JP2003297628A - 磁性膜およびその形成方法 - Google Patents

磁性膜およびその形成方法

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JP2003297628A JP2002097177A JP2002097177A JP2003297628A JP 2003297628 A JP2003297628 A JP 2003297628A JP 2002097177 A JP2002097177 A JP 2002097177A JP 2002097177 A JP2002097177 A JP 2002097177A JP 2003297628 A JP2003297628 A JP 2003297628A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 厚膜で高透磁率の磁性膜を効率的に低コスト
で形成する。 【解決手段】 金属磁性体粉末および高電気抵抗粉末を
原料粉末14としてミキサ11内に仕込んで混合し、こ
れをチャンバ12内で、ノズル15からエアロゾル化し
て噴射し、粒子14aを基板20aに固着させる。これ
により、基板20a上には、主相が金属磁性体の磁性相
で、粒界が高電気抵抗の相であるナノグラニュラー構造
の磁性膜が形成される。このとき、原料の高電気抵抗粉
末にフェライトを用いれば、主相、粒界がともに磁性体
で構成されたナノグラニュラー構造の磁性膜を形成する
ことができ、磁性膜を高透磁率化することができる。こ
の方法では、原料粉末14を噴射して固着させるのみで
あるため、適当な膜厚の磁性膜を効率的かつ低コストで
形成することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁性膜およびその形
成方法に関し、特に通信機器などの動作時に発生する不
要電磁波を吸収するための磁性膜およびその形成方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】移動通信の発達により、通信波長の短波
長化が進み、それとともに通信機器の動作時に発生する
電磁波が通信機器自体あるいはその周囲に影響を及ぼす
電磁波障害が問題になってきている。そのため、メガヘ
ルツ(MHz)帯域からギガヘルツ(GHz)帯域の電
磁波に対しても充分対応することのできる電磁波吸収体
が要求されている。
【0003】従来、電磁波吸収体としては、その材質に
スピネル型フェライトなどが用いられていた。しかし、
これらの材質からなる電磁波吸収体は、飽和磁化Is
低いため、Snoekの限界と呼ばれる周波数限界(共
鳴周波数fr)により、GHz帯域で急激に吸収能が低
下する。Snoek理論によれば、Isが高ければfr
高くなるので、例えば鉄合金などを用いれば優れた電磁
波吸収特性を得られることになる。
【0004】しかし、このような鉄合金などの金属は良
導電性のため、電磁波吸収体として用いる場合には、電
磁波の浸透深さ(スキンデプス:1GHzで約1μm程
度)以下の微粒子にし、さらに、各微粒子同士を電気的
に絶縁する必要がある。このため、従来の電磁波吸収体
では、まず、アトマイズ法で作製した十数μmの磁性体
粉末を機械的に粉砕し、その粒径をスキンデプス以下に
する。そして、この粉砕後の磁性体粉末を樹脂と複合化
し、厚さ数mmのシート状にして電磁波吸収体として用
いる。
【0005】ところで、近年では、通信機器のモバイル
化、ウェアラブル化に伴い、いっそう薄型の電磁波吸収
体が要望されている。電磁波吸収体を薄くしてかつ電磁
波吸収量を維持するためには、その材料を高透磁率化す
る必要があるとされている。
【0006】電磁波吸収体の高透磁率化を図る方法とし
ては、特開昭60−152651号公報や特開平4−1
42710号公報などに、金属とセラミクスを同時にス
パッタしてセラミクスが分散した非晶質合金膜を得る方
法が開示されている。
【0007】また、特開平8−250330号公報や特
開平10−241938号公報には、ナノグラニュラー
構造を有する磁性膜が開示されている。これは、金属磁
性体の結晶粒径を1nm〜10nm程度とし、この粒子
同士を電気的に絶縁するため、その粒界に非磁性体であ
るアルミナ(Al23)やシリカ(SiO2)といった
高電気抵抗相を析出させる。これにより、磁性膜とし
て、高透磁率かつ高電気抵抗を達成するものである。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の電磁波
吸収能の高い磁性膜の形成は、主にスパッタ法を用い、
磁性膜の用途として薄膜磁気素子を想定し、現実的には
膜厚1μmから最大でも2μm程度の薄い磁性膜を形成
することしかできず、さらに、その形成には時間とコス
トがかかるという問題点があった。
【0009】ここで、磁性膜による電磁波吸収量につい
て説明する。一般に、磁性体の電磁波吸収量は、次の式
で与えられる
【0010】
【数1】
【0011】ただし、P;体積あたりの電磁波吸収量
(W/m3),ω;角周波数(rad/sec),μ0
真空の透磁率,H;磁界強度(A/m)である。式
(1)において、電磁波吸収量Pが最も大きくなるの
は、透磁率の損失項であるμ”が最大になるときであ
る。
【0012】電磁波吸収量Pは、体積あたりの値である
ので、磁性体の体積が大きくなれば、電磁波吸収量も大
きくなる。したがって、磁性膜の厚さをd(m)とすれ
ば、面積あたりの電磁波吸収量P’(W/m2)は、次
の式で与えられる。
【0013】
【数2】
【0014】すなわち、式(1)の場合と同じμ”が得
られると仮定すると、例えば、磁性膜の厚さを1μmか
ら100μmに厚くすれば、その電磁波吸収量P’が1
00倍に増加し、大きな効果が得られることになる。ま
た、μ”が高ければ、磁性膜の膜厚を薄くすることも可
能になる。
【0015】このような背景から、高いμ”を有する磁
性膜を、従来の電磁波吸収シートよりも薄く、そして、
スパッタ法で形成できる以上の適当な膜厚で形成するた
めの技術が求められている。
【0016】本発明はこのような点に鑑みてなされたも
のであり、効率的かつ低コストで得られ、適当な膜厚で
かつ高い透磁率を有する磁性膜およびその形成方法を提
供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、電磁波
吸収能を有する磁性膜において、金属磁性体からなる磁
性相と、前記磁性相同士を電気的に絶縁するフェライト
からなる高電気抵抗相と、を有することを特徴とする磁
性膜が提供される。
【0018】このような磁性膜では、金属磁性体の磁性
相が、フェライトの高電気抵抗相によって電気的に絶縁
される。すなわち、磁性膜を、すべて磁性体で構成され
たナノグラニュラー構造の磁性膜を形成することができ
るようになる。これにより、磁性膜は、その高電気抵抗
相を非磁性体で形成する場合に比べ、より高透磁率化が
図られるようになる。
【0019】また、本発明では、電磁波吸収能を有する
磁性膜の形成方法において、形成する磁性膜の組成比で
金属磁性体粉末と高電気抵抗粉末とを混合し、混合され
た前記金属磁性体粉末と前記高電気抵抗粉末とをエアロ
ゾル化して被成膜物に噴射することを特徴とする磁性膜
の形成方法が提供される。
【0020】このような磁性膜の形成方法では、形成す
る磁性膜の組成比で混合した金属磁性体粉末および高電
気抵抗粉末を、エアロゾル化して被成膜物に噴射するこ
とで磁性膜を形成する。これにより、被成膜物上に、金
属磁性体粉末から形成される磁性相と、高電気抵抗粉末
から形成される高電気抵抗相とが形成される。
【0021】また、この磁性膜形成を、例えば常温下な
どの低温条件で行えば、原料粉末がはじめから有してい
る結晶構造を熱で変化させることなく、被成膜物に磁性
膜を形成できるとともに、被成膜物への熱的影響も抑制
されるようになる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
を参照して説明する。図1は磁性膜形成装置の概略模式
図である。
【0023】本発明の磁性膜の形成には、形成する磁性
膜の原料となる微粒子粉末をエアロゾル化して基板など
の被成膜物に衝突させ、厚膜を形成するエアロゾル・デ
ポジション(AD)法を用いる。このAD法では、目的
とする磁性膜の組成に等しい組成の原料粉末をエアロゾ
ル化して被成膜物に衝突させることで、所望の組成およ
び膜厚の磁性膜を効率的に形成することができる。
【0024】このAD法を行うための磁性膜形成装置1
0は、ミキサ11、チャンバ12、ロータリーポンプ1
3を有している。ミキサ11には、原料粉末14が仕込
まれるようになっていて、ミキサ11の振動により、中
に仕込まれた原料粉末14が混合されるようになってい
る。これにより、原料粉末14が単一種の粉末である場
合には、ミキサ11内でのその粒度分布の偏りをなく
し、原料粉末14が複数種の粉末である場合には、これ
らを均一に混合するとともにその粒度分布の偏りをなく
すことができる。
【0025】チャンバ12には、その内部に、ミキサ1
1に配管を介して接続されているノズル15が配置さ
れ、このノズル15の先端からミキサ11内の原料粉末
14がエアロゾル化されて噴射されるようになってい
る。ノズル15の先端側には、マスク16を介して基板
20aが配置されるようになっている。原料粉末14が
噴射されると、粒子14aがマスク16で被覆されてい
ない基板20a表面に衝突して順に積層していくように
なっている。
【0026】ロータリーポンプ13は、チャンバ12内
の圧力調整に用いられる。ここでは、チャンバ12内の
圧力を、10-2Torrに設定している。また、磁性膜
の形成は、例えば室温など、常温下で行うことができ
る。なお、基板20aへの磁性膜形成後には、従来スパ
ッタ法で最適組織を発現させる目的で行う熱処理は行わ
ない。
【0027】このような磁性膜形成装置10では、所望
の膜厚の磁性膜を高速で形成することができる。例え
ば、従来のスパッタ法では、磁性膜の膜厚が通常1μm
程度であるのに対し、AD法では、従来カバーできなか
った数μmから500μm程度の範囲の膜厚で磁性膜を
形成することができる。さらに、AD法による磁性膜の
成膜速度は、10μm/min程度と速く、工業的にも
優れた方法といえる。
【0028】AD法によりナノグラニュラー構造の磁性
膜を形成する際には、金属磁性体粉末および高電気抵抗
粉末を原料粉末14としてミキサ11内に仕込んで混合
し、ノズル15からエアロゾル化して基板20aに噴射
する。
【0029】図2はAD法で得られる磁性膜の模式図で
あって、(a)は断面図、(b)は磁性膜組織を示す図
である。金属磁性体粉末および高電気抵抗粉末を原料と
してAD法を行うと、図2(a)に示すように、被成膜
物20に衝突した微粒子がその表面から積層されていっ
た磁性膜30が形成される。この磁性膜30は、図2
(b)に示すように、主相である磁性相30aの粒界に
高電気抵抗相30bが形成されたナノグラニュラー構造
の組織を有する。AD法で磁性膜30を形成した場合、
高電気抵抗相30bの酸素濃度は、磁性相30aのそれ
に比べて大きくなる傾向が見られ、高電気抵抗相30b
の絶縁性という点から有利である。
【0030】このように形成された磁性膜30の磁性相
30aと高電気抵抗相30bとの組成比は、形成前に仕
込む金属磁性体粉末と高電気抵抗粉末との組成比にほぼ
一致するようになる。これに対し、従来のスパッタ法で
は、形成する磁性膜の組成は、用いるターゲット(Fe
とAl23など)の面積割合で配合比を決定し、かつ、
熱処理により最適組織を発現させる必要があり、その制
御が困難であった。この点で、磁性膜30の形成にAD
法を用いると、形成できる磁性膜30の組成の自由度を
格段に向上させることができる。
【0031】AD法による磁性膜形成の原料に用いられ
る金属磁性体粉末としては、Fe,Co,Niなどのほ
か、スパッタ法では使用が難しかったFeCo,FeN
i,FeNiCo,MnAl,FeSiB,CoSi
B,FePt,CoPtなども用いることができる。さ
らに、FeSiAlやFeAlなども飽和磁化が比較的
大きく、磁性膜形成の原料として用いることが可能であ
る。
【0032】また、高電気抵抗粉末としては、NiZn
フェライト,MnZnフェライト,MgMnフェライ
ト,NiZnCuフェライト,NiZnCoフェライト
や、M型フェライトであるBaFe1219およびSrF
1219、BaFe2W型フェライトであるBaFe18
27、Co2−Z型フェライトであるBa3Co2Fe24
41、Zn2−Z型フェライトであるBa2Zn2Fe12
22、およびα−Fe2 3,β−Fe23,γ−Fe2
3などのフェライト材料を用いることができる。ま
た、これらのようなフェライト材料のほか、Fe34
CoO,NiO,BaTiO3,TiO2,Al23,S
iO2,MgOなどの高電気抵抗酸化物材料も用いるこ
とが可能である。
【0033】例えば、磁性相がNiで高電気抵抗相がA
23であるNi−Al23磁性膜の形成には、Ni粉
末(平均粒径50nm)およびAl23粉末(平均粒径
300nm)を用いる。また、磁性相がFeCoで高電
気抵抗相がNiZnフェライトであるFeCo−NiZ
nフェライト磁性膜の形成には、FeCo粉末(平均粒
径200nm)およびNiZnフェライト粉末(平均粒
径500nm)を用いる。さらに、磁性相がFeNiで
高電気抵抗相がMnZnフェライトであるFeNi−M
nZnフェライト磁性膜の形成には、FeNi粉末(平
均粒径200nm)およびMnZnフェライト粉末(平
均粒径500nm)を用いる。
【0034】ここで注目すべきは、このAD法によれ
ば、ナノグラニュラー構造の磁性膜における高電気抵抗
相を、従来同様非磁性体で形成できるほか、磁性材料で
あるフェライトを用いて形成することができる点であ
る。すなわち、このような構造の磁性膜では、磁性相の
周囲を電気的に絶縁するための高電気抵抗相をも磁性体
で形成されているため、高い透磁率を示すようになる。
【0035】従来のスパッタ法では、成膜後に熱処理を
行って最適組織を発現させるようにするが、この熱処理
でフェライトのような磁性かつ高電気抵抗の相を粒界に
発現させることは非常に困難である。一方、AD法によ
れば、前述のように、原料粉末の配合比で磁性膜の組成
が決まり、さらに、熱処理することなくナノグラニュラ
ー構造を実現できる。そのため、フェライトで高電気抵
抗相を形成できるとともに、熱処理によるその後の結晶
構造の変化もない。したがって、フェライトを用いて磁
性膜を形成すると、この磁性膜の特性に、そのフェライ
ト自体が持っているもともとの結晶構造、本来有してい
る透磁率を反映させることができる。
【0036】したがって、例えば、FeCo,Fe,N
iおよびFeNiなどの高い透磁率を示す金属軟磁性体
と、NiZnCuフェライト,MnZnフェライト,N
iZnフェライトおよびNiZnCoフェライトなどの
軟磁性かつ高電気抵抗のフェライトとを用いれば、主
相、粒界とも軟磁性体で構成されたナノグラニュラー構
造の磁性膜を形成することができ、より磁性膜の高透磁
率化を図ることができる。
【0037】上記の金属磁性体粉末と高電気抵抗粉末と
は任意に選択して用いることが可能である。また、金属
磁性体粉末と高電気抵抗粉末とが各1種である場合のほ
か、それぞれの原料粉末として複数種を選択して用いる
こともできる。
【0038】これらの金属磁性体粉末のうち、FeCo
は飽和磁化が2.4T、Feは飽和磁化が2.2T、N
iは飽和磁化が0.6T、FeNiは飽和磁化が1.1
Tと比較的高く、磁性膜の原料に適している。特に、F
eCoは特性的に優れ、Feはコスト的に優れており、
好適である。また、高電気抵抗粉末のうち、NiZnC
uフェライト,NiZnフェライト,NiZnCoフェ
ライトは抵抗率が高くかつコストが低いため、好適に用
いることができる。さらに、MnZnフェライトは、抵
抗率がNiZnCuフェライトなどに比べて若干低い
が、高い透磁率を示すので、磁性膜の高電気抵抗相の原
料として適している。
【0039】AD法を用いて得られる磁性膜に対し、X
線回折測定を行い、その結果を用いてシェラーの式から
求めた構成組織の平均径は、ほぼ10nm〜20nm程
度であった。さらに、磁性膜の磁性相組織は、その径が
1nmから50nm程度のナノメートルオーダーの微細
組織であることが観察された。
【0040】また、このAD法を用いて得られる磁性膜
は、被成膜物に非常に強固に付着し、ガラス基板やSi
2基板のほか、セラミクス、ポリカーボネート、AB
S樹脂、Mg合金、および各種チップ部品などにも形成
することができる。
【0041】以上説明したように、磁性膜形成にAD法
を用いることにより、成膜速度を速め、主相を磁性相、
粒界を高電気抵抗相とする磁性膜を、効率的に形成する
ことができる。このAD法で形成される磁性膜の組成
は、原料粉末の組成で決まり、安定した組成の磁性膜を
容易に形成することができる。そして、磁性膜の主相、
粒界とも軟磁性体のナノグラニュラー構造とすることが
できるため、高い透磁率の磁性膜を形成することができ
る。
【0042】また、AD法による磁性膜形成は低温プロ
セスであるため、熱による磁性膜組織の形態変化および
膜形成される被成膜物への影響が少ない。さらに、熱処
理を経ないため、従来のスパッタ法で磁性相を絶縁する
絶縁相材料に添加されていた焼結助剤などの微量不純物
が混入せず、高純度の磁性膜を形成することができる。
また、従来のスパッタ法のように、高額のターゲットを
必要としないため、低コストで磁性膜の形成が可能であ
る。
【0043】また、磁性膜は、被成膜物との密着強度が
強い。さらに、従来のスパッタ法で形成困難であった膜
厚1μm以上、従来のシート状の電磁波吸収体で形成困
難であった膜厚500μm以下の磁性膜を形成すること
が可能である。したがって、種々の材質の基板や部品な
どに、それらの用途あるいはスペースに合わせて任意に
磁性膜を形成することができる。
【0044】以下、AD法を用いて形成した磁性膜の特
性を評価した結果について説明する。図3は磁気測定結
果を示す図である。図3では、横軸は磁界強度H(kO
e)、縦軸は磁束密度B(kG)をそれぞれ表してい
る。
【0045】AD法を用いて形成した膜厚20μmのN
i膜について磁気測定結果を行った。Niの飽和磁化は
約5.4kGであり、形成したNi膜は、バルク特性を
ほぼそのまま示している。したがって、AD法により磁
性膜の形成が可能であるということができる。
【0046】図4は飽和磁化測定結果を示す図である。
図4では、横軸はNiZnフェライトの組成比、縦軸は
飽和磁化(T)をそれぞれ表している。ここでは、AD
法を用いて形成したFeCo−NiZnフェライト磁性
膜について飽和磁化測定を行う。この磁性膜の形成は、
まず、Feに50%のCoを含んだ平均粒径200nm
のFeCo粉末を還元法で形成した後、このFeCo粉
末と、平均粒径200nmのNiZnフェライト粉末と
を、所定の割合で混合して原料粉末とする。そして、こ
の原料粉末を、SiO2基板に対して噴射し、磁性膜を
形成する。
【0047】磁性膜中のNiZnフェライトの体積割合
を変化させて形成したときの磁性膜の飽和磁化を測定す
ると、原料粉末に占めるNiZnフェライト粉末の体積
増加に伴い、飽和磁化がほぼ直線的に減少する。すなわ
ち、FeCo粉末からの磁性相と、NiZnフェライト
粉末からの高電気抵抗相とが、SiO2基板に所定の割
合で磁性膜として付着していると考えられる。
【0048】図5は透磁率測定結果を示す図である。図
5では、横軸は周波数(GHz)、縦軸は透磁率
(μ’,μ”)を表している。ここでは、FeCo−N
iZnフェライト磁性膜を用いて測定している。この磁
性膜に含まれるNiZnフェライトは25%であり、磁
性膜の膜厚は50μmである。
【0049】図5より、最大でμ’=35,μ”=28
程度の磁性膜が形成された。この特性は、電磁波吸収特
性で考えた場合、厚さd=0.3mmでμ”=5の電磁
波吸収シートと比較すると、FeCo−NiZnフェラ
イト磁性膜は、厚さd=0.05mmでμ”=28であ
るので、厚さが電磁波吸収シートの6分の1にも関わら
ず、ほぼ同等電磁波吸収量P’を示すことになる(式
(2)参照)。
【0050】したがって、従来のシート状のものよりも
厚みが薄く、また、スパッタ法で形成した磁性膜よりも
膜厚の厚い磁性膜を、高特性で形成することができる。
図6は電磁波吸収特性を示す図である。図6には、AD
法による磁性膜を通信機器の筐体に形成した場合の機器
内部から放射される電磁波レベルの周波数ごとの測定値
を示している。さらに、比較のため、磁性膜を形成しな
かった場合における電磁波レベルについても測定してい
る。なお、図6には、磁性膜を形成しなかった場合に放
射される電磁波レベルと、磁性膜を形成した場合に放射
される電磁波レベルとの差も示している。
【0051】図6において、横軸は周波数、縦軸は機器
内部から放射される電磁波レベルを示している。通信機
器に磁性膜を形成することにより、放射される電磁波レ
ベルは減少し、この減少量の分、通信機器からの不要電
磁波の放射を低減させることができるようになる。
【0052】
【発明の効果】以上説明したように本発明では、磁性膜
を、金属磁性体の磁性相同士をフェライトの高電気抵抗
相で電気的に絶縁する構成にした。これにより、すべて
磁性体で構成されたナノグラニュラー構造の磁性膜を形
成することができ、磁性膜を高透磁率化することができ
る。
【0053】また、磁性膜形成にAD法を用いること
で、フェライトを高電気抵抗相とする磁性膜を形成する
ことができるとともに、適当な膜厚の磁性膜を効率的か
つ低コストで形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁性膜形成装置の概略模式図である。
【図2】AD法で得られる磁性膜の模式図であって、
(a)は断面図、(b)は磁性膜組織を示す図である。
【図3】磁気測定結果を示す図である。
【図4】飽和磁化測定結果を示す図である。
【図5】透磁率測定結果を示す図である。
【図6】電磁波吸収特性を示す図である。
【符号の説明】
10……磁性膜形成装置、11……ミキサ、12……チ
ャンバ、13……ロータリーポンプ、14……原料粉
末、14a……粒子、15……ノズル、16……マス
ク、20……被成膜物、20a……基板、30……磁性
膜、30a……磁性相、30b……高電気抵抗相。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡山 克巳 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 小林 薫 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 猪俣 浩一郎 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉02 東北大 学大学院工学研究科内 (72)発明者 杉本 諭 宮城県仙台市青葉区荒巻字青葉02 東北大 学大学院工学研究科内 Fターム(参考) 5E049 BA27 FC10

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電磁波吸収能を有する磁性膜において、 金属磁性体からなる磁性相と、 前記磁性相同士を電気的に絶縁するフェライトからなる
    高電気抵抗相と、 を有することを特徴とする磁性膜。
  2. 【請求項2】 膜厚が略1μmないし略500μmであ
    ることを特徴とする請求項1記載の磁性膜。
  3. 【請求項3】 前記磁性相は、その周囲を前記高電気抵
    抗相で被覆されたひとつの組織の径が、略1nmないし
    略50nmであることを特徴とする請求項1記載の磁性
    膜。
  4. 【請求項4】 前記磁性相は、1種または2種以上の前
    記金属磁性体からなることを特徴とする請求項1記載の
    磁性膜。
  5. 【請求項5】 前記高電気抵抗相は、高電気抵抗の酸化
    物からなることを特徴とする請求項4記載の磁性膜。
  6. 【請求項6】 電磁波吸収能を有する磁性膜の形成方法
    において、 形成する磁性膜の組成比で金属磁性体粉末と高電気抵抗
    粉末とを混合し、 混合された前記金属磁性体粉末と前記高電気抵抗粉末と
    をエアロゾル化して被成膜物に噴射することを特徴とす
    る磁性膜の形成方法。
  7. 【請求項7】 前記高電気抵抗粉末は、フェライトの粉
    末であることを特徴とする請求項6記載の磁性膜の形成
    方法。
  8. 【請求項8】 前記磁性膜の形成を常温下で行うことを
    特徴とする請求項6記載の磁性膜の形成方法。
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