触させられている。この実施例
においては、駆動部11の動作は、図2で説明いたもの
と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、図
15で説明したと同様に、駆動部11の自重が打ち消さ
れた状態となっている。このため、トンネルの天井や、
垂直な壁などどのような方向の検査対象物においても、
検査対象物の表面から駆動部11が駆動開始時に離れて
いることがない。
【0055】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明に係
わる固体内部の振動検査装置は、制御部によって励振部
と受信部とを同期動作させることにより、再接触によっ
て発生する不要な信号を排除する構成であるから検査精
度が向上するという効果が奏される。
【0056】また、本発明の振動検査装置は、積層圧電
体などの圧電体や磁歪体の伸縮を利用して検査対象の固
体表面上に接触静止させ、圧迫することによりその内部
に自由振動を励振する構成であるから、従来のエアシリ
ンダ−などを使用する低速の打撃手段を用いて励振する
場合に比べて、励振機構に影響されない高確度の診断が
可能となるという利点がある。
【0057】また、本発明の好適な実施の形態によれ
ば、予め抽出された登録された良品と不良品の振動の特
性と比較することなどによって良否の判定結果が出力さ
れる構成であるから、作業者の熟練を要することなく、
客観的な判定が可能になるという利点がある。
【0058】また、本発明の他の好適な実施の形態によ
れば、検査部は、受信部が受信した振動を線形予測法な
どを利用して分析し検査結果として出力する構成である
から、共振周波数と共振のQ値とを簡単に算定できると
いう線形予測法の特徴を活かすことができるという利点
がある。
【0059】また、本発明における固体内部の振動検査
装置の励振部と固体表面との接触部は、鋼材等の検査対
象物より硬い材質でできている。この接触部の構成は、
球面状、前記励振部中の駆動部材部より広い面積を有し
た平面状または、前記駆動部材部より狭い面を有するも
のとなっている。このような接触部を構成することによ
り、励振部と接触する角度が大きい場合、固体表面が粗
い場合または、固体表面の微小面積を励振することで微
小な異常部の診断を行う場合における検査精度の向上を
図ることができる。
【0060】さらに、駆動部の自重を打ち消す構造を採
用することにより、トンネルの天井や、垂直な壁などど
のような方向の検査対象物においても、検査対象物の表
面から駆動部が駆動開始時に離れていることがない。こ
のため、本発明の装置をどのような姿勢にしても正確な
検査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係わる固体内部の振動検査
装置の構成を診断対象の固体と共に示す機能ブロック図
である。
【図2】図1の励振部の構成の一例を示す断面図であ
る。
【図3】図1の励振部に供給する駆動電圧波形の一例を
示す波形図である。
【図4】図1の受信部の構成の一例を示す機能ブロック
図である。
【図5】図1の信号処理部の構成の一例を示す機能ブロ
ック図である。
【図6】図1の信号分析部の構成の一例を示す機能ブロ
ック図である。
【図7】図1の診断出力部の構成の一例を示す機能ブロ
ック図である。
【図8】図1の制御部の構成の一例を示す機能ブロック
図である。
【図9】図1の信号分析部が行う線形予測法に基づく信
号処理を回路によって表現した図である。
【図10】図1の励振部によって励振した振動波形の一
例を示す波形図である。
【図11】図1の波形をFFTして得た周波数スペクト
ルである。
【図12】図1の励振部における駆動部の詳細の一例を
示す断面図である。
【図13】図1の励振部における駆動部の詳細の一例を
示す断面図である。
【図14】図1の励振部における駆動部の詳細の一例を
示す断面図である。
【図15】励振部の自重を平衡させる実施例の構成図
【図16】励振部の自重を平衡させる他の実施例の構成
【符号の説明】
10 励振部 11 駆動部 11A 駆動部材部 11B 圧迫部 12 駆動部保持キャップ 13 引張スプリング 14 リ−ド線 20 受信部 21 圧電磁器 22 振動結合層 30 信号処理部 31 増幅部 32 濾波部 40 信号分析部 41 A/D変換部 42 信号記憶部 43 演算部 50 診断出力部 51 判定部 52 判定条件設定部 53 画像出力部 54 音声出力部 55 位置表示部 60 制御部 61 制御信号発生部 62 位置制御部 70 検査部 110 平衡用重り 112 平衡用部材 113 平衡用支点 114 押圧用バネ 115 支持構造体 116 移動用車輪 120 液体保持枠 130 平衡用液体

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 検査対象の固体中に振動を発生させる励
    振部と、この固体中の振動を受信して電気信号に変換す
    る受信部と、この受信部が受信した振動の特性を分析
    し、検査結果として出力する検査部と、前記各部を制御
    する制御部とを備え、 前記制御部は、前記励振部による励振の時点と前記受信
    部による振動の受信の期間とを同期させる手段を備えた
    ことを特徴とする固体内部の振動検査装置。
  2. 【請求項2】 検査対象の固体中に振動を発生させる励
    振部と、この固体中の振動を受信して電気信号に変換す
    る受信部と、この受信部が受信した振動の特性を分析
    し、検査結果として出力する検査部と、前記各部を制御
    する制御部とを備え、 前記励振部は、圧電体又は磁歪体の伸縮を利用して前記
    固体表面に接触した状態から前記固体表面を圧迫し、そ
    の内部に自由振動を励振する手段を備えたことを特徴と
    する固体内部の振動検査装置。
  3. 【請求項3】 請求項2において、 前記励振部は、前記圧電体または磁歪体のそれぞれの共
    振周波数の交流電力で励振して伸縮させる手段を備えた
    ことを特徴とする固体内部の振動検査装置。
  4. 【請求項4】 請求項1乃至3のそれぞれにおいて、 前記励振部は、鋼材等により、前記固体と接触している
    ことを特徴とする固体内部の振動検査装置。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4のそれぞれにおいて、 前記検査部は、前記受信部が受信した振動を線形予測法
    によって分析し、共振周波数と共振のQ値とに基づいて
    振動特性を検査する手段を備えたことを特徴とする固体
    内部の振動検査装置。
  6. 【請求項6】 請求項1乃至5のそれぞれにおいて、 前記検査結果は、良品又は不良品のうちの少なくとも一
    つを含む診断結果として出力されることを特徴とする固
    体内部の振動検査装置。
  7. 【請求項7】 請求項1乃至6のそれぞれにおいて、 前記検査は、予め抽出され登録された良品と不良品の振
    動の特性と前記検査部が分析した振動の特性とを比較す
    ることによって行われることを特徴とする固体内部の振
    動検査装置。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至6のそれぞれにおいて、 前記励振部と前記受信部の前記固体上の位置を制御する
    手段と、これらの位置を検出する手段を更に備えたこと
    を特徴とする固体内部の振動検査装置。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至8のそれぞれにおいて、 前記受信部は液体、固体または半固体状の層を介在させ
    ながら前記検査対象の固体の表面に接触せしめられたこ
    とを特徴とする固体内部の振動検査装置。
  10. 【請求項10】 請求項1乃至9のそれぞれにおいて、 前記励振部の前記固体表面との接触部が、前記励振部中
    の駆動部材部より広い面積を有した平面状に構成される
    ことを特徴とする固体内部の振動検査装置。
  11. 【請求項11】 請求項1乃至9のそれぞれにおいて、 前記励振部の前記固体表面との接触部が、球面状に構成
    されることを特徴とする固体内部の振動検査装置。
  12. 【請求項12】 請求項1乃至9のそれぞれにおいて、 前記励振部の前記固体表面との接触部が、前記励振部の
    中の駆動部材部より狭い面を有することを特徴とする固
    体内部の振動検査装置。
  13. 【請求項13】 請求項1乃至12のそれぞれにおい
    て、 前記励振部は、自重を平衡させる構成とされることを特
    徴とする固体内部の振動検査装置。
  14. 【請求項14】 請求項13において、 前記励振部は、1個の支点により自重を平衡させる構成
    とされることを特徴とする固体内部の振動検査装置。
  15. 【請求項15】 請求項13において、 前記励振部は、液体の浮力により自重を平衡させる構成
    とされることを特徴とする固体内部の振動検査装置。
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