JP2003293219A - 難燃性ポリオレフィン繊維およびこれを用いた繊維組成物と繊維積層体 - Google Patents

難燃性ポリオレフィン繊維およびこれを用いた繊維組成物と繊維積層体

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JP2003293219A JP2002097200A JP2002097200A JP2003293219A JP 2003293219 A JP2003293219 A JP 2003293219A JP 2002097200 A JP2002097200 A JP 2002097200A JP 2002097200 A JP2002097200 A JP 2002097200A JP 2003293219 A JP2003293219 A JP 2003293219A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】火災時に安全で、焼却などの廃棄処分が無害に
でき、リサイクル可能な難燃性ポリオレフィン繊維と繊
維組成物及び繊維積層体を提供する。 【解決手段】平均炭素数Cが2.6≦C≦8のαオレフィンを
重合したポリマーを含む繊維であり、(1)トリアジン骨
格とその近傍に位置する複数のピペリジン基のイミノ基
(>N-H)の一部または全部がN-アルコキシ・イミノ基(>N-
O-R)(RO-は炭素数1-18のアルコキシ基等)に置換され
ているヒンダードアミン誘導体を難燃効果剤として0.2-
10質量%、(2)熱安定剤であるリン系酸化防止剤のアリ
ールフォスファイト、(3)トリアジン骨格と、過半のト
リアジン骨格がその近傍に位置する複数のピペリジン基
を有する分子量が2000以上の高分子量ヒンダードアミン
を0.02-1質量%含む。繊維断面形状は芯成分1と鞘成分2
としてもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、製品に難燃性が求
められている濾過資材、インテリア資材、アウテリヤ資
材、自動車の内装材などに適用可能で、火災時に安全
で、焼却などの廃棄処分が無害にでき、リサイクル可能
で、強力などの性能が従来並みで製品の使い勝手が従来
通りできる、ノンハロゲンの難燃性ポリオレフィン繊維
およびこれを用いた繊維組成物と繊維積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】エァーフィルターや濾過布などの濾過資
材、壁紙やカーペットなどのインテリア資材、テント、
自動車の幌シートや日除けテントなどのアウテリヤ資
材、そして自動車の内装材など、従来から製品に難燃性
が求められている分野では、塩化ビニル製品や、特公昭
60−7722号公報、特公昭60−24205号公報
あるいは、特公昭61−44967号公報に示されるハ
ロゲン化合物の難燃剤を用いた製品が多用されてきた
が、使用後に焼却して廃棄処分するとダイオキシンなど
の有害物の発生の可能性があり、また火災時にはハロゲ
ン化水素などの有害物や煤が発生し、いずれも問題視さ
れている。
【0003】また、最近は、リサイクル性などが強く要
求されて、ポリエチレンテレフタレートよりリサイクル
が容易なポリオレフイン樹脂で上記資材を作ることが求
められているが、ポリオレフイン樹脂はラジカル重合で
作られているため、難燃化が困難であり、前述の様にハ
ロゲン化合物の難燃剤が用いられてきたことにより、リ
サイクル性の点から問題であった。
【0004】従来のポリオレフィン系の難燃繊維には、
比重の重いハロゲンガスを、熱分解させて発生させて資
材表面を覆って酸素を遮断することで難燃化するハロゲ
ン系難燃剤、主に縮重合樹脂で効果を発揮する、熱分解
温度を下げ、脱水反応で水素を引抜いて炭化を促進して
難燃化するリン酸アンモニウム塩や赤燐などの燐化合
物、そして、不燃の無機物やさらには結晶水を加熱する
と放出する無機物を概ね過半量添加して、可燃性の樹脂
の量を減らすことで難燃化する水酸化マグネシュウムな
どの水酸化物などを使用しており、これらを検討した
が、難燃効果が従来の物より格段に優れたものは見つか
らず、ここ十年、他社でも実用化されたものはなかっ
た。特に繊維は、電気コードなどに比べて作りにくいの
で、少量で難燃化できる難燃剤が不可欠で、良いものが
なかった。
【0005】ハロゲン化水素などの有害物や煤を発生し
ない難燃性ポリオレフィン繊維として、例えば、WO9
9/00450や特開2001−254225号公報で
は、ヒンダードアミン・ラジカル捕集剤のイミノ基(>
N−H)の一部または全部がN−アルコキシ・イミノ基
(>N−O−R)に置換されているヒンダードアミン誘
導体を難燃効果剤としてポリオレフィン樹脂に添加した
繊維が提案されている。特開2001−348724号
公報、USP5393812、およびEP792911
では、リン酸エステル系難燃剤とNOR型ヒンダードア
ミン系安定剤とを含有するポリプロピレン繊維が提案さ
れている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記した様に、製品に
難燃性が求められている分野では、従来、難燃効果の高
いハロゲン化合物、例えば、塩化ビニル樹脂やハロゲン
系難燃剤がこの用途に多用されてきたが、火災時にハロ
ゲン化水素などの有害物や煤を発生し、被災者にこれら
有害物が強い被害を与え、また、破損や劣化で使用に耐
えなくなった時、焼却して廃棄処分するとダイオキシン
などの有害物が発生するため焼却できず、微生物などで
の処分もできないため、これらの使用は廃棄処分に重大
な問題があった。また、これら製品を製造またはリサイ
クル使用する時、ハロゲン化水素等の有害物が発生し、
製造環境の劣悪化と製造設備の劣化を招き問題が大き
く、塩化ビニル製品においては、使用によって柔軟剤が
溶出して再生が出来ない問題があった。
【0007】上記した難燃剤を用いた従来技術では、公
知のハロゲン系難燃剤に加え、りん系、アンモニウム塩
系が発表されており、樹脂の難燃剤としては水酸化マグ
ネシウムなどが従来から公知であったが、ポリオレフィ
ン繊維では、ハロゲン系難燃剤を主剤としないと効果が
なく、これらが主として実用されてきた。しかも、これ
らハロゲン系難燃剤は、いずれも10質量%を超える添
加量が難燃効果を得るためには必要で、その含有量の多
さから、他の樹脂と区分するなど再使用の利便性が害な
われるなど種々の問題がある。
【0008】また、ハロゲン化水素などの有害物や煤を
発生しない難燃性ポリオレフィンとして提案されている
ものであっても、特開2001−254225号公報の
ように、単にN−アルコキシ・イミノ基(>N−O−
R)に置換されているヒンダードアミン誘導体を添加す
るだけであっては、十分な難燃効果が得られない場合が
ある。WO99/00450では、十分な難燃効果が得
られるように他の難燃剤との併用も提案している。
【0009】特開2001−348724号公報、US
P5393812、およびEP792911は、従来の
難燃性ポリプロピレン繊維と同様にリン系難燃剤を多量
に含有させる必要があり、難燃効果を有するNOR型ヒ
ンダードアミンを補助的に用いるのみであり、不経済で
ある。
【0010】本発明は、前記従来の問題を解決するた
め、ノンハロゲン化でき、火災時に安全で、焼却などの
廃棄処分が無害にでき、リサイクル可能で、強力などの
性能は従来並みで製品の使い勝手に支障のない難燃性ポ
リオレフィン繊維およびこれを用いた繊維組成物と繊維
積層体を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するた
め、本発明の難燃性ポリオレフィン繊維は、構成するモ
ノマー成分の平均炭素数Cが2.6≦C≦8であるαオ
レフィンを重合したポリマーを含む少なくとも1種のポ
リオレフィン樹脂(A)を含む繊維であって、前記ポリ
オレフィン樹脂(A)は下記(1)〜(3)の化合物を
含有していることを特徴とする。 (1)トリアジン骨格とその近傍に位置する複数のピペ
リジン基のイミノ基(>N−H)の一部または全部がN
−アルコキシ・イミノ基(>N−O−R)(但し、RO
−は炭素数1〜18のアルコキシ(alkoxy)基、炭素数
5〜12のシクロアルコキシ(cycloalkoxy)基、炭素
数7〜25のアルアルコキシ(aralkoxy)基、炭素数6
〜12のアリーロキシ(aryloxy)基)に置換されてい
るヒンダードアミン誘導体を難燃効果剤として0.2質
量%を超え10質量%未満の範囲 (2)熱安定剤であるリン系酸化防止剤のアリールフォ
スファイト (3)トリアジン骨格と、過半のトリアジン骨格がその
近傍に位置する複数のピペリジン基を有する分子量が2
000以上の高分子量ヒンダードアミンを0.02質量
%以上1質量%以下の範囲 次に本発明の繊維組成物は、前記難燃性ポリオレフィン
繊維と、他の繊維との繊維組成物であって、前記繊維組
成物中に含まれる全てのポリオレフィン樹脂に対して、
前記難燃効果剤が少なくとも0.3質量%の割合で含有
していることを特徴とする。
【0012】本発明の繊維組成物の別の一形態として、
繊維組成物は、前記難燃性ポリオレフィン繊維と、他の
繊維との繊維組成物であって、難燃性ポリオレフィン繊
維を30質量%以上含有していることを特徴とする。
【0013】本発明の繊維組成物の別の一形態として、
繊維組成物は、前記難燃性ポリオレフィン繊維のみで構
成されることを特徴とする。
【0014】次に本発明の繊維積層体は、前記繊維組成
物の少なくとも片面が、前記難燃効果剤を少なくとも
0.2質量%含み、融点が前記繊維組成物を構成する主
体繊維の融点より少なくとも15℃低いポリオレフィン
樹脂で被覆されていることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】ポリオレフィン樹脂に難燃性を発
現させるには、 (1)酸化剤である酸素の遮断 (2)着火しない低温で熱分解させて耐熱性の炭化物で
被覆する (3)可燃物である樹脂の含有量を減らし着火しても低
発熱とする手段が従来の難燃性付与方法であった。これ
らを整理すると、(1)酸化剤の遮断、(2)燃焼時の
可燃ガス発生抑制、(3)炎の低温化となり、ポリオレ
フィン系の難燃樹脂では、(1)の効果を持つハロゲン
系難燃剤を主体とし、(2)または(3)の添加剤を補
助とした難燃剤構成であった。しかし、製造上、使用
上、火災発生時などで大きな問題を抱えているため、前
記従来の難燃剤の概念を捨てて、最初から再検討した。
【0016】本発明は、ポリオレフィン樹脂の燃焼機構
が、まず、熱によって樹脂が熱分解を起こし、低分子量
のモノマーなどを放出して、これらが着火し、さらに熱
分解の連鎖を起こして燃焼する機構と仮定して検討を続
けた結果、ハルス系(HALS:Hindered Amine Light
Stabilizersの略でトリアジン骨格とピペリジン基が含
まれる耐候性安定剤の総称。)のラジカル捕集剤をポリ
オレフィンの安定剤としてでなく、難燃化剤として大量
に添加することを見出した。これにより、外部からの炎
によって樹脂が熱分解される時、アルキルラジカルR・
がまず発生するが、このラジカルを捕捉することで、熱
分解連鎖を遮断すれば、中分子量物から低分子量物の発
生を抑制でき、ポリオレフィン樹脂やその加工品を難燃
化できるのではと考え、本発明に至ったものである。
【0017】本発明者らは、イミノ基>NHを持つハル
ス系のラジカル捕集剤の濃度アップによって、ポリオレ
フィン樹脂を難燃化できないか、種々検討したが、期待
する難燃効果は得れなかった。すなわち、燃焼によって
生じたラジカルR・やROO・をイミノ基>NH型ハル
スは十分捕捉できず難燃効果を発揮しないことが判っ
た。
【0018】ハルス系のラジカル捕集剤の作用機構は、
種々の成書に記載があり、通説がほぼ確定している。例
えば、1998年日刊工業新聞社発行の「高分子添加剤
の新展開」があり、そのサイクルには、イミノ基>NH
だけでなく、ヒドロキシイミノ基>NOHやアルコキシ
イミノ基>NOR、そして>NO・ラジカルが含まれ、
燃焼によって発生したラジカルR・は、酸素分子O2
非常に早く反応してROO・ラジカルになるが、>NO
・ラジカルもラジカルR・と前記と同じくらい早く反応
してアルコキシイミノ基>NORとなってラジカルR・
を消滅させる。したがって、>NO・ラジカルを持つハ
ルス系薬剤が期待できるが、ラジカルのため不安定で薬
剤としては入手できない。この>NO・ラジカルを容易
に発生するのがアルコキシイミノ基>NORであり、揮
発し易いアルキルを放出して>NO・ラジカルを発生さ
せ、代わりにポリオレフィン樹脂が分解して発生した中
分子量物から低分子量物を捕捉、安定させることで、可
燃性物質の発生を量的に抑制して難燃効果を発現できる
のではと考えた。なお、>NORのアルキル基は、当然
揮発し易く、少しでも酸化や分解しにくいアルキルが良
く、直鎖状より、環状のものが都合が良い。また、アル
コキシイミノ基>NORはラジカル捕集が固相ではさら
に有利であり、繊維などの成形物の内部ではラジカルR
・の捕捉も期待できる。また、燃えるものが少ないか、
無くなれば燃えないはずであり、炎が当たると速やかに
溶融して、炎の部分から樹脂を溶融張力で収縮させて、
樹脂を遠ざける、すなわち、簡単に溶けてより大きな穴
を開けれる様な薄手の不織布など、使う仕様も工夫すれ
ば、結果として難燃効果をさらに発現できるとも考え、
NOR型ハルスを難燃効果剤として用いることとし、本
発明に至ったのである。
【0019】また、使用したポリオレフィン樹脂の安定
剤の相関を調査し、アリールフォスファイトである、ト
リス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォス
ファイト(安定剤Tと呼称する)を添加した樹脂を少な
くともマスターバッチのベース樹脂とした繊維が、難燃
効果もしくは難燃化傾向を持つことを知った。
【0020】そこで、本発明に用いるNOR型ハルスと
安定剤Tを一緒に練り込んだマスターバッチと安定剤T
のみのマスターバッチを作り、検討したところ、以前に
全焼した樹脂も、本発明に用いる難燃効果剤が同じ2%
添加で、安定剤Tを併用することで、難燃等級が最高の
3級の繊維とすることができ、本発明に至ったのであ
る。
【0021】なお、本発明に用いる、いわゆるリン系酸
化防止剤アリールフォスファイトは、溶融混合して作る
マスターバッチや、溶融して作る繊維やフィルムに用い
る場合、樹脂を溶融する200℃以上の温度で、劣化防
止に卓越した効果を発揮するため、前記リン系酸化防止
剤を添加すると、少なくとも、本発明に用いるNOR型
ハルスの熱的変質を防止して、その難燃効果を発揮させ
ると推定される。また、燃焼時、繊維やフィルムなどの
成形物の表面が溶融するため、何らかの良い相乗効果を
与えているとも推定される。
【0022】さらに、ポリオレフィン樹脂が本来基本的
に保有することが不可欠な耐候性を持たせるため、ポリ
オレフィン樹脂に、各種安定剤を添加することも不可欠
であり、ポリオレフィン樹脂に添加する安定剤と前記難
燃効果剤との相性を検討したところ、ハルス系安定剤以
外では好ましい結果を得ることができなかった。具体的
には、酸化防止剤、光安定剤やラジカル捕集剤と前記難
燃効果剤であるNOR型ハルスとは、相性の問題があ
り、酸化防止剤の代表例であるフェノール系酸化防止剤
BHTとは相互に反応してNOR型ハルスが変質化し、
黄変または褐色変し、本発明に用いる難燃効果剤も余分
に添加する必要があって、前記BHTを添加しない方が
良いため、使用できず、イルガノックス1010も同様
であった。結局、難燃効果剤であるNOR型ハルスと化
学構造が近いハルス系のラジカル捕集剤が樹脂の耐候性
と難燃性の両立をさせるに最も都合が良いことが判明し
た。また、アルコキシイミノ基>NORは繊維などの成
形物の内部でラジカルR・の捕捉も期待できるが、従来
のハルス系のラジカル捕集剤であるヒンダードアミンの
方が同じ添加量でもラジカルR・の捕捉効果が大きいの
で、前記難燃効果剤であるNOR型ハルスの変質防止を
兼ねて、これら両者の併用が不可欠となる。
【0023】特に、分子量が2000以上で、トリアジ
ン骨格と、過半のトリアジン骨格がその近傍に位置する
複数のピペリジン基を有する高分子量ヒンダードアミン
が、本発明に用いる難燃効果剤の難燃効果を生じる添加
量に影響を与えず、かつ、黄変などの着色も極めて低く
することができ、本発明に用いるポリオレフィン樹脂の
耐候性安定剤として最適なことを知った。前記高分子量
ヒンダードアミンは、前記マスターバッチの希釈ポリオ
レフィン樹脂に含有させても良いし、マスターバッチに
使用するポリオレフィン樹脂に含有させると都合が良い
が、さらに適量のリン系酸化防止剤アリールフォスファ
イトを追加するともっと都合が良いことも判明した。
【0024】以下、従来の難燃剤を用いずともポリオレ
フィン繊維を難燃化し得る方法について、具体的に説明
する。
【0025】本発明は、構成するモノマー成分の平均炭
素数Cが2.6≦C≦8であるαオレフィンを重合した
ポリマーを含む少なくとも1種のポリオレフィン樹脂
(A)に、トリアジン骨格とその近傍に位置する複数の
ピペリジン基のイミノ基(>N−H)の一部または全部
がN−アルコキシ・イミノ基(>N−O−R)(但し、
RO−は炭素数1〜18のアルコキシ(alkoxy)基、炭
素数5〜12のシクロアルコキシ(cycloalkoxy)基、
炭素数7〜25のアルアルコキシ(aralkoxy)基、炭素
数6〜12のアリーロキシ(aryloxy)基)に置換され
ているヒンダードアミン誘導体を難燃効果剤として0.
2質量%を超え、10質量%未満の範囲で含有し、熱安
定剤であるリン系酸化防止剤のアリールフォスファイト
を含有し、トリアジン骨格と、過半のトリアジン骨格が
その近傍に位置する複数のピペリジン基を有する分子量
が2000以上の高分子量ヒンダードアミンを0.02
質量%以上1質量%以下の範囲で含有し、ポリオレフィ
ン樹脂(A)に難燃性を付与することで難燃化したポリ
オレフィン繊維が得られる。前記難燃効果剤が従来の難
燃剤でなく、ポリオレフィン樹脂の安定剤である特定の
ヒンダードアミン系安定剤を用い、従来のリン系難燃剤
をも全く使用せずとも、すなわち、従来からの概念であ
る難燃剤は一切使用せずとも、かつ、環境ホルモンにも
該当しない薬剤で、ノンハロゲンで基本的にはノンリン
で難燃化を達成することが可能であり、火災時にも有害
ガスを発生せず、廃棄処分でも有害物を排出しないので
安全であり、前記難燃効果剤がポリオレフィン樹脂の安
定剤に類するものであるからリサイクルも容易であり、
必要添加量も従来の難燃剤より少ないので、繊維や繊維
組成物の性能の低下もあまり生じない特徴を持ったポリ
オレフィン繊維とこれを用いた繊維組成物を得ることが
できる。なお、前記した「基本的にはノンリンで難燃
化」とは、少量のリン系熱安定剤は本発明に不可欠であ
るため除外できないが、前記熱安定剤より遥かに大量に
添加するリン系難燃剤は使用することなく、難燃化し得
るものであって、繊維のリン含有量は、従来の難燃オレ
フィン繊維より遥かに少ないことを示唆しているのであ
る。
【0026】前記難燃効果剤としては、前述したよう
に、イミノ基の窒素部分が、N−アルコキシイミノ基>
NORであり、前記N−アルコキシイミノ基は、アルキ
ルーパーオキシラジカルRO2・を捕捉して容易に>N
O・ラジカルとなり難燃効果を発揮する。チバ・スペシ
ャリティ・ケミカルズ社の商品名「チモソルブ944」
などのように多数のイミノ基が側鎖として存在するタイ
プの分子量2000以上の高分子量タイプで、トリアジ
ン骨格とこれの近傍に位置する複数のピペリジン基のイ
ミノ基>N−HがN−アルコキシ・イミノ基>N−O−
Rに置き換えられている高分子量ヒンダードアミン誘導
体は、ラジカル捕集によって3次元化するので、揮発物
を抑制でき、最も好ましい。
【0027】なお、具体的なNーアルコキシ・イミノ基
(>N−O−R)を持つNOR型の高分子ハルス難燃効
果剤は、トリアジン骨格とこれの近傍に位置する複数の
ピペリジン基のイミノ基>N−HがN−アルコキシ・イ
ミノ基>N−O−Rに置き換えられている、分子量が2
000を超える高分子量ヒンダードアミン誘導体がブリ
ードアウトの少ないなどの点からも都合良く、アルコキ
シ基はシクロヘキサノールのアルコールの水素基が欠落
した基が最も都合が良い。その一例は、チバ・スペシャ
リティ・ケミカルズ社のフレームスタブNOR116で
ある。その化学構造を下記式(化1)に示す。
【0028】
【化1】
【0029】本発明に用いる難燃効果剤では、ポリオレ
フィン樹脂のうちポリエチレンは、ポリプロピレンに比
べ、難燃効果を付与しにくく、ポリブテン−1やポリメ
チルペンテン−1などの側鎖のあるαオレフィン樹脂の
難燃化に有効である。これは、第3級炭素によって、発
生するラジカルの寿命が長くなる影響も考えられる。前
記した理由から構成するモノマー成分の平均炭素数Cが
2.6≦C≦8であるαオレフィンを重合したポリマー
を含む少なくとも1種のポリオレフィン樹脂(A)を用
いる。前記平均炭素数の範囲を満たすポリオレフィン樹
脂(A)としては、炭素数3〜8であるプロピレン、ブ
テン−1、メチルペンテン−1のホモポリマー、または
炭素数3〜8のモノマー成分を含む共重合体、例えば、
エチレン−プロピレン共重合体のように平均炭素数が3
未満であっても、炭素数が3のプロピレンが主成分とし
て使用されているエチレン−プロピレン共重合体にも本
発明に用いる難燃効果剤は有効である。また、前記ポリ
オレフィン樹脂(A)は、プロピレンのホモポリマーま
たはプロピレンを主成分とする共重合体、ポリブテン−
1、ポリメチルペンテン−1を中心に検討し、記載する
が、これらを過半量含むポリマーアロイや混合樹脂およ
びこれらの共重合体、オレフィン系エラストマー、炭化
水素系のゴムにも適応できる。なお、平均炭素数が8を
超えるポリオレフィン樹脂は実用的ではない。
【0030】さらに、製造価格を考慮して、前記ポリオ
レフィン樹脂(A)は、プロピレンのホモポリマー、プ
ロピレンを主成分とする共重合体から選ばれる少なくと
も1種を適用することが好ましい。これらを以下、ポリ
プロピレン樹脂という。前記プロピレンを主成分とする
共重合体は、プロピレンリッチのエチレン−プロピレン
共重合体やエチレン−ブテン−1−プロピレン共重合体
やプロピレン−オクテン共重合体は無論、無水マレイン
酸やアクリル酸のグラフト共重合体も含む。
【0031】なお、前記ポリオレフィン樹脂(A)は、
着色剤や、酸化チタンや炭酸カルシュームなどの充填剤
などの添加物が用途によって添加されていてもよい。
【0032】前記難燃効果剤のポリオレフィン樹脂
(A)への添加量(a質量%)は、0.2<a<10が
好ましい。より好ましい添加量の下限は、0.5質量%
以上である。より好ましい添加量の上限は、5質量%以
下である。なお、0.2質量%以下では、難燃性が十分
でなく、10質量%以上では、経済的に好ましくない。
【0033】次に、前記難燃効果剤は、マスターバッチ
化、あるいは繊維化などの熱加工時に変質し易いため、
リン系酸化防止剤を併用するのが不可欠である。前記し
たリン系酸化防止剤としては、トリス(2,4−ジ−te
rt−ブチルフェニル)フォスファイト(チバ・スペシャ
リティ・ケミカルズ社製「IRGAFOS168」(商
品名))に代表される、アルキル置換基を有するフェニル
基を少なくとも1つ有するアリールフォスファイトが都
合良く、具体的には、旭電化工業社製の「ADKSTA
B HP−10」、「PEP−24」や「PEP−3
6」(いずれも商品名)が他に挙げられる。
【0034】被添加樹脂が溶融状態時に前記難燃効果剤
の変質を防止する加工熱安定剤として併用するリン系酸
化防止剤のアリールフォスファイトの添加量(b質量
%)は、0.02≦bであり、かつ前記難燃効果剤の添
加量(a質量%)との間には1<a/b<70を満たす
ことが好ましい。より好ましいアリールフォスファイト
の添加量の下限は、0.1≦bである。より好ましいア
リールフォスファイトの添加量の上限はb≦1である。
さらに好ましいアリールフォスファイトの添加量の上限
はb<0.5である。より好ましいa/bの上限は、5
0である。さらに好ましいa/bの上限は、30であ
る。ポリオレフィン樹脂(A)に対する添加量が0.0
2質量%未満では変質防止効果が十分でなく、経済的に
は、難燃効果剤との比率a/bが1未満では添加が過剰
であり、70を超えるのは添加が過小となり好ましくな
い。なお、前記リン系酸化防止剤は、少なくとも本発明
に用いる難燃効果剤が熱加工される場合には共存するの
が特に好ましく、このマスターバッチを作成する場合
は、少なくとも0.3質量%の添加が好ましい。
【0035】次に、本発明に用いる高分子量ハルス系安
定剤は、トリアジン骨格と、過半のトリアジン骨格がそ
の近傍に位置する複数のピペリジン基を有する、分子量
が2000以上のラジカル捕集機能を有する高分子量ヒ
ンダードアミンが最適であり、具体的な例としては、チ
バ・スペシャリティ・ケミカルズ社のチモソルブ944
系、2020系および119系の高分子量ヒンダードア
ミンが挙げられる。前記高分子量ヒンダードアミンは、
前述したように、前記難燃効果剤に類似の化合物であ
り、ポリオレフィン樹脂への分散性の上でも都合良く、
互いに干渉しなければ、ポリオレフィン樹脂に耐候性を
付与できる添加量であれば少なくとも都合が良い。ま
た、その添加量はマスターバッチのベース樹脂、希釈ポ
リオレフィン樹脂ともに同様である。
【0036】本発明に用いるポリオレフィン樹脂(A)
において、都合の良い具体的な耐候性安定剤処方は、中
和剤を別とすれば、前記高分子量ヒンダードアミンを耐
候性安定剤として0.02質量%以上、1質量%以下の
範囲で含有する。さらに、アリールフォスファイトを熱
安定剤として0.02質量%以上1質量%以下の範囲で
添加すると、耐候性も良好な繊維とすることができる。
高分子量ヒンダードアミン、アリールフォスファイトの
添加量が0.02質量%未満では、耐候性に問題が生
じ、1質量%を超える添加では、過剰すぎて経済的に好
ましくない。
【0037】なお、前記ポリオレフィン樹脂(A)に
は、難燃効果に影響がなく、他の物理物性を維持する範
囲で他の安定剤の通常量併用してもよい。
【0038】本発明の難燃性ポリオレフィン繊維は、ポ
リオレフィン樹脂(A)を含む単一繊維、または複合繊
維の形態を採り、繊維表面に垂直な切断断面は、円型、
中空型、三角や長方形や楕円などの異型、単繊維が束に
なっている連通型、フィブリル型や多孔性などの形状で
あり、有限の長さに切断された抄紙やエアーレイドなど
に用いる短繊維、乾式不織布などに用いるステープル繊
維、不織布の形をとるスパンボンド繊維、マルチフィラ
メントやモノフィラメント繊維や、スプリットヤーンや
フィブリル化繊維などの繊維状物を言う。前記複合繊維
としては、少なくとも1成分にポリオレフィン樹脂
(A)を含み、繊維断面が鞘芯型(偏心型を含む)、背
腹型、それぞれの成分が少なくとも他の成分によって複
数部分に区分けされ、少なくとも各成分の部分が繊維表
面に露出している分割型、1成分のみが繊維表面を占め
ている多芯型などの形状、あるいは混合繊維やポリマー
アロイ繊維などが挙げられる。
【0039】また、本発明の難燃性ポリオレフィン繊維
にあっては、全てのポリオレフィン樹脂が前記難燃効果
剤を添加している樹脂である必要もなく、他のポリオレ
フィン樹脂も使用でき、繊維に含まれる全てのポリオレ
フィン樹脂を100質量%としたとき、ポリオレフィン
樹脂(A)の存在割合が、30質量%以上であることが
好ましい。事実、複合繊維であって、鞘成分が芯成分よ
り低融点のプロピレン過剰のエチレン−プロピレン共重
合体で、芯成分がポリプロピレンであって、鞘成分にの
み本発明に用いる難燃効果剤が添加されていても、十分
な難燃効果を発揮できる。
【0040】また、本発明の難燃性ポリオレフィン繊維
には、繊維を構成する全てのポリオレフィン樹脂100
質量%に対して、前記難燃効果剤が少なくとも0.3質
量%の割合で含有されているのが好ましく、これ以下の
量であると難燃性に問題を生じる場合があり好ましくな
い。
【0041】前記ポリオレフィン樹脂(A)以外に用い
られる、他のポリオレフィン樹脂(B)としては、炭素
数Cが2≦C≦8であるαオレフィンのホモまたはこれ
を主成分とする共重合樹脂、例えば、ポリエチレン、エ
チレン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン共重合
体、ポリブテン−1、ポリメチルペンテンから選ばれる
少なくとも1種を用いることができる。さらに、前記α
オレフィンとして、プロピレンーオクテン共重合体やメ
タロセン触媒に起因するポリエチレンのハードエラスト
マーなどの柔軟性樹脂は無論、無水マレイン酸やアクリ
ル酸のグラフト共重合体も含まれる。なお、他のポリオ
レフィン樹脂(B)は、前記難燃効果剤を含有しなくと
も、ポリオレフィン樹脂(A)が難燃効果を有している
ので、ポリオレフィン繊維としての難燃性を阻害するこ
とがない。
【0042】前記難燃性ポリオレフィン繊維は、前記ポ
リオレフィン樹脂(A)を少なくとも30質量%含有
し、前記他のポリオレフィン樹脂(B)を多くとも70
質量%含有することが好ましい。具体的な構成の一例と
しては、前記ポリオレフィン樹脂(A)を第1成分と
し、他のポリオレフィン樹脂(B)を第2成分とする繊
維断面が鞘芯型(偏心型を含む)、背腹型、多芯型、お
よび分割型のうちのいずれかの形状を有する複合繊維が
挙げられる。例えば、芯成分をポリプロピレン樹脂、鞘
成分を高密度ポリエチレン樹脂とする鞘芯型熱接着複合
繊維であって、鞘成分の高密度ポリエチレン樹脂に前記
難燃効果剤が全く添加されなくとも、複合繊維としては
難燃効果を発揮するように、必ずしもポリオレフィン樹
脂(A)が繊維表面を占める必要はない。
【0043】さらに、前記他のポリオレフィン樹脂
(B)は、トリアジン骨格と、過半のトリアジン骨格が
その近傍に位置する複数のピペリジン基を有する、分子
量が2000以上のラジカル捕集機能を有する高分子量
ヒンダードアミンを耐候性安定剤として0.02質量%
以上、1質量%以下の範囲で添加され、さらに、熱安定
剤としてリン系酸化防止剤のアリルフォスファイトを
0.02質量%以上、1質量%以下の範囲で添加され
て、耐候性が強化されていることが好ましい。
【0044】本発明の難燃性ポリオレフィン繊維は、リ
サイクル性が要求される用途には、大部分がポリオレフ
ィン樹脂で構成されるのが好ましく、特に、ポリオレフ
ィン樹脂(A)がポリプロピレン樹脂のみで構成される
が最も好ましいが、用途に応じて、ポリエチレンテレフ
タレートなどのポリエステル樹脂やナイロン6などのポ
リアミド樹脂など他の熱可塑性樹脂との併用であっても
よく、ポリオレフィン樹脂(A)の難燃効果には影響が
ないことは言うまでもない。
【0045】本発明の難燃性ポリオレフィン繊維が複合
繊維にあっては、ポリオレフィン樹脂以外の熱可塑性樹
脂としては、融点が100〜260℃の範囲にある、ポ
リエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテ
レフタレート(PBT)、スルホン化ポリエステル、脂
肪族ポリエステル、共重合ポリエステル、ポリエステル
エーテルなどのポリエステル類、あるいは、ナイロン
6、ナイロン66、ナイロン12、MXDナイロン、共
重合ポリアミドなどのポリアミド類、とこれらの変成体
や混合物が都合良く使用でき、これらに着色剤や充填剤
などの添加物が用途によって添加されていてもよい。な
お、前記熱可塑性樹脂の融点を約260℃以下としたの
は、本発明に用いる難燃効果剤が、現状では熱安定剤で
あるリン系の酸化防止剤を工夫しても、大型の繊維製造
設備で280℃を超える温度で溶融紡糸すると、前記難
燃効果剤の変質なしに安定して生産することが困難だか
らである。また、融点を100℃以上としたのは、例え
ば前記ポリオレフィン樹脂(A)を鞘芯型熱接着複合繊
維の芯成分として考慮したからであって、特に理由はな
く、紡糸性からすると60℃以上でも都合良い。
【0046】具体的には、前記ポリオレフィン樹脂
(A)を第1成分とし、ポリエステル樹脂を第2成分と
する繊維断面が鞘芯型(偏心型を含む)、背腹型、多芯
型、および分割型のうちのいずれかの形状を有する複合
繊維であって、前記ポリオレフィン樹脂(A)が複合繊
維100質量%に対して、少なくとも40質量%含有す
る難燃性ポリオレフィン繊維が挙げられる。
【0047】本発明の難燃性ポリオレフィン繊維の繊度
は、紙、不織布などの形態の製品向けには、0.01〜
100dTex、紡績糸やマルチフィラメント向けに
は、0.5〜10dTex、ニードルパンチ不織布製品
向けには5〜20dTex、モノフィラメントや繊維状
物は0.1〜5mmφとするのが良いが、用途によるの
で特に限定はされない。
【0048】次に、本発明の繊維組成物について具体的
に説明する。
【0049】本発明の繊維組成物は、前記難燃性ポリオ
レフィン繊維を含有した繊維集合物であり、水流交絡や
ニードルパンチなどの物理的交絡、熱風接着や熱ロール
接着などの熱接着、バインダーや接着剤での接着などで
一体化された紙や不織布、スパンボンドやメルトブロー
手法で樹脂より直接不織布化された不織布、紡績糸、マ
ルチフィラメント、モノフィラメントやスプリットヤー
ンなどの織編物(ネット、寒冷紗、メッシュを含む)、
樹脂のストランドで構成された網状体などを言う。
【0050】本発明の繊維組成物は、前記難燃性ポリオ
レフィン繊維と、他の繊維との繊維組成物であって、前
記繊維組成物中に含まれる全てのポリオレフィン樹脂に
対して、前記難燃効果剤を少なくとも0.3質量%の割
合で含有している。繊維組成物中に含まれる全てのポリ
オレフィン樹脂に対して、前記難燃効果剤が0.3質量
%未満であると、難燃特性が発揮できず好ましくない。
なお、前記他の繊維としては、前記他のポリオレフィン
樹脂(B)や熱可塑性樹脂の単一または複合繊維、およ
びレーヨンなどの再生繊維、アクリルやビニロンなどの
合成繊維、木綿、カポック繊維、ヤシ殻繊維、羊毛など
の獣毛や絹などの天然繊維、炭素繊維やガラス繊維など
の無機繊維などが挙げられる。
【0051】また、本発明の繊維組成物において、前記
難燃性ポリオレフィン繊維と、他の繊維との繊維組成物
であって、前記難燃性ポリオレフィン繊維は、30質量
%以上含有することが好ましい。事実、目付がほぼ各層
同じで、総目付が75g/m2の、ポリプロピレン繊維層が
3層からなる水流交絡不織布において、中層を構成して
いるポリプロピレン繊維に、前記難燃効果剤を添加して
いなくても、両表面の繊維層を構成する繊維に前記難燃
性ポリオレフィン繊維が添加されていると、十分な難燃
効果を発揮できる場合も多い。繊維組成物100質量%
に対して、前記難燃性ポリオレフィン繊維が30質量%
未満であると、難燃性が発揮できず好ましくない。特
に、他の繊維を含有しない前記難燃性ポリオレフィン繊
維のみで構成される繊維組成物は、難燃性及びリサイク
ル性の点で最も有効である。
【0052】次に、本発明の繊維積層体について具体的
に説明する。
【0053】本発明の繊維積層体は、前記繊維組成物の
少なくとも片面に、前記難燃効果剤を少なくとも0.2
質量%含み、融点が前記繊維組成物を構成する主体繊維
の融点より少なくとも15℃低いポリオレフィン樹脂
(以下、ポリオレフィン樹脂(C)という)を含む熱可
塑性樹脂で被覆された構造を採る。前記ポリオレフィン
樹脂(C)としては、例えば、プロピレンリッチのエチ
レン−プロピレン共重合体やエチレン−ブテン−1−プ
ロピレン共重合体やプロピレン−オクテン共重合体、こ
れらに無水マレイン酸やアクリル酸をグラフト共重合し
たプロピレン共重合体、あるいは水添スチレンーブタジ
エン、水添スチレンーブタジエン−スチレンおよびこれ
らの未水添の共重合体などオレフィン系エラストマーが
挙げられる。
【0054】前記繊維組成物の少なくとも片面にポリオ
レフィン樹脂(C)層を積層する方法としては、例え
ば、Tダイでオレフィン系樹脂を押し出しながら不織布
と貼り合わせる方法や、一旦フィルムや発泡シートを作
製しておいて、不織布と貼り合わせる方法など、公知の
方法を用いるとよい。
【0055】本発明の繊維積層体に用いられる前記繊維
組成物は、織編物や不織布で構成されていることが好ま
しい。かかる構成の繊維積層体は、テント、自動車の幌
シートや日除けテントなどのアウテリヤ資材、自動車の
内装材など有用である。
【0056】次に本発明の効果を実施例と比較例で具体
的に説明する。なお、本発明の実施の1形態であるステ
ープル繊維で主に説明するが、他の形態の繊維も実施例
を参考にすれば同様に容易に作ることができる。
【0057】
【実施例】(実施例1〜7、比較例1〜2)本発明の実
施例と比較例の繊維は、表1記載の条件に従って、繊維
断面が円のポリプロピレン単一繊維を溶融紡糸し、延伸
して、アルキル硫酸エステル塩からなる易水溶性繊維処
理剤を付与しながら、スターファボックスで捲縮を付与
したものであり、これをネットコンベアー式熱風貫通型
乾燥機で乾燥した後、51mmの長さに切断してステー
プル繊維とした。前記ステープル繊維100質量%から
なる目付180g/m2、厚み約6mmのニードルパンチ不
織布として、JIS.L1091.A−1法で、各繊維
の難燃効果を評価し、表1に示した。燃焼試験の炭化面
積はcm2、残炎および残塵時間は秒であり、燃焼試験の
1分とは1分加熱、着火後とは、着火3秒後を示す。
【0058】なお、本発明の実施例と比較例の繊維は、
あらかじめ添加剤を練り込んだマスターバッチを作り、
これを希釈樹脂と共に押出機で混合して分散させて繊維
化したものである。
【0059】実施例、比較例に使用した添加剤は以下の
通り。 (1)難燃効果剤(N剤):チバ・スペシャリティ・ケ
ミカルズ社製商品名「フレムスタブ CGL−116」 (2)熱安定剤(T剤):チバ・スペシャリティ・ケミ
カルズ社製商品名「イルガホス 168」 (3)高分子量ヒンダードアミン(H剤):チバ・スペ
シャリティ・ケミカルズ社製、「CHIMASSORB
944FD」(商品名)(ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチ
ルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,
6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレ
ン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]、分
子量2000〜3100) また、各表においてPPはポリプロピレン、EPはプロ
ピレンを主体としエチレン5質量%含むエチレン-プロ
ピレン共重合体、PMはポリメチルペンテン、HPEは
高密度ポリエチレン、MPEは中密度ポリエチレン、E
MAはエチレン−メチルアクリレート共重合体、PB1
はポリブテン−1、PETはポリエチレンテレフタレー
トを表す。ポリエチレンとエチレン主体の共重合体を除
く、全てのポリオレフィン樹脂に、H剤、およびT剤を
添加した。
【0060】また、MFRはメルトフローレートを意味
し、測定温度が230℃のASTM−1238(L)に
よる値で、単位はg/10分、ただし、ポリメチルペン
テンPMは測定温度が260℃の値とする。
【0061】また、ポリエステルのIV値は常法の限界
粘度を意味し、表1のPETは0.64の値である。
【0062】表中の温度は℃、密度はg/cm3、繊度はd
Tex、乾強力はcN/dTexである。
【0063】なお、実施例6は、PPのみの鞘芯型複合
繊維であって、鞘成分にN剤を1質量%添加しており、
繊維全体としては0.5質量%の添加であり、熱ロール
を使用した乾式延伸によって作成した繊維である。
【0064】
【表1】
【0065】(実施例8〜19、比較例3〜6)本発明
の実施例と比較例の繊維は、表2から表3記載の条件に
従って、図1〜図3の繊維断面で、複合比を50:50
として溶融紡糸し、実施例1と同様にしてステープル繊
維とした。次いで、前記ステープル繊維をローラーカー
ドでカードウェブとし、145℃の熱風加工機で熱接着
して、目付80g/m2の熱風接着不織布を作成して、難燃
評価を行った。結果を表2、表3に示す。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】(実施例20〜22、比較例7〜8)表4
に示す様に、表1、表2の繊維あるいは、2dTexの
PET繊維を混綿し、ローラーカードでカードウェブと
し、水流交絡処理を施して、目付80g/m2の水流交絡不
織布とし、実施例1と同様にして難燃評価を行った。結
果を表4に示す。
【0069】
【表4】
【0070】(実施例23)実施例1と同様にして実施
例11のEPを用いて、孔径0.7mmのノズルより繊
維径0.7mmのストランドを流下させ、移動している
凹凸形状の金型上に堆積させて、前記ストランドの交点
が融着接着した目付500g/m2の立体網状体を作成し
た。難燃性は実施例11と同様であった。
【0071】
【発明の効果】本発明の難燃性の効果を有するポリオレ
フィン樹脂を用いたポリオレフィン繊維及びこれを用い
た繊維組成物と繊維積層体は、良好な難燃性を示し、火
災時にも有害ガスを発生させず、たとえ焼却によって廃
棄処分を行なっても有毒物質の発生がなく、リサイクル
の容易な商品を作成できる。難燃化による製品の性能低
下もほとんどない。さらに、ハロゲンを含まないので、
ダイオキシン等も発生せず環境に優しい難燃性ポリオレ
フィン繊維と繊維組成物及び繊維積層体として適してい
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における鞘芯型複合繊維の概
略図。
【図2】本発明の一実施例における分割繊維型複合繊維
の概略図。
【図3】本発明の一実施例における図1と成分が逆の鞘
芯型複合繊維の概略図。
【符号の説明】
1 複合繊維の1成分 2 複合繊維の他の成分
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D04H 1/58 D04H 1/58 B (72)発明者 高井 庸輔 兵庫県加古郡播磨町古宮877番地 ダイワ ボウポリテック株式会社播磨研究所内 Fターム(参考) 4L035 BB31 BB60 DD19 EE14 FF01 JJ19 KK10 LA01 4L041 AA07 BA09 BA21 BC11 BD11 CA38 CB15 CB19 4L047 AA14 AA21 AA27 AA28 AA29 AB02 BA03 BA09 BA12 CB04 CC09 CC10 CC12 CC16

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 構成するモノマー成分の平均炭素数Cが
    2.6≦C≦8であるαオレフィンを重合したポリマー
    を含む少なくとも1種のポリオレフィン樹脂(A)を含
    む繊維であって、前記ポリオレフィン樹脂(A)は下記
    (1)〜(3)の化合物を含有していることを特徴とす
    る難燃性ポリオレフィン繊維。 (1)トリアジン骨格とその近傍に位置する複数のピペ
    リジン基のイミノ基(>N−H)の一部または全部がN
    −アルコキシ・イミノ基(>N−O−R)(但し、RO
    −は炭素数1〜18のアルコキシ(alkoxy)基、炭素数
    5〜12のシクロアルコキシ(cycloalkoxy)基、炭素
    数7〜25のアルアルコキシ(aralkoxy)基、炭素数6
    〜12のアリーロキシ(aryloxy)基)に置換されてい
    るヒンダードアミン誘導体を難燃効果剤として0.2質
    量%を超え、10質量%未満の範囲 (2)熱安定剤であるリン系酸化防止剤のアリールフォ
    スファイト (3)トリアジン骨格と、過半のトリアジン骨格がその
    近傍に位置する複数のピペリジン基を有する分子量が2
    000以上の高分子量ヒンダードアミンを0.02質量
    %以上1質量%以下の範囲
  2. 【請求項2】 前記難燃効果剤が、N−アルコキシ・イ
    ミノ基(>N−O−R)(但し、RO−は炭素数1〜1
    8のアルコキシ(alkoxy)基、炭素数5〜12のシクロ
    アルコキシ(cycloalkoxy)基、炭素数7〜25のアル
    アルコキシ(aralkoxy)基、炭素数6〜12のアリーロ
    キシ(aryloxy)基)に置換されている分子量2000
    以上の高分子量ヒンダードアミン誘導体である請求項1
    に記載の難燃性ポリオレフィン繊維。
  3. 【請求項3】 前記難燃効果剤の添加量をa質量%、熱
    安定剤の添加量をb質量%としたとき、それぞれの添加
    量が下記の式を満たす請求項1または2に記載の難燃性
    ポリオレフィン繊維。 0.2<a<10 1<a/b<70 かつ0.02≦b
  4. 【請求項4】 前記繊維を構成する全てのポリオレフィ
    ン樹脂100質量%に対して、繊維が難燃効果剤を少な
    くとも0.3質量%の割合で含有する請求項1〜3のい
    ずれかに記載の難燃性ポリオレフィン繊維。
  5. 【請求項5】 前記繊維が、ポリオレフィン樹脂(A)
    を少なくとも30質量%含有する単一繊維、または複合
    繊維である請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性ポリ
    オレフィン繊維。
  6. 【請求項6】 前記繊維が、ポリオレフィン樹脂(A)
    を少なくとも30質量%含有し、炭素数Cが2≦C≦8
    であるαオレフィンから選ばれた少なくとも1つの成分
    を主成分とする他のポリオレフィン樹脂(B)を多くと
    も70質量%含有する請求項5記載の難燃性ポリオレフ
    ィン繊維。
  7. 【請求項7】 前記繊維が、ポリオレフィン樹脂(A)
    を第1成分とし、他のポリオレフィン樹脂(B)を第2
    成分とする繊維断面が、鞘芯型、背腹型、多芯型、およ
    び分割型のうちのいずれかの形状を有する複合繊維であ
    る請求項1〜6のいずれかに記載の難燃性ポリオレフィ
    ン繊維。
  8. 【請求項8】 前記他のポリオレフィン樹脂(B)が、
    ポリエチレン、エチレン共重合体、プロピレン共重合
    体、ポリブテン−1、ポリメチルペンテンから選ばれる
    少なくとも1種の樹脂である請求項6または7に記載の
    難燃性ポリオレフィン繊維。
  9. 【請求項9】 前記他のポリオレフィン樹脂(B)が、
    前記高分子量ヒンダードアミンを耐候性安定剤として
    0.02質量%以上、1質量%以下の範囲で含有し、前
    記熱安定剤を0.02質量%以上、1質量%以下の範囲
    で含有している請求項6〜8のいずれかに記載の難燃性
    ポリオレフィン繊維。
  10. 【請求項10】 前記ポリオレフィン樹脂(A)を第1
    成分とし、ポリエステル樹脂を第2成分とする繊維断面
    が、鞘芯型、背腹型、多芯型、および分割型のうちのい
    ずれかの形状を有する複合繊維であって、前記ポリオレ
    フィン樹脂(A)が複合繊維100質量%に対して、少
    なくとも40質量%含有する請求項1〜5のいずれかに
    記載の難燃性ポリオレフィン繊維。
  11. 【請求項11】 前記ポリオレフィン樹脂(A)が、ポ
    リプロピレン樹脂のみからなる請求項1〜10のいずれ
    かに記載の難燃性ポリオレフィン繊維。
  12. 【請求項12】 前記ポリオレフィン樹脂(A)が、ポ
    リプロピレン樹脂と、プロピレン共重合体、ポリブテン
    −1、ポリメチルペンテンから選ばれる少なくとも1種
    との混合樹脂である請求項1〜10のいずれかに記載の
    難燃性ポリオレフィン繊維。
  13. 【請求項13】 請求項1〜12のいずれかに記載の難
    燃性ポリオレフィン繊維と、他の繊維との繊維組成物で
    あって、前記繊維組成物中に含まれる全てのポリオレフ
    ィン樹脂に対して、前記難燃効果剤が少なくとも0.3
    質量%の割合で含有している繊維組成物。
  14. 【請求項14】 請求項1〜12のいずれかに記載の難
    燃性ポリオレフィン繊維と、他の繊維との繊維組成物で
    あって、前記難燃性ポリオレフィン繊維を30質量%以
    上含有する繊維組成物。
  15. 【請求項15】 請求項1〜12のいずれかに記載の難
    燃性ポリオレフィン繊維のみで構成される繊維組成物。
  16. 【請求項16】 前記繊維組成物を構成する繊維同士が
    物理的繊維交絡によって一体化されている請求項13〜
    15のいずれかに記載の繊維組成物。
  17. 【請求項17】 前記難燃性ポリオレフィン繊維により
    構成する繊維同士が熱接着されている請求項13〜16
    のいずれかに記載の繊維組成物。
  18. 【請求項18】 前記繊維組成物を構成する繊維同士が
    接着剤によって一体化されている請求項13〜16のい
    ずれかに記載の繊維組成物。
  19. 【請求項19】 請求項13〜18のいずれかに記載の
    繊維組成物の少なくとも片面が、前記難燃効果剤を少な
    くとも0.2質量%含み、融点が前記繊維組成物を構成
    する主体繊維の融点より少なくとも15℃低いポリオレ
    フィン樹脂を含む熱可塑性樹脂で被覆されている繊維積
    層体。
  20. 【請求項20】 前記繊維組成物が織編物で構成されて
    いる請求項19記載の繊維積層体。
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