JP2003171308A - アンチトロンビン−iii製剤の保存法 - Google Patents
アンチトロンビン−iii製剤の保存法Info
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Abstract
温度域で、長時間保存可能なアンチトロンビン−III乾
燥製剤の保存法の提供。 【解決手段】乾燥加熱法によりウイルスの不活化を行っ
たアンチトロンビンーIII乾燥製剤、または低ヘパリン
親和性アンチトロンビン−IIIが10%以上は含まない
アンチトロンビン−III乾燥製剤を10℃を越え、45
℃を越えない温度域で保存することにより前記課題を解
決した。
Description
−III乾燥製剤の常温保存法に関する。
ることがある。)は血漿中に存在し、α2グロブリンに
属する分子量65,000〜68,000の糖蛋白質の
一種である。このAT-IIIはプロテアーゼ阻害活性を有
し、トロンビンの血液凝固活性を強く阻害する。また、
トロンビン以外の凝固因子、例えば活性化X因子、活性
化IX因子などに対しても阻害作用を有している。その他
プラスミンやトリプシンに対する阻害作用のあることも
報告されている。
で、より速やかに進行することが知られている。このよ
うな作用を有するAT-IIIは、血液凝固異常亢進の補
正、具体的には汎発性血管内凝固症候群(DIC)や血
中のAT-IIIレベルが低下することによる各種疾患の治
療用に用いられている。AT-IIIは血漿由来の蛋白質で
あることから、それを治療用薬剤として用いる場合には
混入の虞のあるウイルスを不活性化する工程を組み込む
ことが必須である。従来AT-III製剤の製造において用
いられているAT-III含有水溶液の加熱によるウイルス
不活性化処理は蛋白質に対しても負の影響を与え、それ
により変性又は不活性AT-IIIが生成する。
T-IIIの生成率をできる限り低く抑えるAT-III含有水
溶液のウイルス不活化加熱処理法が種々提案されてきた
(例えば特許文献1〜4参照)。しかしながら、ウイル
ス不活化のためにAT-III含有水溶液を加熱処理した
後、前述の固定化ヘパリンを用いる精製法や他の精製法
を実施してもなお製剤中には無視し得ない量の変性また
は不活性AT-IIIが含まれてくる。そして近年の研究に
より、この変性または不活性AT-IIIの殆どはヘパリン
親和性の低下したAT-IIIであることが明らかにされた
(非特許文献1参照)。
IIの中に、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動上で
ネイティブなAT-IIIよりも小さい移動度を示すものを
見付け、これを取り出してN末端部分アミノ酸配列分析
を行った結果、少なくともArg393−Ser394
およびその周辺で開裂したAT-IIIであることを突き止
めた(非特許文献2参照)。低ヘパリン親和性のAT-I
IIの除去は、固定化ヘパリンによる精製では困難であ
り、またこれらは未変性のAT-IIIと化学構造や物性が
極めて似ているため、それらの除去を厳密に行おうとす
れば収率の低下を免れない。
したAT-IIIの生成を抑え、ウイルスを不活化する方法
について種々研究を重ねた結果、低温で固定化ヘパリン
等により精製したAT-IIIをなるべく低い温度で乾燥
し、この乾燥状態のAT-IIIをウイルスの不活化がなさ
れるまで加熱することによって得られた精製AT-IIIが
開裂AT-IIIを実質的に含んでいないことを知見し、こ
の知見に基づいて活性ウイルスおよび開裂したAT-III
を実質的に含有しないAT-III及びその製法の発明をな
し、特許出願した(特許文献5参照)。
としては次のものが挙げられる。
b. Res., 43:219〜227 (1986))。
第9巻(4):371〜379(1999)
T-IIIは血漿等に含まれ、トロンビンの血液凝固活性を
阻害する作用等を有する蛋白であり、混在するウイルス
不活化のための60℃前後の温度、10〜20時間の液
状加熱により活性がかなり低下する。したがってAT-I
II製剤の保存は、AT-IIIの活性低下をなるべく低く抑
えるため、その凍結乾燥剤を10℃以下の冷所に置くべ
きものとされてきた。しかし我が国において、夏期にこ
の温度を維持することは、コスト的にもかなり不利であ
る。もし、10℃以上の常温を含む温度域でも力価がそ
れほど低下しないAT-III製剤の保存法が確立されるな
らば、貯蔵並びに運搬時のコストを大幅に低減させるこ
とができる。
ルス不活化のために乾燥加熱(65℃、96時間)を行
ったAT-III製剤を30℃の高温下に約27ヶ月間保存
した後その力価を測定してみたところ、意外にも活性の
低下は10%にも満たない程度であることが判明した。
また、乾燥加熱処理を行った製剤が低ヘパリン親和性A
T-IIIを多くは含まないことから、低ヘパリン親和性A
T-IIIを一定量以上は含まない製剤が常温保存可能なこ
とも明らかになった。本発明者らはこれらの知見を基に
さらに研究を重ね、発明を完成するに至った。
ン−III乾燥製剤を、10℃を超え45℃を超えない温
度域で保存するアンチトロンビン−III製剤の保存法、
(2)保存する温度域が12〜35℃である前記(1)
記載の保存法、(3)アンチトロンビン−III乾燥製剤
が低ヘパリン親和性アンチトロンビン−IIIを10%以
上は含まないものである(1)記載の保存法、(4)ア
ンチトロンビン−III乾燥製剤が低ヘパリン親和性アン
チトロンビン−IIIを5%以上は含まないものである
(1)記載の保存法、(5)アンチトロンビン−III乾
燥製剤が、ヒト血漿または誘導ヒト血漿画分を固定化ヘ
パリンを用いる精製工程に付し、さらに乾燥工程に付し
た後、乾燥状態のアンチトロンビン−IIIをウイルスが
不活化されるまで加熱することにより得られたものであ
る保存法、(6)アンチトロンビン−III乾燥製剤が、
固定化ヘパリンを用いる精製工程に付した後、乾燥工程
に付す前に、アンチトロンビン−IIIを含む溶液を陰イ
オン交換体による吸脱着工程および固定化ヘパリンを用
いる精製工程に付すことにより得られたものである前記
(5)記載の保存法、(7)アンチトロンビン−III乾
燥製剤が、ウイルスの不活化を、50〜80℃、24〜
120時間で行うことにより得られたものである前記
(5)または(6)記載の保存法、(8)保存する期間
が2年以上である(1)〜(7)のいずれかに記載の保
存法、および(9)アンチトロンビン−III乾燥製剤を
100Pa(N/m2)以下の減圧下に保存する前記
(1)〜(8)のいずれかに記載の保存法、である。
存や運搬は、力価の低下を極力抑えるために、通常0〜
10℃の冷所でおこなわれてきた。しかし、前述のとお
り本発明者らの実験によりAT-III乾燥製剤、特に低ヘ
パリン親和性AT-IIIを10%以上は含まない、より好
ましくは5%以上は含まない乾燥製剤や乾燥状態のアン
チトロンビン−IIIを、ウイルスが不活化されるまで加
熱することによって得られる乾燥製剤は、例えば、12
〜35℃の、いわゆる常温域でも2年以上の長期に亘り
保存が可能であり、また45℃といった過酷な条件下で
も10℃保存の場合と大差の無いことが判った。
ば、前述の特開2001−31698に記載されている
ように、血漿由来のAT-III含有画分を固定化ヘパリン
を用いる精製工程と、乾燥加熱によるウイルス不活化工
程を含む製法により製造することができる。より具体的
には、原料ヒト血漿または誘導ヒト血漿画分を、好まし
くは13℃以下で、固定化ヘパリンを用いる精製法、つ
まりヘパリン・アフィニティークロマトグラフィーに付
す。この工程自体は公知であり、好適に用いられる吸着
支持体は、たとえばヘパリンがセルロース、アガロース
等の不溶性担体に共有結合したものである。この工程に
より大部分の夾雑物を除去することができる。得られた
AT-IIIを含む溶液は、必要により自体公知の限外濾過
に付し、さらに必要により陰イオン交換体による吸脱着
処理工程に付される。これらの工程も13℃以下で行う
ことが好ましい。使用される陰イオン交換体としては、
その解離度(pKa)が通常10.3以上、好ましくは
10.5以上のものである。その構造的特徴として、4
級アミノ基を有するもの、特にトリアルキルアミノアル
キル基を有するものが好適に使用される。陰イオン交換
体の具体例としては、たとえばトリメチルアミノメチル
基、ジエチルヒドロキシプロピルアミノエチル基などの
トリアルキルアミノアルキル基を有するものが挙げられ
る。これらの中でもトリメチルアミノメチル基を有する
ものが特に好ましい。
は、たとえばセルロース、アガロース、デキストラン、
ポリアクリルアミド、アミノ酸共重合体、ポリビニル共
重合体、ポリスチレン共重合体などが挙げられる。AT
-III含有液と陰イオン交換体との接触条件はpH6〜8
程度、塩濃度0〜0.5M程度が好ましく、このような
条件を具有する溶媒としては、たとえば0.05M塩化
ナトリウム含有0.01Mリン酸緩衝液(pH6.5〜
7.5)等が挙げられる。また、溶出条件はpH6〜8
程度、塩濃度0.1〜0.5M程度のものがよく、具体
例としては、溶媒として0.17M塩化ナトリウム含有
0.01Mリン酸緩衝液(pH7)などが挙げられる。
もよい。バッチ法にて行う場合、上記接触条件に調整し
たAT-III含有水溶液を、同じ条件で平衡化した当該強
陰イオン交換体に接触させる。その条件としては、該交
換体1mlに対して該水溶液1〜100mlを用い、3
0分〜2時間程度混和した後に遠心分離して、該交換体
を回収する。さらに、該交換体に上記溶出用溶媒を添加
する。混和条件は接触時と同じであるが、遠心分離して
上澄を回収する。一方、カラム法にて行う場合、上記の
接触条件に調整したAT-III含有水溶液を同じ条件で平
衡化し、且つカラムに充填された当該強陰イオン交換体
に通し、非吸着画分を廃棄する。必要に応じてカラムを
洗浄した後、溶出用溶媒を流して溶出画分を回収する。
ークロマトグラフィーによっても除去しきれなかった、
ヘパリンと親和性を有する夾雑物および混在する可能性
のある各種ウイルスが実質的に除去される。この後、必
要により再度前述の固定化のヘパリンを用いる精製工程
に付してもよい。このようにして得られた精製AT-III
を含む水溶液は乾燥製剤、すなわち水分含量が5%以
下、望ましくは3%以下となるよう乾燥される。この乾
燥工程においても、処理温度はなるべく低い方が好まし
く、通常の凍結乾燥によりこの条件は満たされる。乾燥
製剤の形状は、粉末状、ケーキ状または他のいずれの形
態でもよい。得られた乾燥状のAT-IIIは、さらにウイ
ルスが不活化されるまで加熱される。加熱温度は50〜
80℃、好ましくは55〜75℃、さらに好ましくは6
0〜70℃である、加熱時間は24〜120時間、好ま
しくは72〜108時間、さらに好ましくは84〜10
0時間程度である。加熱時の雰囲気としては通常大気圧
の空気が用いられるが必要により減圧空気、窒素その他
の不活性ガス中で行っても差し支えない。また加熱時の
AT-IIIの熱変性を極力防止する目的で糖、糖アルコー
ル、各種アミノ酸、有機酸塩類、及び無機酸塩類等を溶
液中に添加しておき、それを乾燥して加熱処理に付して
もよい。加熱はどのような手段でもよいが、オーブン、
赤外線照射、砂浴または水浴などの手段が適宜使用され
る。
化され、しかも液状加熱の場合と違って低ヘパリン親和
性AT-IIIの含量が少なく、且つ開裂したAT-IIIが実
質的に含まれていない精製AT-IIIが得られる。ここに
活性ウイルスを実質的に含まないAT-IIIとは、ウイル
スの不活化処理によりウイルスが培養不可能なレベルに
まで減少したAT-IIIを意味し、この状態に至ったAT
-IIIはヒトに投与してもウイルス感染の恐れはない。な
お、こうした精製工程中にウイルス除去膜処理等を施す
ことで、より安全な製剤を提供することができる。低ヘ
パリン親和性AT-IIIの含有率(%)は、後述の二次元
交叉免疫電気泳動法による総AT-IIIの沈降線下面積に
対する低ヘパリン親和性AT-IIIの沈降線下面積の百分
率で表される。当該沈降線下面積での定量が困難な場合
は、ヘパリンアフィニティーカラムによる分析におい
て、AT−III抗原のピークのうち、ヘパリンへの親和
性の低いピークのものの総AT−IIIピークに対する百
分率で表すことにする。なお、簡易的には、加熱処理前
後のAT−III活性(ヘパリンコファクター活性)の低
下率(%)を低ヘパリン親和性AT−IIIの含量とする
ことも可能である。いずれの方法を用いた場合において
も、低ヘパリン親和性AT-IIIの含有率(%)は、総A
T−III蛋白に占める低ヘパリン親和性のAT−III蛋白
の百分率で示すものとする。乾燥製剤は、水分5重量%
以下、好ましくは3重量%以下の製剤であることが望ま
しい。乾燥製剤は、通常バイアル瓶などの密閉容器に保
存される。容器内の気体は、空気でもよく、窒素または
炭酸ガスなどにより置換されていてもよい。更に減圧で
もよく、その場合は、100Pa(N/m2)以下、好
ましくは、50Pa以下、特に好ましくは10pa以下
である。
は、10℃を越え45℃を越えない、いわゆる常温域を
含む温度域で少なくとも2年、高い力価を保持したまま
保存することができる。保存温度は、好ましくは12〜
35℃、さらに好ましくは15〜30℃である。即ち、
国内における通常の病院での室温保存管理下で保存する
ことが可能である。製剤化は、医薬上許容される添加剤
(希釈剤、等張化剤、界面活性剤等)を適宜混合し、製
剤上の常套手段により行うことができる。乾燥製剤、特
に凍結乾燥製剤は用事に注射用蒸留水等の溶解液に溶解
して用いられる。本発明により保存されたAT-III乾燥
製剤は、長期の常温保存にも拘わらず力価の低下が少な
く、再溶解したときも無色透明であり、可視的異物も認
められない。
発明を具体的に説明するが、本発明はそれらによって限
定されるものではない。 実施例1 コーン低温エタノール分画の上清I約175リットルを
DEAE陰イオン交換体で処理した後、未吸着分をプー
ルとして集めた。0.02Mのリン酸緩衝液(pH7.
3)で予め平衡化したヘパリン−セファロース6FFゲ
ル約3700mlを充填したカラムに前述のプール画分
を5℃で負荷した。引き続き、5〜10℃で0.3M塩
化ナトリウムを含む0.02Mのリン酸緩衝液(pH
7.3)30リットルで洗浄した後、2.0M塩化ナト
リウムを含む0.02Mリン酸緩衝液(pH7.3)3
0リットルでAT-IIIを溶出した。ヘパリン−セファロ
ースゲルから溶出したAT-III画分を限外濾過装置(フ
ィルトロン社製、ポアサイズ10K)を用い、5〜10
℃で0.1M以下の塩濃度になるよう脱塩し、約200
0mlになるまで濃縮した。前記画分を0.01Mのリ
ン酸緩衝液(pH7.0)で約10リットルに希釈し
た。予め0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で平
衡化したQ−セファロースFFゲル(ファルマシア製、
トリメチルアミノメチル/架橋アガロース)約3400
mlに前述の希釈液を5〜10℃で負荷した。次いで、
同温度条件下で0.12M塩化ナトリウムを含む0.0
1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を60リットル送液し
て洗浄した後、0.17M塩化ナトリウムを含む0.0
1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)を30リットル送液
しAT-IIIを溶出した。
ヘパリン−セファロースゲル処理を行った。すなわち
0.02Mのリン酸緩衝液(pH7.3)で予め平衡化
したヘパリンセファロースゲル約3700mlを充填し
たカラムに、前述のQ−セファロースFFゲルの溶出液
を5〜10℃で負荷した。引き続き、同温度条件下でそ
れぞれ0.3M塩化ナトリウムを含む0.02Mのリン
酸緩衝液(pH7.3)30リットルで洗浄した後、
2.0M塩化ナトリウムを含む0.02Mリン酸緩衝液
(pH7.3)を30リットルでAT-IIIを溶出した。
溶液を前述のものと同一の限外濾過装置を用い、10℃
以下で濃縮・緩衝液交換を行った。交換緩衝液として、
0.07M塩化ナトリウムを含む0.02Mクエン酸緩
衝液(pH7.0)を用い、280nmの吸光度にて1
0になるよう希釈・調製したものを(a)液とした。そ
の(a)液を凍結乾燥し、得られた乾燥品(水分1%)
を品温65℃で96時間加熱処理を行った。このように
して得られた乾燥品13gを注射用水325ミリリット
ルに溶解した。この溶液にL−グルタミン酸ナトリウム
を10mg/mlとなるように添加し、ウイルス除去膜
(旭化成製、プラノバ(登録商標)35N)処理を実施
した。得られた溶液各10mlをバイアル瓶に分注して
凍結乾燥し、減圧下(10Pa)に密栓し、AT-III乾
燥製剤(A)を得た。
下、10℃、25℃および40℃の各温度において0〜
27ヶ月保存したものの外観等を観察し、注射用水に溶
解して10mlとしたものを試料液とした。ついで、そ
れぞれの試験項目について観察、測定し、数値に関して
は3本の平均値を〔表1〕〜〔表3〕に示した。AT-I
II活性は、生物学的製剤基準記載のAT-III力価測定法
により測定した。製造直後の乾燥製剤(A)中の低ヘパ
リン親和性AT-IIIの含有率は試料液の二次元交叉免疫
電気泳動法での沈降線下面積を算出することにより求め
たが、検出限界以下であった。なお、二次元交叉免疫電
気泳動は、Sasらの方法〔BritishJournal of Haematolo
gy 30巻 265−272(1975)〕に従って、
42単位/mlのヘパリンナトリウム(SIGMA社製
H−7005)の存在下で1次元目の泳動を、抗AT-I
II抗体(SIGMA社製 A−8904)の存在下で2
次元目の泳動を行った。低ヘパリン親和性AT-IIIはヘ
パリンの存在下での一次元目の泳動において動きが遅
く、ヘパリン親和性AT-IIIよりも陰極側に寄った沈降
線として現れる。
ス不活化を60℃、10時間の液状加熱により実施した
市販のAT-III凍結乾燥製剤(C)について、遮光下、
55℃,1ヶ月間保持後、性状を観察し、AT-IIIの力
価等を測定して、その結果を〔表4〕に示した。なお、
製剤(C)は、低ヘパリン親和性AT-IIIの含有率が1
7%であった。なお、低ヘパリン親和性AT-IIIの含有
率は二次元交叉免疫電気泳動法により測定した。
本発明の試料(A)は、保存温度10℃、25℃および
40℃のいずれの場合においても、性状には全く問題が
なく、かつAT-III力価は初期値に対して90%以上の
力価を保持していた。また、〔表4〕に示されているよ
うに、試料(B)は、55℃、2ヶ月の苛酷条件によっ
ても、AT-IIIの残存力価は殆ど低下しなかったのに対
し、試料(C)は同条件で残存力価が90%を割り、長
期の保存は困難であることを示した。
Mリン酸緩衝液(pH7.3)で平衡化したヘパリンセ
ファロース6FFゲル3700mlを充填したカラムに
4℃で負荷した。引き続き、5〜10℃で0.3Mのリ
ン酸緩衝液(pH7.3)30Lで洗浄後、2.0M塩
化ナトリウムを含む0.02Mリン酸緩衝液(pH7.
3)30LでAT-IIIを溶出した。この溶出画分を限界
濾過装置(フィルトロン社製、ポアサイズ10K)を用
い、0.1M以下の塩濃度になるように脱塩し、約20
00mlとなるように濃縮した。前記画分を予め0.0
1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したQ−セ
ファロースFFゲル(ファルマシア社製)約3400m
lに5〜10℃で負荷した。ついで0.12M塩化ナト
リウムを含む0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)
で洗浄後、0.17M塩化ナトリウムを含む0.01M
のリン酸緩衝液(pH7.0)30LでAT-IIIを溶出
した。この溶出画分を再度、0.02Mリン酸緩衝液
(pH7.3)で平衡化したヘパリンセファロース6F
Fゲルを3700ml充填したカラムに4℃で負荷し
た。引き続き、5〜10℃で0.3Mのリン酸緩衝液
(pH7.3)30Lで洗浄後、2.0M塩化ナトリウ
ムを含む0.02Mリン酸緩衝液(pH7.3)30L
でAT-IIIを溶出した。上記のヘパリンセファロースゲ
ルから溶出したものを前述の限外濾過装置で10℃で
0.07M塩化ナトリウムを含む0.02Mクエン酸緩
衝液(pH7.0)に置換し、最終濃度として10mg
/mlとなるようにL−グルタミ酸ナトリウムを加え
(X)液を得た。(X)液を0,5Mクエン酸ナトリウ
ムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に置換
後、60℃10時間の液状加熱処理を行い、前述の
(X)液を同様の緩衝液組成に再度置換した液を(Y)
液とした。さらに(X)液と(Y)液を等量混合した液
を(Z)液とした。(X)、(Y)、(Z)の各液は、
10mlずつバイアル瓶に充填後、凍結乾燥し、その後
密栓して(X)製剤、(Y)製剤、(Z)製剤をそれぞ
れ得た。
中のAT-III残存力価への影響を確認するため、低ヘパ
リン親和性AT-IIIを産生する液状加熱処理を行い、加
熱処理をしていないもの及び両者の混合物を調製し、4
0℃及び55℃での残存力価を検討した。液状加熱処理
をしていない上記製剤(X)製剤とウイルス不活化処理
として60℃10時間加熱処理を行った(Y)製剤、並
びに(X)と(Y)液を等量混合して得られた(Z)製
剤について、40℃及び55℃による経時的な保存期間
(0〜7ヶ月)後に注射用水10mlを加え、AT-III
活性を生物学的製剤基準に記載のAT-III力価測定方法
により測定した。その結果を表5および表6に示した。
残存力価は、調製直後の保存期間0ヶ月のものを100
として所定保存期間後の残存活性を百分率にて示した。
低ヘパリン親和性AT-IIIの含有率は、(X)製剤のA
T-III活性(ヘパリンのコファクター活性)を100と
し、保存試験開始前の(Y)及び(Z)製剤のAT-III
活性を測定し、その活性低下率を低ヘパリン親和性AT
-III含有率として表示した。なお、(X)製剤の低ヘパ
リン親和性AT-IIIの含有率は、二次元交叉免疫電気泳
動法による測定で検出限界以下であった。
親和性AT-IIIの含有率が高くなるほど残存力価が低下
した。この結果は、表4に示す市販の液状加熱処理を行
った低ヘパリン親和性のAT-IIIを多く含む試料におけ
る残存力価の低下が低ヘパリン親和性AT-IIIによるも
のであることを示すものである。
I乾燥製剤を10℃を越え、45℃を越えない、いわゆ
る常温域を含む温度域で少なくとも2年以上その力価を
あまり低下させず保存することができ、また溶解時、無
色澄明で可視的異物を認めない溶液が得られる。
Claims (9)
- 【請求項1】アンチトロンビン−III乾燥製剤を、10
℃を超え45℃を超えない温度域で保存するアンチトロ
ンビン−III製剤の保存法。 - 【請求項2】保存する温度域が12〜35℃である請求
項1記載の保存法。 - 【請求項3】アンチトロンビン−III乾燥製剤が低ヘパ
リン親和性アンチトロンビン−IIIを10%以上は含ま
ないものである請求項1記載の保存法。 - 【請求項4】アンチトロンビン−III乾燥製剤が低ヘパ
リン親和性アンチトロンビン−IIIを5%以上は含まな
いものである請求項1記載の保存法。 - 【請求項5】アンチトロンビン−III乾燥製剤が、ヒト
血漿または誘導ヒト血漿画分を固定化ヘパリンを用いる
精製工程に付し、さらに乾燥工程に付した後、乾燥状態
のアンチトロンビン−IIIをウイルスが不活化されるま
で加熱することにより得られたものである請求項1記載
のアンチトロンビン−III製剤の保存法。 - 【請求項6】アンチトロンビン−III乾燥製剤が、固定
化ヘパリンを用いる精製工程に付した後、乾燥工程に付
す前に、アンチトロンビン−IIIを含む溶液を陰イオン
交換体による吸脱着工程および固定化ヘパリンを用いる
精製工程に付すことにより得られたものである請求項5
記載の保存法。 - 【請求項7】アンチトロンビン−III乾燥製剤が、ウイ
ルスの不活化を、50〜80℃、24〜120時間で行
うことにより得られたものである請求項5または6記載
の保存法。 - 【請求項8】保存する期間が2年以上である請求項1〜
7のいずれかに記載の保存法。 - 【請求項9】アンチトロンビン−III乾燥製剤を100
Pa(N/m2)以下の減圧下に保存する請求項1〜8
のいずれかに記載の保存法。
Priority Applications (1)
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