JP2003181869A - 加飾シート及び加飾成形品 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 射出成形同時積層加飾法で樹脂成形物にラミ
ネートする加飾シートについて、高光沢、成形性、透明
性、耐擦傷性の全ての性能を満たす。 【解決手段】 熱可塑性樹脂の基材シート１上に透明樹
脂層２を設けた加飾シートＳについて、透明樹脂層は、
その透明樹脂３の成分として少なくとも熱可塑性樹脂、
更に好ましくは電離放射線硬化性樹脂も硬化状態で含有
させた上で、更に固体粒子からなる体質顔料４を含有さ
せ、しかも透明樹脂層の表面は平滑面を成し、固体粒子
は透明樹脂層表面から突出せずに透明樹脂層中に埋入さ
せた状態の加飾シートとする。この加飾シートを樹脂成
形物表面に積層すれば、加飾成形品となる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、各種物品の表面加
飾に使用される加飾シートと、それを用いた加飾成形品
に関する。特に、高光沢で成形性を有し表面物性に優れ
た加飾シートと、それを用いた加飾成形品に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、樹脂成形品等の被着体に、加
飾シートを成形して積層する方法として、特公昭５０−
１９１３２号公報等に記載の射出成形同時積層加飾法等
が知られている。そして、加飾シートの基材シートとし
ては、成形性の点から、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂
が使用されている。熱可塑性樹脂を採用すれば、加熱に
より基材シートを容易に軟化させて成形性を得る事がで
きるからである。また、加飾シートの層構成は、絵柄イ
ンキ層等による装飾層は、擦り傷から保護する為に、透
明な基材シートの裏側に印刷等で形成した構成とするこ
とが多い。そして、透明な基材シートには、特にアクリ
ル樹脂の様に透明性の良い熱可塑性樹脂を使用すると、
その透明性及び表面光沢感によって、豊かな塗装感が得
られる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、熱可塑
性樹脂による基材シートが加飾シートの最表面となる構
成では、加熱により表面に粘着性を生じる為、特に深絞
りの型で加飾シートを予備成形しようとすると、加飾シ
ートが型上で滑り難くなり成形性が阻害されることがあ
った。また、表面の耐擦傷性も不十分であった。

【０００４】この様な耐擦傷性は、熱可塑性樹脂の基材
シートの表面に、塗工で透明樹脂層を設ければ、改善で
きる。しかし、透明樹脂層の樹脂として、表面光沢感、
透明性、成形性、及び耐擦傷性の全ての物性を満たすも
のを、選定するのは難しい。特に、成形性を持たせる為
には、透明樹脂層を軟らかくしなければならなかった。
しかし、透明樹脂層を軟らかくすると、今度は耐擦傷性
が低下してしまう。例えば、表面にアクリレート系モノ
マー或いはプレポリマーから成る電離放射線硬化性樹脂
による塗料を塗工して架橋して透明樹脂層を形成した加
飾シート（特公平１−４７２８４号公報等参照）では、
表面物性と成形性を両立することが難しい。この様な透
明樹脂層は高硬度である為に、耐擦傷性は良好となる
が、塗膜は脆弱なため、成形時に割れ易く成形性が低下
してしまう。一方、例えば、表面に塩化ビニル−酢酸ビ
ニル共重合体等の熱可塑性樹脂による塗料を塗工して透
明樹脂層を形成した加飾シートでは、基材シート同様に
熱可塑性である為に、成形性は良好だが加熱軟化時に粘
着性が出てしまう。しかも、耐擦傷性は劣り、基材シー
トのままと大差無い。

【０００５】すなわち、本発明の課題は、射出成形同時
積層加飾法等でシートを成形して被着体に積層する場合
に、高光沢、成形性、透明性、耐擦傷性の全て性能を満
たす加飾シートを提供することである。また、それを用
いた加飾成形品を提供する事である。

【０００６】

【課題を解決するための手段】そこで、上記課題を解決
すべく、本発明の加飾シートでは、熱可塑性樹脂から成
る基材シートの表面に、透明樹脂層を積層して成る、成
形用の加飾シートにおいて、記透明樹脂層は、樹脂分と
して少なくとも熱可塑性樹脂を含有すると共に、更に固
体粒子からなる体質顔料が添加されて成り、該透明樹脂
層の表面は平滑面を成し、前記固体粒子は該透明樹脂層
表面から突出せずに該透明樹脂層中に埋入されて成る構
成とした。

【０００７】この様な構成とすることで、透明樹脂層に
は熱可塑性樹脂が用いられている為に、加飾シートは加
熱により軟化して変形し易くなり、加飾シートの成形性
が確保される。しかも、このままでは、その際発生する
樹脂の粘着性で加飾シートが型上で滑り難くなって、型
面への加飾シートの成形が難しくなると言う矛盾を生じ
るが、これを、固体粒子からなる体質顔料を添加するこ
とで、粘着性発現を防ぐことが出来るので、成形性を良
くして、型面への加飾シートの深絞り成形への対応を可
能にした。また、体質顔料添加で生ずる該体質顔料の表
面突出による光沢・鏡面性低下は、該体質顔料を透明樹
脂層中に押し込み埋入して表面を強制的に鏡面化してあ
るで、防ぐことができ、その結果、高い光沢感も得られ
る。また、透明樹脂層の樹脂分としては熱可塑性樹脂を
含有するが、体質顔料を添加してあるので、耐擦傷性も
強化できる。そして、透明樹脂層は透明であるので、透
明性も得られる。以上の結果、高光沢、成形性、透明
性、耐擦傷性の全ての性能を満たすことができる。

【０００８】また、本発明の加飾シートは、上記構成に
おいて更に、透明樹脂層が、更に電離放射線硬化性樹脂
を含有し、該電離放射線硬化性樹脂は硬化されて成る構
成とした。

【０００９】この様な構成とすることで、表面物性とし
て耐擦傷性をより強化し、優れたものとできる。

【００１０】また、本発明の加飾成形品は、樹脂成形物
の表面に、上記いずれかの加飾シートが、その透明樹脂
層に対して基材シート側が前記樹脂成形物側を向く様に
して積層されて成る構成とした。

【００１１】この様な構成とすることで、前記加飾シー
トによる効果が得られる。つまり、高光沢、成形性、透
明性、耐擦傷性の全てを満たすことができる。しかも、
透明樹脂層を、更に電離放射線硬化性樹脂が硬化したも
のを含有する構成では、耐擦傷性をより強化し、優れた
ものとできる。

【００１２】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。

【００１３】加飾シート：先ず、加飾シートから説明す
る。図１（Ａ）は体質顔料４が未だ透明樹脂層２の表面
から突出している状態、そして、図１（Ｂ）は体質顔料
４が透明樹脂層２中に埋入されて表面が平滑面となっ
た、本発明の加飾シートＳの一形態である。図中、符号
１は基材シート、符号５は装飾層である。

【００１４】〔基材シート〕基材シート１には、熱可塑
性樹脂から成る樹脂シートが使用される。基材シートに
熱可塑性樹脂を使用することで、加飾シートを加熱で軟
化させて、加飾シートに成形性を付与することができ
る。なお、基材シートは無色透明でも良いが、通常は、
着色剤を添加し着色不透明（隠蔽性）とする。着色剤添
加により、被着体である樹脂成形物の色を隠蔽したり、
基材シート表面側に装飾層を形成時に該装飾層による意
匠表現の基調色を担わせる。なお、着色剤としては、例
えば、後述絵柄インキ層で列記する如き公知の着色剤を
使用する。

【００１５】なお、熱可塑性樹脂としては、用途に応じ
て要求される成形性を満足するものであれば良く、例え
ば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテ
ン、ポリブテン、アイオノマー、エチレン−プロピレン
共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−
プロピレン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エ
ラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリメチル（メ
タ）アクリレート、ポリブチル（メタ）アクリレート、
メチル（メタ）アクリレート−ブチル（メタ）アクリレ
ート共重合体、メチル（メタ）アクリレート−スチレン
共重合体等のアクリル樹脂〔但し、（メタ）アクリレー
トとは、アクリレート又はメタクリレートの意味。以下
同様。〕、ポリブチレンテレフタレート、エチレン・テ
レフタレート−イソフタレート共重合体、ポリエステル
系熱可塑性エラストマー、完全非晶質ポリエステル等の
ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−
スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−ス
チレン共重合体等のスチレン系樹脂、塩化ビニル樹脂、
塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合
体、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ
化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、エチレン−４フッ化
エチレン共重合体等のフッ素樹脂、ナイロン６、ナイロ
ン６６等のポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等で
ある。

【００１６】なお、上記ポリエステル系熱可塑性エラス
トマーとしては、ハードセグメントに高結晶で高融点の
芳香族ポリエステル、ソフトセグメントにはガラス転移
温度が−７０℃以下の非晶性ポリエーテル等を使用した
ブロックポリマー等があり、該高結晶性で高融点の芳香
族ポリエステルには、例えばポリブチレンテレフタレー
トが使用され、該非晶性ポリエーテルには、ポリテトラ
メチレングリコール等が使用される。また、上記完全非
晶質ポリエステルとしては、代表的には、エチレングリ
コール−１，４−シクロヘキサンジメタノール−テレフ
タル酸共重合体がある。

【００１７】そして、基材シートには、上記の如き樹脂
からなるシート（フィルム）の単層又は２層以上の積層
体が用いられる。なお、基材シートの厚さ（総厚）は、
特に限定されないが、成形性、コスト等の観点から、通
常５０〜５００μｍ程度である。

【００１８】また、基材シート中には、必要に応じて適
宜、安定剤、可塑剤、着色剤、紫外線吸収剤、ヒンダー
ドアミン系光安定剤、体質顔料等の各種添加剤を、物性
調整の為に添加することができる。

【００１９】また、基材シートの面（表面や裏面）は、
基材シートに接する他層（透明樹脂層や装飾層等）との
密着性向上の為に、必要に応じ適宜、コロナ放電処理、
プラズマ処理、ウレタン樹脂等によるプライマー層形成
等の公知の易接着処理を施しても良い。

【００２０】〔透明樹脂層〕透明樹脂層２は、加飾シー
トの最表面層として、樹脂分として少なくとも熱可塑性
樹脂を含有し、更に固体粒子からなる体質顔料が添加さ
れた層である。しかも、この透明樹脂層は、表面が平滑
面で、前記体質顔料は透明樹脂層の表面から突出せずに
該透明樹脂層中に埋入されて成る状態の層である。

【００２１】透明樹脂層の樹脂成分としては、成形性の
観点から熱可塑性樹脂を必須成分として使用する。但
し、好ましくは、優れた耐擦傷性等の表面物性を得やす
い点で、電離放射線硬化性樹脂を混合して使用する。熱
可塑性樹脂単体でも、体質顔料の添加で耐擦傷性等の表
面物性は向上し、また加飾シート加熱時に粘着性は発現
し難くなる。しかし、熱可塑性樹脂に更に電離放射線硬
化性樹脂を混合しそれを硬化させた方が、耐擦傷性をよ
り優れたものとし、且つ粘着性発現を確実に防ぐことが
できる。電離放射線硬化性樹脂の混合割合が増えるほ
ど、耐擦傷性は向上し、粘着性は低減する。なお、電離
放射線硬化性樹脂の混合割合は、通常、樹脂分全量に対
して１０〜６０質量％程度である。

【００２２】透明樹脂層に用いる熱可塑性樹脂として
は、例えば、アクリル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等の
他、前記基材シートで列記如き熱可塑性樹脂等を、用途
に応じて使用することができる。

【００２３】また、好ましくは熱可塑性樹脂と混合使用
する電離放射線硬化性樹脂としては、紫外線や電子線等
の電離放射線で硬化する公知の樹脂を適宜使用すること
ができる。電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線により
硬化可能な組成物であり、具体的には、分子中にラジカ
ル重合性不飽和結合、又はカチオン重合性官能基を有す
る、プレポリマー（所謂オリゴマーも包含する）及び／
又はモノマーを適宜混合した電離放射線により硬化可能
な組成物が好ましくは用いられる。これらプレポリマー
又はモノマーは単体又は複数種を混合して用いる。

【００２４】上記プレポリマー又はモノマーは、具体的
には、分子中に（メタ）アクリロイル基、（メタ）アク
リロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキ
シ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物からな
る。また、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによ
るポリエン／チオール系のプレポリマーも好ましくは用
いられる。なお、例えば（メタ）アクリロイル基とは、
アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。ま
た、以下の（メタ）アクリレートも同様に、アクリレー
ト又はメタクリレートの意味である。ラジカル重合性不
飽和基を有するプレポリマーの例としては、ポリエステ
ル（メタ）アクリレート、ウレタン（メタ）アクリレー
ト、エポキシ（メタ）アクリレート、メラミン（メタ）
アクリレート、トリアジン（メタ）アクリレート、シリ
コーン（メタ）アクリレート等が使用できる。分子量と
しては、通常２５０〜１００，０００程度のものが用い
られる。

【００２５】ラジカル重合性不飽和基を有するモノマー
の例としては、単官能モノマーとして、メチル（メタ）
アクリレート、２−エチルヘキシル（メタ）アクリレー
ト、フェノキシエチル（メタ）アクリレート等がある。
また、多官能モノマーとして、ジエチレングリコールジ
（メタ）アクリレート、プロピレングリコールジ（メ
タ）アクリレート、トリメチールプロパントリ（メタ）
アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサ
イドトリ（メタ）アクリレート、ジペンタエリスリトー
ルテトラ（メタ）アクリレート、ジペンタエリスリトー
ルペンタ（メタ）アクリレート、ジペンタエリスリトー
ルヘキサ（メタ）アクリレート等もある。カチオン重合
性官能基を有するプレポリマーの例としては、ビスフェ
ノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等
のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系
ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマ
ーがある。チオールとしては、トリメチロールプロパン
トリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチ
オグリコレート等のポリチオールがある。また、ポリエ
ンとしては、ジオールとジイソシアネートによるポリウ
レタンの両端にアリルアルコールを付加したもの等があ
る。

【００２６】なお、紫外線又は可視光線にて硬化させる
場合には、上記電離放射線硬化性樹脂に、さらに光重合
開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹
脂系の場合は、光重合開始剤として、アセトフェノン
類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイ
ン、ベンゾインメチルエーテル類を単独又は混合して用
いることができる。また、カチオン重合性官能基を有す
る樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾ
ニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム
塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル
等を単独又は混合物として用いることができる。なお、
これらの光重合開始剤の添加量としては、電離放射線硬
化性樹脂１００質量部に対して、０．１〜１０質量部程
度である。

【００２７】なお、電離放射線としては、電離放射線硬
化性樹脂（組成物）中の分子を硬化反応させ得るエネル
ギーを有する電磁波又は荷電粒子が用いられる。通常用
いられるものは、紫外線又は電子線であるが、この他、
可視光線、Ｘ線、イオン線等を用いる事も可能である。
紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水
銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハラ
イドランプ等の光源が使用される。紫外線の波長として
は通常１９０〜３８０ｎｍの波長域が主として用いられ
る。電子線源としては、コッククロフトワルトン型、バ
ンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或
いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電
子線加速器を用い、１００〜１０００ｋｅＶ、好ましく
は、１００〜３００ｋｅＶのエネルギーをもつ電子を照
射するものが使用される。

【００２８】そして、透明樹脂層に添加する体質顔料と
しては、粒径０．１〜１０μｍ程度の固体粒子を用い
る。該固体粒子の形状としては、球形、多面体、鱗片
形、その他形状等である。固体粒子には、添加によって
透明樹脂層が着色したり透明性を失わない様に、無色透
明な物を選ぶ。例えば、固体粒子の材料としては、炭酸
カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、アルミナ、アルミ
ノシリケート、硝子等の無機物、或いは、ポリエチレ
ン、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド
樹脂（ナイロン）、ポリウレタン等の樹脂（有機物）を
用いる。通常は、シリカ、ポリエチレン等を用いるのが
普通である。添加される樹脂と同じ様な屈折率の物とす
ることによって、ヘイズ値が増加して透明性が低下しな
い様にすると良い。体質顔料の添加量は、必要な耐擦傷
性、成形性、及び樹脂等との関係で適宜決めれば良く、
樹脂分１００質量部に対して通常５〜１０質量部程度で
ある。最高でも２０質量部を超えないようにすると良
い。

【００２９】なお、高光沢性を得る為に、透明樹脂層の
平滑化された平滑面は、その表面平滑度はＪＩＳ Ｂ
０６０１（１９９６）による算術平均粗さＲａで評価し
た場合で、１μｍ以下、より好ましくは０．１μｍ以下
とする。なお、透明樹脂層表面を平滑面化する為に使用
する後述鏡面ローラ或いは鏡面板としては、その表面が
これ以下の表面粗さのものを用いるのが良い。

【００３０】ところで、上記の如き所望の平滑面を成す
透明樹脂層を、基材シート上に積層するには、先ず、樹
脂分として少なくとも熱可塑性樹脂を含有し、更に固体
粒子からなる体質顔料が添加されて成る体質顔料含有樹
脂層を、基材シート上に塗工又はラミネートで積層後、
熱プレスで該体質顔料含有樹脂層表面に突出している体
質顔料を押し込むことで透明樹脂層とすれば、該透明樹
脂層の表面は平滑面を成し、前記固体粒子は該透明樹脂
層表面から突出せずに該透明樹脂層中に埋入されて状態
にできる。

【００３１】体質顔料の添加は、成形性を考慮して透明
樹脂層を熱可塑性樹脂で構成すると、加飾シート成形時
の加熱で粘着性（タック）が発現して、特に深絞りのシ
ート予備成形時に、加飾シートが型上で滑り難くなり成
形性が阻害されるのを防ぐ為である。但し、体質顔料を
添加したままだと、透明樹脂層表面が体質顔料により微
凹凸面（粗面）となり、光を散乱するためマット感が出
たり、或いは透明樹脂層が白化したりする。そこで、本
発明では、これを解決する為、表面を熱プレスにより平
滑面化（鏡面化）して透明樹脂層とするのである。ま
た、体質顔料の添加で、体質顔料含有樹脂層を積層した
シートを巻き取る時に、ブロッキングするのを防止する
効果も得られる。これによって、熱可塑性樹脂や電離放
射線硬化性樹脂の樹脂選択を、成形性やその後の表面強
度等に重点をおいて選択する等、樹脂選択の自由度を広
げることもできる。そして、熱プレスは、体質顔料含有
樹脂層を軟化温度以上且つ融点或いは熔融温度未満の温
度に加熱して軟化させた状態で、表面から突出した体質
顔料を加圧する。そうすれば、体質顔料含有樹脂層中に
その表面に突出した体質顔料を埋入させて、該樹脂層を
所望の透明樹脂層とすることができる。なお、透明樹脂
層表面の粘着性を低減し、且つ耐擦傷性を発現させる為
には、図１（Ｂ）の如く、体質顔料は、透明樹脂層中に
於いて、透明樹脂層表面に接した直下及びその近傍に集
中する様に（且つ表面上には突出しない様に）圧入する
ことが好ましい。

【００３２】なお、体質顔料含有樹脂層の基材シート上
への積層は、使用する樹脂や用途に応じて、塗工又はラ
ミネートで行えるが、具体的には、ロールコート、グラ
ビアロールコート、コンマコート、熔融押出塗工法等の
公知の各種塗工法、或いは、既にシート（或いはフィル
ム）化した状態のものをドライラミネーション法等によ
る積層法で積層すれば良い。

【００３３】また、熱プレスは、公知の熱プレス方式の
エンボス加工機（平版式プレス、輪転式プレスのいずれ
でも可能）を用いて、表面凹凸面のエンボス板（平版式
プレスの場合）或いはエンボスローラ（輪転式プレスの
場合）の代わりに、鏡面板或いは鏡面ローラを使用すれ
ば良い。なお、鏡面ローラとしては、例えば、鉄の円筒
表面に（必要に応じて銀メッキ層を介して）銅メッキ層
を形成し、該銅メッキ層を所望の表面粗さにまで研磨し
た後、更にその表面にクロムメッキ層を形成した構成の
もの等を使用する。通常は、該鏡面ローラの内部を中空
とし、この中に冷却水を通して、加熱軟化された体質顔
料含有樹脂層の表面に平滑面化すると同時に軟化温度以
下に冷却し、平滑面化された表面を固定する。

【００３４】また、透明樹脂層に熱可塑性樹脂と共に電
離放射線硬化性樹脂を併用する場合、該電離放射線硬化
性樹脂の硬化時期は、熱プレスの後に行うと良い。そう
すれば、熱プレス時は該電離放射線硬化性樹脂は熱可塑
性をまだ呈する状態であるので、体質顔料を樹脂層中へ
の埋入は、樹脂硬化により阻害されない。そして、熱プ
レス後に電離放射線硬化性樹脂を硬化すれば、透明樹脂
層中に埋入した体質顔料を位置固定することもできる。
その為、加飾シート成形時の（再）加熱で、透明樹脂層
内部に押し込められた体質顔料が、埋入時の残留応力で
表面に戻り、表面の平滑性を低下させることも無い。ま
た、電離放射線硬化性樹脂の硬化により透明樹脂層の耐
擦傷性等の表面強度も向上する。

【００３５】以上の様にして、所望の透明樹脂層を形成
することができる。通常、この様な透明樹脂層は、必要
に応じ装飾層を印刷等で形成した基材シート上に、透明
樹脂層とする体質顔料含有樹脂層を塗工又はラミネート
により形成後、該体質顔料含有樹脂層の表面に突出して
いる体質顔料を熱プレスによって該樹脂層中に押し込ん
で、透明樹脂層とする。

【００３６】なお、透明樹脂層中には、体質顔料の他、
必要に応じ適宜、公知の添加剤を添加しても良い。例え
ば、シリコーン、ワックス等の滑剤、紫外線吸収剤、ヒ
ンダードアミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤、或い
は、可塑剤、帯電防止剤、防黴剤、抗菌剤等である。

【００３７】〔装飾層〕また、必要に応じ適宜、装飾層
を設けても良い。なお、装飾層は、透明樹脂層表面に設
けても良いが、好ましくは、耐擦傷性の点で、透明樹脂
層の下側、具体的には基材シートと透明樹脂層との間、
或いは、基材シート（透明の場合）の裏側、より好まし
くは、射出成形同時積層加飾時の射出樹脂の熱圧で装飾
層が損傷を受け無い基材シートと透明樹脂層間に設け
る。

【００３８】装飾層の形成は、グラビア印刷、活版印
刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シー
トからの転写印刷、インキジェット印刷等公知の印刷
法、或いは手描き法等の従来公知の形成法によって形成
することができる。装飾層としては、インキ（或いは塗
料）を用いた絵柄インキ層、或いは真空蒸着等による金
属薄膜層等を形成する。装飾層は、全面に、或いは所望
のパターン状に部分的に形成する。なお、全面に形成す
る場合には、グラビアコート、ロールコート等の従来公
知の塗工法を用いて形成することもできる。装飾層で表
現する絵柄は、例えば、木目、石目、布目、砂目、タイ
ル貼模様、煉瓦積模様、皮絞模様、幾何学模様、文字、
記号、全面ベタ等が、用途に合わせて、１種又は２種以
上組み合わせて使用される。

【００３９】なお、絵柄インキ層の印刷に用いるインキ
は、バインダー等からなるビヒクル、顔料や染料等の着
色剤、これに適宜加える各種添加剤からなるが、バイン
ダーの樹脂には、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニ
ル共重合体、塩素化ポリプロピレン、ポリエステル樹
脂、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂等の単体又は混合
物が用いられる。

【００４０】なお、上記アクリル樹脂としては、例え
ば、ポリメチル（メタ）アクリレート、ポリブチル（メ
タ）アクリレート、メチル（メタ）アクリレート−ブチ
ル（メタ）アクリレート共重合体、メチル（メタ）アク
リレート−スチレン共重合体等のアクリル樹脂、或い
は、メチル（メタ）アクリレート、エチル（メタ）アク
リレート、ブチル（メタ）アクリレート、オクチル（メ
タ）アクリレート、シクロヘキシル（メタ）アクリレー
ト等と、２−ヒドロキシエチル（メタ）アクリレート、
２−ヒドロキシ−３−フェノキシプロピル（メタ）アク
リレート等の分子中に水酸基を有する（メタ）アクリル
酸エステルとを共重合させて得られるアクリルポリオー
ル等のアクリル樹脂を、単体又は２種以上混合して使用
する。なお、（メタ）アクリレートとは、アクリレート
又はメタクリレートを意味する。

【００４１】また、上記ウレタン樹脂としては、２液硬
化型ウレタン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等が用いられ
る。２液硬化型ウレタン樹脂は、ポリオールを主剤と
し、多価イソシアネートを架橋剤とする。ポリオールと
しては、アクリルポリオール、ポリエステルポリオー
ル、ポリカーボネートポリオール等が、また、多価イソ
シアネートとしては、２，４−トリレンジイソシアネー
ト、キシレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネー
ト、１，６−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホ
ロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネ
ート等の脂肪族（乃至は脂環式）イソシアネートが用い
られる。

【００４２】また、上記着色剤としては、チタン白、亜
鉛華、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、クロムバーミリ
オン、群青、コバルトブルー、黄鉛、チタンイエロー等
の無機顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブル
ー、イソインドリノンイエロー、ベンジジンイエロー、
キナクリドンレッド、ポリアゾレッド、ペリレンレッ
ド、アニリンブラック等の有機顔料（或いは染料も含
む）、或いは、アルミニウム、真鍮、等の鱗片状箔片か
らなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛
等の鱗片状箔片からなる真珠光沢顔料（パール顔料）等
を用いる。

【００４３】なお、装飾層の絵柄としては、目視不可能
な絵柄模様として、例えば可視光に対しては透明で紫外
線照射で蛍光を発する蛍光インキで印刷した絵柄、赤外
線吸収性インキで印刷したバーコード等でも良い。ま
た、上記の如き絵柄表現目的の装飾層の他に、導電体
層、磁性体層等の機能性付与層を設けても良い。すなわ
ち、加飾シートに於ける加飾とは機能性付与も包含す
る。

【００４４】また、装飾層として金属薄膜層を設ける場
合は、アルミニウム、クロム、金、銀等の金属を、公知
の真空蒸着、パッタリング等の方法で製膜して、部分的
或いは全面に形成することができる。

【００４５】〔接着剤層〕加飾シートの裏面側、つまり
基材シート側には、必要に応じ適宜、樹脂成形物等の被
着体との接着性を向上させるために、コロナ放電処理、
プラズマ処理、プライマー塗工等の易接着処理の他、こ
れら易接着処理を処理後或いは処理せずに、接着剤層を
設けても良い。接着剤層を設ける事により、被着体との
密着性向上が容易となり、樹脂成形物等の被着体の材料
選択の幅が広がる。その結果、加飾物に於いて、被着体
側での樹脂成形物等の材料の点でもコストダウンを行い
易くなる。

【００４６】接着剤層としては、樹脂成形物等の被着体
材料に応じて、例えば感熱型の接着剤として熱可塑性樹
脂、熱硬化性樹脂等の公知の樹脂が用いられる。熱可塑
性樹脂では、例えば、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢
酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、熱可塑性ポリエステ
ル樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー、塩素化ポリオ
レフィン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ゴム系樹脂等の
１種又は２種以上の混合物が用いられる。また、熱硬化
性樹脂では、フェノール樹脂、ブロックイソシアネート
硬化型等のウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が用いられ
る。接着剤層は、これら樹脂による接着剤を、グラビア
印刷、ロールコート等の公知の印刷又は塗工法により形
成する。また、接着剤層の厚さは特に制限は無いが、通
常は１〜１００μｍ程度である。

【００４７】〔加飾シートの被着体と積層法〕本発明の
加飾シートを適用する被着体、及び被着体への加飾シー
トの積層方法とては、基本的には特に制限は無いが、好
ましくは、加飾シート積層時に加飾シートを加熱し成形
して積層する様な被着体及び積層方法が、成形用として
の本加飾シートの特徴を活かせる点で好適である。例え
ば、射出成形同時積層加飾法（特公昭５０−１９１３２
号公報等）、真空成形積層方法〔特公昭５６−４５７６
８号公報（オーバーレイ法）、特公昭６０−５８０１４
号公報（真空プレス法）等参照〕、ラッピング加工方法
（特公昭６１−５８９５号公報、特公昭５６−２３７７
１号公報等参照）等である。なかでも、射出成形同時積
層加飾法は、被着体の形状発現（成形）と同時に加飾で
きて生産性に優れる点で好ましい。

【００４８】また、本発明の加飾シートの被着体として
は、射出成形同時積層加飾法で被着体を加飾する場合は
樹脂成形物に限定されるが、他の方法、例えば、真空成
形積層方法、ラッピング加工方法等では、樹脂成形物以
外の材料も可能である。例えば、金属、木材、無機非金
属等である。この様な樹脂以外の材料例を挙げれば、例
えば、金属では、鉄、アルミニウム、銅等が挙げられ、
木材では、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単
板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等が挙
げられ、無機非金属では、押し出しセメント、スラグセ
メント、ＡＬＣ（軽量気泡コンクリート）、ＧＲＣ（硝
子繊維強化コンクリート）、パルプセメント、木片セメ
ント、石綿セメント、ケイ酸カルシウム、石膏、石膏ス
ラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ
器、硝子、琺瑯等のセラミックス等が挙げられる。

【００４９】なお、被着体の形状は、少なくともその加
飾面は加飾シートの成形性を活かせる様な形状が好適で
あるが、被着体の全体形状としては、加飾シートをその
加飾面に積層できる形状であればよく、板状（平板、曲
面板）、柱状、三次元立体物等と任意である。

【００５０】加飾成形品：次に、本発明の加飾成形品
は、図２の断面図でその一形態を例示する如く、上述し
た発明の加飾シートＳが、その透明樹脂層２に対して基
材シート１側を樹脂成形物６側を向く様にして樹脂成形
物６の表面に積層された構成の成形品であ。なお、図２
の加飾成形品Ｐに於ける部分拡大図では、基材シート１
と透明樹脂層２間に絵柄インキ層等の装飾層５を有す
る。なお、樹脂成形物６上への加飾シートＳの積層は、
好適には射出成形同時積層加飾法によって行える。

【００５１】〔樹脂成形物〕樹脂成形物６の樹脂として
は、基本的には特に制限はなく公知の樹脂で良い。製品
の要求物性やコスト等に応じて選定すれば良い。例え
ば、熱可塑性樹脂であれば、ポリエチレン、ポリプロピ
レン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プ
ロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重
合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のポリオレ
フィン系樹脂、或いは、ＡＢＳ（アクリロニトリル−ブ
タジエン−スチレン共重合体）樹脂、ＡＳ（アクリロニ
トリル−スチレン共重合体）樹脂、スチレン樹脂、アク
リル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等で
ある。また、硬化性樹脂であれば、２液硬化型の樹脂、
例えば、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポ
キシ樹脂等の未硬化樹脂液等である。熱可塑性樹脂は加
熱熔融して流動状態で射出し、また硬化性樹脂は（その
未硬化物を）室温又は適宜加熱して流動状態で射出す
る。

【００５２】なお、樹脂中には、用途に応じて適宜、着
色剤を添加して着色した樹脂を使用しても良い。着色剤
には、前述絵柄インキ層で述べた如き公知の着色剤を使
用すれば良い。また、樹脂中には、必要に応じ適宜、シ
リカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アル
ミニウム等の無機物粉末、ガラス繊維等の充填剤、安定
剤、滑剤、エラストマー等の公知の各種添加剤を含有さ
せる。

【００５３】〔成形品形状〕なお、加飾成形品は、通
常、加飾シートの積層面が凹凸面等と非平面の立体物で
ある。しかし、本発明の加飾成形品としては、加用シー
トの積層面は平面だが他の面が非平面の立体物、積層面
が平面となる板状物を排除するものではない。また、加
飾成形品の全体形状は、板状（平板、曲面板）、柱状、
三次元立体物等と任意である。

【００５４】射出成形同時積層加飾法：ここで、前述本
発明の加飾シートの用途として、或いは上述本発明の加
飾成形品の製造方法として好適な加飾方法である射出成
形同時積層加飾法について、説明しておく。射出成形同
時積層加飾法は、積層形態と転写形態の２方式に大別さ
れるいわゆる射出成形同時加飾法のうち、積層形態によ
る加飾方法である。積層形態の射出成形同時積層加飾法
は、特公昭５０−１９１３２号公報、特公昭４３−２７
４８８号公報等に記載されるように、加飾シートを射出
成形の雌雄両型間に配置した後、流動状態の樹脂を型内
に射出充填し、樹脂成形物の成形と同時にその表面に加
飾シートを積層して加飾する方法である。

【００５５】射出成形同時積層加飾法では、加飾シート
の予熱無しの場合でも、射出樹脂による熱圧を加飾シー
トが受ける。従って、加飾シートの予備成形は行う形態
でも行わない形態でも、いずれでも良い。また、加飾シ
ートの予熱は、行っても良く、行わなくても良い。な
お、予備成形時には通常は加飾シートは予熱する。

【００５６】なお、もちろんの事だが、加飾シートの絞
りが大きい場合は、予備成形を行うのが好ましい。一
方、加飾シートの絞りが少ない場合は、射出される流動
状態の樹脂の樹脂圧と樹脂熱で加飾シートを成形しても
良い。この際、絞りが浅ければ、予備成形無しで樹脂射
出と同時に型内に充填される流動状態の樹脂の樹脂圧と
樹脂熱のみで加飾シートを成形しても良い。また、樹脂
圧と樹脂熱で加飾シートを成形する場合でも、加飾シー
トの加熱は射出樹脂の樹脂熱のみを利用し予熱はしない
事もある。また、加飾シートの予備成形は、通常は、射
出成形型を真空成形型と兼用して行うが、型間に加飾シ
ートを供給する前に、射出成形型外部で別の真空成形型
で加飾シートを真空成形する様な予備成形（オフライン
予備成形）でも良い。但し、予備成形は、射出成形型と
真空成形型とを兼用して行う形態が効率的且つ精度良く
加飾シートを積層できる点で好ましい。しかし、予備成
形済みの加飾シートを予め別の場所で纏めて製造してお
く場合等では、予備成形はオフライン予備成形の形態が
好ましい。なお、本発明の説明に於いて真空成形とは真
空圧空成形も包含する。

【００５７】図３の概念図によって、射出成形同時積層
加飾法を、その或る一形態で説明する。なお、ここで説
明する形態は、型締めする前に、加飾シートを型間で加
熱し軟化させて射出成形型で真空成形により予備成形し
た後に、型締めして樹脂を射出する形態である。また、
この形態は、上記した加飾シートの予備成形、予熱の各
種組合わせ形態の中で、加飾シートの絞りが深い場合
に、より好ましい形態である。

【００５８】先ず、図３（Ａ）の如く、射出成形型とし
ては、射出ノズルと連通する湯道（ランナー）及び湯口
（ゲート）を有する型（雄型）Ｍａと、キャビティ面に
吸引孔４１を有しシートの予備成形型を兼用する型（雌
型）Ｍｂの一対の成形型を用いる。これらの型は鉄等の
金属、或いはセラミックスからなる。型開き状態に於い
て両型Ｍａ、Ｍｂ間に加飾シートＳを供給し、型Ｍｂに
加飾シートＳを平面視枠状のシートクランプ４２で押圧
する等して固定する。この際、加飾シートの基材シート
側は、図面右側の射出樹脂側となる様にする事はもちろ
んである。次いで、適宜、両型間に挿入したヒータ（図
示略）で加飾シートを加熱軟化させる。加熱は例えば非
接触の輻射加熱とするが、接触による伝導加熱でも良
い。そして、吸引孔から吸引して真空成形して、加飾シ
ートを型Ｍｂのキャビティ面に沿わせ予備成形する。次
いで、ヒータを両型間から退避させ、図３（Ｂ）の如く
両型を型締めし、両型で形成されるキャビティに加熱熔
融状態等の流動状態の樹脂を充填する。そして、樹脂が
冷却等によって固化した後、型開きして成形物を取り出
し、加飾シートの不要部分があれば適宜トリミングする
事で、加飾成形品が得られるという加飾方法である。

【００５９】加飾シート及び加飾成形品の用途：なお、
前述加飾シートで表面加飾した上記加飾成形品等の加飾
物品の用途は、任意であるが、例えば、自動車等の車両
の内装材又は外装材、幅木、回縁等の造作部材、窓枠、
扉枠等の建具、壁、床、天井等の建築物の内装材、テレ
ビ受像機、空調機等の家電製品の筐体、容器等である。

【００６０】

【実施例】以下、実施例及び比較例により本発明を更に
詳述する。

【００６１】〔実施例１〕基材シート１としては、ポリ
プロピレン系樹脂からなる厚み１５０μｍの連続帯状の
シートを用意した。そして、この基材シートの表裏両面
に、先ずコロナ放電処理を施した。次いで、該基材シー
トの表側とする面に、バインダーの樹脂がアクリルウレ
タン系樹脂で、着色剤を弁柄とカーボンブラックを主体
とする着色インキをグラビア印刷して、木目柄を表現し
た絵柄インキ層からなる装飾層５を形成した。

【００６２】次に、樹脂成分として、熱可塑性ウレタン
樹脂４０質量部に対して電離放射線硬化性樹脂としてア
クリレート系プレポリマーからなる電子線硬化型樹脂６
０質量部を併用した混合樹脂を用いて、更に該混合樹脂
１００質量部に対して平均粒径２μｍのシリカ粉末から
なる体質顔料１０質量部を添加して成る塗液を、グラビ
アリバースコータで、前記基材シート１の装飾層形成側
の面全面に塗工して、未だ体質顔料が表面から突出して
いる図１（Ａ）の如き断面の体質顔料含有樹脂層を形成
して積層シートを得た。

【００６３】次いで、上記積層シートを１６０℃まで加
熱した状態で、該積層シートの表側、つまり透明樹脂層
とする体質顔料含有樹脂層側が鏡面ローラに当接する様
にして押し付け、積層シートの裏面側からは、鉄芯の表
面をシリコーンゴムで被覆した圧胴で押圧して、鏡面加
工を行った。なお、上記鏡面ローラは、円筒状の中空鉄
芯表面にクロムメッキを施したローラで、そのローラ表
面をＪＩＳ Ｂ０６０１（１９９６年）の算術平均粗さ
Ｒａが０．０１μｍの鏡面に磨いたローラであり、中空
部に熱水を通し表面温度は１８０℃に加熱して使用し
た。そして、この鏡面加工の結果、体質顔料含有樹脂層
の表面に突出していた体質顔料は、該樹脂層中に押し込
まれ該樹脂層表面は平滑面となった。この後、電子線を
照射して、該体質顔料含有樹脂層中の電離放射線硬化性
樹脂を架橋硬化させて、該樹脂層を透明樹脂層とし、図
１（Ｂ）の断面図の如きの高光沢な鏡面を持つ所望の加
飾シートが得られた。

【００６４】更に上記加飾シートを用いた図３の概念図
で例示の如き射出成形同時積層加飾法にて、ポリプロピ
レン系樹脂からなる樹脂成形物の成形と同時に、その三
次元形状の表面に前記加飾シートを積層し加飾した加飾
成形品を作製した。得られた加飾成形品は、表面が高光
沢で、且つひび割れも無く、外観良好な成形品であっ
た。なお、射出成形同時積層加飾法は、射出成形型を用
いた真空成形によって加飾シートの予備成形をした後、
射出成形する形態で行った。

【００６５】〔比較例１〕実施例１において、透明樹脂
層の樹脂分を電離放射線硬化性樹脂を省いて熱可塑性ウ
レタン樹脂のみとし、且つ透明樹脂層中への体質顔料の
添加を省略した他は、実施例１と同様に加飾シートを作
製した。そして、この加飾シートを用いて実施例１と同
様にして加飾成形品を作製した。

【００６６】〔比較例２〕実施例１において、透明樹脂
層の樹脂分として、熱可塑性ウレタン樹脂を省き電離放
射線硬化性樹脂のみとした他は、実施例１と同様に加飾
シートを作製した。そして、この加飾シートを用いて実
施例１と同様にして加飾成形品を作製した。

【００６７】〔性能評価〕実施例及び比較例について、
成形性、光沢性を評価した。結果は表１に纏めて示す。
なお、成形性は、加飾シートを１２０℃の温度に加熱し
た状態で、引張試験機（株式会社東洋精機製作所製）に
よる引張試験を行い、加飾シート表面（透明樹脂層面）
のひび割れ発生具合と、得られた加飾成形品の外観を目
視評価した。

【００６８】

【表１】

【００６９】表１の如く、実施例１では、引張試験で、
ひび割れは伸び率２５０％まで発生せず、また加飾成形
品の外観も良好で、成形性は良好であった。また、表面
も高光沢で光沢性も良好であった。一方、体質顔料が無
添加で熱可塑性樹脂のみの比較例１は、シート成形時に
発現した粘着性の為に加飾シートの伸びが綺麗に行か
ず、成形品表面に皺がでてしまい成形性不良となった。
また、表面皺の部分で光沢感が損なわれた。また、体質
顔料は添加してあるが、透明樹脂層の樹脂分が電離放射
線硬化性樹脂のみの比較例２では、引張試験にて伸び率
５０％の時点で既に表面にひび割れが発生してしまい、
この点で成形性が不良であった。また、成形品表面はひ
び割れの為に光沢感が損なわれた。

【００７０】

【発明の効果】（１）本発明の加飾シートによれば、高
光沢、成形性、透明性、耐擦傷性の全てを満たすことが
できる。 （２）更に、透明樹脂層が硬化された電離放射線硬化性
樹脂を含有する構成とすれば、表面物性として耐擦傷性
をより強化し、優れたものとできる。 （３）本発明の加飾成形品によれば、上記各加飾シート
による効果が得られる。つまり、高光沢、成形性、透明
性、耐擦傷性の全てを満たすことができる。しかも、透
明樹脂層を、更に電離放射線硬化性樹脂が硬化したもの
を含有する構成では、耐擦傷性をより強化し、優れたも
のとできる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の加飾シートの一形態を製法も含めて例
示する断面図。

【図２】本発明の加飾成形品の一形態を例示する断面
図。

【図３】本発明の加飾シートの一適用例として、射出成
形同時積層加飾法をその一形態で説明する概念図。

【符号の説明】

１ 基材シート ２ 透明樹脂層 ３ 透明樹脂 ４ 体質顔料 ５ 装飾層 ６ 樹脂成形物 ４１ 吸引孔 ４２ シートクランプ Ｄ 加飾成形品 Ｍａ 型（雄型） Ｍｂ 型（雌型） Ｓ 加飾シート

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 4F100 AA20H AK01A AK01B AK01C AK07 AK25 AK51 AL05B BA02 BA03 BA07 BA10B BA10C CA13B DE01B DE01H EH36 EH46 EJ42 EJ53 GB90 HB00 JB14B JB16A JK12 JK15B JL01 JN01B JN21 4F206 AD05 AD09 AD20 JA07 JB13 JB19 JF05 JL02

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 熱可塑性樹脂から成る基材シートの表面
   に透明樹脂層を積層して成る、成形用の加飾シートにお
   いて、 上記透明樹脂層は、樹脂分として少なくとも熱可塑性樹
   脂を含有すると共に、更に固体粒子からなる体質顔料が
   添加されて成り、該透明樹脂層の表面は平滑面を成し、
   前記固体粒子は該透明樹脂層表面から突出せずに該透明
   樹脂層中に埋入されて成る、加飾シート。
2. 【請求項２】 透明樹脂層が、更に電離放射線硬化性樹
   脂を含有し、該電離放射線硬化性樹脂は硬化されて成
   る、請求項１記載の加飾シート。
3. 【請求項３】 樹脂成形物の表面に、請求項１又は請求
   項２記載の加飾シートが、その透明樹脂層に対して基材
   シート側が前記樹脂成形物側を向く様にして積層されて
   成る、加飾成形品。