JP4316169B2 - 軽合金部材補強用多孔質金属焼結体およびその製造方法 - Google Patents

軽合金部材補強用多孔質金属焼結体およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミニウム合金等の軽合金を充填して複合材料として使用される多孔質金属焼結体、あるいはアルミニウム合金等の軽合金部材に鋳包まれて使用される軽合金部材補強用多孔質金属焼結体に係り、とくに、内燃機関に用いられるアルミニウム合金等の軽合金部材の一部または全体補強用として好適な多孔質金属焼結体及び多孔質金属焼結体を用いた軽合金複合化部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年のエンジンの軽量化および放熱性を高める目的から、アルミニウム合金製のエンジンが一般化しつつある。しかし、アルミニウム合金は従来の鋳鉄にくらべ強度が低く、近年の高負荷エンジンにおける、高温で高荷重が負荷される部材、例えば、ピストンのリング溝部、ピン穴部、リップ部等では、強度が不足するという問題が発生していた。
【0003】
このような問題に対し、例えば、ピストンリング溝部にピストン材料より高強度の材料からなる耐摩環を鋳包み、この耐摩環でピストンリングを支持する構造が提案されている。例えば、ディーゼルエンジンでは、トップリング溝にニレジスト鋳鉄製の耐摩環を鋳包んだピストンが提案されている。
しかしながら、ニレジスト鋳鉄製の耐摩環は、鋳造品であるため、歩留が低く、材料費が高くなり、また加工性も悪いため、総合的にコスト高となるという問題があった。さらに、ニレジスト鋳鉄製耐摩環では、アルミニウム合金への鋳包み性を向上させるためにアルフィン処理が必要不可欠であり、また鉄合金であるため密度が高くなり、エンジン性能の低下を招くという問題があった。
【0004】
一方、アルミニウム合金等の軽合金をウィスカー、繊維等の強化材で強化した軽合金複合化部材が注目されている。これらの軽合金複合化部材は、高温環境下で使用すると、必ずしも満足できる特性が得られない場合があり、最近では、軽合金複合化部材の強化材として、多孔質金属焼結体を使用することが行われている。
【0005】
しかし、軽合金の強化材として多孔質金属焼結体を使用した軽合金複合化部材を、軽合金の強度が著しく低下する高温下で使用すると、複合化部材の強度は多孔質金属焼結体の特性に大きく依存することになる。しかしながら、従来では、多孔質金属焼結体の体積率、合金元素、気孔の大きさ等についての検討はなされているが、複合化部材の強化材としての多孔質金属焼結体の強度についてはほとんど検討されていなかった。
【0006】
また、特開平8−319504号公報には、Cr、Mo、V、W、Mn、Siのうち少なくとも1種が2〜70%、炭素が0.07〜8.2 %、不可避の不純物の組成をもつ鉄系原料粉末を用いて焼結体とし、気体中で冷却し気体焼入れして構成する金属の硬さをマイクロビッカース硬さでHv200 〜800 に設定した多孔質金属焼結体と、気孔に含浸し固化した軽金属とを備え、摺動時の焼付き性を確保した金属焼結体複合材料が提案されている。しかしながら、特開平8−319504号公報に記載された多孔質金属焼結体では、気体焼入れが可能となるようにCr、Mo、V等の合金元素を多量に添加しており、軽合金中に鋳包まれて使用する補強部材用としては、経済的に不利となる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
さらに、特開平8−319504号公報に記載された多孔質強化焼結体を、軽合金に鋳包んで使用する場合には、接合強度がばらつき、境界剥離を生じる場合があり、必ずしも高い接合強度(密着性)が安定して得られないという問題があった。本発明は、上記した従来技術の問題を有利に解決し、軽合金を充填し複合材料となす軽合金複合化部材として、軽合金の軟化が著しい高温環境下でも高い複合化部材強度を確保することが可能な、軽合金の含浸性に優れた軽合金複合化部材の補強用多孔質金属焼結体を提案することを目的とする。また、本発明は、軽合金製部材の補強用として、アルミニウム合金等の軽合金製部材に鋳包まれ、部材の強度を向上させる軽合金複合化部材として好適な、所望の接合強度を安定して確保できるように、軽合金の含浸性に優れ、軽合金部材との接合性に優れた多孔質金属焼結体及び多孔質金属焼結体を用いた軽合金複合化部材並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した課題を達成するために、多孔質金属 (鉄系)焼結体を、軽合金の1種である、アルミニウム合金製部材に鋳包んだ際の、多孔質金属 (鉄系)焼結体とアルミニウム合金製部材との接合強度および多孔質金属 (鉄系)焼結体にアルミニウム合金を充填 (含浸)させた複合化部材の引張強さにおよぼす各種要因について鋭意検討した。その結果、アルミニウム合金を充填 (含浸)させる、あるいはアルミニウム合金製部材に鋳包む、多孔質金属焼結体を、15〜50%の空孔率を有し、かつ該空孔のうち直径5μm を超える空孔を、全空孔率に対し80%以上有し、JIS Z 2507に規定される圧環強さ試験に準拠して得られる圧環強さが200MPa以上である多孔質金属焼結体とすることにより、高い引張強さ、さらには高い高温硬さを有する軽合金複合化部材および、接合強度の高い軽合金複合化部材が得られることを知見した。
【0009】
まず、本発明者が行った基礎的実験について説明する。
まず、多孔質金属 (鉄系)焼結体をアルミニウム合金製部材にて鋳包んだのち、接合境界を含む引張試験片を採取した。これら引張試験片を用いて引張試験を行い接合強度を求めた。なお、各多孔質金属(鉄系)焼結体の空孔率は、密度測定により求めた。接合強度と空孔率の関係を図3に示す。なお、境界強度(σ)は、所望の境界強度(σE )に対する比、境界強度比σ/σE として表示した。境界強度比1以上で、境界強度σが所望の境界強度σE 以上の値となることを意味する。
【0010】
図3から、同一空孔率でも境界強度比には大きなばらつきが見られる。これは、空孔率を密度測定で代用したためと考えられ、密度測定により得られる空孔率の管理だけでは、多孔質金属 (鉄系)焼結体の接合強度に影響する因子を代表していないことになる。
そこで、本発明者は、図3の結果をさらに詳細に検討し、同一の空孔率でも、空孔の分布、 形態に大きな相違がある場合があり、それが、軽合金部材と多孔質金属焼結体との接合強度に大きく影響していることに想到した。空孔率が同一でも、空孔の大きさ、数が相違する、例えば、図2(a)、(b)に模式的に示す、断面での空孔分布を有する多孔質金属焼結体では、(b)の空孔分布を有する焼結体の方が、軽合金部材との接合強度が大きいことを見いだした。さらに、軽合金を鋳込む際、多孔質金属焼結体の空孔が微細な場合には、軽合金が空孔に含浸されにくく、とくに焼結時に発生した独立空孔には軽合金が含浸せず、接合強度低下に顕著に影響することを見いだした。
【0011】
そこで、本発明者は、多孔質金属 (鉄系)焼結体の微細空孔の生成原因についてさらに研究した。その結果、接合強度比は、多孔質金属 (鉄系)焼結体中に存在する微細空孔、とくに直径5μm 以下の微細空孔の存在比率に大きく影響されることを見いだした。
多孔質金属焼結体中に存在する直径5μm 以下の微細空孔率と全空孔率との比、{(直径5μm 以下の微細空孔率)/(全空孔率)}×100 (%)、と接合強度比との関係を図1に示す。図1から、多孔質金属焼結体中に存在する直径5μm 以下の微細空孔を、全空孔率に対して、20%未満とすることにより、 接合強度比が1以上となる。なお、接合強度比は、溶製材(鋳鉄)にアルフィン処理を施した場合の強度(境界強度σE )を基準として示している。ここで、直径5μm 以下の微細空孔率、全空孔率は、多孔質金属焼結体の断面を研磨して、画像解析装置で断面における空孔の面積を測定し、それぞれの面積率を算出し、その値を空孔率とした。
【0012】
また、多孔質金属焼結体中の微細空孔の形成には、使用する合金粉末の粒度分布が大きく影響し、とくに直径5μm 以下の微細空孔率を20%未満とするためには、使用する合金粉末に、#350 の篩を通過する(−350 メッシュ)微細粉末の混合を防止する必要があることを知見した。
また、本発明者は、多孔質金属焼結体にアルミニウム合金が充填した状態の引張試験片を採取して引張試験を実施し、多孔質金属焼結体にアルミニウム合金が充填した状態の複合化部材の引張強さを求めた。さらに、JIS Z 2507の規定に準拠して、多孔質金属焼結体の圧環強さをもとめ、複合化部材の引張強さと多孔質金属焼結体の圧環強さとの関係を求めた。その結果、15〜50%の空孔率を有し、かつ該空孔のうち直径5μm を超える空孔を、全空孔率に対し80%以上有し、JIS Z 2507に規定される圧環強さ試験に準拠して得られる圧環強さを200MPa以上とすることにより、高強度の複合化部材が得られ、さらに高温硬さが高くなることを見いだした。
【0013】
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。
すなわち、 第1の本発明は、合金粉末を含む混合粉を圧粉、焼結してなる多孔質金属焼結体であって、前記多孔質金属焼結体が、15〜50%の空孔率を有し、かつ該空孔のうち直径5μm を超える空孔を、全空孔率に対し80%以上有し、圧環強さが200MPa以上であることを特徴とする軽合金の含浸性に優れた軽合金部材補強用多孔質金属焼結体である。なお、本発明でいう圧環強さとは、JIS Z 2507に規定される圧環強さ試験に準拠して得られる値をいうものとする。
【0014】
また、第1の本発明では、前記多孔質金属焼結体が、粒径:150 μm 以下のMnS 、CaF 、BNおよびエンスタタイトのうちから選ばれた1種または2種以上からなる被削性改善用微細粒子を0.1 〜5質量%含有することが好ましい。
また、第1の本発明では、前記多孔質金属焼結体が、前記多孔質ステンレス鋼焼結体であることが好ましい。
【0015】
また、第1の本発明では前記多孔質ステンレス鋼焼結体に代えて、多孔質Fe-Cu-C系焼結体とすることが好ましい。
また、第2の本発明は、合金粉末を含む混合粉を圧粉、焼結してなる多孔質金属焼結体に、軽合金を含浸させた軽合金複合化部材であって、前記多孔質金属焼結体が、15〜50%の空孔率を有し、かつ該空孔のうち直径5μm を超える空孔が、全空孔率に対し80%以上含まれ、圧環強さが200MPa以上であることを特徴とする軽合金複合化部材であり、また、第2の本発明では、前記多孔質金属焼結体が、さらに粒径:150 μm 以下のMnS 、CaF 、BNおよびエンスタタイトのうちから選ばれた1種または2種以上からなる被削性改善用微細粒子を0.1 〜5質量%含有することが好ましい。また、第2の本発明では、前記多孔質金属焼結体を多孔質ステンレス鋼焼結体とすることが好ましい。また第2の本発明では前記多孔質ステンレス鋼焼結体を多孔質フェライト系ステンレス鋼焼結体、多孔質マルテンサイト系ステンレス鋼焼結体、または多孔質オーステナイト系ステンレス鋼焼結体とすることが好ましい。
【0016】
また、第2の本発明では、前記多孔質ステンレス鋼焼結体に代えて、多孔質Fe−Cu−C系焼結体とすることが好ましく、また、第2の本発明では、多孔質Fe−Cu−C系焼結体が、2〜6質量%のCuを含有することが好ましい。
また、第3の本発明は、合金粉末に、黒鉛粉と、潤滑剤粉末とを混合して混合粉としたのち、該混合粉を成形して圧粉体となし、ついで該圧粉体を焼結して多孔質金属焼結体とする多孔質金属焼結体の製造方法において、前記合金粉末を−60メッシュ〜+350 メッシュの粒度分布を有する合金粉とし、前記焼結の焼結条件を調整して、前記多孔質金属焼結体の空孔率を15〜50%とし、圧環強さを200MPa以上とすることを特徴とする軽合金の含浸性に優れた軽合金部材補強用多孔質金属焼結体の製造方法であり、また、第3の本発明では、前記混合粉がさらに、粒径:150 μm 以下のMnS 、CaF 、BNおよびエンスタタイトのうちから選ばれた1種または2種以上からなる被削性改善用微細粒子を、混合粉全量に対し、0.1 〜5質量%含有することが好ましい。
【0017】
また、第4の本発明は、合金粉末に、黒鉛粉と、潤滑剤粉末とを混合して混合粉としたのち、該混合粉を成形して所定形状の圧粉体となし、ついで該圧粉体を焼結して所定形状の多孔質金属焼結体とし、ついで軽合金を含浸させて複合化部材とする多孔質金属焼結体を用いた軽合金複合化部材の製造方法において、前記合金粉末を−60メッシュ〜+350 メッシュの粒度分布を有し、見かけ密度が2.6 以下となるような合金粉とし、前記焼結の焼結条件を調整して、前記多孔質焼結体の空孔率を15〜50%とし、圧環強さを200MPa以上とすることを特徴とする軽合金の含浸性に優れた多孔質金属焼結体を用いた軽合金複合化部材の製造方法であり、また、第4の本発明では、前記混合粉がさらに、粒径:150 μm 以下のMnS 、CaF 、BNおよびエンスタタイトのうちから選ばれた1種または2種以上からなる被削性改善用微細粒子を、混合粉全量に対し、0.1 〜5質量%含有することが好ましい。
【0018】
また、第4の本発明では、前記合金粉末が、フェライト系ステンレス鋼粉、マルテンサイト系ステンレス鋼粉またはオーステナイト系ステンレス鋼粉であることが好ましく、またこの場合、前記混合粉が、前記黒鉛粉を、混合粉全量に対し1.0 質量%以下含有することが好ましい。
また、第4の本発明では、前記合金粉末が、鉄粉およびCu粉、またはFe-Cu 合金粉であることが好ましく、また第4の本発明では、前記Cu粉、またはFe-Cu 合金粉を、混合粉中のCu含有量が2〜6質量%となるように配合することが好ましく、また第4の本発明では、前記混合粉が、前記黒鉛粉を、混合粉全量に対し、0.8 〜1.5 質量%含有することが好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の多孔質金属焼結体は、軽合金部材補強用として、アルミニウム合金等の軽合金を充填して複合化部材として使用に供されるか、あるいは、アルミニウム合金等の軽合金部材に鋳包まれて使用に供されることが好ましい。
本発明の多孔質金属焼結体は、合金粉、黒鉛粉等を混合した混合粉を所定の形状に成形し圧粉体としたのち、焼結して、製品とされる。
【0020】
本発明の軽合金部材補強用多孔質金属焼結体では、特に材質を限定する必要はなく、使用環境に合致した強度等の特性を有する材質を適宜選択できる。
本発明の軽合金部材補強用多孔質金属焼結体は、面積率で15〜50%の空孔を有する。空孔率が15%未満では、アルミニウム合金等の軽合金部材に鋳包むとき、あるいは軽合金を充填させるときに、軽合金の溶湯が焼結体の空孔内に含浸せず、接合強度が低下する。一方、空孔率が50%を超えると、空孔が多すぎて強度が低下して、稼動時に変形する。このため、軽合金部材補強用多孔質金属焼結体の空孔率は、15〜50%の範囲に限定した。
【0021】
また、本発明の軽合金部材補強用多孔質金属焼結体は、空孔のうち直径5μm を超える空孔を、全空孔率に対して80%以上有する。直径5μm を超える空孔率が全空孔率に対し80%未満では、すなわち、直径5μm 以下の空孔率が全空孔率に対し20%を超えると微細空孔が増加し、図1に示すように、接合強度比が1未満と接合強度が低下する。このため、直径5μm を超える空孔を、全空孔率に対し80%以上に限定した。
【0022】
また、本発明の軽合金部材補強用多孔質金属焼結体は、所望の複合化部材強度を確保し、軽合金部材を補強する観点から、JIS Z 2507に規定される圧環試験により得られる圧環強さで200MPa以上の強度を保有するものとする。圧環強さが200MPa未満では、軽合金部材補強用として強度が不足し、軽合金部材が変形したり、割れる等の不具合を生じる。また、高圧ダイキャストあるいは溶湯鍛造の場合には、圧力に耐えられず含浸前にクラックが発生する等の不具合が生じる。なお、本発明では、多孔質金属焼結体の強度の指標として、圧環強さを用いているが、強度の指標として引張強さを使用する場合には、焼結体の材質、 空孔率に応じた寸法の引張用治具を準備しなくてはならず、評価の簡便性から本発明では単純治具で評価が可能な圧環強さを採用した。
【0023】
また、本発明の軽合金部材補強用多孔質金属焼結体は、基地中に、被削性改善のため、被削性改善用微細粒子を分散させることが好ましい。分散させる被削性改善用微細粒子としては、MnS 、CaF2、BN、およびエンスタタイトのうちから選ばれた1種または2種以上とすることが好ましい。MnS 、CaF2、BN、およびエンスタタイトはいずれも、被削性を改善する粒子であり、必要に応じて選択して含有できる。
【0024】
このような被削性改善用微細粒子を基地中に均一分散させることにより、切削中の切粉は, これらの微細粒子と微細粒子間の距離で決定される大きさに分断されるため、切削抵抗は低く維持される。
また、基地中に分散させる被削性改善用微細粒子は、粒径:150 μm 以下の微細粒子とすることが好ましい。微細粒子の粒径が150 μm を超えると、接合強度が低下する。なお、好ましくは5〜100 μmである。
【0025】
また、多孔質金属焼結体の基地中に分散させる被削性改善用微細粒子の含有量は、0.1 〜5質量%とすることが好ましい。被削性改善用微細粒子の含有量が、0.1 質量%未満では被削性改善の効果が認められない。一方、5質量%を越えて含有すると、基地との密着強度が低下する。このため、粒径:150 μm 以下の被削性改善用微細粒子は、0.1 〜5質量%の範囲で含有することが好ましい。
【0026】
また、軽合金部材補強用多孔質金属焼結体は、多孔質ステンレス鋼焼結体とすることが好ましい。焼結体を耐酸化性に富むステンレス鋼製とすることにより、鋳包み時の焼結体の酸化を抑制できる。ステンレス鋼のなかでも、強度が高いマルテンサイト系ステンレス鋼製とすることが補強材という観点からより好ましい。
【0027】
ステンレス鋼のなかでも好ましいマルテンサイト系ステンレス鋼としては、SUS 403 ,SUS 410 ,SUS 410S, SUS 420J1,SUS 420J2 ,SUS 431,SUS 440A ,SUS 440B,SUS 440Cが例示される。また、フェライト系ステンレス鋼としては、SUS 405 ,SUS 410L ,SUS 409, SUS 409S,SUS 429 ,SUS 430,SUS 434 ,SUS 436L が例示される。
【0028】
多孔質マルテンサイト系 (フェライト系)ステンレス鋼焼結体は、例えば、質量%で、C:0.1 〜0.8 %、Si:1.0 %以下、Mn:2.0 %以下、P:0.1 %以下、S:0.03%以下、Cr:11.0〜13.5%を含み、残部実質的にFeである組成を有することが好ましい。
つぎに、多孔質マルテンサイト系 (フェライト系)ステンレス鋼焼結体の組成限定理由について説明する。
【0029】
C:0.1 〜0.8 %
Cは、焼結体の強度、硬さを増加させ、寸法精度の調整を容易とする元素であり、 本発明では精度確保のため0.1 %以上の含有を必要とする。なお、0.8 %を超えて含有すると炭化物が生成し、硬さが増大し圧環強さが低下する。このため、Cは0.1 〜0.8 %に限定することが好ましい。
【0030】
Si:1.0 %以下
Siは、焼結体の強度を増加させる元素であり、0.3 %以上含有することが好ましいが、1.0%を超えて含有すると、焼結体が脆化する傾向となる。このため、Siは1.0 %以下とすることが好ましい。
Mn:2.0 %以下
Mnは、焼結体の強度を増加させる元素であり、 本発明では0.05%以上含有することが好ましいが、2.0%を超えて含有すると、焼結体が脆化する傾向となる。このため、Mnは2.0 %以下とすることが好ましい。
【0031】
P:0.1 %以下、
Pは、0.1 %を超えて含有すると、ステダイト炭化物が増加し鋼が脆化するため、Pは0.1 %以下に限定することが好ましい。なお、 より好ましくは0.05%以下である。
S:0.03%以下
Sは、硫化物を形成し、材料の延性、 靭性を低下させるためできるだけ低減することが好ましい。このようなことから、本発明では、Sは0.03%以下とすることが好ましい。
【0032】
Cr:11.0〜13.5%
Crは、固溶強化元素であり、所望の強度を確保するために11.0%以上含有することが好ましい。一方、13.5%を超えて含有すると、Cr炭化物の粒界上への析出が顕著となり強度が低下する。このため、Crは11.0〜13.5%の範囲に限定することが好ましい。
【0033】
上記した成分以外の残部は、実質的Feである。なお、不可避的不純物として、N:0.1 %以下、Se:0.15%以下が許容できる。
また、好ましいオーステナイト系ステンレス鋼としては、SUS 302,SUS 303,SUS 304,SUS 304 L,SUS 316,SUS 317 ,SUS 310S が例示される。
多孔質オーステナイト系ステンレス鋼焼結体は、例えば、質量%で、C:0.1 〜1.0 %、Si:1.0 %以下、Mn:2.0 %以下、P:0.1 %以下、S:0.03%以下、Ni:5.0 〜15.0、Cr:15.0 〜25.0%を含み、残部実質的にFeである組成を有することが好ましい。
【0034】
つぎに、多孔質オーステナイト系ステンレス鋼焼結体の組成限定理由について説明する。
C:0.1 〜1.0 %
Cは、焼結体の強度、硬さを増加させ、寸法精度の調整を容易とする元素であり、 本発明では精度確保のため0.1 %以上の含有を必要とする。なお、1.0 %を超えて含有すると炭化物が生成し、硬さが増大し圧環強さが低下する。このため、Cは0.1 〜1.0 %に限定することが好ましい。
【0035】
Si:1.0 %以下
Siは、焼結体の強度を増加させる元素であり、0.3 %以上含有することが好ましいが、1.0%を超えて含有すると、焼結体が脆化する傾向となる。このため、Siは1.0 %以下とすることが好ましい。
Mn:2.0 %以下
Mnは、焼結体の強度を増加させる元素であり、 本発明では0.05%以上含有することが好ましいが、2.0%を超えて含有すると、焼結体が脆化する傾向となる。このため、Mnは2.0 %以下とすることが好ましい。
【0036】
P:0.1 %以下、
Pは、0.1 %を超えて含有すると、ステダイト炭化物が増加し鋼が脆化するため、Pは0.1 %以下に限定することが好ましい。なお、 より好ましくは0.05%以下である。
S:0.03%以下
Sは、硫化物を形成し、材料の延性、 靭性を低下させるためできるだけ低減することが好ましい。このようなことから、本発明では、Sは0.03%以下とすることが好ましい。
【0037】
Ni:5.0 〜15.0%
Niは、オーステナイト化元素であり、本発明では5.0 %以上含有することが好ましい。一方、15.0%を超えて含有すると、硬さが低下する。このため、Niは5.0 〜15.0%の範囲に限定することが好ましい。
Cr:15.0〜25.0%
Crは、固溶強化元素であり、所望の強度を確保するために15.0%以上含有することが好ましい。一方、25.0%を超えて含有すると、Cr炭化物の粒界上への析出が顕著となり耐摩耗性が低下する。このため、Crは15.0〜25.0%の範囲に限定することが好ましい。
【0038】
上記した成分以外に、Mo,Ti,Nbの1種または2種以上を合計で1%以下含有しても何ら問題はない。
上記した成分以外の残部は、実質的Feである。なお、不可避的不純物として、N:0.1 %以下、Se:0.15%以下が許容できる。
また、本発明では、上記した多孔質ステンレス鋼焼結体に代えて、多孔質FeーCuーC系焼結体とすることができる。多孔質Fe−Cu−C系焼結体では、2〜6質量%のCuを含有することが好ましい。焼結体中のCu含有量が、2質量%未満ではアルミニウム合金等の軽合金部材に鋳包まれた場合に接合強度が低下する。一方、6%を超えて含有すると、単独空孔が形成されやすくなり、軽合金の含浸性が低下する。このため、本発明では多孔質Fe−Cu−C系焼結体中のCu含有量を、2〜6質量%に限定することが好ましい。
【0039】
上記した多孔質金属焼結体のうちのいずれかに、アルミニウム合金等の軽合金を充填し軽合金複合化部材とするか、あるいは上記した多孔質金属焼結体のうちのいずれかを、アルミニウム合金等の軽合金にて鋳包み軽合金部材補強用多孔質金属焼結体として使用に供することができる。
ついで、本発明の軽合金部材補強用多孔質金属焼結体の製造方法について、説明する。
【0040】
原料とする合金粉末と、黒鉛粉末と、潤滑剤粉末とを混合して混合粉としたのち、これら混合粉を金型に装入して加圧成形し圧粉体とし、該圧粉体を焼結して多孔質金属焼結体とする。原料粉として、 使用する合金粉末を、60メッシュの篩を通過し(以下、60メッシュアンダー、あるいは−60メッシュともいう)、350 メッシュの篩を通過しない(以下、350 メッシュオーバー、あるいは+350 メッシュともいう)粒度分布に調整した合金粉とすることが好ましい。
【0041】
+100 メッシュ(#100 メッシュの篩を通過しない)の粒子が存在すると、混合粉の圧粉性が低下し、所望の密度の圧粉体とすることが難しくなる場合があるが、−60〜+100 メッシュの粒子が、全体の粉末の40%未満であれば、成形可能であり、所望の空孔率を有する圧粉体とするためには有利となる。一方、−350 メッシュ(#350 メッシュの篩を通過する)の粒子が存在すると、直径5μm 未満の微細空孔の存在量が増加し、境界強度比が低下する傾向となる。
【0042】
なお、軽合金部材補強用多孔質金属焼結体の製造において使用する合金粉末については、その種類は特に限定されない。軽合金部材の用途に応じて、適宜、最適材質の合金粉を使用することができる。なお、軽合金にて充填又は鋳包む場合の耐酸化性の観点からは、ステンレス鋼粉とすることが好ましい。ステンレス鋼としては、マルテンサイト系、フェライト系、オーステナイト系がいずれも好適である。また、ステンレス鋼粉に代えて、鉄粉およびCu粉、またはFe-Cu 合金粉としてもよい。
【0043】
また、各軽合金部材の補強用としては、焼結条件を適宜調整して、多孔質金属焼結体の空孔率を15〜50%とし、JIS Z 2507に規定される圧環強さ試験により得られる圧環強さで200MPa以上の強度を有するようにすることが好ましい。
上記した多孔質金属焼結体に、アルミニウム合金等の軽合金を充填し, 軽合金複合化部材として使用に供することができる。
【0044】
つぎに、本発明の多孔質金属焼結体を用いた軽合金複合化部材の製造方法について、説明する。
本発明では、合金粉末に、黒鉛粉と、潤滑剤粉末とを混合して混合粉としたのち、該混合粉を成形して、所定形状の圧粉体となし、ついで該圧粉体を焼結して、所定の形状を有する多孔質金属焼結体とする。
【0045】
本発明では、原料粉として使用する合金粉末を、上記した組成の、マルテンサイト系ステンレス鋼粉、フェライト系ステンレス鋼粉あるいはオーステナイト系ステンレス鋼粉、または鉄粉およびCu粉、あるいはFe-Cu 合金粉とすることが好ましい。なお、合金粉としての、Cu粉、またはFe-Cu 合金粉は、混合粉中のCu含有量が2〜6質量%となるように配合することが好ましい。
【0046】
使用する合金粉は、上記したように、60メッシュの篩を通過し(以下、60メッシュアンダー、あるいは−60メッシュともいう)、350 メッシュの篩を通過しない(以下、350 メッシュオーバー、あるいは+350 メッシュともいう)粒度分布に調整した鋼粉とすることが好ましい。
+100 メッシュ(#100 メッシュの篩を通過しない)の粒子が存在すると、混合粉の圧粉性が低下し、所望の密度の圧粉体とすることが難しくなり、金型寿命が低下する場合があるが、−60〜+100 メッシュの粒子が、全体の粉末の40%未満であれば、成形可能であり、所望の空孔率を有する圧粉体とするためには有利となる。一方、−350 メッシュ(#350 メッシュの篩を通過する)の粒子が存在すると、直径5μm 未満の微細空孔の存在量が増加し、接合強度比が低下する傾向となる。
【0047】
上記したような粒度分布を有する合金粉を、さらに黒鉛粉末と、ステアリン酸亜鉛等の潤滑剤粉末、ワックス系造粒剤粉末とともに混合し混合粉とする。
黒鉛粉は、多孔質焼結体の強度を増加させる合金元素として添加する。
合金粉がステンレス鋼粉の場合には、黒鉛粉の配合比率は、混合粉全量に対し、1.0 質量%とすることが好ましい。混合粉中の黒鉛粉の配合量が1.0 質量%を超えると、炭化物が増加し、ステンレス鋼の特性を阻害し、被削性を劣化させ、さらに焼結時に液相が生じ、独立空孔が多く発生して、接合強度が低下する。
【0048】
なお、合金粉が鉄粉およびCu粉、またはFe-Cu 合金粉の場合には、黒鉛粉の配合比率は、混合粉全量に対し、0.8 〜1.5 質量%とすることが好ましい。混合粉中の黒鉛粉の配合量が0.8 質量%未満では、所望の強度確保が困難となり、一方、1.5 質量%を超えると、炭化物が増加し、焼結体の特性を劣化させるとともに、焼結時に液相が生じ、独立空孔が多く発生して、接合強度が低下する。
【0049】
また、黒鉛粉の粒径は、0.1 〜10μm とすることが好ましい。0.1 μm 未満では取り扱いが困難となり、10μm を超えると、均一分散が困難となる。
上記した混合粉を、金型に装入し加圧成形して、所定の形状に略等しい所定形状の圧粉体とする。圧粉体の成形方法は、特に限定されないが、成形プレス等を用いることが好ましい。所定形状に成形された圧粉体は、ついで、焼結され、所定の形状を有する多孔質金属焼結体とされる。なお、焼結条件を調整して、多孔質金属焼結体の空孔率が15〜50%となるように、さらにJIS Z 2507に規定される圧環強さ試験により求められる圧環強さで200MPa以上の強度を有するようにすることが好ましい。
【0050】
このようにして得られた所定形状の多孔質焼結体を、軽合金部材を形成する鋳型の対応部位に装着し、その鋳型内に溶融アルミニウム合金等の軽合金溶湯を注入し、高圧ダイキャストしてあるいは溶湯鍛造して焼結体を鋳包んだ軽合金複合化部材を製造する。これにより、焼結体の空孔に溶湯が侵入し軽合金部材との接合が完了する。その後、軽合金複合化部材は、切削加工され所定の寸法の部材とされる。
【0051】
【実施例】
(実施例1)
表1に示す合金粉に、黒鉛粉、潤滑剤粉を添加し混合、 混練して混合粉としたのち、金型に充填し成形プレスにより加圧成形して、略所定寸法の圧粉体とした。なお、合金粉は、表1に示すように、予め分級し、粒度分布を調整した。表1には、見かけ密度を参考までに併記する。なお、表1には、使用した鋼粉A,Dの粒度分布の一例を参考までに示す。
【0052】
ついで、これら圧粉体を1100〜1200℃で焼結し、表2に示す空孔を含む多孔質金属焼結体とした。なお、全空孔率は、密度測定により空孔率を求めた。密度測定方法は、アルキメデス法によった。
また、全空孔に対する微細空孔の比率は、多孔質金属焼結体のプレス方向断面について、金属顕微鏡により組織を撮像し、画像解析により直径5μm 以下の微細空孔の全面積と全空孔の面積をもとめ、(直径5μm 以下の微細空孔の全面積)/(全空孔の面積)により求めた. なお、 測定個所は円周上3個所とした。
【0053】
また、これら多孔質金属焼結体から試験片を採取し、JIS Z 2507の規定に準拠した圧環強さ試験を実施し、圧環強さを求めた。
ついで、これら多孔質金属焼結体を、軽合金部材を形成する鋳型の補強材装入位置に装着した。ついで鋳型内に、アルミニウム合金溶湯(JIS AC8A)を注入したのち、溶湯鍛造を施し、補強用多孔質金属焼結体を鋳包んだ所定の寸法の複合化部材とした。
【0054】
これら複合化部材から、接合境界を含む引張試験片を採取し引張試験を行い接合強度を求め、アルミニウム合金 (軽合金)の含浸性を評価した。なお、引張試験片の採取方向は、試験片の軸に対し垂直に境界面を含む方向とした。なお、接合強度σは、所望の接合強度σE (溶製材にアルフィン処理を施したものの接合強度)に対する比、接合強度比σ/ σE で評価した。
【0055】
また、これら複合化部材から、引張試験片および高温硬さ試験片を採取し、引張試験および300 ℃における高温硬さ試験を実施し、引張強さσTSおよび高温硬さHv300 を求めた。これら引張強さおよび高温硬さは、これら引張強さσTSおよび高温硬さHv300 のアルミニウム合金(AC8A)の引張強さ(σTS) Alおよび300 ℃における硬さ(Hv300) Alに対する比、引張強さ比σTS/(σTS) Al、高温硬さ比Hv300 / (Hv300) Alで評価した。
【0056】
得られた結果を表2に示す。
【0057】
【表1】
Figure 0004316169
【0058】
【表2】
Figure 0004316169
【0059】
本発明例は、いずれも200MPa以上の高い圧環強さと、1.0 以上の高い接合強度比を有する軽合金部材補強用多孔質金属焼結体及びこれを用いた軽合金複合化部材となっている。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、圧環強度が低いか、あるいは接合強度比が低く、本発明例と同一空孔率にもかかわらず、接合性に劣る複合化部材となっていた。
【0060】
また、本発明例はいずれも、引張強さ比σTS/(σTS) Al、および高温硬さ比Hv300 / (Hv300) Alが1以上となっており、アルミニウム合金単体にくらべ、高い強度、高温硬さを有する軽合金複合化部材となっていることがわかる。一方、圧環強さが200MPa未満と本発明の範囲を外れる比較例は、いずれも引張強さ比σTS/(σTS) Alが1未満と、低い複合化部材強度しか示さない。
【0061】
なお、試料No.24,No.25 は、焼結体中のCu含有量が6%を超えており、微細空孔量が本発明の範囲を外れるため、接合強度比が低下している。また、試料No.8は面圧が過大となり、金型が割れたり、金型寿命の低下を招くため成形困難とした。
(実施例2)
表1に示す合金粉末A(SUS 304)に、表3に示す含有量の黒鉛粉と、表3に示す種類、粒径, 含有量の被削性改善用微細粒子粉と、さらに潤滑剤粉を添加し混合、 混練して混合粉としたのち、金型に充填し成形プレスにより加圧成形して、略所定寸法の圧粉体とした。
【0062】
ついで、これら圧粉体を1000〜1200℃で焼結し、表3に示す空孔を含む多孔質オーステナイト系ステンレス鋼焼結体とした。なお、焼結体の全空孔率は、実施例1と同様に、密度測定により空孔率を求めた。
また、これら焼結体(多孔質オーステナイト系ステンレス鋼焼結体)から, 試験片を採取して、実施例1と同様に、全空孔に対する微細空孔の比率、および圧環強さを求めた。
【0063】
ついで、これら焼結体を、軽合金部材を形成する鋳型の補強材装入位置に装着した。ついで鋳型内に、アルミニウム合金溶湯(JIS AC8A)を注入したのち、溶湯鍛造を施し、補強用多孔質金属焼結体を鋳包んだ所定の寸法の複合化部材とした。
これら複合化部材から、実施例と同様に、接合境界を含む引張試験片を採取し引張試験を行い接合強度を求め、アルミニウム合金 (軽合金)の含浸性を評価した。なお、引張試験片の採取方向は、実施例1と同様に、試験片の軸に対し垂直に境界面を含む方向とした。なお、接合強度σは、実施例1と同様に、接合強度比σ/ σE で評価した。
【0064】
【表3】
Figure 0004316169
【0065】
本発明例は、被削性改善用微細粒子を含有していても、いずれも200MPa以上の高い圧環強さと、1.0 以上の高い接合強度比を有する軽合金部材補強用多孔質金属焼結体及びこれを用いた軽合金複合化部材となっている。
【0066】
【発明の効果】
本発明によれば、圧環強度に優れかつ鋳包み後の優れた接合性を有する軽合金部材補強用多孔質金属焼結体を安定して製造でき、産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋳包み後の接合強度比に及ぼす微細空孔比率の影響を示すグラフである。
【図2】焼結体中の空孔の分布状況の一例を模式的に示す説明図である。
【図3】従来の鋳包み後の多孔質金属焼結体とアルミニウム合金材との接合強度比と空孔率との関係を示すグラフである。

Claims (14)

  1. 合金粉末を含む混合粉を圧粉、焼結してなる多孔質金属焼結体であって、前記多孔質金属焼結体が、15〜50%の空孔率を有し、かつ該空孔のうち直径5μm を超える空孔を、全空孔率に対し80%以上有し、圧環強さが200MPa以上であることを特徴とする軽合金の含浸性に優れた軽合金部材補強用多孔質金属焼結体。
  2. 前記多孔質金属焼結体が、粒径:150 μm 以下のMnS 、CaF2、BNおよびエンスタタイトのうちから選ばれた1種または2種以上からなる被削性改善用微細粒子を0.1 〜5質量%含有することを特徴とする請求項1に記載の軽合金部材補強用多孔質金属焼結体。
  3. 前記多孔質金属焼結体が多孔質ステンレス鋼焼結体であることを特徴とする請求項1または2に記載の軽合金部材補強用多孔質金属焼結体。
  4. 前記多孔質ステンレス鋼焼結体に代えて、多孔質FeーCuーC系焼結体とすることを特徴とする請求項3に記載の軽合金部材補強用多孔質金属焼結体。
  5. 合金粉末を含む混合粉を圧粉、焼結してなる多孔質金属焼結体に、軽合金を含浸させた複合化部材であって、前記多孔質金属焼結体が、15〜50%の空孔率を有し、かつ該空孔のうち直径5μm を超える空孔が、全空孔率に対し80%以上含まれ、圧環強さが200MPa以上であることを特徴とする軽合金複合化部材。
  6. 合金粉末に、黒鉛粉と、潤滑剤粉末とを混合して混合粉としたのち、該混合粉を成形して圧粉体となし、ついで該圧粉体を焼結して多孔質金属焼結体とする多孔質金属焼結体の製造方法において、前記合金粉末を−60メッシュ〜+350 メッシュの粒度分布を有する合金粉とし、前記焼結の焼結条件を調整して、前記多孔質金属焼結体の空孔率を15〜50%とし、圧環強さを200MPa以上とすることを特徴とする軽合金の含浸性に優れた軽合金部材補強用多孔質焼結体の製造方法。
  7. 前記混合粉がさらに、粒径:150 μm 以下のMnS 、CaF2、BNおよびエンスタタイトのうちから選ばれた1種または2種以上からなる被削性改善用微細粒子を、混合粉全量に対し、0.1 〜5質量%含有することを特徴とする請求項6に記載の軽合金部材補強用多孔質金属焼結体の製造方法。
  8. 合金粉末に、黒鉛粉と、潤滑剤粉末とを混合して混合粉としたのち、該混合粉を成形して所定形状の圧粉体となし、ついで該圧粉体を焼結して所定形状の多孔質金属焼結体とし、ついで軽合金を含浸させて複合化部材とする軽合金複合化部材の製造方法において、前記合金粉末を−60メッシュ〜+350 メッシュの粒度分布を有する合金粉とし、前記焼結の焼結条件を調整して、前記多孔質金属焼結体の空孔率を15〜50%とし、圧環強さを200MPa以上とすることを特徴とする軽合金複合化部材の製造方法。
  9. 前記混合粉がさらに、粒径:150 μm 以下のMnS 、CaF2、BNおよびエンスタタイトのうちから選ばれた1種または2種以上からなる被削性改善用微細粒子を、混合粉全量に対し、0.1 〜5質量%含有することを特徴とする請求項8に記載の軽合金複合化部材の製造方法。
  10. 前記合金粉末が、フェライト系ステンレス鋼粉またはマルテンサイト系ステンレス鋼粉またはオーステナイト系ステンレス鋼粉であることを特徴とする請求項8または9に記載の軽合金複合化部材の製造方法。
  11. 前記混合粉が、前記黒鉛粉を、混合粉全量に対し1.0 質量%以下含有することを特徴とする請求項10に記載の軽合金複合化部材の製造方法。
  12. 前記合金粉末が、鉄粉およびCu粉、またはFe-Cu 合金粉であることを特徴とする請求項8または9に記載の軽合金複合化部材の製造方法。
  13. 前記Cu粉、またはFe-Cu 合金粉を、混合粉中のCu含有量が2〜6質量%となるように配合することを特徴とする請求項12に記載の軽合金複合化部材の製造方法。
  14. 前記混合粉が、前記黒鉛粉を、混合粉全量に対し、0.8 〜1.5 質量%含有することを特徴とする請求項12または13に記載の軽合金複合化部材の製造方法。
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