JP2003277595A - 製膜性及び保存安定性を改良したポリ乳酸水分散体 - Google Patents

製膜性及び保存安定性を改良したポリ乳酸水分散体

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JP2003277595A
JP2003277595A JP2002084133A JP2002084133A JP2003277595A JP 2003277595 A JP2003277595 A JP 2003277595A JP 2002084133 A JP2002084133 A JP 2002084133A JP 2002084133 A JP2002084133 A JP 2002084133A JP 2003277595 A JP2003277595 A JP 2003277595A
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lactic acid
aqueous dispersion
film
polylactic acid
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Tomomitsu Narutaki
智充 鳴瀧
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Mitsui Chemicals Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】ポリ乳酸水分散体に関して、透明性、耐水性、
耐溶剤性、耐薬品性に優れ、目止め効果があり、長時間
保存しても沈殿がほとんど無く保存安定性が良好、かつ
塗工及び含浸が容易で生分解性が良好で低温での製膜性
や接着性に優れ、色材などとの分散性にも優れるポリ乳
酸水分散体、ポリ乳酸水性分散体乾燥することにより得
られる微粒子及びその皮膜を提供すること。 【解決手段】重合体を構成する単量体であるL−乳酸と
D−乳酸のモル比率(L/D)が4/96〜96/4で
あるポリ乳酸系のポリエステル重合体の水性分散体と
し、これを乾燥することにより微粒子及び皮膜を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、容易にコンポスト
中で生分解し、土壌、河川、海洋中で水と二酸化炭素に
分解することで廃棄が容易であり、耐水性、耐候性、加
工性、耐油性、耐薬品性、耐腐食性、及び樹脂、金属、
紙、繊維、木材等の材料との密着性などにも優れた皮膜
および微粒子を形成することができ、120℃以下の熱
処理により容易に製膜及び熱接着し、長期保管しても水
と樹脂に分離することのない、ポリ乳酸水性分散体、そ
の微粒子及びその皮膜に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から塗料、インキ、コーティング
剤、接着剤、プライマー及び繊維製品や紙等の各種処理
剤の分野で有機溶剤が大量に用いられているが、近年の
石油資源の節約、環境汚染防止、引火性の問題、作業環
境上の問題などの観点により有機溶剤の使用は制限され
る方向に向かいつつある。そこで有機溶剤系の代替技術
として、水系化、粉体化、ハイソリッド化等種々の方法
が提案され実施されている。その中でも、特に水分散体
はその取り扱い易さから最も汎用性があり、有望視され
ている。また、上述した用途における合成樹脂の水分散
体は一般的に生分解性に乏しく、ゴミ処理上等の観点か
らも廃棄後の土壌、水質、大気の汚染等の問題を抱えて
おり、光分解あるいは生分解作用により容易に分解され
る水分散体が望まれている。
【0003】原料の乳酸はトウモロコシやイモなどの天
然素材を原料としており、枯渇する可能性が無く、近年
大量かつ安価に製造されるようになった。ポリ乳酸樹脂
は土壌や海洋中で数年内に水と二酸化炭素に分解される
性質を持ち、安全性が高く人体に無害である。さらにそ
の水分散体は、優れた塗膜加工性、各種基材への密着性
を利用して、塗料、防錆塗料、インキ、コーティング
剤、接着剤、プライマー、ヒートシール剤、農薬乳剤等
の工業製品及び優れた洗浄性、保水性、抗菌性、人体へ
の低毒性などを利用して工業用、衣料用、食器用、室内
外用石鹸や洗剤、歯磨、シャンプー、リンス、化粧品、
乳液、整髪料、メイク落し、香水、ローション、軟膏、
抗菌塗料などトイレタリー製品の利用分野で幅広く用い
られる可能性がある。
【0004】ポリ乳酸水分散体として、例えばポリ乳酸
エマルション(特開平10―101911、特願200
1−293767)が提案されている。ここでは使用し
ているポリ乳酸重合体を構成する単量体に関する記述は
ない。ポリ乳酸重合体を構成するL−乳酸/D−乳酸比
率が100/0〜98/2である場合、特に低温での製膜
性に難があり、長期保存すると固形分が沈殿することか
ら保存安定性も悪い。熱接着剤として使用した場合、低
温での熱接着性が十分でなく、接着不良を引き起こす。
【0005】また繊維コート剤として用いた場合には、
低温での製膜性が不良で撥水効果などが十分発揮できな
い。この問題は、より高温での熱処理を行うことで製膜
性を改良することができる。しかし、使用する繊維がポ
リ乳酸系の場合は耐熱性が十分ではないので、繊維その
ものが熱処理時にボロボロになるなどの問題がある。
【0006】トナー分散剤として使用した場合には、色
材との分散性が悪い上、印刷用紙との低温での定着性も
十分でない。
【0007】以上のように、従来の技術によるポリ乳酸
水分散体は、物性面で問題を抱えていた。
【0008】
【解決しようとする課題】本発明の目的は、上記従来技
術の問題点を解消した、すなわち、密着性、耐水性、耐
油性、耐薬品性、耐食性、防カビ性に優れ、さらには低
温での製膜性、保存安定性、低温接着性に優れたポリ乳
酸水分散を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究の
結果、構成モノマーのL−乳酸/D−乳酸の比率が4/
96〜96/4での割合のポリ乳酸水分散体、微粒子及
びその皮膜を提供することに成功し、前記課題である製
膜性及び保存安定性の改良を達成した。
【0010】保存安定性、接着性が良好なポリ乳酸の水
分散体を得るため、構成モノマーのL−乳酸/D−乳酸
の比率があるポリ乳酸を乳化し、水分散体を提供するも
のであるが、低温製膜性の観点から構成モノマーのL−
乳酸/D−乳酸の比率が15/85〜85/15である
ポリ乳酸が好ましい。
【0011】本発明の製造方法としては、例えば生分解
性ポリエステルをクロロホルム等の有機溶媒に溶解後、
ポリビニルアルコール又は界面活性剤と水を加え攪拌す
ることで転相させ、脱溶媒することで得られる方法、生
分解性ポリエステルをポリビニルアルコール又は界面活
性剤溶融混練中に水を添加することで得る方法、末端に
スルホン酸基、リン酸、カルボキシル基、アミノ基など
の極性基を導入し、温水と攪拌して得る方法などが考え
られるが特に限定はしない。
【0012】
【発明実施の形態】本発明のポリ乳酸水性分散体、その
微粒子及び皮膜及びそれらの製造方法(以下、本発明と
いう)について詳細に説明する。
【0013】本発明でいうL−乳酸とは、化1[化1]
に示す立体配置をとる化合物である。
【0014】
【化1】 本発明でいうD―乳酸とは、化2[化2]に示す立体配
置をとる化合物である。
【化2】
【0015】本発明において使用する乳酸単量体のL−
乳酸/D−乳酸の比率は4/96〜96/4であるが、
特に15/85〜85/15が好ましい。
【0016】本発明の水性分散体とは、0.01μm〜
100μmの微粒子が水に分散した系をいう。
【0017】本発明において生分解性とは、土壌又は河
川や海洋中で容易に微生物により二酸化炭素と水に分解
することをいう。上述のポリ乳酸は、土壌又は海洋中で
容易に水と二酸化炭素に分解するポリエステルである。
【0018】本発明に使用されるポリ乳酸は、主に乳酸
成分単量体の重縮合体であるが、ヒドロキシアルカン酸
との共縮合体でもよい。ヒドロキシアルカン酸として
は、3―ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロオキシブ
タン酸、3−ヒドロオキシ吉草酸、3−ヒドロオキシヘ
キサン酸、3−ヒドロオキシオクタン酸、3−ヒドロオ
キシドデカン酸、4−ヒドロオキシ酪酸、4−ヒドロオ
キシ吉草酸等が挙げられる。
【0019】さらに、本発明に使用されるポリ乳酸は、
乳酸成分単量体縮合体であるが、酸成分単量体とアルコ
ール成分単量体との共縮合体も含まれる。
【0020】酸成分として、例えばテレフタル酸、イソ
フタル酸、オルソフタル酸、安息香酸、p−オキシ安息
香酸、 p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸、コハク
酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル
酸、スベリン酸、ブラシリック酸、ドデカンジカルボン
酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、1,4−シ
クロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジ
カルボン酸、ヘキサヒドロオルソフタル酸、トリシクロ
デカンジカルボン酸、テトラヒドロテレフタル酸、及び
テトラヒドロオルソフタル酸等のジカルボン酸、あるい
はこれらの酸のメチルエステル、または無水物等も用い
ることができる。これらの中でも、テレフタル酸、イソ
フタル酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、無水ト
リメリット酸が好適に使用され、これらの酸成分は単独
で、あるいは複数の組み合わせで用いることができる。
【0021】また、アルコール成分として、例えばエチ
レングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレン
グリコール、テトラエチレングリコール、プロピレング
リコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパン
ジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、
1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、
1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペン
タンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチ
ルグリコール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロ
パンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノ
ナンジオール、1,10−デカンジオール、2,2,4
トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリエチレン
グリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメ
チレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチ
ロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビ
スフェノール系−エチレンオキサイド付加物、ビスフェ
ノール系プロピレンオキサイド付加物、1,4−シクロ
ヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオー
ル、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シ
クロヘキサンジオール、スピログリコール、トリシクロ
デカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、レゾ
ルシノール、マンニトール、エリトリトール、ペンタエ
リトリトール及びそのエチレングリコールエーテル等が
用いられ、中でもエチレングリコール、ジエチレングリ
コール、トリエチレングリコール、1,4−ブタンジオ
ール、ネオペンチルグリコールが好適に使用され、これ
らのアルコール成分は単独で、あるいは複数の組み合わ
せで用いることができ、生分解性の性質を持つことが更
に好適である。
【0022】本発明における微粒子とは、直径0.01
μm〜10μmのポリ乳酸水性分散体乾燥することで得
られる粒子である。その形状に関しては、球形、楕円
形、不定形などいろいろあるが、特に限定しない。
【0023】本発明における皮膜とは、膜厚が0.01
〜1μmの薄膜のことであるが、ポリ乳酸水分散体及び
微粒子を熱処理することで得られる。本発明におけるポ
リ乳酸はD−ラクチド及びLラクチドを有機溶剤中、触
媒存在下で、加熱脱水縮合することで得られる重量平均
分子量10万〜18万の重合体である。
【0024】本発明の乳化方法としては、ポリ乳酸を良
溶媒である塩化メチレン又はクロロホルムに溶解し、ポ
リビニルアルコール及び/又はレシチンを含んだ水溶液
と混合、攪拌し、熱を加えて溶媒を蒸発しさせることで
得る方法がある。
【0025】その他には、ポリ乳酸に、5−スルホイソ
フタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、
5−(p−スルホフェノキシ)イソフタル酸、5−(ス
ルホプロポキシ)イソフタル酸、4−スルホナフタレン
−2,7−ジカルボン酸、スルホプロピルマロン酸、ス
ルホコハク酸、2−スルホ安息香酸、3−スルホ安息香
酸、5−スルホサリチル酸及びこれらカルボン酸のメチ
ルエステル類、またこれらスルホン酸の金属塩類やアン
モニウム塩類等を導入する方法がある。中でも乳化性が
良好である点から、5−スルホイソフタル酸のナトリウ
ム塩、または5−スルホイソフタル酸ジメチルのナトリ
ウム塩が好ましい。
【0026】また、ホモミキサーや押出混練機などを用
いてポリビニルアルコール、スルホン酸含有ポリエステ
ル系重合体、アニオン系又はノニオン系界面活性剤及び
ポリ乳酸を高温高圧下で混合させ、水を添加することに
より、転相する方法などもある。使用されるポリビニル
アルコールは生分解性及び相溶性の観点からけん化度が
85%以下のものを使用することが好ましい。スルホン酸
含有ポリエステル系重合体も同様に対象となるポリ乳酸
に対する相溶性が良好でかつ生分解性も良好なものが好
ましい。
【0027】アニオン系又はノニオン系界面活性剤も同
様に相溶性の良好なものを選択すべきであり、生分解性
であるものが特に好ましい。例えばアニオン系界面活性
剤では第1級高級脂肪酸塩、第2級高級脂肪酸塩、第1
級高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコー
ル硫酸エステル塩、高級アルキルジスルホン酸塩、スル
ホン酸化高級脂肪酸塩、高級脂肪酸硫酸エステル塩、高
級脂肪酸エステルスルホン酸塩、高級アルコールエーテ
ルの硫酸エステル塩、高級アルコールエーテルのスルホ
ン酸塩、高級脂肪酸アミドのアルキロール化硫酸エステ
ル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノ
ールスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、
アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩等があり、塩
基性物質と反応してアニオン界面活性剤となったものな
ら如何なるものでもよい。
【0028】ノニオン系界面活性剤ではポリオキシエチ
レンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルア
リルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテ
ル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソ
ルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビト
ール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリ
オキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンア
ルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリオキ
シエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリエチレ
ングリコール、ポリプロピレングリコール等がある。
【0029】これらの界面活性剤のより具体的な化合物
名は、たとえば堀口博著「合成界面活性剤」(昭和41、
三共出版)に開示してある。これらの中でも毒性が低
く、生分解性を有するものが好適である。ポリオキシエ
チレン脂肪酸エステル、より具体的にはポリエチレング
リコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジ
ステアレートが好適である。またこの様な界面活性剤を
含有させる方法として、ポリ乳酸とともに原料として配
合しても良いし、予め水溶液としておき、溶融混練時に
添加しても良い。また含有量としては、ポリエステル水
分散体全体当たりの10重量%以下が好ましく、3重量
%以下が更に好ましい。界面活性剤が10重量%以上含
有すると、水分散体から得られる皮膜や微粒子の吸湿性
が高く、耐水性、耐候性等が低下するという問題が生じ
る。
【0030】また本発明のポリ乳酸水性分散体及びその
製造方法に当たっては、通常水性分散体に使用すること
のできる各種副資材、例えば、分散剤、乳化剤、界面活
性剤、安定化剤、湿潤剤、増粘剤、起泡剤、消泡剤、凝
固剤、ゲル化剤、沈降防止剤、帯電制御剤、帯電防止
剤、老化防止剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、着色剤、付
香剤、粘着防止剤、離型剤等を併用してもよい。
【0031】本発明において得られた高固形分ポリエス
テル水分散体に、水を加えることによって水中に均一に
分散する固形粒子の体積50%平均粒径は、0.1〜2
0μmであることが好ましく、0.1〜5μmであるこ
とが更に好ましい。0.1μm以下であると、水分散体
から得られる皮膜や微粒子の吸湿性が高く、耐水性、耐
候性等が低下するという問題が生じる。20μm以上で
あると、水分散体から得られる皮膜の膜厚調整が困難と
なるとともに、基材への密着性や表面平滑性等も低下す
る。
【0032】本発明において得られたポリエステル水分
散体は、必要に応じて、水または塩基性水溶液等を加え
中和することにより、保存安定性を向上させることがで
きる。しかし、塩基性水溶液はポリ乳酸を分解する恐れ
が有り、低分子化すると耐水性や耐候性が悪化する可能
性があるので、塩基性水溶液を予めpH8〜11に調製
することが好ましい。
【0033】本発明における塩基性水溶液としては、水
中で塩基として作用する以下の物質、例えば、アルカリ
金属、アルカリ土類金属、アンモニア及びアミン、アル
カリ金属の酸化物、水酸化物、弱酸塩、水素化物、アル
カリ土類金属の酸化物、水酸化物、弱酸塩、水素化物及
びこれら金属のアルコキシド等が挙げられる。更に具体
的には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、ストロン
チウム、バリウム、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン等
の無機アミン、メチルアミン、エチルアミン、エタノー
ルアミン、シクロヘキシルアミン、酸化ナトリウム、過
酸化ナトリウム、酸化カリウム、過酸化カリウム、酸化
ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水
酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウ
ム、水酸化バリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウ
ム、水素化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウ
ム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素
カルシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸カル
シウム、水酸化アンモニウム、四級アンモニウム化合
物、例えばテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ヒ
ドラジン水和物等を挙げることができる。
【0034】本発明のポリ乳酸水性分散体は、優れた生
分解性、耐水性、耐候性、加工性、密着性、洗浄性さら
には低温製膜性や低温での熱接着性を利用して、種々の
用途に展開することが可能である。例えば工業分野とし
て水分散体として各種プラスチックフィルム、アルミニ
ウム、鉄、銅等の金属、紙、繊維、不織布、木材等の各
種基剤のプライマー、接着剤、塗料、コーティング剤、
防滑剤、潤滑剤として使用することができる。具体的に
は、農薬医薬コーティング剤、農業・園芸用肥料コーテ
ィング剤、ダンボール防滑剤、金属表面(Al、鋼板等)
の防錆塗料バインダー、インクジェットのインクバイン
ダー、インクジェットプリンター用紙及びフィルムの表
面コート剤、OHPフィルムの表面コート剤、紙、熱転
写インクリボン用バインダー、紙コーティングによる壁
紙用バインダー、繊維コーテイング材、ナイロン、ポリ
エステル繊維収束剤、缶、不織布の目止め及び接着剤、
ポリエステルフィルムの接着剤、滅菌紙の熱接着剤、イ
ンキ、塗料の耐摩剤及び滑り防止調整剤、自動車用塗料
(中塗り、上塗り)の耐チッピング性改良剤、自動車外
板の電着塗料、鋼管、道路標識、ガードレール塗装用工
業用塗料等、牛乳パック等耐水コーティング剤である。
紙パックの防水コーティングなどは、従来のラミネート
では紙の再生過程で分解し難いが、本水分散体ではアル
カリで容易に分解し再生が容易になると考えられる。そ
の他、トイレタリー分野や化粧品分野として、衣料用、
食器用、室内外用石鹸や洗剤、歯磨、シャンプー、リン
ス、化粧品、乳液、整髪料、メイク落し、香水、ローシ
ョン、軟膏、抗菌塗料等が考えられる。これらは下水を
通じて環境中に放出されるが、容易に生分解し、毒性も
極めて低く大変有用である。農業、園芸用農薬又は肥料
の徐放剤では土壌で分解しながら持続的に効果を発揮
し、コーティングした樹脂は土壌で分解するため、環境
負荷が少ないなど大変有用である。
【0035】コーティング方法としては、スプレー、カ
ーテン、フローコーター、ロールコーター、グラビアコ
ーター、刷毛塗り、浸漬等の方法で実施できる。乾燥は
自然乾燥でも良いが、例えば100〜120℃で30〜120秒間
加熱するのが好ましい。また、乾燥粉体化することによ
り、電子写真用トナー、トナー用添加材、トナー用表面
処理剤、静電塗装用粉体塗料、流動浸漬用粉体塗料、レ
オロジー制御剤等にも応用することができる。特に、ト
ナー材料では低温での印刷紙との定着性が向上し、色材
やなどとの分散性が良好である。
【0036】
【実施例】以下に本発明の好適な実施例及び比較例を挙
げ、本発明を具体的に説明するが、これらの実施例はい
かなる点においても本発明の範囲を限定するものではな
い。実施例に用いたポリ乳酸及びポリエステル系重合体
の組成を表1[表1]に示した。実施例中に部とあるの
は重量部を表わす。
【0037】各種の特性値の測定方法は以下の方法で行
った。 1.水分散体の分散状態 100メッシュの金網に分散液を通過させることにより
調べた。 2.水分散体の粒径(μm) マイクロトラックHRA(ハネウエル社製)にて、体積
50%平均粒径を測定した。 3.水分散体のpH pHメーター(HORIBA製)により測定した。 4.塗膜の密着性 ASTM D−3359に準拠した。その結果を○、
△、×の3段階で評価した。 5.塗膜の耐水性 JIS K−5400に準拠した。その結果を○、△、
×の3段階で評価した。 6.水分散体皮膜の生分解性 100μmのポリ乳酸フィルムに水分散体を10μmの
厚さで塗工し、150℃にて熱処理を行った。皮膜形成
したフィルムを28日間、25℃にてコンポスト中に埋
設し、生分解性評価を目視にて行った。その結果を○、
△、×の3段階で評価した。 7.熱接着性試験 実施例に記載した水性分散体を、塗工量が5g/m2
ryとなるように上質紙に塗布、風乾した後、炉温15
0℃で60秒間加熱し、均一な塗工箔を得た。この塗工
箔と上質紙をJIS Z1707に準拠した方法によ
り、150℃で1秒間、2kg/cm2の圧力をかけて
熱接着した。この試料の剥離方向180°、剥離速度5
0mm/分、20℃での剥離強度(n=3)を表1[表
1]に示す。 8.製膜試験 塗工量が10g/m2dryとなるように、アルミニウ
ム箔に塗布し、風乾した後100〜180℃まで10℃
間隔でドライオーブンにて1分間乾燥硬化した塗膜を得
た。目視及び顕微鏡により表面の製膜性を確認した。最
低の製膜温度を表1[表1]に示す。 9.トナーの定着性試験 静電トナーを用いて、電子写真法にセレン感光体上にテ
スト画像を複写し現像させる。得られた画像を転写紙に
転写し、表面がポリテトラフルオロエチレン(デュポン
製)で形成された定着ローラーと、表面がシリコンゴム
(信越化学製、KE−1300RTV)で形成された圧
着ローラーとを用いて定着速度を50mm/secでと
し、定着ローラーの温度を5℃ずつ変化させて画像の定
着を行った。選られた定着画像の表面を、500gの荷
重を乗せた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴム
(トンボ鉛筆社製)で10回摩擦し、その前後に反射濃
度計(マクベス社製)で表面の光学反射密度を測定し、
下記数式に従って定着画像の定着性を算出した。 定着性(%)=[(摩擦後の画像濃度)/(摩擦前の画
像濃度)]×100 定着性(%)が70%以上となった最低の定着温度をも
って、最低定着温度とした。その結果と評価基準を表2
[表2]に示す。
【0038】〔製造例:ポリ乳酸〕L−ラクタイドとD
‐ラクタイドを所定の比率で調製し、L−及びD−ラク
タイドに対して触媒としてオクタン酸第一錫0.1%と
ラウリルアルコールの0.03%を仕込、真空で2時間
脱気後、窒素置換して、200℃/10mmHgで2時
間攪拌しながら脱水縮合反応し、下部取り出し口からポ
リ乳酸溶融物を抜き出し、空冷し、ペレタイザーでカッ
トした。最終的に得られたポリ乳酸は重量平均分子量1
70,000であった。
【0039】〔実施例1〕L−乳酸/D−乳酸の比率が
72/18のポリ乳酸を85部、部分けん化ポリビニル
アルコールを15部の混合物を、100部/時間の速度
で、同方向回転型二軸押出機(池貝鉄工製、PCM−3
0、L/D=40)に供給し、設定温度180℃、スク
リュー回転数150rpmで溶融混練するとともに、同
押出機の中間部に設けた供給口より水を40部/時間の
速度で連続的に供給した。押出された樹脂等混合物は、
同押出機出口に設置した単軸押出機を通過させることに
より90℃まで冷却し、吐出させた。吐出物は白色又は
白色透明の固体であり、乾燥前後の重量差から計算され
る固形分濃度は重量%であった。この水分散体を温水中
に加えると微細分散し、白色の水分散体が得られた。そ
の固形分濃度が40〜50重量%となるよう調整し、1
00メッシュの金網にて濾過したが、未分散物は認めら
れず、分散状態は良好であった。この水分散体の分散粒
子の体積50%平均粒径は2.0μm、pHは3.8で
あった。またこの水分散体を厚さ125μmのコロナ処
理ポリエチレンテレフタレートフィルム上に乾燥後の塗
膜の厚さが10μmとなるようにバーコーターを用いて
塗布した後、180℃で1分間乾燥した。得られた皮膜
の密着性は良好であった。またこれを25℃で3日間ま
たは60℃で2時間水に浸漬した後の皮膜はいずれも白
化はなく、密着性も良好であり、優れた耐水性、良好な
生分解性を示した。評価結果を表1[表1]に示す。
【0040】〔実施例2〕L−乳酸/D−乳酸の比率が
50/50のポリ乳酸を用いた以外は実施例1同様に水
分散体を得て、評価した。評価結果を表1[表1]に示
す。
【0041】〔実施例3〕L−乳酸/D−乳酸の比率が
18/72のポリ乳酸を用いた以外は実施例1同様に水
分散体を得て、評価した。評価結果を表1[表1]に示
す。
【0042】〔実施例4〕L−乳酸/D−乳酸の比率が
95/5のポリ乳酸を用いた以外は実施例1同様に水分
散体を得て、評価した。評価結果を表1[表1]に示
す。
【0043】〔実施例5〕L−乳酸/D−乳酸の比率が
72/18のポリ乳酸を塩化メチレン又に溶解し熱を加
え、ポリビニルアルコール及びレシチンを含んだ水溶液
と耐圧ホモミキサーにて170℃で滞留時間が10分間
になるように連続で混合、攪拌し乳化した。次いで得た
水分散体から、塩化メチレンを留去し、平均粒径4.7
μmの水分散体を得て、評価した。評価結果を表1[表
1]に示す。
【0044】〔実施例6〕L−乳酸/D−乳酸の比率が
82/18のポリ乳酸を結着樹脂として100重量部使
用し、乳化剤としてポリビニルアルコール15重量部、
着色剤としてカーボンブラックを6重量部、分散剤とし
てマレイン酸変性ポリエチレンワックス10重量部を、
同方向回転型二軸押出機(池貝鉄工製、PCM−30、
L/D=40)に供給し、設定温度180℃、スクリュ
ー回転数150rpmで溶融混練するとともに、同押出
機の中間部に設けた供給口より水を40部/時間の速度
で連続的に供給したところ、平均粒径4.3μmの水分
散体が得られた。冷却後これを乾燥することにより、ト
ナーが得られた。このトナーに関して定着性に関する評
価を行った。その結果を表2[表2]に示す。
【0045】〔実施例7〕L−乳酸/D−乳酸の比率が
95/5のポリ乳酸を用いた以外は実施例6同様にトナ
ーを得て、その定着性を評価した。評価結果を表2[表
2]に示す。
【0046】〔比較例1〕L−乳酸/D−乳酸の比率が
98/2のポリ乳酸を用いた以外は実施例1と同様に水
分散体を得て、同様に物性を評価した。その結果を表1
[表1]に示す。
【0047】〔比較例2〕L−乳酸/D−乳酸の比率が
100/0のポリ乳酸を用いた以外は実施例1と同様に
水分散体を得て、同様に物性を評価した。その結果を表
1[表1]に示す。
【0048】〔比較例3〕L−乳酸/D−乳酸の比率が
98/2のポリ乳酸を用いた以外は実施例6と同様にト
ナーを得て、同様に物性を評価した。その結果を表2に
示す。
【表1】 分散状態: ○ 均一に分散している。 △ 攪拌すると分散するが、数時間後に沈殿が認められる。 × 水と粒子が完全に分離している。 塗膜密着性: ○ 密着している。 △ 一部剥離箇所が認められる。 × すべて剥離した。 塗膜耐水性: ○ 良好である。 △ 白化が認められる。 × 水に溶解する。 生分解性: ○ 良好である。 △ 一部残存物が認められる。 × 全く分解されていない。 製膜性: ○ 良好である。 △ 一部粒子が認められる。 × 粒子のままで全く膜が形成されていない。
【0049】
【表2】
【0050】 ○ 最低定着温度=90℃未満 △ 最低定着温度=90℃以上、120℃以下 × 最低定着温度=120℃を超える
【0051】
【発明の効果】本発明によれば、優れた低温製膜性、低
温での熱接着性、保存安定性及び顔料などとの分散性を
有し、後処理による液物性調整の自由度が大きく、かつ
乾燥粉体化も容易である。また本発明のポリ乳酸水性分
散体は、優れた耐水性、耐候性、加工性、密着性を利用
して、種々の用途に展開することが可能である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F070 AA47 AB11 AC80 DA33 DC12 DC13 DC14 4F071 AA29 AA43 AE18 AF01 AF52 AF58 AF59 AH01 AH12 AH19 BA03 BB02 BC01 BC02 4J002 CF18W CF18X FD030 FD310 GB00 GH01 GH02 GJ01 GK00 GK02 GK04 HA04

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリ乳酸系のポリエステル重合体であっ
    て、重合体を構成する単量体であるL−乳酸とD−乳酸
    のモル比率(L/D)が4/96〜96/4であること
    を特徴とするポリ乳酸水性分散体。
  2. 【請求項2】請求項1記載のポリ乳酸水性分散体を乾燥
    することにより得られる微粒子。
  3. 【請求項3】請求項1記載のポリ乳酸水性分散体又は請
    求項2に記載の微粒子から形成される皮膜。
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