JP2003261577A - シラノール類とその中間体及びその製造方法並びにアルコール類の製造方法 - Google Patents

シラノール類とその中間体及びその製造方法並びにアルコール類の製造方法

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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【解決手段】 (式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選
ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基
又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換の
フェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換
又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rは水
素又はメチル基から選ばれる)で示されるシラノール。 【効果】 これらの光学活性シラノールから医薬、農
薬、各種機能性物質の原料及び中間体を合成し得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、新規なシラン、シ
ラノール類及びその製造方法に関し、当該シラノール類
から光学活性アルコール類を製造する製造方法にも関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、不斉合成化学は長足の進歩を遂げ
ており、膨大な研究がなされてきたが、その研究対象は
不斉炭素を有する化合物に関するものが大半であった。
一方で、ケイ素もまた炭素と同様に、通常、四配位四面
体構造をとり、立体化学的に安定であることから、置換
様式によっては不斉中心になることが古くから知られて
いる。
【0003】実際、ケイ素不斉中心を有する光学活性有
機ケイ素化合物(光学活性ケイ素化合物)に関する研究
も広く行われてきたが、その研究例は炭素のそれに比べ
て圧倒的に少ないのが現状である。これはその光学活性
体調製の困難さが主たる原因であると考えられ、その具
体的な利用はもとより、物理的な性質すら詳しくわかっ
ていなかった。さらに、汎用性のある光学活性シラノー
ル類合成法はなく、有効な合成手法が確立されていなか
った。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、光学活
性有機ケイ素化合物の利用は様々な分野において期待さ
れている。まず、医薬、農薬の分野においてはそのもの
自体が新規な生物活性物質になることが期待され、これ
までに無いアプローチで開発研究を行うことができると
考えられる。また、これまでに開発されている生物活性
物質の不斉炭素を不斉ケイ素に置き換えることにより、
さらに効果のある化合物に変換することも可能であると
考えられる。加えて、機能材料などの開発においては、
これまで広く利用されているシリコンなどの含ケイ素高
分子素材の原料として光学活性有機ケイ素を用いること
により、規則的な三次元構造を有する高分子素材を合成
することも可能になる。例えば、光学活性シラノール由
来の担体用いることで光学活性体の分離カラムを形成す
ることが可能である。
【0005】このように、新規で汎用性の高い光学活性
なシラノールは、医薬、農薬、各種機能性物質の開発
等、種々の貢献をし得る。
【0006】本発明は、上述のような事情によりなされ
たものであり、官能基化された新規で汎用性の高いシラ
ノール類を合成すること、およびそれらシラノール類の
誘導体であるアルコール類を合成すること、さらにシラ
ノール類を合成するためのシラン類を合成し、当該シラ
ン類からシラノール類を立体選択的に合成するための合
成方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、高度に官
能基化された光学活性有機ケイ素化合物の立体選択的な
合成に成功するとともにそれから光学活性ホモアリルア
ルコールを合成することにも成功した。
【0008】本発明は物の発明にあっては、シラノール
の発明においては、一般式(5)
【化5】 (式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選
ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基
又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換の
フェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換
又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rは水
素又はメチル基から選ばれる)で示されるシラノールで
あって、又は一般式(6)
【化6】 (式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選
ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基
又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換の
フェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換
又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rはシ
クロへキシ−2−エニル、シクロペント−2−エニル、
2−メチレン−シクロへキシル又は2−メチレン−シク
ロペンチルの官能基から選ばれる)で示されるシラノー
ルである。
【0009】さらにジアルコキシシランの発明にあって
は、一般式(7)
【化7】 (式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選
ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基
又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換の
フェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換
又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rは水
素又はメチル基である)で示されるジアルコキシシラ
ン、又は一般式(8)
【化8】 (式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選
ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基
又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換の
フェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換
又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rはシ
クロへキシ−2−エニル、シクロペント−2−エニル、
シクロペント−1−エニルメチル、又はシクロヘキシ−
1‐エニルメチルの官能基から選ばれる)で示されるジ
アルコキシシランである。
【0010】又、上記のシラン及びシラノールについて
は、R≠Rである場合には、ケイ素が不斉中心とな
るシラン及びシラノールであり、本発明では立体選択的
にこれらの化合物を合成することが可能である。
【0011】一方、本発明の方法の発明にあっては、シ
ラノールの製造方法については、上述のジアルコキシシ
ランからシラノールを製造する方法であって、上述のジ
アルコキシシランに対して、THF−HMPA溶媒中、
−78℃下、強塩基を作用させることを特徴とするシラ
ノールの製造方法である。この強塩基にはアルキルリチ
ウムを用いることができる。又、アルコールの製造方法
については、上述のシラノールからアルコールを製造す
る方法であって、50℃下、THF中で、前記シラノー
ルに対してテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド
を作用させることを特徴とするアルコールの製造方法で
ある。
【0012】尚、本発明においては、R〜Rは上記
の官能基のグループから選択されるものとし、反応の前
におけるRnは、反応後におけるRnと同じ官能基を表わ
している。例えば、反応前にRとしてRのグループ
(t−ブチル基又はi−プロピル基)からt−ブチル基
が選択された場合には、反応後におけるRはt−ブチ
ル基を表わすものとする。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明は、(一)ジアルコキシシ
ランの合成、(二)ジアルコキシシランからシラノール
類を合成する新規反応の開発(三)シラノール類からア
ルコール類の合成といった三つの工程から成り立ってい
る。
【0014】(一)「ジアルコキシシランの合成」の段
階では、ジクロロシラン若しくはモノアルコキシシラノ
ールからジアルコキシシランへの誘導を行う。(二)
「ジアルコキシシランからシラノール類を合成する新規
反応の開発」の段階では合成するシラノール類とアルコ
ール類の立体化学を制御する。具体的には、ケイ素原子
上にアリルオキシ基を有する有機ケイ素化合物を原料と
して用い、この分子上にカルボアニオンを発生させるこ
とにより図1に示されるようなアリルオキシ基の分子内
SN2’反応を進行させ、対応するシラノールを合成す
る。この反応は高収率かつ高立体選択的に進行し、ケイ
素原子上の立体化学と、反応によって生じた炭素原子上
の立体化学を制御することができる。このとき、原料と
してケイ素原子上に不斉を有する光学活性シランを用い
るとケイ素原子上の光学純度を損なうことなく反応が進
行し、光学活性シラノールが得られる。(三)「シラノ
ール類からアルコール類の合成」段階では、ジアルコキ
シシランの分子内SN2’反応によって得られたシラノ
ールから多官能基化されたアルコール類の合成を行う。
【0015】(一)〜(三)のそれぞれの段階について
さらに説明する。(一)「ジアルコキシシランの合成」
の段階に関しては、ジクロロシランから合成する方法
と、モノアルコキシシラノールから合成する方法の二通
りの方法がある。ジクロロシランから合成する方法(第
一の方法)の場合は、RSiClClを40℃
下、DMF(ジメチルホルムアミド)中で、イミダゾー
ルとRCHOHを作用させ、
【化9】 (9)で示される化合物に誘導した後、0℃下、DMF
中で(9)で示されるアルコキシシラノールに水素化カ
リウムと、臭化アリル、臭化クロチル又はBrR から
選択される臭化物とを作用させることで、
【化10】 (10)で示されるジアルコキシシランを得ることがで
きる。尚、(10)の(a)においてRが水素の場合
が臭化アリルを作用させた場合であって、Rがメチル
基の場合が臭化クロチルを作用させた場合である。
(b)はBrRを作用させた場合である。
【0016】第一の方法(ジクロロシランから合成する
場合)の例としては、40℃下、DMF中でジ−t−ブ
チルジクロロシランに対し、イミダゾールとベンジルア
ルコールを作用させ、ベンジルオキシジ−t−ブチルシ
ラノール((9)においてR =t−ブチル基、R
t−ブチル基、R=フェニル基とした場合)へと誘導
した後、0℃下、DMF中で当該ベンジルオキシジ−t
−ブチルシラノールに水素化カリウムと、臭化アリルを
作用させることでアリルオキシベンジルオキシジ−t−
ブチルシラン(ジアルコキシシラン1)を得ることがで
きる。上記臭化アリルのかわりに臭化クロチルを作用さ
せることによりベンジルオキシクロチルオキシジ−t−
ブチルシラン(ジアルコキシシラン2)を得ることがで
きる。
【0017】モノアルコキシシラノールから合成する方
法(第二の方法)は、
【化11】 (11)に示されるシラノールに対し、室温下、THF
中で水素化カリウムと、臭化アリル、臭化クロチル又は
BrRから選択される臭化物を作用させることで、
【化12】 (12)に示されるジアルコキシシランを得ることがで
きる。尚、(12)の(a)においてRが水素の場合
が臭化アリルを作用させた場合であって、Rがメチル
基の場合が臭化クロチルを作用させた場合である。
(b)はBrRを作用させた場合である。又、(1
1)においてRとRとは立体配置が互いに逆であっ
ても同様の反応が生じ、反応後の生成物も(12)にお
いてRとRとの立体配置が逆のものが生じる。
【0018】第二の方法(モノアルコキシシラノールか
ら合成する方法)の例としては、入手可能な(S)−ベ
ンジルオキシ−t−ブチルフェニルシラノールに対し、
室温下、THF中で水素化カリウムと、臭化クロチルを
作用させることで、(S)−ベンジルオキシクロチルオ
キシ−t−ブチルフェニルシラン(ジアルコキシシラン
3)を得ることができる。
【0019】次に、(二)「ジアルコキシシランからシ
ラノール類を合成する新規反応の開発」について説明す
る。前記第一又は第二の方法によって得た一般式(1
0)又は(12)に示されるジアルコキシシランを強塩
基処理することでシラノール類を立体選択的に合成する
ことができる。すなわち、(12)に示されるジアルコ
キシシラン3に対してTHF−HMPA(テトラヒドロ
フラン−ヘキサメチルリン酸三アミド)溶媒中、−78
℃下、過剰量のt−ブチルリチウムを作用させることで
ベンジルアニオンを発生させ、アリルオキシ基のベンジ
ルアニオンとの分子内SN2'反応を進行させることに
より
【化13】 (13)に示されるシラノールを得ることができる。
(13)(a)は、(12)(a)から得ることがで
き、(13)(b)は(12)(b)から得ることがで
きる。尚、(12)(b)におけるRがシクロへキシ
−2−エニルの場合は(13)(b)におけるRがシ
クロへキシ−2−エニルであり、Rがシクロペント−
2−エニルの場合にはRがシクロペント−2−エニル
であり、Rがシクロペント−1−エニルメチルの場合
にはRが2−メチレン−シクロペンチルであり、R
がシクロへキシ−1−エニルメチルの場合にはRが2
−メチレンシクロへキシルである。尚、ここでは(1
2)のジアルコキシシランから得ることができるシラノ
ールについて記載したが、RとRとの立体配置を逆
にした場合にも同様の反応が起こるので(10)のジア
ルコキシシランから得ることができるシラノールについ
ては省略した。
【0020】ジアルコキシシランからシラノールを合成
する例としては、上記のジアルコキシシラン1(アリル
オキシベンジルオキシジ−t−ブチルシラン)と、上記
のジアルコキシシラン2(ベンジルオキシクロチルオキ
シジ−t−ブチルシラン)と、上記のジアルコキシルシ
ラン3((S)−ベンジルオキシクロチルオキシ−t−
ブチルフェニルシラン)について、THF−HMBA溶
液中、−78℃下、アリルオキシ基のベンジルアニオン
との分子内SN2’反応を進行させることにより、ジア
ルコキシシラン1〜3に対してシラノール6〜8(シラ
ノール6は、1−フェニル−3−ブテン−1−オキシジ
−t−ブチルシラノールであり、シラノール7は、1−
フェニル−2−メチル−3−ブテン−1−オキシジ−t
−ブチルシラノールであり、シラノール8は(13)
(a)において、R=t−ブチル基、R=フェニル
基、R=フェニル基、R=メチル基である)を得
た。尚、この際に得られるホモアリルオキシシラノール
7、8の相対的立体化学はクロチル基の幾何異性体に関
わらずアンチ体が主生成物となり、光学活性なジアルコ
キシシラン3を用いて本反応を行った場合、生成物ホモ
アリルオキシシラノール8はジアルコキシシラン3と同
等の光学純度で得られる。
【0021】さらに、(三)「シラノール類からアルコ
ール類の合成」について説明する。(13)で示される
シラノールの脱シリル化によってアルコールを得ること
ができる。すなわち、50℃下、THF中でTBAF
(テトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド)を作用
させることによって、
【化14】 (14)に示されるアルコールを得ることができる。
尚、(14)(a)は(13)(a)を脱シリル化する
ことで得られるアルコールであって、(14)(b)は
(13)(b)を脱シリル化することで得られるアルコ
ールである。又、(13)のRとRの立体的配置は
逆であっても同じ反応が起こることから、(10)のジ
アルコキシシランを本発明の方法によってシラノールと
した後、(14)に示されるアルコールを同様にして得
ることができる。
【0022】ホモアリルアルコール合成の例としては、
上記のホモアリルオキシシラノール7、8を50℃下、
THF中でテトラ−n−ブチルアンモニウムフルオリド
を作用させて脱シリル化することによってホモアリルア
ルコール9((14)(a)についてR=メチル基で
ある)を得ることができる。
【0023】
【実施例】さらに具体的な実施例について試験結果を含
めて説明する。
【0024】(試験1)ベンジルオキシジ−t−ブチル
シラノールの合成 上記(一)「ジアルコキシシランの合成」の段階での上
記第一の方法におけるジクロロシランRSiCl
Clとしてジ−t−ブチルジクロロシランを用いた。ア
ルゴン雰囲気下、ベンジルアルコール260mg(2.
40mmol)とイミダゾール408mg(6.00m
mol)を10mlのDMFに溶解させ、0℃に冷却し
た。その溶液にジ−t−ブチルジクロロシラン426m
g(2.00mmol)を加え湯浴で40℃に加熱し、
12時間攪拌した後、0℃に冷却し10mlの飽和炭酸
水素ナトリウム水溶液を加えてクロロシランを加水分解
した。得られた反応混合物をエーテルで抽出後、油層を
飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶
媒を留去した後、シリカゲルクロマトグラフィー(溶出
液:へキサン−エーテル 30:1)で精製し、ベンジ
ルオキシジ−t−ブチルシラノールを374mg(収率
70%)を得た。
【0025】(試験2)ジアルコキシシランの合成 アルゴン雰囲気下、DMF5mlに水素化カリウム9
7.6mg(2.43mmol)を縣濁させ、0℃に冷
却した。そこに上述のベンジルオキシジ−t−ブチルシ
ラノール153mgと臭化アリル439mg(3.64
mmmol)を加え、1時間攪拌した。反応を2mlの
飽和塩化アンモニウム水溶液で停止した後、エーテルで
抽出し、油層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウム
で乾燥した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラムクロ
マトグラフィー(溶出液:ヘキサン)で精製し、アリル
オキシベンジルオキシジ−t−ブチルシラン171mg
(97%)を得た。アリルオキシベンジルオキシジ−t
−ブチルシラン(ジアルコキシシラン1)の物性データ
は、HNMR(300MHz,CDCl)δ7.4
1−7.20(m,5H),5.94(ddt,J=1
7.1,10.45,4.2Hz,1H),5.37
(ddt.J=17.1,2.1,2.1Hz,1
H),5.06(ddt,J=10.5,2.1,2.
1Hz,1H),4.97(s,2H),4.38(d
dd,J=4.2,2.1,2.1,2H),1.09
(s,18H). CNMR(75MHz,CDC
)δ141.39,137.31,128.28,
126.93,125.84,113.68,65.5
0,64.60,28.07,28.07,21.4
5. IR(neat,cm−1)3030,293
5,2860,1647,1607,1473,109
7,827.であった。
【0026】同様にして上述の臭化アリルを臭化クロチ
ルとすることによって、ベンジルオキシクロチルオキシ
ジ−t−ブチルシランを収率96%(E/Z 72/2
8)で得た。(E)−ベンジルオキシクロチルオキシジ
−t−ブチルシラン((E)−ジアルコキシシラン2)
の物性データは、HNMR(300MHz,CDCl
)δ7.41−7.19(m,5H),5.71−
5.50(m,2H),4.97(s,2H),4.3
1(ddq,J=3.0,1.5,1.5,1.5H
z,2H),1.69(ddt,J=6.0,1.5,
1.5,2H),1.08(s,18H). 13CN
MR(75MHz,CDCl)δ141.17,13
0.32,128.27,126.87,125.8
3,125.55,65.50,64.48,28.0
5,21.40,17.73.であった。
【0027】又、(Z)−ベンジルオキシクロチルオキ
シジ−t−ブチルシラン((Z)−ジアルコキシシラン
2)については、HNMR(300MHz,CDCl
)δ7.40−7.23(m,5H),5.64−
5.45(m,2H),4.98(s,2H),4.4
4(ddq,J=5.4,1.2,1.2Hz,2
H),1.57(ddt,J=6.6,1.2,1.
2,2H),1.08(s,18H). 13CNMR
(75MHz,CDCl)δ141.47,130.
53,128.27,126.88,125.83,1
24.79,65.50,59.99,28.02,2
1.32,13.25.であった。
【0028】さらに、ベンジルオキシクロチルオキシジ
−t−ブチルシラン(ジアルコキシシラン2(E,Z混
合物))については、IR(neat,cm−1)30
28,2968,2934,2859,1675,16
08,1473,1454,1097,827.であっ
た。
【0029】(試験3)キラルジアルコキシシランの合
成 アルゴン雰囲気下、THF5mlに水素化カリウム5
1.3mg(1.28mmol)を縣濁させ0℃に冷却
した。その溶液に(S)−ベンジルオキシ−t−ブチル
フェニルシラノール89.0mg(0.311mmo
l、94%ee)と臭化クロチル146mg(1.92
mmol)を加え、室温で30時間攪拌した。反応を2
mlの飽和塩化アンモニウム水溶液で停止した後、エー
テルで抽出し、油層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナト
リウムで乾燥した。溶媒を留去した後、シリカゲルクロ
マトグラフィー(溶出液;へキサン)で濾過をした後G
PCを用いて精製し(S)−ベンジルオキシクロチルオ
キシ−t−ブチルフェニルシランを35.4mg(収率
33%,94%ee)得た。(S)−ベンジルオキシ−
(E)−クロチルオキシ−t−ブチルフェニルシラン
((S,E)−ジアルコキシシラン3)の物性データ
は、HNMR(300MHz、CDCl)δ7.6
8−7.64(m,2H),7.43−7.25(m,
8H),5.76−5.47(m,2H),4.94
(s,2H),4.27(ddq,J=5.4,3.
9,1.5Hz,2H),1.68(ddq,J=6.
0,1.5,1.5,2H),1.03(s,9H).
であった。
【0030】又、(S)−ベンジルオキシ−(Z)−ク
ロチルオキシ−t−ブチルフェニルシラン((S,Z)
−ジアルコキシシラン3)の物性データは、HNMR
(300MHz、CDCl)δ7.68−7.64
(m,2H),7.43−7.25(m,8H),5.
76−5.47(m,2H),4.95(s,2H),
4.39(ddq,J=6.0,1.2,1.2Hz,
2H),1.53(ddq,J=6.3,1.2,1.
2,2H),1.03(s,9H).であり、(S)−
ベンジルオキシクロチルオキシ−t−ブチルフェニルシ
ラン(ジアルコキシシラン3(E,Z混合物))の物性
データは、13CNMR(75MHz,CDCl)δ
141.03,135.40,132.02,129.
98,129.87,128.32,127.77,1
27.01,126.28,125.95,64.9
8,64.14,59.53,26.31,18.9
4,18.91,(E)17.72.(Z)13.1
7.IR(neat,cm−1)3069,3027,
2932,2858,1674,1591,1473,
1094,830.であった。
【0031】(試験4)シランの分子内SN2’反応:
ホモアリルアキシシラノールの合成 上述の(二)「ジアルコキシシランからシラノール類を
合成する新規反応の開発」の段階における、ジアルコキ
シシラン1〜3について試験した。
【0032】アルゴン雰囲気下、アリルオキシベンジル
オキシシランのTHF(テトラヒドロフラン)溶液を−
78℃に冷却し、共溶媒としてHMPAを3.0当量加
え、2.0当量のt−ブチルリチウムをゆっくりと作用
させた。−78℃を維持したまま30分攪拌した後、飽
和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。反応溶液
をエーテルで抽出し、油層を飽和食塩水で洗浄、無水硫
酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去した後、シリカゲ
ルクロマトグラフィーで精製するとホモアリルオキシシ
ラノールが得られる。この操作に従い、ジアルコキシシ
ラン1からはシラノール6を収率50%、ジアルコキシ
シラン2(E/Z 78/28)からはシラノール7を
収率86%(アンチ/シン >95/<5)、ジアルコ
キシシラン3(E/Z 78/22,94%ee)から
はシラノール8を収率88%(アンチ/シン 85/1
5,アンチ体 94%ee)でそれぞれ合成した。
【0033】1−フェニル−3−ブテン−1−オキシジ
−t−ブチルシラノール(シラノ−ル6)の物性データ
は、HNMR(300MHz,CDCl)δ7.3
5−7.22(m,5H),5.78(m,1H),
5.06−4.99(m,3H),2.53(dddd
d,J=14.1,7.8,6.6,0.9,0.9H
z,1H),2.47(ddddd,J=14.1,
6.9,6.0,1.2,1.2,1H),1.73
(brs,1H),1.08(s,9H),0.89
(s,9H). 13CNMR(75MHz,CDCl
)δ144.64,135.21,128.20,1
27.22,126.17,117.45,75.1
4,45.60,27.73,27.52,20.5
8,20.51. IR(neat,cm−1)362
1,3030,2933,2859,1641,147
3,1088,827.であり、1−フェニル−2−メ
チル−3−ブテン−1−オキシジ−t−ブチルシラノー
ル(シラノール7)の物性データは、HNMR(30
0MHz,CDCl)δ7.40−7.20(m,5
H),5.83(ddd,J=17.1,10.5,
7.5,1H),5.02(ddd,J=10.5,
1.8,0.9,1H),4.98(ddd,J=1
7.1,1.8,1.8,1H),4.83(d,J=
6.3Hz,1H),2.52(ddddd,J=7.
5,6.9,6.3,1.8,0.9,1H),1.6
8(brs,1H),1.07(s,9H),0.89
(s,9H),0.89(d,J=6.9Hz,3
H).13CNMR(75MHz,CDDl)δ14
3.18,141.50,128.04,127.4
6,127.31,115.08,79.05,46.
48,27.66,27.37,20.53,20.3
5,15.32. IR(neat,cm−1)358
5,3066,2966,2934,2859,164
1,1473,1090,1067,827.であっ
た。
【0034】(試験5)ホモアリルアルコールの合成 上記(三)シラノール類からのアルコール類の合成につ
いて、上述のシラノール7、8について試験した。
【0035】ホモアリルアルコールはホモアリルオキシ
シラノールの脱シリル化によって得られる。すなわち、
室温下、ホモアリルオキシシラノール7、8のTHF溶
液にシラノールに対して5.0当量のTBAF(テトラ
−n−ブチルアンモニウム)(1.0M inTHF)
を作用させ、油浴で50℃に加熱した。温度を維持した
まま、3時間攪拌した後、反応溶液を室温まで冷やし、
飽和塩化アンモニウム水溶液で反応を停止した。エーテ
ルで抽出し、油層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリ
ウムで乾燥した。溶媒を留去した後、シリカゲルカラム
クロマトグラフィーで精製するとホモアリルアルコール
が得られた。この操作に従い、シラノール7(アンチ/
シン >95/<5)からホモアリルアルコール9を収
率61%で得た。又、シラノール8(アンチ体94%e
e)からホモアリルアルコール9を収率96%(アンチ
体94%ee)で得た。尚、ホモアリルアルコール9は
文献既知化合物であり、そのスペクトルデータは文献値
と良い一致を示した(CAS No.25201−44
−9)。
【0036】
【発明の効果】本発明により、官能基化された新規なジ
アルコキシシラン、シラノールを立体選択的に容易に合
成することができ、このことは本発明が医薬、農薬、各
種機能性物質の開発に貢献し得ることを示している。さ
らに本発明のシラノールからは容易に汎用性の高い光学
活性アルコール類を製造することができる。光学活性ア
ルコール類は生物活性を示すものが数多く知られてお
り、本発明はその原料及び中間体の合成手法として用い
ることができる。
【0037】又、本発明のジアルコキシシラン、シラノ
ールはそのもの自体が新規な生物活性物質として利用さ
れることが期待され、これまでに無いアプローチで研究
開発を行うことができる。さらに、これまでに開発され
ている生物活性物質の不斉炭素を不斉ケイ素に置き換え
ることにより、さらに効果のある化合物に変換すること
が可能であると考えられる。加えて、機能材料などの開
発においては、これまで広く利用されているシリコン等
の含ケイ素高分子素材の原料として光学活性シラノール
を用いることにより、規則的な三次元構造を有する高分
子素材を合成することも可能になると考えられる。
【0038】また本発明は、新規かつ汎用性の高い光学
活性シラノールの製造方法でありその工業的な利用も多
岐にわたると考えられる。加えて、本発明により、汎用
性の高い光学活性アルコールの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明によるジアルコキシシランからシラノ
ールを合成する時におけるアリルオキシ基の分子内SN
2’反応を説明するための説明図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 齊藤 大介 東京都目黒区大岡山2−12−1 東京工業 大学校内 Fターム(参考) 4H006 AA02 AC41 AC83 BB25 BC10 4H049 VN01 VP01 VQ16 VR22 VR42 VS21 VU36 VW02

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(1) 【化1】 (式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選
    ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基
    又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換の
    フェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換
    又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rは水
    素又はメチル基から選ばれる)で示されるシラノール。
  2. 【請求項2】 一般式(2) 【化2】 (式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選
    ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基
    又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換の
    フェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換
    又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rはシ
    クロへキシ−2−エニル、シクロペント−2−エニル、
    2−メチレン−シクロへキシル又は2−メチレン−シク
    ロペンチルの官能基から選ばれる)で示されるシラノー
    ル。
  3. 【請求項3】 一般式(3) 【化3】 (式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選
    ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基
    又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換の
    フェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換
    又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rは水
    素又はメチル基である)で示されるジアルコキシシラ
    ン。
  4. 【請求項4】 一般式(4) 【化4】 (式中、Rはt−ブチル基又はi−プロピル基から選
    ばれ、Rはt−ブチル基、i−プロピル基、ビニル基
    又はアセチレン基、並びに非置換又はp−メチル置換の
    フェニル基から選ばれ、Rは非置換、p−メチル置換
    又はp−メトキシ置換のフェニル基であって、Rはシ
    クロへキシ−2−エニル、シクロペント−2−エニル、
    シクロペント−1−エニルメチル、又はシクロヘキシ−
    1−エニルメチルの官能基から選ばれる)で示されるジ
    アルコキシシラン。
  5. 【請求項5】 請求項1又は請求項2に記載のシラノー
    ルであって、R≠Rであるシラノール。
  6. 【請求項6】 請求項3又は請求項4に記載のジアルコ
    キシシランであって、R ≠Rであるジアルコキシシ
    ラン。
  7. 【請求項7】 請求項3又は請求項4に記載のジアルコ
    キシシランからシラノールを製造する方法であって、前
    記ジアルコキシシランに対して、THF−HMPA(テ
    トラヒドロフラン−ヘキサメチルリン酸アミド)溶媒
    中、−78℃下、強塩基を作用させることを特徴とする
    シラノールの製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1又は請求項2に記載のシラノー
    ルからアルコールを製造する方法であって、50℃下、
    THF中で、前記シラノールに対してテトラ−n−ブチ
    ルアンモニウムフルオリドを作用させることを特徴とす
    るアルコールの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN111039973A (zh) * 2019-12-30 2020-04-21 江苏奥克化学有限公司 有机硅改性的烯醇化合物及其制备方法
EP3865491A1 (en) * 2015-07-29 2021-08-18 California Institute of Technology Silyl ethers as products of the hydroxide-catalyzed formation of silicon-oxygen bonds by dehydrogenative coupling of hydrosilanes and alcohols

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CN111039973A (zh) * 2019-12-30 2020-04-21 江苏奥克化学有限公司 有机硅改性的烯醇化合物及其制备方法
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