JP2002241899A - 耐遅れ破壊性と鍛造性に優れた高強度鋼線およびその製造方法 - Google Patents

耐遅れ破壊性と鍛造性に優れた高強度鋼線およびその製造方法

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JP2002241899A
JP2002241899A JP2001034334A JP2001034334A JP2002241899A JP 2002241899 A JP2002241899 A JP 2002241899A JP 2001034334 A JP2001034334 A JP 2001034334A JP 2001034334 A JP2001034334 A JP 2001034334A JP 2002241899 A JP2002241899 A JP 2002241899A
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strength steel
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strength
delayed fracture
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Yuichi Namimura
裕一 並村
Nobuhiko Ibaraki
信彦 茨木
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Kobe Steel Ltd
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Kobe Steel Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 引張強度が1200N/mm2以上でありな
がら、耐遅れ破壊性と共に鍛造性にも優れた高強度鋼
線、およびその様な高強度鋼線を製造するための有用な
方法を提供する。 【解決手段】 C:0.7〜1.2%を含有する鋼材か
らなり、ベイナイト組織の面積率を80%以上としたも
のであり、且つ線材を強伸線加工することによって12
00N/mm2以上の強度と優れた耐遅れ破壊性を有す
る様にしたものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用や各種産
業機械用として使用されるボルト用鋼に適した高強度鋼
線、およびその製造方法に関するものであり、特に強度
(引張強度)が1200N/mm2以上でありながら耐
遅れ破壊性と共に鍛造性にも優れた高強度鋼線、および
その様な高強度鋼線を製造するための有用な方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】一般に高強度ボルト用鋼には中炭素低合
金鋼(SCM435、SCM440、SCr440等)
が使用され、こうした鋼材を所定のボルト形状に成形し
た後、焼入れ・焼戻し処理により必要な強度を確保する
様にしている。しかしその一方で、引張強度が約120
0N/mm2を超える領域になると遅れ破壊が発生する
危険があり、使用に制約を受けている。
【0003】遅れ破壊は、非腐食性環境で起こるものと
腐食性環境で起こるものがあり、種々の要因が複雑に絡
み合って起こしている原因を特定することは難しい。特
に遅れ破壊性を左右するものとしては、焼もどし温度、
組織、材料硬さ、結晶粒度、各種合金元素等の関与が一
応認められているものの、遅れ破壊を防止する手段が確
立されている訳ではなく、試行錯誤的に種々の方法が提
案されているに過ぎないのが実状である。
【0004】ところで、球状化焼鈍後に伸線加工し比較
的強度の低い鋼線をボルト加工し、その後焼入れ・焼戻
しにより必要強度を得る方法ではなく、非調質ボルト用
鋼の様に、強度の高い鋼材をボルト加工する場合には、
ボルト加工時の変形抵抗が高くなり、工具寿命を大きく
低下させ、生産性を阻害することがある。従って、こう
した加工法を適用する場合には、ボルト用鋼に要求され
る特性として鍛造性が良好であることが必要である。
【0005】本発明者らは、耐遅れ破壊性を改善する技
術として、例えば特開平11−315347号、同11
−315348号、同11−315349号等の技術も
提案している。これらの技術では、パーライトを主体と
する組織からなる線材を強伸線加工して引張強度を12
00N/mm2以上にすることによって、耐遅れ破壊性
を大幅に改善した鋼線を実現したものである。しかしな
がら、これらの鋼線は変形抵抗が高く(鍛造性が低
く)、ボルト成形時の工具寿命の低下が懸念されるとい
う若干の問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこの様な事情
に着目してなされたものであって、その目的は、引張強
度が1200N/mm2以上でありながら、耐遅れ破壊
性と共に鍛造性にも優れた高強度鋼線、およびその様な
高強度鋼線を製造するための有用な方法を提供すること
にある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成し得た本
発明の高強度鋼線とは、C:0.7〜1.2%を含有す
る鋼材からなり、ベイナイト組織の面積率を80%以上
としたものであり、且つ線材を強伸線加工することによ
って1200N/mm2以上の強度と優れた耐遅れ破壊
性を有する様にしたものである点に要旨を有するもので
ある。尚、本発明において「線材」とは、棒状または線
状に熱間圧延された鋼材およびその後熱処理された鋼材
を意味し、「鋼線」とは主として伸線等の冷間加工を施
したものを意味する。
【0008】上記本発明の高強度鋼線において、上記C
の他の具体的な化学成分としては、Mn:0.2〜1.
0%およびSi:1.0%以下(0%を含まない)を夫
々含有すると共に、P:0.03%以下(0%を含む)
およびS:0.03%以下(0%を含む)に夫々抑制し
たものであることが好ましい。また、必要によって
(a)Cr:1.0%以下(0%を含まない)、(b)
Al:0.1%以下(0%を含まない)等を含有させる
ことが好ましい。更に、前記ベイナイト組織における結
晶粒径が、オーステナイト結晶粒度番号でNo.7以上
に相当するものであることが好ましい。
【0009】一方、上記の様な本発明の高強度鋼線を製
造するに当たっては、鋼材を800〜1000℃に加熱
後、300〜500℃の温度まで急冷し、その温度で恒
温保持することにより、初析フェライト、初析セメンタ
イト、パーライトおよびマルテンサイトの1種または2
種以上の組織生成を抑制してベイナイト組織の面積率を
80%以上とし、その後強伸線加工によって1200N
/mm2以上の強度にする様にすれば良い。
【0010】また、本発明の高強度鋼線は、鋼材の圧延
または鍛造終了温度が800〜1000℃となる様に熱
間圧延または鍛造を行った後、300〜500℃の温度
まで急冷し、その温度から1.0℃/秒以下の平均冷却
速度で200秒以上かけて冷却し、引き続き室温まで放
冷することにより、初析フェライト、初析セメンタイ
ト、パーライトおよびマルテンサイトの1種または2種
以上の組織生成を抑制してベイナイト組織の面積率を8
0%以上とし、その後強伸線加工によって1200N/
mm2以上の強度にする様にしても製造できる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明者らは、耐遅れ破壊性と共
に鍛造性をも良好な高強度鋼線を実現するべく、様々な
角度から検討を加えた。その結果、組織をある制約を持
ったベイナイト組織とし、強伸線加工により1200N
/mm2以上の強度とすれば、耐遅れ破壊性をそれほど
低下させることなく良好な鍛造性が発揮されることを見
出し、本発明を完成した。
【0012】本発明の高強度鋼線は、上記の如く初析フ
ェライト、初析セメンタイト、パーライトおよびマルテ
ンサイトの1種または2種以上の組織生成を抑制してベ
イナイト組織の面積率を80%以上とする必要がある。
上記組織のうち、初析フェライトと初析セメンタイトが
多く生成すると、伸線時に縦割れを起こし伸線できなく
なり、強伸線加工によって1200N/mm2以上の強
度を得ることができなくなる。また初析セメンタイトと
マルテンサイトは、伸線時に断線を引き起こすので少な
くする必要がある。更に、パーライトはベイナイトに比
べて変形抵抗が高く、良好な鍛造性を発揮できなくなる
ので少なくする必要がある。
【0013】これに対してベイナイト組織は、焼戻しマ
ルテンサイト鋼よりも耐遅れ破壊性が良好であるばかり
でなく、パーライト組織より加工硬化しにくいため、鍛
造性も良好であり、できるだけ多くする必要がある。こ
うしたことから、初析フェライト、初析セメンタイト、
パーライトおよびマルテンサイト等の組織を少なくとも
1種の組織の生成を抑制して(即ち、20%未満にし
て)、ベイナイト組織の面積率を80%以上とする必要
がある。即ち、初析フェライト、初析セメンタイト、パ
ーライトおよびマルテンサイト等の組織の少なくとも1
種をできるだけ少なくして、その合計面積率を20%以
下となる様にしてベイナイト組織の面積率を80%以上
にする必要がある。ベイナイト組織の面積率は、好まし
くは90%以上とするのが良く、より好ましくは95%
以上のパーライト組織とするのが良い。
【0014】またベイナイト組織における結晶粒径は、
オーステナイト結晶粒度番号(JIS G0551)で
No.7以上に相当するものであることが望ましい。即
ち、ベイナイト組織の結晶を微細にすると、粒界に負荷
する応力が低減されると共に、粒界強度が上昇する。こ
れによって遅れ破壊時に見られる粒界破壊が抑制されて
耐遅れ破壊性が向上する。また、ベイナイト組織の結晶
を微細化することによって、延性および靭性が向上し、
こうした観点からも耐遅れ破壊性が向上する。
【0015】本発明の高強度鋼線は、Cを0.7〜1.
2%含む中炭素鋼を想定したものであるが、C含有量の
範囲限定は、以下の通りである。
【0016】C:0.7〜1.2% Cは鋼材の強度確保の為に必要且つ経済的な元素であ
り、C含有量を増加させるにつれて強度が増加する。目
標強度を確保するためには、Cは0.7%以上含有させ
る必要がある。しかしながら、C含有量が1.2%を超
えると、初析セメンタイトの析出量が増加し、靭延性の
低下が顕著に現れ、伸線加工性を劣化させる。C含有量
の好ましい下限は、0.8%であり、より好ましくは
0.9%である。またC含有量の好ましい上限は、1.
1%であり、より好ましくは1.0%である。
【0017】本発明の高強度線材において、上記Cの他
の具体的な化学成分としては、Mn:0.2〜1.0%
およびSi:1.0%以下を夫々含有すると共に、P:
0.03%以下およびS:0.03%以下に夫々抑制し
たものであることが好ましい。これらの成分の範囲限定
理由は下記の通りである。
【0018】Mn:0.2〜1.0% Mnは脱酸剤としての効果と、鋼材の焼入性を向上させ
て鋼材の断面積組織の均一性を高める効果を有する。こ
れらの作用は0.2%以上含有させることによって有効
に発揮される。しかし、Mn量が過剰になると、Mnの
偏析部にマルテンサイトの過冷組織が生成して伸線加工
性を劣化させるので、Mn量の上限は1.0%とした。
尚、Mn含有量の好ましい下限は、0.3%であり、よ
り好ましくは0.5%とするのが良い。またMn含有量
に好ましい上限は、0.9%であり、より好ましくは
0.7%とするのが良い。
【0019】Si:1.0%以下(0%を含まない) Siは鋼材の焼入れ性を向上させて初析セメンタイトの
析出を抑える効果を発揮する。また脱酸剤としての作用
が期待され、しかもフェライトに固溶して顕著な固溶強
化作用も発揮する。これらの効果は、その含有量が増加
するにつれて増大するが、Si含有量が過剰になると伸
線後の鋼材の延性を低下させると共に、鍛造性が著しく
低下させるので1.0%を上限とする。尚、Si含有量
の好ましい上限は0.5%であり、より好ましくは0.
2%であり、更に好ましくは0.1以下とするのが良
い。
【0020】P:0.03%以下(0%を含む) Pは粒界偏析を起こして、耐遅れ破壊性を劣化させる元
素である。そこでP含有量を0.03%以下とすること
により、耐遅れ破壊性の向上が図れる。尚、P含有量
は、0.015%以下に低減するのが好ましく、より好
ましくは0.01%以下、更に好ましくは0.005%
以下とするのが良い。
【0021】S:0.03%(0%を含む) Sは鋼中でMnSを形成し、応力が負荷されたときにこ
のMnSが応力集中箇所となる。従って、耐遅れ破壊性
の改善にはS含有量をできるだけ減少させることが必要
となり、こうした観点から0.03%以下とするのが良
い。尚、S含有量は、0.015%以下に低減するのが
好ましく、より好ましく0.01%以下、更に好ましく
は0.005%以下とするのが良い。
【0022】本発明の高強度鋼線には、必要によって、
Cr:1.0%以下やAl:0.1%以下を含有させる
ことが好ましいが、これらの成分の範囲限定理由は下記
の通りである。
【0023】Cr:1.0%以下(0%を含まない) Crは、Siと同様に初析セメンタイトの析出を抑制す
る効果があり、初析セメンタイトの低減を図る本発明の
高強度鋼線における添加成分として有効である。こうし
た効果は、その含有量が増加するほど増大するが、1.
0%を超えて含有させてもその効果は飽和して不経済と
なるので、その上限を1.0%とした。尚、Cr含有量
の好ましい範囲は、0.1〜0.5%、更に好ましい範
囲は0.15〜0.3%である。
【0024】Al:0.1%以下(0%を含まない) Alは鋼中Nを捕捉してAlNを形成し、結晶粒を微細
化することによって耐遅れ破壊性の向上に寄与する。し
かしながら、Al含有量が過剰になって0.1%を超え
ると、窒化物および酸化物系介在物が生成し、伸線性を
低下させるので0.1%以下とするのが良い。尚、Al
含有量の好ましい範囲は0.01〜0.07%、更に好
ましい範囲は0.025〜0.05%である。
【0025】本発明の高強度鋼線は、通常添加される各
種元素(Cu,Ni,Co,Mo,Ti,Nb,V,
W,B,N等)を含有しても良いことは勿論であるが、
これら必要によって含有される各元素の限定理由は下記
の通りである。
【0026】Cu:0.5%(0%を含まない) Cuは析出硬化作用によって鋼材の高強度化に寄与する
元素である。しかし過剰に添加すると粒界脆化を起こし
て、耐遅れ破壊性を劣化させる原因となるので0.5%
を上限とする。尚、Cu含有量の好ましい下限は、0.
05%であり、より好ましくは0.1%とするのが良
い。またCu含有量の好ましい上限は、0.3%であ
り、より好ましくは0.2%とするのが良い。
【0027】Ni:1.0%以下(0%を含まない) Niは鋼材の強度上昇にはあまり寄与しないが、伸線材
の靭性を高める効果を有する。しかし、Ni含有量が過
剰になると、変態終了時間が長くなり過ぎて、設備の大
型化、生産性の低下を来たすため、1.0%を上限とす
る。尚、Ni含有量の好ましい下限は、0.05%であ
り、より好ましくは0.1%とするのが良い。またNi
含有量の好ましい上限は、0.5%であり、より好まし
くは0.3%とするのが良い。
【0028】Co:0.5%以下(0%を含まない) Coは、SiやCrと同様に初析セメンタイトの析出を
抑制する効果があり、初析セメンタイトの低減を図る本
発明の高強度鋼線における添加成分としては特に有効で
ある。こうした効果は、その含有量が増加するほど増大
するが、0.5%を超えて含有させてもその効果は飽和
して不経済となるので、その上限を0.5%とした。
尚、Co含有量の好ましい範囲は、0.05〜0.3
%、更に好ましい範囲は0.1〜0.2%である。
【0029】Mo,Ti,Nb,VおよびWよりなる群
から選ばれる1種以上:合計で0.01〜0.5% これらの元素は、いずれも微細な炭・窒化物を形成して
耐遅れ破壊性の向上に寄与する。またこれらの窒化物お
よび炭化物は、結晶粒の微細化に有効である。こうした
効果を発揮させる為には、合計で0.01%以上含有さ
せる必要があるが、過剰に含有させると耐遅れ破壊性お
よび靭性を阻害するので、合計で0.5%以下にする必
要がある。尚、これらの元素含有量の好ましい下限は、
合計で0.02%であり、より好ましくは0.03%と
するのが良い。また好ましい上限は、合計で0.3%で
あり、より好ましくは0.1%とするのが良い。
【0030】B:0.0005〜0.003% Bは鋼の焼入れ性向上の為に添加されるが、その作用を
発揮させる為には、0.0005%以上含有させる必要
がある。しかしながら、0.003%を超えて過剰に含
有すると却って靭性を阻害する。尚、B含有量の好まし
い下限は0.001%であり、好ましい上限は0.00
25%である。
【0031】N:0.015%(0%を含まない) NはAlNやTiNの窒化物形成によって結晶粒の微細
化ひいては耐遅れ破壊性の向上に好影響を与える。しか
し、過剰に含有すると窒化物が増加し過ぎて伸線性に悪
影響を及ぼすだけでなく、固溶Nが伸線中の時効を促進
することがあるので、0.015%以下にする必要があ
る。尚、N含有量の好ましい上限は、0.007%であ
り、より好ましくは0.005%以下にするのが良い。
【0032】本発明の高強度鋼線の化学成分組成は上記
の通りであり、残部は実質的に鉄からなるものである。
ここで「実質的に鉄」とは、本発明の高強度鋼線にはF
e以外にもその特性を阻害しない程度の微量成分(許容
成分)をも含み得るものであり、こうした許容成分とし
ては例えばCa,Zr,Pb,Bi,Te,As,S
n,Sb等の元素が挙げられる。またその特性を更に良
好にするという観点からして、不純物であるOについて
は下記の様に抑制することが好ましい。
【0033】O:0.005%以下(0%を含む) Oは常温では鋼にほとんど固溶せず、硬質の酸化物系介
在物として存在し、伸線時にカッピー断線を引き起こす
原因となる。従って、O含有量は極力少なくすべきであ
り、少なくとも0.005%以下に抑える必要がある。
尚、O含有量は、0.003%以下に低減することが好
ましく、より好ましくは0.002%以下に低減するの
が良い。
【0034】本発明の高強度鋼線は、上記した各製造方
法によって製造することができるが、各方法における作
用は下記の通りである。まず上記の様な化学成分組成を
有する鋼材を用い、この鋼材を800〜1000℃に加
熱後、300〜500℃まで急冷し、その温度で恒温保
持(パテンティング処理)することにより、通常の圧延
材より均質なベイナイト組織が得られ、伸線前(線材)
の強度上昇が図れる。
【0035】この方法において、鋼材加熱温度が低過ぎ
るとオーステナイト化が不十分となり、均質なベイナイ
ト組織が得られなくなるので、上記加熱温度は800℃
以上とする必要がある。また、この加熱温度が高くなり
過ぎると、オーステナイト結晶粒が粗大化するので10
00℃以下とする必要がある。またこの加熱温度の好ま
しい範囲は、850〜950℃程度であり、更に好まし
くは870〜900℃程度である。
【0036】恒温保持保処理(パテンティング処理)
は、ソルトバス、鉛、流動層等を利用し、加熱した線材
をできるだけ速い冷却速度で急冷することが望ましい。
また、均質なベイナイト組織を得るには、300〜50
0℃で恒温変態することが必要である。また、この恒温
保持温度の好ましい温度範囲は、350〜450℃であ
り、更に好ましい温度範囲は400〜430℃である。
【0037】一方、鋼材の圧延または鍛造終了温度が8
00〜1000℃となる様に熱間圧延または熱間鍛造し
た後、300〜500℃の温度まで急冷し、その温度か
ら1.0℃/秒以下の平均冷却速度で200秒以上保持
し、引き続き放冷することによっても、通常の圧延材よ
りも均質なベイナイト組織が得られ、伸線前の強度上昇
が図れる。こうした方法を採用するときの各工程におけ
る作用は下記の通りである。
【0038】まず圧延または鍛造終了温度の規定範囲に
ついては、上記鋼材加熱温度と同様の理由で800〜1
000℃と定めた。またこの終了温度の好ましい範囲
は、上記と同様である。圧延後または熱間鍛造後の冷却
速度が遅すぎると、冷却中にフェライト変態を引き起こ
す可能性があるので、できるだけ速い冷却速度で急冷す
ることが好ましく、このときの平均冷却速度は5℃/秒
以上であることが好ましい。この急冷によって300〜
500℃まで冷却する必要があるが、この冷却終了温度
が300℃未満または500℃を超えると、その後の徐
冷によってベイナイト以外の組織が生成し易くなる。
【0039】上記で急冷した後は、均質なベイナイト組
織を得るという観点から、その温度(300〜500℃
の温度:徐冷開始温度)から1.0℃/秒以下の平均冷
却速度で冷却(徐冷)しつつ200秒以上保持する必要
がある。このとき平均冷却速度が1.0℃/秒よりも速
くなったり、保持時間が200秒未満になると、ベイナ
イト組織が変態する前に放冷されて、マルテンサイトが
生成し易くなる。尚、この冷却速度の好ましい範囲は、
0.5℃/秒以下であり、より好ましくは0.2℃/秒
以下とするのが良い。また上記保持温度の好ましい範囲
は、300秒以上であり、より好ましくは600秒以上
とするのが良い。
【0040】尚、いずれの方法を採用するにしても、圧
延のままおよび鍛造ままでは必要な寸法精度が得られ
ず、また1200N/mm2以上の強度を得ることが困
難になるので、最終工程としての強伸線加工が必要とな
る。
【0041】以下、本発明を実施例によって更に詳細に
説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもの
ではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変形することは
いずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0042】
【実施例】実施例1 下記表1に示す化学成分組成を有する供試鋼を用い、線
径:7mmφまで熱間圧延して線材とした後、下記表2
に示すパテンティング処理(加熱温度:750〜105
0℃、恒温変態:250〜560℃×4分)を行なっ
た。その後、線径:5.2mmφまで伸線して鋼線とし
た(伸線率:45%)。
【0043】
【表1】
【0044】得られた各種鋼線を用い、図1に示すM6
×P1.0のスタッドボルトを作製し、遅れ破壊試験を
行った。遅れ破壊試験は、ボルトを酸中に浸漬後(15
%HCl×30分)、水洗・乾燥して大気中で応力負荷
(負荷応力は引張強さの90%)し、100時間後の破
断の有無で評価した。また、初析フェライト、パーライ
ト、マルテンサイトおよびパーライト組織の分類を下記
の方法で行ない、各組識の面積率を求めた。更に、ベイ
ナイト組織の結晶粒径を、下記の方法で測定した。
【0045】また上記の伸線した鋼線を使用し、常温で
端面拘束圧縮試験により圧縮特性についても評価した。
このとき、変形抵抗は圧下率50%のときの値で比較
し、変形能は、割れ発生を起こさない最低の圧下率とし
た。
【0046】(各組識の分類方法)鋼線の横断面を埋め
込み、研磨後、5%ピクリン酸アルコール液に15〜3
0秒腐食した後、走査型電子顕微鏡(SEM)によって
D/4(Dは直径)部を組織観察した。1000〜30
00倍で5〜10視野撮影し、ベイナイト組織部分を確
定した後、画像解析装置によって各組識の面積率を求め
た。
【0047】各鋼線の組織をパテンティング条件と共に
下記表2に、遅れ破壊試験結果および圧縮特性を伸線条
件および機械的特性と共に下記表3に夫々示す。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】実施例2 前記表1に示した供試鋼Aを用い、下記表4に示す圧延
条件にて線径7mmφまで熱間圧延して線材とした。そ
の後、線径:5.2mmφまで伸線して鋼線とした(伸
線率:45%)。
【0051】
【表4】
【0052】得られた各種鋼線を用い、前記図1に示し
たM6×P1.0のスタッドボルトを作製し、遅れ破壊試
験を実施例1と同様にして行った。また圧縮特性試験に
ついても、を実施例1と同様にして行った。各鋼線の組
織を前記表4に併記するとともに、遅れ破壊試験結果お
よび圧縮特性を伸線条件および機械的特性と共に下記表
5に夫々示す。
【0053】
【表5】
【0054】これらの結果から明らかな様に、本発明鋼
の要件を満足する高強度鋼線を使用してボルトを製造し
た場合には、優れた鍛造性の下でボルトが得られると共
に、得られたボルトは引張強さ1200N/mm2以上
であっても優れた遅れ破壊特性を有していることが分か
る。
【0055】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、引
張強度が1200N/mm2以上でありながら、耐遅れ
破壊性と共に鍛造性にも優れた高強度鋼線、およびその
様な高強度鋼線を製造するための有用な方法が実現でき
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例において遅れ破壊試験に供したボルトの
形状を示す概略説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K032 AA01 AA06 AA11 AA27 AA29 AA31 BA02 CA01 CC03 CC04 CD01 CD06 4K043 AA02 AB05 AB06 AB10 AB15 AB27 BA04 BA06 CB02 CB03 DA02 FA12 FA13

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 C:0.7〜1.2%(質量%の意味、
    以下同じ)を含有する鋼材からなり、ベイナイト組織の
    面積率を80%以上としたものであり、且つ線材を強伸
    線加工することによって1200N/mm2以上の強度
    と優れた耐遅れ破壊性を有する様にしたものであること
    を特徴とする耐遅れ破壊性と鍛造性に優れた高強度鋼
    線。
  2. 【請求項2】 更にMn:0.2〜1.0%およびS
    i:1.0%以下(0%を含まない)を夫々含有すると
    共に、P:0.03%以下(0%を含む)およびS:
    0.03%以下(0%を含む)に夫々抑制したものであ
    る請求項1に記載の高強度鋼線。
  3. 【請求項3】 更にCr:1.0%以下(0%を含まな
    い)を含有するものである請求項1または2に記載の高
    強度鋼線。
  4. 【請求項4】 Al:0.1%以下(0%を含まない)
    を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の
    高強度鋼線。
  5. 【請求項5】 前記ベイナイト組織における結晶粒径
    が、オーステナイト結晶粒度番号でNo.7以上に相当
    するものである請求項1〜4のいずれかに記載の高強度
    鋼線。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかに記載の高強度
    鋼線を製造するに当たり、鋼材を800〜1000℃に
    加熱後、300〜500℃の温度まで急冷し、その温度
    で恒温保持することにより、初析フェライト、初析セメ
    ンタイト、パーライトおよびマルテンサイトの1種また
    は2種以上の組織生成を抑制してベイナイト組織の面積
    率を80%以上とし、その後強伸線加工によって120
    0N/mm2以上の強度にすることを特徴とする耐遅れ
    破壊性と鍛造性に優れた高強度鋼線の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜5のいずれかに記載の高強度
    鋼線を製造するに当たり、鋼材の圧延または鍛造終了温
    度が800〜1000℃となる様に熱間圧延または鍛造
    を行った後、300〜500℃の温度まで急冷し、その
    温度から1.0℃/秒以下の平均冷却速度で200秒以
    上かけて冷却し、引き続き室温まで放冷することによ
    り、初析フェライト、初析セメンタイト、パーライトお
    よびマルテンサイトの1種または2種以上の組織生成を
    抑制してベイナイト組織の面積率を80%以上とし、そ
    の後強伸線加工によって1200N/mm2以上の強度
    にすることを特徴とする耐遅れ破壊性と鍛造性に優れた
    高強度鋼線の製造方法。
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