JP2003253405A - 多孔質金属焼結体 - Google Patents

多孔質金属焼結体

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JP2003253405A JP2002051632A JP2002051632A JP2003253405A JP 2003253405 A JP2003253405 A JP 2003253405A JP 2002051632 A JP2002051632 A JP 2002051632A JP 2002051632 A JP2002051632 A JP 2002051632A JP 2003253405 A JP2003253405 A JP 2003253405A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 軽合金製部材補強用多孔質金属焼結体および
その製造方法を提案する。 【解決手段】 60メッシュの篩を通過し350 メッシュの
篩を通過しない粒度分布を有する金属粉に、黒鉛粉、あ
るいはさらに被削性性改善用微細粒子粉を混合して、混
合粉となし、ついで、この混合粉を金型に装入し、圧縮
成形して圧粉体としたのち、焼結して、35〜50%の空孔
率を有し、かつCr:40〜65質量%を含み、軽合金を溶浸
させた後の熱膨張係数が14×10-6/K以下である多孔質
金属焼結体とする。この多孔質金属焼結体を軽合金製部
材に鋳包むことにより、高強度で接合強度が高く、鉄系
材料に近い熱膨張係数を有する軽合金製部材が得られ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウム合金
等の軽合金製部材の補強用として用いられる多孔質金属
焼結体に係り、とくに、アルミニウム合金製内燃機関の
軸受部に鋳包まれて軸受部を補強する内燃機関軸受部補
強用多孔質金属焼結体に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、内燃機関(エンジン)の軽量化お
よび放熱性を高める目的から、軽合金の一種である、ア
ルミニウム合金製のエンジンが一般化しつつある。しか
し、アルミニウム合金は、従来の鋳鉄に比べて強度が低
く、高温に晒される部材では、強度が不足するという問
題が発生している。
【0003】例えば、エンジンのクランクシャフトは、
シリンダブロックと一体に成形された部材(軸受ハウジ
ング)およびその部材に複数の締め付けボルトで固定さ
れる部材(クランクシャフト保持部材)で構成される軸
受部により軸受メタルを介して支持されている。この軸
受部をいずれもアルミニウム合金製とした場合には、ク
ランクジャーナルの直下でかつ燃焼ガスの爆発による大
きな圧力を受ける部位で剛性が不足するという問題があ
る。また、軸受部をいずれもアルミニウム合金製とした
場合には、アルミニウム合金の熱膨張係数が鉄系材料に
比べ大きいため、軸受部が高温に晒されると、鉄系材料
で構成されるクランクシャフトとの熱膨張差が大きくな
り、軸受面とクランクジャーナルとのクリアランスが大
きくなり騒音と振動が増大するという問題がある。
【0004】このような問題に対し、例えば、実開昭63
-150115 号公報には、シリンダブロックに取り付けるた
めのボルト穴の中心線と彎曲したクランク・ジャーナル
支持面とで画成される部分の内部を強化繊維で複合強化
した内燃機関の軽合金製クランク軸支持部材が提案され
ている。実開昭63-150115 号公報に記載された技術で
は、強化繊維の体積率を20〜40%として、クランク軸の
熱膨張率とほぼ一致させることが好ましいとしている。
【0005】また、特開昭60-219436 号公報には、アル
ミニウム合金製のシリンダブロック本体の下部に取り付
けられるアルミニウム合金製ハウジングキャップの軸受
部を、 鉄系材料を鋳包んで形成したエンジンブロックが
提案されている。実開昭63-150115 号公報、特開昭60-2
19436 号公報に記載された技術によれば、アルミニウム
合金のみでは得られない強度増加があり、剛性が大幅に
向上するとともに、クリアランスが適正に維持できると
している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、実開昭63-150
115 号公報に記載された技術では、強化繊維で複合強化
した部材が高温環境下では必ずしも満足できる特性が得
られない場合があるという問題がある。また、特開昭60
-219436 号公報に記載された技術では、軸受部を所望の
熱膨張率に調整するための、鉄系材料の選択が難しいう
え、熱膨張率低下には限界がある。さらにアルミニウム
合金との接合強度が不足するという問題があった。
【0007】また、特開2000-337348 号公報には、内燃
機関のクランクシャフトを支持するための支持構造と、
支持構造を保持するための保持部分とを有し、支持構造
の材料がクランクシャフト材料と略等しい熱膨張率を有
する高シリコンアルミニウムからなる多孔質材料であ
り、保持部分の材料が支持構造の孔内に流入しているク
ランクシャフト用軸受が提案されている。しかし、特開
2000-337348 号公報に記載された技術では、クランクシ
ャフトと支持構造との熱膨張差は少なくなるが、やはり
限界があり、保持部分と支持構造との接合強度がばらつ
き、必ずしも安定して満足できる特性が得られない場合
があった。
【0008】また、特開2001-276961 号公報には、鉄あ
るいは鉄系金属をベースとし、これにクロムが10〜40重
量%含有されてなる金属多孔質予備成形体が記載されて
いる。特開2001-276961 号公報に記載された金属多孔質
成形体は、注湯完了から溶湯含浸までに所定のタイムラ
グが存在する鋳造法で金属複合部材とされる。しかしな
がら、特開2001-276961 号公報に記載された金属多孔質
成形体を使用しアルミニウム合金を含浸させた複合部材
でも熱膨張率低下には限界があり、接合強度がばらつ
き、接合面剥離が生じる場合があり、必ずしも安定して
満足できる特性が得られない場合があるという問題があ
った。
【0009】また、金属多孔質成形体(多孔質金属焼結
体)は、空孔を有するため断続切削となり切削抵抗が高
く、切削工具(バイト)寿命が短いため、切削工具交換
のために切削加工能率が低下し、製造コストの高騰を招
くという問題もある。本発明は、上記した従来技術の問
題を解決し、軽合金部材に鋳包まれて該部材を補強する
多孔質金属焼結体およびその製造方法を提案することを
目的とする。とくに、本発明は、軽合金の一種である、
アルミニウム合金製内燃機関の鉄系材料製クランクシャ
フトを支持するアルミニウム合金製軸受部に鋳包まれて
軸受部を補強する軸受部補強用として好適な、多孔質金
属焼結体を提案することを目的とする。本発明で目標と
する多孔質金属焼結体は、所望の接合強度を安定して確
保でき接合性に優れ、しかもアルミニウム合金に鋳包ま
れたのちに鉄系材料の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有
する、あるいはさらに被削性に優れた多孔質金属焼結体
である。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記した課
題を達成するために、軽金属合金の1種である、アルミ
ニウム合金製部材に多孔質金属焼結体を鋳包んだ際の、
部材と多孔質金属焼結体との接合強度におよぼす要因お
よび鋳込んだのちの熱膨張係数について鋭意検討した。
【0011】従来、アルミニウム合金製部材に多孔質金
属焼結体を鋳包む際には、所望の接合強度を得るため
に、空孔率を一定範囲内に規制するのが、一般的であっ
た。製品の空孔率を測定するには、製品を切断して、断
面組織を撮像し、画像解析により算出するのが一般的で
あるが、しかし、このような方法では、製品を切断する
必要があり工程生産に応用することは不可能であり、通
常、空孔率の測定は、密度測定で代用している。
【0012】まず、本発明者らは、所定の形状とした、
空孔を有する多孔質鉄基焼結体をアルミニウム合金製部
材に鋳包んだのち、接合境界を含む引張試験片を採取し
た。これら引張試験片を用いて引張試験を行い接合強度
を求めた。なお、各多孔質鉄基焼結体の空孔率は、密度
測定により求めた。接合強度と空孔率の関係を図3に示
す。なお、接合強度(σ)は、所望の接合強度(σE
に対する比、接合強度比σ/σE として表示した。接合
強度比1以上で、接合強度σが所望の接合強度σE 以上
の値となることを意味する。
【0013】図3から、同一空孔率でも接合強度比には
大きなばらつきが見られる。これは、空孔率を密度測定
で代用したためと考えられ、密度測定により得られる多
孔質焼結体の空孔率の管理だけでは、部材との接合強度
に影響する因子を代表していないことになる。そこで、
本発明者らは、図3の結果をさらに詳細に検討し、同一
の空孔率でも、空孔の分布、 形態に大きな相違がある場
合があり、それが、部材と多孔質金属焼結体との接合強
度に大きく影響していることに想到した。空孔率が同一
でも、空孔の大きさ、数が相違する、例えば、図2
(a)、(b)に模式的に示す、断面での空孔分布を有
する多孔質金属焼結体では、(b)の空孔分布を有する
焼結体の方が、部材との接合強度が大きいことを見いだ
した。さらに、アルミニウム合金を鋳込む際、多孔質金
属焼結体の空孔が微細な場合には、アルミニウム合金が
空孔に含浸されにくく、とくに焼結時に発生した独立空
孔にはアルミニウム合金が含浸せず、接合強度低下に顕
著に影響することを見いだした。
【0014】そこで、本発明者らは、多孔質金属焼結体
の微細空孔の生成原因についてさらに研究した。その結
果、接合強度比は、多孔質金属焼結体中に存在する微細
空孔、とくに直径5μm 以下の微細空孔の存在比率に大
きく影響されることを見いだした。多孔質金属焼結体中
に存在する直径5μm 以下の微細空孔率と全空孔率との
比、{(直径5μm 以下の微細空孔率)/(全空孔
率)}×100 (%)、と接合強度比との関係を図1に示
す。図1から、多孔質金属焼結体中に存在する直径5μ
m 以下の微細空孔を、全空孔率に対して、20%未満とす
ることにより、 接合強度比が1以上となる。なお、接合
強度比は、ニレジスト鋳鉄製部材の場合の強度(接合強
度σE )を基準として示している。ここで、直径5μm
以下の微細空孔率、全空孔率は、多孔質金属焼結体の断
面を研磨して、画像解析装置で断面における空孔の面積
を測定し、それぞれの面積率を算出し、その値を空孔率
とした。
【0015】また、多孔質金属焼結体中の微細空孔の形
成には、使用する合金鋼粉末の粒径分布が大きく影響
し、とくに直径5μm 以下の微細空孔率を20%未満とす
るためには、使用する合金粉末に、#350 の篩を通過す
る(−350 メッシュ)微細粉末の混合を防止する必要が
あることを知見した。また、本発明者らは、アルミニウ
ム合金製部材としてアルミニウム合金製内燃機関軸受部
に着目し、多孔質金属焼結体を鋳包んだ、アルミニウム
合金製内燃機関軸受部の特性改善について検討した。鉄
系材料製のクランクシャフトを支持する、アルミニウム
合金製内燃機関軸受部では、鉄系材料製のクランク・ジ
ャーナルと軸受部とのクリアランスを、高温に晒される
稼動時においても小さく保つことが必要とされている。
そのため、本発明者らは、軸受部の熱膨張係数を鉄系材
料のそれに略近いものとする手段について鋭意検討し
た。その結果、軸受部の熱膨張係数を鉄系材料のそれに
略近いものとするためには、多孔質金属焼結体自体の熱
膨張係数を低くし、アルミニウム合金を溶浸させたのち
の熱膨張係数が14×10-6/K以下となるように、軸受部
に鋳包む多孔質金属焼結体の組成と、空孔率とを適正範
囲とする必要があることを知見した。そして、本発明者
はアルミニウム合金の熱膨張係数が大きいため、多孔質
金属焼結体の熱膨張係数を大きく下げる必要があるが、
そのためには多孔質金属焼結体をFe系材料、ステンレス
系材料、あるいはFe−Si系材料を用いたのでは限界があ
り、本発明者は高Cr系材料を用い、さらに低熱膨張係数
の元素を添加することがよいことを知見した。
【0016】本発明は、上記した知見に基づき、さらに
検討を加えて完成されたものである。すなわち、 第1の
本発明は、軽合金製部材に鋳包まれて該部材を補強する
多孔質金属焼結体であって、該多孔質金属焼結体が、
C:0.1 〜3.0 質量%、Cr:40〜65質量%を含み、ある
いはさらにMo:10質量%以下、V:10質量%以下、W:
10質量%以下、Si:10質量%以下のうちから選ばれた1
種または2種以上を合計で20質量%以下含有する多孔質
金属焼結体であり、35〜50%の空孔率を有し、かつ軽合
金を溶浸させた後の熱膨張係数が14×10-6/K以下であ
ることを特徴とする軽合金製部材補強用多孔質金属焼結
体である。また、 第1の本発明では、前記多孔質金属焼
結体が、粒径:150 μm 以下の、MnS 、CaF2、BN、およ
びエンスタタイトのうちから選ばれた1種または2種以
上からなる被削性改善用微細粒子を、0.1 〜5質量%含
有することが好ましい。なお、第1の本発明では、空孔
のうち直径5μm を超える空孔を、全空孔率に対し80%
以上有することが好ましい。また、第1の本発明では、
前記軽合金製部材をアルミニウム合金製内燃機関軸受部
とすることが好ましい。
【0017】また、第2の本発明は、金属粉末に、黒鉛
粉末と、潤滑剤粉末とを混合して混合粉としたのち、該
混合粉を圧粉成形して圧粉体となし、ついで該圧粉体を
焼結して多孔質金属焼結体とする多孔質金属焼結体の製
造方法において、前記金属粉末を−60メッシュ〜+350
メッシュの粒径分布を有する、Fe−Cr合金粉、またはFe
−Cr合金粉および鉄粉、または鉄粉およびCr金属粉、ま
たはFe−Cr合金粉およびステンレス合金粉とし、前記Fe
−Cr合金粉、または前記Cr金属粉、または前記Fe−Cr合
金粉およびステンレス合金粉を前記混合粉中のCr含有量
が40〜65質量%となるように配合し、前記焼結の焼結条
件を調整して、前記多孔質金属焼結体の空孔率を35〜50
%、軽合金を溶浸させた後の熱膨張係数を14×10-6/K
以下とすることを特徴とする軽合金製部材補強用多孔質
金属焼結体の製造方法である。また、第2の本発明で
は、前記混合粉がさらに、粒径:150 μm 以下の、MnS
、CaF2、BN、およびエンスタタイトのうちから選ばれ
た1種または2種以上からなる被削性改善用微細粒子粉
末を、0.1 〜5質量%含有することが好ましく、また、
第2の本発明では、前記Fe-Cr 合金粉が、さらに混合粉
中の含有量で、Mo:10質量%以下、V:10質量%以下、
W:10質量%以下、Si:10質量%以下のうちから選ばれ
た1種または2種以上を合計で20質量%以下となるよう
に含有することが好ましく、また第2の本発明では、前
記鉄粉およびCr金属粉に加えて、さらに混合粉中の含有
量で、Mo:10質量%以下、V:10質量%以下、W:10質
量%以下、Si:10質量%以下のうちから選ばれた1種ま
たは2種以上を合計で20質量%以下となるように、Mo
粉、V粉、W粉、Si粉のうちから選ばれた1種または2
種以上を配合することが好ましい。また第2の本発明で
は、前記Fe−Cr合金粉およびステンレス合金粉に加えて
さらに、混合粉中の含有量でMo:10質量%以下、V:10
質量%以下、W:10質量%以下、Si:10質量%以下のう
ちから選ばれた1種または2種以上を合計で20質量%以
下となるようにMo粉、V粉、W粉、Si粉のうちから選ば
れた1種または2種以上を配合することが好ましい。ま
た、第2の本発明では、前記混合粉が、前記黒鉛粉を3
質量%以下、前記潤滑剤粉末を0.5 〜1.5質量%含有す
ることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明における多孔質金属焼結体
は、アルミニウム合金製内燃機関軸受部等の軽金属製部
材に鋳包まれて、該軽金属製部材を補強する。例えば、
図4(a)に示すように、アルミニウム合金製内燃機関
軸受部の上部、あるいは図4(b)に示すように、軸受
部の内部に鋳包んでもよい。
【0019】本発明の軽合金製部材補強用多孔質金属焼
結体は、C:0.1 〜3.0 質量%、Cr:40〜65質量%を含
み、あるいはさらにMo:10質量%以下、V:10質量%以
下、W:10質量%以下、Si:10質量%以下のうちから選
ばれた1種または2種以上を合計で20質量%以下含有す
る基地組成を有する多孔質金属焼結体とする。本発明の
多孔質金属焼結体の基地組成の限定理由について説明す
る。
【0020】C:0.1 〜3.0 % Cは、焼結体の強度、硬さを増加させる元素であり、 本
発明では強度確保のため0.1 %以上の含有を必要とす
る。なお、3.0 %を超えて含有すると炭化物が粗大化し
被削性が低下する。このため、Cは0.1 〜3.0 %に限定
した。 Cr:40〜65% Crは、熱膨張係数を低下させる作用を有する元素であ
り、本発明では、所望の低い熱膨張係数を確保するため
に40%以上の含有を必要とする。一方、65%を超えて含
有すると、焼結が困難となり、強度が低下する。このた
め、Crは40〜65%の範囲に限定した。
【0021】Mo:10質量%以下、V:10質量%以下、
W:10質量%以下、Si:10質量%以下のうちから選ばれ
た1種または2種以上を合計で20質量%以下 Mo、V、W、Siは、いずれも鉄(Fe)より熱膨張係数が
低い元素であり、多孔質金属焼結体の熱膨張係数を低下
させる作用を有する。本発明では、所望の熱膨張係数と
なるように調整するために、 上記したCrに加えて選択し
て1種または2種以上含有できる。一方、Mo:10質量
%、V:10質量%、W:10質量%、Si:10質量%をそれ
ぞれ超えて含有すると、焼結が困難となり強度が劣化す
る。また、Mo、V、W、Siの含有量の合計量が20質量%
を超えると、同様に合金元素の均一分布が困難となり、
強度が低下するとともに、熱膨張係数にバラツキが生じ
る。
【0022】本発明の多孔質金属焼結体の基地組成で
は、上記した成分以外、残部はFeおよび不可避的不純物
である。また、本発明の軽合金製部材補強用多孔質金属
焼結体は、上記した基地組成を有するとともに、さらに
面積率で35〜50%の空孔を有する。空孔率が35%未満で
は、多孔質金属焼結体を軽合金部材に鋳包むときに、ア
ルミニウム合金等の軽合金溶湯が空孔内に溶浸しにく
く、引張強さが低下する。一方、空孔率が50%を超える
と、空孔が多すぎて強度が低下して、使用時に変形する
とともに、所望の熱膨張係数(例えば、鉄系材料製のク
ランクシャフトの熱膨張係数と略等しく)なるように調
整することが困難となる。このため、軽合金製部材補強
用多孔質金属焼結体の空孔率は、35〜50%の範囲に限定
した。
【0023】また、本発明の軽合金部材補強用多孔質金
属焼結体は、空孔のうち直径5μmを超える空孔を、全
空孔率に対して80%以上有することが、鋳包んだのちの
接合強度のばらつきを少なくする観点から好ましい。直
径5μm を超える空孔率が全空孔率に対し80%未満で
は、すなわち、直径5μm 以下の空孔率が全空孔率に対
し20%を超えると微細空孔が増加し、図1に示すよう
に、接合強度比が1未満と接合強度が低下する。このた
め、直径5μm を超える空孔を、全空孔率に対し80%以
上に限定することが好ましい。
【0024】上記した組成、空孔率を有する多孔質金属
焼結体は、軽合金を溶浸させた後の熱膨張係数が14×10
-6/K以下と、例えば、内燃機関の鉄系材料製クランク
シャフトの熱膨張係数(9×10ー6〜12×10ー6/K程度)
に近い値となり、内燃機関の軸受部に鋳包まれた場合、
内燃機関稼動時の軸受部とジャーナルとのクリアランス
を小さくできるという効果がある。
【0025】なお、本発明の軽合金部材補強用多孔質金
属焼結体は、上記した組成の基地中に、被削性改善のた
め、被削性改善用微細粒子を分散させることが好まし
い。分散させる被削性改善用微細粒子としては、MnS 、
CaF2、BN、およびエンスタタイトのうちから選ばれた1
種または2種以上とすることが好ましい。MnS 、CaF2
BN、およびエンスタタイトはいずれも、被削性を改善す
る粒子であり、必要に応じて選択して含有できる。
【0026】このような被削性改善用微細粒子を基地中
に均一分散させることにより、切削中の切粉は, これら
の微細粒子と微細粒子間の距離で決定される大きさに分
断されるため、切削抵抗は低く維持される。また、基地
中に分散させる被削性改善用微細粒子は、粒径:150 μ
m 以下の微細粒子とすることが好ましい。微細粒子の粒
径が150 μm を超えると、接合強度が低下する。なお、
好ましくは5〜100 μmである。
【0027】また、多孔質金属焼結体の基地中に分散さ
せる被削性改善用微細粒子の含有量は、0.1 〜5質量%
とすることが好ましい。被削性改善用微細粒子の含有量
が、0.1 質量%未満では被削性改善の効果が認められな
い。一方、5質量%を越えて含有すると、基地との密着
強度が低下する。このため、粒径:150 μm 以下の被削
性改善用微細粒子は、0.1 〜5質量%の範囲で含有する
ことが好ましい。
【0028】上記した多孔質金属焼結体のうちのいずれ
かを、内燃機関用アルミニウム合金製軸受部に鋳包み、
内燃機関用アルミニウム合金製軸受部とすることが好ま
しい。ついで、本発明の軽合金部材補強用多孔質金属焼
結体の製造方法について、説明する。
【0029】原料とする金属粉末と、黒鉛粉末と、潤滑
剤粉末とを混合して混合粉としたのち、これら混合粉を
金型に装入して加圧成形し圧粉体とし、該圧粉体を焼結
して多孔質金属焼結体とする。原料粉として使用する金
属粉末は、60メッシュの篩を通過し(以下、60メッシュ
アンダー、あるいは−60メッシュともいう)、350 メッ
シュの篩を通過しない(以下、350 メッシュオーバー、
あるいは+350 メッシュともいう)粒径分布に調整した
金属粉とすることが好ましい。
【0030】+100 メッシュ(#100 メッシュの篩を通
過しない)の粒子が存在すると、混合粉の圧粉性が低下
し、所望の密度の圧粉体とすることが難しくなる場合が
あるが、−60〜+100 メッシュの粒子が、全体の粉末の
40%未満であれば、成形可能であり、所望の空孔率を有
する圧粉体とするためには有利となる。一方、−350メ
ッシュ(#350 メッシュの篩を通過する)の粒子が存在
すると、直径5μm 未満の微細空孔の存在量が増加し、
接合強度比が低下する傾向となる。
【0031】本発明で使用する金属粉末は、上記した粒
径分布を有するFe-Cr 合金粉、またはFe-Cr 合金粉およ
び鉄粉、または鉄粉およびCr金属粉、またはFe−Cr合金
粉およびステンレス合金粉とする。Fe-Cr 合金粉、また
はCr金属粉、またはFe−Cr合金粉およびステンレス合金
粉は、混合粉中のCr含有量が40〜65質量%となるように
配合量を調整する。ステンレス合金粉としては、例えば
SUS 410粉等が例示される。
【0032】これら金属粉末に、黒鉛粉末と、ステアリ
ン酸亜鉛等の潤滑剤粉末と、あるいはさらに被削性改善
用微細粉末を混合し混合粉とする。黒鉛粉は、多孔質焼
結体の強度を増加させる合金元素として添加するが、混
合粉中の含有量が3質量%を超えると、炭化物が増加
し、焼結体の特性を阻害し、あるいは被削性を劣化さ
せ、さらには焼結時に液相が生じ、独立空孔が多く発生
して、接合強度が低下する。このため、黒鉛粉は3質量
%以下に限定することが好ましい。なお、黒鉛粉の粒径
は、0.1 〜10μm とすることが好ましい。0.1 μm 未満
では取り扱いが困難となり、10μm を超えると、均一分
散が困難となる。
【0033】本発明では、上記した金属粉末、黒鉛粉
末、潤滑剤粉末に加えてさらに、混合粉には、被削性改
善のために、被削性改善用微細粒子粉末を含有すること
ができる。被削性改善用微細粒子粉としては、MnS 、Ca
F2、BN、およびエンスタタイトのうちから選ばれた1種
または2種以上とすることが好ましい。MnS 、CaF2、B
N、およびエンスタタイトはいずれも、被削性を改善す
る粒子であり、必要に応じて選択して含有できる。ま
た、混合粉に添加する被削性改善用微細粒子粉は、粒
径:150 μm 以下の微細粒子粉とすることが好ましい。
微細粒子粉の粒径が150μm を超えると、接合強度が低
下する。なお、好ましくは5〜100 μm である。
【0034】混合粉中に被削性改善用微細粒子粉を含有
する場合には、被削性改善用微細粒子粉の含有量は混合
粉全量に対し0.1 〜5質量%とすることが好ましい。0.
1 質量%未満では、被削性改善効果が少なく、一方、5
質量%を超えると接合強度が低下する。なお、混合方法
は、特に限定する必要はないが、Vミルを用いることが
経済上から好ましい。
【0035】上記した混合粉を、金型に装入し加圧成形
して所定形状の圧粉体とする。混合粉の成形方法は、特
に限定されないが、プレス等を用いることが好ましい。
このようにして得られた所定形状の多孔質金属焼結体
を、軽合金部材、例えば、 図4に示すような内燃機関の
軸受部、を形成する鋳型の対応部位に装着し、その鋳型
内に軽合金(例えば、アルミニウム合金)溶湯を注入
し、高圧ダイキャストしてあるいは溶湯鍛造して軽合金
製部材(内燃機関軸受部)を製造する。これにより、焼
結体の空孔に溶湯が侵入し部材との接合が完了する。そ
の後、部材は、所定の寸法に切削加工が施され製品とさ
れる。
【0036】
【実施例】金属粉末としてのフェロクロム粉(Fe-Cr 合
金粉;Cr:40〜70質量%)、あるいはFe-Cr 合金粉と鉄
粉、あるいは鉄粉とCr粉、あるいはFe-Cr 合金粉とステ
ンレス合金粉(SUS 410粉)とに、黒鉛粉、潤滑剤粉、あ
るいはさらに被削性改善用微細粒子として、MnS 粉を添
加し混合して、 混練して混合粉としたのち、金型に充填
し成形プレスにより加圧成形して、所定寸法の圧粉体と
した。なお、Fe-Cr合金粉、あるいは鉄粉およびCr粉、
あるいはFe−Cr合金粉およびステンレス合金粉は、表1
に示すように、予め分級し、粒径分布を調整したものを
使用した。また、Fe-Cr 合金粉、鉄粉、Cr粉、ステンレ
ス合金粉は焼結体のCr含有量が表1に示す値となるよう
に配合した。
【0037】ついで、これら圧粉体を1100〜1250℃で焼
結し、表1に示す組成と空孔を含む多孔質金属焼結体と
した。なお、表1に示す成分以外の残部はFeおよび不可
避的不純物部である。また、全空孔率は、密度測定によ
り空孔率を求めた。密度測定は、アルキメデス法によっ
た。また、全空孔に対する微細空孔の比率は、焼結体の
プレス方向断面について、金属顕微鏡により組織を撮像
し、画像解析により直径5μm 以下の微細空孔の全面積
と全空孔の面積をもとめ、(直径5μm 以下の微細空孔
の全面積)/(全空孔の面積)により求めた. なお、 測
定個所は円周上3個所とした。
【0038】これら焼結体を、内燃機関軸受部相当材製
造用鋳型の所定位置に装着した。ついで鋳型内に、アル
ミニウム合金溶湯(JIS ADC 12)を注入したのち、溶湯
鍛造または高圧鋳造を施し所定の寸法の内燃機関軸受部
相当材に仕上げた。得られた内燃機関軸受部相当材か
ら、焼結体との接合部を含む引張試験片を採取し、引張
試験により接合部の接合強度を求めた。引張試験片の採
取方向は、試験片の軸に対し垂直に接合面を含む方向と
した。なお、接合強度σは、所望の接合強度σE に対す
る比、接合強度比σ/ σE で評価した。
【0039】また、内燃機関軸受部相当材から焼結体を
含む試験片を採取し、引張試験により、引張強さを熱膨
張測定装置により熱膨張係数(室温〜200 ℃間の平均)
を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】本発明例は、いずれも1.0 以上の高い接合
強度比を有し、しかもアルミニウム合金が含浸した状態
での熱膨張係数は鉄系材料の熱膨張係数に近い、14×10
-6以下の熱膨張係数を有している。一方、本発明の範囲
を外れる比較例は、接合強度比が低いか、あるいは熱膨
張係数が大きく、内燃機関用軸受部とを補強した場合、
内燃機関稼動時にクリアランスが大きくなりすぎて、騒
音・振動を発生する危険性がある。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、優れた接合性を有し、
軽合金部材に鋳包み後に鉄系材料の熱膨張係数に近い熱
膨張係数を有する軽合金製部材補強用多孔質金属焼結体
を安定して製造でき、産業上格段の効果を奏する。ま
た、本発明の多孔質金属焼結体は、被削性にも優れ、切
削加工能率の向上が可能となるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋳包み後の多孔質金属焼結体と部材との接合強
度比に及ぼす微細空孔比率の影響を示すグラフである。
【図2】焼結体中の空孔の分布状況の一例を模式的に示
す説明図である。
【図3】従来の鋳包み後の多孔質金属焼結体と部材との
接合強度比と空孔率との関係を示すグラフである。
【図4】多孔質金属焼結体を補強した内燃機関軸受部の
例を模式的に示す概略断面図である。
【符号の説明】
1 クランクシャフト 2 軸受部 3 多孔質金属焼結体 4 軸受メタル

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 軽合金製部材に鋳包まれて該部材を補強
    する多孔質金属焼結体であって、該多孔質金属焼結体
    が、C:0.1 〜3.0 質量%、Cr:40〜65質量%を含み、
    あるいはさらにMo:10質量%以下、V:10質量%以下、
    W:10質量%以下、Si:10質量%以下のうちから選ばれ
    た1種または2種以上を合計で20質量%以下含有し、残
    部Feおよび不可避的不純物からなる多孔質金属焼結体で
    あり、35〜50%の空孔率を有し、かつ軽合金を溶浸させ
    た後の熱膨張係数が14×10-6/K以下であることを特徴
    とする軽合金製部材補強用多孔質金属焼結体。
  2. 【請求項2】 前記多孔質金属焼結体が、さらに粒径:
    150 μm 以下の、MnS 、CaF2、BN、およびエンスタタイ
    トのうちから選ばれた1種または2種以上からなる被削
    性改善用微細粒子を、0.1 〜5質量%含有することを特
    徴とする請求項1に記載の軽合金製部材補強用多孔質金
    属焼結体。
  3. 【請求項3】 金属粉末に、黒鉛粉末と、潤滑剤粉末と
    を混合して混合粉としたのち、該混合粉を圧粉成形して
    圧粉体となし、ついで該圧粉体を焼結して多孔質金属焼
    結体とする多孔質金属焼結体の製造方法において、前記
    金属粉末を−60メッシュ〜+350 メッシュの粒径分布を
    有する、Fe-Cr 合金粉、またはFe−Cr合金粉および鉄
    粉、または鉄粉およびCr金属粉、またはFe-Cr 合金粉お
    よびステンレス合金粉とし、前記Fe-Cr 合金粉または前
    記Cr金属粉、または前記Fe-Cr 合金粉およびステンレス
    合金粉を前記混合粉中のCr含有量が40〜65質量%となる
    ように配合し、前記焼結の焼結条件を調整して、前記多
    孔質金属焼結体の空孔率を35〜50%、軽合金を溶浸させ
    た後の熱膨張係数を14×10-6/K以下とすることを特徴
    とする軽合金製部材補強用多孔質金属焼結体の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 前記混合粉がさらに、粒径:150 μm 以
    下の、MnS 、CaF2、BN、およびエンスタタイトのうちか
    ら選ばれた1種または2種以上からなる被削性改善用微
    細粒子粉末を、0.1 〜5質量%含有することを特徴とす
    る請求項3に記載の軽合金製部材補強用多孔質金属焼結
    体の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記Fe-Cr 合金粉が、さらに混合粉中の
    含有量で、Mo:10質量%以下、V:10質量%以下、W:
    10質量%以下、Si:10質量%以下のうちから選ばれた1
    種または2種以上を合計で20質量%以下となるように含
    有することを特徴とする請求項3または4に記載の軽合
    金製部材補強用多孔質金属焼結体の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記鉄粉およびCr金属粉に加えて、さら
    に混合粉中の含有量で、Mo:10質量%以下、V:10質量
    %以下、W:10質量%以下、Si:10質量%以下のうちか
    ら選ばれた1種または2種以上を合計で20質量%以下と
    なるように、Mo粉、V粉、W粉、Si粉のうちから選ばれ
    た1種または2種以上を配合することを特徴とする請求
    項3または4に記載の軽合金製部材補強用多孔質金属焼
    結体の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記Fe-Cr 合金粉およびステンレス合金
    粉に加えてさらに混合粉中の含有量でMo:10質量%以
    下、V:10質量%以下、W:10質量%以下、Si:10質量
    %以下のうちから選ばれた1種または2種以上を合計で
    20質量%以下となるように、Mo粉、V粉、W粉、Si粉の
    うちから選ばれた1種または2種以上を配合することを
    特徴とする請求項3または4に記載の軽合金製部材補強
    用多孔質金属焼結体の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN115323234A (zh) * 2022-08-09 2022-11-11 东睦新材料集团股份有限公司 一种无磁低膨胀铬基合金材料的制备方法

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