JP3816721B2 - 耐遅れ破壊性と首下靭性、または耐遅れ破壊性と鍛造性および首下靭性に優れた高強度線材並びにその製造方法 - Google Patents
耐遅れ破壊性と首下靭性、または耐遅れ破壊性と鍛造性および首下靭性に優れた高強度線材並びにその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用や各種産業機械用として使用されるボルト用鋼に適した高強度線材、およびその製造方法に関するものであり、特に強度(引張強度)が1200N/mm2以上でありながら耐遅れ破壊性と共にボルトに加工した時の首下靭性や鍛造性にも優れた高強度線材、およびその様な高強度線材を製造するための有用な方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に高強度ボルト用鋼には中炭素合金鋼(SCM435、SCM440、SCr440等)が使用され、焼入れ・焼もどしにより必要強度を得ている。しかし一方で、引張強度が約1200N/mm2を超える領域になると遅れ破壊が発生する危険があり、使用に制約を受けている。
【0003】
遅れ破壊は、非腐食性環境で起こるものと腐食性環境で起こるものがあり、種々の要因が複雑に絡み合って起こしている原因を特定することは難しい。特に遅れ破壊性を左右するものとしては、焼もどし温度、組織、材料硬さ、結晶粒度、各種合金元素等の関与が一応認められているものの、遅れ破壊を防止する手段が確立されている訳ではなく、試行錯誤的に種々の方法が提案されているに過ぎないのが実状である。
【0004】
耐遅れ破壊性を改善する為に、例えば特開昭60−114551号、特開平2−267243号、特開平3−243745号等の技術が提案されている。これらの技術では、各種の主要な合金元素を調整することによって、引張強度が1400N/mm2以上でも耐遅れ破壊性の優れた高強度ボルト用鋼が開示されているが、遅れ破壊発生の危険が完全に解消された訳ではなく、それらの適用範囲はごく限られた範囲に止まっている。
【0005】
ところで、球状化焼鈍後に伸線加工し比較的強度の低い鋼材をボルト加工し、その後焼入れ・焼戻しにより必要強度を得る方法ではなく、非調質ボルト用鋼の様に、強度の高い鋼材をボルト加工する場合には、ボルト加工時の変形抵抗が高くなり、工具寿命を大きく低下させ、生産性を阻害することがある。従って、こうした加工法を適用する場合には、ボルト用鋼に要求される特性として鍛造性が良好である必要がある。
【0006】
一方、これらの線材を用いて頭付き六角アプセットボルトや六角フランジボルトを作製した場合には、調質して作製したボルトと比べて頭直下部分の靭性(ボルトに加工した時の首下靭性;以下、単に「首下靭性」ということがある)が低下し、ボルト使用時に頭飛びが発生する危険性があった。こうしたことから、上記の様な高強度ボルト用鋼には、ボルトに作製した場合の首下靭性にも優れていることも重要な要件である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこの様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、引張強度が1200N/mm2以上でありながら、耐遅れ破壊性と共にボルトに加工した時の首下靭性や鍛造性にも優れた高強度線材、およびその様な高強度線材を製造するための有用な方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の高強度線材とは、
C:0.50〜1.0%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:2.0%以下(0%を含む)、
Mn:0.2〜1.0%、
P :0.03%以下(0%を含む)、
S :0.03%以下(0%を含む)、
N :0.015%以下(0%を含まない)、
O :0.005%以下(0%を含む)
を含有すると共に、Al:0.005%未満に抑制され、残部鉄および不可避不純物である鋼からなる線材であって、
初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上の組織の生成を抑制してパーライト組織の面積率を80%以上としたものであり、且つ強伸線加工によって1200N/mm2以上の強度と優れた耐遅れ破壊性を有する様にしたものである点に要旨を有するものであり、こうした構成を採用することによって、耐遅れ破壊性とボルトに加工した時の首下靭性に優れた高強度線材となる。
【0009】
また、本発明の上記目的は、
C:0.50〜1.0%、
Mn:0.2〜1.0%、
P :0.03%以下(0%を含む)、
S :0.03%以下(0%を含む)、
N :0.015%以下(0%を含まない)、
O :0.005%以下(0%を含む)
を含有すると共に、Si:0.1%未満およびAl:0.005%未満に夫々抑制され、残部鉄および不可避不純物である鋼からなる線材であって、
初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上の組織の生成を抑制してパーライト組織の面積率を80%以上としたものであり、且つ強伸線加工によって1200N/mm2以上の強度と優れた耐遅れ破壊性を有する様な構成を採用することによっても達成され、こうした構成を採用することによって、耐遅れ破壊性と共に鍛造性およびボルトに加工した時の首下靭性のいずれにも優れた高強度線材が得られる。
【0010】
上記本発明の高強度線材には、必要によって、Cr:0.5%以下(0%を含まない)および/またはCo:0.5%以下(0%を含まない)を含有させることも有効である。
【0011】
更には、(a)Cu:0.5%以下(0%を含まない)、(b)Ni:1.0%以下(0%を含まない)、(c)Mo,Ti,Nb,VおよびWよりなる群から選ばれる1種以上を合計で0.01〜0.5%、(d)B:0.0005〜0.003%を含有させてもよい。
【0012】
一方、上記の様な本発明の高強度線材を製造するに当たっては、鋼材の圧延または鍛造終了温度が800℃以上となる様に熱間圧延または鍛造を行った後、平均冷却速度V(℃/秒)が下記(1)を満足する様にして400℃まで連続冷却し、引き続き室温まで放冷することにより、初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上の組織の生成を抑制してパーライト組織の面積率を80%以上とし、その後強伸線加工によって1200N/mm2以上の強度にする様にすれば良い。
166×(線径:mm)− 1.4≦V≦288×(線径:mm)− 1.4 … (1)
また、本発明の高強度線材は、鋼材を800℃以上に加熱後、500〜650℃の室温まで急冷し、その温度で恒温保持することにより、初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上の組織の生成を抑制してパーライト組織の面積率を80%以上とし、その後強伸線加工によって1200N/mm2以上の強度にする様にしても製造できる。
【0013】
更に、本発明の高強度線材は、鋼材の圧延または鍛造終了温度が800℃以上となる様に熱間圧延または熱間鍛造した後、5℃/秒以上の平均冷却速度で520〜750℃の温度まで冷却し、その温度から1.0℃/秒以下の冷却速度で200秒以上保持して冷却し、引き続き放冷することにより、初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上の組織の生成を抑制してパーライト組織の面積率を80%以上とし、その後強伸線加工によって1200N/mm2以上の強度にする様にしても製造できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、従来のボルト用高強度鋼の耐遅れ破壊性が劣る原因等について様々な角度から検討した。その結果、従来の改善方法では、組織を焼戻しマルテンサイトとして、焼戻し脆性域の回避、粒界偏析の元素の低減、結晶粒微細化を図ることにより耐遅れ破壊性を補っていたが、それには限界があることが判明した。
【0015】
そこで本発明者らは、耐遅れ破壊性を更に向上させるために鋭意研究を重ねた結果、組織をある制約を持ったパーライト組織とし、強伸線加工により1200N/mm2以上の強度とすれば、耐遅れ破壊性が改善されることを見出した。
【0016】
また上記パーライト組織を、強伸線加工により1200N/mm2以上の強度にした線材を鍛造または圧造する際、鋼材中のSi含有量を所定量未満に低減しておけば、変形抵抗が低下して工具寿命が向上すると共に、鋼中の酸化物を低減することができて変形能が向上し、割れ発生を抑制できること、即ち優れた鍛造性が発揮できることも判明した。
【0017】
更に、また上記パーライト組織を、強伸線加工により1200N/mm2以上の強度にした線材を頭付きのボルトに加工する場合には、鋼材中のAl含有量を所定量未満に低減しておけば、鋼中酸化物を低減できて、ボルト使用時の首下での破断(頭飛び)が抑制できること、即ち優れた首下靭性が発揮できることも判明した。
【0018】
尚本発明の高強度線材においては、上記の様に鋼材中のSi含有量を所定量未満に低減することによって優れた鍛造性が発揮でき、また鋼材中のAl含有量を所定量未満に低減することによって優れた首下靭性が発揮できたものであるが、これらSiとAlの両方を低減することによって、上記耐遅れ破壊性と共に鍛造性および首下靭性のいずれをも優れたものとすることもできる。
【0019】
本発明の高強度線材は、上記の如く初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上の組織の生成を抑制してパーライト組織の面積率を80%以上とする必要がある。上記組織のうち、初析フェライトと初析セメンタイトが多く生成すると、伸線時に縦割れを起こし伸線できなくなり、強伸線加工によって1200N/mm2以上の強度を得ることができなくなる。また初析セメンタイトとマルテンサイトは、伸線時に断線を引き起こすので少なくする必要がある。更にベイナイトはパーライトに比べて加工硬化量が少なくなるので、強伸線加工による強度上昇が望めないので少なくする必要がある。
【0020】
これに対してパーライト組織は、セメンタイトとフェライトの界面で水素をトラップし、粒界に集積する水素を低減させる効果があり、できるだけ多くする必要がある。こうしたことから、初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイト等の組織を少なくとも1種の組織の生成を抑制して(即ち、20%未満にして)、パーライト組織の面積率を80%以上とする必要がある。即ち、初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイト等の組織の少なくとも1種をできるだけ少なくして、その合計面積率を20%未満となる様にしてパーライト組織の面積率を80%以上にする必要がある。尚パーライト組織の面積率は、好ましくは90%以上とするのが良く、より好ましくは100%パーライト組織とするのが良い。
【0021】
また、本発明の高強度線材においては、上記パーライト組織のパーライトノジュールサイズやパーライトラメラー間隔が以下の条件を満たせば、耐遅れ破壊性を更に向上し、また伸線性も良好となるので好ましい。
【0022】
まずパーライトノジュールサイズは粒度番号でNo.7以上であることが望ましい。パーライトノジュールサイズを微細にすると、粒界に負荷する応力が低減されると共に、粒界強度が上昇する。これによって遅れ破壊時に見られる粒界破壊が抑制されて耐遅れ破壊性が向上する。また、パーライトノジュールサイズを微細化することによって、延性および靭性が向上し、こうした観点からも耐遅れ破壊性が向上する。尚パーライトノジュールサイズは、粒度番号でNo.8以上とするのが好ましく、より好ましくはNo.10以上とするのが良い。
【0023】
一方、パーライト組織のパーライトラメラー間隔は、200nm以下であることが好ましい。パーライトラメラー間隔の微細化は、鋼材の高強度化に有効であり、セメンタイトとフェライトの界面を増加させ、水素トラップ効果を促進させる。こうした効果を十分に発揮させる為に、パーライトラメラー間隔が200nm以下とするのが良い。尚好ましいパーライトラメラー間隔は、150nm以下であり、より好ましくは100nm以下であり、更に好ましくは75nm以下である。
【0024】
本発明の高強度線材においては、圧延のままおよび鍛造ままでは必要な寸法精度が得られず、また1200N/mm2以上の強度を得ることが困難になるので、強伸線加工が必要となる。また強伸線加工によって一部のパーライト中のセメンタイトが微細に分散され、水素トラップ能力を向上させると共に、伸線方向に沿って組織が並ぶことによって亀裂の進展の抵抗になる(亀裂伝播方向は伸線方向に垂直である)。
【0025】
本発明の高強度線材は、Cを0.50〜1.0%含む中炭素鋼を想定したものであるが、C含有量の範囲限定は、以下の通りである。
【0026】
C:0.50〜1.0%
Cは鋼の強度確保の為に必要且つ経済的な元素であり、C含有量を増加させるにつれて強度が増加する。目標強度を確保するためには、Cは0.50%以上含有させる必要がある。しかしながら、C含有量が1.0%を超えると、初析セメンタイトの析出量が増加し、靭延性の低下が顕著に現れ、伸線加工性を劣化させる。C含有量の好ましい下限は、0.65%であり、より好ましくは0.7%である。またC含有量の好ましい上限は、0.9%であり、より好ましくは0.85%である。最も望ましいのは共析成分鋼を用いるのが良い。
【0027】
本発明の高強度線材においては、上記の如く鋼材中のAl含有量を所定量未満に低減することによって優れた首下靭性が発揮できるものであるが、更にSi含有量を所定量未満に低減することによって優れた鍛造性も確保できる。少なくともAl含有量が上記の範囲を満足していれば、Si含有量は或る程度の多く含有させることも可能である。これらSiおよびAlの含有量の範囲限定理由は下記の通りである。尚、SiとAlの両方の含有量を所定量未満に低減して鍛造性および首下靭性の両特性を優れたものにできることは前述した通りである。
【0028】
Si:2.0%以下(0%を含む)
Siは鋼線の焼入れ性を向上させて初析セメンタイトの析出を抑える効果を発揮する。また脱酸剤としての作用が期待され、しかもフェライトに固溶して顕著な固溶強化作用も発揮する。これらの効果は、その含有量が増加するにつれて増大するが、Si含有量が過剰になると伸線後の鋼材の延性を低下させると共に、冷間圧造性が著しく低下させるので2.0%を上限とする。
【0029】
但し、上記の如く、優れた鍛造性を発揮させる為には、Si含有量を0.1%未満に抑制する必要がある。即ち、Siの含有量が増大するにつれて冷間加工性が低下する傾向を示し、また酸化物系の介在物が多く生成され、遅れ破壊発生の起点になり、耐遅れ破壊性を劣化させることにもなる。この様な観点から、耐遅れ破壊性と共に優れた鍛造性を発揮させる場合には、Si含有量は0.1%未満とする必要がある。尚、こうした観点からSi含有量の好ましい範囲は、0.05%以下、更に好ましい範囲は0.03%以下である。
【0030】
Al:0.005%未満(0%を含む)
優れた首下靭性を発揮させる為には、Al含有量を0.005%未満に抑制する必要がある。即ち、Alの含有量が増大するにつれて酸化物を形成して頭付きボルトに加工したときに、頭部首下で破断が起き易いので、この様な観点から、耐遅れ破壊性と共に優れた首下靭性を発揮させる場合のAl含有量は、0.005%未満とする必要がある。尚、こうした観点からAl含有量の好ましい範囲は、0.003%以下、更に好ましい範囲は0.001%以下である。
【0031】
本発明の高強度線材は、通常添加される各種元素(Cr,Co,Mn,Cu,Ni,Mo,Ti,Nb,V,W,B,N等)を含有しても良いことは勿論であるが、特に所定量のCrおよび/またはCoを含有させることは、初析セメンタイトの析出を抑制する上で有効である。必要によって添加する各元素の限定理由は下記の通りである。
【0032】
Cr:0.5%以下(0%を含まない)および/またはCo:0.5%以下(0%を含まない)
CrとCoは、Siと同様に初析セメンタイトの析出を抑制する効果があり、初析セメンタイトの低減を図る本発明の高強度線材における添加成分としては特に有効である。こうした効果は、いずれもその含有量が増加するほど増大するが、0.5%を超えて含有させてもその効果は飽和して不経済となるので、その上限を0.5%とした。尚、これらの元素の好ましい範囲は、0.05〜0.3%、更に好ましい範囲は0.1〜0.2%である。
【0033】
Mn:0.2〜1.0%
Mnは脱酸剤としての効果と、鋼線の焼入性を向上させて鋼線の断面積組織の均一性を高める効果を有する。これらの作用は0.2%以上含有させることによって有効に発揮される。しかし、Mn量が過剰になると、Mnの偏析部にマルテンサイトやベイナイトなどの過冷組織が生成して伸線加工性を劣化させるので、Mn量の上限は1.0%とした。尚、Mn含有量の好ましい下限は、0.40%であり、より好ましくは0.45%とするのが良い。またMn含有量に好ましい上限は、0.7%であり、より好ましくは0.55%とするのが良い。
【0034】
Cu:0.5%以下(0%を含まない)
Cuは析出硬化作用によって鋼線の高強度化に寄与する元素である。しかし過剰に添加すると粒界脆化を起こして、耐遅れ破壊性を劣化させる原因となるので0.5%を上限とする。尚、Cu含有量の好ましい下限は、0.05%であり、より好ましくは0.1%とするのが良い。またCu含有量の好ましい上限は、0.3%であり、より好ましくは0.2%とするのが良い。
【0035】
Ni:1.0%以下(0%を含まない)
Niは鋼線の強度上昇にはあまり寄与しないが、伸線材の靭性を高める効果を有する。しかし、Ni量が過剰になると、変態終了時間が長くなり過ぎて、設備の大型化、生産性の低下を来たすため、1.0%を上限とする。尚、Ni含有量の好ましい下限は、0.05%であり、より好ましくは0.1%とするのが良い。またNi含有量の好ましい上限は、0.5%であり、より好ましくは0.3%とするのが良い。
【0036】
Mo,Ti,Nb,VおよびWよりなる群から選ばれる1種以上:合計で0.01〜0.5%
これらの元素は、いずれも微細な炭・窒化物を形成して耐遅れ破壊性の向上に寄与する。またこれらの窒化物および炭化物は、結晶粒微細の微細化に有効である。こうした効果を発揮させる為には、合計で0.01%以上含有させる必要があるが、過剰に含有させると耐遅れ破壊性および靭性を阻害するので、合計で0.5%以下にする必要がある。尚、これらの元素含有量の好ましい下限は、合計で0.02%であり、より好ましくは0.03%とするのが良い。また好ましい上限は、合計で0.3%であり、より好ましくは0.1%とするのが良い。
【0037】
B:0.0005〜0.003%
Bは鋼の焼入れ性向上の為に添加されるが、その作用を発揮させる為には、0.0005%以上含有させる必要がある。しかしながら、0.003%を超えて過剰に含有すると却って靭性を阻害する。尚、B含有量の好ましい下限は0.0010%であり、好ましい上限は0.0025%である。
【0038】
N:0.015%以下(0%を含まない)
NはAlNやTiNの窒化物形成によって結晶粒の微細化ひいては耐遅れ破壊性の向上に好影響を与える。しかし、過剰に含有すると窒化物が増加し過ぎて伸線性に悪影響を及ぼすだけでなく、固溶Nが伸線中の時効を促進することがあるので、0.015%以下にする必要がある。尚、N含有量の好ましい上限は、0.007%であり、より好ましくは0.005%以下にするのが良い。
【0039】
本発明の高強度線材の化学成分組成は上記の通りであり、残部は実質的に鉄からなるものである。ここで「実質的に鉄」とは、本発明の高強度線材にはFe以外にもその特性を阻害しない程度の微量成分(許容成分)をも含み得るものであり、こうした許容成分としては例えばCa,Zr,Pb,Bi,Te,As,Sn,Sb等の元素が挙げられる。またその特性を更に良好にするという観点からして、P、SおよびOの不純物については下記の様に抑制することが好ましい。
【0040】
P:0.03%以下(0%を含む)
Pは粒界偏析を起こして、耐遅れ破壊性を劣化させる元素である。そこでP含有量を0.03%以下とすることにより、耐遅れ破壊性の向上が図れる。尚、P含有量は、0.015%以下に低減するのが好ましく、より好ましくは0.01%以下、更に好ましくは0.005%以下とするのが良い。
【0041】
S:0.03%以下(0%を含む)
Sは鋼中でMnSを形成し、応力が負荷されたときにこのMnSが応力集中箇所となる。従って、耐遅れ破壊性の改善にはS含有量をできるだけ減少させることが必要となり、こうした観点から0.03%以下とするのが良い。尚S含有量は、0.015%以下に低減するのが好ましく、より好ましく0.01%以下、更に好ましくは0.005%以下とするのが良い。
【0042】
O:0.005%以下(0%を含む)
Oは常温では鋼にほとんど固溶せず、硬質の酸化物系介在物として存在し、伸線時にカッピー断線を引き起こす原因となる。従って、O含有量は極力少なくすべきであり、少なくとも0.005%以下に抑える必要がある。尚、O含有量は、0.003%以下に低減することが好ましく、より好ましくは0.002%以下に低減するのが良い。
【0043】
本発明の高強度線材は、上記した各製造方法によって製造することができるが、各方法における作用は下記の通りである。まず上記の様な化学成分組成を有する鋼材を用い、この鋼材の圧延または鍛造終了温度が800℃以上となる様に熱間圧延または鍛造を行なった後、平均冷却速度V(℃/秒)が下記(1)を満足する様にして400℃まで連続冷却し、引き続き室温まで放冷する。
166×(線径:mm)− 1.4≦V≦288×(線径:mm)− 1.4 … (1)
この工程によって、通常の圧延材より均質なパーライト組織が得られ、伸線前の強度上昇が図れる。圧延または鍛造終了温度が低すぎると、オーステナイト化が不十分となり、均質なパーライト組織が得られなくなるので、上記終了温度は800℃以上とする必要がある。この温度の好ましい範囲は850〜950℃程度であり、更に好ましくは850〜900℃である。
【0044】
上記平均冷却速度Vが166×(線径:mm)-1.4よりも小さくなると、均質なパーライト組織が得られないばかりか、初析フェライトあるいは初析セメンタイトが生成し易くなる。また平均冷却速度Vが288×(線径:mm)-1.4よりも大きくなると、ベイナイトやマルテンサイトが生成し易くなる。尚、こうした平均冷却速度Vで冷却するときの冷却終了温度を400℃までとしたのは、組織変態が十分終了する温度との理由からである。
【0045】
また本発明の高強度線材は、上記の様な化学成分組成を有する鋼材を用い、この鋼材を800℃以上に加熱後、急冷し、500〜650℃まで急冷し、その温度で恒温保持(パテンティング処理)することにより、通常の圧延材より均質なパーライト組織が得られ、伸線前の強度上昇が図れる。
【0046】
この方法において、鋼材加熱温度の規定範囲については、上記圧延または鍛造終了温度と同じ理由で800℃以上とする必要がある。またこの加熱温度の好ましい範囲は、上記と同様である。パテンティング処理は、ソルトバス、鉛、流動層等を利用し、加熱した線材をできるだけ速い冷却速度で急冷することが望ましい。また、均質なパーライト組織を得るには、500〜650℃で恒温変態することが必要である。また、この恒温保持温度の好ましい温度範囲は、550〜600℃であり、最も好ましい恒温保持温度はTTT線図のパーライトノーズ付近の温度である。
【0047】
一方、鋼材の圧延または鍛造終了温度が800℃以上となる様に熱間圧延または熱間鍛造した後、5℃/秒以上の平均冷却速度で520〜750℃の温度まで冷却し、その温度から1.0℃/秒以下の平均冷却速度で200秒以上保持し、引き続き放冷することによっても、通常の圧延材よりも均質なパーライト組織が得られ、伸線前の強度上昇が図れる。こうした方法を採用するときの各工程における作用は下記の通りである。
【0048】
まず圧延または鍛造終了温度の規定範囲については、上記鋼材加熱温度と同様の理由で800℃以上と定めた。またこの加熱温度の好ましい範囲は、上記と同様である。熱間圧延後または熱間鍛造後の冷却速度が遅すぎると、冷却中にフェライト変態を引き起こす可能性があるので、できるだけ速い冷却速度で冷却することが好ましい。そこで、このときの冷却速度は5℃/秒以上と規定した。この冷却速度の好ましい範囲は10℃/秒以上であり、より好ましくは30℃/秒以上である。この冷却によって520〜750℃まで冷却する必要があるが、この冷却終了温度が520℃未満または750℃を超えると、その後の徐冷によってパーライト以外の組織が生成し易くなる。
【0049】
上記で冷却した後は、均質なパーライト組織を得るという観点から、その温度(520〜750℃の温度:徐冷開始温度)から1.0℃/秒以下の平均冷却速度で冷却(徐冷)しつつ200秒以上保持する必要がある。このとき平均冷却速度が1.0℃/秒よりも速くなったり、保持時間が200秒未満になると、パーライト組織が変態する前に放冷されて、ベイナイトやマルテンサイトが生成し易くなる。尚、この冷却速度の好ましい範囲は、0.5℃/秒以下であり、より好ましくは0.2℃/秒以下とするのが良い。また上記保持温度の好ましい範囲は、300秒以上であり、より好ましくは600秒以上とするのが良い。またTTT線図のパーライトノーズ付近の温度に長く保持することが最も望ましい。
【0050】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変形することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0051】
【実施例】
実施例1
下記表1に示す化学成分組成を有する供試鋼を用い、線径:11mmφまで圧延終了温度が約940℃になるように熱間圧延した後、下記表2に示す平均冷却速度で衝風冷却した。その後、線径:7.06mmφまで伸線した(伸線率:59%)。
【0052】
【表1】
【0053】
得られた各種線材を用い、図1に示すM8×P1.25のスタッドボルトを作製し、遅れ破壊試験を行った。遅れ破壊試験は、ボルトを酸中に浸漬後(15%HCl×30分)、水洗・乾燥して大気中で応力負荷(負荷応力は引張強さの90%)し、100時間後の破断の有無で評価した。また、初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイトまたはパーライト組織の分類を下記の方法で行ない、各組識の面積率を求めた。更に、パーライトノジュールサイズおよびパーライトラメラー間隔を、下記の各方法で測定した。このとき比較の為に、一部のものについては焼入れ・焼戻しを行って100%焼戻しマルテンサイト組織にしたものについても遅れ破壊試験を行った。
【0054】
また上記の伸線した線材を使用し、常温で端面拘束圧縮試験により圧縮特性についても評価した。このとき、変形抵抗は圧下率50%のときの値で比較し、変形能は、割れ発生を起こさない最低の圧下率とした。
【0055】
(各組識の分類方法)
線材の横断面を埋め込み、研磨後、5%ピクリン酸アルコール液に15〜30秒腐食した後、走査型電子顕微鏡(SEM)によってD/4(Dは直径)部を組織観察した。1000〜3000倍で5〜10視野撮影し、パーライト組織部分を確定した後、画像解析装置によって各組識の面積率を求めた。尚パーライト組織と区別がつきにくい、ベイナイト組織や初析フェライト組織については図2(図面代用顕微鏡組織写真)に示す様な組織をベイナイト組織とし、図3(図面代用顕微鏡組織写真)に示す様な組織を初析フェライト組織と判断した。これらの組織の傾向として、初析フェライトと初析セメンタイトは、旧オーステナイト結晶粒界に沿って針状に析出し、マルテンサイトは塊状に析出していた。
【0056】
(パーライトノジュールサイズの測定方法)
線材の横断面を埋め込み、研磨後、1〜2%のナイタール液に2〜10秒間浸漬した後、光学顕微鏡によってD/4(Dは直径)部を組織観察した。パーライトノジュールの粒度番号は、JIS G0551またはJIS G0552のオーステナイト結晶粒度またはフェライト結晶粒度と同じ単位(粒度番号)で規定した。
【0057】
(パーライトラメラー間隔の測定方法)
線材の横断面を埋め込み、研磨後、5%のピクリン酸アルコール液に15〜30秒間浸漬して腐食させた後、走査型電子顕微鏡(SEM)によってD/4(Dは直径)部を組織観察した。D/4部付近のパーライト組織中でラメラー間隔の最も狭いと思われる部分を5000〜100000倍で10視野撮影し、夫々のラメラー間隔を垂直に横切る線の長さを求めてラメラー間隔を測定した。そして10視野の平均値をパーライト平均ラメラー間隔とした。
【0058】
各線材の組織を平均冷却速度Vと共に下記表2に、遅れ破壊試験結果および圧縮特性を伸線条件および機械的特性と共に下記表3に夫々示す。尚平均冷却速度Vの適正な範囲[前記(1)式を満足する範囲]は、線径が11.0mmのときは5.78≦V≦10.03(℃/秒)である。
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
実施例2
下記表4に示す化学成分組成を有する供試鋼を用い、線径:8〜14mmφまで圧延終了温度が約940℃になるように熱間圧延した後、平均冷却速度を4.0〜12.6(下記表5)の範囲で衝風冷却した。その後、線径:7.06mmφまで伸線した(伸線率:22〜75%)。
【0062】
【表4】
【0063】
得られた各種線材を用い、前記図1に示したM8×P1.25のスタッドボルトを作製し、遅れ破壊試験を実施例1と同様にして行った。また、初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイトまたはパーライト組織の分類を前記した方法で行ない、各組識の面積率を求めた。更に、パーライトノジュールサイズおよびパーライトラメラー間隔を、前記した方法で測定した。このとき比較の為に、一部のものについては焼入れ・焼戻しを行って100%焼戻しマルテンサイト組織にしたものについても遅れ破壊試験を行った。
【0064】
また首下靭性について、JIS B1501の「くさび引張試験」によって評価した。まず上記の伸線した線材を使用し、首下R部が0.1mmとなる六角頭付きボルトを冷間圧造により作製し、そのボルトを用いて6°の角度を有するくさびを入れ、くさび引張試験を行ない、首下部での破断状況を確認した。そして、試験は各鋼材につき100本づつ行ない、首下部の破断確率を求めた。
【0065】
各線材の組織を平均冷却速度と共に下記表5に、遅れ破壊試験結果およびくさび引張試験結果を伸線条件および機械的特性と共に下記表6に夫々示す。尚平均冷却速度Vの適正な範囲[前記(1)式を満足する範囲]は、線径が14.0mmのときに4.12≦V≦7.16(℃/秒)、線径が11.0mmのときに5.78≦V≦10.03(℃/秒)、線径が8.0mmのときに9.03≦V≦15.67(℃/秒)である。上記と同じである。
【0066】
【表5】
【0067】
【表6】
【0068】
実施例3
前記表4に示した供試鋼Lを用い、線径11.0mmφまで圧延終了温度が約940℃になる様に熱間圧延した後急冷し、下記表7に示すパテンティング処理(加熱温度:750〜940℃、恒温変態:495〜665℃×4分)した。その後、線径:7.06mmφまで伸線した(伸線率:59%)。
【0069】
【表7】
【0070】
得られた各種線材を用い、前記図1に示したM8×P1.25のスタッドボルトを作製し、遅れ破壊試験を実施例1と同様にして行った。またおよびくさび引張試験についても、実施例2と同様にして行なった。各線材の組織を前記表7に併記するとともに、遅れ破壊試験結果およびくさび引張試験結果を伸線条件および機械的特性と共に下記表8に夫々示す。
【0071】
【表8】
【0072】
実施例4
前記表4に示した供試鋼Lを用い、下記表9に示す圧延条件にて線径:11mmφまで熱間圧延した。その後、線径:7.06mmφまで伸線した(伸線率:59%)。
【0073】
【表9】
【0074】
得られた各種線材を用い、前記図1に示したM8×P1.25のスタッドボルトを作製し、遅れ破壊試験を実施例1と同様にして行った。またくさび引張試験を実施例2と同様にして行なった。各線材の組織を下記表10に、遅れ破壊試験結果およびくさび引張試験結果を伸線条件および機械的特性と共に下記表11に夫々示す。
【0075】
【表10】
【0076】
【表11】
【0077】
これらの結果から明らかな様に、本発明鋼の要件を満足する高強度線材を使用して製造したボルトは、引張強さ1200N/mm2以上であっても優れた遅れ破壊特性を有し、しかも首下靭性にも優れていることが分かる。
【0078】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、引張強度が1200N/mm2以上でありながら、耐遅れ破壊性と共に鍛造性や首下靭性にも優れた高強度線材、およびその様な高強度線材を製造するための有用な方法が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において遅れ破壊試験に供したボルトの形状を示す概略説明図である。
【図2】ベイナイト組織を示す図面代用顕微鏡写真である。
【図3】初析フェライト組織を示す図面代用顕微鏡写真である。
Claims (6)
- C:0.50〜1.0%(質量%の意味、以下同じ)、
Si:2.0%以下(0%を含む)、
Mn:0.2〜1.0%、
P :0.03%以下(0%を含む)、
S :0.03%以下(0%を含む)、
N :0.015%以下(0%を含まない)、
O :0.005%以下(0%を含む)
を含有すると共に、Al:0.005%未満に抑制され、残部鉄および不可避不純物である鋼からなる線材であって、
初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上の組織の生成を抑制してパーライト組織の面積率を80%以上としたものであり、且つ強伸線加工によって1200N/mm2以上の強度と優れた耐遅れ破壊性を有する様にしたものであることを特徴とする耐遅れ破壊性とボルトに加工した時の首下靭性に優れた高強度線材。 - C:0.50〜1.0%、
Mn:0.2〜1.0%、
P :0.03%以下(0%を含む)、
S :0.03%以下(0%を含む)、
N :0.015%以下(0%を含まない)、
O :0.005%以下(0%を含む)
を含有すると共に、Si:0.1%未満およびAl:0.005%未満に夫々抑制され、残部鉄および不可避不純物である鋼からなる線材であって、
初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上の組織の生成を抑制してパーライト組織の面積率を80%以上としたものであり、且つ強伸線加工によって1200N/mm2以上の強度と優れた耐遅れ破壊性を有する様にしたものであることを特徴とする耐遅れ破壊性と鍛造性およびボルトに加工した時の首下靭性に優れた高強度線材。 - Cr:0.5%以下(0%を含まない)および/またはCo:0.5%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1または2に記載の高強度線材。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の高強度線材を製造するに当たり、鋼材の圧延または鍛造終了温度が800℃以上となる様に熱間圧延または鍛造を行った後、平均冷却速度V(℃/秒)が下記(1)を満足する様にして400℃まで連続冷却し、引き続き室温まで放冷することにより、初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上の組織の生成を抑制してパーライト組織の面積率を80%以上とし、その後強伸線加工によって1200N/mm2以上の強度にすることを特徴とする耐遅れ破壊性とボルトに加工した時の首下靭性、または耐遅れ破壊性と鍛造性およびボルトに加工した時の首下靭性に優れた高強度線材の製造方法。
166×(線径:mm)− 1.4≦V≦288×(線径:mm)− 1.4 … (1) - 請求項1〜3のいずれかに記載の高強度線材を製造するに当たり、鋼材を800℃以上に加熱後、500〜650℃の室温まで急冷し、その温度で恒温保持することにより、初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上の組織の生成を抑制してパーライト組織の面積率を80%以上とし、その後強伸線加工によって1200N/mm2以上の強度にすることを特徴とする耐遅れ破壊性とボルトに加工した時の首下靭性、または耐遅れ破壊性と鍛造性およびボルトに加工した時の首下靭性に優れた高強度線材の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の高強度線材を製造するに当たり、鋼材の圧延または鍛造終了温度が800℃以上となる様に熱間圧延または熱間鍛造した後、5℃/秒以上の平均冷却速度で520〜750℃の温度まで冷却し、その温度から1.0℃/秒以下の冷却速度で200秒以上かけて冷却し、引き続き放冷することにより、初析フェライト、初析セメンタイト、ベイナイトおよびマルテンサイトの1種または2種以上の組織の生成を抑制してパーライト組織の面積率を80%以上とし、その後強伸線加工によって1200N/mm2以上の強度にすることを特徴とする耐遅れ破壊性とボルトに加工した時の首下靭性、または耐遅れ破壊性と鍛造性およびボルトに加工した時の首下靭性に優れた高強度線材の製造方法。
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