JP2003249463A5 - - Google Patents
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Description
【発明の名称】窒化物半導体積層用基板およびその製造方法
【特許請求の範囲】
【請求項1】第1の主面と第2の主面とを有し、n型不純物を含有してなる窒化物半導体から成る窒化物半導体積層用基板であって、該窒化物半導体積層用基板には、前記第1の主面側、若しくは第2の主面側のいずれか一方に接近するに従って、n型不純物濃度が連続的、又はステップ状に小さくなっている濃度勾配領域を有することを特徴とする窒化物半導体積層用基板。
【請求項2】前記ステップ状は、少なくとも3層以上に不純物濃度が減少している請求項1に記載の窒化物半導体積層用基板。
【請求項3】前記n型不純物濃度が小さい主面側は、半導体の成長面である請求項1または2に記載の窒化物半導体積層用基板。
【請求項4】前記n型不純物濃度が小さくなっている領域のn型不純物濃度は、アンドープ〜5×1018/cm3の範囲にある請求項1乃至3に記載の窒化物半導体積層用基板。
【請求項5】前記n型不純物濃度が小さくなっている側の主面表面から5μm以内の領域のn型不純物濃度は、アンドープ〜5×1018/cm3の範囲にある請求項1乃至4に記載の窒化物半導体積層用基板。
【請求項6】前記n型不純物は、Si、Ge、Sn、S、Oから成る群より選ばれる少なくとも1つである請求項1乃至5に記載の窒化物半導体積層用基板。
【請求項7】前記窒化物半導体基板におけるn型不純物濃度が小さい主面側の結晶欠陥は、1×105個/cm2以下である請求項1に記載の窒化物半導体積層用基板。
【請求項8】前記n型不純物濃度が小さい主面側は、InGaN層を備えている請求項1に記載の窒化物半導体積層用基板。
【請求項9】n型不純物を含有してなる窒化物半導体から成る窒化物半導体積層用基板の製造方法であって、
窒化物半導体と異なる材料よりなる基板の主面上に窒化物半導体を成長させる第1の工程と、前記窒化物半導体から前記窒化物半導体と異なる材料よりなる基板を除去することにより第1の主面と第2の主面とを有する窒化物半導体を形成する第2の工程と、前記窒化物半導体の第1の主面側、若しくは第2の主面側からイオンインプランテーションによりn型不純物を打ち込むことにより窒化物半導体積層用基板を形成する第3の工程とを備えていることを特徴とする窒化物半導体積層用基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は窒化物半導体(例えばInxAlyGa1−x−yN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)よりなる基板と、その基板の上に窒化物半導体を積層して得られた、LED、LD、太陽電池、受光素子等の電子デバイスに使用される窒化物半導体素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に半導体を基板上に成長させる際、成長させる半導体と格子整合した基板を用いると半導体の結晶欠陥が少なくなって結晶性が向上することが知られている。しかし、窒化物半導体は格子整合する基板が現在世の中に存在しないことから、一般にサファイア、スピネル、炭化ケイ素のような窒化物半導体と格子整合しない異種基板の上に成長されている。
【0003】
一方、完全に格子整合する窒化物半導体基板を得るため、GaNバルク結晶を作製する試みが、様々な研究機関において成されているが、未だに数ミリ程度のものしか得られたという報告しかされておらず、実用化には程遠い状態である。
【0004】
窒化物半導体基板を作製する技術として、例えば特開平7−202265号、特開平7−165498号に、サファイア基板の上にZnOよりなるバッファ層を形成して、そのバッファ層の上に窒化物半導体を成長させた後、バッファ層を溶解除去する技術が記載されている。しかしながらサファイア基板の上に成長されるZnOバッファ層の結晶性は悪く、そのバッファ層の上に厚膜で窒化物半導体を成長させても、結晶全体の結晶欠陥が108個/cm2以上もあり、良質の窒化物半導体基板を得ることはほとんど不可能である。さらに、薄膜のZnOよりなるバッファ層の上に、基板となるような厚膜の窒化物半導体を連続して成長させることも、成長途中でZnOが分解するため非常に難しい。
【0005】
本出願人は、サファイア基板上に窒化物半導体が成長しにくい性質を有する保護膜をストライプ状に形成して、この保護膜の上に横方向に成長させたアンドープGaNを基板としたレーザ素子を発表した(ICNS'97 予稿集,October 27-31,1997,P444-446、及びJpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)pp.L1568-1571,Part2,No.12A,1 December 1997)。この横方向の窒化物半導体の成長によると、従来の成長方法による窒化物半導体基板に比べて結晶欠陥が少ないGaN基板が得られやすい傾向にある。このレーザ素子はアンドープGaN基板の上にSiドープGaNよりなるn側コンタクト層が積層され、そのコンタクト層の上に分離閉じ込め型のレーザ素子構造が形成された構造を有する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、アンドープのGaN基板は結晶欠陥が非常に少ないという利点はあるものの、抵抗率が高く、十分なキャリア濃度が得られないという欠点がある。そのため、前記レーザ素子のようにアンドープGaN基板の上にSiをドープした高キャリア濃度のGaN層をコンタクト層として設けている。
【0007】
窒化物半導体を基板として用いる場合、基板の結晶欠陥を少なくすることと、基板に電極を設けるために十分なキャリア濃度を付与すること、および窒化物半導体基板を用いた場合にその上に積層する窒化物半導体の結晶欠陥を少なくするることは非常に重要である。従って、本発明はこのような事情を鑑みて成されたものであって、その目的とするところは、結晶欠陥が少なく、かつ電極を形成するのに十分なキャリア濃度を有する窒化物半導体基板と、その基板を有して、結晶欠陥が少なく窒化物半導体を積層できる新規な窒化物半導体素子の構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の窒化物半導体積層用基板は、第1の主面と第2の主面とを有し、n型不純物を含有してなる窒化物半導体から成る窒化物半導体積層用基板であって、該窒化物半導体積層用基板には、前記第1の主面側、若しくは第2の主面側のいずれか一方に接近するに従って、n型不純物濃度が連続的、又はステップ状に小さくなっている濃度勾配領域を有することを特徴とする。
【0009】
前記ステップ状は、少なくとも3層以上に不純物濃度が減少している。前記n型不純物濃度が小さくなっている領域のn型不純物濃度は、アンドープ〜5×1018/cm3の範囲にある。前記n型不純物は、Si、Ge、Sn、S、Oから成る群より選ばれる少なくとも1つである。前記窒化物半導体基板におけるn型不純物濃度が小さい主面側の結晶欠陥は、1×105個/cm2以下である。前記n型不純物濃度が小さい主面側は、InGaN層を備えている。
【0010】
また前記n型不純物濃度が小さい主面側は、半導体の成長面である。次の半導体とは、この基板を用いて、例えばレーザ素子、LED素子等発光デバイス、太陽電池、受光素子等の受光デバイス等の電子デバイスの構造となる半導体層を指す。さらに、前記n型不純物濃度が小さくなっている側の主面表面から5μm以内の領域のn型不純物濃度は、アンドープ〜5×1018/cm3の範囲にある。これはn型不純物濃度が小さくなっている側の主面を次の半導体成長面とする場合に、その主面表面のn型不純物濃度が前記範囲内に調整されていると、結晶欠陥が少なくなって、その上に成長する半導体層に結晶欠陥が転位しにくくなるからである。
【0011】
本発明の窒化物半導体積層用基板の製造方法は、n型不純物を含有してなる窒化物半導体から成る窒化物半導体積層用基板の製造方法であって、窒化物半導体と異なる材料よりなる基板の主面上に窒化物半導体を成長させる第1の工程と、前記窒化物半導体から前記窒化物半導体と異なる材料よりなる基板を除去することにより第1の主面と第2の主面とを有する窒化物半導体を形成する第2の工程と、前記窒化物半導体の第1の主面側、若しくは第2の主面側からイオンインプランテーションによりn型不純物を打ち込むことにより窒化物半導体積層用基板を形成する第3の工程とを備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の窒化物半導体素子は、第1の主面と第2の主面とを有し、n型不純物がドープされた窒化物半導体を有し、かつ少なくとも一方の主面側に窒化物半導体が露出している窒化物半導体基板の上に、素子構造となる窒化物半導体層が積層成長された窒化物半導体素子であって、前記窒化物半導体基板は、第1の主面、若しくは第2の主面のいずれか一方に接近するに従って、n型不純物濃度が小さくなっている濃度勾配領域を有し、n型不純物濃度の小さい方の主面側の窒化物半導体基板の上に、素子構造となる窒化物半導体層が積層成長され、n型不純物濃度が大きい方の主面側の窒化物半導体基板に、n電極が形成されてなることを特徴とする。なお素子構造とは、少なくともn層とp層とが積層されて活性領域を有する構造を指すものとする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の窒化物半導体基板において、窒化物半導体の組成は特に問わないが、Al、Inを実質的に含まないGaNとすると、最も結晶欠陥の少ない基板となる。但し、窒化物半導体基板中に例えばバッファ層としてInGaN層を介在させることも本発明の窒化物半導体基板の範疇に含まれる。InGaNは結晶欠陥を吸収する作用がある。窒化物半導体基板にドープするn型不純物としては、Si、Ge、Sn、S、O等のIV族、VI族元素が用いられるが、その中でもSi、Snが窒化物半導体層中での活性化率が高く、高キャリア濃度が得られる。
【0014】
本発明の窒化物半導体基板では、第1若しくは第2の主面のいずれか一方の主面に接近するに従って、n型不純物濃度が小さくなるように調整された濃度勾配領域を有する。濃度勾配領域は、不純物濃度が主面に近づくに従って小さくなるようにしてあれば、連続的(グラデーション)でもステップ状でも良い。例えば、ある一定の膜厚まではほぼ一定の不純物濃度を保ち、ある境界を超えると急激にn型不純物濃度が減少するような濃度分布を有していても、本発明の範囲内である。好ましくは連続的、あるいは例えば少なくとも3層以上にステップ状に細かく不純物濃度が減少するようにされていることが望ましい。なぜなら、窒化物半導体基板から電極を取り出す際に、主面側に積層された半導体層に対して、基板にn電極を設ける際、濃度勾配領域において、どの基板面を露出させても、その基板面はn+となり、基板面から素子構造側の基板のキャリア濃度がn−となるため、n+側に電極を形成すると、n電極とオーミック接触が得られすく、しかもキャリアが均一に拡散しやすくなって、素子の効率が向上するからである。さらに、n型不純物濃度が主面側に接近するに従って小さくなるように調整してあれば、窒化物半導体の結晶性が良くなり、結晶欠陥が減少する傾向にある。また本発明の濃度勾配領域は窒化物半導体基板全体に渡って設けられているわけではなく、部分的に形成されていても良い。
【0015】
好ましい態様として、第1の主面および第2の主面に窒化物半導体が露出した窒化物半導体基板において、濃度勾配領域が一方の主面から、もう一方の主面に渡って形成されている。即ち、一方の主面側のn型不純物濃度が大きく、もう一方の主面のn型不純物濃度が小さくなるように調整されている。この窒化物半導体基板であれば、n型不純物濃度の小さい方に素子構造となる窒化物半導体を成長させ、基板側から電極を取り出す構造とすれば、同一面側にn電極とp電極とを露出させる構造、およびn電極とp電極とが対向した構造において、n電極をいずれの基板面を露出させても、該露出面は高キャリア濃度となり、n電極とオーミックが取りやすくなる。また、抵抗率が低抵抗から高抵抗へと変わっているので、キャリアが素子側に拡散しやすくなり、素子の効率が向上する。
【0016】
n型不純物濃度が小さくなっている側の主面は、その主面表面から5μm以内の領域のn型不純物濃度が、アンドープ〜5×1018/cm3の範囲とすることが望ましい。その範囲に調整することにより、例えば主面から5μm以内の結晶欠陥が1×105/cm2以下となり非常に好ましい。好ましくは1×1018/cm3以下、最も好ましくは8×1017/cm3以下にする。5×1018/cm3を超えると結晶欠陥が多くなって、その上に素子構造を作製した場合に素子の寿命が短くなりやすい傾向にあるからである。アンドープにする場合にはアンドープの領域は1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、最も好ましくは0.2μm以下とする。アンドープの領域が1μmを超えると、直列方向の動作電圧が高くなって動作電圧が上昇しやすい傾向にある。なお素子寿命が短くなると言っても、従来のサファイア基板上に直接素子構造を成長させたものと比較すれば、圧倒的に本発明の方が長いことは言うまでもない。
【0017】
【実施例】
[実施例1]
図1(a)〜(e)は窒化物半導体基板の製造方法の各工程において得られるそれぞれのウェーハの構造を模式的に示す断面図である。また、図2は本発明の一実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式断面図である。以下、これらの図面を元に本発明を詳説する。なお、窒化物半導体基板の製造方法は、最も好ましい態様を示すものであって、本発明の窒化物半導体基板は必ずしもこの方法に限定されるものではない。
【0018】
MOVPE(有機金属気相成長法)装置の反応容器内に2インチφのサファイアよりなる異種基板1のウェーハを設置し、図1(a)に示すように、その異種基板1の上に500℃においてGaNよりなるバッファ層(図示せず)を200オングストローム成長させ、その上に下地層よりも高温(例えば1050℃)でアンドープGaNよりなる下地層2を6μmの膜厚で成長させる。
【0019】
異種基板1は窒化物半導体と異なる材料よりなる基板であればどのようなものでも良く、例えば、サファイアC面の他、R面、A面を主面とするサファイア、スピネル(MgA12O4)のような絶縁性基板、SiC(6H、4H、3Cを含む)、ZnS、ZnO、GaAs、Si、及び窒化物半導体と格子整合する酸化物基板等、従来知られている窒化物半導体と異なる基板材料を用いることができる。さらに前記基板材料の主面をオフアングルさせた基板も用いることもできる。また、下地層2の成長方法は特に問うものではなく、MOVPE、MBE(分子線気相成長法)、HVPE(ハイドライド気相成長法)等、窒化物半導体を成長させるのに知られている従来の方法で成長できる。この下地層2は異種基板1と材料が異なるために、結晶欠陥が非常に多く、通常108個/cm2以上あり、いくら厚膜で成長させても、異種基板と窒化物半導体との格子不整合、熱膨張係数等の要因による結晶欠陥が、窒化物半導体と異種基板との界面から縦方向に伸びるため、窒化物半導体基板とはならない。下地層にはアンドープのGaNを成長させることが最も好ましい。なお本発明における結晶欠陥の数はTEM観察において、写真上で計測できる結晶欠陥の数を指すものとする。
【0020】
下地層2成長後、ウェーハを反応容器から取り出し、RIE(反応性イオンエッチング)装置を用い、図1(b)に示すように下地層2をストライプ状の凹凸を有する形状でエッチングする。ストライプの凹部の幅は5μm、凸部の幅は5μmとする。このエッチングは凹部が窒化物半導体面が露出するようにしたが、凹部は異種基板の表面が露出するまでエッチングして形成しても良い。図1(b)はストライプに垂直な方向での断面図を示している。
【0021】
凹凸形成後、図1(c)に示すように、凸部の最表面と凹部の底部とにSiO2よりなる保護膜3を0.1μmの膜厚で形成して、凹凸の側面にある窒化物半導体層が露出するようにする。保護膜はその表面に窒化物半導体が成長しないか、若しくは成長しにくい性質を有する材料を選択し、例えば酸化ケイ素(SiOX)、窒化ケイ素(SiXNY)、酸化チタン(TiOX)、酸化ジルコニウム(ZrOX)等の酸化物、窒化物、またこれらの多層膜の他、1200℃以上の融点を有する金属等を用いることができる。これらの保護膜材料は、窒化物半導体の成長温度600℃〜1100℃の温度にも耐え、その表面に窒化物半導体が成長しないか、成長しにくい性質を有している。このように窒化物半導体の表面に部分的に保護膜を形成して、その保護膜の上に横方向に窒化物半導体を成長するようにすると、窒化物半導体の結晶欠陥が縦方向に伸びなくなって、保護膜上に成長される窒化物半導体の結晶欠陥が激減し、窒化物半導体基板が成長できる。特に、本実施例にように異種基板上に成長させた窒化物半導体層の上面に保護膜を形成して、側面を露出させ、その側面から成長を行うことにより、結晶欠陥が1×105個/cm2以下の窒化物半導体基板が得られる。
【0022】
保護膜3形成後、ウェーハを再度MOVPEの反応容器内にセットし、温度を1050℃にして、図1(d)に示すように、アンドープGaNよりなる第1の窒化物半導体層4を20μmの膜厚で成長させる。この第1の窒化物半導体層は4は凹凸が設けられた下地層2の側面から成長しだし、保護膜の上においては横方向に成長しながら縦方向に成長する。下地層2には異種基板との格子不整合に起因する結晶欠陥が多数発生しているが、保護膜3の上に横方向に成長させる第1の窒化物半導体は結晶欠陥が表面まで貫通しにくく、例えば結晶欠陥が1×105個/cm2以下、好ましい条件においては1×104個/cm2以下の窒化物半導体基板となる。
【0023】
さらに第1の窒化物半導体4成長後、ウェーハをHVPE装置に移送し、原料ガスに塩化ガリウム、アンモニア、不純物ガスとしてシランガス(SiH4)を用い、最初にSiを1×1020/cm3ドープしたGaNを50オングストローム成長させる。n側不純物を最初に高濃度にドープする場合、n型不純物濃度は1×1017/cm3以上、5×1021/cm3以下、好ましくは1×1018/cm3〜1×1021/cm3に調整することが望ましい。5×1021/cm3よりも多いと結晶性が悪くなり、逆にn型不純物により結晶欠陥が増加し、その結晶欠陥が転位しやすい傾向にある。また1×1017/cm2よりも少ないと、十分なキャリア濃度が得られずに、n電極とのオーミック性が悪くなる傾向にある。Siを高濃度で成長させた後、徐々にシランガスの流量を少なくしていき、Si濃度が異種基板から離れるに従って、少なくなくなって行くような濃度勾配を有するSiドープGaNよりなる第2の窒化物半導体層4’を300μmの膜厚で成長させ、その300μmの内の少なくとも最後の5μm部分のSi濃度を1×1018/cm3以下とし、最終の0.1μm部分をアンドープとする。
【0024】
第2の窒化物半導体層成長後、異種基板1、下地層2、保護膜3、第1の窒化物半導体層4、および第2の窒化物半導体層4’の一部を異種基板側から研磨して除去し、膜厚200μmの窒化物半導体基板とする。
【0025】
このように、異種基板1上に直接成長させた窒化物半導体よりなる下地層2の表面に凹凸を形成して、その下地層の側面を露出させ、さらに凸部の表面に保護膜3を形成して、側面から保護膜の上部に至るまで第1の窒化物半導体層4を成長させ、その上にn型不純物をドープした第2の窒化物半導体層4’を成長させて、濃度勾配を有する窒化物半導体基板を得ることは、結晶欠陥の少ない窒化物半導体基板を得る上で非常に重要である。さらに第1の窒化物半導体層をMOVPE、その上に成長させる第2の窒化物半導体層をHVPEで成長させ、MOVPEで成長させた第1の窒化物半導体層4よりも第2の窒化物半導体層4’の膜厚を厚膜で成長させることにより、結晶欠陥が非常に少ない窒化物半導体基板が得られる。なお、前記方法により得られた第2の窒化物半導体層の表面から5μm以内の結晶欠陥をTEMで観察したところ、1×104個/cm2以下と、非常に良好な基板が得られていることが判明した。
【0026】
この窒化物半導体基板4’をMOVPE装置に移送し、アンドープGaN(拡散によりSiが微量含まれている。)層の上に、以下のようにして、図2に示す構造を有するレーザ素子を作製する。
【0027】
(クラック防止層22)
TMG、TMI(トリメチルインジウム)、アンモニアを用い、温度を800℃にしてSiを1×1018/cm3ドープしたIn0.06Ga0.94Nよりなるクラック防止層22を0.15μmの膜厚で成長させる。クラック防止層はInGaN若しくはGaN層で形成でき、この層にn型不純物をドープして、0.1〜3μmの膜厚で形成することが望ましい。なおこのクラック防止層は省略可能である。
【0028】
(n側クラッド層23)
続いて、1050℃でTMA、TMG、アンモニアを用い、アンドープAl0.16Ga0.84Nよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いてTMAを止めて、シランガスを流し、Siを1×1018/cm3ドープしたn型GaNよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させる。それらの層を交互に積層して超格子層を構成し、総膜厚1.2μmの超格子よりなるn側クラッド層23を成長させる。超格子層のn型不純物はGaN、AlGaNいずれか一方、若しくはその両方にドープすることができる。
【0029】
(n側光ガイド層24)
続いて、シランガスを止め、1050℃でアンドープGaNよりなるn側光ガイド層8を0.1μmの膜厚で成長させる。またこのn側光ガイド層24にn型不純物をドープしても良い。
【0030】
(活性層25)
次に、温度を800℃にして、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.01Ga0.95Nよりなる障壁層を100オングストロームの膜厚で成長させ、続いて同一温度で、アンドープIn0.2Ga0.8Nよりなる井戸層を40オングストロームの膜厚で成長させる。障壁層と井戸層とを2回交互に積層し、最後に障壁層で終わり、総膜厚380オングストロームの多重量子井戸構造(MQW)の活性層を成長させる。活性層は本実施例のようにアンドープでもよいし、またn型不純物及び/又はp型不純物をドープしても良い。不純物は井戸層、障壁層両方にドープしても良く、いずれか一方にドープしてもよい。さらに積層順としては、井戸層から積層して井戸層で終わっても、井戸層から積層して障壁層で終わっても、あるいは障壁層から積層して井戸層で終わっても良い。
【0031】
(p側キャップ層26)
次に、温度を1050℃に上げ、TMG、TMA、アンモニア、Cp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.3Ga0.7Nよりなるp側キャップ層26を300オングストロームの膜厚で成長させる。
【0032】
(p側光ガイド層27)
Cp2Mg、TMAを止め、Mgを5×1016/cm3ドープしたGaNよりなるp側光ガイド層27を0.1μmの膜厚で成長させる。
【0033】
(p側クラッド層28)
続いて、アンドープAl0.16Ga0.84Nよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いてMgを1×1019/cm3ドープしたGaNよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させ、それらを交互に積層し、総膜厚0.6μmの超格子層よりなるp側クラッド層28を成長させる。
【0034】
(p側コンタクト層29)
最後に、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層29を150オングストロームの膜厚で成長させる。
【0035】
以上のようにして窒化物半導体基板の上に、レーザ素子構造となる窒化物半導体層を積層成長させたウェーハを反応容器から取り出し、最上層のp側コンタクト層29の表面にSiO2よりなる保護膜を形成して、p側コンタクト層29、およびp側クラッド層28をエッチングして、1.5μmの幅を有するリッジストライプを形成後、リッジの側面にZrO2よりなる絶縁膜30を形成する。
【0036】
次に、図2に示すように、その絶縁膜30を介してp側コンタクト層29とオーミック接触するp電極31を形成し、さらにp電極31のほぼ全面にボンディング用のpパッド電極32を形成する。そして、p電極と対向した面にある窒化物半導体基板側にn電極33を形成する。
【0037】
最後に、窒化物半導体基板を劈開してその劈開面にレーザ素子の共振面を形成する。レーザ素子の劈開面は窒化物半導体基板を(11−00)面、即ち窒化物半導体の結晶構造を六角柱で表した際に、その側面(M面)に相当する部分とする。劈開後、一方の劈開面にのみミラーとなる誘電体多層膜を形成し、共振面の反射率を変え、ミラーを形成していない方をレーザ光の出射面とする。最後にチップ状に分離して、窒化物半導体基板側をヒートシンクに設置し、レーザ素子としたところ、室温でレーザ発振を示し、閾値電流密度1.5kA/cm2において室温連続発振を示し、20mWの出力において1000時間以上の寿命を示した。
【0038】
窒化物半導体基板を用いてp層側にストライプ状のリッジを有するレーザ素子を作製する場合、最上層にあるp側コンタクト層にオーミック用のp電極を設ける必要がある。そのp電極のほぼ全面に、図2に示すように、ボンディング用のpパッド電極を形成することにより放熱性が高まる。さらにそのpパッド電極の上にワイヤーボンディングする際、ボンディング位置をリッジストライプと重ならないようにすることにより、レーザ素子の信頼性が向上する。これはボンディング時に、応力が直接リッジ部に係らないようになるので、リッジ下部にある活性層に衝撃が加わらないようになり、素子が痛みにくくなって信頼性が向上すると推察される。
【0039】
このように本発明の窒化物半導体基板を用いて、素子構造を作製すると、異種基板を除去した際に、どこの面が露出しても、その面が常に高キャリア濃度となる。そのため、この露出面にn電極を設けると、基板全体にキャリアが広がりやすくなって、閾値が低下し、出力が向上する。さらにまた、n電極を形成すべき基板面側からイオンインプランテーションによりn型不純物を打ち込んで、打ち込み深さ分だけ高キャリア濃度とすることもできる。
【0040】
[実施例2]
実施例1において、第2の窒化物半導体層4’を成長させる際、アンドープGaNを30μmの膜厚で成長させる。続いて、Siを1×1019/cm3ドープしたGaN層を80μmの膜厚で成長させ、次にSiを5×1018/cm3ドープしたGaN層を20μmの膜厚で成長させ、次にSiを1×1018/cm3ドープしたGaN層を20μmの膜厚で成長させ、最後にSiを5×1017/cm3ドープしたGaN層を2μmの膜厚で成長させる。成長後、異種基板を研磨する際に、第2の窒化物半導体4’のアンドープGaN層まで研磨して除去し、Siが1×1019/cm3ドープされているGaN面を露出させて、窒化物半導体基板とする。その他は実施例1と同様にしてレーザ素子を作製したところ、実施例1とほぼ同等の特性を有するレーザ素子が得られた。
【0041】
[実施例3]
図3は本発明の他の実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式断面図である。以下、図3を元に実施例3を詳説する。
【0042】
実施例1において、第1の窒化物半導体層4を20μmの膜厚で成長させた後、実施例1と同様にHVPE装置を用いて、Siを1×1019/cm3ドープしたGaN層を150オングストローム成長させる。そして徐々にSiガスの量を少なくして、SiドープGaN層を150μmの膜厚で成長させ、150μmの最後の2μmを、Siを1×1017/cm3ドープしたGaNとして、300μmの膜厚を有する第2の窒化物半導体層4’を成長させる。
【0043】
反応終了後、異種基板、下地層、保護膜、第1の窒化物半導体層の一部を除去し、窒化物半導体基板とする。後は、実施例1と同様にして続いて、ウェーハをMOVPE装置に設置し、同様にして、クラック防止層22〜p側コンタクト層29までを積層してレーザ素子構造とする。
【0044】
成長後、ウェーハを反応容器から取り出し、最上層のp側コンタクト層29の表面にマスクを形成して、図3に示すように、第2の窒化物半導体層4’のSiを1×1019/cm3ドープしたGaN層を露出させて、この層をコンタクト層とする。
【0045】
次に、p側コンタクト層29に所定の形状のマスクをかけ、p側コンタクト層29、およびp側クラッド層28をエッチングして、1μmの幅を有するリッジストライプを形成後、リッジ側面にZrO2よりなる絶縁膜30を形成し、その絶縁膜30を介して、p側コンタクト層29とオーミック接触したp電極31と、p電極と電気的に接続したpパッド電極32を形成し、先ほど露出させたn側のコンタクト層の表面にはオーミック接触したn電極33を形成する。
【0046】
以上のようにして、n電極とp電極とを形成した後、実施例1と同様に劈開して、窒化物半導体の劈開面にレーザ素子の共振面を形成する。劈開後、チップ状に分離して、図3に示すようなレーザ素子としたところ、実施例1とほぼ同等の特性を有するレーザ素子が得られた。
【0047】
なお、図3に示すように同一面側にn電極とp電極とを形成したレーザ素子においても、pパッド電極を形成して、ボンディング位置をリッジからずらすことにより、素子が長寿命となりやすい。さらに、p層側にリッジを有し、同一面側からn電極と、p電極とを取り出したレーザ素子では、図3のように、リッジを中央部からn電極に接近にした位置にした方が閾値が低下しやすい。
【0048】
[実施例4]
図4は本発明の他の実施例に係るLED素子の構造を示す模式断面図である。以下、図4を元に実施例4を説明する。
【0049】
実施例1において、第1の窒化物半導体層4を20μmの膜厚で成長させた後、同じくMOVPE装置を用いて、Siを1×1019/cm3ドープしたGaN層を20オングストローム成長させる。そして徐々にSiガスの量を少なくして、SiドープGaN層を20μmの膜厚で成長させ、その20μmの最後の1μmを、Siを1×1017/cm3ドープしたGaN層として、40μmの膜厚を有する第2の窒化物半導体層4’とし、異種基板上に、成長面主面から5μm以内の結晶欠陥が1×105/cm2以下の窒化物半導体層を有する窒化物半導体基板を得る。
【0050】
(バッファ層41)
続いて、ウェーハを反応容器においたまま、Siを1×1017/cm3ドープしたIn0.01Ga0.99Nよりなるバッファ層41を0.1μmの膜厚で成長させる。このバッファ層はクラック防止層と同じ作用をし、活性層の上に成長させるAlGaN層にクラックを入りにくくして結晶性良く成長させ、素子の出力を向上させる。なおこのバッファ層はGaNでも良く、またアンドープにしても良い。アンドープにする場合には、その膜厚を1μm以下、好ましくは0.5μm以下にする。
【0051】
(活性層42)
次に、150オングストロームのGaNよりなる障壁層と、30オングストロームのIn0.4Ga0.6Nよりなる井戸層とをそれぞれ3層づつ積層し、最後に障壁層を積層した、多重量子井戸構造の活性層を成長させる。
【0052】
(p側クラッド層43)
次に、Mgを5×1019/cm3ドープしたp型Al0.1Ga0.9Nよりなるp側クラッド層を500オングストロームの膜厚で成長させる。
【0053】
(p側コンタクト層44)
最後にMg1×1020/cm3ドープしたGaNよりなるp側コンタクト層を0.1μmの膜厚で成長させる。
【0054】
反応終了後、最上層のp側コンタクト層44の表面に所定の形状のマスクを形成し、図4に示すように第2の窒化物半導体層4’のSiを1×1019/cm3ドープしたGaN層を露出させて、この層をコンタクト層とする。
【0055】
エッチング後、最上層にあるp側コンタクト層のほぼ全面に膜厚200オングストロームのNiとAuを含む透光性のp電極45と、そのp電極45の上にボンディング用のAuよりなるpパッド電極46を0.5μmの膜厚で形成する。一方、n側コンタクト層4の表面にはWとAlを含むn電極47を形成してLED素子とする。
【0056】
このLED素子は順方向電圧20mAにおいて、520nmの純緑色発光を示し、Vfは3.2Vと従来のLEDよりも低く、さらに逆方向の耐圧が2倍以上向上していた。逆方向の耐圧が向上したのは結晶欠陥が少ない窒化物半導体基板の上にLED素子を成長させたことによるものである。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の窒化物半導体基板を用いると、どこの層においてもn電極を形成することができるため、窒化物半導体基板上にLED素子、LD素子等の素子構造を形成すると、非常にn電極形成用基板として非常に有用である。また異種基板を除去して窒化物半導体基板のみにすることにより、例えば発光素子のような発熱を伴う素子において、基板からの放熱性が良くなり、寿命が長くなって信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化物半導体基板を得るための製造方法において、それぞれの工程において得られるウェーハの構造を順に説明する模式断面図。
【図2】本発明の一実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式断面図。
【図3】本発明の他の実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式断面図。
【図4】本発明の他の実施例に係るLED素子の構造を示す模式断面図。
【符号の説明】
1・・・異種基板
2・・・下地層
3・・・保護膜
4・・・第1の窒化物半導体層
4’・・第2の窒化物半導体層
22、41・・・クラック防止層(バッファ層)
23・・・n側クラッド層
24・・・n側光ガイド層
25、42・・・活性層
26・・・p側キャップ層
27・・・p側光ガイド層
28、43・・・p側クラッド層
29、44・・・p側コンタクト層
30・・・絶縁膜
31、45・・・p電極
32、46・・・pパッド電極
33、47・・・n電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】第1の主面と第2の主面とを有し、n型不純物を含有してなる窒化物半導体から成る窒化物半導体積層用基板であって、該窒化物半導体積層用基板には、前記第1の主面側、若しくは第2の主面側のいずれか一方に接近するに従って、n型不純物濃度が連続的、又はステップ状に小さくなっている濃度勾配領域を有することを特徴とする窒化物半導体積層用基板。
【請求項2】前記ステップ状は、少なくとも3層以上に不純物濃度が減少している請求項1に記載の窒化物半導体積層用基板。
【請求項3】前記n型不純物濃度が小さい主面側は、半導体の成長面である請求項1または2に記載の窒化物半導体積層用基板。
【請求項4】前記n型不純物濃度が小さくなっている領域のn型不純物濃度は、アンドープ〜5×1018/cm3の範囲にある請求項1乃至3に記載の窒化物半導体積層用基板。
【請求項5】前記n型不純物濃度が小さくなっている側の主面表面から5μm以内の領域のn型不純物濃度は、アンドープ〜5×1018/cm3の範囲にある請求項1乃至4に記載の窒化物半導体積層用基板。
【請求項6】前記n型不純物は、Si、Ge、Sn、S、Oから成る群より選ばれる少なくとも1つである請求項1乃至5に記載の窒化物半導体積層用基板。
【請求項7】前記窒化物半導体基板におけるn型不純物濃度が小さい主面側の結晶欠陥は、1×105個/cm2以下である請求項1に記載の窒化物半導体積層用基板。
【請求項8】前記n型不純物濃度が小さい主面側は、InGaN層を備えている請求項1に記載の窒化物半導体積層用基板。
【請求項9】n型不純物を含有してなる窒化物半導体から成る窒化物半導体積層用基板の製造方法であって、
窒化物半導体と異なる材料よりなる基板の主面上に窒化物半導体を成長させる第1の工程と、前記窒化物半導体から前記窒化物半導体と異なる材料よりなる基板を除去することにより第1の主面と第2の主面とを有する窒化物半導体を形成する第2の工程と、前記窒化物半導体の第1の主面側、若しくは第2の主面側からイオンインプランテーションによりn型不純物を打ち込むことにより窒化物半導体積層用基板を形成する第3の工程とを備えていることを特徴とする窒化物半導体積層用基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は窒化物半導体(例えばInxAlyGa1−x−yN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)よりなる基板と、その基板の上に窒化物半導体を積層して得られた、LED、LD、太陽電池、受光素子等の電子デバイスに使用される窒化物半導体素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に半導体を基板上に成長させる際、成長させる半導体と格子整合した基板を用いると半導体の結晶欠陥が少なくなって結晶性が向上することが知られている。しかし、窒化物半導体は格子整合する基板が現在世の中に存在しないことから、一般にサファイア、スピネル、炭化ケイ素のような窒化物半導体と格子整合しない異種基板の上に成長されている。
【0003】
一方、完全に格子整合する窒化物半導体基板を得るため、GaNバルク結晶を作製する試みが、様々な研究機関において成されているが、未だに数ミリ程度のものしか得られたという報告しかされておらず、実用化には程遠い状態である。
【0004】
窒化物半導体基板を作製する技術として、例えば特開平7−202265号、特開平7−165498号に、サファイア基板の上にZnOよりなるバッファ層を形成して、そのバッファ層の上に窒化物半導体を成長させた後、バッファ層を溶解除去する技術が記載されている。しかしながらサファイア基板の上に成長されるZnOバッファ層の結晶性は悪く、そのバッファ層の上に厚膜で窒化物半導体を成長させても、結晶全体の結晶欠陥が108個/cm2以上もあり、良質の窒化物半導体基板を得ることはほとんど不可能である。さらに、薄膜のZnOよりなるバッファ層の上に、基板となるような厚膜の窒化物半導体を連続して成長させることも、成長途中でZnOが分解するため非常に難しい。
【0005】
本出願人は、サファイア基板上に窒化物半導体が成長しにくい性質を有する保護膜をストライプ状に形成して、この保護膜の上に横方向に成長させたアンドープGaNを基板としたレーザ素子を発表した(ICNS'97 予稿集,October 27-31,1997,P444-446、及びJpn.J.Appl.Phys.Vol.36(1997)pp.L1568-1571,Part2,No.12A,1 December 1997)。この横方向の窒化物半導体の成長によると、従来の成長方法による窒化物半導体基板に比べて結晶欠陥が少ないGaN基板が得られやすい傾向にある。このレーザ素子はアンドープGaN基板の上にSiドープGaNよりなるn側コンタクト層が積層され、そのコンタクト層の上に分離閉じ込め型のレーザ素子構造が形成された構造を有する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、アンドープのGaN基板は結晶欠陥が非常に少ないという利点はあるものの、抵抗率が高く、十分なキャリア濃度が得られないという欠点がある。そのため、前記レーザ素子のようにアンドープGaN基板の上にSiをドープした高キャリア濃度のGaN層をコンタクト層として設けている。
【0007】
窒化物半導体を基板として用いる場合、基板の結晶欠陥を少なくすることと、基板に電極を設けるために十分なキャリア濃度を付与すること、および窒化物半導体基板を用いた場合にその上に積層する窒化物半導体の結晶欠陥を少なくするることは非常に重要である。従って、本発明はこのような事情を鑑みて成されたものであって、その目的とするところは、結晶欠陥が少なく、かつ電極を形成するのに十分なキャリア濃度を有する窒化物半導体基板と、その基板を有して、結晶欠陥が少なく窒化物半導体を積層できる新規な窒化物半導体素子の構造を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の窒化物半導体積層用基板は、第1の主面と第2の主面とを有し、n型不純物を含有してなる窒化物半導体から成る窒化物半導体積層用基板であって、該窒化物半導体積層用基板には、前記第1の主面側、若しくは第2の主面側のいずれか一方に接近するに従って、n型不純物濃度が連続的、又はステップ状に小さくなっている濃度勾配領域を有することを特徴とする。
【0009】
前記ステップ状は、少なくとも3層以上に不純物濃度が減少している。前記n型不純物濃度が小さくなっている領域のn型不純物濃度は、アンドープ〜5×1018/cm3の範囲にある。前記n型不純物は、Si、Ge、Sn、S、Oから成る群より選ばれる少なくとも1つである。前記窒化物半導体基板におけるn型不純物濃度が小さい主面側の結晶欠陥は、1×105個/cm2以下である。前記n型不純物濃度が小さい主面側は、InGaN層を備えている。
【0010】
また前記n型不純物濃度が小さい主面側は、半導体の成長面である。次の半導体とは、この基板を用いて、例えばレーザ素子、LED素子等発光デバイス、太陽電池、受光素子等の受光デバイス等の電子デバイスの構造となる半導体層を指す。さらに、前記n型不純物濃度が小さくなっている側の主面表面から5μm以内の領域のn型不純物濃度は、アンドープ〜5×1018/cm3の範囲にある。これはn型不純物濃度が小さくなっている側の主面を次の半導体成長面とする場合に、その主面表面のn型不純物濃度が前記範囲内に調整されていると、結晶欠陥が少なくなって、その上に成長する半導体層に結晶欠陥が転位しにくくなるからである。
【0011】
本発明の窒化物半導体積層用基板の製造方法は、n型不純物を含有してなる窒化物半導体から成る窒化物半導体積層用基板の製造方法であって、窒化物半導体と異なる材料よりなる基板の主面上に窒化物半導体を成長させる第1の工程と、前記窒化物半導体から前記窒化物半導体と異なる材料よりなる基板を除去することにより第1の主面と第2の主面とを有する窒化物半導体を形成する第2の工程と、前記窒化物半導体の第1の主面側、若しくは第2の主面側からイオンインプランテーションによりn型不純物を打ち込むことにより窒化物半導体積層用基板を形成する第3の工程とを備えていることを特徴とする。
【0012】
本発明の窒化物半導体素子は、第1の主面と第2の主面とを有し、n型不純物がドープされた窒化物半導体を有し、かつ少なくとも一方の主面側に窒化物半導体が露出している窒化物半導体基板の上に、素子構造となる窒化物半導体層が積層成長された窒化物半導体素子であって、前記窒化物半導体基板は、第1の主面、若しくは第2の主面のいずれか一方に接近するに従って、n型不純物濃度が小さくなっている濃度勾配領域を有し、n型不純物濃度の小さい方の主面側の窒化物半導体基板の上に、素子構造となる窒化物半導体層が積層成長され、n型不純物濃度が大きい方の主面側の窒化物半導体基板に、n電極が形成されてなることを特徴とする。なお素子構造とは、少なくともn層とp層とが積層されて活性領域を有する構造を指すものとする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の窒化物半導体基板において、窒化物半導体の組成は特に問わないが、Al、Inを実質的に含まないGaNとすると、最も結晶欠陥の少ない基板となる。但し、窒化物半導体基板中に例えばバッファ層としてInGaN層を介在させることも本発明の窒化物半導体基板の範疇に含まれる。InGaNは結晶欠陥を吸収する作用がある。窒化物半導体基板にドープするn型不純物としては、Si、Ge、Sn、S、O等のIV族、VI族元素が用いられるが、その中でもSi、Snが窒化物半導体層中での活性化率が高く、高キャリア濃度が得られる。
【0014】
本発明の窒化物半導体基板では、第1若しくは第2の主面のいずれか一方の主面に接近するに従って、n型不純物濃度が小さくなるように調整された濃度勾配領域を有する。濃度勾配領域は、不純物濃度が主面に近づくに従って小さくなるようにしてあれば、連続的(グラデーション)でもステップ状でも良い。例えば、ある一定の膜厚まではほぼ一定の不純物濃度を保ち、ある境界を超えると急激にn型不純物濃度が減少するような濃度分布を有していても、本発明の範囲内である。好ましくは連続的、あるいは例えば少なくとも3層以上にステップ状に細かく不純物濃度が減少するようにされていることが望ましい。なぜなら、窒化物半導体基板から電極を取り出す際に、主面側に積層された半導体層に対して、基板にn電極を設ける際、濃度勾配領域において、どの基板面を露出させても、その基板面はn+となり、基板面から素子構造側の基板のキャリア濃度がn−となるため、n+側に電極を形成すると、n電極とオーミック接触が得られすく、しかもキャリアが均一に拡散しやすくなって、素子の効率が向上するからである。さらに、n型不純物濃度が主面側に接近するに従って小さくなるように調整してあれば、窒化物半導体の結晶性が良くなり、結晶欠陥が減少する傾向にある。また本発明の濃度勾配領域は窒化物半導体基板全体に渡って設けられているわけではなく、部分的に形成されていても良い。
【0015】
好ましい態様として、第1の主面および第2の主面に窒化物半導体が露出した窒化物半導体基板において、濃度勾配領域が一方の主面から、もう一方の主面に渡って形成されている。即ち、一方の主面側のn型不純物濃度が大きく、もう一方の主面のn型不純物濃度が小さくなるように調整されている。この窒化物半導体基板であれば、n型不純物濃度の小さい方に素子構造となる窒化物半導体を成長させ、基板側から電極を取り出す構造とすれば、同一面側にn電極とp電極とを露出させる構造、およびn電極とp電極とが対向した構造において、n電極をいずれの基板面を露出させても、該露出面は高キャリア濃度となり、n電極とオーミックが取りやすくなる。また、抵抗率が低抵抗から高抵抗へと変わっているので、キャリアが素子側に拡散しやすくなり、素子の効率が向上する。
【0016】
n型不純物濃度が小さくなっている側の主面は、その主面表面から5μm以内の領域のn型不純物濃度が、アンドープ〜5×1018/cm3の範囲とすることが望ましい。その範囲に調整することにより、例えば主面から5μm以内の結晶欠陥が1×105/cm2以下となり非常に好ましい。好ましくは1×1018/cm3以下、最も好ましくは8×1017/cm3以下にする。5×1018/cm3を超えると結晶欠陥が多くなって、その上に素子構造を作製した場合に素子の寿命が短くなりやすい傾向にあるからである。アンドープにする場合にはアンドープの領域は1μm以下、さらに好ましくは0.5μm以下、最も好ましくは0.2μm以下とする。アンドープの領域が1μmを超えると、直列方向の動作電圧が高くなって動作電圧が上昇しやすい傾向にある。なお素子寿命が短くなると言っても、従来のサファイア基板上に直接素子構造を成長させたものと比較すれば、圧倒的に本発明の方が長いことは言うまでもない。
【0017】
【実施例】
[実施例1]
図1(a)〜(e)は窒化物半導体基板の製造方法の各工程において得られるそれぞれのウェーハの構造を模式的に示す断面図である。また、図2は本発明の一実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式断面図である。以下、これらの図面を元に本発明を詳説する。なお、窒化物半導体基板の製造方法は、最も好ましい態様を示すものであって、本発明の窒化物半導体基板は必ずしもこの方法に限定されるものではない。
【0018】
MOVPE(有機金属気相成長法)装置の反応容器内に2インチφのサファイアよりなる異種基板1のウェーハを設置し、図1(a)に示すように、その異種基板1の上に500℃においてGaNよりなるバッファ層(図示せず)を200オングストローム成長させ、その上に下地層よりも高温(例えば1050℃)でアンドープGaNよりなる下地層2を6μmの膜厚で成長させる。
【0019】
異種基板1は窒化物半導体と異なる材料よりなる基板であればどのようなものでも良く、例えば、サファイアC面の他、R面、A面を主面とするサファイア、スピネル(MgA12O4)のような絶縁性基板、SiC(6H、4H、3Cを含む)、ZnS、ZnO、GaAs、Si、及び窒化物半導体と格子整合する酸化物基板等、従来知られている窒化物半導体と異なる基板材料を用いることができる。さらに前記基板材料の主面をオフアングルさせた基板も用いることもできる。また、下地層2の成長方法は特に問うものではなく、MOVPE、MBE(分子線気相成長法)、HVPE(ハイドライド気相成長法)等、窒化物半導体を成長させるのに知られている従来の方法で成長できる。この下地層2は異種基板1と材料が異なるために、結晶欠陥が非常に多く、通常108個/cm2以上あり、いくら厚膜で成長させても、異種基板と窒化物半導体との格子不整合、熱膨張係数等の要因による結晶欠陥が、窒化物半導体と異種基板との界面から縦方向に伸びるため、窒化物半導体基板とはならない。下地層にはアンドープのGaNを成長させることが最も好ましい。なお本発明における結晶欠陥の数はTEM観察において、写真上で計測できる結晶欠陥の数を指すものとする。
【0020】
下地層2成長後、ウェーハを反応容器から取り出し、RIE(反応性イオンエッチング)装置を用い、図1(b)に示すように下地層2をストライプ状の凹凸を有する形状でエッチングする。ストライプの凹部の幅は5μm、凸部の幅は5μmとする。このエッチングは凹部が窒化物半導体面が露出するようにしたが、凹部は異種基板の表面が露出するまでエッチングして形成しても良い。図1(b)はストライプに垂直な方向での断面図を示している。
【0021】
凹凸形成後、図1(c)に示すように、凸部の最表面と凹部の底部とにSiO2よりなる保護膜3を0.1μmの膜厚で形成して、凹凸の側面にある窒化物半導体層が露出するようにする。保護膜はその表面に窒化物半導体が成長しないか、若しくは成長しにくい性質を有する材料を選択し、例えば酸化ケイ素(SiOX)、窒化ケイ素(SiXNY)、酸化チタン(TiOX)、酸化ジルコニウム(ZrOX)等の酸化物、窒化物、またこれらの多層膜の他、1200℃以上の融点を有する金属等を用いることができる。これらの保護膜材料は、窒化物半導体の成長温度600℃〜1100℃の温度にも耐え、その表面に窒化物半導体が成長しないか、成長しにくい性質を有している。このように窒化物半導体の表面に部分的に保護膜を形成して、その保護膜の上に横方向に窒化物半導体を成長するようにすると、窒化物半導体の結晶欠陥が縦方向に伸びなくなって、保護膜上に成長される窒化物半導体の結晶欠陥が激減し、窒化物半導体基板が成長できる。特に、本実施例にように異種基板上に成長させた窒化物半導体層の上面に保護膜を形成して、側面を露出させ、その側面から成長を行うことにより、結晶欠陥が1×105個/cm2以下の窒化物半導体基板が得られる。
【0022】
保護膜3形成後、ウェーハを再度MOVPEの反応容器内にセットし、温度を1050℃にして、図1(d)に示すように、アンドープGaNよりなる第1の窒化物半導体層4を20μmの膜厚で成長させる。この第1の窒化物半導体層は4は凹凸が設けられた下地層2の側面から成長しだし、保護膜の上においては横方向に成長しながら縦方向に成長する。下地層2には異種基板との格子不整合に起因する結晶欠陥が多数発生しているが、保護膜3の上に横方向に成長させる第1の窒化物半導体は結晶欠陥が表面まで貫通しにくく、例えば結晶欠陥が1×105個/cm2以下、好ましい条件においては1×104個/cm2以下の窒化物半導体基板となる。
【0023】
さらに第1の窒化物半導体4成長後、ウェーハをHVPE装置に移送し、原料ガスに塩化ガリウム、アンモニア、不純物ガスとしてシランガス(SiH4)を用い、最初にSiを1×1020/cm3ドープしたGaNを50オングストローム成長させる。n側不純物を最初に高濃度にドープする場合、n型不純物濃度は1×1017/cm3以上、5×1021/cm3以下、好ましくは1×1018/cm3〜1×1021/cm3に調整することが望ましい。5×1021/cm3よりも多いと結晶性が悪くなり、逆にn型不純物により結晶欠陥が増加し、その結晶欠陥が転位しやすい傾向にある。また1×1017/cm2よりも少ないと、十分なキャリア濃度が得られずに、n電極とのオーミック性が悪くなる傾向にある。Siを高濃度で成長させた後、徐々にシランガスの流量を少なくしていき、Si濃度が異種基板から離れるに従って、少なくなくなって行くような濃度勾配を有するSiドープGaNよりなる第2の窒化物半導体層4’を300μmの膜厚で成長させ、その300μmの内の少なくとも最後の5μm部分のSi濃度を1×1018/cm3以下とし、最終の0.1μm部分をアンドープとする。
【0024】
第2の窒化物半導体層成長後、異種基板1、下地層2、保護膜3、第1の窒化物半導体層4、および第2の窒化物半導体層4’の一部を異種基板側から研磨して除去し、膜厚200μmの窒化物半導体基板とする。
【0025】
このように、異種基板1上に直接成長させた窒化物半導体よりなる下地層2の表面に凹凸を形成して、その下地層の側面を露出させ、さらに凸部の表面に保護膜3を形成して、側面から保護膜の上部に至るまで第1の窒化物半導体層4を成長させ、その上にn型不純物をドープした第2の窒化物半導体層4’を成長させて、濃度勾配を有する窒化物半導体基板を得ることは、結晶欠陥の少ない窒化物半導体基板を得る上で非常に重要である。さらに第1の窒化物半導体層をMOVPE、その上に成長させる第2の窒化物半導体層をHVPEで成長させ、MOVPEで成長させた第1の窒化物半導体層4よりも第2の窒化物半導体層4’の膜厚を厚膜で成長させることにより、結晶欠陥が非常に少ない窒化物半導体基板が得られる。なお、前記方法により得られた第2の窒化物半導体層の表面から5μm以内の結晶欠陥をTEMで観察したところ、1×104個/cm2以下と、非常に良好な基板が得られていることが判明した。
【0026】
この窒化物半導体基板4’をMOVPE装置に移送し、アンドープGaN(拡散によりSiが微量含まれている。)層の上に、以下のようにして、図2に示す構造を有するレーザ素子を作製する。
【0027】
(クラック防止層22)
TMG、TMI(トリメチルインジウム)、アンモニアを用い、温度を800℃にしてSiを1×1018/cm3ドープしたIn0.06Ga0.94Nよりなるクラック防止層22を0.15μmの膜厚で成長させる。クラック防止層はInGaN若しくはGaN層で形成でき、この層にn型不純物をドープして、0.1〜3μmの膜厚で形成することが望ましい。なおこのクラック防止層は省略可能である。
【0028】
(n側クラッド層23)
続いて、1050℃でTMA、TMG、アンモニアを用い、アンドープAl0.16Ga0.84Nよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いてTMAを止めて、シランガスを流し、Siを1×1018/cm3ドープしたn型GaNよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させる。それらの層を交互に積層して超格子層を構成し、総膜厚1.2μmの超格子よりなるn側クラッド層23を成長させる。超格子層のn型不純物はGaN、AlGaNいずれか一方、若しくはその両方にドープすることができる。
【0029】
(n側光ガイド層24)
続いて、シランガスを止め、1050℃でアンドープGaNよりなるn側光ガイド層8を0.1μmの膜厚で成長させる。またこのn側光ガイド層24にn型不純物をドープしても良い。
【0030】
(活性層25)
次に、温度を800℃にして、Siを5×1018/cm3ドープしたIn0.01Ga0.95Nよりなる障壁層を100オングストロームの膜厚で成長させ、続いて同一温度で、アンドープIn0.2Ga0.8Nよりなる井戸層を40オングストロームの膜厚で成長させる。障壁層と井戸層とを2回交互に積層し、最後に障壁層で終わり、総膜厚380オングストロームの多重量子井戸構造(MQW)の活性層を成長させる。活性層は本実施例のようにアンドープでもよいし、またn型不純物及び/又はp型不純物をドープしても良い。不純物は井戸層、障壁層両方にドープしても良く、いずれか一方にドープしてもよい。さらに積層順としては、井戸層から積層して井戸層で終わっても、井戸層から積層して障壁層で終わっても、あるいは障壁層から積層して井戸層で終わっても良い。
【0031】
(p側キャップ層26)
次に、温度を1050℃に上げ、TMG、TMA、アンモニア、Cp2Mg(シクロペンタジエニルマグネシウム)を用い、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型Al0.3Ga0.7Nよりなるp側キャップ層26を300オングストロームの膜厚で成長させる。
【0032】
(p側光ガイド層27)
Cp2Mg、TMAを止め、Mgを5×1016/cm3ドープしたGaNよりなるp側光ガイド層27を0.1μmの膜厚で成長させる。
【0033】
(p側クラッド層28)
続いて、アンドープAl0.16Ga0.84Nよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させ、続いてMgを1×1019/cm3ドープしたGaNよりなる層を25オングストロームの膜厚で成長させ、それらを交互に積層し、総膜厚0.6μmの超格子層よりなるp側クラッド層28を成長させる。
【0034】
(p側コンタクト層29)
最後に、Mgを1×1020/cm3ドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層29を150オングストロームの膜厚で成長させる。
【0035】
以上のようにして窒化物半導体基板の上に、レーザ素子構造となる窒化物半導体層を積層成長させたウェーハを反応容器から取り出し、最上層のp側コンタクト層29の表面にSiO2よりなる保護膜を形成して、p側コンタクト層29、およびp側クラッド層28をエッチングして、1.5μmの幅を有するリッジストライプを形成後、リッジの側面にZrO2よりなる絶縁膜30を形成する。
【0036】
次に、図2に示すように、その絶縁膜30を介してp側コンタクト層29とオーミック接触するp電極31を形成し、さらにp電極31のほぼ全面にボンディング用のpパッド電極32を形成する。そして、p電極と対向した面にある窒化物半導体基板側にn電極33を形成する。
【0037】
最後に、窒化物半導体基板を劈開してその劈開面にレーザ素子の共振面を形成する。レーザ素子の劈開面は窒化物半導体基板を(11−00)面、即ち窒化物半導体の結晶構造を六角柱で表した際に、その側面(M面)に相当する部分とする。劈開後、一方の劈開面にのみミラーとなる誘電体多層膜を形成し、共振面の反射率を変え、ミラーを形成していない方をレーザ光の出射面とする。最後にチップ状に分離して、窒化物半導体基板側をヒートシンクに設置し、レーザ素子としたところ、室温でレーザ発振を示し、閾値電流密度1.5kA/cm2において室温連続発振を示し、20mWの出力において1000時間以上の寿命を示した。
【0038】
窒化物半導体基板を用いてp層側にストライプ状のリッジを有するレーザ素子を作製する場合、最上層にあるp側コンタクト層にオーミック用のp電極を設ける必要がある。そのp電極のほぼ全面に、図2に示すように、ボンディング用のpパッド電極を形成することにより放熱性が高まる。さらにそのpパッド電極の上にワイヤーボンディングする際、ボンディング位置をリッジストライプと重ならないようにすることにより、レーザ素子の信頼性が向上する。これはボンディング時に、応力が直接リッジ部に係らないようになるので、リッジ下部にある活性層に衝撃が加わらないようになり、素子が痛みにくくなって信頼性が向上すると推察される。
【0039】
このように本発明の窒化物半導体基板を用いて、素子構造を作製すると、異種基板を除去した際に、どこの面が露出しても、その面が常に高キャリア濃度となる。そのため、この露出面にn電極を設けると、基板全体にキャリアが広がりやすくなって、閾値が低下し、出力が向上する。さらにまた、n電極を形成すべき基板面側からイオンインプランテーションによりn型不純物を打ち込んで、打ち込み深さ分だけ高キャリア濃度とすることもできる。
【0040】
[実施例2]
実施例1において、第2の窒化物半導体層4’を成長させる際、アンドープGaNを30μmの膜厚で成長させる。続いて、Siを1×1019/cm3ドープしたGaN層を80μmの膜厚で成長させ、次にSiを5×1018/cm3ドープしたGaN層を20μmの膜厚で成長させ、次にSiを1×1018/cm3ドープしたGaN層を20μmの膜厚で成長させ、最後にSiを5×1017/cm3ドープしたGaN層を2μmの膜厚で成長させる。成長後、異種基板を研磨する際に、第2の窒化物半導体4’のアンドープGaN層まで研磨して除去し、Siが1×1019/cm3ドープされているGaN面を露出させて、窒化物半導体基板とする。その他は実施例1と同様にしてレーザ素子を作製したところ、実施例1とほぼ同等の特性を有するレーザ素子が得られた。
【0041】
[実施例3]
図3は本発明の他の実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式断面図である。以下、図3を元に実施例3を詳説する。
【0042】
実施例1において、第1の窒化物半導体層4を20μmの膜厚で成長させた後、実施例1と同様にHVPE装置を用いて、Siを1×1019/cm3ドープしたGaN層を150オングストローム成長させる。そして徐々にSiガスの量を少なくして、SiドープGaN層を150μmの膜厚で成長させ、150μmの最後の2μmを、Siを1×1017/cm3ドープしたGaNとして、300μmの膜厚を有する第2の窒化物半導体層4’を成長させる。
【0043】
反応終了後、異種基板、下地層、保護膜、第1の窒化物半導体層の一部を除去し、窒化物半導体基板とする。後は、実施例1と同様にして続いて、ウェーハをMOVPE装置に設置し、同様にして、クラック防止層22〜p側コンタクト層29までを積層してレーザ素子構造とする。
【0044】
成長後、ウェーハを反応容器から取り出し、最上層のp側コンタクト層29の表面にマスクを形成して、図3に示すように、第2の窒化物半導体層4’のSiを1×1019/cm3ドープしたGaN層を露出させて、この層をコンタクト層とする。
【0045】
次に、p側コンタクト層29に所定の形状のマスクをかけ、p側コンタクト層29、およびp側クラッド層28をエッチングして、1μmの幅を有するリッジストライプを形成後、リッジ側面にZrO2よりなる絶縁膜30を形成し、その絶縁膜30を介して、p側コンタクト層29とオーミック接触したp電極31と、p電極と電気的に接続したpパッド電極32を形成し、先ほど露出させたn側のコンタクト層の表面にはオーミック接触したn電極33を形成する。
【0046】
以上のようにして、n電極とp電極とを形成した後、実施例1と同様に劈開して、窒化物半導体の劈開面にレーザ素子の共振面を形成する。劈開後、チップ状に分離して、図3に示すようなレーザ素子としたところ、実施例1とほぼ同等の特性を有するレーザ素子が得られた。
【0047】
なお、図3に示すように同一面側にn電極とp電極とを形成したレーザ素子においても、pパッド電極を形成して、ボンディング位置をリッジからずらすことにより、素子が長寿命となりやすい。さらに、p層側にリッジを有し、同一面側からn電極と、p電極とを取り出したレーザ素子では、図3のように、リッジを中央部からn電極に接近にした位置にした方が閾値が低下しやすい。
【0048】
[実施例4]
図4は本発明の他の実施例に係るLED素子の構造を示す模式断面図である。以下、図4を元に実施例4を説明する。
【0049】
実施例1において、第1の窒化物半導体層4を20μmの膜厚で成長させた後、同じくMOVPE装置を用いて、Siを1×1019/cm3ドープしたGaN層を20オングストローム成長させる。そして徐々にSiガスの量を少なくして、SiドープGaN層を20μmの膜厚で成長させ、その20μmの最後の1μmを、Siを1×1017/cm3ドープしたGaN層として、40μmの膜厚を有する第2の窒化物半導体層4’とし、異種基板上に、成長面主面から5μm以内の結晶欠陥が1×105/cm2以下の窒化物半導体層を有する窒化物半導体基板を得る。
【0050】
(バッファ層41)
続いて、ウェーハを反応容器においたまま、Siを1×1017/cm3ドープしたIn0.01Ga0.99Nよりなるバッファ層41を0.1μmの膜厚で成長させる。このバッファ層はクラック防止層と同じ作用をし、活性層の上に成長させるAlGaN層にクラックを入りにくくして結晶性良く成長させ、素子の出力を向上させる。なおこのバッファ層はGaNでも良く、またアンドープにしても良い。アンドープにする場合には、その膜厚を1μm以下、好ましくは0.5μm以下にする。
【0051】
(活性層42)
次に、150オングストロームのGaNよりなる障壁層と、30オングストロームのIn0.4Ga0.6Nよりなる井戸層とをそれぞれ3層づつ積層し、最後に障壁層を積層した、多重量子井戸構造の活性層を成長させる。
【0052】
(p側クラッド層43)
次に、Mgを5×1019/cm3ドープしたp型Al0.1Ga0.9Nよりなるp側クラッド層を500オングストロームの膜厚で成長させる。
【0053】
(p側コンタクト層44)
最後にMg1×1020/cm3ドープしたGaNよりなるp側コンタクト層を0.1μmの膜厚で成長させる。
【0054】
反応終了後、最上層のp側コンタクト層44の表面に所定の形状のマスクを形成し、図4に示すように第2の窒化物半導体層4’のSiを1×1019/cm3ドープしたGaN層を露出させて、この層をコンタクト層とする。
【0055】
エッチング後、最上層にあるp側コンタクト層のほぼ全面に膜厚200オングストロームのNiとAuを含む透光性のp電極45と、そのp電極45の上にボンディング用のAuよりなるpパッド電極46を0.5μmの膜厚で形成する。一方、n側コンタクト層4の表面にはWとAlを含むn電極47を形成してLED素子とする。
【0056】
このLED素子は順方向電圧20mAにおいて、520nmの純緑色発光を示し、Vfは3.2Vと従来のLEDよりも低く、さらに逆方向の耐圧が2倍以上向上していた。逆方向の耐圧が向上したのは結晶欠陥が少ない窒化物半導体基板の上にLED素子を成長させたことによるものである。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の窒化物半導体基板を用いると、どこの層においてもn電極を形成することができるため、窒化物半導体基板上にLED素子、LD素子等の素子構造を形成すると、非常にn電極形成用基板として非常に有用である。また異種基板を除去して窒化物半導体基板のみにすることにより、例えば発光素子のような発熱を伴う素子において、基板からの放熱性が良くなり、寿命が長くなって信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の窒化物半導体基板を得るための製造方法において、それぞれの工程において得られるウェーハの構造を順に説明する模式断面図。
【図2】本発明の一実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式断面図。
【図3】本発明の他の実施例に係るレーザ素子の構造を示す模式断面図。
【図4】本発明の他の実施例に係るLED素子の構造を示す模式断面図。
【符号の説明】
1・・・異種基板
2・・・下地層
3・・・保護膜
4・・・第1の窒化物半導体層
4’・・第2の窒化物半導体層
22、41・・・クラック防止層(バッファ層)
23・・・n側クラッド層
24・・・n側光ガイド層
25、42・・・活性層
26・・・p側キャップ層
27・・・p側光ガイド層
28、43・・・p側クラッド層
29、44・・・p側コンタクト層
30・・・絶縁膜
31、45・・・p電極
32、46・・・pパッド電極
33、47・・・n電極
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