JP2012011676A - 加飾シートの製造方法、加飾シート及びそれを用いてなる加飾成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材上に意匠層を形成する工程と、該意匠層表面を平滑面にする工程と、該意匠層の平滑面上に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層する工程と、該電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層を形成する工程とを含む加飾シートの製造方法であって、さらに該加飾シートの裏面の十点平均粗さRzJISと基材の厚さTとが下記式(I)を満たし、かつ、算術平均粗さRaと基材の厚さTとが下記式(II)を満たすようにする粗面化処理工程を含むことを特徴とする加飾シートの製造方法である。
T×0.30>RzJIS (I)
T×0.20>Ra≧T×0.005 (II)
【選択図】図1
Description
しかし、かかる製造方法においては、意匠層を形成した際に表面に凹凸が生じ、その上に表面保護層を積層した際に表面保護層表面の平滑性が損なわれることが懸念される。
また、従来のように加飾シートの平滑化処理を全く行わないと、加飾シート表面の平滑性及び艶と射出成形後の加飾成形品の平滑性及び艶とが著しく異なることにより、加飾シートの意匠感と加飾成形品の意匠感とが大きく相違することがあった。
そこで、本発明者は、上記問題に鑑み、高光沢の加飾シートの裏面側に粗面化処理を施すことで、異物を巻き込むことによる表面の凹みや傷が生じにくく、表面と裏面が互いに密着することによる擦り傷やシワが生じにくい加飾シートの製造方法に係る特許出願(特願2010−071006)を行ったが、基材の厚さや算術平均粗さRaによっては、加飾シートを加熱成形に供し、シートが軟化した際に表面に凹凸が生じるという問題があることを見出した。
また、算術平均粗さRaのみを適正値に調整しても、局所的な凹凸が生じると加飾シート同士を重ねた際に摩擦が生じ、加飾シート同士がひっかかりやすくなることでシート表面が傷ついたり、加飾シートを用いてインサート成形を行った場合、表層に凹凸が表出し、平滑性を損なう恐れがあることを見出した。
(1)基材上に意匠層を形成する工程と、該意匠層表面を平滑面にする工程と、該意匠層の平滑面上に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層する工程と、該電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層を形成する工程とを含む加飾シートの製造方法であって、さらに、該加飾シートの裏面の十点平均粗さRzJISと基材の厚さTとが下記式(I)を満たし、かつ、算術平均粗さRaと基材の厚さTとが下記式(II)を満たすようにする粗面化処理工程を含むことを特徴とする加飾シートの製造方法、
T×0.30≧RzJIS (I)
T×0.20≧Ra≧T×0.005 (II)
(2)前記粗面化処理が、前記基材に梨地板を用いた熱プレス加工又は梨地ロールを用いたエンボス加工を施すことにより行われる上記(1)に記載の加飾シートの製造方法、
(3)基材上に意匠層を形成する工程と、該意匠層上にプライマー層を形成する工程と、該プライマー層表面を平滑面にする工程と、該プライマー層の平滑面上に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層する工程と、該電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層を形成する工程とを含む加飾シートの製造方法であって、さらに、該加飾シートの裏面の十点平均粗さRzJISと基材の厚さTとが下記式(I)を満たし、かつ、算術平均粗さRaと基材の厚さTとが下記式(II)を満たすようにする粗面化処理工程を含むことを特徴とする加飾シートの製造方法、
T×0.30≧RzJIS (I)
T×0.20≧Ra≧T×0.005 (II)
(4)前記粗面化処理が、前記基材に梨地板を用いた熱プレス加工又は梨地ロールを用いたエンボス加工を施すことにより行われる上記(3)に記載の加飾シートの製造方法、
(5)基材上に意匠層と、電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる表面保護層とをこの順に有する加飾シートであって、該表面保護層の表面が平滑であり、該加飾シートの裏面の十点平均粗さRzJISと基材の厚さTとが下記式(I)を満たし、かつ、算術平均粗さRaと基材の厚さTとが下記式(II)を満たすことを特徴とする加飾シート、
T×0.30≧RzJIS (I)
T×0.20≧Ra≧T×0.005 (II)
(6)前記意匠層と表面保護層との間に、さらにプライマー層を有する上記(5)に記載の加飾シート、
(7)前記表面保護層の表面の算術平均粗さRaが、0.01μm以上1.0μm未満である上記(5)に記載の加飾シート、及び
(8)上記(5)〜(7)のいずれかに記載の加飾シートを用いてなる加飾成形品、
を提供するものである。
図1及び図2は本発明の加飾シートの製造方法の第一の発明の概略を示す工程図である。第一の発明の製造方法は、以下の(1)〜(5)の工程を少なくとも含む方法である。
基材11上に意匠用インキを印刷又は塗工した後必要に応じ乾燥することにより意匠層12を形成する。意匠層12は、絵柄層及び/又は全面ベタ着色層からなる。意匠層12は、インキに含まれる顔料による凹凸や絵柄をパターン印刷したことにより生じる印刷部と非印刷部の凹凸を有していることが通常である。
この意匠層12の表面を、鏡面板を用いた熱プレス加工や鏡面ロールを用いたロールプレス加工により平滑面を形成する。上記熱プレス加工、ロールプレス加工は、公知の方法を用い、加飾シート10を構成する基材の軟化温度以上、融点或いは溶融温度未満の温度に加熱して軟化させ、該加飾シート10の表面側を加圧、賦形した後、冷却、固化して平滑面を形成することにより、図1(b)及び図2(b)に示すように意匠層12の表面は平滑となる。
尚、本発明において、意匠層12やプライマー層14の表面が平滑であるとは、算術平均粗さ(Ra)が0.5μm以下であることをいい、0.2μm以下であることが好ましい。ここで、算術平均粗さ(Ra)とは、JIS B 0601:2001に規定された算術平均粗さRaをいう。
次いで、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗工液又は電離放射線硬化性樹脂組成物を含有する塗工液を意匠層12の平滑面上に塗工することにより積層する。塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、意匠層12の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であれば良く、特に制限はない。
本発明の製造方法においては、調製された塗工液を、意匠層12の表面に、硬化後の厚さが1〜30μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。
ここで、電離放射線硬化性樹脂とは、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線等を照射することにより、架橋、硬化する樹脂を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
次に、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる未硬化樹脂層に電子線、紫外線等の電離放射線を照射することにより、電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層13を形成する。これにより、図1(c)及び図2(c)に示すように表面保護層13が形成された加飾シート10を得ることができる。
ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、電子線により劣化する基材11を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材11への余分な電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜100kGy(1〜10Mrad)の範囲で選定される。
さらに、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
本発明における加飾シート裏面の粗面化処理工程は、上述の式(I)及び式(II)を満たす程度に加飾シートの裏面を粗面化し得る工程であれば特に限定されないが、例えば、加飾シート10の裏面側、具体的には基材11の意匠層12や表面保護層13と接しない面を、梨地板を用いた熱プレスや梨地ロールを用いたエンボス加工やサンドブラスト処理により粗面化する方法が挙げられる。熱プレス加工、エンボス加工としては、公知の方法を用いることができ、加飾シート10を、構成する基材の軟化温度以上、融点或いは溶融温度未満の温度に加熱して軟化させ、該加飾シート10の裏面側を加圧、賦形した後、冷却、固化することにより、図1(b)に示すように加飾シート10の裏面は粗面化される。
また、本発明における粗面化処理としては、図2(d)に示すように、加飾シート10の裏面を、微小粒子含有樹脂層15を設けることにより、粗面化する方法も挙げられる。
被処理面のRzJIS及びRaの調整は、熱プレス温度やエンボス温度を調整したり、梨地板や梨地ロールの表面粗さを調整することで行うことができる。熱プレス温度やエンボス温度は、基材により適宜選定すればよく、例えば、塩化ビニルは30〜70℃、ポリプロピレン樹脂は160〜180℃、アクリル系樹脂は150〜260℃とすると、梨地板や梨地ロールの凹凸形状を良好に賦形することができる。
加飾シート10の裏面側に、微小粒子含有樹脂層15を設ける場合には、上記(1)〜(4)のいずれかの工程の前後で行うことができるが、上記工程(2)以降に行うと、加飾シート10の裏面の算術平均粗さRaを高く維持することができるため好ましい。被処理面のRzJIS及びRaの調整は、微小粒子とバインダー樹脂との配合比や、微小粒子の粒径を調整することで行うことができる。
T×0.30≧RzJIS (I)
T×0.20≧RzJIS (I−A)
T×0.18≧RzJIS (I−B)
加飾シート10の裏面の十点平均粗さRzJISが上記範囲を超えると加飾シート10が軟化した際に裏面側の粗さが表面にも影響し、例えば加飾シート10を用いてインサート成形を行った場合に、得られる成形品の表面の平滑性や表面艶が劣ったり、射出樹脂との密着性が劣るなどの問題が発生する。
T×0.20≧Ra≧T×0.005 (II)
T×0.18≧Ra≧T×0.02 (II−A)
T×0.15≧Ra≧T×0.03 (II−B)
加飾シート10の裏面の算術平均粗さRaが上記範囲未満であると、異物を巻き込むことによる表面の凹みや傷が生じたり、表面と裏面が互いに密着することによる擦り傷やシワが生じるおそれがある。一方、加飾シート10の裏面の算術平均粗さRaが上記範囲を超えると、基材の厚さに対して加飾シート10の裏面の算術平均粗さRaが大きすぎるため、加飾シート10が軟化した際に裏面側の粗さが表面にも影響し、例えば加飾シート10を用いてインサート成形を行った場合に、得られる成形品の表面の平滑性や表面艶が劣ったり、射出樹脂との密着性が劣るなどの問題が発生する。
また、算術平均粗さRaが小さくとも、十点平均粗さRzJISが上記範囲を超える場合、局所的に凹凸が生じている可能性があり、加飾シート10同士を重ねた際に摩擦が生じ、擦り傷等が発生する恐れが生じる。
ここで、平均粗さRaとは、JIS B 0601:2001に規定された算術平均粗さRaをいう。また、十点平均粗さRzJISとは、JIS B 0601:2001に規定された十点平均粗さRzJISをいう。
以下、第二の発明の製造方法について図3及び図4を用いて詳細に説明する。
図3及び図4は本発明の加飾シートの製造方法の第二の発明の概略を示す工程図である。第二の発明の製造方法は、以下の(1)〜(6)の工程を少なくとも含む方法である。
基材11上に意匠用インキを印刷又は塗工した後必要に応じ乾燥することにより意匠層12を形成する。意匠層12は、第一の発明と同様に絵柄層及び/又は全面ベタ着色層からなる。
次に、意匠層12の上にプライマー組成物を積層した後必要に応じ乾燥することによりプライマー層14を形成する。図3(a)及び図4(a)に示すようにプライマー層14の表面は、意匠層12表面の凹凸を反映して凹凸を有することになる。
このプライマー層14の表面を、鏡面板を用いた熱プレス加工や鏡面ロールを用いたロールプレス加工により平滑面を形成する。これらの熱プレス加工、ロールプレス加工は、第一の発明と同じであり、図3(b)及び図4(b)に示すようにこの工程によりプライマー層14の表面は平滑となる。
次いで、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗工液又は電離放射線硬化性樹脂組成物を含有する塗工液をプライマー層14の平滑面上に塗工することにより積層する。塗工方法、電離放射線硬化性樹脂内容は第一の発明で述べた通りである。
次に、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる未硬化樹脂層に電子線、紫外線等の電離放射線を照射することにより、電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層13を形成する。これにより、図3(c)及び図4(c)に示すように表面保護層13が形成された加飾シート10を得ることができる。ここで、電子線照射、紫外線照射等の電離放射線照射の硬化条件や用いられる電子線源、紫外線源等は第一の発明で述べた通りである。
粗面化処理工程の内容は、第一の発明で述べた通りであるが、熱プレスやエンボス加工により加飾シート10の裏面の粗面化を行う場合には、上記工程(3)と共に行うことが好ましく(図3(b)参照)、サンドブラスト処理や加飾シート10の裏面に微小粒子含有樹脂層15を積層して加飾シート10裏面の粗面化を行う場合には、上記工程(3)以降に行うことが好ましい(図4(d)参照)。
基材11の厚さは、用途に応じて選定されるが、通常、0.03〜1.0mm程度であり、コスト等を考慮すると0.03〜0.5mm程度が一般的である。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法等が挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性等の面から好ましく用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。
また、表面保護層13の延伸部に微細な割れや白化を生じにくくする効果を有する。
プライマー層14を構成するプライマー組成物は、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル・ウレタン共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン等が用いられる。
0.1μm以上であると、表面保護層の割れ、破断、白化等を防ぐ効果を十分に発揮させることも可能となる。一方、プライマー層の厚さが10μm以下であれば、プライマー層を塗工した際、塗膜の乾燥、硬化が安定であるので成形性が変動することが無く好ましい。以上の点からプライマー層の厚さは0.1〜10μmであることがより好ましい。
重合性モノマーとしては、代表的には、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであれば良く、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートは、特に限定されず、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、且つ末端あるいは側鎖に(メタ)アクリレートを有するものであれば良い。この(メタ)アクリレートは、架橋、硬化する観点から、2官能以上有することが好ましい。
ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000を超えることがさらに好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。耐傷付き性と三次元成形性とを両立させる観点から、さらに好ましくは、2,000を超え50,000以下であり、特に好ましくは、5,000〜20,000である。
本発明に用いられるアクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、特に限定されず、1分子中に、アクリル樹脂の構造の一部がシロキサン結合(Si−O)に置換しており、かつ官能基としてアクリル樹脂の側鎖及び/又は主鎖末端に(メタ)アクリロイルオキシ基(アクリロイルオキシ基又はメタアクリロイルオキシ基)を2個以上有しているものであれば良い。
アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、1,000以上であることが好ましく、2,000以上であることがより好ましい。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から150,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。三次元成形性と耐薬品性と耐傷付き性とを鼎立させる観点から、2,000〜100,000であることが特に好ましい。
また、多官能(メタ)アクリレートは、オリゴマー及びモノマーのいずれでも良いが、三次元成形性向上の観点から多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
多官能(メタ)アクリレートは、GPC分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000を超えることがさらに好ましい。多官能(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。耐傷付き性と三次元成形性とを両立させる観点から、さらに好ましくは、2,000を超え50,000以下であり、特に好ましくは、5,000〜20,000である。
また、光増感剤として、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤等を用いることができる。
微小粒子の平均粒径は好ましくは0.5〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmであり、添加量は、バインダー樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部の範囲が好ましく、0.5〜5質量部の範囲がさらに好ましい。なお、粒子の形状は、多面体、球形、鱗片状などである。
インサート成形法では、真空成形工程において、本発明の製造方法により得られる加飾シートを真空成形型により予め成形品表面形状に真空成形(オフライン予備成形)し、次いで必要に応じて余分な部分をトリミングして成形シートを得る。この成形シートを射出成形型に挿入し、射出成形型を型締めし、流動状態の樹脂を型内に射出し、固化させて、射出成形と同時に樹脂成形物の外表面に加飾シートを一体化させ、加飾樹脂成形品を製造する。
なお、射出成形同時加飾法では、射出樹脂による熱圧を加飾シートが受けるため、平板に近く、加飾シートの絞りが小さい場合には、加飾シートは予熱してもしなくても良い。
なお、ここで用いる射出樹脂としてはインサート成形法で説明したものと同様のものを用いることができる。
なお、各評価方法・測定方法の詳細を以下に示す。
(算術平均粗さRa)
株式会社東京精密製表面粗さ測定器、商品名「ハンディサーフE−35A」を使用し、JIS B 0601:2001に準拠し、長さLの粗さ曲線を中心線から折り返し、それぞれの粗さ曲線と中心線によって得られた全面積を長さLで割った値をマイクロメートル(μm)で表わした。
(十点平均粗さRzJIS)
十点平均粗さRzJISを、JIS B 0601:2001に準拠して、測定長4mm、カットオフ値0.8mmで測定した。
(耐ブロッキング性)
加飾シートを2枚用い、一方の表面側と他方の裏面側とを重ね合わせてブロッキング・テスターにより2.94MPaの荷重をかけ、40℃で72時間放置した後、接している面同士の付着・接合程度を以下の指標により評価した。
○:重ねた加飾シートを剥がす際、全く抵抗が無い状態である。
×:重ねた加飾シートを剥がす際に抵抗が有り、加飾シートの表面側にブロッキングに由来する擦り傷やシワが確認された。
(異物による傷、凹み)
加飾シートを、一層の表面側と他層の裏面側とを重ね合わせたロール状に巻き取り、20℃で168時間放置した。ロールから20枚の加飾シートを切り出し、表面保護層に傷、凹みが有るものの枚数を確認した。尚、これらの傷や凹みは、ロールに巻き込まれた微細な塵埃等の異物に起因するものと考えられる。
○:傷、凹みが生じた加飾シート 0枚
△:傷、凹みが生じた加飾シート 10枚未満
×:傷、凹みが生じた加飾シート 10枚以上
(表面艶)
グロスメーター(ビックガードナー社製マイクロ−トリ−グロス)を用い、入射角60°の条件で、グロス値を測定した。数値が高いほど艶が高いことを示す。
(平滑性)
加飾シートをインサート成形した成形品表面を目視にて評価した。
○;表面の平滑性に優れ、成形品表面に鮮鋭な像が映り込んだ。
×;表面の平滑性に乏しく、成形品表面に映り込んだ像が歪んだ。
(ヘイズ)
ASTM D4039に定義されたヘイズ値にて評価した。グロスメーター(ビックガードナー社製マイクロ−トリ−グロス)を用い、入射角60°、20°の条件で、それぞのグロス値を測定し、下式にてヘイズ値を求めた。
ヘイズ値=グロス値(60°)−グロス値(20°)
ヘイズ値が小さいほど光沢感、透明感が高いことを示し、ヘイズ値が大きいほど曇り透明性が低いことを示す。
(射出樹脂との密着性)
インサート成形後にシート表面にカッターナイフを用いて2mm間隔に縦10本、横10本の碁盤目状の切れ込みを入れた後、切れ込みを入れた部分にニチバン製セロテープ(登録商標)を圧着し、急激剥離した。
○:剥離がなかった、あるいは、碁盤目の切れ込みに沿って極軽微な剥離が見られた。
×:シートと射出樹脂の間で剥離が見られた。
基材として、ABS樹脂からなるシート(厚さ;300μm)を用い、該シートの表面に、アクリルウレタン共重合樹脂インキを用い、グラビア印刷により木目柄の意匠層を形成した。次に、意匠層側(表面側)に算術平均粗さRa0.05μmのステンレス製鏡面板を、意匠層を有しない側(裏面側)に算術平均粗さRa4.0μm、十点平均粗さRzJIS16μmの梨地柄の入ったステンレス製金属板を用いた熱プレス機を用い、得られたシートの意匠層表面に150℃、5kgf/cm2の加圧下、10分間熱プレス加工を行った。
熱プレス加工後の意匠層表面に、2官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量;2,000)からなる電子線硬化性樹脂組成物を硬化後の厚さが6μmとなるようにグラビアリバースにて塗布した。この未硬化樹脂層に加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ加飾シートを得た。
得られた加飾シートの十点平均粗さRzJISは、表面側が1.0μmであり、裏面側が14μmであった。また、算術平均粗さRaは、表面側が0.1μmであり、裏面側が2.0μmであった。
次に、得られた加飾シートを、シートの温度が170℃になるまで赤外線ヒーターで加熱し、軟化させた後、真空成形した。型より加飾シートを離型し、裏面を確認したところエンボスは消失し、平滑になっていた。真空成形した加飾シートの不要部分を、ダイカット型を油圧により押し当ててトリミングした。このトリミングした加飾シートを用いて、射出成形型に挿入した後、型締めして、型内にABS樹脂を射出して、成形品表面に加飾シートが積層一体化し、インサート成形による加飾樹脂成形品を得た。
熱プレス工程において、意匠層を有しない側(裏面側)に算術平均粗さRa8.5μm、十点平均粗さRzJIS39μmの梨地柄の入ったステンレス製金属板を用いた以外は、実施例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
基材として、厚さ200μmのABS樹脂からなるシートを用い、かつ、熱プレス工程において、意匠層を有しない側(裏面側)に算術平均粗さRa6.9μm、十点平均粗さRzJIS28μmの梨地柄の入ったステンレス製金属板を用いた以外は、実施例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
基材として、厚さ400μmのABS樹脂からなるシートを用い、かつ、熱プレス工程において、意匠層を有しない側(裏面側)に算術平均粗さRa4.0μm、十点平均粗さRzJIS23μmの梨地柄の入ったステンレス製金属板を用いた以外は、実施例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
基材として、ABS樹脂からなるシート(厚さ;300μm)を用い、該シートの表面に、アクリルウレタン共重合樹脂インキを用い、グラビア印刷により木目柄の意匠層を形成した。次いで、意匠層上にアクリル/ウレタンブロック共重合体を主剤とし、硬化剤としてイソシアネートを添加した2液硬化型ウレタン系樹脂を塗工して、厚さ2μmの透明なプライマー層を形成した。
次に、意匠層側(表面側)に算術平均粗さRa0.05μmのステンレス製鏡面板を、意匠層を有しない側(裏面側)に算術平均粗さRa4.0μm、十点平均粗さRzJIS16μmの梨地柄の入ったステンレス製金属板を用いた熱プレス機を用い、得られたシートのプライマー層表面に150℃、5kgf/cm2の加圧下、10分間熱プレス加工を行った。
熱プレス加工後のプライマー層表面に、2官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量;2,000)からなる電子線硬化性樹脂組成物を硬化後の厚さが6μmとなるようにグラビアリバースにて塗布した。この未硬化樹脂層に実施例1と同様の条件で電子線硬化性樹脂組成物を硬化させ加飾シートを得た。
得られた加飾シートの十点平均粗さRzJISは、表面側が1.0μmであり、裏面側が14μmであった。また、算術平均粗さRaは、表面側が0.1μmであり、裏面側が2.0μmであった。
次に、得られた加飾シートを用いて、実施例1と同様にして加飾樹脂成形品を得た。
熱プレス工程において、意匠層を有しない側(裏面側)に算術平均粗さRa8.5μm、十点平均粗さRzJIS39μmの梨地柄の入ったステンレス製金属板を用いた以外は、実施例5と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
基材として、厚さ300μmのABS樹脂からなるシートを用い、かつ、熱プレス工程において、意匠層を有しない側(裏面側)に算術平均粗さRa6.9μm、十点平均粗さRzJIS26μmの梨地柄の入ったステンレス製金属板を用いた以外は、実施例5と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
基材として、厚さ400μmのABS樹脂からなるシートを用い、かつ、熱プレス工程において、意匠層を有しない側(裏面側)に算術平均粗さRa4.0μm、十点平均粗さRzJIS23μmの梨地柄の入ったステンレス製金属板を用いた以外は、実施例5と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
基材として、厚さ400μmのABS樹脂からなるシートを用い、かつ、2官能のポリカーボネートアクリレート(重量平均分子量;10,000)と6官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量;6,000)を94:6の比で混合した電子線硬化性樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
基材として、厚さ400μmのABS樹脂からなるシートを用い、かつ、2官能のアクリルシリコーンアクリレート(重量平均分子量;20,000)と6官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量;5,000)を70:30の比で混合した電子線硬化性樹脂を用いた以外は実施例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
実施例10の熱プレス加工において、裏面側に、算術平均粗さRaが19μm、十点平均粗さRzJIS130μmの梨地柄の入ったステンレス製金属板を用いて、140℃で熱プレス加工を行った以外は、実施例5と同様に加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
基材として、厚さ200μmのABS樹脂からなるシートを用い、かつ、実施例10の熱プレス加工において、裏面側に、梨地柄の入ったステンレス製金属板に代えて、算術平均粗さRa1.8μm、十点平均粗さRzJIS6μmのステンレス製鏡面板を用いて熱プレス加工を行った以外は、実施例5と同様に加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
比較例2において、基材として、厚さ400μmのABS樹脂からなるシートを用い、かつ、表面側にアクリル系樹脂100質量部及びシリカ(平均粒径:3.0μm)10質量部からなる組成物を塗工量1g/m2でグラビア印刷を施して微小粒子含有樹脂層を設けた以外は比較例1と同様にして加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
基材として、厚さ100μmのABS樹脂からなるシートを用い、かつ、実施例10の熱プレス加工において、裏面側に、梨地柄の入ったステンレス製金属板に代えて、算術平均粗さRa28.2μm、十点平均粗さRzJIS97μmのステンレス製鏡面板を用いて熱プレス加工を行った以外は、実施例5と同様に加飾シート及び加飾樹脂成形品を得た。
また、加飾シート表面側に微小粒子含有樹脂層を設けた比較例3では、加飾樹脂成形品表面の平滑性が損なわれた。
比較例4では、Ra及びRzJISが大きすぎるため、加飾樹脂成形品の表面艶が著しく低下し、ヘイズが生じた。
11.基材
12.意匠層
13.表面保護層
14.プライマー層
15.微小粒子含有樹脂層
Claims (8)
- 基材上に意匠層を形成する工程と、該意匠層表面を平滑面にする工程と、該意匠層の平滑面上に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層する工程と、該電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層を形成する工程とを含む加飾シートの製造方法であって、さらに、該加飾シートの裏面の十点平均粗さRzJISと基材の厚さTとが下記式(I)を満たし、かつ、算術平均粗さRaと基材の厚さTとが下記式(II)を満たすようにする粗面化処理工程を含むことを特徴とする加飾シートの製造方法。
T×0.30≧RzJIS (I)
T×0.20≧Ra≧T×0.005 (II) - 前記粗面化処理が、前記基材に梨地板を用いた熱プレス加工又は梨地ロールを用いたエンボス加工を施すことにより行われる請求項1に記載の加飾シートの製造方法。
- 基材上に意匠層を形成する工程と、該意匠層上にプライマー層を形成する工程と、該プライマー層表面を平滑面にする工程と、該プライマー層の平滑面上に電離放射線硬化性樹脂組成物を積層する工程と、該電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して表面保護層を形成する工程とを含む加飾シートの製造方法であって、さらに、該加飾シートの裏面の十点平均粗さRzJISと基材の厚さTとが下記式(I)を満たし、かつ、算術平均粗さRaと基材の厚さTとが下記式(II)を満たすようにする粗面化処理工程を含むことを特徴とする加飾シートの製造方法。
T×0.30≧RzJIS (I)
T×0.20≧Ra≧T×0.005 (II) - 前記粗面化処理が、前記基材に梨地板を用いた熱プレス加工又は梨地ロールを用いたエンボス加工を施すことにより行われる請求項3に記載の加飾シートの製造方法。
- 基材上に意匠層と、電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなる表面保護層とをこの順に有する加飾シートであって、該表面保護層の表面が平滑であり、該加飾シートの裏面の十点平均粗さRzJISと基材の厚さTとが下記式(I)を満たし、かつ、算術平均粗さRaと基材の厚さTとが下記式(II)を満たすことを特徴とする加飾シート。
T×0.30≧RzJIS (I)
T×0.20≧Ra≧T×0.005 (II) - 前記意匠層と表面保護層との間に、さらにプライマー層を有する請求項5に記載の加飾シート。
- 前記表面保護層の表面の算術平均粗さRaが、0.01μm以上1.0μm未満である請求項5に記載の加飾シート。
- 請求項5〜7のいずれかに記載の加飾シートを用いてなる加飾成形品。
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