JP2003193183A - 耐遅れ破壊性および耐食性に優れた高強度鋼線 - Google Patents
耐遅れ破壊性および耐食性に優れた高強度鋼線Info
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Abstract
がら耐遅れ破壊性および耐食性に優れた高強度鋼線を提
供する。 【解決手段】 本発明の高強度鋼線は、C:0.5〜
1.0%を含有する他、Cu,NiおよびTiよりなる
群から選ばれる1種以上を下記(1)式を満足するよう
に含有する鋼からなり、パーライト組織の面積率を80
%以上としたものであり、且つ1200N/mm2以上
の強度を有するものである。 3.1≧3[Cu]+[Ni]+6[Ti]≧0.1
(%) …(1) 但し、[Cu],[Ni]および[Ti]は夫々Cu,
NiおよびTiの含有量(質量%)を示す。
Description
業機械用として使用されるボルト用に適した高強度鋼線
に関するものであり、特に引張強度が1200N/mm
2以上でありながら耐遅れ破壊性および耐食性に優れた
高強度鋼線に関するものである。
(SCM435、SCM440、SCr440等)が使
用され、ボルトに成形した後、焼入れ焼戻しにより焼戻
しマルテンサイトを主体とする組織として必要強度を確
保するようにしているのが実状である(以下では、こう
した鋼材を「焼入れ・焼戻し材」と呼ぶ)。しかしなが
ら、こうした焼入れ・焼戻し材では、引張強さが約12
00N/mm2を超えるような強度領域になると遅れ破
壊が発生する危険があり、使用に制約を受けているのも
事実である。
と腐食性環境で起こるものがあり、種々の要因が複雑に
絡み合って起こしている原因を特定することは難しい。
特に遅れ破壊性を左右するものとして焼もどし温度、組
織、材料硬さ、結晶粒度、各種合金元素等の関与が一応
認められているものの遅れ破壊防止手段が確立されてい
る訳ではなく、試行錯誤的に種々の方法が提案されてい
る。
より鋼線の耐遅れ破壊性の改善を目指して研究を重ねて
きた。そして、その研究の一環として、例えば特開平1
1−315347号、同11−315348号、同11
−315349号などの技術を提案している。これらの
技術では、Cを0.5〜1.0%程度含む中・高炭素鋼
において、初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナ
イトおよびマルテンサイトの1種または2種以上の組織
生成を抑制してパーライト組織の面積率を80%以上に
し、且つ強伸線加工によって1200N/mm2以上の
強度にすることを基本とするものである。
によって、耐遅れ破壊性が大幅に改善された高強度鋼線
が実現できたのであるが、こうした技術によっても解決
すべき若干の問題があることが判明した。即ち、これら
の鋼線においては、従来の低合金鋼の焼入れ・焼戻し材
に比べて耐食性が劣化し、腐食環境の厳しい場所での使
用が困難になる場合があることが判明したのである。特
に近年では、自動車用ボルトにはこれまで以上に更に厳
しい腐食環境で使用されることが予想され、こうした厳
しい腐食環境下においても優れた耐食性を発揮すること
が要求されるのが実情である。
ものであって、その目的は、引張強度が1200N/m
m2以上でありながら耐遅れ破壊性および耐食性に優れ
た高強度鋼線を提供することにある。
強度鋼線とは、C:0.5〜1.0%を含有する他、C
u,NiおよびTiよりなる群から選ばれる1種以上を
下記(1)式を満足するように含有する鋼からなり、パ
ーライト組織の面積率を80%以上としたものであり、
且つ1200N/mm2以上の強度を有するものである
点に要旨を有するものである。 3.1≧3[Cu]+[Ni]+6[Ti]≧0.1(%) …(1) 但し、[Cu],[Ni]および[Ti]は夫々Cu,
NiおよびTiの含有量(質量%)を示す。
NiおよびTiの含有量は、Cu:0.5%以下(0%
を含まない)、Ni:1.0%以下(0%を含まない)
およびTi:0.1%以下(0%を含まない)であるこ
とが好ましい。また、鋼材としての基本成分であるSi
やMnについては、Si:1.0%以下(0%を含まな
い)およびMn:0.3〜1.0%程度含有であること
が好ましい。更に、鋼材としての不純物であるPやSに
ついては、P:0.03%以下(0%を含む)および
S:0.03%以下(0%を含む)に夫々抑制すること
が好ましい。
って、(a)N:0.015%以下(0%を含まな
い)、(b)Cr:1.0以下(0%を含まない)、
(c)Al:0.1%以下(0%を含まない)、(d)
Co:0.5%以下(0%を含まない)、(e)Mo,
Nb,VおよびWよりなる群から選択される1種または
2種以上を合計で0.01〜0.5%、(f)B:0.
0005〜0.003%、等の成分を含有させることも
有効であり、含有させる成分に応じて高強度鋼線の特性
が更に改善される。
イト組織の高強度鋼線において耐食性が劣化する原因に
ついて検討した。その結果、パーライト組織からなる高
強度鋼線では、従来の低合金鋼における焼戻しマルテン
サイト組織とは異なり、パーライト中のフェライトとセ
メンタイトの層状組織が局部電池を形成し、これによっ
て腐食がより促進されるものと考えられた。また、上記
の様なパーライト組織を主体とする高強度鋼線では、パ
ーライト組織にするために炭素含有量を必然的に多くす
る必要があるが、こうしたことも耐食性に悪影響を及ぼ
しているものと考えられた。
イト組織を有する高強度鋼線の耐食性を改善するという
観点から、更に検討を重ねた。その結果、Cu,Niお
よびTiなどは、パーライト組織を有する鋼材の表面に
生じる錆を緻密化する作用があり、こうした作用によっ
て鉄地表面での腐食反応の進行を抑制する効果を発揮で
きることが判明したのである。即ち、パーライトを主体
とする組織を有する高強度鋼線においても、その成分組
成を適切に調整すれば、従来の低合金鋼の焼入れ・焼戻
し材と同等若しくはそれ以上の耐食性を発揮し得ること
を見出し、本発明を完成した。
面積率を80%以上とする必要があるが、他の組織例え
ば初析フェライトと初析セメンタイトが多く生成する
と、伸線時に縦割れを起こし伸線できなくなり、強伸線
加工によっても1200N/mm2以上の強度を得るこ
とができなくなる。また初析セメンタイトとマルテンサ
イトは、伸線したときに断線を引き起こすことがあるの
で少なくする必要がある。更にベイナイトはパーライト
に比べて加工硬化量が少なくなり、強伸線加工によって
も強度上昇が望めないので少なくする必要がある。
主体とする組織では、セメンタイトとフェライトの界面
で水素をトラップし、粒界に集積する水素を低減させる
効果があり、できるだけ多くする必要がある。即ち、初
析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマ
ルテンサイト等の組織を少なくとも1種をできるだけ抑
制して(即ち、その合計の面積率が20%未満となる様
にして)、パーライト組織の面積率を80%以上とする
ことにより、耐遅れ破壊性に優れた高強度鋼線が得られ
るのである。尚、パーライト組織の面積率は、好ましく
は90%以上とするのが良く、より好ましくは100%
パーライト組織とするのが良い。
や鍛造ままでは必要な寸法精度が得られず、また120
0N/mm2以上の強度を得ることが困難になるので、
伸線率(総伸線率)が30%以上となるような伸線加工
を行うこと(鋼線とすること)が好ましい。また伸線加
工によって一部のパーライト中のセメンタイトが微細に
分散され、水素トラップ能力を向上させると共に、伸線
方向に沿って組織が並ぶことによって亀裂の進展の抵抗
になるという効果も発揮される(亀裂伝播方向は伸線方
向に垂直である)。
0%含む中・高炭素鋼において、Cu,NiおよびTi
の少なくとも1種を上記(1)の関係を満足する様に含
有させるものであるが、これらの範囲限定理由は下記の
通りである。尚、以下では、棒状または線状に熱間加工
された鋼材およびその後熱処理された鋼材を「線材」と
呼び、上記線材を強伸線加工したものを「鋼線」と呼ん
で区別する。
C含有量を増加させるにつれて強度が増加する。目標強
度を確保するためには、0.5%以上のCを含有させな
ければならない。しかし、C量が1.0%を超えると初
析セメンタイトの析出量が増加し、靭延性の低下が顕著
にあらわれ、伸線加工性を劣化させるばかりか、耐食性
の劣化も顕著になるので1.0%を上限とした。尚、C
含有量の好ましい下限は0.65%であり、より好まし
くは0.7%である。またC含有量の好ましい上限は、
0.9%であり、より好ましくは0.85%である。最
も望ましいのは共析成分鋼を用いるのが良い。
i]≧0.1(%)[前記(1)式] Cu,NiおよびTiは、パーライト組織を有する鋼材
の表面に生じる錆を緻密化して、腐食反応を抑制するの
に寄与する成分であるが、こうした効果を発揮させる為
には、これらの少なくとも1種を上記(1)式の関係を
満足するように含有させる必要がある。尚、この(1)
式はCu,NiおよびTiにおける夫々の作用の違いを
考慮し、回帰式によって導かれたものであるが、鋼線に
おける耐食性を十分に改善するためには、(3[Cu]
+[Ni]+6[Ti])の値が0.1%を越える様に
含有させる必要がある。上記効果をより有効に発揮させ
る為には、(3[Cu]+[Ni]+6[Ti])の値
は0.3%以上とすることが好ましく、より好ましい値
は0.5%以上である。一方、(3[Cu]+[Ni]
+6[Ti])の値の上限については、多量に含有させ
ても耐食性改善効果が飽和するので、3.1%とした。
好ましい上限は2.5%であり、より好ましくは1.5
%以下、更に好ましくは1.0%以下にするのが良い。
尚、本発明では、Cu,NiおよびTiを複合して含有
させることによって、夫々を単独で含有させる場合に比
べて表面に生成する錆がより緻密化され、耐食性がより
改善されることを確認している。
iおよびTiの少なくとも1種を上記(1)式の関係を
満足する様に含有させれば良く、各成分の含有量につい
ては何ら限定するものではないが、これらの好ましい範
囲およびその理由は下記の通りである。
材の耐食性を改善させるのに最も有効な元素である。こ
うした効果を発揮させる為には、少なくとも上記(1)
式の関係を満足する様に含有させる必要があるが、過剰
に含有させると粒界脆化を起こして、耐遅れ破壊性を劣
化させる原因となるので0.5%以下にすることが好ま
しい。尚、Cu含有量の好ましい下限は0.05%であ
り、より好ましくは0.1%以上とするのが良く、より
好ましい上限は0.4%であり、更に好ましくは0.3
%以下とするのが良い。
組織を有する鋼材の耐食性を改善させるのに有効な元素
である。また、鋼材の強度上昇にはあまり寄与しないが
伸線材(鋼線)の靭性を高める効果をも有する。しか
し、Ni含有量が過剰になると、変態終了時間が長くな
り過ぎて、設備の大型化、生産性の低下を招くので、
1.0%以下にすることが好ましい。尚、Ni含有量の
好ましい下限は0.05%であり、より好ましくは0.
1%以上とするのが良く、より好ましい上限は0.5%
であり、更に好ましくは0.3%以下とするのが良い。
性を改善するのに有効な元素である。また、Tiは鋼中
でTi化合物を形成し、結晶粒を微細化することによっ
て耐遅れ破壊性向上に寄与する。しかし、Tiを過剰に
含有させると粗大な介在物が生成し、伸線性を低下させ
るので、0.1%を上限とする。尚、Ti含有量のより
好ましい範囲は0.001〜0.07%であり、更に好
ましい範囲は0.02〜0.05%である。
ての基本成分であるSiやMnについては、Si:1.
0%以下(0%を含まない)およびMn:0.3〜1.
0%程度含有であることが好ましい。更に、鋼材として
の不純物であるPやSについては、P:0.03%以下
(0%を含む)およびS:0.03%以下(0%を含
む)に夫々抑制することが好ましい。これらの範囲限定
理由は下記の通りである。
析出を抑える効果を発揮する。また脱酸剤としての作用
が期待され、しかもフェライトに固溶して顕著な固溶強
化作用も発揮する。これらの効果は、その含有量が増加
するにつれて増大するが、Si含有量が過剰になると伸
線後の鋼線の延性を低下させるので、1.0%を上限と
する。尚、Si含有量の好ましい上限は、0.5%であ
り、より好ましい上限は0.2%であり、更に好ましく
は0.1%以下とするのが良い。
て鋼線の組織の均一性を高める効果を有する。これらの
作用は0.3%以上含有させることによって有効に発揮
される。しかし、Mn量が過剰になると、Mnの偏析部
にマルテンサイトやベイナイトなどの過冷却組織が生成
して伸線加工性を劣化させるので、Mn量の上限は1.
0%とした。尚、Mn含有量の好ましい範囲は、0.4
〜0.9%程度であり、更に好ましくは0.5〜0.7
%程度である。
素である。そこでP含有量を0.03%以下とすること
により、耐遅れ破壊性の向上が図れる。尚、好ましく
は、P含有量は0.015%以下に低減するのが良く、
より好ましくは0.010%以下、更に好ましくは0.
005%以下に抑制するのが良い。
力集中箇所となる。従って耐遅れ破壊性の改善にはS含
有量をできるだけ減少させることが必要となり、その含
有量は0.03%以下とするのが良い。尚S含有量は、
0.015%以下に低減するのが好ましく、より好まし
くは0.010%以下、更に好ましくは0.005%以
下に抑制するのが良い。
の他(残部)は基本的に鉄からなるものであるが、これ
ら以外にも微量成分を含み得るものであり、こうした成
分を含むものも本発明の技術的範囲に含まれるものであ
る。また本発明の高強度鋼線には、不可避的に不純物
(上記P、Sの他、OやAs,Pb)が含まれることに
なるが、それらは本発明の効果を損なわない限度で許容
される。こうした観点から、不可避不純物としてのOは
下記の様に抑制することが好ましい。
在物として存在し、伸線時にカッピー断線を引き起こす
原因となる。従ってO含有量は極力少なくすべきであ
り、少なくとも0.005%以下に抑える必要がある。
尚、O含有量は、0.003%以下に低減することが好
ましく、より好ましくは0.002%以下、更に好まし
くは0.001%に低減するのが良い。
要によってN,Cr,Al,Co,Mo,Ti,Nb,
V,W,B等を含有することも有効であり、含有される
元素の種類に応じて高強度線材・鋼線の特性が改善され
る。必要によって含有させる各元素の限定理由は下記の
通りである。
化ひいては耐遅れ破壊性の向上に好影響を与える。しか
し、過剰に含有されると、窒化物が増加しすぎて伸線性
に悪影響を及ぼすだけでなく、固溶Nが伸線中の時効を
促進することがあるため含有量の上限は0.015%と
するのが良い。尚、Nは不可避的に鋼材に混入してもそ
の効果を発揮するが、上記効果を有効に発揮させるため
には0.002%以上含有させることが好ましい。また
N含有量の好ましい上限は0.007%程度であり、よ
り好ましい上限は0.005%程度である。
果を発揮する。こうした効果は、その含有量が増加する
につれて増大するが、1.0%を超えて含有させてもそ
の効果が飽和して不経済となるので1.0%以下とする
のが良い。尚、Cr含有量のより好ましい範囲は0.1
〜0.5%程度であり、更に好ましい範囲は0.15〜
0.3%程度である。
細化することによって耐遅れ破壊性の向上に寄与する。
こうした効果は、その含有量が増加するにつれて増大す
るが、0.1%を超えると窒化物系介在物および酸化物
系介在物が生成し、伸線性を低下させるので、0.1%
以下とするのが良い。尚、Alは不可避的に鋼材に混入
してもその効果を発揮するが、上記効果を有効に発揮さ
せるためのより好ましい範囲は0.01〜0.07%程
度であり、更に好ましい範囲は0.025〜0.05%
程度である。
効果があり、初析セメンタイトの低減を図る本発明の高
強度鋼線における添加成分としては特に有効である。こ
うした効果は含有量が増加するほど増大するが、0.5
%を超えて添加してもその効果は飽和し、不経済である
ためその上限を0.5%とした。尚、Co含有量のより
好ましい範囲は0.03〜0.3%程度であり、更に好
ましい範囲は0.1〜0.2%程度である。
択される1種または2種以上:合計で0.01〜0.5
% Mo,Nb,VおよびWは、微細な炭・窒化を形成し、
遅れ破壊性の向上に寄与する。またこれらの窒化物およ
び炭化物は、結晶粒の微細化に有効な元素である。こう
した効果を発揮させるためには合計で0.01%以上含
有させるのが良いが、過剰に含有させると耐遅れ破壊性
および靭性が劣化するので、合計で0.5%以下にする
のが良い。尚、これらの元素含有量の好ましい下限は、
合計で0.02%であり、より好ましくは0.03%程
度である。また、好ましい上限は、合計で0.3%程度
であり、より好ましくは0.1%程度である。
発揮させる為には0.0005%以上含有させるのが良
いが、B含有量が過剰になって0.003%を超えると
却って靭性を阻害することになる。尚、B含有量の好ま
しい下限は0.0010%程度であり、好ましい上限は
0.0025%程度である。
てその組織を調整することができるが、その代表的な方
法について説明する。その方法の一つとして、まず上記
の様な化学成分を有する鋼材を用い、鋼材の圧延または
鍛造終了温度が800℃以上となる様に熱間圧延または
鍛造を行った後、平均冷却速度Vが下記(2)を満足す
る様にして400℃まで連続冷却し、引き続き放冷す
る。 166×(線径)-1.4≦V≦288×(線径)-1.4 …(2) 線径:mm
なパーライト組織が得られ、伸線前の強度上昇が図れ
る。圧延または鍛造終了温度が低すぎると、オーステナ
イト化が不十分となり、均質なパーライト組織が得られ
なくなるので、上記終了温度は800℃以上とするのが
良い。この温度の好ましい範囲は850〜950℃程度
であり、更に好ましくは850〜900℃とするのが良
い。
-1.4よりも小さくなると、均質なパーライト組織が得ら
れないばかりか、初析フェライトや初析セメンタイトが
生成し易くなる。また平均冷却速度Vが288×(線
径)-1.4よりも大きくなると、ベイナイトやマルテンサ
イトが生成し易くなる。
学成分組成を有する鋼材を用い、鋼材を800℃以上に
加熱後、急冷し、500〜650℃まで急冷し、その温
度で恒温保持(パテンティング処理)することにより、
通常の圧延材より均質なパーライト組織が得られ、伸線
前の強度上昇が図れる。
囲は、上記圧延または鍛造終了温度と同じ理由で800
℃以上とする必要がある。またこの加熱温度の好ましい
範囲は、上記と同様である。パテンティング処理は、ソ
ルトバス、鉛、流動層等を利用し、加熱した線材をでき
るだけ速い速度で急冷することが望ましい。また、均質
なパーライト組織を得るには、500〜650℃で恒温
変態するのが良い。また、この恒温保持温度の好ましい
温度範囲は、550〜600℃であり、最も好ましい恒
温保持温度はTTT線図のパーライトノーズ付近の温度
である。
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変形することはい
ずれも本発明の技術的範囲含まれるものである。
を用い、線径:11mmφまで熱間圧延した後、パテン
ティング処理(加熱温度:750〜940℃、恒温変
態:495〜645℃×4分)を行った。その後、線
径:11mmφの線材を線径:7.06mmφまで伸線
して鋼線を作製した。
×P1.25のスタッドボルトを作製し、下記の条件で
遅れ破壊試験を行った。また、耐食性試験用として、上
記鋼線から、長さ:40mmの鋼材を切り出し、下記の
条件で耐食性試験を行った。このとき,比較の為に一部
のものについては、線径:7.06mmφの線材を焼入
れ・焼戻し処理し、100%焼戻しマルテンサイト組織
にしたもの(前記表1の供試鋼R:SCM435材)に
ついても、耐遅れ破壊試験および耐食性試験を行った。
また、初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイト
およびマルテンサイトまたはパーライト組織の分類を下
記の方法で行い、各組識の面積率を求めた。
(15%HCl×30分)、水洗・乾燥して大気中で応
力負荷(負荷応力は引張強さの90%)し、100時間
後の破断の有無で価した。
7.06mmφ×40mmのサンプルを用い、複合サイ
クル試験機内で[温度:35℃、塩水(5%NaCl)
噴霧×8時間]と、(温度:35℃、湿度:60%×1
6時間)を、交互に2週間繰り返す腐食促進環境下での
腐食減量を測定することによって耐食性を評価した。
み、研磨後、5%ピクリン酸アルコール液に15〜30
秒腐食した後、走査型電子顕微鏡(SEM)によってD
/4(Dは直径)部を組織観察した。1000〜300
0倍で5〜10視野撮影し、パーライト組織部分を確定
した後、画像解析装置によって各組識の面積率を求め
た。
壊試験結果および耐食性試験結果を伸線条件および機械
的特性と共に下記表3に夫々示す。また、(3[Cu]
+[Ni]+6[Ti])量と耐食性(腐食減量)の関
係を図2に示す。
規定する要件を満足する鋼線では、引張強さ1200N
/mm2以上であっても優れた耐遅れ破壊性を有し、し
かも耐食性にも優れていることが分かる。
張強度が1200N/mm2以上でありながら耐遅れ破
壊性および耐食性に優れた高強度鋼線が実現できた。
示す説明図である。
量)の関係を示すグラフである。
Claims (10)
- 【請求項1】 C:0.5〜1.0%(質量%の意味、
以下同じ)を含有する他、Cu,NiおよびTiよりな
る群から選ばれる1種以上を下記(1)式を満足するよ
うに含有する鋼からなり、パーライト組織の面積率を8
0%以上としたものであり、且つ1200N/mm2以
上の強度を有するものであることを特徴とする耐遅れ破
壊性および耐食性に優れた高強度鋼線。 3.1≧3[Cu]+[Ni]+6[Ti]≧0.1(%) …(1) 但し、[Cu],[Ni]および[Ti]は夫々Cu,
NiおよびTiの含有量(質量%)を示す。 - 【請求項2】 Cu:0.5%以下(0%を含まな
い)、Ni:1.0%以下(0%を含まない)およびT
i:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選
ばれる1種以上を含有するものである請求項1に記載の
高強度鋼線。 - 【請求項3】 Si:1.0%以下(0%を含まない)
およびMn:0.3〜1.0%を含有するものである請
求項1または2に記載の高強度鋼線。 - 【請求項4】 P:0.03%以下(0%を含む)およ
びS:0.03%以下(0%を含む)に夫々抑制したも
のである請求項1〜3のいずれかに記載の高強度鋼線。 - 【請求項5】 N:0.015%以下(0%を含まな
い)を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記
載の高強度鋼線。 - 【請求項6】 Cr:1.0以下(0%を含まない)を
含有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の高
強度鋼線。 - 【請求項7】 Al:0.1%以下(0%を含まない)
を含有するものである請求項1〜6のいずれかに記載の
高強度鋼線。 - 【請求項8】 Co:0.5%以下(0%を含まない)
を含有するものである請求項1〜7のいずれかに記載の
高強度鋼線。 - 【請求項9】 Mo,Nb,VおよびWよりなる群から
選択される1種または2種以上を合計で0.01〜0.
5%含有するものである請求項1〜8のいずれかに記載
の高強度鋼線。 - 【請求項10】 B:0.0005〜0.003%を含
有するものである請求項1〜9のいずれかに記載の高強
度鋼線。
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