JP2003171308A - アンチトロンビン−iii製剤の保存法 - Google Patents

アンチトロンビン−iii製剤の保存法

Info

Publication number
JP2003171308A
JP2003171308A JP2002277419A JP2002277419A JP2003171308A JP 2003171308 A JP2003171308 A JP 2003171308A JP 2002277419 A JP2002277419 A JP 2002277419A JP 2002277419 A JP2002277419 A JP 2002277419A JP 2003171308 A JP2003171308 A JP 2003171308A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
iii
antithrombin
preparation
heparin
dry
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002277419A
Other languages
English (en)
Inventor
Atsushi Makishima
敦 牧島
Hideya Maruyama
英也 丸山
Hitoshi Tanaka
仁 田中
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nihon Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Nihon Pharmaceutical Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nihon Pharmaceutical Co Ltd filed Critical Nihon Pharmaceutical Co Ltd
Priority to JP2002277419A priority Critical patent/JP2003171308A/ja
Publication of JP2003171308A publication Critical patent/JP2003171308A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】常温域を含む10℃を越え、45℃を越えない
温度域で、長時間保存可能なアンチトロンビン−III乾
燥製剤の保存法の提供。 【解決手段】乾燥加熱法によりウイルスの不活化を行っ
たアンチトロンビンーIII乾燥製剤、または低ヘパリン
親和性アンチトロンビン−IIIが10%以上は含まない
アンチトロンビン−III乾燥製剤を10℃を越え、45
℃を越えない温度域で保存することにより前記課題を解
決した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アンチトロンビン
−III乾燥製剤の常温保存法に関する。
【0002】
【従来の技術】アンチトロンビン−III(AT-IIIと称す
ることがある。)は血漿中に存在し、α2グロブリンに
属する分子量65,000〜68,000の糖蛋白質の
一種である。このAT-IIIはプロテアーゼ阻害活性を有
し、トロンビンの血液凝固活性を強く阻害する。また、
トロンビン以外の凝固因子、例えば活性化X因子、活性
化IX因子などに対しても阻害作用を有している。その他
プラスミンやトリプシンに対する阻害作用のあることも
報告されている。
【0003】これらの阻害作用は通常ヘパリンの存在下
で、より速やかに進行することが知られている。このよ
うな作用を有するAT-IIIは、血液凝固異常亢進の補
正、具体的には汎発性血管内凝固症候群(DIC)や血
中のAT-IIIレベルが低下することによる各種疾患の治
療用に用いられている。AT-IIIは血漿由来の蛋白質で
あることから、それを治療用薬剤として用いる場合には
混入の虞のあるウイルスを不活性化する工程を組み込む
ことが必須である。従来AT-III製剤の製造において用
いられているAT-III含有水溶液の加熱によるウイルス
不活性化処理は蛋白質に対しても負の影響を与え、それ
により変性又は不活性AT-IIIが生成する。
【0004】そこで、熱により変性又は不活化されたA
T-IIIの生成率をできる限り低く抑えるAT-III含有水
溶液のウイルス不活化加熱処理法が種々提案されてきた
(例えば特許文献1〜4参照)。しかしながら、ウイル
ス不活化のためにAT-III含有水溶液を加熱処理した
後、前述の固定化ヘパリンを用いる精製法や他の精製法
を実施してもなお製剤中には無視し得ない量の変性また
は不活性AT-IIIが含まれてくる。そして近年の研究に
より、この変性または不活性AT-IIIの殆どはヘパリン
親和性の低下したAT-IIIであることが明らかにされた
(非特許文献1参照)。
【0005】本発明者らはこの低ヘパリン親和性AT-I
IIの中に、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動上で
ネイティブなAT-IIIよりも小さい移動度を示すものを
見付け、これを取り出してN末端部分アミノ酸配列分析
を行った結果、少なくともArg393−Ser394
およびその周辺で開裂したAT-IIIであることを突き止
めた(非特許文献2参照)。低ヘパリン親和性のAT-I
IIの除去は、固定化ヘパリンによる精製では困難であ
り、またこれらは未変性のAT-IIIと化学構造や物性が
極めて似ているため、それらの除去を厳密に行おうとす
れば収率の低下を免れない。
【0006】本発明者らは低ヘパリン親和性である開裂
したAT-IIIの生成を抑え、ウイルスを不活化する方法
について種々研究を重ねた結果、低温で固定化ヘパリン
等により精製したAT-IIIをなるべく低い温度で乾燥
し、この乾燥状態のAT-IIIをウイルスの不活化がなさ
れるまで加熱することによって得られた精製AT-IIIが
開裂AT-IIIを実質的に含んでいないことを知見し、こ
の知見に基づいて活性ウイルスおよび開裂したAT-III
を実質的に含有しないAT-III及びその製法の発明をな
し、特許出願した(特許文献5参照)。
【0007】この出願の発明に関する先行技術文献情報
としては次のものが挙げられる。
【特許文献1】特開昭63−23896号公報
【特許文献2】特開平1−275600号公報
【特許文献3】特開平10−147538号公報
【特許文献4】特開平11−49799号公報
【特許文献5】特開2001−31698号公報
【非特許文献1】Winkelman, L. & Haddon, M.E. Throm
b. Res., 43:219〜227 (1986))。
【非特許文献2】牧島 敦ら、「薬理と臨床」医薬出版
第9巻(4):371〜379(1999)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】既に述べたとおり、A
T-IIIは血漿等に含まれ、トロンビンの血液凝固活性を
阻害する作用等を有する蛋白であり、混在するウイルス
不活化のための60℃前後の温度、10〜20時間の液
状加熱により活性がかなり低下する。したがってAT-I
II製剤の保存は、AT-IIIの活性低下をなるべく低く抑
えるため、その凍結乾燥剤を10℃以下の冷所に置くべ
きものとされてきた。しかし我が国において、夏期にこ
の温度を維持することは、コスト的にもかなり不利であ
る。もし、10℃以上の常温を含む温度域でも力価がそ
れほど低下しないAT-III製剤の保存法が確立されるな
らば、貯蔵並びに運搬時のコストを大幅に低減させるこ
とができる。
【0009】
【課題を解決する手段】ところが、本発明者らが、ウイ
ルス不活化のために乾燥加熱(65℃、96時間)を行
ったAT-III製剤を30℃の高温下に約27ヶ月間保存
した後その力価を測定してみたところ、意外にも活性の
低下は10%にも満たない程度であることが判明した。
また、乾燥加熱処理を行った製剤が低ヘパリン親和性A
T-IIIを多くは含まないことから、低ヘパリン親和性A
T-IIIを一定量以上は含まない製剤が常温保存可能なこ
とも明らかになった。本発明者らはこれらの知見を基に
さらに研究を重ね、発明を完成するに至った。
【0010】すなわち本発明は、(1)アンチトロンビ
ン−III乾燥製剤を、10℃を超え45℃を超えない温
度域で保存するアンチトロンビン−III製剤の保存法、
(2)保存する温度域が12〜35℃である前記(1)
記載の保存法、(3)アンチトロンビン−III乾燥製剤
が低ヘパリン親和性アンチトロンビン−IIIを10%以
上は含まないものである(1)記載の保存法、(4)ア
ンチトロンビン−III乾燥製剤が低ヘパリン親和性アン
チトロンビン−IIIを5%以上は含まないものである
(1)記載の保存法、(5)アンチトロンビン−III乾
燥製剤が、ヒト血漿または誘導ヒト血漿画分を固定化ヘ
パリンを用いる精製工程に付し、さらに乾燥工程に付し
た後、乾燥状態のアンチトロンビン−IIIをウイルスが
不活化されるまで加熱することにより得られたものであ
る保存法、(6)アンチトロンビン−III乾燥製剤が、
固定化ヘパリンを用いる精製工程に付した後、乾燥工程
に付す前に、アンチトロンビン−IIIを含む溶液を陰イ
オン交換体による吸脱着工程および固定化ヘパリンを用
いる精製工程に付すことにより得られたものである前記
(5)記載の保存法、(7)アンチトロンビン−III乾
燥製剤が、ウイルスの不活化を、50〜80℃、24〜
120時間で行うことにより得られたものである前記
(5)または(6)記載の保存法、(8)保存する期間
が2年以上である(1)〜(7)のいずれかに記載の保
存法、および(9)アンチトロンビン−III乾燥製剤を
100Pa(N/m)以下の減圧下に保存する前記
(1)〜(8)のいずれかに記載の保存法、である。
【0011】
【発明の実施の形態】これまで、AT-III乾燥製剤の保
存や運搬は、力価の低下を極力抑えるために、通常0〜
10℃の冷所でおこなわれてきた。しかし、前述のとお
り本発明者らの実験によりAT-III乾燥製剤、特に低ヘ
パリン親和性AT-IIIを10%以上は含まない、より好
ましくは5%以上は含まない乾燥製剤や乾燥状態のアン
チトロンビン−IIIを、ウイルスが不活化されるまで加
熱することによって得られる乾燥製剤は、例えば、12
〜35℃の、いわゆる常温域でも2年以上の長期に亘り
保存が可能であり、また45℃といった過酷な条件下で
も10℃保存の場合と大差の無いことが判った。
【0012】本発明におけるAT-III乾燥製剤は、例え
ば、前述の特開2001−31698に記載されている
ように、血漿由来のAT-III含有画分を固定化ヘパリン
を用いる精製工程と、乾燥加熱によるウイルス不活化工
程を含む製法により製造することができる。より具体的
には、原料ヒト血漿または誘導ヒト血漿画分を、好まし
くは13℃以下で、固定化ヘパリンを用いる精製法、つ
まりヘパリン・アフィニティークロマトグラフィーに付
す。この工程自体は公知であり、好適に用いられる吸着
支持体は、たとえばヘパリンがセルロース、アガロース
等の不溶性担体に共有結合したものである。この工程に
より大部分の夾雑物を除去することができる。得られた
AT-IIIを含む溶液は、必要により自体公知の限外濾過
に付し、さらに必要により陰イオン交換体による吸脱着
処理工程に付される。これらの工程も13℃以下で行う
ことが好ましい。使用される陰イオン交換体としては、
その解離度(pKa)が通常10.3以上、好ましくは
10.5以上のものである。その構造的特徴として、4
級アミノ基を有するもの、特にトリアルキルアミノアル
キル基を有するものが好適に使用される。陰イオン交換
体の具体例としては、たとえばトリメチルアミノメチル
基、ジエチルヒドロキシプロピルアミノエチル基などの
トリアルキルアミノアルキル基を有するものが挙げられ
る。これらの中でもトリメチルアミノメチル基を有する
ものが特に好ましい。
【0013】これらの官能基を有する不溶性担体として
は、たとえばセルロース、アガロース、デキストラン、
ポリアクリルアミド、アミノ酸共重合体、ポリビニル共
重合体、ポリスチレン共重合体などが挙げられる。AT
-III含有液と陰イオン交換体との接触条件はpH6〜8
程度、塩濃度0〜0.5M程度が好ましく、このような
条件を具有する溶媒としては、たとえば0.05M塩化
ナトリウム含有0.01Mリン酸緩衝液(pH6.5〜
7.5)等が挙げられる。また、溶出条件はpH6〜8
程度、塩濃度0.1〜0.5M程度のものがよく、具体
例としては、溶媒として0.17M塩化ナトリウム含有
0.01Mリン酸緩衝液(pH7)などが挙げられる。
【0014】接触方法はカラム法、バッチ法のいずれで
もよい。バッチ法にて行う場合、上記接触条件に調整し
たAT-III含有水溶液を、同じ条件で平衡化した当該強
陰イオン交換体に接触させる。その条件としては、該交
換体1mlに対して該水溶液1〜100mlを用い、3
0分〜2時間程度混和した後に遠心分離して、該交換体
を回収する。さらに、該交換体に上記溶出用溶媒を添加
する。混和条件は接触時と同じであるが、遠心分離して
上澄を回収する。一方、カラム法にて行う場合、上記の
接触条件に調整したAT-III含有水溶液を同じ条件で平
衡化し、且つカラムに充填された当該強陰イオン交換体
に通し、非吸着画分を廃棄する。必要に応じてカラムを
洗浄した後、溶出用溶媒を流して溶出画分を回収する。
【0015】この工程により、ヘパリン・アフィニティ
ークロマトグラフィーによっても除去しきれなかった、
ヘパリンと親和性を有する夾雑物および混在する可能性
のある各種ウイルスが実質的に除去される。この後、必
要により再度前述の固定化のヘパリンを用いる精製工程
に付してもよい。このようにして得られた精製AT-III
を含む水溶液は乾燥製剤、すなわち水分含量が5%以
下、望ましくは3%以下となるよう乾燥される。この乾
燥工程においても、処理温度はなるべく低い方が好まし
く、通常の凍結乾燥によりこの条件は満たされる。乾燥
製剤の形状は、粉末状、ケーキ状または他のいずれの形
態でもよい。得られた乾燥状のAT-IIIは、さらにウイ
ルスが不活化されるまで加熱される。加熱温度は50〜
80℃、好ましくは55〜75℃、さらに好ましくは6
0〜70℃である、加熱時間は24〜120時間、好ま
しくは72〜108時間、さらに好ましくは84〜10
0時間程度である。加熱時の雰囲気としては通常大気圧
の空気が用いられるが必要により減圧空気、窒素その他
の不活性ガス中で行っても差し支えない。また加熱時の
AT-IIIの熱変性を極力防止する目的で糖、糖アルコー
ル、各種アミノ酸、有機酸塩類、及び無機酸塩類等を溶
液中に添加しておき、それを乾燥して加熱処理に付して
もよい。加熱はどのような手段でもよいが、オーブン、
赤外線照射、砂浴または水浴などの手段が適宜使用され
る。
【0016】この加熱工程の操作によりウイルスは不活
化され、しかも液状加熱の場合と違って低ヘパリン親和
性AT-IIIの含量が少なく、且つ開裂したAT-IIIが実
質的に含まれていない精製AT-IIIが得られる。ここに
活性ウイルスを実質的に含まないAT-IIIとは、ウイル
スの不活化処理によりウイルスが培養不可能なレベルに
まで減少したAT-IIIを意味し、この状態に至ったAT
-IIIはヒトに投与してもウイルス感染の恐れはない。な
お、こうした精製工程中にウイルス除去膜処理等を施す
ことで、より安全な製剤を提供することができる。低ヘ
パリン親和性AT-IIIの含有率(%)は、後述の二次元
交叉免疫電気泳動法による総AT-IIIの沈降線下面積に
対する低ヘパリン親和性AT-IIIの沈降線下面積の百分
率で表される。当該沈降線下面積での定量が困難な場合
は、ヘパリンアフィニティーカラムによる分析におい
て、AT−III抗原のピークのうち、ヘパリンへの親和
性の低いピークのものの総AT−IIIピークに対する百
分率で表すことにする。なお、簡易的には、加熱処理前
後のAT−III活性(ヘパリンコファクター活性)の低
下率(%)を低ヘパリン親和性AT−IIIの含量とする
ことも可能である。いずれの方法を用いた場合において
も、低ヘパリン親和性AT-IIIの含有率(%)は、総A
T−III蛋白に占める低ヘパリン親和性のAT−III蛋白
の百分率で示すものとする。乾燥製剤は、水分5重量%
以下、好ましくは3重量%以下の製剤であることが望ま
しい。乾燥製剤は、通常バイアル瓶などの密閉容器に保
存される。容器内の気体は、空気でもよく、窒素または
炭酸ガスなどにより置換されていてもよい。更に減圧で
もよく、その場合は、100Pa(N/m)以下、好
ましくは、50Pa以下、特に好ましくは10pa以下
である。
【0017】このようにして得られた乾燥AT-III製剤
は、10℃を越え45℃を越えない、いわゆる常温域を
含む温度域で少なくとも2年、高い力価を保持したまま
保存することができる。保存温度は、好ましくは12〜
35℃、さらに好ましくは15〜30℃である。即ち、
国内における通常の病院での室温保存管理下で保存する
ことが可能である。製剤化は、医薬上許容される添加剤
(希釈剤、等張化剤、界面活性剤等)を適宜混合し、製
剤上の常套手段により行うことができる。乾燥製剤、特
に凍結乾燥製剤は用事に注射用蒸留水等の溶解液に溶解
して用いられる。本発明により保存されたAT-III乾燥
製剤は、長期の常温保存にも拘わらず力価の低下が少な
く、再溶解したときも無色透明であり、可視的異物も認
められない。
【0018】
【実施例】以下に実施例および試験例をあげてさらに本
発明を具体的に説明するが、本発明はそれらによって限
定されるものではない。 実施例1 コーン低温エタノール分画の上清I約175リットルを
DEAE陰イオン交換体で処理した後、未吸着分をプー
ルとして集めた。0.02Mのリン酸緩衝液(pH7.
3)で予め平衡化したヘパリン−セファロース6FFゲ
ル約3700mlを充填したカラムに前述のプール画分
を5℃で負荷した。引き続き、5〜10℃で0.3M塩
化ナトリウムを含む0.02Mのリン酸緩衝液(pH
7.3)30リットルで洗浄した後、2.0M塩化ナト
リウムを含む0.02Mリン酸緩衝液(pH7.3)3
0リットルでAT-IIIを溶出した。ヘパリン−セファロ
ースゲルから溶出したAT-III画分を限外濾過装置(フ
ィルトロン社製、ポアサイズ10K)を用い、5〜10
℃で0.1M以下の塩濃度になるよう脱塩し、約200
0mlになるまで濃縮した。前記画分を0.01Mのリ
ン酸緩衝液(pH7.0)で約10リットルに希釈し
た。予め0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で平
衡化したQ−セファロースFFゲル(ファルマシア製、
トリメチルアミノメチル/架橋アガロース)約3400
mlに前述の希釈液を5〜10℃で負荷した。次いで、
同温度条件下で0.12M塩化ナトリウムを含む0.0
1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を60リットル送液し
て洗浄した後、0.17M塩化ナトリウムを含む0.0
1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)を30リットル送液
しAT-IIIを溶出した。
【0019】この溶出画分をさらに精製するため、再度
ヘパリン−セファロースゲル処理を行った。すなわち
0.02Mのリン酸緩衝液(pH7.3)で予め平衡化
したヘパリンセファロースゲル約3700mlを充填し
たカラムに、前述のQ−セファロースFFゲルの溶出液
を5〜10℃で負荷した。引き続き、同温度条件下でそ
れぞれ0.3M塩化ナトリウムを含む0.02Mのリン
酸緩衝液(pH7.3)30リットルで洗浄した後、
2.0M塩化ナトリウムを含む0.02Mリン酸緩衝液
(pH7.3)を30リットルでAT-IIIを溶出した。
【0020】ヘパリン−セファロースゲルから溶出した
溶液を前述のものと同一の限外濾過装置を用い、10℃
以下で濃縮・緩衝液交換を行った。交換緩衝液として、
0.07M塩化ナトリウムを含む0.02Mクエン酸緩
衝液(pH7.0)を用い、280nmの吸光度にて1
0になるよう希釈・調製したものを(a)液とした。そ
の(a)液を凍結乾燥し、得られた乾燥品(水分1%)
を品温65℃で96時間加熱処理を行った。このように
して得られた乾燥品13gを注射用水325ミリリット
ルに溶解した。この溶液にL−グルタミン酸ナトリウム
を10mg/mlとなるように添加し、ウイルス除去膜
(旭化成製、プラノバ(登録商標)35N)処理を実施
した。得られた溶液各10mlをバイアル瓶に分注して
凍結乾燥し、減圧下(10Pa)に密栓し、AT-III乾
燥製剤(A)を得た。
【0021】試験例1 乾燥製剤の保存期間、保存温度とAT-IIIの力価の関係 乾燥製剤(A)は、それぞれのバイアル瓶3本を遮光
下、10℃、25℃および40℃の各温度において0〜
27ヶ月保存したものの外観等を観察し、注射用水に溶
解して10mlとしたものを試料液とした。ついで、そ
れぞれの試験項目について観察、測定し、数値に関して
は3本の平均値を〔表1〕〜〔表3〕に示した。AT-I
II活性は、生物学的製剤基準記載のAT-III力価測定法
により測定した。製造直後の乾燥製剤(A)中の低ヘパ
リン親和性AT-IIIの含有率は試料液の二次元交叉免疫
電気泳動法での沈降線下面積を算出することにより求め
たが、検出限界以下であった。なお、二次元交叉免疫電
気泳動は、Sasらの方法〔BritishJournal of Haematolo
gy 30巻 265−272(1975)〕に従って、
42単位/mlのヘパリンナトリウム(SIGMA社製
H−7005)の存在下で1次元目の泳動を、抗AT-I
II抗体(SIGMA社製 A−8904)の存在下で2
次元目の泳動を行った。低ヘパリン親和性AT-IIIはヘ
パリンの存在下での一次元目の泳動において動きが遅
く、ヘパリン親和性AT-IIIよりも陰極側に寄った沈降
線として現れる。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】試験例2 実施例1に準じて別途調製した乾燥製剤(B)とウイル
ス不活化を60℃、10時間の液状加熱により実施した
市販のAT-III凍結乾燥製剤(C)について、遮光下、
55℃,1ヶ月間保持後、性状を観察し、AT-IIIの力
価等を測定して、その結果を〔表4〕に示した。なお、
製剤(C)は、低ヘパリン親和性AT-IIIの含有率が1
7%であった。なお、低ヘパリン親和性AT-IIIの含有
率は二次元交叉免疫電気泳動法により測定した。
【0026】
【表4】
【0027】〔表1〕〜〔表3〕から明らかなように、
本発明の試料(A)は、保存温度10℃、25℃および
40℃のいずれの場合においても、性状には全く問題が
なく、かつAT-III力価は初期値に対して90%以上の
力価を保持していた。また、〔表4〕に示されているよ
うに、試料(B)は、55℃、2ヶ月の苛酷条件によっ
ても、AT-IIIの残存力価は殆ど低下しなかったのに対
し、試料(C)は同条件で残存力価が90%を割り、長
期の保存は困難であることを示した。
【0028】実施例2 コーンエタノール分画の上清I約175Lを、0.02
Mリン酸緩衝液(pH7.3)で平衡化したヘパリンセ
ファロース6FFゲル3700mlを充填したカラムに
4℃で負荷した。引き続き、5〜10℃で0.3Mのリ
ン酸緩衝液(pH7.3)30Lで洗浄後、2.0M塩
化ナトリウムを含む0.02Mリン酸緩衝液(pH7.
3)30LでAT-IIIを溶出した。この溶出画分を限界
濾過装置(フィルトロン社製、ポアサイズ10K)を用
い、0.1M以下の塩濃度になるように脱塩し、約20
00mlとなるように濃縮した。前記画分を予め0.0
1Mのリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したQ−セ
ファロースFFゲル(ファルマシア社製)約3400m
lに5〜10℃で負荷した。ついで0.12M塩化ナト
リウムを含む0.01Mのリン酸緩衝液(pH7.0)
で洗浄後、0.17M塩化ナトリウムを含む0.01M
のリン酸緩衝液(pH7.0)30LでAT-IIIを溶出
した。この溶出画分を再度、0.02Mリン酸緩衝液
(pH7.3)で平衡化したヘパリンセファロース6F
Fゲルを3700ml充填したカラムに4℃で負荷し
た。引き続き、5〜10℃で0.3Mのリン酸緩衝液
(pH7.3)30Lで洗浄後、2.0M塩化ナトリウ
ムを含む0.02Mリン酸緩衝液(pH7.3)30L
でAT-IIIを溶出した。上記のヘパリンセファロースゲ
ルから溶出したものを前述の限外濾過装置で10℃で
0.07M塩化ナトリウムを含む0.02Mクエン酸緩
衝液(pH7.0)に置換し、最終濃度として10mg
/mlとなるようにL−グルタミ酸ナトリウムを加え
(X)液を得た。(X)液を0,5Mクエン酸ナトリウ
ムを含む20mMリン酸緩衝液(pH7.5)に置換
後、60℃10時間の液状加熱処理を行い、前述の
(X)液を同様の緩衝液組成に再度置換した液を(Y)
液とした。さらに(X)液と(Y)液を等量混合した液
を(Z)液とした。(X)、(Y)、(Z)の各液は、
10mlずつバイアル瓶に充填後、凍結乾燥し、その後
密栓して(X)製剤、(Y)製剤、(Z)製剤をそれぞ
れ得た。
【0029】試験例3 低ヘパリン親和性のAT-III含量の違いによる保存期間
中のAT-III残存力価への影響を確認するため、低ヘパ
リン親和性AT-IIIを産生する液状加熱処理を行い、加
熱処理をしていないもの及び両者の混合物を調製し、4
0℃及び55℃での残存力価を検討した。液状加熱処理
をしていない上記製剤(X)製剤とウイルス不活化処理
として60℃10時間加熱処理を行った(Y)製剤、並
びに(X)と(Y)液を等量混合して得られた(Z)製
剤について、40℃及び55℃による経時的な保存期間
(0〜7ヶ月)後に注射用水10mlを加え、AT-III
活性を生物学的製剤基準に記載のAT-III力価測定方法
により測定した。その結果を表5および表6に示した。
残存力価は、調製直後の保存期間0ヶ月のものを100
として所定保存期間後の残存活性を百分率にて示した。
低ヘパリン親和性AT-IIIの含有率は、(X)製剤のA
T-III活性(ヘパリンのコファクター活性)を100と
し、保存試験開始前の(Y)及び(Z)製剤のAT-III
活性を測定し、その活性低下率を低ヘパリン親和性AT
-III含有率として表示した。なお、(X)製剤の低ヘパ
リン親和性AT-IIIの含有率は、二次元交叉免疫電気泳
動法による測定で検出限界以下であった。
【0030】
【表5】
【0031】
【表6】 表5及び表6から明らかなように、製剤中の低ヘパリン
親和性AT-IIIの含有率が高くなるほど残存力価が低下
した。この結果は、表4に示す市販の液状加熱処理を行
った低ヘパリン親和性のAT-IIIを多く含む試料におけ
る残存力価の低下が低ヘパリン親和性AT-IIIによるも
のであることを示すものである。
【0032】
【発明の効果】本発明によれば、アンチトロンビン−II
I乾燥製剤を10℃を越え、45℃を越えない、いわゆ
る常温域を含む温度域で少なくとも2年以上その力価を
あまり低下させず保存することができ、また溶解時、無
色澄明で可視的異物を認めない溶液が得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 田中 仁 千葉県成田市新泉3番地の1 日本製薬株 式会社成田工場内 Fターム(参考) 4C076 AA29 BB11 CC14 DD43 DD51 FF36 GG07 4C084 AA02 AA03 BA44 DC35 MA44 MA66 NA01 NA03 ZA542

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アンチトロンビン−III乾燥製剤を、10
    ℃を超え45℃を超えない温度域で保存するアンチトロ
    ンビン−III製剤の保存法。
  2. 【請求項2】保存する温度域が12〜35℃である請求
    項1記載の保存法。
  3. 【請求項3】アンチトロンビン−III乾燥製剤が低ヘパ
    リン親和性アンチトロンビン−IIIを10%以上は含ま
    ないものである請求項1記載の保存法。
  4. 【請求項4】アンチトロンビン−III乾燥製剤が低ヘパ
    リン親和性アンチトロンビン−IIIを5%以上は含まな
    いものである請求項1記載の保存法。
  5. 【請求項5】アンチトロンビン−III乾燥製剤が、ヒト
    血漿または誘導ヒト血漿画分を固定化ヘパリンを用いる
    精製工程に付し、さらに乾燥工程に付した後、乾燥状態
    のアンチトロンビン−IIIをウイルスが不活化されるま
    で加熱することにより得られたものである請求項1記載
    のアンチトロンビン−III製剤の保存法。
  6. 【請求項6】アンチトロンビン−III乾燥製剤が、固定
    化ヘパリンを用いる精製工程に付した後、乾燥工程に付
    す前に、アンチトロンビン−IIIを含む溶液を陰イオン
    交換体による吸脱着工程および固定化ヘパリンを用いる
    精製工程に付すことにより得られたものである請求項5
    記載の保存法。
  7. 【請求項7】アンチトロンビン−III乾燥製剤が、ウイ
    ルスの不活化を、50〜80℃、24〜120時間で行
    うことにより得られたものである請求項5または6記載
    の保存法。
  8. 【請求項8】保存する期間が2年以上である請求項1〜
    7のいずれかに記載の保存法。
  9. 【請求項9】アンチトロンビン−III乾燥製剤を100
    Pa(N/m)以下の減圧下に保存する請求項1〜8
    のいずれかに記載の保存法。
JP2002277419A 2001-09-25 2002-09-24 アンチトロンビン−iii製剤の保存法 Pending JP2003171308A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002277419A JP2003171308A (ja) 2001-09-25 2002-09-24 アンチトロンビン−iii製剤の保存法

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001291322 2001-09-25
JP2001-291322 2001-09-25
JP2002277419A JP2003171308A (ja) 2001-09-25 2002-09-24 アンチトロンビン−iii製剤の保存法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003171308A true JP2003171308A (ja) 2003-06-20

Family

ID=26622802

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002277419A Pending JP2003171308A (ja) 2001-09-25 2002-09-24 アンチトロンビン−iii製剤の保存法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003171308A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU617451B2 (en) Process for stabilizing human albumin solutions and the solution obtained
JP5105734B2 (ja) 安定性トロンビン組成物
EP0278422B1 (en) y-Globulin injectable solutions
JP3628703B2 (ja) 治療グレードトロンビン産物及び製品
AU783638B2 (en) Method of producing human serum albumin involving heating step
JPS6178731A (ja) 加熱処理免疫グロブリン製剤
ES2373035T3 (es) Método para eliminar polímeros de seroalbúmina humana.
CN108379561A (zh) 一种聚乙二醇化尿酸氧化酶冻干粉剂及其制备方法
KR950010321B1 (ko) 인간 트롬빈 제제의 가열처리방법
WO1998030230A1 (fr) Compositions proteinees et procede de production
JPH04346934A (ja) γ−グロブリンの液状製剤
JP3024073B2 (ja) タンパク質中のウイルスを不活性化する方法
JP2003171308A (ja) アンチトロンビン−iii製剤の保存法
JPS6122022A (ja) 血漿蛋白の加熱処理方法
JP3595466B2 (ja) 精製アンチトロンビン−iiiおよびその製法
JP4146525B2 (ja) アンチトロンビン−iiiの精製法
JPS6289628A (ja) 人フイブリノゲン製剤の加熱処理法
JPS62289523A (ja) 静脈投与用免疫グロブリンの加熱処理方法
JPS61501510A (ja) ビ−ルスリスクを減らしたヘモグロビンおよびその製造方法
JPH0278633A (ja) ウイルス不活化方法
JPH024717A (ja) アンチトロンビン−3製剤
JPS62283933A (ja) 静注用非化学修飾免疫グロブリンの加熱処理方法
JPS6140392B2 (ja)
JPS6210019A (ja) 人血液凝固第9因子含有製剤の加熱処理方法
JPH08169844A (ja) 人血液凝固第ix因子含有製剤

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050725

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20081007

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081208

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20081209

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20090317