JP4365418B2 - オレフィン人造レザー及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、オレフィン複合シートに関する。さらに好適には、難燃性が高く、かつ焼却などの廃棄処分が無害にでき、リサイクル可能で、強力などの性能が従来並みで製品の使い勝手が従来通りできる、複合シートに関し、インテリア資材、家電筐体、または自動車の内装材などに使用でき、従来の塩化ビニール樹脂製レザー代替のオレフィン人造レザーに関する。
従来の塩化ビニル樹脂製レザーは、ポリエステルニット(編み物)に軟質塩化ビニルを固着させて作られている。ニットが基布となり適度な柔軟性を持った商品であり、軟質塩化ビニルとニット基布の抗張力が適度なため、軟質塩化ビニルが破断しビニル層にクラックを生じるほどの引っ張り力は使用上生じないので、塩化ビニルレザーが多用されている。
図2A−Bを用いて従来の塩化ビニル樹脂フィルムを用いた人造レザーの構造を説明する。図2Aは断面切り欠き図、図2Bは断面図である。織編物11の一方の表面に塩化ビニル樹脂フィルム12を貼り合せ、人造レザー13を形成している。
また、ポリエステルなどの織物に、軟質塩化ビニルを固着させて作られている幌やテント地などの防水シート、そしてインテリア資材としての壁紙や仕切りカーテンとして、織物を軟質塩化ビニルで被覆加工したシートも多用されている。塩化ビニルで被覆加工したシートは、各種のカバー、壁紙やピータイルなどのインテリア資材、冷蔵庫、テレビやAVなどの家電製品の筐体、そして、自動車の内装材など、従来から製品に難燃性が求められている分野では、塩化ビニル製品やハロゲン化合物の難燃剤を用いた製品が多用されてきたが、使用後に焼却して廃棄処分するとダイオキシンなどの有害物の発生の可能性があり、火災時にハロゲン化水素などの有害物や煤が発生し、いずれも危険で問題視されている。また、最近は、リサイクル性などが強く要求されて、ポリエチレンテレフタレートよりリサイクルが容易なポリオレフィン樹脂で上記資材を作ることが求められている。
塩化ビニルで被覆加工したシートの代替として、リサイクル可能なポリオレフィン系樹脂のみでなるシートの要望が強いが、従来のマルチフィラメントや紡績糸の織編み物を使用していては、塩化ビニルに替わる柔軟フィルム素材の価格が高く、製造価格的に、顧客の要望を満たすことができない。
また、リサイクル可能なポリオレフィン系樹脂のみでなるシートが製造できても、ポリオレフィン樹脂はラジカル重合で作られているため、難燃化が困難であり、ハロゲン化合物の難燃剤が用いられてきた。しかし、従来のハロゲン系難燃剤を用いての難燃性ポリオレフィンシートでは、本質的に、塩化ビニルシートと変わりがない。
従来のポリオレフィン系の難燃性資材には、比重の重いハロゲンガスを、熱分解させて発生させ、資材表面を覆って酸素を遮断することで難燃化するハロゲン系難燃剤、主に縮重合樹脂で効果を発揮する、熱分解温度を下げ、脱水反応で水素を引抜いて炭化を促進して難燃化するリン酸アンモニウム塩や赤燐などの燐化合物、そして、不燃の無機物やさらには結晶水を加熱すると放出する無機物を概ね過半量添加して、可燃性の樹脂の量を減らすことで難燃化する水酸化マグネシュウムなどの水酸化物などを使用しており、これらを検討したが、難燃性は従来の物より格段に優れたものはなかった。
特に繊維を用いたシート製品は、電気コードなどに比べて作りにくいので、少量で難燃化できる難燃剤が不可欠で、良いものがなかった。
ハロゲン化水素などの有害物や煤を発生しない難燃性ポリオレフィン繊維として、例えば、特許文献1〜2では、ヒンダードアミン・ラジカル捕集剤のイミノ基(>N−H)の一部または全部がN−アルコキシ・イミノ基(>N−O−R)に置換されているヒンダードアミン誘導体を難燃効果剤としてポリオレフィン樹脂に添加した繊維が提案されている。特許文献3〜5では、リン酸エステル系難燃剤とNOR型ヒンダードアミン系安定剤とを含有するポリプロピレン繊維が提案されている。
ポリオレフィンレザーとして、例えば、特許文献6では、ポリオレフィン混合組成物からなる表皮層とポリエステルやポリプロピレンなどからなる基布との間にポリオレフィンと無機難燃剤とからなる難燃層に配置され、一体的に成形された難燃性ポリオレフィンレザーが提案されている。
WO99/00450号明細書 特開2001−254225号公報 特開2001−348724号公報 USP5393812号明細書 EP792911号明細書 特開平11−172582号公報
以上のとおり、塩化ビニル樹脂で被覆加工したシートは、塩化ビニル樹脂を用いているため難燃性に優れているが、その代替品にも、当然難燃性の付与が求められている。
上記の製品に難燃性が求められている分野では、従来、難燃効果の高いハロゲン化合物、例えば、塩化ビニル樹脂やハロゲン系難燃剤がこの用途に多用されてきたが、火災時にハロゲン化水素などの有害物や煤を発生し、被災者にこれら有害物が強い被害を与え、また、破損や劣化で使用に耐えなくなった時、焼却して廃棄処分するとダイオキシンなどの有害物が発生するため焼却できず、微生物などでの処分もできないため、これらの使用は廃棄処分に重大な問題があった。
また、これら製品を製造またはリサイクル使用する時、ハロゲン化水素などの有害物が発生し、製造環境の劣悪化と製造設備の劣化を招き問題が大きく、塩化ビニル製品においては、使用によって柔軟剤が溶出して再生が出来ない問題がある。
また、ハロゲン化水素などの有害物や煤を発生しない難燃性ポリオレフィンとして提案されているものであっても、特開2001−254225号公報のように、単にN−アルコキシ・イミノ基(>N−O−R)に置換されているヒンダードアミン誘導体を添加するだけであっては、十分な難燃効果が得られない場合がある。WO99/00450では、十分な難燃効果が得られるように他の難燃剤との併用も提案している。
特開2001−348724号公報、USP5393812、およびEP792911は、従来の難燃性ポリプロピレン繊維と同様にリン系難燃剤を多量に含有させる必要があり、難燃効果を有するNOR型ヒンダードアミンを補助的に用いるのみであり、不経済である。
ポリオレフィンレザーとして、特開平11−172582号公報では、中間層のみで全体の難燃性を持たせようするため、無機難燃剤を多量に必要とし、不経済であるだけでなく、焼却処分する際に無機難燃剤が多量の灰となって残存してしまう。また、基布も主として織物やフォームを用いており、不経済である。
本発明は、前記従来の問題を解決するため、適度な柔軟性と、寸法安定性および強度を有し、かつ製造コストの安い、さらに難燃化に好適で、廃棄処理が容易であるオレフィン人造レザー及びその製造方法を提供する。
本発明のオレフィン人造レザーは、ポリオレフィン樹脂を含むメッシュシートの少なくとも片面に、ポリオレフィン繊維を含む繊維ウェブが積層され前記メッシュシートと水流交絡により一体化されて複合不織布を形成しており、前記複合不織布の少なくとも片面に、オレフィン系樹脂層が積層されていることを特徴とする。
本発明のオレフィン人造レザーの製造方法は、ポリオレフィン樹脂を含むメッシュシートの少なくとも片面に、ポリオレフィン繊維を含む繊維ウェブを積層し、水流交絡により一体化させて複合不織布とした後、複合不織布の少なくとも片面にオレフィン系樹脂層を貼り合わせることを特徴とする。
本発明は、適度な柔軟性と、寸法安定性および強度を有し、かつ製造コストの安い、さらに難燃化に好適で、廃棄処理が容易であるオレフィン複合シートを提供できる。
さらに本発明の好ましい例によれば、オレフィン複合シートは、全てをポリプロピレン系樹脂で構成されているため、リサイクルと無害な焼却処分ができ、都合が良い。また、従来の織編み物を用いたものより安価に供給が可能であるので、現行の塩化ビニルシートの代替品として適用でき、オレフィンレザーとして、インテリア資材、家電筐体、または自動車の内装材などの用途に適用できる。
塩化ビニルで被覆加工したシートの代替品では、被ラミネートシート素材は、従来から織編み物が公知であり、少なくとも、縦横の寸法安定性と、適度な厚みが必要で、これらを満足する素材では、従来から使用されている織編み物が好適であるが、価格が高く、塩化ビニル被覆シートの価格に合わせることができないため、前記織編み物を物性的に代替でき、価格的に有利な新たな素材が必要となった。
本発明は、前記新素材として、寸法安定と縦横方向の強度を確保するために、メッシュ、スクリム、粗い平織りなどの粗織物、あるいは粗編物などのメッシュシートと、適度な厚みを確保するため、繊維ウェブを用い、メッシュシートの少なくとも片面に繊維ウェブを積層し、一体化した複合不織布を、前記した織編み物の代わりとしている。
本発明において、前記メッシュシートのメッシュの密度は、3〜60メッシュ(縦横1インチ当たりに占める繊維(糸条)本数が3〜60本/インチ)程度が好ましい。より好ましいメッシュ密度の下限は、5メッシュ以上である。より好ましいメッシュ密度の上限は、50メッシュ以下である。
前記メッシュシートの形態として、好ましくは、2次元的に少なくとも縦横または斜め方向の2方向に伸びる糸条が整然と配置されこれらの糸条が交差しており、前記糸条で囲まれた孔状空間を持つ網状物であって、具体的には、玉葱袋やコンウェッド社のコンウェッドネットに代表される熱可塑性樹脂でなる一体化成形された網状物、防虫網や寒冷紗の様に各糸条を予め作り、織りまたは編みたてによって成形された網状物とこれらの糸条の交差した交点を熱接着もしくは樹脂接着した網状物、および粗く構成した織編み物などが挙げられる。
前記メッシュシートは、ポリオレフィン樹脂を含む材料で構成されており、リサイクルや無公害焼却のため、ポリオレフィン樹脂のみで構成することが好ましく、さらにプロピレンのホモポリマーまたはこれらを主成分とする共重合体で全て構成されていることが最も好ましい。
前記メッシュシートを構成する糸条の太さは、一体成形物やモノフィラメントやマルチフィラメントでは、直径1mmφ未満、紡績糸として使用する場合は、100dTex未満が好ましく、一体成形物やフィラメントでは、直径0.5〜0.1mmφ、紡績糸ではカード通過性から20〜1dTexが特に好ましい。
前記メッシュシートの目付は、2〜200g/m2で良く、5〜50g/m2が、補強効果を考慮すると、経済的に特に好ましい。
次に、前記メッシュシートの少なくとも片面に積層されるポリオレフィン繊維を含む繊維ウェブとしては、メッシュシートと一体化可能であれば特に限定はされず、例えば、乾式不織布工程であるカード法、エアレイド法、および紙漉きなどの湿式不織布工程から選ばれた少なくとも1工程を用いて開繊した開繊ウェブ、あるいは接着処理や交絡処理などで結合された結合ウェブなどを用いることができる。特に、後述する水流交絡により一体化させる場合、カード法からなる繊維ウェブを用いることが好ましい。
前記繊維ウェブは、ポリオレフィン繊維を含む材料で構成され、リサイクルや無公害焼却のため、ポリオレフィン繊維のみで構成することが好ましく、さらにプロピレンのホモポリマーまたはこれらを主成分とする共重合体で全て構成されていることが最も好ましい。
また、前記ポリオレフィン繊維は、繊度が0.5〜30dTexのものが都合良い。
次いで、前記メッシュシートの少なくとも片面に前記繊維ウェブが積層されるが、メッシュシートの両面に繊維ウェブを積層したほうが、厚み、平滑性、あるいはメッシュシートとの交絡性などの点から好ましい。
前記メッシュシートと繊維ウェブとは積層され、一体化されて複合不織布となるが、一体化の手段は接着手段、交絡手段、あるいはそれらの併用などいずれであっても良く、特に、交絡手段として、水流交絡処理が最も都合良く、ニードルパンチによっても良い。交絡手段によれば、前記繊維ウェブの繊維同士を交絡せしめると共にメッシュシートも前記繊維で交絡されて一体化され、交絡繊維層化させることができ、好ましい。特に、ポリプロピレン繊維をステープルとし、ローラーカードを用いた繊維ウェブを水流交絡処理でメッシュシートと一体化させる手法が、経済的で最も好ましい。
前記複合不織布は、ポリオレフィン樹脂を含む材料で構成され、リサイクルや無公害焼却のため、全ての材料をポリオレフィン樹脂のみで構成することが好ましく、さらにプロピレンのホモポリマーまたはこれらを主成分とする共重合体で全て構成されていることが最も好ましい。
これらの素材と手段で製造した複合不織布は、従来の、紡績糸やマルチフィラメントを使用した織編み物より、製造価格を大幅に低減でき、目的を達成できる。さらに、ポリオレフィン樹脂を含むメッシュシートの少なくとも片面に、ポリオレフィン繊維を含む繊維ウェブが積層され前記メッシュシートと水流交絡により一体化された複合不織布が、適度な柔軟性と、寸法安定性および強度を有し、かつ製造コストが安く本発明の強化複合不織布として最適である。
用途によるが、複合不織布の目付は15〜300g/m2が都合良く、適応商品と水流交絡処理の生産性を考慮すると、経済的には40〜120g/m2が特に都合良い。
次に、前記複合不織布の少なくとも片面にオレフィン系樹脂層が積層されて、本発明のオレフィン複合シートとしている。前記複合不織布の少なくとも片面にオレフィン系樹脂層を積層する方法としては、例えば、Tダイでオレフィン系樹脂を押し出しながら不織布と貼り合わせる方法や、一旦フィルムや発泡シートを作製しておいて、不織布と貼り合わせる方法など、公知の方法を用いるとよい。
さらに、前記オレフィン系樹脂層が、エンボス加工、印刷加工および着色加工から選ばれる少なくとも一つの加工がなされていると、意匠性を高める点で好ましく、前記複合不織布の少なくとも片面にオレフィン系樹脂層を積層した後、処理することが好ましい。
また、塩化ビニル被覆と同等の柔軟性と触感は、プロピレンのホモポリマーまたはこれらを主成分とする共重合体、およびオレフィン系エラストマーから選ばれる少なくとも一つの軟質な樹脂による代替で、目的を達成できる。
前記オレフィン系樹脂層の厚み(目付)は、0.02〜3mm(約18〜2700g/m2)であることが好ましい。特に、オレフィン人造レザーとして用いる場合、0.5〜1.5mm(約450〜1400g/m2)であることがより好ましい。
図1A−Bを用いて本発明の一実施形態におけるオレフィン複合シート(オレフィン人造レザー)の構造を説明する。図1Aは断面切り欠き図、図1Bは断面図である。メッシュシート1の少なくとも一方の面に繊維ウェブ(2及び/又は3)を積層し、水流などを用いて交絡一体化し、オレフィン系樹脂層(軟質フィルム)4を貼り合せ、オレフィン人造レザー6を形成している。5はメッシュシート1を構成する縦糸と横糸の交点の固定部である。
次いで、本発明の目的の一つは、塩化ビニルで被覆加工したシートの代替であるから、当然、難燃性の付与した複合不織布が求められる。さらには、従来から多用されているハロゲン系難燃剤を用いると、本質的に、塩化ビニル製品と変わりがない。
ポリオレフィン樹脂に難燃性を発現させるには、
(1) 酸化剤である酸素の遮断
(2) 着火しない低温で熱分解させて耐熱性の炭化物で被覆する
(3) 可燃物である樹脂の含有量を減らし着火しても低発熱とする手段が従来の難燃性付与方法であった。これらを整理すると、(1)酸化剤の遮断、(2)燃焼時の可燃ガス発生抑制、(3)炎の低温化となり、ポリオレフィン系の難燃樹脂では、(1)の効果を持つハロゲン系難燃剤を主体とし、(2)または(3)の添加剤を補助とした難燃剤構成であった。しかし、製造上、使用上、火災発生時などで大きな問題を抱えているため、前記従来の難燃剤の概念を捨てて、最初から再検討した。
本発明は、ポリオレフィン樹脂の燃焼機構が、まず、熱によって樹脂が熱分解を起こし、低分子量のモノマーなどを放出して、これらが着火し、さらに熱分解の連鎖を起こして燃焼する機構と仮定して検討を続けた結果、ハルス系(HALS:Hindered Amine Light Stabilizersの略でトリアジン骨格とピペリジン基が含まれる耐候性安定剤の総称。)のラジカル捕集剤をポリオレフィンの安定剤としてでなく、難燃化剤としてもっと大量に添加することで、外部からの炎によって樹脂が熱分解される時、アルキルラジカル(R・)がまず発生するが、このラジカルを捕捉することで、熱分解連鎖を遮断すれば、中分子量物から低分子量物の発生を抑制でき、ポリオレフィン樹脂やその加工品を難燃化できるのではと考えた。
本発明者らは、イミノ基(>NH)を持つハルス系のラジカル捕集剤の濃度アップによって、ポリオレフィン樹脂を難燃化できないか、種々検討したが、期待する難燃効果は得られなかった。すなわち、燃焼によって生じたラジカル(R・)や(ROO・)をイミノ基(>NH)ハルスは十分捕捉できず難燃効果を発揮しないことが判った。
ハルス系のラジカル捕集剤の作用機構は、文献に記載があり、通説がほぼ確定している。例えば、1998年日刊工業新聞社発行の高分子添加剤の新展開があり、そのサイクルには、イミノ基(>NH)だけでなく、ヒドロキシイミノ基(>NOH)やアルコキシイミノ基(>NOR)、そして>NO・ラジカルが含まれ、燃焼によって発生したラジカル(R・)は、酸素分子O2と非常に早く反応してROO・ラジカルになるが、>NO・ラジカルもラジカル(R・)と前記と同じくらい早く反応してアルコキシイミノ基(>NO)となってラジカル(R・)を消滅させる。したがって、>NO・ラジカルを持つハルス系添加剤が期待できるが、ラジカルのため不安定で添加剤としては入手できない。この>NO・ラジカルを容易に発生するのがアルコキシイミノ基(>NOR)であり、揮発し易いアルキルを放出して>NO・ラジカルを発生させ、代わりにポリオレフィン樹脂が分解して発生した中分子量物から低分子量物を捕捉、安定させることで、可燃性物質の発生を量的に抑制して難燃効果を発現できるのではと考えた。
なお、>NORのアルキル基は、当然揮発し易く、少しでも酸化や分解しにくいアルキルが良く、直鎖状より、環状のものが都合が良いと推定される。なお、アルコキシイミノ基(>NOR)はラジカル捕集が固相ではさらに有利であり、繊維やフィルムなどの成形物の内部ではラジカル(R・)の捕捉も期待できる。また、燃えるものが少ないか、無くなれば燃えないはずであり、炎が当たると速やかに溶融して、炎の部分から樹脂を溶融張力で収縮させて、樹脂を遠ざける、すなわち、簡単に溶けてより大きな穴を開けれる様な薄手の不織布など、使う仕様も工夫すれば、結果として難燃効果をさらに発現できるとも考え、発明に至ったのである。
本発明者らは、アルコキシイミノ基(>NOR)型の高分子ハルスを練り込んだ樹脂を用い、ポリプロピレン(PP)繊維からなる不織布を試作して、評価したところ、偶然にも良い難燃効果を示す結果を得た。
そこで、種々のメーカーのポリオレフィン樹脂に拡大して検討した。しかし、予想に反してほとんどの樹脂で、期待する結果を得ることができなかった。比較例で例示する様に、2質量%の添加でも全焼する結果となり、特定のポリプロピレン(PP)樹脂でのみ、難燃等級が最高の3級に、0.5質量%添加でも安定してなることしか判らなかった。
そこで、使用したポリオレフィン樹脂の安定剤の相関を調査し、アリールフォスファイトである、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト(安定剤T、または単にT剤という。)を添加した樹脂をマスターバッチのベース樹脂とした繊維が、難燃効果もしくは難燃化傾向を持つことを知った。
そこで、本発明に用いるNOR型高分子ハルスと安定剤Tを一緒に練り込んだマスターバッチ(MB)と安定剤Tのみのマスターバッチを作り、検討したところ、以前に全焼した樹脂も、本発明に用いる難燃剤が同じ2重量%添加で、安定剤Tを併用することで、難燃等級が最高の3級の繊維とすることができ、本発明に至ったのである。
なお、本発明に用いる、いわゆるリン系酸化防止剤アリールフォスファイトは、溶融混合して作るマスターバッチや、溶融して作る繊維やフィルムに用いる場合、樹脂を溶融する200℃以上の温度で、劣化防止に卓越した効果を発揮するため、前記リン系酸化防止剤を添加すると、少なくとも、本発明に用いるNOR型高分子ハルスの熱的変質を防止して、その難燃効果を発揮させると推定される。また、燃焼時、繊維やフィルムなどの成形物の表面が溶融するため、何らかの良い相乗効果を与えているとも推定される。いずれにしても、安定剤Tは本発明のオレフィン複合シートおよび強化複合不織布の難燃化には不可欠である。
さらに、ポリオレフィン樹脂、特にはポリプロピレン樹脂が本来基本的に保有することが不可欠な耐候性を持たせるため、各種安定剤を添加することも不可欠であり、前記MBを希釈するポリオレフィン樹脂での本発明に用いる難燃効果剤と安定剤間の相性を検討したところ、ハルス系安定剤以外では好ましい結果を得ることができなかった。具体的には、酸化防止剤、光安定剤やラジカル捕集剤と前記した難燃効果剤であるNOR型の高分子ハルスとの相性の問題があり、酸化防止剤の代表例であるフェノール系酸化防止剤BHTとは相互に反応してNOR型の高分子ハルスが変質化し、黄変または褐色変し、本発明に用いる難燃効果剤も余分に添加する必要があって、該BHTを添加しない方が良いため、使用できず、イルガノックス1010も同様であった。結局、難燃効果剤であるNOR型の高分子ハルスと化学構造が近いハルス系のラジカル捕集剤が樹脂の耐候性と難燃性の両立をさせるに最も都合が良いことが判明した。
特に、分子量が2000以上で、トリアジン骨格と、過半のトリアジン骨格がその近傍に位置する複数のピペリジン基を有する高分子量ヒンダードアミンが、本発明に用いる難燃効果剤の難燃効果を生じる添加量に影響を与えず、かつ、黄変などの着色も極めて低くすることができ、本発明に用いるポリオレフィン樹脂、特にはポリプロピレン樹脂の耐候性安定剤として最適なことを知った。MBに使用するポリオレフィン樹脂にさらに適量のリン系酸化防止剤アリールフォスファイトを追加するともっと都合が良いことも判明した。
以下、本発明のオレフィン複合シートおよび強化複合不織布を従来の難燃剤を用いずとも難燃化し得る方法について、具体的に説明する。
本発明の好ましい例としては、前記オレフィン複合シートにおける少なくともポリオレフィン繊維およびオレフィン系樹脂層を構成するオレフィン系樹脂、あるいは強化複合不織布を構成するポリオレフィン繊維に、ヒンダードアミン・ラジカル捕集剤のイミノ基(>N−H)がN−アルコキシ・イミノ基(>N−O−R)(但し、RO−は炭素数1〜18のアルコキシ(alkoxy)基、炭素数5〜12のシクロアルコキシ(cycloalkoxy)基、炭素数7〜25のアルアルコキシ(aralkoxy)基、炭素数6〜12のアリーロキシ(aryloxy)基)に置き換えられているヒンダードアミン誘導体が難燃効果剤として、リン系酸化防止剤のアリールフォスファイトが、被添加樹脂が溶融状態時に前記難燃効果剤の変質を防止する加工熱安定剤としてそれぞれ添加されている。前記難燃剤の添加濃度をa重量%、前記加工熱安定剤の添加濃度をb重量%とすると、0.2<a<10で、1<a/b<30かつ0.02≦bであるよう添加して、オレフィン樹脂に難燃性を付与することで難燃化した繊維やフィルムなどの成形物を提供できる。使用する難燃効果剤は、従来の難燃剤でなくポリオレフィン樹脂の安定剤である特定のヒンダードアミン系安定剤を用いる。その結果、環境ホルモンも発生しない添加剤、すなわちハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤を用いずとも(ノンハロゲン化、ノンリン化で)難燃化を達成することが可能であり、火災時にも有害ガスを発生せず、廃棄処分でも有害物を排出しないので安全であり、リサイクルも容易であり、必要添加量も従来の難燃剤より少ない。したがって、繊維やフィルムなどの成形物の性能の低下もあまり生じない特徴を持ったポリオレフィン系の複合不織布とすることができる。なお、前述したノンリン化で難燃化とは、少量のリン系酸化防止剤は本発明に不可欠であるため除外できないが、前記リン系酸化防止剤より大量に添加するリン系難燃剤は使用しておらず、繊維のリン含有量は、従来の難燃オレフィン繊維より遥かに少ないことを示唆しているのである。
また、本発明のオレフィン複合シートおよび強化複合不織布にあっては、全てのオレフィン樹脂に本発明に用いる難燃効果剤を添加する必要もなく、他の樹脂も使用でき、前記オレフィン複合シート全体または前記強化複合不織布全体を100質量%としたとき、前記難燃効果剤および前記熱安定剤を含有するオレフィン樹脂の存在割合が、30質量%以上であることが好ましい。事実、ポリオレフィン樹脂を含むメッシュシートに、本発明に用いる難燃効果剤を添加していなくても、構成するポリオレフィン繊維とオレフィン系樹脂層に前記難燃効果剤が添加されていると、十分な難燃効果を発揮できる場合もある。もちろんメッシュシートを構成するポリオレフィン樹脂が、前記難燃効果剤および前記熱安定剤を含有していても良いことはいうまでもない。
また、前記オレフィン複合シートおよび強化複合不織布全体を100質量%としたとき、前記難燃効果剤が、0.3質量%以上の割合で含有されていれば、難燃性の効果が生じる。
前記難燃効果剤としては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社の商品名「チモソルブ944」などのように多数のイミノ基が側鎖として存在するタイプの分子量2000以上の高分子量タイプで、トリアジン骨格とこれの近傍に位置する複数のピペリジン基のイミノ基>N−HがN−アルコキシ・イミノ基>N−O−Rに置き換えられている高分子量ヒンダードアミン誘導体がラジカル捕集によって3次元化するので、揮発物を抑制でき、最も好ましい。そして、イミノ基の窒素の部分が、Nーアルコキシ・イミノ基(>N−O−R)(但し、RO−は炭素数1〜18のアルコキシ(alkoxy)基、炭素数5〜12のシクロアルコキシ(cycloalkoxy)基、炭素数7〜25のアルアルコキシ(aralkoxy)基、炭素数6〜12のアリーロキシ(aryloxy)基)であり、前記有機基は、アルキル−パーオキシラジカル(RO2・)を捕捉して容易に>NO・ラジカルとなり難燃効果を発揮する。なお具体的なNーアルコキシ・イミノ基(>N−O−R)を持つNOR型の高分子ハルス難燃効果剤は、トリアジン骨格とこれの近傍に位置する複数のピペリジン基のイミノ基>N−HがN−アルコキシ・イミノ基>N−O−Rに置き換えられている、分子量が2000を超える高分子量ヒンダードアミン誘導体がブリードアウトの少ないなどの点からも都合良く、アルコキシ基はシクロヘキサノールのアルコールの水素基が欠落した基が最も都合が良い。その一例は、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社のフレームスタブNOR116である。その化学構造を下記式(化1)に示す。
Figure 0004365418
本発明に用いる難燃効果剤では、ポリオレフィン樹脂のうちポリエチレンは、ポリプロピレンに比べ、難燃効果を付与しにくく、ポリブテン−1やポリメチルペンテン−1などの側鎖のあるαポリオレフィン樹脂の難燃化に有効の様である。これは、第3級炭素によって、発生するラジカルの寿命が長くなる影響も考えられる。前記した理由からモノマーの炭素数が3以上のポリオレフィン樹脂を主体として用いることが望ましいが、さらに、製造価格を考慮して、本発明では、用いるポリオレフィン樹脂は、プロピレンのホモポリマー、これを主成分とする共重合体、およびオレフィン系エラストマーから選ばれる少なくとも1種を適用した。これらを以下、ポリプロピレン系樹脂という。また、本発明でいうポリプロピレン樹脂は、プロピレンのホモポリマーまたはこれを主成分とする共重合体を示す。前記プロピレンを主成分とする共重合体は、プロピレンリッチのエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−ブテン−1−プロピレン共重合体やプロピレン−オクテン共重合体は無論、無水マレイン酸やアクリル酸のグラフト共重合体も含む。また、オレフィン系エラストマーは、水添スチレンーブタジエン、水添スチレンーブタジエン−スチレンおよびこれらの未水添の共重合体、あるいはメタロセン触媒を用いて重合したポリエチレンのハードエラストマーなどの軟質な樹脂をいう。
なお、前記ポリオレフィン樹脂は、着色剤や、酸化チタンや炭酸カルシュームなどの充填剤などの添加物が用途によって添加されていてもよい。
前記難燃効果剤のポリオレフィン樹脂への添加量(a質量%)は、0.2<a<10が好ましい。より好ましい添加量の下限は、0.5質量%以上である。より好ましい添加量の上限は、5質量%以上である。なお、0.2質量%未満では、難燃性が十分でなく、10質量%を超えると、経済的に好ましくない。
また、前記オレフィン複合シート全体および前記強化複合不織布全体を100質量%としたとき、前記難燃効果剤が、0.3質量%以上の割合で含有されていないと、難燃特性が発揮できず好ましくない。
次に、本発明に用いる難燃効果剤は、マスターバッチ化、繊維化およびフィルム化などの熱加工時に変質し易いため、リン系酸化防止剤を併用するのが不可欠である。前記したリン系酸化防止剤としては、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「IRGAFOS168」(商品名))に代表される、アルキル置換基を有するフェニル基を少なくとも1つ有するアリールフォスファイトが都合良く、具体的には、旭電化工業社製の「ADK STAB HP−10」、「PEP−24」や「PEP−36」(いずれも商品名)が他に挙げられる。
被添加樹脂が溶融状態時に前記難燃効果剤の変質を防止する加工熱安定剤として併用するリン系酸化防止剤のアリールフォスファイトの添加量(b質量%)は、0.02≦bであり、かつ前記難燃効果剤の添加量(a質量%)との間には1<a/b<70を満たすことが好ましい。より好ましいアリールフォスファイトの添加量の下限は、0.1≦bである。より好ましいアリールフォスファイトの添加量の上限はb≦1である。さらに好ましいアリールフォスファイトの添加量の上限はb<0.5である。より好ましいa/bの上限は、50である。さらに好ましいa/bの上限は、30である。ポリオレフィン樹脂に対する添加量が0.02質量%未満では変質防止効果が十分でなく、経済的には、難燃剤との比率a/bが1未満では添加が過剰であり、70を超えるのは添加が過小となり好ましくない。なお、前記リン系酸化防止剤は、少なくとも本発明に用いる難燃効果剤が熱加工される場合には共存するのが特に好ましく、このマスターバッチを作成する場合は、少なくとも0.3質量%の添加が好ましい。
また、前記オレフィン複合シート全体および前記強化複合不織布全体を100質量%としたとき、前記難燃効果剤および前記熱安定剤を含有するオレフィン樹脂の存在割合が、30質量%以上でないと、シートとして難燃特性が発揮できず好ましくない。
次に、本発明に用いる高分子量ハルス系安定剤は、トリアジン骨格と、過半のトリアジン骨格がその近傍に位置する複数のピペリジン基を有する、分子量が2000以上のラジカル捕集機能を有する高分子量ヒンダードアミンが最適であり、具体的な例としては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社のチモソルブ944系、2020系および119系の高分子量ヒンダードアミンが挙げられる。
本発明に用いる高分子量ハルス系安定剤は、前述したように、前記難燃効果剤に類似の化合物がポリオレフィン樹脂への分散性の上でも都合良く、互いに干渉しなければ、ポリオレフィン樹脂に耐候性を付与できる添加濃度であれば少なくとも都合が良い。具体的な、本発明に用いるポリオレフィン樹脂の都合の良い耐候性安定剤処方は、中和剤を別とすれば、前記した高分子量ヒンダードアミンを耐候性安定剤として0.02〜1質量%、アリールフォスファイトをリン系酸化防止剤として0.02〜1質量%添加すると、耐候性も良好な繊維とすることができる。なお、共に0.02質量%未満の添加では耐候性に問題が生じ、1質量%を超える添加では、過剰すぎて経済的に好ましくない。
なお、前記ポリオレフィン樹脂には、難燃効果に影響がなく、他の物理物性を維持する範囲で他の安定剤の通常量併用してもよい。
なお、本発明に用いるポリプロピレン系樹脂は、本発明に用いる難燃効果剤と混合して熱溶融加工されないアイテムについては、その安定剤を高分子量ヒンダードアミンとリン系酸化防止剤のアリールフォスファイトの組合せに限定するものではない。多くの場合、全てのアイテムを特定の安定剤の組合せ処方とすることは、経済的に不可能なことが多く、現実には、本発明に用いるメッシュシートが全く別の安定剤処方であっても、全く難燃効果は変化しなかった。しかし、最も好ましくは、使用されているポリオレフィン樹脂の全てに、高分子量ヒンダードアミンと、リン系酸化防止剤のアリールフォスファイトとが添加されている場合が良く、この場合は耐候性と難燃性が共に優れたオレフィン複合シートおよび強化複合不織布とすることができる。
本発明のオレフィン複合シートは、塩化ビニルを使用したシートや塩ビレザーの代替商品として開発したものであって、適合市場は塩ビシート類と重なる。従って、本発明のオレフィン複合シートは、壁紙や仕切りカーテンや、家具や自動車のシートなどの上張り材などのインテリア資材、塩化ビニルレザーで化粧されている各種部材(例えば、自動車の内張り材や、家電製品の筐体、パソコンや携帯電話などの電子機器の筐体、ビル空調や建物の部材、ラミ建設資材、および玩具や日用雑貨などの、シート加工または応用商品を総称している。特に、塩化ビニルレザーの代替商品であるオレフィン人造レザーとして用いることが好ましい。
次に実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の実施の1形態であるオレフィン複合シートと、オレフィン系樹脂層で覆っていない強化複合不織布とで主に説明するが、他の形態のオレフィン複合シートも実施例を参考にすれば同様に容易に作ることができる。
以下の実施例において、単に%と表示してあるのは、質量%を意味する。
本発明の実施例と比較例の強化複合不織布およびオレフィン複合シートは、表1に示すポリプロピレン繊維1〜9と、表2に示すメッシュシート(シート1〜6)と、表3に示すオレフィン系樹脂層の各素材を組み合わせて不織布およびシートを作成し、JIS・L1091、A−1法で評価した。表中の温度は℃、密度はg/cm3、燃焼試験の炭化面積はcm2、残炎および残塵時間は秒であり、燃焼試験の1分は1分加熱、着火後とは着火3秒後を意味する。
(繊維の製造)
表1のポリプロピレン繊維は、表1の条件に従って、繊維断面が円形の単一および複合繊維を溶融紡糸し、熱延伸して、アルキル硫酸エステル塩からなる易水溶性繊維処理剤を付与し、スターッファボックスで捲縮を付与し、これをネットコンベァー式熱風貫通型乾燥機で乾燥し、長さ51mmに切断して、ステープル繊維とし、繊維の難燃性を目付100g/m2、厚み約1mmの水流交絡不織布とし評価もした。また、繊維1、5、および9を、その引取速度を著しく低下させて、太さ約0.2mmのフイラメント(繊維1F、5F、および9F)とし、表2に示すメッシュシート1および2の縦糸と横糸に用いた。
(メッシュシートの製造)
メッシュシートとしては、前記した繊維1F、5F、および9Fの太フイラメントを織ったもの、コンウェッド社製のポリプロピレンでなり、溶融一体化成形されているコンウエッドネット、繊維1と9を紡績糸化し、縦横糸の両方に用いてガーゼ状に粗く織ったものなどが用いられるが、表2には本発明の布帛の一部を例示する。すなわち、表2のメッシュシートとして、太さ約0.2mmのフイラメントを縦糸及び横糸として用い、シート番号1〜4に経糸を2mmピッチで整然と並べ、交互に2mmピッチで横糸を使って織物メッシュ構造体した。熱処理は145℃前後の温度のスチール/スチール熱ロールで圧迫加工して、交差点を熱接着して2mm□の網目のメッシュシート(メッシュ密度26メッシュ)とした。シート番号5として、太さ約0.2mmのフイラメントの網目4mm□のコンウェッドネットON3650(メッシュ密度14メッシュ)を用いた。シート番号6、7として繊維1と繊維9を20番手の紡績糸とし、織機で織って網目1mm□のガーゼ状に粗く織ったメッシュシート(メッシュ密度50メッシュ)とした。得られたメッシュシートにおける難燃性の評価結果を表2に示す。
(オレフィン系樹脂層の製造)
表3に示すオレフィン系樹脂層は、表1の溶融紡糸条件で混合してペレットとし、Tダイを用いてダイ温度260℃で押出し、押出温度と同じ温度もしくはそれ以下の温度に設定したホットプレスで圧迫して50μm厚のフィルムを作製した。厚みは圧迫する際、スペーサーを使用して調整した。得られたフィルムにおける難燃性の評価結果を表3に示す。
Figure 0004365418
Figure 0004365418
Figure 0004365418
表1〜5に示す略語は以下の通り。
(1)N剤(難燃効果剤):チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「FLAMESTAB−NOR−116」(商品名)
(2)T剤(リン系酸化防止剤):チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「イルガホス168」(商品名)
(3)H剤(高分子量HALS):チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、「CHIMASSORB 944FD」(商品名)(ポリ[[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]、分子量2000〜3100)
(4)PP:ポリプロピレン
(5)EP:エチレン5質量%含むエチレン-プロピレン共重合体
(6)EG:ダウ社製ハードエラストマー「アイニテイ」(商品名)
(7)SEBS:クレイトン・ポリマー社製水添スチレンーブタジエンースチレン「クレイトンG」(商品名)
(8)SEB:JSR社製水添スチレンーブタジエン「ダイナロン」(商品名)
MFRはメルトフローレートを意味し、測定温度が230℃のASTM−1238(L)による値で、単位はg/10分。(ただし、EGのみ190℃で測定した。)
(実施例1〜6、比較例1〜3)
表1に示すポリプロピレン繊維を、ローラーカードを用いて開繊して、表4に示す目付の半分量のカードウェブを2枚準備した。表2に示すメッシュシートを2枚のカードウェブの間となるように積層し、繊維積層体とした。前記繊維積層体を、2.9MPaの圧力水で水流交絡加工して予備交絡させた後、6.9MPaの圧力水を用いて裏表の両サイドから水流交絡加工して繊維交絡させると共に、メッシュシートも繊維を用いて絡めて繊維交絡によって一体化させて強化複合不織布とした。得られた強化複合不織布における難燃性の評価結果を表4に示す。
Figure 0004365418
表4の組合せと条件に従って、表3のオレフィン系樹脂層を260℃前後の温度でTダイを用いて、目付約45g/m2、厚さ約50μmのフィルムとし、前記強化複合不織布上に流下させ、続いて押圧ロールを用いて前記不織布に貼り合わせて、オレフィン複合シートを作製した。得られたオレフィン複合シートは、従来の織編物を塩化ビニル樹脂で被覆加工したシートと遜色のない適度な柔軟性と、寸法安定性および強度を有していた。さらに、JIS・L1091、A−1法で難燃性を評価した。その結果を表5に示す。
Figure 0004365418
表4および表5から明らかなとおり、本発明の実施例は良好な難燃性が得られた。なお、比較例としてH剤(高分子量HALS)を2質量%添加したが、難燃性はなく、難燃効果剤ではなかった。
図1Aは本発明の一実施形態における複合シートの一部切り欠き図、図1Bは同、断面図。 図2Aは従来例における複合シートの一部切り欠き図、図2Bは同、断面図。
符号の説明
1 メッシュシート
2,3 繊維ウェブ
4 オレフィン系樹脂層(軟質オレフィン系樹脂フィルム)
5 メッシュシートを構成する縦糸と横糸の交点の固定部
6 オレフィン人造レザー
11 織編物
12 塩化ビニル樹脂フィルム
13 塩化ビニル人造レザー

Claims (3)

  1. ポリオレフィン樹脂を含むメッシュシートの少なくとも片面に、ポリオレフィン繊維を含む繊維ウェブが積層され前記メッシュシートと水流交絡により一体化されて複合不織布を形成しており、前記複合不織布の少なくとも片面に、オレフィン系樹脂層が積層されているオレフィン複合シートからなることを特徴とするオレフィン人造レザー
  2. 前記メッシュシートの両面に、ポリオレフィン繊維を含む繊維ウェブが積層され前記メッシュシートと一体化されて複合不織布を形成している請求項1に記載のオレフィン人造レザー
  3. ポリオレフィン樹脂を含むメッシュシートの少なくとも片面に、ポリオレフィン繊維を含む繊維ウェブを積層し、水流交絡により一体化させて複合不織布とした後、複合不織布の少なくとも片面にオレフィン系樹脂層を貼り合わせることを特徴とするオレフィン人造レザーの製造方法。
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