JP2003178625A - 光学素子機能を有する透明導電膜およびその製造方法 - Google Patents

光学素子機能を有する透明導電膜およびその製造方法

Info

Publication number
JP2003178625A
JP2003178625A JP2001375134A JP2001375134A JP2003178625A JP 2003178625 A JP2003178625 A JP 2003178625A JP 2001375134 A JP2001375134 A JP 2001375134A JP 2001375134 A JP2001375134 A JP 2001375134A JP 2003178625 A JP2003178625 A JP 2003178625A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
laser
conductive film
irradiation
metal oxide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2001375134A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3871562B2 (ja
Inventor
Toshitaka Nakamura
年孝 中村
Shigeru Katayama
茂 片山
Masakatsu Urairi
正勝 浦入
Mika Horiike
美華 堀池
Kazuyuki Hirao
一之 平尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nitto Denko Corp
Original Assignee
Nitto Denko Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nitto Denko Corp filed Critical Nitto Denko Corp
Priority to JP2001375134A priority Critical patent/JP3871562B2/ja
Publication of JP2003178625A publication Critical patent/JP2003178625A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3871562B2 publication Critical patent/JP3871562B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Non-Insulated Conductors (AREA)
  • Manufacturing Of Electric Cables (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 インジウム等を金属原子の主成分とする金属
酸化物膜に光加工が施されてなる、光学素子機能を有す
る導電膜およびその製造方法を提供する。 【解決手段】 光学素子機能を有する透明導電膜は、イ
ンジウム、亜鉛および錫から選択された少なくとも一種
の金属原子(特にインジウム)を金属原子の主成分とし
て含有している金属酸化物膜に、集光されたレーザーの
照射により、構造が変化した構造変化部が形成されてい
ることを特徴とする。金属酸化物膜は、ガラス製基板上
に形成されていてもよい。パルス幅が10-6秒以下のレ
ーザーを用いることができる。金属酸化物膜内に、エネ
ルギーバンドギャップが5.0eV以上である透明薄膜
を有していてもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学素子としての
機能を有している透明導電膜およびその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】酸化インジウムや酸化錫、酸化亜鉛など
に代表される金属酸化物はワイドギャップ半導体として
利用されており、また可視光の領域で透明且つ電気伝導
性を有することから、透明導電膜に幅広く応用されてい
る。特に酸化インジウムに酸化錫を添加した金属酸化物
である酸化インジウム錫(「ITO」と称する場合があ
る)は、良好な透明性と電気伝導性を持ち合わせた材料
であるため、ディスプレイ用透明電極、タッチパネル用
金属酸化物膜、透明電磁シールド膜、透明平面ヒータ、
熱線反射膜などとして極めて広い分野で応用されてい
る。
【0003】ITO膜は、主にスパッタリング法、真空
蒸着法、イオンプレーティング法などのドライプロセス
や、熱分解法やゾル−ゲル法などのウェットプロセスな
どにより、基板上に形成されているが、なかでもスパッ
タリング法は、膜質の制御性、膜厚の制御性等に優れて
いるので、広く用いられている。
【0004】また、インジウムはスパッタリング率が非
常に大きい材料であり、スパッタリング法により非常に
速い成膜速度で、しかも優れた生産性および制御性で、
薄膜を形成することができる。
【0005】一方、ガラスなどの透明材料に、ナノ秒
(10-9秒)のオーダーから、ピコ秒(10-12秒)オ
ーダー、さらにはフェムト秒(10-15秒)のオーダー
のパルス幅を有する超短パルスレーザー光を集光して照
射し、多光子吸収を利用してガラス内部に屈折率が変調
した誘起構造を書き込む技術が注目を浴びており、例え
ば、特開2000−56112号公報に開示されてい
る。
【0006】また、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛
等の金属酸化物膜は一般的に屈折率が高く、しかもスパ
ッタリング法により成膜する際、ターゲットに導電性が
あるため直流スパッタリングが可能であるので、簡便且
つ安価な装置で、しかも速い成膜速度で膜を形成するこ
とができるという特徴から、高屈折率材料として広く用
いられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、現在広
く応用されているITOなど金属酸化物膜に関して、パ
ルス幅が10-6秒以下である(例えば、パルス幅がナノ
秒のオーダー〜フェムト秒のオーダーである)パルスレ
ーザーを照射することや、該照射による誘起構造形成の
検討は行われていなかった。
【0008】従って、本発明の目的は、インジウム、錫
および亜鉛のうち少なくとも1つの金属原子を金属原子
の主成分とする金属酸化物膜に光加工が施されてなる、
光学素子機能を有する導電膜およびその製造方法を提供
することにある。本発明の他の目的は、高屈折率を有し
ており、しかも透明で且つ電気伝導性を有している光学
素子機能を有する導電膜およびその製造方法を提供する
ことにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目
的を達成するため鋭意検討した結果、インジウムを金属
原子の主成分として含有している金属酸化物膜に、集光
されたレーザーを照射すると、多光子吸収により、その
照射部分に極めて微細な誘起構造を、優れた制御性で形
成することができることを見出し、本発明を完成させ
た。
【0010】すなわち、本発明は、インジウム、亜鉛お
よび錫から選択された少なくとも一種の金属原子を金属
原子の主成分として含有している金属酸化物膜に、集光
されたレーザーの照射により、構造が変化した構造変化
部が形成されていることを特徴とする光学素子機能を有
する透明導電膜である。
【0011】前記金属酸化物膜としては、インジウムを
金属原子の主成分として含有していることが好ましい。
また、金属酸化物膜は、主成分として含有している金属
原子以外の金属原子であって、インジウム、錫、ジルコ
ニウム、亜鉛、チタン、セリウム、タンタル、ゲルマニ
ウム、バナジウム、イットリウムおよびニオブから選択
された少なくとも一種の金属原子を含有していてもよ
い。さらにまた、金属酸化物膜は、ガラス製基板上に形
成されていてもよい。
【0012】前記レーザーとしてはパルス幅が10-6
以下のレーザーであってもよい。また、レーザーとして
は多光束干渉によるコヒーレント光を好適に用いること
ができる。
【0013】本発明の光学素子機能を有する透明導電膜
は、金属酸化物膜内に、エネルギーバンドギャップが
5.0eV以上である透明薄膜を有していてもよい。
【0014】また、本発明は、インジウム、亜鉛および
錫から選択された少なくとも一種の金属原子を金属原子
の主成分として含有している金属酸化物膜に、集光され
たレーザーの照射により、構造が変化した構造変化部を
形成することを特徴とする光学素子機能を有する透明導
電膜の製造方法を提供する。
【0015】
【発明の実施の態様】以下に、本発明を必要に応じて図
面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一の部材につ
いては、同一の符号を付している場合がある。 [光学素子機能を有する透明導電膜]本発明の光学素子
機能を有する透明導電膜(「光学機能性導電膜」と称す
る場合がある)は、インジウム、亜鉛および錫から選択
された少なくとも一種の金属原子を金属原子の主成分と
して含有している金属酸化物膜(「MO膜」と称する場
合がある)の所定部位を、集光されたレーザーの照射に
より、構造が変化した構造変化部を形成することにより
作製することができる。集光されたレーザーの照射によ
り構造変化部が形成される所定部位は、MO膜の如何な
る部位であってもよく、例えば、上面から下面にかけて
の部位、いずれかの面(上面や下面など)から内部にか
けての部位や、内部の一部などが挙げられる。このよう
に、光学機能性導電膜は、MO膜に部分的に構造変化部
が形成された構成、すなわち、構造変化部と構造未変化
部とを有する金属酸化物膜である。
【0016】なお、構造変化部は、構造未変化部と構造
が異なっていればよく、該異なる構造としては、例え
ば、密度が変化したり(例えば、密度が高くなったり又
は高密度化したり)、酸素原子が脱離したりすることに
よる異なった構造であってもよい。そのため、構造変化
部と構造未変化部とは、例えば、屈折率が異なっていて
もよい。
【0017】(MO膜)MO膜において、その材料(又
は素材)としては、インジウム、亜鉛および錫から選択
された少なくとも一種の金属原子を金属原子の主成分と
して含有する金属酸化物であれば特に制限されない。該
金属酸化物において、主成分としての金属原子(インジ
ウム、亜鉛および錫から選択された少なくとも一種の金
属原子)は、金属原子全量に対して70重量%以上、好
ましくは90重量%以上、さらに好ましくは95重量%
含まれていることが重要である。
【0018】具体的には、MO膜の材料としての金属酸
化物の金属原子において、主成分はインジウム、亜鉛お
よび錫のうち少なくとも1種の金属原子であり、他の含
有成分(副成分)としては、ジルコニウム、チタン、セ
リウム、タンタル、ゲルマニウム、バナジウム、イット
リウム、ニオブ等の金属原子を用いることができる。こ
の他の含有成分は単独で又は2種以上組み合わせて使用
することができる。また、副成分としてインジウム、亜
鉛、錫を用いることもできる。従って、本発明では、副
成分の金属原子としては、主成分として含有している金
属原子以外の金属原子であって、インジウム、錫、ジル
コニウム、亜鉛、チタン、セリウム、タンタル、ゲルマ
ニウム、バナジウム、イットリウムおよびニオブから選
択された少なくとも一種の金属原子を用いることができ
る。
【0019】本発明では、MO膜としては、インジウム
を金属原子の主成分とする金属酸化物(「IO系膜」と
称する場合がある)が特に好ましい。なお、該IO系膜
の金属原子における他の含有成分としては、錫、亜鉛が
好ましく、特に錫が最適である。
【0020】MO膜は、金属酸化物からなっており、例
えば、インジウムは酸化インジウムの形態で、亜鉛は酸
化亜鉛の形態で、錫は酸化錫の形態でそれぞれ含まれて
いる。また、他の含有成分の金属原子も、金属酸化物の
形態で含まれていてもよい。具体的には、MO膜の材料
である金属酸化物としては、酸化インジウムと酸化錫と
が混合されている金属酸化物(酸化インジウム錫:IT
O)を好適に用いることができる。
【0021】集光されたレーザーによる光加工を行うM
O膜は、アモルファス状態(非晶性)を有していてもよ
い。MO膜は、完全なアモルファス状態を有しているこ
とが好ましいが、部分的に結晶状態(特に微結晶状態)
を有していてもよい。MO膜の成膜方法としては、特に
制限されず、公知乃至慣用の成膜方法を用いることがで
きる。より具体的には、成膜方法としては、例えば、ス
パッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法
等のドライプロセスや、熱分解法やゾル−ゲル法等のウ
ェットプロセスなどを用いることができる。
【0022】これらの成膜方法では、基板上にMO膜を
形成することができる。該基板としては、公知乃至慣用
の基板(例えば、ガラス製基板、プラスチック製基板、
金属製基板など)であれば特に制限されないが、ガラス
製基板(ガラス基板)を好適に用いることができる。ガ
ラス製基板の材質(ガラス)としては特に制限されな
い。なお、MO膜は、基板(例えば、ガラス製基板な
ど)上に成膜された状態で、光加工を行うことができ
る。
【0023】本発明では、MO膜としては、スパッタリ
ング法により成膜されていることが好ましい。例えば、
スパッタリング法により成膜する場合、微結晶の成長を
抑制し、均一なアモルファス構造を得るために、水蒸気
分圧が5×10-4〜5×10 -2Paとなるような水分を
成膜雰囲気内に導入することができる。特に、スパッタ
リング時にターゲット(金属酸化物)に印加する電力を
大きくして成膜速度を高める場合、成膜に伴う輻射熱
や、反跳原子などにより基板温度が上昇し、微結晶が発
生しやすくなるが、上記条件にて水分を導入することに
より、それらを抑制することができる。水分の導入方法
やその他の成膜条件は特に制限されるものではないが、
特に微結晶がなく均一なアモルファス状態の膜を形成す
ることができる条件が好ましい。
【0024】なお、MO膜は、上面が平面である形状の
膜(又は層)を用いているが、その上面は平面や凹凸形
状であってもよく、また、上面の大きさ(面積)も特に
制限されない。さらにまた、MO膜の膜厚(又は層厚)
としては、例えば、0.01〜50μm(好ましくは
0.05〜30μm、さらに好ましくは0.1〜10μ
m)程度の範囲から選択することができる。MO膜の膜
厚が、0.01μm未満であると、平面的に連続したM
O膜が得られにくくなり、50μmを越えると、MO膜
にクラックが発生するなどの問題が生じる場合がある。
【0025】また、MO膜は、単層および多層のいずれ
の構造を有していてもよい。さらにまた、MO膜は、膜
内に他の透明膜(又は層)を有していてもよい。このよ
うな他の透明膜は、導電性を有していてもよく、導電性
を有していなくてもよい。特に、集光されたレーザーに
よる加工性を高めるためには、他の透明膜のエネルギー
バンドギャップが5.0eV以上(好ましくは7.0e
V以上、さらに好ましくは8.0eV以上)であること
が望ましい。MO膜などの金属酸化物膜のエネルギーバ
ンドギャップは、素材や添加物などに応じて、およそ
3.5eV程度であるので、他の透明膜のエネルギーバ
ンドギャップは、5.0eV以上であると、MO膜のエ
ネルギーバンドギャップよりも約1.5eV以上も大き
くなる。そのため、レーザー光の強度やその集光の程度
を適宜調整することにより、他の透明膜には何ら影響を
与えずに(すなわち、何ら誘起構造を生じさせずに)、
MO膜のみに誘起構造を形成することができる。このこ
とは、後述するMO膜と基板との関係と同様である。
【0026】このような他の透明膜の材料(素材)とし
ては、特に制限されないが、例えば、二酸化ケイ素(S
iO2)、酸化アルミニウム(Al23)、フッ化アル
ミニウム(AlF3)、フッ化カルシウム(CaF2)、
酸化ハフニウム(HfO2)、フッ化マグネシウム(M
gF2)、酸化マグネシウム(MgO)などが挙げられ
る。該材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用する
ことができる。
【0027】なお、他の透明膜は単層および多層のいず
れであってもよい。他の透明膜の形成方法は、特に制限
されない。また、MO膜内に、他の透明膜が複数設けら
れていてもよく、この場合、MO膜と他の透明膜とが交
互に積層された多層構造の形態に対応する。さらにま
た、このような他の透明膜は積層によりMO膜の外部に
設けることも可能である。従って、本発明では、MO膜
は、他の透明膜と積層された構成を有していてもよい。
【0028】他の透明膜の厚みとしては、特に制限され
ないが、薄膜であることが好ましい。具体的には、他の
透明膜の厚みとしては、例えば、0.01〜50μm
(好ましくは0.05〜30μm、さらに好ましくは
0.1〜10μm)程度の範囲から選択することができ
る。
【0029】なお、MO膜には、金属酸化物の他に、必
要に応じて他の材料や添加剤等が含まれていてもよい。
【0030】また、MO膜は、通常優れた透明性を有し
ているが、可視光波長領域(例えば、400nm〜80
0nm)において全光線透過率が10%以上(好ましく
は50%以上、さらに好ましくは85%以上)であるこ
とが望ましい。このように、10%以上の光透過性を有
していると、波長が可視光波長領域にあるレーザーの照
射により、レーザー加工が容易に出来るようになる。
【0031】(集光されたレーザー)本発明では、集光
されたレーザー(「集光レーザー」と称する場合があ
る)を用いていることが重要である。集光レーザーをM
O膜の外部から照射することにより、MO膜の集光レー
ザーが照射された照射部及びその周辺部の構造を変化さ
せることができ、微細な構造変化部(誘起構造部)を形
成することができる。例えば、照射するレーザーの波長
を800nmとすると、集光していないレーザーを照射
した際には、MO膜にも、基板にも何の変化も生じない
が、集光レーザーを照射すると、多光子の吸収(例え
ば、2光子の吸収、3光子の吸収、4光子の吸収、5光
子の吸収など)が生じて、MO膜に誘起構造を形成する
ことが可能となる。なお、このような多光子吸収の起こ
る確率は、光の強度に比例して増加し、また、強度が強
くなる程、多光子の吸収が起こりやすくなる。
【0032】特に本発明では、レーザー光の強度やその
集光の程度を適宜調整することにより、基板(特に、ガ
ラス製基板)には何ら影響を与えず(すなわち、何ら誘
起構造を生じさせず)に、MO膜のみに誘起構造を形成
することができる。MO膜などの金属酸化物膜のエネル
ギーバンドギャップは、素材や添加物などに応じて、お
よそ3.5eV程度である。一方、基板のエネルギーバ
ンドギャップとしては、例えば、ガラス製基板である場
合、ガラスの種類や添加剤などに応じて、およそ8.9
eV程度であり、MO膜などの金属酸化物膜のエネルギ
ーバンドギャップよりも約5.4eV程度大きい。その
ため、例えば、基板がガラス製基板である場合、該ガラ
ス製基板に多光子吸収を生じさせるには、およそ6光子
以上の多光子吸収が生じる必要があり、極めて高強度の
レーザー照射が必要となる。従って、基板としてはエネ
ルギーバンドギャップが5.0eV以上(好ましくは
7.0eV以上、さらに好ましくは8.0eV以上)で
あるものが好ましい。
【0033】従って、本発明では、集光レーザーの照射
により、必要に応じてレーザー光の強度やその集光の程
度を適宜調整して、集光レーザーが照射された部位に誘
起構造を形成することができ、しかも、基板上に成膜さ
れたMO膜の厚みが、集光レーザーの集光スポット径の
大きさよりも薄い厚み(又は小さい厚み)であっても、
MO膜のみに誘起構造を形成することができる。また、
他の透明膜が積層されていても、MO膜の部分のみに誘
起構造を形成することができる。
【0034】このようなレーザーとしては、特に制限さ
れないが、パルス幅が10-6秒以下(例えば、1×10
-6秒〜1×10-15秒程度)のレーザーを用いることが
でき、好ましくは1×10-9秒〜1×10-15秒であ
り、特に1×10-12秒〜1×10-15秒のレーザー
(「超短パルスレーザー」と称する場合がある)が好ま
しい。パルス幅が小さいもの(特に、パルス幅が1×1
-12秒〜1×10-15秒である超短パルスレーザー)ほ
ど、容易に高い光強度が得られる点で好ましい。また、
より一層微細な誘起構造部を形成することも可能とな
る。
【0035】なお、パルス幅が1×10-12秒〜1×1
-15秒である超短パルスレーザーとしては、パルス幅
が10×10-15秒〜500×10-15秒(好ましくは5
0×10-15秒〜300×10-15秒)程度であるパルス
レーザーが好適である。このような超短パルスレーザー
は、例えば、チタン・サファイア結晶を媒質とするレー
ザーや色素レーザーを再生・増幅して得ることができ
る。
【0036】レーザー(特に、超短パルスレーザー)に
おいて、その波長としては、例えば、可視光の波長領域
(例えば、400〜800nm)であることが好まし
い。また、その繰り返しとしては、例えば、1Hz〜8
0MHzの範囲から選択することができ、通常、10H
z〜500kHz程度である。
【0037】なお、レーザー(特に、超短パルスレーザ
ーの)平均出力又は照射エネルギーとしては、特に制限
されず、目的とする構造変化部の大きさや構造の変化の
程度等に応じて適宜選択することができ、例えば、50
0mW以下(例えば、1〜500mW)、好ましくは5
〜300mW、さらに好ましくは10〜100mW程度
の範囲から選択することができる。このように、本発明
では、レーザー(特に、超短パルスレーザー)の照射エ
ネルギーは低くてもよい。
【0038】本発明では、レーザーは多光束干渉(例え
ば、2光束干渉や、3以上の光束による干渉など)によ
るコヒーレント光を用いることも可能である。レーザー
として2光束干渉等の多光束干渉によるコヒーレント光
を用いることにより、レーザー光の波長オーダーの周期
構造を目的とする周期構造に容易にコントロールして形
成することができる。例えば、2光束干渉による照射の
場合、その光束間の角度を制御することにより、周期構
造の間隔を制御することもできる。さらに、照射時にM
O膜又は基板を適宜スキャンさせたり、さらに複数の光
束を用いたりすることで自在に複雑な周期構造を形成す
ることができ、これらの方法についても特に制限される
ものではない。
【0039】レーザーを集光させる方法としては、特に
制限されず、例えば、集光レンズを用いる方法を好適に
採用することができる。このような集光レンズとして
は、特に制限されず、MO膜の材質、目的とする構造変
化部の大きさや構造の変化の程度などに応じて適宜選択
することができる。
【0040】集光レーザーの照射スポット径としては、
特に制限されず、目的とする構造変化部の大きさや構造
の変化の程度、集光レンズの大きさや開口数又は倍率な
どに応じて適宜選択することができ、例えば、1.0〜
50μm(好ましくは10〜30)程度の範囲から選択
することができる。
【0041】(照射方法)集光レーザーの照射方法とし
ては、特に制限されず、例えば、任意の部位(又は箇
所)の一点のみに又は一点毎に照射したり、焦点の位置
を移動させながらライン状に照射したりする方法を採用
することができる。集光レーザー光の焦点位置を移動さ
せながら、集光レーザー光を照射する際のライン状とし
ては、特に制限されず、任意のライン状であってもよ
く、例えば、直線状や曲線状などが挙げられる。また、
集光レーザー光の焦点位置は、連続的又は間欠的に移動
させることもできる。なお、集光レーザー光をコンピュ
ータ制御して照射することにより、どんな複雑なライン
状であっても、集光レーザー光の焦点位置を移動させな
がら照射することが可能である。
【0042】図1は本発明の集光レーザー光の照射方法
の一例を示す概略鳥瞰図である。図1において、1は光
学機能性導電膜、11はMO膜、2は構造変化部、3は
構造未変化部、4は基板である。また、51はパルス幅
が10-12秒以下である超短パルスレーザー(単に「レ
ーザー」と称する場合がある)、52は集光レンズであ
り、5は集光レーザーである。光学機能性導電膜1は、
MO膜11から作製されており、構造変化部2は集光レ
ーザー5の照射による影響を受けて構造が変化した部位
であり、また、構造未変化部3は集光レーザー5の照射
による影響を受けておらず、元の状態を保持している部
位である。
【0043】また、MO膜11は、基板4上に成膜され
て作製されており、該MO膜11の上面は、平面であ
り、X−Y平面に対して平行、又はZ軸に対して垂直と
なっている。
【0044】このMO膜11の所定部位に、集光レーザ
ー5を焦点を合わせて照射している。なお、集光レーザ
ー5は、集光レンズ52によりレーザー51が集光され
たレーザーである。
【0045】6aは集光レーザー5の照射をし始めたと
きの焦点を合わせた最初の位置又はその中心位置(「照
射開始位置」と称する場合がある)、6bは集光レーザ
ー5の照射を終えたときの焦点を合わせた最終の位置又
はその中心位置(「照射終了位置」と称する場合があ
る)、6cは集光レーザー5の照射の焦点又はその中心
位置(単に「焦点位置」と称する場合がある)が照射開
始位置6aから照射終了位置6bに移動する移動方向で
ある。6は集光レーザー5の照射の焦点位置又は焦点の
中心位置が移動した軌跡(「焦点位置軌跡」と称する場
合がある)である。すなわち、図1では、集光レーザー
5の焦点位置を、照射開始位置6aから照射終了位置6
bにかけて、焦点位置の移動方向6cの方向で、連続的
に直線的に移動させており、該移動した焦点位置の軌跡
が焦点位置軌跡6である。
【0046】具体的には、MO膜11に集光レーザー5
が照射されて、前記集光レーザー5の焦点位置軌跡6上
の各焦点位置及びその周辺部(近辺部)における構造が
変化しており、この部分的な構造の変化により、光学機
能性導電膜1は、ライン状の構造変化部2と、元の状態
の構造未変化部3とを有している。
【0047】また、集光レーザー5の照射に際して、そ
の焦点の位置を連続的に移動させているので、MO膜1
1に、構造が変化している部位も焦点位置の移動に応じ
て連続的に移動して、移動方向に延びて変化した部位か
らなる構造変化部2が形成されている。図1に示すよう
に、集光レーザー5の焦点位置を、移動方向6の方向
に、照射開始位置6aから照射終了位置6bに移動させ
た場合、移動方向6cの方向に沿って形成された構造変
化部2を形成することができる。従って、構造変化部2
の長手方向は、移動方向6cの方向である。
【0048】集光レーザー5の焦点位置を移動させる速
度(移動速度)は、特に制限されず、MO膜11の材質
や集光レーザー5の照射エネルギーの大きさ等に応じて
適宜選択することができる。なお、前記移動速度をコン
トロールすることにより、構造変化部2の大きさ等をコ
ントロールすることも可能である。
【0049】なお、集光レーザー5の焦点位置の移動
は、レーザー51及び集光レンズ52と、MO膜11と
の相対位置を動かせることにより、例えば、レーザー5
1及び集光レンズ52、及び/又はMO膜11を移動さ
せることにより、行うことができる。具体的には、例え
ば、2次元又は3次元の方向に精密に動かすことができ
るステージ上にMO膜(照射サンプル)を設置し、レー
ザー発生装置及び集光レンズを前記MO膜に対して焦点
が合うよう(任意の部位でよい)に固定し、前記ステー
ジを動かせて焦点位置を移動させることにより、MO膜
の任意の部位に構造変化部を作製することができる。
【0050】このように、光学機能性導電膜は、集光レ
ーザー(特に、パルス幅が10-12秒以下の超短パルス
レーザーが集光されたレーザー)を照射して、必要に応
じて前記焦点位置を移動させるという簡単な操作によ
り、任意の部位に構造が変化した部位(構造変化部)を
形成して作製することができる。
【0051】また、図1では、集光レーザー5の焦点位
置を、MO膜11の上面から一定の深さに保持して、移
動させている。しかし、集光レーザー5の焦点位置が、
多少上下に変化して基板や他の透明膜に焦点位置がずれ
たとしても、集光レーザー光5の強度を、MO膜11に
誘起構造が形成されるのに(多光子吸収を起こすのに)
十分な強度で、且つ基板(ガラス製基板など)4や他の
透明膜には誘起構造が形成されないような強度に調整す
ることにより、極めて優れた再現性で、MO膜11のみ
にライン状の誘起構造部(構造変化部2)を形成するこ
とができる。
【0052】なお、図1では、集光レーザー5の焦点位
置を移動させることにより、構造変化部2が移動方向に
連続的に形成されており、焦点位置の移動方向が長手方
向となっている。従って、長手方向における構造変化部
2の長さは、例えば、集光レーザー5の焦点位置を移動
させた移動距離に対応させて、調整することができる。
例えば、集光レーザー5の焦点位置を直線的に移動させ
た場合、構造変化部2の焦点移動方向における長さとし
ては、集光レーザー5の焦点位置を移動させた移動距離
と同等又はほぼ同等にすることができる。
【0053】また、本発明では、構造変化部2におい
て、構造の変化の程度は、均一であってもよく、不均一
であってもよい。従って、構造変化部2は、構造の変化
の程度が均一的であってもよく、また、構造未変化部側
の端部から内部又は焦点位置若しくはその中心に向かっ
て、構造の変化の程度が徐々に連続的に増加するように
構造が変化していてもよい。なお、本発明では、構造変
化部2と、構造未変化部3との界面(又は境界)は、明
瞭又は不明瞭となっていてもよいが、明瞭であることが
望ましい。
【0054】構造変化部の大きさとしては、特に制限さ
れず、直径又は1辺の長さが1mm以下(好ましくは5
00μm以下)の極めて小さななものであっても、精密
に制御して形成することができる。特に、レーザーとし
て超短パルスレーザーを用いることにより、構造変化部
をより一層精密に制御することが可能となる。
【0055】本発明では、1つの光学機能性導電膜にお
いて、構造変化部の数は、特に制限されず、単数であっ
てもよく、複数であってもよい。構造変化部が複数設け
られている場合、適度な間隔を隔てて形成することがで
きる。この構造変化部間の間隔は、任意に選択すること
ができる。前記構造変化部間の間隔は、例えば、5μm
以上であることが好ましい。構造変化部間の間隔が5μ
m未満であると、構造変化部の作製時に構造変化部同士
が融合して、独立した複数の構造変化部とすることがで
きない場合がある。
【0056】なお、構造変化部の大きさ、形状、構造の
変化の程度などは、集光レーザーの照射時間、集光レー
ザーの焦点位置の移動方向やその速度、MO膜の材質の
種類、レーザーのパルス幅の大きさや照射エネルギーの
大きさ、集光レンズの開口数や倍率などにより適宜調整
することができる。
【0057】このように、MO膜に、集光レーザーの照
射を行うと、集光レーザーの照射部において、金属酸化
物の構造が変化した構造変化部が形成されて、図2に示
されるように、構造変化部及び構造未変化部を有する光
学機能性導電膜が作製される。図2は、本発明の光学機
能性導電膜の一例を示す概略断面図である。図2におい
て、1〜4は図1と同様に、それぞれ、光学機能性導電
膜、構造変化部、構造未変化部、基板である。光学機能
性導電膜1は、構造変化部2と、構造未変化部3とから
構成され、基板4上に形成されている。
【0058】また、図3は、本発明の光学機能性導電膜
の他の例を示す概略断面図である。図3において、1a
は光学機能性導電膜、1bは他の透明膜、2aは構造変
化部、3aは構造未変化部である。4は図1及び図2と
同様に基板である。光学機能性導電膜1aは他の透明膜
1bと積層された構成を有しており、これらの多層は基
板4上に形成されている。また、光学機能性導電膜1a
は、構造変化部2aと構造未変化部3aとから構成され
ている。一方、他の透明膜1bは単一構造(又は状態)
の層であり、集光されたレーザーの照射による影響を受
けていない。
【0059】本発明の光学機能性導電膜は、構造の変化
により、前述のように屈折率などの物性が変化していて
もよい。このような変化する物性は、特に制限されず、
例えば、電気的特性(耐電圧、抵抗率、誘電率など)、
光学的特性(着色性、光吸収性、発光性、屈折率、光線
透過率、光学的角度偏差など)、機械的特性(強度、伸
度、粘弾性など)、熱的特性(耐熱性など)、物理的特
性(溶解度、ガス透過性、吸湿性など)などが挙げられ
る。特に本発明では、構造の変化により屈折率が変化し
て(例えば、高くなって)、互いに屈折率が異なってい
る構造変化部および構造未変化部を有している。従っ
て、光学機能性導電膜は、透明性及び電気伝導性を有す
るとともに、光学素子機能を有していてもよい。そのた
め、例えば、文献“菊田他、光学、27巻、第1号、p
12、1998年”で解説されているような回折格子、
偏光素子、位相差板、偏光ビームスプリッター、波長選
択フィルタ、光導波路などの光学素子や、これらに導電
性が付与された光学素子、導電膜(特に、透明導電膜)
などとして好適に用いることができる。
【0060】本発明の光学機能性導電膜は、求められる
機能や要求特性に応じて、適宜集光レーザーによるレー
ザー加工が施されている。また、そのまま金属酸化物膜
として用いてもよく、他の部材と組み合わせて用いても
よい。さらにまた、光学機能性導電膜には、任意の加工
や処理(各種の後処理など)を施すことが可能である。
【0061】
【発明の効果】本発明の光学機能性導電膜は、インジウ
ム等を金属原子の主成分とする金属酸化物膜に、微細な
光加工が施された透明導電膜であるので、透明で且つ電
気伝導性を有しているとともに、高屈折率を有してい
る。従って、電気伝導性と光学特性とを有する部材とし
て極めて有用である。しかも、本発明の光学機能性導電
膜の製造方法によれば、容易に作製することができる。
【0062】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はこれらの実施例により限定される
ものではない。 (実施例1)市販の青板ガラス基板、および直径が15
インチのITOターゲット[酸化インジウムと酸化錫と
が90重量部(酸化インジウム):10重量部(酸化
錫)の割合で混合された金属酸化物]をスパッタリング
装置(商品名「高周波スパッタリング装置」日本真空社
製)に装着した。真空チャンバー内を4×10-4Paま
で真空排気した後、アルゴンガスを30SCCM、酸素
ガスを0.5SCCM導入し、高真空ポンプのメインバ
ルブ開閉度を調整することで、圧力を0.4Paに調整
した。但し、アルゴンガスは洗浄用ビンに入れた蒸留水
にバブリングさせたものを導入した。その結果、真空チ
ャンバー内の水蒸気分圧が3×10-3Paに保持され
た。その後、直流電源にてITOターゲットに300W
の電力を印加し、ガラス製基板上に厚さ100nmの酸
化インジウム錫膜(ITO膜)を成膜し、ITO膜がガ
ラス製基板上に成膜されたサンプル(照射サンプルA)
を得た。
【0063】この照射サンプルAのガラス製基板上に成
膜されたITO膜の上面から、該上面又はその付近に焦
点を合わせて、チタン・サファイア・フェムト秒パルス
レーザー装置及び対物レンズ(倍率:10倍)を使用し
て、超短パルスレーザー(照射波長:800nm、パル
ス幅:150×10-15秒、繰り返し:200kHz)
を、照射エネルギー(平均出力):60mW、照射スポ
ット径:約20μmの条件で、照射サンプルAを照射方
向に垂直な方向に移動速度:約500μm/秒で移動さ
せながら照射したところ、照射サンプルAのITO膜部
分のみに、超短パルスレーザーの照射を開始した焦点位
置(照射開始位置)から、照射を止めた焦点位置(照射
終了位置)にかけて、元のITO膜とは異なる構造を有
する構造変化部(誘起構造部)が形成された金属酸化物
膜(透明導電膜)が得られた。
【0064】この超短パルスレーザーが照射された照射
サンプルAの断面観察を行ったところ、構造変化部の幅
は約20μmであり、膜厚方向に関しては照射部全体が
構造変化を起こしていた(すなわち、構造変化部の厚み
は100nm)。すなわち、幅が約20μm、厚さが1
00nmの断面を有するライン状の構造変化部が形成さ
れていた。
【0065】従って、ガラス製基板上に、誘起構造部
と、元の状態の部(誘起されていない部)とを有してい
るITO膜が形成された。
【0066】(比較例1)実施例1と同様の市販のガラ
ス製基板(厚さ:1.5mm)に、実施例1と同様の条
件で、超短パルスレーザーを照射したところ、ガラス基
板にはなんら構造変化は発生しなかった。
【0067】(比較例2)超短パルスレーザーの強度
(照射エネルギー)を500mWに増加させたこと以外
は比較例1と同様の条件で、超短パルスレーザーを照射
したところ、ガラス基板の表面から内部に沿って、横幅
20μm、縦幅100μmの範囲にわたって構造変化が
生じていた。すなわち、形成された誘起構造は、超短パ
ルスレーザーの照射部において縦方向に長い構造となっ
た。
【0068】従って、実施例1と、比較例1〜2とによ
り、実施例1の方法により、ITO膜のみに選択的に誘
起構造を形成することができることは明らかである。
【0069】(実施例2)実施例1と同様にして、ガラ
ス製基板上に厚さ1.5μmのITO膜が成膜されたサ
ンプル(照射サンプルB)を作製した。この照射サンプ
ルBに、実施例1と同様の条件で、超短パルスレーザー
を照射したところ、幅20μm、長さ8mmのラインを
15μmの間隔で15本形成し、約0.5mmの回折格
子(回折格子A)を作製した。
【0070】この回折格子Bに、波長が632.8nm
のHe−Ne(ヘリウム−ネオン)レーザーを照射した
ところ、透過回折のスポットの出現を確認した。すなわ
ち、サンプルBにおいて、レーザーが照射された部位に
屈折率変調が生じていることが確認された。また、照射
するラインの間隔を適宜変化させたサンプルについて、
同様の回折スポットを確認したところ、回折スポットに
古典理論のとおりの変化が生じることが確認された。
【0071】(実施例3)市販のガラス製基板(厚さ:
1.5mm)上に実施例1と同様の方法で、厚さ200
nmのITO膜を成膜したサンプル(照射サンプルC)
を得た。この照射サンプルCに、図4に示す光学系を用
いて、2光束照射によるレーザー照射を行った。用いた
レーザー発生装置は、実施例1と同様のチタン・サファ
イア・フェムト秒パルスレーザー装置であり、照射エネ
ルギー(平均出力)を20mW、照射時間を10秒間、
2光束のなす角度(θ)を60°として、図5に示され
るようなレーザー光の干渉を用いて、ITO膜上に周期
的な構造変化を書き込んだ。その結果、直径約60μm
の円形領域にその光干渉に応じた周期構造が形成され、
その周期は約900nmであった。
【0072】また、2光束のなす角度を適宜変化させた
サンプルを作製したところ、その周期はブラッグの回折
条件に厳密に従って変化した。
【0073】従って、例えば、狭帯域の波長選択フィル
タである導波モード型共振フィルタなどを極めて容易に
しかも再現性よく作製できることが確認できた。
【0074】(実施例4)ガラス製基板上に、二酸化ケ
イ素による膜(SiO2膜)(厚み100nm)/IT
O膜(厚み100nm)/SiO2膜(厚み100n
m)/ITO膜(厚み100nm)/SiO2膜(厚み
100nm)の5層の積層体(多層膜)が成膜されたサ
ンプル(照射サンプルD)を作製した。なお、ITO膜
は実施例1と同様のスパッタリング条件により成膜し、
SiO2膜はSiターゲットを用い、アルゴンガスと酸
素ガスとの流量を調整し、反応性スパッタリング方法に
より形成した。
【0075】この照射サンプルDに、実施例2と同様の
条件で、超短パルスレーザーを15本のライン状で照射
した後、この照射後のサンプルについて走査型電子顕微
鏡により断面観察を行ったところ、構造変化はITO膜
のみに生じており、ガラス製基板やSiO2膜には何ら
構造変化は生じていなかった。
【0076】(比較例3)ガラス製基板上に、二酸化チ
タンによる膜(TiO2膜)(厚み100nm)/IT
O膜(厚み100nm)/TiO2膜(厚み100n
m)/ITO膜(厚み100nm)/TiO2膜(厚み
100nm)の5層の積層体(多層膜)が成膜されたサ
ンプル(照射サンプルE)を作製した。なお、ITO膜
は実施例1と同様のスパッタリング条件により成膜し、
TiO2膜はTiターゲットを用い、アルゴンガスと酸
素ガスとの流量を調整し、反応性スパッタリング方法に
より形成した。
【0077】この照射サンプルEに、実施例4と同様の
条件で、超短パルスレーザーを15本のライン状で照射
した後、この照射後のサンプルについて走査型電子顕微
鏡により断面観察を行ったところ、ガラス製基板には何
ら構造変化は生じていなかったが、ITO膜およびTi
2膜の両方に構造変化が生じていた。
【0078】実施例4及び比較例4を比較すると、比較
例4で用いられたTiO2膜のエネルギーバンドギャッ
プは、3.3eVであり、ITO膜のエネルギーバンド
ギャップ3.5eVとほぼ同じである。一方、実施例4
で用いられたSiO2膜のエネルギーバンドギャップ
は、8.9eVであり、ITO膜のエネルギーバンドギ
ャップよりも約5.4eV程度大きい。従って、比較例
4では、TiO2膜にITO膜と同様の多光子吸収が発
生したために構造変化が生じ、実施例4では、SiO2
膜に吸収をきたすような高次の多光子吸収が発生してい
ないために構造変化が生じていないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の集光レーザー光の照射方法の一例を示
す概略鳥瞰図である。
【図2】本発明の光学機能性導電膜の一例を示す概略断
面図である。
【図3】本発明の光学機能性導電膜の他の例を示す概略
断面図である。
【図4】2光束干渉の光学系を示す概略図である。
【図5】レーザー光の干渉を示す概略図である。
【符号の説明】
1 光学機能性導電膜 11 MO膜 2 構造変化部 3 構造未変化部 4 基板 5 集光されたレーザー 51 パルス幅が10-12秒以下である超短パルスレ
ーザー 52 集光レンズ 6 集光レーザー5の焦点位置軌跡 6a 集光レーザー5の照射開始位置 6b 集光レーザー5の照射終了位置 6c 集光レーザー5の焦点位置の移動方向 1a 光学機能性導電膜 1b 他の透明膜 2a 構造変化部 3a 構造未変化部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 浦入 正勝 大阪府茨木市下穂積一丁目1番2号 日東 電工株式会社内 (72)発明者 堀池 美華 大阪府茨木市下穂積一丁目1番2号 日東 電工株式会社内 (72)発明者 平尾 一之 京都府京都市左京区田中下柳町8−94 Fターム(参考) 5G307 FA01 FB01 FC09 FC10 5G323 BA02 BB05 BC03

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 インジウム、亜鉛および錫から選択され
    た少なくとも一種の金属原子を金属原子の主成分として
    含有している金属酸化物膜に、集光されたレーザーの照
    射により、構造が変化した構造変化部が形成されている
    ことを特徴とする光学素子機能を有する透明導電膜。
  2. 【請求項2】 金属酸化物膜が、インジウムを金属原子
    の主成分として含有している請求項1記載の光学素子機
    能を有する透明導電膜。
  3. 【請求項3】 金属酸化物膜が、主成分として含有して
    いる金属原子以外の金属原子であって、インジウム、
    錫、ジルコニウム、亜鉛、チタン、セリウム、タンタ
    ル、ゲルマニウム、バナジウム、イットリウムおよびニ
    オブから選択された少なくとも一種の金属原子を含有し
    ている請求項1記載の光学素子機能を有する透明導電
    膜。
  4. 【請求項4】 金属酸化物膜が、ガラス製基板上に形成
    されている請求項1〜3の何れかの項に記載の光学素子
    機能を有する透明導電膜。
  5. 【請求項5】 レーザーがパルス幅が10-6秒以下のレ
    ーザーである請求項1〜4の何れかの項に記載の光学素
    子機能を有する透明導電膜。
  6. 【請求項6】 レーザーが多光束干渉によるコヒーレン
    ト光である請求項1〜5の何れかの項に記載の光学素子
    機能を有する透明導電膜。
  7. 【請求項7】 金属酸化物膜内に、エネルギーバンドギ
    ャップが5.0eV以上である透明薄膜を有している請
    求項1〜6の何れかの項に記載の光学素子機能を有する
    透明導電膜。
  8. 【請求項8】 インジウム、亜鉛および錫から選択され
    た少なくとも一種の金属原子を金属原子の主成分として
    含有している金属酸化物膜に、集光されたレーザーの照
    射により、構造が変化した構造変化部を形成することを
    特徴とする光学素子機能を有する透明導電膜の製造方
    法。
JP2001375134A 2001-12-10 2001-12-10 光学素子機能を有する透明導電膜およびその製造方法 Expired - Fee Related JP3871562B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001375134A JP3871562B2 (ja) 2001-12-10 2001-12-10 光学素子機能を有する透明導電膜およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001375134A JP3871562B2 (ja) 2001-12-10 2001-12-10 光学素子機能を有する透明導電膜およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003178625A true JP2003178625A (ja) 2003-06-27
JP3871562B2 JP3871562B2 (ja) 2007-01-24

Family

ID=19183557

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001375134A Expired - Fee Related JP3871562B2 (ja) 2001-12-10 2001-12-10 光学素子機能を有する透明導電膜およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3871562B2 (ja)

Cited By (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005076292A1 (ja) * 2004-02-09 2005-08-18 Asahi Glass Company, Limited 透明電極の製造方法
WO2006068204A1 (ja) * 2004-12-21 2006-06-29 Asahi Glass Company, Limited 透明導電膜付き基板とそのパターニング方法
JP2006202741A (ja) * 2004-12-24 2006-08-03 Samsung Sdi Co Ltd 耐熱性透明電極とその製造方法,および色素増感太陽電池
JP2007073697A (ja) * 2005-09-06 2007-03-22 Canon Inc 薄膜トランジスタの製造方法
JP2008181796A (ja) * 2007-01-25 2008-08-07 Technical Research & Development Institute Ministry Of Defence 透明導電性材料の導電率制御法、デバイス作製法及びデバイス
WO2009044897A1 (ja) * 2007-10-03 2009-04-09 Mitsui Mining & Smelting Co., Ltd. 酸化インジウム系透明導電膜及びその製造方法
WO2009044893A1 (ja) * 2007-10-03 2009-04-09 Mitsui Mining & Smelting Co., Ltd. 酸化インジウム系透明導電膜及びその製造方法
JP2009277640A (ja) * 2007-10-10 2009-11-26 Asahi Kasei Corp 透明導電膜の形成方法
JP2010192387A (ja) * 2009-02-20 2010-09-02 Shin Etsu Polymer Co Ltd 導電パターン形成基板の製造方法
JP2015153608A (ja) * 2014-02-14 2015-08-24 日本写真印刷株式会社 透明電極フィルムの製造方法およびレーザー加工機

Cited By (18)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2005076292A1 (ja) * 2004-02-09 2007-10-18 旭硝子株式会社 透明電極の製造方法
WO2005076292A1 (ja) * 2004-02-09 2005-08-18 Asahi Glass Company, Limited 透明電極の製造方法
JP2011082178A (ja) * 2004-02-09 2011-04-21 Asahi Glass Co Ltd 透明電極の製造方法
JP4655939B2 (ja) * 2004-02-09 2011-03-23 旭硝子株式会社 透明電極の製造方法
WO2006068204A1 (ja) * 2004-12-21 2006-06-29 Asahi Glass Company, Limited 透明導電膜付き基板とそのパターニング方法
JPWO2006068204A1 (ja) * 2004-12-21 2008-06-12 旭硝子株式会社 透明導電膜付き基板とそのパターニング方法
JP2006202741A (ja) * 2004-12-24 2006-08-03 Samsung Sdi Co Ltd 耐熱性透明電極とその製造方法,および色素増感太陽電池
US8053664B2 (en) 2004-12-24 2011-11-08 Samsung Sdi Co., Ltd. Transparent electrode having thermal stability, method of fabricating the same and dye-sensitized solar cell comprising the same
JP2007073697A (ja) * 2005-09-06 2007-03-22 Canon Inc 薄膜トランジスタの製造方法
JP4547501B2 (ja) * 2007-01-25 2010-09-22 防衛省技術研究本部長 透明導電性材料の導電率制御法、デバイス作製法及びデバイス
JP2008181796A (ja) * 2007-01-25 2008-08-07 Technical Research & Development Institute Ministry Of Defence 透明導電性材料の導電率制御法、デバイス作製法及びデバイス
WO2009044893A1 (ja) * 2007-10-03 2009-04-09 Mitsui Mining & Smelting Co., Ltd. 酸化インジウム系透明導電膜及びその製造方法
JPWO2009044888A1 (ja) * 2007-10-03 2011-02-10 三井金属鉱業株式会社 酸化インジウム系ターゲット
WO2009044897A1 (ja) * 2007-10-03 2009-04-09 Mitsui Mining & Smelting Co., Ltd. 酸化インジウム系透明導電膜及びその製造方法
JP5464319B2 (ja) * 2007-10-03 2014-04-09 三井金属鉱業株式会社 酸化インジウム系ターゲット
JP2009277640A (ja) * 2007-10-10 2009-11-26 Asahi Kasei Corp 透明導電膜の形成方法
JP2010192387A (ja) * 2009-02-20 2010-09-02 Shin Etsu Polymer Co Ltd 導電パターン形成基板の製造方法
JP2015153608A (ja) * 2014-02-14 2015-08-24 日本写真印刷株式会社 透明電極フィルムの製造方法およびレーザー加工機

Also Published As

Publication number Publication date
JP3871562B2 (ja) 2007-01-24

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100774436B1 (ko) 레이저 표면 처리 방법
US6291797B1 (en) Laser machining method for glass substrate, diffraction type optical device fabricated by the machining method, and method of manufacturing optical device
JP6553595B2 (ja) コーティングを備えた基材の製造方法
US20060207976A1 (en) Laser material micromachining with green femtosecond pulses
JPH09311237A (ja) 光導波路及びその作製方法
JP3871562B2 (ja) 光学素子機能を有する透明導電膜およびその製造方法
Bushunov et al. Fabrication of anti-reflective microstructures on chalcogenide crystals by femtosecond laser ablation
JP2010142862A (ja) 誘電体材料表面のナノ周期構造形成方法
CN105103093B (zh) 氧化铟锡图案化装置及图案化方法
JP2016517962A (ja) 表面増強ラマン散乱(sers)センサおよびその製造方法
US20160138155A1 (en) Process for obtaining metal oxides by low energy laser pulses irradiation of metal films
JP3600207B2 (ja) 金属酸化物膜の選択的なエッチング処理方法および該方法により選択エッチング処理された金属酸化物膜並びに光学素子及び導電膜
Anghel et al. Femtosecond laser ablation of TiO2 films for two-dimensional photonic crystals
Tsukamoto et al. Control of electrical resistance of TiO 2 films by short-pulse laser irradiation
JP3452733B2 (ja) 回折型の光学素子の製造方法
Schulz-Ruhtenberg et al. Laser patterning of SiOx-layers for the fabrication of UV diffractive phase elements
CN111168233A (zh) 皮秒激光诱导光学玻璃表面周期性结构的方法
JP2832337B2 (ja) 回折格子の製造方法
CN109982984A (zh) 电致变色涂布的玻璃物件和用于激光处理电致变色涂布的玻璃物件的方法
JP2006278274A (ja) 複合酸化物薄膜及びその製造方法及び光学素子
Bischoff et al. Generation of laser-induced periodic surface structures on different glasses by a picosecond-pulsed laser
Bougdid et al. Transmittance of TiO2 nanoparticle-based films deposited by CO2 laser heating
US20080028792A1 (en) Method for Manufacturing an Optical Component
KR20040043451A (ko) 레이저 빔패턴 마스크 및 그 제조방법
JP2006276757A (ja) 酸化物系積層薄膜及びその製造方法及び光学素子

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20051226

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060308

A521 Written amendment

Effective date: 20060502

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20061017

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Effective date: 20061017

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

R150 Certificate of patent (=grant) or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121027

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees