JP2003305754A - プラスチック成形品及び該プラスチック成形品の成形用金型 - Google Patents

プラスチック成形品及び該プラスチック成形品の成形用金型

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高精度な形状寸法で、且つ、内部歪みが非常
に小さいプラスチック成形品を提供する。 【解決手段】 少なくとも1つ以上の転写面6aを有す
るキャビティ11に溶融樹脂を射出充填してキャビティ
11内に樹脂圧力を発生させ、前記転写面6aを樹脂に
転写させて被転写面2aを形成させ、しかる後、キャビ
ティ11から被転写面2aの形成されたプラスチック成
形品1を取り出すことにより製造されるプラスチック成
形品において、該プラスチック成形品1がリブ3を有
し、且つ、リブ3と転写面2aとの境界に少なくとも1
つ以上の凸形状部4を備える。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高精度な転写面
(光学鏡面)を必要とする厚肉、偏肉形状のプラスチッ
クレンズ等のプラスチック光学素子、とりわけレーザ方
式のデジタル複写機、レーザプリンター、又はファクシ
ミリ装置の光学走査系、ビデオカメラ等の光学機器等に
適用されるプラスチック光学素子に適用されるプラスチ
ック成形品及び該プラスチック成形品の成形用金型に関
する。
【0002】
【従来の技術】レンズ、プリズム等の光学素子は、表面
形状精度や内部の複屈折に高い精度が要求されるため、
従来はガラス製のものが主であった。しかし、近年、形
状の自由度や量産性に優れているなどの理由によりプラ
スチック製のものが増加してきている。この理由として
は、低い複屈折特性の樹脂材料が開発されたことと、形
状精度が良く低複屈折の成形品を製造可能にする成形技
術の向上によるものである。従来、光学部品に用いられ
る樹脂材料としては、ポリカーボネートやアクリルが主
であったが、ポリカーボネートは複屈折が大きく、一
方、アクリルは吸水性に問題があるなどの理由から、使
用範囲は限られていた。しかし近年、低吸水性でかつ低
い複屈折特性の樹脂材料が開発され、使用範囲が拡大さ
れた。このような樹脂材料としては例えば、日本ゼオン
社製Zeonex、三井石油化学製APEL、JSR社
製アートンなどがある。また、成形技術としても、樹脂
を低圧で充填し、金型全体もしくは入駒を介して圧縮を
加える射出圧縮成形法などを用いることで、形状精度が
良く、低複屈折のプラスチック成形品が得られるように
なった。以上のような理由から光学素子のプラスチック
化が一層促進される傾向にある。さらに、高精度なプラ
スチック成形品形状にはリブ構造が多く採用されてお
り、リブ構造は、プラスチック成形品強度の向上、プラ
スチック成形品の取り扱い性の向上などの利点を提供す
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一般に、高精度な形状
寸法及び低複屈折を要求されるプラスチック成形品を射
出成形によって製造する場合、転写性と内部の均質性を
確保するために、高い温度(具体的には、使用樹脂材料
が熱可塑性のプラスチック樹脂である場合、ガラス転移
温度よりもわずかに低い温度)に保たれた金型に、低圧
低充填で成形を行う。しかし、金型温度が高いと、レン
ズ面(転写面)の密着力が大きくなり、プラスチック成
形品を取り出す際に、型開き時の「とられ」によるプラ
スチック成形品の変形が問題となる。また、低圧で成形
を行うと、成形時にヒケが発生する。斯かる低圧成形の
欠点を改善する方法として、特開平11−028745
号公報に開示されているように、低圧低充填で成形を行
い、非転写面にひけを誘導し、内部歪みを低減しながら
転写面の形状精度を確保する方法が提案されている。と
ころが、低圧低充填で成形を行うと、型開き前にキャビ
ティ内の樹脂圧力が0になり、非転写面にひけを誘導し
ても、尚、転写面のリブ沿いにひけが発生して高精度な
プラスチック成形品が得られないという問題がある。ま
た、エジェクトピンのクリアランスから空気がもれ、同
様に転写面のリブ沿いにひけが発生するなどの問題があ
る。本発明は、前述の問題点を解決し、高精度な形状寸
法で、且つ、内部歪みが非常に小さいプラスチック成形
品及び該プラスチック成形品の成形用金型を提供するこ
とを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記問題点を解決するた
めに、請求項1に記載の発明は、少なくとも1つ以上の
転写面を有するキャビティに溶融樹脂を射出充填してキ
ャビティ内に樹脂圧力を発生させ、前記被転写面を樹脂
に転写させて転写面を形成させ、しかる後、キャビティ
からプラスチック成形品を取り出すことにより製造され
るプラスチック成形品において、該プラスチック成形品
がリブ構造を有し、且つ、リブと前記転写面との境界に
少なくとも1つ以上の凸形状部を有するプラスチック成
形品を最も主要な特徴とする。リブ及び凸形状部の存在
により、ひけ等の変形が転写面に形成されないこととな
る。また、凸形状部の存在により、離型時に、可動側キ
ャビティ駒にプラスチック成形品が密着した状態で型開
きされるので、成形品のとられを防止できる。請求項2
に記載の発明は、前記凸形状部が前記転写面を取り囲む
ように形成されるているプラスチック成形品を主要な特
徴とする。光学面を包囲するように凸形状部が設けられ
ているので、金型側のエジェクタピンのクリアランスか
ら空気が漏れず、光学面のリブに沿ってひけが発生する
ことを防止できる。請求項3の発明は、前記プラスチッ
ク成形品に設けたリブのうち、金型可動側に限り、前記
凸形状部を有するプラスチック成形品を主要な特徴とす
る。離型時に、金型可動側に成形品が付着して型開きさ
れるので、成形品のとられが防止される。
【0005】請求項4に記載の発明は、前記凸形状部
が、成形時に金型から離型される方向に抜き勾配を持た
ないことをプラスチック成形品を主要な特徴とする。離
型性を通常レベルに保持する場合には、抜き勾配をもた
せる必要は少ない。請求項5に記載の発明は、前記凸形
状部が、成形時に金型から離型される方向の少なくとも
1つ以上の面に抜き勾配を持つプラスチック成形品を主
要な特徴とする。離型性を高めたい場合には、抜き勾配
を持たせればよい。請求項6に記載の発明は、前記凸形
状部が、離型時の突き出し位置より前記転写面側にある
プラスチック成形品を主要な特徴とする。このため、突
き出し用のエジェクタピンの摺動用クリアランスから空
気がもれず、リブ沿いにひけが発生するのを防止でき
る。請求項7に記載の発明は、型開き前に、前記キャビ
ティ内の樹脂圧力が0になるように成形されるプラスチ
ック成形品を主要な特徴とする。このため、内部歪みの
小さいプラスチック成形品を得ることができる。請求項
8に記載の発明においては、前記プラスチック成形品
は、少なくとも1つ以上の転写面以外の非転写面に金型
形状の不完全転写により発生する凹部を有するプラスチ
ック成形品を主要な特徴とする。転写面以外の非転写面
にひけとなる凹部を誘導するように成形を行うので、光
学面等の転写面にひけが生じるのを防止でき、所望の光
学面を短い成形サイクルにて忠実に転写できる。請求項
9に記載の発明は、前記凸形状部を形成するキャビティ
駒と前記転写面を形成するキャビティ駒が一体で構成さ
れているプラスチック成形品の成形用金型を主要な特徴
とする。凸形状部を形成するキャビティ駒と光学面を形
成するキャビティ駒が一体で構成されたキャビティ駒を
備えた金型を用いることにより、エジェクタピンのクリ
アランスから空気がもれず、光学面のリブに沿いひけが
発生するのを防止でき、高精度な走査レンズを製造でき
る。この効果は、本実施例のように、請求項1〜8に記
載のプラスチック成形品によれば、良好な転写面を有し
た高精度な形状寸法であり、且つ、内部歪みが非常に小
さいという優れた効果を奏し得ることかでき、また本発
明のプラスチック成形品の製造方法によれば、良好な転
写面を有した高精度な形状寸法であり、且つ、内部歪み
が非常に小さいプラスチック成形品を容易且つ確実に成
形することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図示
例と共に説明する。図1〜図3は本発明の実施の形態の
第一例であり、図1はプラスチック成形品がレーザプリ
ンターに用いられる走査レンズである場合の概略斜視
図、図2は走査レンズのレンズ高さ0における概略断面
図、図3は図1、2に示す走査レンズの成形に用いる成
形用金型の概略断面図である。図中、1は走査レンズ
で、図の上面には凸状の転写面である光学面2aが、ま
た、下面には同じく転写面である光学面2bが形成され
ている。図2で明らかなように、走査レンズ1は光学面
2aの外周を包囲するように、その外周縁に沿って屹立
したリブ3を有し、且つ、リブ3と光学面2aとの境界
に凸形状部4を有している。また、使用する材質は例え
ば日本ゼオン社製のZeonex樹脂である。而して、
走査レンズ1は、レーザプリンターに組み込まれて使用
される場合には、下面から上面に向かってレーザビーム
が透過するようになっている。図3に示すように、成形
用金型5は、凹状で鏡面状の被転写面6a及び被転写面
6aの両側に形成されたリブ形成部6b並びにリブ形成
部6bの上端に形成された凸形状部形成部6cを備えた
可動側のキャビティ駒6と、キャビティ駒6の成形面に
対し間隔をおいて対向配置され、且つ、凸状の鏡面状の
被転写面7aが形成された固定側のキャビティ駒7と、
キャビティ駒6の左右両側(外周)に配置された、成形
品である走査レンズの可動側リブ形状を形成するキャビ
ティ駒8と、走査レンズ側面(非光学面)を形成する左
右一対のキャビティ駒9と、キャビティ駒7の左右両側
に配置されたキャビティ駒10とを備え、キャビティ駒
6〜10により包囲された空間によりキャビティ11が
形成されている。また、成形用金型5は、キャビティ駒
6とキャビティ駒8との間に配置されたエジェクタピン
12、キャビティ11内と連通するようキャビティ駒9
に穿設された通気口13、通気口13に接続されてキャ
ビティ11内の成形品に圧縮気体を付与する図示しない
気体供給装置を有している。さらに、図示してない金型
ベースには、金型全体を加熱するために、カートリッジ
ヒーターと熱電対とを具備し、カートリッジヒーターと
熱電対は、金型外部に設置された温度制御装置に連結さ
れている。
【0007】次に本発明の実施の形態の第一例において
成形用金型からプラスチック成形品として走査レンズ1
を成形する場合の手順について説明する。前記成形用金
型を図示しない射出成形機にセットし、プラスチック成
形品として走査レンズ1の成形を行う。而して、成形に
際しては溶融樹脂と接するキャビティ11の内側壁は使
用する樹脂材料のガラス転移温度以下の所定温度になる
ようにカートリッジヒーターで加熱しておき、キャビテ
ィ11内に溶融樹脂を充填する。そして、キャビティ1
1内に樹脂圧力を発生させ、各キャビティ駒6、7の被
転写面6a、7aの形状を、光学面2a、2bとして樹
脂材料に転写させる。この際、樹脂冷却過程時の収縮に
伴うひけが光学面2a、2bに発生しないように、通気
口13から所定圧力の圧縮気体をキャビテイ11内に付
与し、キャビテイ11内の樹脂と前記通気口13が設け
られたキャビティ駒9との間に強制的に空隙を形成し、
ひけをキャビティ駒9と接する面に誘導する。次いで、
可動側のキャビティ駒6を外方へ移動させることにより
金型を開き、エジェクタピン12により溶融樹脂が固化
して形成されたプラスチック成形品をキャビティ11か
ら突き出して金型から取り出し、取り出されたプラスチ
ック成形品は室温に放置して自然冷却させる。
【0008】本図示例では、溶融樹脂をガラス転移温度
以下まで冷却するときに、通気口13から所定圧力の圧
縮気体をキャビティ11内に供給することにより、前記
通気口13が設けられたキャビティ駒9と樹脂との間に
強制的に空隙を形成したため、冷却によって生じる樹脂
の収縮を吸収し、非光学面(転写面以外の面)であるキ
ャビティ駒9と接する面にひけ(凹部)を誘導でき、そ
の結果、光学面2a、2bにひけが生じるのを防止する
ことができ、所望の光学面2a、2bを短い成形サイク
ルで忠実に転写することができる。また、冷却時の光学
面に作用する樹脂内圧を大気圧に近づける(金型を開く
前にキャビティ内の樹脂圧力が0になるように成形す
る)ことができるため、内部歪みの小さいプラスチック
成形品を得ることができる。なお、金型温度を樹脂のガ
ラス転移温度以下にしているのは、プラスチック成形品
の取り出し時にプラスチック成形品が変形するのを防止
するためである。ここで、成形用金型からのプラスチッ
ク成形品の取り出しについて説明する。本図示例では、
金型から離型される方向に抜き勾配を持たない凸形状部
4を有するリブ3が、可動側のキャビティ駒6側に限っ
て設けられているため、型開き時に、プラスチック成形
品は可動側のキャビティ駒6側にのみ、凸形状部4に起
因して転写面の密着力以外の力を受ける。そのため、プ
ラスチック成形品は可動側のキャビティ駒6に密着した
状態で、型開きされ、その結果、プラスチック成形品の
とられを防止することができる。仮に、とられがあると
走査レンズ1のような長尺のプラスチック成形品には、
反りが発生し、形状寸法精度が悪くなる。
【0009】また、本図示例では、凸形状部4が、プラ
スチック成形品離型時の突き出し位置であるエジェクタ
ピン12より転写面側になるべく、図4の概略断面図に
示すように、突き出し位置14を走査レンズ1のレンズ
高さ0における太線位置イに設けてある。さらに、凸形
状部4は図2に示すように、光学面2aを取り囲むよう
に形成されているため、図3に示すエジェクタピン12
のクリアランスから空気がもれず、光学面2aのリブ3
に沿いひけが発生するのを防止でき、高精度な走査レン
ズ1を製造できる。この効果は、本実施例のように、凸
形状部4を形成するキャビティ駒6と光学面2aを形成
するキャビティ駒6が一体で構成されたキャビティ駒を
備えた金型を用いることにより達成できる。また、離型
性を向上させたい場合には、凸形状部4を金型から離型
される方向の少なくとも一つ以上の面に抜き勾配を持た
せることで達成できる。当然、本図示例のプラスチック
成形品は、図1、2に示す走査レンズ1だけに限るもの
ではなく、プリズム、カメラレンズ15(図5、6参
照)等、種々な形状及び用途のプラスチック光学素子、
厚肉で偏肉な形状及び用途のハウジング等のプラスチッ
ク成形品にも適用可能である。また、転写面形状も、平
面、曲面、球面、非球面等、あらゆる形状を選択可能で
ある。また、本発明は、射出成形法のほか、樹脂を低圧
で充填し、金型全体もしくは入駒を介して圧縮を加える
射出圧縮成形法などを用いることも可能である。
【0010】図7〜図9は本発明の実施の形態の第二例
で、図7は図1と同様、プラスチック成形品が走査レン
ズである場合の概略斜視図、図8は走査レンズのレンズ
高さ0における概略断面図、図9は図7、8に示す走査
レンズの成形に用いる成形用金型の概略断面図である。
図1の場合と同様、図7中、1は走査レンズで、図の上
面には凸状の光学面2aが、また、下面には光学面2b
が形成されている。走査レンズ1は光学面2aを包囲す
るようリブ3を有し、且つ、リブ3と光学面2aとの境
界に凸形状部4を有している。また、走査レンズ1の非
転写面である側面に形成された凹部16には、意図的に
ひけ(金型形状の不完全転写により発生する凹部)が誘
導されている。凹部16は走査レンズ1に対する光学的
な有効範囲に及んではおらず、走査レンズ1の性能に何
等不都合を与えるものではない。走査レンズ1の材質
は、例えばJSR社製アートン樹脂である。而して、走
査レンズ1は、レーザプリンターに組み込まれて使用さ
れる場合には、下面から上面に向かってレーザビームが
透過するようになっている
【0011】図9の金型断面図に示すように、成形用金
型5は、凹状の被転写面6a及び被転写面6aの両側に
形成されたリブ形成部6b並びにリブ形成部6bの上端
に形成された凸形状部形成部6cを備えた可動側のキャ
ビティ駒6と、キャビティ駒6の成形面に対し間隔をお
いて対向配置され、且つ、凸状の被転写面7aが形成さ
れた固定側のキャビティ駒7と、キャビティ駒6の左右
両側(外周)に配置された、成形品である走査レンズの
可動側リブ形状を形成するキャビティ駒8と、走査レン
ズ側面(非光学面)を形成する左右に摺動可能な一対の
キャビティ駒17と、キャビティ駒7の左右両側に配置
されたキャビティ駒10とを備え、キャビティ駒6〜
9、17により包囲された空間によりキャビティ11が
形成されている。また、成形用金型5は、キャビティ駒
6とキャビティ駒8との間に配置されたエジェクタピン
12、キャビティ駒17に連結させてキャビティ駒17
を左右に摺動させるための駆動装置を備えている。さら
に、図示してない金型ベースには、金型全体を加熱する
ために、カートリッジヒーターと熱電対とを具備し、カ
ートリッジヒーターと熱電対は、金型外部に設置された
温度制御装置に連結されている。
【0012】次に本発明の実施の形態の第二例において
成形用金型からプラスチック成形品として走査レンズ1
を成形する場合の手順について説明する。前記成形用金
型を図示しない射出成形機にセットし、プラスチック成
形品として走査レンズ1の成形を行う。而して、成形に
際しては溶融樹脂と接するキャビティ11の内側壁は使
用する樹脂材料のガラス転移温度以下の所定温度になる
ようにカートリッジヒーターで加熱しておき、キャビテ
ィ11内に溶融樹脂を充填する。この際、樹脂冷却過程
時の収縮に伴うひけが光学面に発生しないように、キャ
ビティ11内の樹脂圧力が0になったところで、樹脂レ
ンズ側面(非光学面)を形成する摺動自在に設けられた
一対のキャビティ駒17を樹脂から離隔するように摺動
させ、樹脂とキャビティ駒17の間に強制的に空隙を形
成し、ひけをキャビティ駒17と接する面に誘導する。
次いで、金型を開き、エジェクタピン12によりプラス
チック成形品を突き出し、固化した走査レンズ1を金型
から取り出し、室温に放置して自然冷却する。
【0013】本図示例では、溶融樹脂をガラス転移温度
以下まで冷却するときに、一対のキャビティ駒17を樹
脂から離隔するように摺動させることにより、キャビテ
ィ駒17と樹脂との間に強制的に空隙を形成したため、
冷却によって生じる収縮を吸収し、非光学面(転写面以
外の面)であるキャビティ駒17と接する面にひけ(凹
部16)を誘導でき、その結果、光学面2a、2bにひ
けが生じるのを防止することができ、所望の光学面2
a、2bを短い成形サイクルで忠実に転写することがで
きる。また、冷却時の光学面に作用する樹脂内圧を大気
圧に近づける(金型を開く前に、キャビティ内の樹脂圧
力が0になるように成形する)ことができるため、内部
歪みの小さいプラスチック成形品を得ることができる。
【0014】次に上述の第一、第二の実施の形態例(実
施例1、2)との比較例について説明する。図10は本
発明の実施例と比較する比較例として成形したレーザプ
リンターに用いられる走査レンズのレンズ高さ0におけ
る概略断面図である。図10の走査レンズ1は、図1、
図8に示す走査レンズ1と同様、凸状の光学面2a、凹
状の光学面2b、光学面2aの左右に設けられたリブ3
は備えているが、リブ3に突設されるよう形成された凸
形状部4を備えていない点で前記形態例と相違してい
る。また、比較例の走査レンズ1の材質は日本ゼオン社
製のZeonex樹脂である。図11に示すように比較
例に示す走査レンズ1を成形するための成形用金型5
は、凹状の転写面6a及びリブ形成部6bが形成された
可動側のキャビティ駒6と、キャビティ駒6に対し間隔
をおいて対向配置され、且つ、凸状の被転写面7aが形
成された固定側のキャビティ駒7と、キャビティ駒6の
左右両側に配置された、成形品である走査レンズの可動
側リブ形状を形成するキャビティ駒8と、走査レンズ側
面(非光学面)を形成する左右一対のキャビティ駒9
と、キャビティ駒7の左右両側に配置されたキャビティ
駒10とを備え、駒6〜10により包囲された空間によ
りキャビティ11が形成されている。また、成形用金型
5は、キャビティ駒6とキャビティ駒8との間に配置さ
れたエジェクタピン12、キャビティ11内と連通する
ようキャビティ駒9に穿設された通気口13、通気口1
3に接続されてキャビティ11内の成形品に圧縮気体を
付与する図示しない気体供給装置を有している。さら
に、図示してない金型ベースには、金型全体を加熱する
ために、カートリッジヒーターと熱電対とを具備し、カ
ートリッジヒーターと熱電対は、金型外部に設置された
温度制御装置に連結されている。なお比較例の成形用金
型により走査レンズ1を成形する際の手順は第一の実施
の形態例と同様であるため、成形の手順の説明は省略す
る。
【0015】上記、実施例1、2及び比較例により成形
された走査レンズ1を触針式3次元測定機により形状測
定し、入射側の光学面2a面及び出射側の光学面2bの
主走査R1、R2と走査レンズ1の設計値とのずれ量を
評価した。[表1]に走査レンズ1の形状を測定した結果
を示す。
【表1】 [表1]から、実施例1及び2と比べて、比較例の走査レ
ンズ1では、入射側の光学面2aの主走査R1が大きく
なる方向、出射側の光学面2bの主走査R2が小さくな
る方向に変形していることが分る。このことによって、
金型を開くときのとられにより、走査レンズ1の長手方
向に図12に矢印で示す方向の反り18が発生し、その
結果、形状寸法精度が劣化していると確認された。ま
た、比較例の走査レンズ1では、転写面6aのリブ3に
沿ってひけが発生していた。原因としては、図13のエ
ジェクタピン12近傍の拡大概略図に示すように、点線
矢印19の方向からエジェクタピン12のクリアランス
20を介して、空気がもれためであった。本発明の図示
例により成形されたプラスチック成形品は、良好な転写
面を有した高精度な形状寸法であり、且つ、内部歪みが
非常に小さい。尚、本発明のプラスチック成形品及び該
プラスチック成形品の製造方法は、上述の図示例にのみ
限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範
囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0016】
【発明の効果】以上、説明したように本発明の請求項1
〜8に記載のプラスチック成形品によれば、良好な転写
面を有した高精度な形状寸法であり、且つ、内部歪みが
非常に小さいという優れた効果を奏することができ、ま
た本発明の請求項9のプラスチック成形品の成形用金型
によれば、良好な転写面を有した高精度な形状寸法であ
り、且つ、内部歪みが非常に小さいプラスチック成形品
を容易且つ確実に成形する、という優れた効果を奏し得
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプラスチック成形品の実施の形態の一
例で、プラスチック成形品がレーザプリンターに用いら
れる走査レンズである場合の概略斜視図である。
【図2】図1に示す走査レンズのレンズ高さ0における
概略断面図である。
【図3】図1、2に示す走査レンズの成形に用いるプラ
スチック成形品の成形用金型の一例を示す概略断面図で
ある。
【図4】図2に示す走査レンズのレンズ高さ0における
位置に示す凸形状部を説明するための概略断面図であ
る。
【図5】プラスチック成形品がカメラレンズである場合
の斜視図である。
【図6】図5の概略縦断面図である。
【図7】本発明のプラスチック成形品の実施の形態の他
の例で、プラスチック成形品がレーザプリンターに用い
られる走査レンズである場合の概略斜視図である。
【図8】走査レンズのレンズ高さ0における概略断面図
である。
【図9】図7、8に示す走査レンズの成形に用いるプラ
スチック成形品の成形用金型の一例を示す概略断面図で
ある。
【図10】実施の形態の第一例、第二例に示す走査レン
ズと比較するための比較例として用いた走査レンズの概
略断面図である。
【図11】比較例に示す走査レンズ1を成形するための
成形用金型の一例を示す概略断面図である。
【図12】比較例に示す走査レンズが反ることを説明す
るための斜視図である。
【図13】比較例の示す走査レンズのリブに沿ってひけ
が生じる原因を説明するための可動側のキャビティ駒の
概略断面図である。
【符号の説明】
1 走査レンズ(プラスチック成形品) 2a 光学面(転写面) 3 リブ 4 凸形状部 6 キャビティ面 6a 被転写面 8 キャビティ駒 11 キャビティ 16 凹部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F202 AH74 CA11 CB01 CK11 CK43 CK53

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも1つ以上の被転写面を有する
    キャビティに溶融樹脂を射出充填してキャビティ内に樹
    脂圧力を発生させ、前記被転写面を樹脂に転写させて転
    写面を形成させ、しかる後、キャビティから転写面の形
    成されたプラスチック成形品を取り出すことにより製造
    されるプラスチック成形品において、該プラスチック成
    形品がリブ構造を有し、且つ、リブと前記転写面との境
    界に少なくとも1つ以上の凸形状部を有することを特徴
    とするプラスチック成形品。
  2. 【請求項2】 前記凸形状部が前記転写面を取り囲むよ
    うに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の
    プラスチック成形品。
  3. 【請求項3】 前記プラスチック成形品に設けたリブの
    うち、金型可動側に限り、前記凸形状部を有することを
    特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチック成形
    品。
  4. 【請求項4】 前記凸形状部が、成形時に金型から離型
    される方向に抜き勾配を持たないことを特徴とする請求
    項1、2又は3に記載のプラスチック成形品。
  5. 【請求項5】 前記凸形状部が、成形時に金型から離型
    される方向の少なくとも1つ以上の面に抜き勾配を持つ
    ことを特徴とする請求項1、2又は3記載のプラスチッ
    ク成形品。
  6. 【請求項6】 前記凸形状部が、離型時の突き出し位置
    より前記転写面側にあることを特徴とする請求項1、
    2、3、4又は5に記載のプラスチック成形品。
  7. 【請求項7】 型開き前に、前記キャビティ内の樹脂圧
    力が0になるように成形されたことを特徴とする請求項
    1、2、3、4、5又は6に記載のプラスチック成形
    品。
  8. 【請求項8】 前記プラスチック成形品は、少なくとも
    1つ以上の転写面以外の面に金型形状の不完全転写によ
    り発生する凹部を有することを特徴とする請求項1、
    2、3、4、5、6又は7に記載のプラスチック成形
    品。
  9. 【請求項9】 前記凸形状部を形成するキャビティ駒と
    前記転写面を形成するキャビティ駒が一体で構成されて
    いることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、
    7又は8に記載のプラスチック成形品の成形用金型。
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