JP2003221819A - 水没する湖岸法面の緑化のためのブロック並びに護岸構築物 - Google Patents

水没する湖岸法面の緑化のためのブロック並びに護岸構築物

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JP2003221819A JP2002020670A JP2002020670A JP2003221819A JP 2003221819 A JP2003221819 A JP 2003221819A JP 2002020670 A JP2002020670 A JP 2002020670A JP 2002020670 A JP2002020670 A JP 2002020670A JP 2003221819 A JP2003221819 A JP 2003221819A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 水没時にも干出時にも植物の生育に好適な土
壌環境を保持できるようにする。また、湖岸法面の剥落
防止と緑化を可能とする。 【解決手段】水没する湖岸法面の土砂の剥落を防止する
と共に耐冠水性の優れた植物を生育させる土壌基盤を作
って湖岸法面の緑化を行う緑化ブロックにおいて、植物
を生育させる土壌基盤を作るための土壌13を収容する
土壌保持部10と、水没時に土壌保持部10の土壌13
へ補給する空気を溜める空気室9と、この空気室9の空
気を土壌保持部10の土壌13へ導く通気孔2と、干出
時に土壌保持部10の底部よりも上でブロック前面4か
ら土壌基盤中の水を排出する排水孔3とを有している。
そして、この緑化ブロック1を、土壌保持部の土壌基盤
を上段の緑化ブロックよりも前方へ迫り出させて段々に
積み重ね、湖岸法面を覆い固めると共に土壌基盤に耐冠
水性の優れた植物を植栽して緑化させるようにしてい
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、緑化ブロックに関
する。更に詳述すると、本発明は、湖岸法面特に水没と
干出を繰り返すダムの湖岸法面の水位変動域の土砂の剥
落を防止すると共に湖岸法面の緑化を行うブロック並び
に護岸構築物の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】ダム湖岸法面の「水位変動域」は、法面
の水没と干出・露出の繰り返しにより帯状の裸地部とな
ることが多く、自然環境の点からは緑化対策が、法面安
定の点からは波や風等により生じる剥落への対策などが
必要となる。特に、1日の間に法面の水没と干出・露出
を繰り返す揚水発電ダムの場合には、これら緑化対策や
剥落への対策が望まれる。
【0003】このため、1967年頃から適正植物種の
選定と活着を促進するための工法が検討されてきてい
る。例えば、植物を導入する「植生工」や生育環境を整
備する「緑化基礎工」等である。そして「植生工」の中
の一つの方法として植栽を利用したものがあり、一部で
実証試験も行われている。この実証試験の工法は、植栽
と法面の補強とを組み合わせたもので、法面部に耐冠水
性の強い植物を導入し、在来植物の進入を阻止するよう
な環境を作り出すものである。そして、法面補強のため
の土木構造物の整備関係では、法面の土砂流出防止用と
して植生ネットとスロープネットを併用するものが採用
されて、一定の効果を得ているとされている。
【0004】また、ダム湖岸ではなく、河川の護岸や急
斜面の岩肌などに植物が生えるコンクリートを採用する
技術が知られている(特開昭53−72304)。ま
た、急斜面の岩肌などに通気性のあるコンクリート枠体
を備え付け、急斜面を緑化する技術も知られている(実
公昭55−25813)。この実公昭55−25813
に記載の技術は、囲枠体を岩石採掘後の岩肌や岩盤のよ
うな通常では植物を育成することの出来ない基盤を緑化
するのに用いられる。この囲枠体は、所要の大きさの粗
骨材の表面に、水、セメント比の小さいセメントペース
ト、又は細砂を少量含むセメントモルタルのようなバイ
ンダーをまぶし、そのバインダーを介して粗骨材を連結
し、その間に連続空隙を残すものである。そして、この
囲枠体に土壌を入れ、その土壌に植物の種を蒔くか苗木
を移植し植物を育成する。なお、この囲枠体は、モルタ
ルにより基盤に固定されている。
【0005】更に、特開平8−105029号には、ダ
ムの湖岸法面の水位変動域の土砂の剥落防止と緑化を可
能とする緑化ブロックが提案されている。この緑化ブロ
ックは、土壌基盤を作るための凹みとそこに収まる土壌
並びに水没時に土壌基盤に空気を供給する空気通路部と
その空気を貯める空洞部とを備えるものである。この緑
化ブロックによると、ダムの水位上昇時には空気室に貯
えた空気を水没時に分離壁中の通気孔を通して土壌に送
り、水没時の植物の生残率を高めることができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の植栽等
の「植生工」のみによる緑化対策では、水没による枯死
の問題の他、急斜面の法面での剥落防止が不十分とな
る。また、植生ネット利用による法面の強化も急斜面へ
の対応において不十分である。一方、急斜面の法面での
剥落防止のため、「緑化基礎工」の一つであるコンクリ
ート構造物等を採用した場合は、緑化されず景観に問題
が生じる。
【0007】また、河川の護岸等に使われる植物が生え
るコンクリートをダム湖岸法面に使用すると、水没によ
る植物枯死の問題が生ずる。また、実公昭55−258
13に開示された通気性のあるコンクリート枠体をダム
湖岸法面に使用した場合、水没による植物枯死の問題の
他、法面に沿った積み上げができないという問題が発生
する。
【0008】更に、特開平8−105029号の緑化ブ
ロックの場合には、水没時の植物の生残率を高める効果
はあるが、揚水発電ダムのように水没と干出(露出)を
周期的に頻繁に繰り返す条件下では、水位が低下してブ
ロックが干出したときに土壌内の水分が抜けないことか
ら通気性が良い土壌環境を保持することができず、干出
時に根腐れなどを起こし易いという問題を有している。
【0009】本発明は、湖岸法面、特に急傾斜の湖岸法
面の剥落防止と共に定期的な水没条件下での植物の生育
を保持することができる緑化ブロック並びにそれを利用
した護岸構築物を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するた
め、請求項1の発明は、水没する湖岸法面の土砂の剥落
を防止すると共に耐冠水性の優れた植物を生育させる土
壌基盤を作って湖岸法面の緑化を行う緑化ブロックにお
いて、植物を生育させる土壌基盤を作るための土壌を収
容する土壌保持部と、水没時に土壌保持部の土壌へ補給
する空気を溜める空気室と、この空気室の空気を土壌保
持部の土壌へ導く通気孔と、干出時に土壌保持部の底部
よりも上でブロック前面から土壌基盤中の水を排出する
排水孔とを有するようにしている。
【0011】したがって、水没時には空気室から土壌保
持部の土壌に空気が供給され、土壌中に生息する微生物
の活動(有機物の分解等)を可能とし、かつ根腐れが防
がれる。また、干出時には排水孔から過剰な水分が速や
かに抜けて土壌中に適度な空気が存在する植物の生育に
適した土壌環境を保持しつつ、土壌基盤の上部の乾燥に
伴って水分を補給することができ、長期間に亘って好適
な土壌環境が維持できる。
【0012】また、請求項2記載の発明にかかる護岸構
築物は、上述の緑化ブロックを、土壌保持部の土壌基盤
を上段の緑化ブロックよりも前方へ迫り出させて段々に
積み重ね、湖岸法面を覆い固めると共に土壌基盤に耐冠
水性の優れた植物を植栽して緑化させるようにしてい
る。したがって、緑化ブロックによって覆われた湖岸法
面は、緑化ブロックによって固定されかつ水位の変動か
ら保護され、剥落や浸食が防がれる。また、緑化ブロッ
クを積み上げても土壌保持部を覆わずに開放し、その上
方に耐冠水性の優れた植物の成長を許す空間を作り出す
ことができるので、土壌基盤に植栽された耐冠水性に優
れた植物及び自然発生してブロック前面を覆う苔類で湖
岸法面を緑化することができる。したがって、急傾斜の
湖岸法面の剥落防止と共に定期的な水没条件下での植物
の生育を可能としている。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成を図面に示す
実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0014】図1〜図3に本発明の緑化ブロックの一実
施形態を示す。この緑化ブロック1は、水没する湖岸法
面の土砂の剥落を防止すると共に耐冠水性の優れた植物
を生育させる土壌基盤を作って湖岸法面の緑化を行うも
ので、耐冠水性の優れた植物を生育させる土壌基盤を作
るための土壌を収容する凹部からなる土壌保持部10
と、水没時に土壌保持部10へ補給する空気を貯留する
空気室9と、この空気室9の空気を土壌保持部10の土
壌13へ導く通気孔2と、干出時に土壌保持部10の底
部(本実施形態ではブロック分離壁12で形成される)
よりも上でブロック前面4から土壌基盤中の水を排出す
る排水孔3とを備えている。
【0015】緑化ブロック1としての形態は、特定の形
態に限られるものではないが、湖岸法面特に急傾斜の湖
岸法面の剥落防止を兼ねるブロックとして適した形態を
採ることが好ましい。このようなブロック形態として
は、例えば、図4に示すように、急斜面の湖岸法面20
に緑化ブロック1を敷設したときにブロック前面4がほ
ぼ鉛直方向に立ち上がるように、側方から見てほぼ逆台
形状、正面から見て矩形状を成す図1の形状が一例とし
て挙げられる。具体的には、湖岸法面20を固める傾斜
したブロック背面8と、下側に配置される緑化ブロック
1の段部(凹部)から成るブロック重ね合わせ部6に嵌
め込まれる大きさのブロック底部11と、湖岸法面20
に敷設したときにほぼ垂直あるいはやや傾斜した状態と
なるブロック前面4並びに両側に配置される他の緑化ブ
ロック1と密着可能とするブロック側面5並びに上に積
み重ねられる緑化ブロック1のブロック前面4よりも前
方へ迫り出して土壌保持部10を露出させるブロック上
部7とを有する。
【0016】土壌保持部10は、本実施形態では、ブロ
ック上部7に設けられる凹部によって形成されている。
この土壌保持部10は、ブロック重ね合わせ部6の前に
配置されており、緑化ブロック1を積み上げたときに、
上段の緑化ブロック1よりも前方へ土壌保持部10が迫
り出し、広い土壌基盤の形成を可能とするようにされて
いる。また、空気室9は、緑化ブロック1の底部11に
下向きに開口するように設けられた断面矩形状の凹部と
されている。なお、土壌保持部10に入れられる土壌1
3は、セキショウやリードキャナリーグラス(クサヨ
シ)などの耐冠水性の優れた植物(草本類や木本類)が
十分生育できるものとすることが好ましい。
【0017】通気孔2は、土壌保持部10と空気室9と
を連通させ、水没時に空気室9に溜まっている空気をそ
の浮力を利用して土壌保持部10の土壌13中に供給可
能とするものである。この通気孔2は、長い時間かけて
土壌13に空気を供給できるものが好ましく、発明者に
よる実験の結果、多孔質体とするよりも、例えば直径1
mm程度の孔とすることが好ましかった。通気孔2は、
1mmよりも大径の孔であると、水位が下がるときに土
壌13が空気室9側へ漏れたり、空気が一度に土壌13
中へ出てしまい、長い時間かけて土壌13に空気を供給
することが難しくなる。また、直径1mmよりも遙かに
小径の孔あるいは多孔質体により通気孔2を形成する場
合には、土壌13に空気を供給することが難しくなる。
尚、通気孔2の数は1つに限られず、土壌13中に均等
に空気が供給されるように必要に応じて2つ以上設ける
ようにしても良い。
【0018】排水孔3は水捌けを良くする(短時間で排
水させる)ためには径の大きな孔とすることが望まれる
が、あまり大きくし過ぎると排水速度が速すぎて土壌1
3が流出することが発明者らの実験により明らかとなっ
た。また、その反面、排水孔3の径が小さすぎると、水
捌けが悪く、土壌13中の水分が多く植物の生育に適し
た土壌環境が得られない。そこで、排水孔3は、好まし
くは直径1cm程度以下、より好ましくは直径4〜8m
mの孔とすることである。この排水孔3の大きさは、土
壌の条件によっても異なり、干上がっている期間が長い
ときには保水性を高めるために孔は小さい方が良いが、
期間が短い場合には排水性を高めるため孔は大きいこと
が好ましい。更には、排水孔3は、土壌基盤の底面とな
るブロック分離壁12から2〜5cm上方でかつブロッ
ク外側に向けて高くなる勾配を有するようにしている。
このようにやや上向きに開口・排水させることにより、
排水時の土壌の流出を防ぎ、排水孔3の位置を土壌保持
部10の底よりも僅かに高く設定することにより若干の
水分が排出されずに残留するようにしている。これによ
り、出干時には、排水孔3から土壌が流出しない程度の
排水速度で過剰な水分が速やかに排水されると共に、土
壌保持部10の底部12には若干の過剰な水分が保たれ
る。したがって、土壌基盤の大部分では通気性に優れる
植物の生育に適した土壌環境を保持しつつ、土壌基盤の
上部の乾燥に伴って水分を補給することができ、長期間
に亘って好適な土壌環境が維持できる。尚、本実施形態
では、排水孔3はブロック前面4に複数例えば5カ所程
度に設けているが、これに特に限定されるものではな
く、場合によっては中央に1カ所だけ設けられることも
ある。
【0019】このように構成された緑化ブロック1のダ
ム湖岸法面20への固定と積み上げは、例えば次のよう
にして行われる。
【0020】まず、ダム湖岸の法面に緑化ブロック1を
下から順次積み上げる。即ち、湖底あるいは法面の途中
に形成された法面基礎部21に、最下段の緑化ブロック
1の底部12を載置して、ブロック背面8を傾斜した法
面20へ押し当てながら固定する。次に、その緑化ブロ
ック1の法面20寄りのブロック重ね合わせ部6に上段
の緑化ブロック1の底部12を載置するようにして積み
上げる。ここで、積み上げられる緑化ブロック1の固定
は、その底部12をブロック重ね合わせ部6に載置して
かつ背面8を法面へ押し当てることにより行う。このよ
うにして緑化ブロック1を必要段数分だけ積み上げる。
【0021】なお、通常は、緑化ブロック1の固定前
に、土壌保持部10に土壌13を入れて土壌基盤を形成
しておくと共に、セキショウやリードキャナリーグラス
(クサヨシ)などの耐冠水性を備えた草本類や木本類の
苗や種子が植栽されるが、植栽は必ずしも緑化ブロック
の湖岸法面への固定前でなくても良い。
【0022】このように築造されたダム湖岸法面20
は、法面20が露出する時期(渇水期あるいは干出時
(発電のため水が放出された時))には、土壌基盤に植
栽された植物22及び自然発生してブロック面を被覆し
ている苔類で緑化される。一方、満水期や水没時には、
空気室9に溜まっている空気が通気孔2を通って、土壌
保持部10の土壌基盤へ供給され、土壌13中に生息す
る微生物の活動(有機物の分解等)を可能としかつ根腐
れを防ぐ。そして、植栽植物22の地下茎、根、種子の
生存を助ける。また、このように緑化ブロック1をダム
湖岸面に積み上げることにより、湖岸法面20の剥落や
侵食を防止することができる。水没時にも、湖岸法面を
覆う緑化ブロックが水面を通して視認されるため、緑化
の効果が得られる。
【0023】更に、ブロック重ね部6の前方に土壌保持
部10を開口させるように構成したので、湖岸法面20
に緑化ブロック1を積み上げた時には、図4に示される
ように、土壌保持部10を上段の緑化ブロック1よりも
前方へ突き出させてその上方に植物生育空間を設けるこ
とができる。しかも、緑化ブロック1は底部12と背面
8の双方で支持されるように敷設されるので、ダム湖岸
のような急斜面となる法面に据え付けた場合でも剥落は
生じない。
【0024】尚、上述の各実施形態は本発明の好適な実
施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発
明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能で
ある。例えば、土壌保持部10は適切な土壌基盤を形成
できる量の土壌13が収納できる容積の窪みであれば良
く、その形状などについては特に限定されず、上面から
見て円形やその他の形状をしていても良い。また、図4
に示すように、湖岸法面20に敷設した時に土壌基盤の
底が略水平となるように構成し、土壌13の安定を図る
ようにしたり、更には土壌保持部10を前方へ大きく突
出させることにより植物の生育空間を広げるようにして
も良い。また、空気室9は、ブロック1の下面に設ける
のではなく、場合によっては緑化ブロック1の中に干出
時に外気と連通可能な空洞として設けたり、空気保有率
の高い部材を入れ込んで緑化ブロック1を形成するよう
にしても良い。
【0025】更に、通気孔2は、本実施形態の場合には
直径1mm程度の貫通孔としているがこれに特に限定さ
れず、例えばブロック全体あるいは空気室9と土壌保持
部10をつなぐ部分(ブロック分離壁)のみを通気性の
あるコンクリート材で形成することによって通気孔2を
形成するようにしても良い。更に、ブロック1の少なく
とも露出する部分を、自然発生する苔類でその面が被覆
され易いように、他の面以上にざらざらの粗面とするよ
うにしても良い。また、緑化ブロック1を湖岸法面に敷
設した際のブロック前面4の傾斜は、法面20の傾斜に
依存するが、好ましくは0度(垂直)から10度前傾の
範囲、より好ましくは5度から10度前傾となるように
しておけば、各緑化ブロック1の土壌保持部10の上方
に植物の生育空間をある程度大きく取れかつブロック前
面4に苔類が付き易いものとなる。
【0026】また、ブロック重ね合わせ部6は、必ずし
も上段の緑化ブロック1と嵌め合わされるような凹凸関
係を有していることはなく、単に上段の緑化ブロック1
を積み上げて支持可能な面を有すれば足りる。また、緑
化ブロック1の積み上げを行わない場合にはブロック重
ね合わせ部6は必要としない。積み上げを行う場合、ブ
ロック重ね合わせ部6は、各緑化ブロック1に1箇所ず
つ設けるのではなく、左右二つに分割させて設けても良
い。また、ブロック底部12の形状も平坦である必要は
なく、場合によってはブロック重ね合わせ部6と嵌合す
るような凸部を備えることもある。積み上げを行う場合
は、底部12だけではなく側面にも凹凸を設け、隣の緑
化ブロック1の側面に設けた穴部に嵌合させるようにし
連結強度を増すようにしても良い。なお、ブロック背面
8には図示していないが湖岸の斜面に打ち込む凸部を設
けることもある。この凸部は楔形状であったり、円錐形
状あるいは複数の突起を分散させて設けたり、上下方向
や横方向に細長くした凸条の突起としても良い。また、
緑化ブロック1を千鳥状に積み上げるのが固定強度の面
で有利であるが、必ずしも千鳥状とする必要はない。
【0027】なお、本発明は、ダム湖岸、特に急斜面の
ダム湖岸法面に好適であるが、ダム湖岸の緩斜面にも適
用できる。更に、ダム湖のみならず一般の湖や河川の岸
にも適用できるものである。
【0028】
【実施例】本発明の緑化ブロックの植物生存効果並びに
生育効果を確かめるため、特開平8−105029号の
空気室を有する緑化ブロック(図5参照。以下Aブロッ
クと呼ぶ)と、底部に排水孔を有する排水型緑化ブロッ
ク(図6参照。以下、Bブロックと呼ぶ)並びに空気室
も排水孔も有さない土壌基盤のみを有する緑化ブロック
(図示省略。以下、Cブロックと呼ぶ)とを使って、セ
キショウの植物生育試験を行った。因みに、各緑化ブロ
ックは、図6に示す排水型緑化ブロック(Bブロック)
と同じ外形状を成し、A緑化ブロックについては、底部
に高さ19cm、奥行き17cmの空気室を幅一杯に設
けて該空気室と土壌基盤とを直径1mmの通気孔で連通
させ、B緑化ブロックについては底部に直径1cmの排
水孔を5カ所設けている。また、対比する従来の緑化ブ
ロックとして、排水孔並びに空気室も有さず土壌基盤の
みを有するC緑化ブロックを用意した。
【0029】試験は、関西電力の奥多々良木ダム下池
(標高EL.+208.8m〜214m,年間の平均冠水率50
%)において、1998年の6月から2000年10月まで
の29カ月にわたって、セキショウを定植したA〜Cの
3種類のブロックを上段、中段、下段の3段に分けて各
段毎に3ブロックずつ積んで試験を実施した。その結
果、平均冠水率50%の中段及び上段においてはブロッ
ク種別によって異なる結果が得られた。即ち、空気室も
排水孔も有さない土壌基盤だけのC緑化ブロックでは、
試験開始早々に全て腐ったが、B緑化ブロック並びにA
緑化ブロックは図7に示すように共に腐らずに生存効果
が見られた。更に、排水孔を有するB緑化ブロックで生
育したセキショウは、空気室のみのA緑化ブロックで生
育したセキショウに比べて約5倍の草丈となり、成長効
果が見られた。
【0030】このことから、水没時に土壌保持部の土壌
へ補給する空気を溜める空気室9と、この空気室9の空
気を土壌保持部10の土壌13へ導く通気孔2と、干出
時に土壌保持部10の底部よりも上でブロック前面4か
ら土壌基盤中の水を排出する排水孔3とを有する本発明
の緑化ブロック1は、水没しても土壌保持部に作られる
土壌基盤へ空気室に残った空気を長い時間をかけて補給
して土壌中に生息する微生物の活動(有機物の分解な
ど)を可能とすると共に根腐れを防いで、植栽植物の地
下茎、根、種子の生存並びに生育を助け、更に干出時に
は、速やかに過剰な水分が排水されて土壌中に適度な空
気が存在する植物の生育に適した土壌環境を形成するこ
とができる。しかも、排水が制御されており、土壌の流
出が防がれているので、植物の生育に適した土壌環境を
維持する量の土壌を失うことがない上に、干出時には、
土壌保持部の排水孔よりも下の底部付近に排水されずに
残留する過剰な水分が土壌基盤の上側の乾燥に伴って吸
い上げられ補給されることから、水分不足による枯れを
防ぐことができる。これにより、水没と干出とを周期的
に頻繁に繰り返す条件下においても、長期間に亘って好
適な土壌環境が維持でき、植物の生育を保持することが
期待できる。
【0031】
【発明の効果】以上の説明より明らかなように、請求項
1の緑化ブロックでは、水没しても土壌保持部に作られ
る土壌基盤へ空気室に残った空気を長い時間をかけて補
給して土壌中に生息する微生物の活動(有機物の分解な
ど)を可能とすると共に根腐れを防いで、植栽植物の地
下茎、根、種子の生存並びに生育を助ける。また、干出
時には、速やかに過剰な水分が排水されて土壌中に適度
な空気が存在する植物の生育に適した土壌環境を形成す
る。しかも、排水が制御されており、土壌の流出が防が
れているので、植物の生育に適した土壌環境を維持する
量の土壌を失うことがない。更に、土壌保持部の排水孔
よりも下の底部付近では、排水されないため、過剰な水
分が残り、上の方の土壌の乾燥に伴って水分が吸い上げ
られ補給される。しかも、この部分の水分は僅かである
ため、大部分の土壌環境には影響を与えない。これによ
り、水没と干出とを周期的に頻繁に繰り返す条件下にお
いても、長期間に亘って好適な土壌環境が維持でき、植
物の生育を保持することができる。
【0032】また、請求項2記載の護岸構築物による
と、湖岸法面が緑化ブロックによって固定されかつ水位
の変動から保護されるので、その剥落や浸食が防がれ
る。また、積み上げられた各緑化ブロックの前方に下段
の緑化ブロックの土壌保持部に植栽された耐冠水性に優
れた植物の成長を許す空間を作り出すことができるの
で、土壌基盤に植栽された耐冠水性に優れた植物及び自
然発生してブロック前面を覆う苔類で湖岸法面を緑化す
ることができる。したがって、急傾斜の湖岸法面の剥落
防止と共に定期的な水没条件下での植物の生育・緑化を
可能とする。そして、裸地化した湖岸法面を緑化し、景
観の改善と、湖岸の浸食・崩壊を防止することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の緑化ブロックの実施形態の一例を示す
斜視図である。
【図2】図1の緑化ブロックの中央縦断面図である。
【図3】同緑化ブロックの排水孔付近を拡大して示す断
面図である。
【図4】本発明の緑化ブロックを湖岸法面に築造した状
態を断面して示す説明図である。
【図5】空気供給が植物の生存並びに生育に与える影響
を確認するために底部に空気室を設けた緑化ブロックの
一例を示す縦断面図である。
【図6】排水効果が植物の生存並びに生育に与える影響
を確認するための底部に排水孔を開けた緑化ブロックの
一例を示す縦断面図である。
【図7】図6の排水型緑化ブロックと図5の給気室だけ
を設けた緑化ブロックとの植物の生存効果並びに成長効
果を30カ月に亘って比較した結果を示すグラフであ
る。
【符号の説明】
1 緑化ブロック 2 通気孔 3 排水孔 4 ブロック前面 6 ブロック重ね合わせ部 9 空気室 10 土壌保持部 12 ブロック底部 11 ブロック分離壁(土壌保持部の底面) 13 土壌
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) E02D 17/20 103 E02D 17/20 103H (72)発明者 長谷川 寛 千葉県我孫子市柴崎台2−11−23 株式会 社シー・アール・エス内 (72)発明者 品田 泰 千葉県我孫子市我孫子1646番地 財団法人 電力中央研究所 我孫子研究所内 Fターム(参考) 2B022 AA01 AA03 AB02 2B027 ND02 NE02 NE06 NE09 QA05 QB03 QB12 2D018 DA06 EA01 2D044 DB53

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水没する湖岸法面の土砂の剥落を防止す
    ると共に耐冠水性の優れた植物を生育させる土壌基盤を
    作って湖岸法面の緑化を行う緑化ブロックにおいて、前
    記植物を生育させる土壌基盤を作るための土壌を収容す
    る土壌保持部と、水没時に前記土壌保持部の前記土壌へ
    補給する空気を溜める空気室と、この空気室の空気を前
    記土壌保持部の土壌へ導く通気孔と、干出時に前記土壌
    保持部の底部よりも上でブロック前面から前記土壌基盤
    中の水を排出する排水孔とを有することを特徴とする緑
    化ブロック。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の緑化ブロックを前記土壌
    保持部の土壌基盤を上段の緑化ブロックよりも前方へ迫
    り出させて段々に積み重ね、湖岸法面を覆い固めると共
    に前記土壌基盤に耐冠水性の優れた植物を植栽して緑化
    させることを特徴とする護岸構築物。
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