JP2003181517A - 冷間圧延方法 - Google Patents

冷間圧延方法

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JP2003181517A JP2002338325A JP2002338325A JP2003181517A JP 2003181517 A JP2003181517 A JP 2003181517A JP 2002338325 A JP2002338325 A JP 2002338325A JP 2002338325 A JP2002338325 A JP 2002338325A JP 2003181517 A JP2003181517 A JP 2003181517A
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広義 坂井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】循環式圧延油供給系統を用いた冷間圧延方法に
おいて、濃度10%以上のエマルションの直接供給方式
を用いることなく、高速圧延時の潤滑不足を解消する。 【解決手段】循環式圧延油供給系統を用いた鋼板3の冷
間圧延方法において、鋼板の上面および下面に、ロール
バイト1より離れた上流スタンド側の位置で、エマルシ
ョンを供給する冷間圧延方法。

Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、循環式圧延油供
給系統を使用する冷間圧延機における潤滑用クーラント
のスプレー方法を改良し、特に高速圧延時のチャタリン
グの発生を防止する鋼板の冷間圧延方法に関する。 【0002】 【従来の技術】冷間圧延では、圧延中に鋼板とロールの
間の摩擦を減少させるために潤滑油が必要となる。ま
た、摩擦発熱および加工発熱を除去するためにロールな
らびに鋼板の冷却が必要となる。冷間圧延における圧延
油(クーラント)の供給方式には、直接方式(ダイレク
ト方式)、循環方式(リサーキュレーション方式)、お
よびその折衷であるハイブリッド方式がある。 【0003】直接式圧延油供給方式(ダイレクト方式)
は、潤滑の目的で高濃度のエマルション圧延油を鋼板に
スプレーし、冷却の目的で水をロールにスプレーするた
め、潤滑性と冷却性に優れる。しかし、循環方式と異な
り、エマルション圧延油を循環使用しないため、圧延油
の原単位が高い。 【0004】一方、循環式圧延油供給方式(リサーキュ
レーション方式)は、圧延油と冷却水をあらかじめ混
合、攪拌して作成した低濃度のエマルション圧延油を、
循環しながら潤滑と冷却の目的で鋼板およびロールにス
プレーするため、圧延油の原単位が低い。しかし、直接
式圧延油供給方式と比較して、潤滑性および冷却性が劣
ることは否定できない。そのため、従来の循環方式で
は、特に、仕上板厚0.2mm以下の薄物材の高速圧延
時には潤滑不足となり、チャタリングと呼ばれる圧延機
の振動や、ヒートスクラッチと呼ばれる表面疵が発生す
るため、圧延速度が上げられないという問題があった。 【0005】これに対し、循環式圧延油供給方式の潤滑
性改善を目的とした従来技術としては、10%未満のエ
マルションを供給する循環式圧延油供給系統とは別に、
10%以上の高濃度のエマルションを、ロールバイトの
噛み込み直前の鋼板下面に100〜200L/minの
割合で直接供給する方法(特許文献1)が提示されてい
る。 【0006】しかし、上記従来技術には、以下の問題点
があった。 【0007】a)油脂が水中に乳化分散したエマルショ
ン圧延油が油と水に分離し、油分が金属表面に付着する
性質、すなわちプレートアウト性とエマルション濃度の
関係を調査すると、鋼板表面にスプレーされるエマルシ
ョン圧延油中に含まれる油脂量に対し、鋼板表面にプレ
ートアウトする油脂量の比率(以下、付着効率と称す)
は、エマルション濃度を高くすると低下することがわか
った。そのため、エマルション濃度を上昇させても十分
なプレートアウト層を得られないため、高速で圧延する
場合には、潤滑効果が小さく問題であった。 【0008】b)高速圧延時には、鋼板下面側だけでな
く、上面側にもヒートスクラッチが発生することがあ
る。高速圧延域においては下面だけではなく上面の鋼板
付着油量の減少もみられ、鋼板下面のみの潤滑性改善で
は不十分である。 【0009】c)濃度10%以上のエマルションの直接
供給方式の使用は、循環系統タンクの濃度増加の許容範
囲に限定される。すなわち、循環系統のエマルションの
油濃度を例えば4%とした場合、ストリップとともに付
着した油分が系外へ持ち出される分、リークおよびスカ
ムアウト等で失われる圧延油の補給量は、全スタンドで
50L/hr程度であるのに対し、上記従来技術(特許
文献1)において、直接供給される圧延油は、600L
/hr〜1200L/hrに達するため,直接供給方式
を使用することは循環系統のエマルション濃度を増加さ
せることになる。一方、圧延材料によっては、高濃度エ
マルションによる潤滑を行なうと、ロールと鋼板の間の
摩擦係数が小さくなり、スリップ等の異常圧延が発生す
るため、循環系統タンクのエマルション濃度が一定の上
限値を越えるのは望ましくない。そのため、直接供給方
式は、濃度増加の制約の許容範囲内でしか使用できない
問題があった。 【0010】チャタリングを防止する従来技術として、
制御指標として先進率に注目し、先進率を適正な値とな
るようにクーラント供給量を制御し、適正な潤滑状態に
調整する方法が提示されている。例えば、摩擦係数モデ
ル式からクーラント供給量を演算し、供給量を制御する
方法がある(特許文献2)。 【0011】しかし、最近のブリキ材の製品動向である
硬質・薄ゲージ化に伴い、生産性向上のために圧延の高
速化が進められている。そして、上記製品の生産工程で
は、潤滑が不足することに起因するチャタリングも発生
し、高速圧延の阻害要因となっている。すなわち、高速
圧延域においては、潤滑が不足することに起因したチャ
タリングと、潤滑が過多となることに起因したチャタリ
ングが発生する。このため、チャタリングを防止するた
めに、潤滑状態を広範囲に制御する手段が必要となる。 【0012】これに対し、循環式圧延油供給系統を用い
た冷間タンデム圧延機では、一般的に、エマルション油
を潤滑と冷却も兼ねてロールバイトへ向けて供給してい
るが、先進率を制御指標としてクーラント供給量を変更
しても、先進率の変更範囲が狭く、目標とする先進率へ
の制御が困難であった。すなわち、適正な潤滑状態を得
られず、チャタリングを防止できなかった。 【0013】 【特許文献1】特公昭59−24888号公報(特許請
求の範囲など) 【0014】 【特許文献2】特公平6−13126号公報、(特許請
求の範囲など) 【0015】 【本発明が解決しようとする課題】本発明は、循環式圧
延油供給系統を用いた冷間圧延方法において、濃度10
%以上のエマルションの直接供給方式を用いることな
く、高速圧延時の潤滑不足を解消することを目的とす
る。 【0016】また、本発明は、循環式圧延油供給系統と
は別の圧延油供給系統を用いて、高速圧延時の潤滑不足
を解消することを目的とする。 【0017】更に本発明は、圧延中の先進率を目標先進
率範囲内に制御して、高速圧延時のチャタリング発生を
防止することを目的とする。 【0018】 【課題を解決するための手段】第1の発明は、循環式圧
延油供給系統を用いた鋼板の冷間圧延方法において、ロ
ールバイトより離れた上流スタンド側の位置で、鋼板の
上面および下面にエマルションを供給することを特徴と
する冷間圧延方法である。 【0019】以下、本第1発明の原理を説明する。 【0020】エマルションのスプレーノズルの位置を、
ロールバイトから離れた上流スタンドにできるだけ近い
位置とするのは、エマルションがプレートアウトするた
めの時間(以下、転相時間と称す。)を確保すること
で、鋼板付着量が増加し、潤滑性が向上するという試験
結果に基づくものである。 【0021】図4は、エマルションを供給するスプレー
ヘッダーの取り付け位置を示すものである。ヘッダーA
は、循環式圧延油供給方式の一般的な潤滑用クーラント
の供給ヘッダーであり、ロールバイト直近に設置されて
いる。ヘッダーB、Cは、ヘッダーAの取付け位置を移
動させ、ロールバイトより各々1m、3m離れた位置と
した場合である。また、ヘッダーA’は、循環式圧延油
供給系統とは別に、循環式圧延油供給系統よりも高濃度
なエマルションを、ロールバイト直近の鋼板下面側に供
給する従来技術によるへッダーである。 【0022】図5は、上記各へッダーを用い、鋼板を圧
延したときの、圧延機出側の上面側及び下面側の鋼板付
着油量の平均値を示すものである。なお、鋼板付着油量
の測定は、鋼板表面の油分をヘキサン等の有機溶剤にて
抽出し、抽出油分量を測定する方法(溶剤抽出法)によ
り行った。圧延油として牛脂を用い、循環式圧延油供給
系統のヘッダーA、B、Cより、油分濃度3.5%、平
均粒径9μmのエマルションを、3400L/minの
割合で供給した。また、ヘッダーAと併せて、ヘッダー
A’より、平均粒径9μm、濃度10%のエマルション
を鋼板下面に200L/minの割合で供給した。この
結果によると、ヘッダー取り付け位置をロールバイトよ
り離すに従って、鋼板付着油量は増加し、潤滑不足が解
消される傾向を示す。また、ヘッダーAとあわせて、ヘ
ッダーA’を併用すると、ヘッダーAを単独で使用する
場合よりも鋼板付着油量は若干増加するものの、ヘッダ
ーBと同等であり、むしろヘッダーCの方が鋼板付着油
量は高く、潤滑性の改善効果の大きいことがわかる。 【0023】上述した結果は、エマルション圧延油のプ
レートアウト性が、スプレーされてからの時間に依存す
る現象と関係している。 【0024】図6は、エマルション圧延油がストリップ
にスプレーされる場合に、油分が水から分離し油膜(プ
レートアウト層)を生成する過程を詳細に示す。水に油
滴が分散したいわゆるO/W型のエマルションがストリ
ップの表面に噴射された際、エマルション中の油滴がス
トリップの表面にまず衝突することにより圧力を受け、
次にストリップとの相対速度でせん断を受け、さらに温
度上昇をともなったストリップと物理的に吸着したり、
場合によっては水分の蒸発を生じて、O/W型のエマル
ションがW/0型(油中に水滴が分散)のエマルション
あるいは油単層に転相する。これによりプレートアウト
層を生じると考えられる。この過程はスプレーされると
瞬時に起るのではなく、上述した力学条件、温度条件の
下での転相といった遷移過程(反応)に起因するため、
時間依存過程であると考えられる。それに所要する時間
は短時間かもしれないがいずれにしてもある時間を必要
とすることは言うまでもない。発明者らは、このように
プレートアウト性に転相のための時間、すなわち転相時
間が大きな影響を与えると考えた。 【0025】また、発明者らはさらに、図7に示すプレ
ートアウト試験方法(圧延油をスプレーした後、所定の
時間後エアブローによりプレートアウトしない圧延油を
吹き飛ばす方法)により、エマルション圧延油のプレー
トアウト性と転相時間の関係を調査した。図8にその結
果を示す。これによると、プレートアウト量は転相時間
に大きく依存し、転相時間を増加させるとプレートアウ
ト量は増加する。また、図中のtmin よりも転相時間が
短くなると、急激にプレートアウト量は低下する。その
ため、tmin 以上の転相時間を確保するのが好ましい。
tmin を以下、最小転相時間と称す。 【0026】以上の結果より、従来技術で行われている
ロールバイト噛み込み直前でエマルションを供給する方
法では転相時間を確保できないため、十分なプレートア
ウト層を形成できない。特に高速圧延域では、プレート
アウトするまでの時間が極端に短かくなるため、従来技
術のようにロールバイト噛み込み直前でエマルションを
供給する方式では、エマルションを高濃度化してもほと
んど潤滑性の改善効果はない。 【0027】一方、本発明により、スプレーノズルの位
置をロールバイトから離れた上流スタンドに近い位置と
し、転相時間を確保することにより、循環系統の濃度の
低いエマルションを用いても十分なプレートアウト層を
形成できるため、高速圧延域での潤滑性を確保すること
ができる。ヘッダーは上記プレートアウト試験より得ら
れる最小転相時間tmin を少なくとも確保できる位置に
取り付けるのが好ましい。従って、エマルション供給位
置からロールバイトまでの距離L(m)は下式を満足す
るよう決定する。 【0028】L≧Vin・tmin …式(1) (ただし、Vinは入側ストリップ速度(m/sec)、
tmin は必要な最小転相時間(sec)を表す。) また、図9は、5スタンド冷間圧延機における圧延速度
と圧延機出側の鋼板付着油量の関係を示すが、高速圧延
域においては鋼板下面側だけでなく、上面側の鋼板付着
油量も減少している。これは、エマルションのプレート
アウトが、エマルションがスプレーされてプレートアウ
トするまでの転相時間に依存する現象と関係している。
すなわち銅板下面側はプレートアウトしないエマルショ
ンは直ちに落下するが、鋼板上面側はスプレーされたエ
マルションが鋼板面上に滞留するため有効な供給圧延油
量は多くなる。そのため低速圧延域では上面側の付着量
は下面側に比べて通常多くなるが、高速圧延域ではエマ
ルションがスプレーされてプレートアウトするまでの転
相時間が短くなるためにプレートアウト量が下面と同様
に減少する。従って、上下面にスプレーすることで、高
速圧延域でも上面、下面の両方で十分な濶滑性改善を行
なう必要がある。 【0029】以上では、循環式圧延油供給系統を用いる
場合について述べたが、本発明原理は直接式圧延油供給
系統を用いた冷間タンデム圧延機にも適用可能である。 【0030】第2の発明は、循環式圧延油供給系統のエ
マルションより大きな平均粒径となるように調整した付
着効率の高い、プレートアウト性に優れるエマルション
を供給する。このことは以下の検討結果に基づくもので
ある。 【0031】すなわち、発明者らは、エマルションを鋼
板に供給したとき、エマルションの付着効率を向上させ
る手段について鋭意検討した結果、エマルション平均粒
径を増加させると、付着効率が大幅に向上することを見
出した。図7に示すプレートアウト試験方法により、エ
マルションの平均粒径と付着効率の関係を調査した結果
を図10に示すが、平均粒径の増加とともに付着効率が
増加する。特に、平均粒径が20μm以上で、急激に付
着効率が増加する。 【0032】図11は、図4に示すスプレーヘッダーC
より、平均粒径20μmのエマルション圧延油と、平均
粒径9μmのエマルション圧延油を鋼板表面にスプレー
したときの、エマルション供給量と鋼板付着油量の関係
を調査した結果である。このとき、基油としては牛脂を
用い、油分濃度3.5%のエマルション圧延油とし、タ
ンク内に設置された攪拌器の回転数によりエマルション
の平均粒径を調整した。 【0033】これによると、平均粒径20μmのエマル
シヨン圧延油とすることにより、平均粒径9μmのエマ
ルション圧延油よりも鋼板付着油量が多くなった。この
ことは、付着効率の高い平均粒径の大きいエマルション
圧延油を用いることにより、少量のエマルション供給量
でも高速圧延域での潤滑性を改善することができる。 【0034】しかし、エマルションの粒径を大きくする
と、乳化安定性が損なわれるため、循環式圧延油供給方
式のエマルションとしては適さない。例えば、圧延によ
り発生する摩耗粉や鋼板が持ち込む鉄粉などが循環系統
クーラントに混入すると、平均粒径の大きなエマルショ
ンは容易に破壊されるため、乳化分散性が経時的に変化
しやすい。それに伴い圧延の不安定化、鋼板表面の光沢
性の変化などの発生が問題となる。 【0035】そこで、平均粒径の大きいエマルションを
潤滑用エマルションとして用いるには、循環式圧延油供
給系統とは別に第2の圧延油供給系統を設け、圧延油原
油、界面活性剤、および希釈水を新たに調合し、平均粒
径の大きいエマルションとする必要がある。 【0036】第3の発明は、循環式圧延油供給系統を用
いた鋼板のタンデム圧延機による冷間圧延方法におい
て、循環式圧延油供給系統とは別に第2の圧延油供給系
統を設け、循環式圧延油供給系統よりも大きな粒径(例
えば20μm)となるように調整した付着効率の高いエ
マルションを、ロールバイトより離れた上流スタンド側
の位置で鋼板にスプレーし、その供給量を調整すること
により、圧延中の先進率を目標先進率範囲内に制御し、
そのことにより高速圧延時のチャタリング発生を防止す
る方法である。 【0037】図17は、全5スタンド・タンデムミルに
おいて、チャタリングの発生とNo.5スタンドの先進
率の関係を示すものであるが、チャタリングの発生しな
い安定先進率範囲が存在することがわかる。先進率は、
圧下率、張力等の圧延条件が同一である場合には、圧延
潤滑状態を表す一つの指標といえる。1%以上の高い先
進率領域で発生しているチャタリングは潤滑が不足する
ことに起因するチャタリングであり、0%以下の低い先
進率域で発生しているチャタリングは潤滑が過多となる
ことに起因するチャタリングである。 【0038】500〜1000mpmの低・中速域で
は、潤滑が過多となることに起因するチャタリングの発
生が問題となる。このとき、第5スタンドの先進率は圧
延速度に対し図18中の(a)のように変化し、500
〜1000mpmの圧延速度域において、速度とともに
先進率は低下する。これは、圧延速度とともに摩擦係数
が低下するためである。そして、先進率が0%よりも小
さくなると潤滑が過多となることに起因するチャタリン
グが発生する。このチャタリングを防止するためには、
クーラント供給量を低下させることで摩擦係数を上昇さ
せ、先進率を0%以上まで上昇させる方法が基本とな
る。 【0039】一方、1200mpm以上の高速圧延域で
は、潤滑が過多となることに起因するチャタリングと、
潤滑が不足することに起因するチャタリングの両方が発
生する。潤滑が過多となることに起因するチャタリング
が発生する場合、先進率は圧延速度に対し、図18中の
(b)のように変化する。また、潤滑が不足することに
起因するチャタリングが発生する場合、先進率は圧延速
度に対し、図18中の(c)のように変化する。このた
め、チャタリングを防止するためには、先進率を0%か
ら1%の広範囲にわたって制御可能な制御手段が必要と
なる。 【0040】本発明者らは、クーラント供給量を調整し
て目標先進率に制御する方法において、クーラント供給
量の変更に対し、先進率の変更範囲を大きく取れる方法
について、鋭意検討した結果、次のような新たな知見を
得た。 【0041】1つは、クーラントヘッダーの取り付け位
置を、ロールバイトから離れた上流スタンドにできるだ
け近い位置とすることにより、クーラント供給量の変更
による先進率の変更範囲を広く取れることを見出した。 【0042】図19は、図4と同様の試験で、試験時の
ヘッダーの取り付け位置を示すものである。スプレーヘ
ッダーAは循環式圧延油供給系統における一般的な潤滑
用エマルションの供給ヘッダーであり、ロールバイト直
近に設置されている。また、スプレーヘッダーB,C
は、ロールバイトより各々1.0m、3.5m離れた位
置とした。なお、スタンド間距離は4.5mである。図
20は、試験時のエマルション供給量と先進率の関係を
示すが、スプレーヘッダーの取り付け位置を、ロールバ
イトより離し、上流スタンド側へ近づけるほど、クーラ
ント供給量の変更による先進率の変更範囲が広くなって
いるのがわかる。図21は、このときの圧延材表面の鋼
板付着油量の調査結果であるが、鋼板付着油量は先進率
と対応し、スプレーヘッダーの取り付け位置をロールバ
イトより離し上流スタンド側へ近づけるほど多くなる。 【0043】この理由は以下の通りである。すなわち、
ロールバイトより離れた上流スタンド側で鋼板へエマル
ションをスプレーすることにより、スプレーされたエマ
ルションが鋼板表面にプレートアウトするための転相時
間を確保できるためプレートアウト量が増加する。この
ため、エマルション供給量を変更すると、摩擦係数が大
きく変化する。これに伴い、先進率の変更範囲も広くな
る。特に、高速圧延域においては、エマルションがプレ
ートアウトするための時間が短くなるため、ヘッダー位
置をロールバイトよりできるだけ上流スタンド側とする
ことは有効である。 【0044】本発明において、ロールバイトより離れた
上流スタンド側の位置にヘッダーを設置し、鋼板にスプ
レーするエマルション供給量を調整し、圧延中の先進率
を目標範囲内に制御するとしたのは、かかる知見に基づ
くものである。 【0045】さらに、鋭意検討した結果、循環式圧延油
供給系統よりも平均粒径の大きいエマルションを用いる
と、さらに効果的であることが分かった。図22は、圧
延油として牛脂を用い、カチオン系分散剤を界面活性剤
として添加し、循環系統と同じ平均粒径10μmのエマ
ルションとして使用する場合と、より平均粒径の大きい
20μmのエマルションを使用した場合の、エマルショ
ン供給量と先進率の関係を示す。このときのスプレーヘ
ッダーは、図19中のスプレーヘッダーCを用いた。ま
た、エマルションの平均粒径は、界面活性剤の添加量お
よび機械的撹拌条件の調整により行った。これによる
と、平均粒径20μmのエマルションの場合、供給する
エマルションが少量であっても、先進率の変更範囲を大
きく取れることがわかる。また、図23は圧延材表面の
付着油量の測定結果であるが、先進率と対応しており、
平均粒径20μmのエマルションを用いると付着油量が
大きく増加する。 【0046】図24は、エマルション供給量を0〜10
0L/minの範囲で変更したときの、先進率の変更範
囲とエマルション平均粒径との関係を示すものである
が、平均粒径の増加とともに先進率の変更範囲が増加
し、特に、平均粒径が20μm以上で急激に先進率の変
更範囲が拡大する。 【0047】これは、エマルションの平均粒径が大きく
なると、プレートアウト量が増加するため、エマルショ
ンの供給量の変更に対する、摩擦係数の変化が大きくな
り、これに伴い、先進率の変化も大きくなるためであ
る。 【0048】以上に示したように、循環式圧延油供給系
統を備えた冷間タンデム圧延機において、本発明による
クーラント供給方法を用いることにより、クーラント供
給量の変更による先進率の変更範囲を大きくとれる。こ
のため、高速圧延域において、先進率を指標としたクー
ラント供給量を変更することにより、潤滑の不足に起因
したチャタリングおよび潤滑の過多となることに起因す
るチャタリングのいずれも発生しない目標先進率に制御
できるため、チャタリングを防止できる。 【0049】 【本発明の実施の形態】(実施の形態1)図1は、本第
1発明方法を実施する設備の一例であり、全5スタンド
のタンデムミルの第4スタンドおよび第5スタンドに適
用した場合である。第4、5スタンドに適用したのは、
後段スタンドほど圧延速度が速く、しかも、板厚が薄く
なるため、圧延荷重が高くなり、潤滑条件として厳しく
なり、ヒートスクラッチの発生頻度が高くなるためであ
る。図1は、No.1〜No.5(#1STD〜#5S
TD)のスタンドを有するタンデム圧延機の配置例を示
し、1はワークロール、2はバックアップロール、3は
ストリップ、4aは従来の潤滑用クーラントヘッダー、
4bは冷却用クーラントヘッダー、5は、本発明による
No.4,5スタンド入側の潤滑用クーラントヘッダー
である。潤滑用クーラントヘッダー5の位置は、ロール
バイトからの距離Lが、式(1)を満足し、ロールバイ
トよりできるだけ離れた位置とし、鋼板表面に供給され
たエマルションがプレートアウトするための転相時間を
最大限に確保する。最小転相時間tmin は、図7に示す
プレートアウト試験により求める。牛脂系エマルション
の場合、図8よりtminは、0.12secとなる。ま
た、最高圧延速度が2000mpmのとき、No.4、
5スタンドの圧下率を各々35%、30%とすると、各
スタンドの入側ストリップ速度は、910mpm、14
00mpmとなる。よってロールバイトよりヘッダー取
り付け位置までの距離Lは、No.4スタンドで1.8
m以上、No.5スタンドで2.8m以上必要となる。
ここでは、前スタンド出側のロール・ストリップ冷却用
クーラントヘッダー4bの影響を受ける領域の直後(前
スタンド出側より1.0m)とし、入側ロールバイトよ
り3.5mの位置に設置した。なお、スタンド間は4.
5mである。 【0050】(実施の形態2)図2は、本第2発明方法
を実施する設備の一例であり、全5スタンドのタンデム
ミルの第4スタンドおよび第5スタンドに適用した場合
である。なお、スプレーヘッダーの配置は、上記実施形
態1で示した図1と同様であり、同じ符号を付してその
説明を省略する。 【0051】温水、圧延油原油、界面活性剤は、各タン
ク7、8、9より供給ポンプ10a、10b、10cを
経由し、所定の油分濃度、界面活性剤の対油濃度となる
ように流量調整弁11a、11b、11cで補給量を調
整され、エマルション貯蔵タンク6へ供給される。タン
ク内のエマルション濃度、界面活性剤の対油濃度、およ
びエマルション温度は、循環式圧延油供給系統と同一と
する。タンク内の油分の平均粒径は、撹拌器12の回転
数の調整により循環式圧延油供給系統よりも平均粒径の
大きなエマルションとする。例えば、基油を牛脂とし、
乳化分散剤にカチオン系分散型の界面活性剤を対油濃度
0.6%添加する場合、循環式圧延油供結系統のエマル
ションの平均粒径は約9〜10μmとなる.これに対
し、タンク6内の平均粒径は30〜50μmとなるよう
に調整する。 【0052】この平均粒径の大きいエマルション圧延油
は、ポンプ13により、圧延油供給ライン14を経由し
てスプレーヘッダー5よりストリップの上下面に供給さ
れる。この時のエマルション粒径は、ポンプ13および
スプレーヘッダー5のノズル部にてせん断を受け、平均
粒径20〜40μmとなる。 【0053】鋼板へのスプレー後、鋼板にプレートアウ
トしないエマルションは、回収オイルパン15にて、冷
却用の循環系エマルションとともに回収され、戻りライ
ン16を経由して、循環式圧延油供給タンク17内に混
入する。混入後、タンク内の撹拌器18により撹拌さ
れ、循環系エマルションと同じ粒径まで細分化され、タ
イトなエマルションとなる。 【0054】(実施の形態3)図16は、本第3発明方
法を実施する設備の一例であり、全5スタンド・タンデ
ム圧延機に適用した場合である。調査の結果、No.5
スタンドをトリガー・スタンドとしたチャタリングの発
生頻度が高く、本第3発明のNo.5スタンドへの適用
が効果的であることが確認された。この結果に基づき、
図16には、No.1〜4スタンドの潤滑を循環式の第
1の圧延油供給系統により行い、No.5スタンドの潤
滑を本発明による第2の圧延油供給系統により行う場合
について示す。なお、No.1〜5スタンドのロール冷
却は、各スタンド出側にて循環系統のエマルションをロ
ールへスプレーして行う。 【0055】温水、圧延油原油、界面活性剤は各タンク
7,8,9より供給ポンプ10a,10b,10cを経由しエ
マルション貯蔵タンク6へ補給される。この時の補給量
は、流量制御弁11a,11b,11cの弁開度により
調整される。タンク内の撹拌器12の撹拌条件および界
面活性剤の添加量を調整し、平均粒径の大きい(例えば
20μm以上)エマルションを作成する。なお、エマル
ション濃度は、循環式の第1の圧延油供給系統のエマル
ションと同じかそれ以上とする。 【0056】 【0054】この第2の圧延油供給系統のエマルション
液は、ポンプ13により供給配管14を経由して、ヘッ
ダー5aおよびヘッダー5bより鋼板表面へ供給され
る。ヘッダー5a,5bは、できるだけNo.4スタン
ドに近い位置に設置するのが望ましい。ここでは、N
o.4スタンド出側のロール冷却の影響範囲の直後(N
o.4スタンドより1m)のロールバイトより、3.5
m離れた位置に設置した。 【0057】鋼板へスプレーされるエマルション流量
は、バルブ30の開度により調整され、その弁開度は制
御装置31により、No.5スタンドの先進率がチャタ
リングの発生しない安定範囲内となるように設定され
る。 【0058】以下に、弁開度の設定方法を示す。 【0059】(1)パルスジェネレータ32より計測さ
れるワークロールの回転速度とスタンド出側の板速度計
33より計測される板速度を式(2)に代入し、No.
5スタンドの圧延中の先進率を求める。 【0060】 【数1】 【0061】ただし、fs(%):先進率、Vs(m/
min):板速度、D(m):ワークロール直径、n
(rpm):ロール回転速度(2)目標先進率との偏差
を式(3)より計算する。 【0062】 【数2】 【0063】ただし、Δfs(%):目標先進率との偏
差、fs(%):圧延中の先進率、fs(%):目標
先進率 目標先進率は、図17に示すような、チャタリングの発
生しない安定な先進率範囲の調査を元にして決定する。 【0064】(3)式(4)より第2の圧延油供給系統
のエマルション供給量の変更量ΔQを計算する。 【0065】 【数3】 【0066】ただし、ΔQ(L/min)はエマルショ
ン供給量の変更量、Δfs(%)は圧延中の先進率と目
標先進率との偏差、∂fs/∂μ(%/−)は、先進率
fsに対する摩擦係数μの影響係数、∂μ/∂Q(−/
L/min)は、摩擦係数μに対するエマルション供給
量Qの影響係数、である。 【0067】∂fs/∂μは、例えば、Bland&F
ordの先進率式の摩擦係数μに関する導関数式(5)
で与える。 【0068】 【数4】 【0069】 【数5】 【0070】ただし、μは圧延中の摩擦係数、km(k
g/mm2 )は圧延材の平均変形抵抗、H(mm)、h
(mm)は入・出側板厚、σb(kg/mm2 )、σf
(kg/mm2 )は圧延中の前・後方ユニット張力、
R′(mm)はロール偏平半径を表す。 【0071】なお、圧延中の平均変形抵抗kmおよび摩
擦係数μは、Hillの圧延荷重式(7)およびBla
nd&Fordの先進率式(8)に圧延中の測定荷重
P、fsを代入し、両式を連立させて求める。 【0072】 【数6】 【0073】 【数7】 【0074】ただし、W(mm)は板幅、P(ton)
は圧延中の圧延荷重、fs(%)は圧延中の先進率、を
表す。 【0075】また、∂μ/∂Qは、圧延実験および操業
上採取されるデータをもとに決定する。以下に、その一
例を示す。 【0076】エマルション供給量とプレーアウト油膜厚
PΦの関係は、プレートアウト試験による調査の結果、
式(9)で表される。 【0077】 【数8】 【0078】ただし、PΦはプレートアウト油膜厚(μ
m)、cはエマルション濃度(%)、fはエマルション
付着効率(%)、Qはエマルション供給量(L/mi
n)、Wはスプレー幅(m)、Vsはスプレー部の鋼板
速度(m/min)を表す。 【0079】また、摩擦係数μは、プレートアウト油膜
厚PΦとワークロールの表面粗さΛの比の関数として式
(10)で表される。 【0080】 【数9】 ただし、n、mは定数、Λはワークロールの表面粗さ
(μm)である。 【0081】式(9)を式(10)に代入し、エマルシ
ョン供給量Qの導関数を計算すると、式(11)が得ら
れる。 【0082】 【数10】 【0083】ただし、Q(L/min)はエマルション
供給量、c(%)はエマルション濃度、f(%)はエマ
ルション付着効率、w(m)はスプレー幅、Vs(m/
min)はスプレー部の鋼板速度、Λ(μm)はワーク
ロールの表面粗さ、a,m,nは定数。 【0084】(4)ΔQに応じて流量制御弁30の弁開
度を変更し流量制御を行う。 【0085】一方、循環式圧延油供給系統のエマルショ
ンは、タンク17よりポンプ19、配管20を経由し、
潤滑油としてヘッダー4a,4aよりロールバイト入側
へ供給される。また、冷却としてヘッダー4b,4bよ
りスタンド出側ロールへ供給される。その後、オイルパ
ン15により回収され、配管16を経由してタンク17
へ戻る。 【0086】 【実施例】(実施例1)図3は、全5スタンドの冷間タ
ンデム圧延機の第4,5スタンドに本発明を適用した実
施形態1(図1)の、特に#4、#5スタンドの潤滑用
クーラントヘッダーの配置に関して詳細に示したもので
ある。このようなヘッダー配置の5スタンド・タンデム
ミルを用い、母材厚1.8mm、板幅900mmの硬質
ブリキ原板を仕上げ厚0.183mmまで冷間圧延を行
なった際の、使用ヘッダー、エマルション濃度およびエ
マルション供給量の組み合わせを表1に示す。なお、圧
延油として牛脂系エマルション(40℃で基油粘度40
cSt、エマルション温度60℃)を用いた。図3中、
1は本発明による潤滑用クーラントヘッダー(ヘッダー
B)を示し、2は従来の潤滑用クーラントヘッダー(ヘ
ッダーA)を示し、3は従来技術(特公昭59-24858号)
の別系統の潤滑用クーラントヘッダーを示す。 【0087】 【表1】 【0088】以上の条件で圧延速度を変更しつつ圧延を
行い、鋼板付着油量および第5スタンドの摩擦係数を調
査した。図12に圧延速度と鋼板付着油量の関係を、そ
して、図13に圧延速度と第5スタンドの摩擦係数の関
係を、本発明と従来方式1および従来方式2を比較して
示した。なお、鋼板付着油量は、鋼板表面の油分をヘキ
サン等の有機溶剤にて抽出し、抽出油分量を測定する方
法(溶剤抽出法)により行なった。 【0089】従来方式1では、800mpm以上の速度
域で鋼板付着量が表裏面とも減少した。また、従来方式
2では、1000mpmでは、従来方式1よりも裏面の
み鋼板付着量が増加しているものの、1200mpm以
上の高速域では付着油量が急激に低下した。これに対応
して、従来方式1、従来方式2の場合の摩擦係数は、高
速圧延域で上昇し、それぞれ速度1200mpm、15
00mpmにおいて潤滑不足により発生するチャタリン
グが発生した。 【0090】一方、本発明では、表裏面とも1200m
pm以上の高速域でも安定した鋼板付着油量が得られ
た。その結果、第5スタンドの摩擦係数の上昇が抑制さ
れ、高速域まで安定した摩擦条件が得られている。特
に、高速域での摩擦係数の上昇がほとんど生じることが
なくなり、潤滑不足により発生するチャタリングが発生
しなくなった。 【0091】(実施例2)実施例1と同じ5スタンド・
タンデムミルを用い、母材厚2.3mm、板幅900m
mの軟質ブリキ原板を仕上げ厚0.183mmまで冷間
圧延を行なった。エマルション性状および供給量は、表
1と同じである。なお、本実施例の対象圧延材は、実施
例1の対象圧延材よりも軟質であるが冷圧率が高く、従
来の循環式圧延油供給系統により圧延すると、特に圧延
速度の高い第5スタンドにおいてヒートスクラッチ疵の
発生頻度が高かった。 【0092】以上の条件で圧延速度を変更しつつ圧延を
行い、鋼板付着油量および第5スタンドの摩擦係数を調
査した。図14に圧延速度と第5スタンドの摩擦係数の
関係を、図15に、圧延速度と第5スタンド出側の鋼板
温度の関係をヒートスクラッチ疵の発生状況も含めて示
す。いずれも、本発明と従来方式1および従来方式2を
比較して示した。従来方式1、従来方式2の摩擦係数
は、高速圧延域で上昇した。第5スタンド出側の鋼板温
度は、従来方式1、従来方式2の場合、速度とともに温
度上昇が大きく、従来方式1では1500mpm、従来
方式2では1700mpm以上で170℃を越え、ヒー
トスクラッチ疵が発生した。 【0093】これに対し、本発明の場合、第5スタンド
の摩擦係数の上昇が抑制され、高速域まで安定した摩擦
条件が得られている。特に、高速域での摩擦係数の上昇
がほとんど生じなくなった。このように本発明によると
高速圧延域での摩擦係数の上昇を抑制できるため、摩擦
発熱が低減し、結果として鋼板温度が低下するため、ヒ
ートスクラッチ疵が発生しなくなった。 【0094】(実施例3)全5スタンドのタンデム圧延
機のNo.4、5スタンドに本第2発明を適用した実施
形態2(図2)を用い、実施例1と同じ母材厚1.8m
m、板幅900mmの硬質ブリキ原板を仕上げ厚0.1
83mmまで冷間圧延を行った。圧延油に牛脂系エマル
ション(40℃で基油粘度40cSt、エマルション温
度60℃)を用い、エマルション濃度、平均粒径及び供
給量は表2に示すとおりである。これは本第1発明の実
施例1と比較して、エマルション濃度は同一、エマルシ
ョン平均粒径は大きく、そしてエマルション供給量は少
ない条件である。 【0095】以上の条件で圧延速度を変更しつつ圧延を
行い、鋼板付着油量及び第5スタンドの摩擦係数を調査
した。図27に圧延速度と鋼板付着油量の関係を、そし
て、図28に圧延速度と第5スタンドの摩擦係数の関係
を示す。本第3発明によると、本第1発明による実施例
1と同様に、表裏面とも1200mpm以上の高速域で
も安定した鋼板付着油量が得られた。その結果、第5ス
タンドの摩擦係数の上昇が抑制され、高速域まで安定し
た摩擦条件が得られている。特に、高速域での摩擦係数
の上昇がほとんど生じることがなくなり、潤滑不足によ
り発生するチャタリングが発生しなくなった。 【0096】 【表2】 【0097】(実施例4)本発明の効果を確認するため
に行った試験結果と、従来の循環式圧延油供給系統を用
いた場合の比較を図25に示す。なお圧延条件およびエ
マルション条件は以下の通り。 【0098】〈圧延条件〉・圧延材鋼種〜ブリキ材サイ
ズ〜母材厚1.8mm、仕上厚0.183mm、板幅9
00mm・ワークロール:Φ600mm・No.5スタ
ンド圧下率30% 【表3】 【0099】図25(a)は圧延中のNo.5スタンド
の先進率と圧延速度の関係、図25(b)は本発明によ
るエマルション供給量と圧延速度の関係、図25(c)
は従来技術によるエマルション供給量と圧延速度の関係
を示す。本発明を用いた場合のエマルション供給量は、
1000mpmまでが90L/minと低く、1000
mpm以降は速度とともに増加している。このような供
給量制御を行うことにより、圧延中の先進率は目標先進
率(1000mpm以上において、0.3〜0.4%)
に制御されるため、安定圧延が可能となり、チャタリン
グ未発生のまま2000mpmまで加速できた。一方、
従来の循環式圧延油供給系統を用いた場合、1000m
pm以降、速度とともに先進率が上昇しはじめた。これ
に対し、エマルション供給量を2000L/minから
340L/minまで増加させたが、1500mpmに
て安定先進率範囲を外れチャタリングが発生した。この
ため、1500mpm以上の加速は不可能であった。 【0100】以上の結果より、本発明を用いることによ
り、高速域において、安定な先進率範囲に制御でき、適
正な潤滑状態を確認できるためチャタリングを防止でき
ることがわかる。 【0101】本発明を用い、仕上厚0.21mm以下の
硬質薄物ブリキ材を圧延した場合の圧延速度の分布を、
従来の循環式圧延油供給系統の場合と比較して図26に
示す。本発明を用いることにより、高速域で発生するチ
ャタリングの発生頻度が低減するため、平均圧延速度が
1500mpmから1900mpmに向上できた。 【0102】 【発明の効果】以上説明したように本第1発明および本
第2発明によれば、循環式圧延油供給系統を用いた鋼板
の冷間圧延方法において、10%以上の高濃度なエマル
ションの直接供給方式を用いることなく、高速圧延域で
の鋼板付着油量を大輻に向上できる。これにより、高速
圧延時に発生していた潤滑不足が解消され、ヒートスク
ラッチの発生を防止でき、圧延速度が向上するため、生
産性が大幅に向上する。また、ロールの損傷を防止でき
るため、ロール寿命の向上によるロール原単位の向上等
の付帯効果も期待できる。 【0103】本第3発明によれば、第2の圧延油供給系
統から平均粒径の大きいエマルションを、プレートアウ
トのための転相時間を最大限に確保できる鋼板位置に供
給し、その供給量を調整することにより、高速圧延域に
おいても先進率を広範囲に制御可能となり、チャタリン
グの発生しない目標先進率への制御が可能となる。その
結果、チャタリングの発生を未然に防止できるため、高
速圧延が可能となり生産性が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の第1実施形態に係わるタンデム圧延機
への適用例を示す図。 【図2】本発明の第2実施形態に係わるタンデム圧延機
への適用例を示す図。 【図3】No.4,5スタンドの潤滑用クーラントヘッ
ダーの配置図。 【図4】試験時のヘッダー取付位置を示す図。 【図5】鋼板付着油量の測定結果を示す図。 【図6】プレートアウト層の生成過程の模式図。 【図7】プレートアウト試験方法を示す図。 【図8】転相時間と付着効率の関係図。 【図9】鋼板付着油量と圧延速度の関係図。 【図10】エマルション平均粒径と付着効率の関係図。 【図11】エマルション供給量と鋼板付着油量の関係
図。 【図12】本発明と従来方式の鋼板付着油量の比較を示
す図。 【図13】本発明と従来方式の摩擦係数の比較を示す
図。 【図14】本発明と従来方式の第5スタンドの摩擦係数
の比較を示す図。 【図15】本発明と従来方式の第5スタンド出側の鋼板
温度の比較を示す図。 【図16】請求項3の発明方法の適用例を示す図。 【図17】チャタリング発生と先進率の関係を示す図。 【図18】先進率と圧延速度の関係を示す図。 【図19】試験時のヘッダー取付位置を示す図。 【図20】エマルション供給量と先進率の関係を示す
図。 【図21】エマルション供給量と鋼板付着油量の関係を
示す図。 【図22】エマルション供給量と先進率の関係を示す
図。 【図23】エマルション供給量と鋼板付着油量の関係を
示す図。 【図24】エマルション平均粒径と先進率の変更範囲の
関係を示す図。 【図25】請求項3の発明の効果の説明図で、(a)破
線新率と圧延速度の関係を示し、(b)は本発明による
別圧延油強休憩等のエマルション流量を示し、(c)は
従来技術のエマルション流量を示す。 【図26】圧延速度の分布の比較を示す図。 【図27】圧延速度と鋼板油付着量との関係を示す図
で、(a )は表面、(b)は裏面の鋼板油付着量を示す。 【図28】圧延速度とNo.5スタンドの摩擦係数の関
係を示す図。 【符号の説明】 1...ワークロール、 2...バックアップロール、 3...ストリップ、 4a...潤滑用クーラントヘッダ、 4b...冷却用クーラントヘッダ、 5...潤滑用クーラントヘッダ、 6...平均粒径の大きいエマルションの貯蔵タンク、 7...温水タンク、 8...圧延油原油タンク、 9...界面活性剤タンク、 10a,10b,10c...ポンプ、 11a,11b,11c...バルブ、 12...アジテータ、 13...エマルション供給用ポンプ、 14...圧延油供給ライン、 15...回収オイルパン、 16...戻り配管、 17...循環式の第1の圧延油供給タンク、 18...アジテータ、 19...エマルション供給用ポンプ、 20...圧延油供給ライン、 30...バルブ、 31...制御装置、 32...パルスジェネレータ、 33...スタンド出側の板速度計。
フロントページの続き (72)発明者 木村 幸雄 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 坂井 広義 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 友常 茂宏 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 【請求項1】 循環式圧延油供給系統を用いた鋼板の冷
    間圧延方法において、ロールバイトより離れた上流スタ
    ンド側の、下式を満足する位置において、鋼板の上面お
    よび下面に直接エマルジョンをスプレーして、鋼板の上
    下両面にプレートアウト層を形成することを特徴とする
    冷間圧延方法。L≧Vin・tmin(ただし、Lはロール
    バイトよりスプレーヘッダーの取り付け位置(m)、V
    inは入側ストリップ速度(m/sec)、Tmin は必要
    な最小転相時間(sec)を表す。)
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