JP2003187654A - Nb▲3▼Sn超電導線材の製造方法 - Google Patents

Nb▲3▼Sn超電導線材の製造方法

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JP2003187654A JP2001382135A JP2001382135A JP2003187654A JP 2003187654 A JP2003187654 A JP 2003187654A JP 2001382135 A JP2001382135 A JP 2001382135A JP 2001382135 A JP2001382135 A JP 2001382135A JP 2003187654 A JP2003187654 A JP 2003187654A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高い外部磁場においても高い臨界電流密度が
実現できるNb3Sn超電導線材を製造するための有用
な方法を提供する。 【解決手段】 Sn、並びにNb若しくはTaを含有す
る金属粉末、化合物粉末または合金粉末を、Nbまたは
Nb基合金よりなる複数本のパイプに充填したものを用
いてNb3Sn超電導線材を製造する方法において、前
記パイプの外径をD、内径をdとしたとき(D−d)/
dの値を0.45以上、1.5以下とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、Nb3Sn超電導
線材を製造する方法に関するものであり、特に、高分解
能核磁気共鳴NMR分析装置、MRI診断装置、核融合
炉、加速器などに用いられる超電導マグネットの素材と
して有用なNb3Sn超電導線材を製造する方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電気抵抗がゼロで大電流を流すこ
とができる超電導線材を用いることで、大電流送電や強
磁場発生装置等の利用が広がりつつある。例えば高分解
能NMR分析装置に用いられる超電導マグネットは、大
電流通電による強磁場発生と抵抗ゼロを利用して電源を
用いない永久電流モードの運転を行うものであり、超電
導現象を利用することで初めて実現可能な応用の典型で
ある。また、NMR分析装置では、マグネットの発生磁
場が高ければ高いほど分解能が向上するので、こうした
分解能を高めるという観点から近年ますます高磁場化の
傾向にある。
【0003】超電導マグネットの素材として使用されて
いる超電導線材としては、NbTi線材とNb3Sn線
材の2種類の金属系超電導線材が一般的に知られてい
る。これらの線材における臨界磁場(超電導性を維持で
きる最高磁場)は、NbTiで約11T、Nb3Snで
約25Tであるので、Nb3Sn線材は10T以上の高
磁場を発生するマグネットには不可欠なものである。通
常、中・低磁場用マグネットではNbTi線材で作製さ
れ、高磁場用マグネットではその外層をNbTi線材、
内層をNb3Sn線材とする組み合わせで作製されるの
が一般的である。
【0004】これまで用いられてきたNb3Sn線材
は、ブロンズ法によって製造されるのが一般的である。
このブロンズ法は、Cu−Sn基合金(ブロンズ)マト
リックス中に複数のNb製芯材を埋設し、これを安定化
の為の銅(安定化銅)に埋設して伸線加工により上記芯
材をフィラメントとなし、或はこのフィラメントを複数
束ねて線材群となし、上記フィラメントまたは線材群を
600〜800℃で熱処理することによりNb製のフィ
ラメントに上記マトリックスのSnを拡散させてNb3
Sn層を生成させる方法である。
【0005】このブロンズ法で製造されたNb3Sn線
材で、現在最高性能を実現している線材の熱処理反応後
の断面を図1(図面代用顕微鏡写真)に示す。尚、図1
中AはCu−Sn基合金(以下、「ブロンズ」と呼ぶこ
とがある)、Bはブロンズ中のSnがNbの中に拡散し
て形成されたNb3Sn、CはNbを夫々示している。
【0006】上記の様なNb3Sn線材において、超電
導になって電流を流せるのは上記Nb3Snの部分であ
り、その他の部分は超電導にはならないので、より多く
の電流を流すためには、Nb3Sn層が厚いほど良いこ
とが分かる。また、Nb3Sn層を厚くするためには、
ブロンズからのSnをより多くNb中に拡散させれば良
い。こうしたことからブロンズ法においては、ブロンズ
中のSn含有量をできるだけ多くするという方法が採用
されるのが一般的である。しかしながら、ブロンズ中に
固溶できるSn濃度には限界があり、15.8質量%が
上限である。従って、ブロンズ法においては、ブロンズ
中のSnがなくなってしまうと、熱処理時間をそれ以上
にいかに長くしても、Nb3Sn層の厚さをそれ以上厚
くすることはできなくなる。こうしたことから、Nb3
Sn線材によって更に大電流を流すためには、断面積に
占めるNb3Sn層の比率が大きくなる様に別の手段を
講じる必要がある。
【0007】一方、Nb3Sn線材を製造する方法とし
ては、上記ブロンズ法の他に、粉末法も提案されてい
る。例えば、特開平5−28859号や同5−3429
32号には、Nb基合金パイプに、Cu粉とSn粉から
なる圧粉体やCuSn合金粉末を原料粉末として充填し
た後、伸線加工して前記パイプ中の原料粉末をフィラメ
ント状とし、この複数本を安定化の為の銅(安定化銅)
内に埋設して複合体(ビレット)とした後、伸線加工お
よび熱処理することによって、フィラメントパイプ中の
SnとパイプであるNbとを反応させ、パイプの内側か
らNb3Sn層を形成する方法が提案されている。こう
した方法では、原料粉末中のSn含有量を高くしてある
ので、伸線加工後の熱処理によってNb製パイプの内側
に形成されるNb3Sn層の厚さは、ブロンズ法の場合
に比べて数倍に大きくすることができるのである。
【0008】しかしながら、こうした粉末法において
も、解決されるべき若干の問題が指摘されている。即
ち、粉末法によってNb3Sn超電導線材を製造した場
合には、熱処理によってSnがNb製パイプに拡散した
後、元々原料粉末が充填されていた領域はボイド等の非
超電導層となり、この無駄な領域の存在によって超伝導
特性が低下することになる。また、原料粉末中のSn含
有量を大きくしてあるので、高温押し出しを行おうとす
ると、Snが溶融してビレットから噴出してしまい超電
導線材の製造自体ができなくなる。
【0009】上記の様な粉末法を改善して、前記ブロン
ズ法と粉末法を複合した方法(以下、「複合法」と呼ぶ
ことがある)も提案されている。例えば、特開平5−2
42742号には、Nb製パイプにブロンズ粉末を充填
して、このパイプの複数本をブロンズに埋設して複合体
(ビレット)とし、これを伸線した後熱処理することに
よって、Nb製パイプの両側(内側と外側)にNb3
n層を形成する方法が提案されている。この方法は、N
b製パイプの両側にNb3Sn層を形成させてNb3Sn
層の断面積比を実質的に大きくすると共に、Nb製パイ
プの外側にNb3Sn層を形成することによって超電導
部の面積率を増やしたものである。
【0010】しかしながら、こうした複合法において
も、Nb製パイプ内側表面に形成されるNb3Sn層の
厚みが依然として薄いという問題がある。また、前記粉
末法の場合と同様に、パイプ内の粉末が充填されていた
領域が、反応熱処理後に非超電導層となって超電導特性
の向上に寄与しないものとなる。更に、この方法では、
Snの拡散をできるだけ多くするという観点から、ブロ
ンズ中のSn含有量をできるだけ大きくする必要がある
が、そうするとブロンズ中に硬く加工性に乏しい相が生
じ、伸線加工において頻繁に中間焼鈍を施す必要が生じ
る。こうしたことから、この複合法においても、超電導
線材の単位面積当たりに流せる電流値(臨界電流密度:
Jc)は僅かに改善されるものの、その改善の程度は1
0%程度にとどまり、実用線材としては不十分である。
【0011】一般に、マグネット用超電導線材において
重要となるのが臨界電流密度(Jc)であり、これは、
導体全体(オーバーオール)または安定化材を除いた部
分または超電導体だけの単位断面積当たりの臨界電流値
(Ic)のことである。Jcの向上のためには、Nb3
Sn層当たりの臨界電流値の向上と、線材断面当たりで
いかに効率的にNb3Snを生成させ得るかが重要とな
る。そのためには、Nb3Sn生成後に残る未反応Nb
などを極力低減することが重要である。
【0012】これまでに、20Tを超える高磁場におけ
るNb3Sn層当たりの臨界電流値を向上させた線材の
製造方法として、特開平8−92668号にはNbとS
nの化合物粉末を利用したNb3Sn線材の製造方法、
また、特開平11−250749号にはTaなどとSn
の化合物粉末を利用したNb3Sn線材の製造方法が提
案されている。前者はNb3SnよりもSnに富む中間
化合物粉末とNb粉末を反応させてNb3Snを生成さ
せるものであり、後者はTa等とSnの合金または金属
間化合物粉末をNbパイプに充填して線材に加工した
後、熱処理によりNb3Snを生成させるものである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】このようなNbやTa
などとSnの化合物粉末を利用したNb3Sn超電導線
材の製造方法を用いて、さらにJcを向上させるために
は、Nb3Snを生成する際の熱処理時に線材断面内に
生じる非超電導部分の割合をできるだけ少なくしなけれ
ばならない。従って、パイプの厚みが大きすぎると、N
3Sn生成後の残留Nbが多くなり全体としてJcを
下げる結果となる。
【0014】一方、パイプの厚みを薄くすると、ここで
用いる粉末には非常に硬い金属間化合物が含まれるた
め、粗大な粒が残存していた場合、細線加工の過程で粉
末がパイプを破ってしまい外部の安定化銅を汚染してし
まう危険性が高まる。また、Nb3Snを生成する際の
熱処理時にSnがパイプを通り抜け外部に拡散してしま
い、線材の超電導特性を損なってしまうという問題があ
った。
【0015】本発明はこうした状況の下なされたもので
あって、その目的は、高い外部磁場においても高い臨界
電流密度が実現できるNb3Sn超電導線材を製造する
ための有用な方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成し得た本
発明の製造方法とは、Sn、並びにNb若しくはTaを
含有する金属粉末、化合物粉末または合金粉末を、Nb
またはNb基合金よりなる複数本のパイプに充填したも
のを用いてNb3Sn超電導線材を製造する方法におい
て、 1)前記パイプの外径をD、内径をdとしたとき(D−
d)/dを0.45以上、1.5以下を満たし、あるい
は、 2)減面加工により線材としたときのパイプの外径およ
び内径をそれぞれD’、d’としたとき、前記パイプに
充填する粉末の粒径aが(D’−d’)/2>aを満た
すところに要旨を有している。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明者らは、上記課題を解決す
るために様々な角度から検討した。その結果、上記構成
を採用すれば、上記目的が見事に達成されることを見出
し、本発明を完成した。以下、本発明が完成された経緯
を説明しつつ、本発明の作用について説明する。
【0018】上述のごとく、従来の製造方法を用いて実
際に実用レベルの超電導線材を設計・製造する場合にお
いて、より優れた超電導特性を有するNb3Sn線材を
得るためには、(a)Nb3Sn層当たりの臨界電流値
の向上、および(b)線材断面当たりでいかに効率よく
Nb3Snを生成させ得るかが重要である。これらの観
点から、本発明者らが検討したところ、NbあるいはN
b基合金からなるパイプの外径および内径を適切に制御
することにより、熱処理後に非超電導層となる未反応N
bを低減し得ることが見出された。
【0019】まず、図2に本発明に係る超電導線材の断
面を示す。図中、1は安定化銅、2はNbまたはNb基
合金よりなるパイプ、3はパイプ内部に充填された粉末
部を示す。
【0020】本発明においては、このパイプ2の外径を
D、内径をdとしたときに、(D−d)/dの値が0.
45以上、1.5以下でなければならない。
【0021】この値が0.45より小さい場合、本発明
に用いる粉末には、非常に硬い金属間化合物も含まれる
ため、パイプの内部に充填される粉末により、伸線加工
中にパイプが破れる危険性が大きいからである。また、
1.5以上の場合、熱処理後にも未反応Nbが残存する
ため、非超電導部分が多くなり、線材のJcを低下させ
るためである。(D−d)/dの値を0.45以上、
1.5以下とすることでパイプの損傷がなくJcの高い
超電導線材を実現できるのである。
【0022】しかし、上述の規定を満足していても、伸
線加工によって線材の径を100μm以下にまで加工す
る場合には、パイプが破れる場合がある。
【0023】また、本発明に係る線材に用いられる粉末
には、上述したように硬くてもろい金属間化合物も含ま
れているため、減面加工中に更に細かくなるものと、そ
のままの大きさで残りパイプを破るものとが出てくる。
【0024】この様に、パイプが破れた場合、Snがパ
イプ外部にまで拡散し、熱処理後に十分なNb3Sn層
が得られず、超電導特性が低減する。そこで、減面加工
し最終的な線材としたときのパイプの厚みと充填時の粉
末の粒径との関係について検討したところ、前記減面加
工後のパイプの外径および内径をそれぞれD’、d’、
充填時の粉末粒径aとしたとき、前記粉末の粒径aが
(D’−d’)/2>aを満たせば、該粉末中に硬い金
属間化合物を含んでいても、細線加工時にパイプが破れ
ることがなく安定して線材が加工できることを見出し
た。また、この規定を満たしていれば、上述した伸線加
工前のパイプの内径と外径の規定を満たさない場合でも
良好なJcを有する超電導線材を得ることができる。
【0025】本発明では原料粉末として、Sn、並びに
Nb若しくはTaを含有する金属粉末、化合物粉末また
は合金粉末を用いる。具体的にはNb−Sn系化合物粉
末、Ta−Sn系化合物粉末、Nb粉末またはTa粉末
とSn粉末を混合した後、熱処理してSnを溶融拡散さ
せることにより作成される粉末が好ましい。この様に、
Snを合金化することで融点を高め、加工時の加工発熱
によるSnの溶融および溶出を防ぐことができるからで
ある。
【0026】原料粉末中のSnは、NbまたはNb基合
金に拡散してNb3Sn層を形成するために混合するも
のである。それ以外の残余のSnは、原料粉末中にNb
を含む場合はこれと反応してパイプの中心領域にNb3
Sn層を形成するのに寄与することになる。本発明は、
原料粉末を充填するNbあるいはNb基合金からなるパ
イプの厚み比を規定することにより、熱処理後に残る未
反応Nb、つまりは非超電導層を低減し、Jcの向上を
狙ったものであるが、この様に、予め充填する粉末にN
3Snを生成し得る成分を含有させておくことによっ
ても、非超電導層である粉末コア部分の残存をできるだ
け少なくすることができる。
【0027】また、これらの原料粉末にCu,Ta,H
f,Ti,Zr,Geなどを拡散させてもかまわない。
これらの元素を添加することにより、高磁場での特性等
を改善することができるからである。特に、Cuは、N
3Sn生成の際における熱処理温度を低減することが
できるため0.1質量%以上添加するのが好ましく、よ
り好ましくは2質量%以上である。しかし、過度に添加
しても生成するNb3Snに対してCuが不純物として
作用し特性を低下させるので、その上限は50質量%程
度にすることが好ましい。
【0028】また、TiやTaの添加により、高磁場で
の高電流化という効果が発揮されるが、その含有量が過
剰になると加工性が低下する。よって、これらの元素の
添加量は、0.1〜10質量%程度に抑えるのが好まし
い。
【0029】本発明で用いる原料粉末の形態について
は、特に限定するものではなく、例えば合金化粉末と化
合物粉末を混合した粉末など様々な形態を採用すること
ができる。いずれの形態を採用するにしても、原料粉末
の粒径は、上述した(D’−d’)/2の式で得られる
値よりも小さいものであることが好ましい。
【0030】尚、混合粉末における上記各粉末の混合割
合については特に限定するものではないが、Taが5〜
80質量%、Snが10〜60質量%、Cuが10〜6
0質量%の間で調整するのが好ましい。
【0031】本発明に用いるパイプはNbよりなるパイ
プが好ましい。また、NbにTa,Hf,Ti,Zr,
Geなどを添加したNb基合金を用いてもかまわない。
これらの元素を添加することで、高磁場での特性を改善
することができるからである。
【0032】本発明において超電導線材の前駆体(熱処
理前の複合体)となるものは、例えば上記のような原料
粉末をNbまたはNb基合金からなる複数本のパイプに
充填し、 この複数本のパイプを束ねて、その表面に安定化銅を
配置して複合体とする、または、 上記パイプを減面加工して線材とし、その複数本を束
ねて線材群とし、この線材群の表面に安定化銅を配置し
て複合体とする、ことによって得られる。
【0033】尚、上記における減面加工とは、複合体
を得るためのものであり、最終的な超電導線材とするも
のではない。
【0034】いずれの複合体を用いるにしても、本発明
方法で用いる複合体は、その表面に安定化銅が配置され
る。安定化銅は、形成されたNb3Sn層を安定化させ
るために配置されるものであり、純銅によって構成され
る。
【0035】また、本発明に係る超電導線材において
は、上記複合体と安定化銅との間に拡散バリアー層を配
置してもかまわない。この拡散バリアー層は、熱処理時
にSnなどの不純物が安定化銅に拡散して、安定化銅の
抵抗値が大きくなることがない様に配置されるものであ
り、例えば、NbやTaによって構成される。
【0036】しかし、本発明の超電導線材においては、
パイプの厚みを規定することにより、上述の問題も解決
できたため、このような拡散バリア層を設けなくてもそ
の超電導特性が低下することはない。
【0037】更に、上記各複合体をCu−Sn基合金製
部材に埋設してもかまわない。この様な構成を採用する
ことによって、Nb(パイプ)へのSnの拡散が促進で
きるからである。この場合、複合体を埋設したCu−S
n基合金部材の表面に拡散バリアー層を配置し、更にそ
の表面に安定化銅を配置することになる。上記Cu−S
n合金中のSn含有量は固溶限内でできるだけ多い方が
良いが、あまり多くなると加工性が悪くなり、頻繁に中
間焼鈍を施す必要が生じる。こうした観点から、Cu−
Sn基合金中のSn含有量は5〜15質量%程度が好ま
しい。また、ブロンズを併用した製造方法では、線材の
特性をより向上させるという観点から、線材全断面積に
占めるブロンズ部分の断面積比をできるだけ小さくする
のが良い。好ましくは上記断面積比が70%以下であ
る。
【0038】上記の各種複合体は、押し出し加工若しく
は引き抜き加工により線材とした後、熱処理されること
によって、線材中にNb3Sn層が形成されることにな
るが、この熱処理温度は600〜850℃程度が好まし
い。
【0039】
【実施例】以下、本発明を実施例によって更に詳細に説
明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のもので
はなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはい
ずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【0040】実施例1 350メッシュ以下のTa粉末とSn粉末を原子比で
6:5となるように混合し、ここへ2質量%のCuを添
加して再度混合したものを、アルミナボートに入れ、真
空中、950℃で10時間熱処理した。これを粉砕し、
再びアルミナボートに入れ、真空中、950℃で10時
間熱処理した後、これを粉砕し、Ta−Sn−Cu合金
粉末を作製した。
【0041】この合金粉末を表1に示すような外径17
mmで内径の異なるNb−7.5質量%Ta合金からな
るパイプに充填した。このように合金粉末を充填したN
b製パイプをそれぞれ7本ずつ外径67mmの銅ビレッ
トに装填し、押し出し、ダイス伸線加工により最終線径
1.5mmφの線材とした。それぞれの線材を真空中、
820℃で80時間の熱処理を施した。
【0042】得られた線材の液体ヘリウム中(4.2
K)、高磁場(外部磁場:21T)における臨界電流密
度(オーバーオールの臨界電流密度:Jc)を測定し
た。その結果を表1に示す。また、Jcの値と(D−
d)/dの関係を図4に示す。
【0043】
【表1】
【0044】この結果から、(D−d)/dの値が0.
45以上、1.5以下のときにJcが90A/mm2
上の高い超電導特性を実現できていることが分かる。本
発明で規定する(D−d)/dの値を満たさないサンプ
ルAはJcの値が極端に低かった。これは、減面加工時
にパイプが薄くなりすぎ、Snがパイプ外部に拡散して
しまい、熱処理時に効率的にNb3Sn層を生成するこ
とができなかったためと考えられる。また、サンプルF
は、パイプが厚すぎたため、熱処理後も未反応Nbが残
存し、Jcの値がやや低下したものと考えられる。
【0045】実施例2 350メッシュ以下のTa粉末とSn粉末を原子比で
6:5となるように混合し、ここへ2質量%のCuを添
加して再度混合したものを、アルミナボートに入れ、真
空中、950℃で10時間熱処理した。これを粉砕し、
再びアルミナボートに入れ、真空中、950℃で10時
間熱処理した後、これを粉砕して微細化した後、篩にか
けて粒径毎に分級し、このうち粒径75μm以下の粉末
を原料粉末とした。
【0046】この原料粉末を表2に示す外径が17mm
で内径の異なるNb−7.5質量%Ta合金からなるパ
イプに充填した。このように合金粉末を充填したNb基
合金製パイプをそれぞれ7本ずつ外径67mmの銅ビレ
ットに装填し、押し出し、ダイス伸線により最終線径
0.7mmφの線材とした。それぞれの線材を真空中、
820℃で80時間の熱処理を施した。
【0047】得られた線材中のNb基合金製パイプの外
径および内径D’、d’を測定し、(D’−d’)/2
の値、および、線材の液体ヘリウム中(4.2K)、高
磁場(外部磁場:21T)における臨界電流密度を測定
した。また、Nb基合金製パイプに破れが生じているも
のを目視で確認した。これらの結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】この結果から、(D’−d’)/2の値が
充填粉末の粒径以上であれば、パイプに破れが生じるこ
となく、高い臨界電流密度を有する線材を安定して作製
できることが分かる。
【0050】
【発明の効果】本発明は以上のように構成されており、
高磁場でより高い臨界電流密度を有する超電導線材を実
現できると共にそれを安定して製造することができた。
この様な線材では、強磁場で永久電流モード動作が要求
される高性能超電導マグネットにおいて、従来の金属系
超電導マグネットよりも更に優れた超電導マグネットの
製作が期待でき、その他の永久電流モードを必要とする
超電導マグネット応用においてもきわめて有利となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ブロンズ法によって製造されたNb3Sn超電
導線材の断面を示す図面代用顕微鏡写真である。
【図2】本発明に係る線材の断面を示す図である。
【符号の説明】
1 安定化銅 2 パイプ 3 粉末充填部
フロントページの続き (72)発明者 村上 幸伸 北九州市門司区小森江2丁目2−1 株式 会社神戸製鋼所門司工場内 (72)発明者 加藤 弘之 神戸市西区高塚台1丁目5番5号 株式会 社神戸製鋼所神戸総合技術研究所内 Fターム(参考) 5G321 AA11 BA03 CA01 CA99 DC06 DC08

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Sn、並びにNb若しくはTaを含有す
    る金属粉末、化合物粉末または合金粉末を、Nbまたは
    Nb基合金よりなる複数本のパイプに充填したものを用
    いてNb3Sn超電導線材を製造する方法において、 前記パイプの外径をD、内径をdとしたとき(D−d)
    /dを0.45以上、1.5以下としたことを特徴とす
    るNb3Sn超電導線材の製造方法。
  2. 【請求項2】 Sn、並びにNb若しくはTaを含有す
    る金属粉末、化合物粉末または合金粉末を、Nbまたは
    Nb基合金よりなる複数本のパイプに充填したものを用
    いてNb3Sn超電導線材を製造する方法において、 減面加工により線材としたときのパイプの外径および内
    径をそれぞれD’、d’としたとき、前記パイプに充填
    する粉末の粒径aが(D’−d’)/2>aを満たすこ
    とを特徴とするNb3Sn超電導線材の製造方法。
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WO2005117032A1 (ja) * 2004-05-25 2005-12-08 Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho 粉末法Nb3Sn超伝導線材の製造方法
WO2006030744A1 (ja) * 2004-09-15 2006-03-23 Kabushiki Kaisha Kobe Seiko Sho 粉末法Nb3Sn超電導線材の製造方法

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