JP2003148577A - 無段変速機用転動体およびその製造方法 - Google Patents
無段変速機用転動体およびその製造方法Info
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Abstract
ワーローラのベアリング溝部では、高面圧が加わるほ
か、トラクション力やラジアル方向の荷重を受けるの
で、転動疲労寿命が低下する恐れがあり、また、基材へ
の水素侵入により、転動疲労寿命が低下する恐れがあっ
た。 【解決手段】 ディスクに潤滑油を介してパワーローラ
ーを接触させた構成を有する無段変速機に用いる転動体
であって、転動面に銅または銅合金の被膜を形成すると
共に、被膜の膜厚を0.1μm以上、20μm以下とし
たことにより、ミクロな金属接触を低減させるとともに
水素を透過し難い保護被膜形成により基材への水素の侵
入を抑制することで水素脆性的な短寿命剥離を抑制し、
転動疲労寿命の向上を実現した。
Description
いはトロイダル式無段変速機に使用される転動体および
その製造方法に関するものであり、その転動疲労強度向
上、主に転動中のオイル分解等により発生した水素が鋼
中に侵入することを抑止することにより、侵入水素によ
る水素脆性的な短寿命剥離を抑制し、さらには曲げ疲労
強度も向上するようにした無段変速機用転動体およびそ
の製造方法に関するものである。
えば特開平7−71555号公報に記載されているもの
がある。同公報には、トロイダル式無段変速機におい
て、転動体である入力および出力のディスクやパワーロ
ーラに浸炭処理および研削仕上げを施し、転動面の耐疲
労割れ寿命の向上ることが記載されている。
は、トロイダル式無段変速機において、転動体に浸炭鋼
を用いると共に、その表面に研削仕上げ加工を施すこと
により、パワーローラ外輪のベアリング面溝部の転動疲
労強度を向上させて、耐久性に優れた転動体を得ること
が記載されている。さらに、特開2000−29175
7号公報には、パワーローラのベアリング溝部にショッ
トピーニング工法によって圧縮残留応力を付与すること
により、玉が軌道溝を転動する際に生じる接触面圧を緩
和して、パワーローラ軸受けの疲れ寿命低下を抑制する
ことが記載されている。
イル分解等により発生した水素が転動体中に侵入するこ
とで発生する水素脆性的な短寿命剥離を積極的に抑制す
るには至っていない。この水素脆性的な剥離抑制を目的
とした軸受としては、特開平2−190615号公報
に、グリース封入軸受において、軸受の転動面に黒染め
処理により四三酸化鉄の被膜を形成し、この被膜を不活
性表面として作用させることにより、オイル分解等によ
る水素の発生を抑えて、転動疲労寿命の向上を図ること
が記載されている。
式無段変速機では、各ディスクとパワーローラの間には
高い押し付け荷重が加わり、とくに、トラクション面や
パワーローラを構成するベアリング溝部では、最大で3
GPaを超える高い接触面圧となる。そして、これらの
部位では、上記の高面圧に加えて、トラクション力やラ
ジアル方向の荷重を受けながら転動体あるいはボールが
転動するため、ミクロな金属接触や転がり摩擦抵抗の増
大に伴う表面接線力の増大により、転動疲労寿命が低下
する恐れがあるという問題点があり、前述の従来技術で
はこのような問題点を解決するには至っていない。
ロな金属接触により転動面に形成された新生面が触媒的
な作用をして、グリースと転動面の間でトライボケミカ
ル的な反応を促進し、化学分解により生成した水素が基
材中に侵入し、転動疲労寿命が低下する恐れがあるとい
う問題点があった。
30〜160℃の苛性ソーダ水溶液に浸漬)による方法
が報告されているが、作業環境が劣悪であり、工業的に
は好ましくない。また、黒染め処理により形成された表
面の四三酸化鉄被膜は、高温、高面圧の過酷な条件下で
は被膜の残存性が不十分であり、充分な水素侵入抑制効
果が発揮できない場合があるという問題点がある。
いる場合、介在物起点の曲げ疲労強度を低下させること
があるという報告がある。(鉄と鋼Vol.86(20
00)No.11.P69)
成されたもので、比較的簡便で安価な表面処理により、
ミクロな金属接触による新生面の形成を低減させると共
に、水素が透過し難い保護被膜を形成して、基材内部へ
の水素の侵入を抑制し、転動疲労寿命の向上、とくに転
動中のオイル分解等により発生した水素が基材中に侵入
することで発生する水素脆性的な短寿命剥離の抑制を実
現すると共に、転動中に侵入してくる水素を低減するこ
とで、鋼中の水素濃度を低下させ、介在物起点の曲げ疲
労強度を向上することができる無段変速機用転動体およ
びその製造方法を提供することを目的としている。
機用転動体は、請求項1として、ディスクに潤滑油を介
してパワーローラーを接触させた構成を有する無段変速
機に用いる転動体であって、転動面に銅(Cu)または
銅合金の被膜を形成すると共に、被膜の膜厚を0.1μ
m以上、20μm以下とした構成とし、請求項2とし
て、被膜の膜厚が、0.1μm以上、10μm以下であ
る構成とし、請求項3として、被膜の膜厚が、0.5μ
m以上、7μm以下である構成とし、請求項4として、
被膜の表面粗さが、Ra0.1以下である構成とし、請
求項5として、被膜を形成した後の母材の表面粗さが、
Ra0.1以下である構成としており、上記構成をもっ
て従来に課題を解決するための手段としている。
項6として、ディスクに潤滑油を介してパワーローラを
接触させた構成を有する無段変速機において、請求項1
〜5のいずれかに記載の被膜を、ディスクおよびパワー
ローラの少なくとも一方の転がり接触をする部位に形成
したことを特徴とし、請求項7として、請求項1〜5の
いずれかに記載の被膜を、ディスクおよびパワーローラ
の少なくとも一方のトラクション面に形成したことを特
徴し、請求項8として、ディスクに潤滑油を介してパワ
ーローラを接触させた構成を有する無段変速機におい
て、請求項1〜5のいずれかに記載の被膜を、少なくと
もパワーローラのベアリング溝部に形成したことを特徴
としている。
体の製造方法は、請求項9として、ディスクに潤滑油を
介してパワーローラを接触させた構成を有する無段変速
機に用いる転動体を製造するに際し、転動面に無電解め
っきまたは電気めっきにより銅または銅合金の被膜を形
成することを特徴とし、請求項10として、転動面にめ
っき処理を施した後、200℃以下の温度でベーキング
処理を施すことを特徴としている。
面には、ディスクおよびパワーローラの互いに接触する
転動面のほか、パワーローラを構成するベアリングにお
ける転動面や、ディスクと回転軸の間に設けたベアリン
グにおける転動面などが含まれる。
転動体では、転動体の転動面に銅または銅合金の被膜を
形成したので、この被膜によりミクロな金属よる新生面
の生成が抑制されると共に、被膜が水素を透過し難い保
護被膜として作用し、転動中のトライボケミカル反応等
により生成した水素の鋼中への侵入を抑制する。
〜20μmとしている。これは、膜厚が0.1μm未満
であると、その効果が十分発揮されず、また、膜厚が2
0μmを上回ると、得られるめっき被膜の粗さの増大を
伴うこととなり、その結果として、ミクロの金属接触を
低減させるという無段変速機用転動体が有する本来の性
能を充分に発揮することができなくなるからである。
は、銅または銅合金であって、とくに限定されることは
ないが、純銅の他に、Cu−Sn(通称:ブロンズ)、
Cu−Zn(真鍮)、Cu−Al、Cu−Co、Cu−
Ni、Cu−Pb、およびCu−Agなどの合金が挙げ
られる。
動体では、被膜の厚さを0.1〜10μmとしているの
で、水素侵入抑制効果および金属接触低減効果を充分に
発揮するための品質がより安定化し、且つ生産性も向上
する。
動体では、被膜の厚さを0.5〜7μmとしているの
で、水素侵入抑制効果および金属接触低減効果を充分に
発揮するための品質がより一層安定し、且つ生産性も飛
躍的に向上する。
動体では、被膜の表面粗さをRa0.1以下としてい
る。これは、表面粗さをRa0.1よりも大きくする
と、転動部でのミクロの金属接触率が増加し、転動部の
温度上昇に伴う素材の軟化や相手材を含めた表面損傷に
よる表面起点型の転動疲労寿命の低下を招くからであ
る。なお、表面粗さRaの測定は、JIS B0601
(1994)やJIS B0651に準拠したものであ
る。
動体では、銅または銅合金の被膜を形成させた後の母材
の表面粗さをRa0.1以下としている。これは、繰り
返し摺動する転動面において、銅または銅合金の被膜は
比較的軟らかいため、被膜の転写性に優れて耐久性が高
くなるものの、時間の経過と共に母材が摺動面となる割
合が徐々に増加することとなり、また、母材の表面粗さ
をRa0.1よりも大きくすると、転動部での金属接触
率が増加して、転動部の温度上昇に伴う素材の軟化や相
手材を含めた表面損傷による表面起点型の転動疲労寿命
の低下を招くからである。なお、表面粗さRaの測定
は、請求項4と同様に、JIS B0601(199
4)やJIS B0651(1996)に準拠したもの
である。
動体では、請求項1〜5のいずれかに記載の被膜を、デ
ィスクおよびパワーローラの少なくとも一方の転がり接
触をする部位、すなわちディスクおよびパワーローラの
互いに接触する転動面、パワーローラを構成するベアリ
ングにおける転動面、およびディスクと回転軸の間に設
けたベアリングにおける転動面に形成したので、各部位
において水素侵入抑制効果や金属接触低減効果が発揮さ
れ、各部位での転動疲労寿命が向上する。
動体では、請求項1〜5のいずれかに記載の被膜を、デ
ィスクおよびパワーローラの少なくとも一方のとトラク
ション面に形成したので、とくに、最大で3GPaを超
える高い接触面圧がかかるディスクおよびパワーローラ
のトラクション面において、水素侵入抑制効果や金属接
触低減効果が発揮され、トラクション面での転動疲労寿
命が向上する。
する部位を図5に示す。図示のトロイダル式無段変速機
は、エンジン側に連結される入力軸101と、軸線方向
に所定範囲だけ移動可能な入力側ディスク103と、軸
線回りに回転自在な出力側ディスク112と、入力側デ
ィスク103を出力側ディスク112に向けて押圧する
押圧装置102と、両ディスク103,112間に配置
した一対のトラニオン104を備えており、各ディスク
103,112およびトラニオン104から成る構成を
2組備えたものとなっている。
ボットシャフト105が取付けてある。各ピボットシャ
フト105には、パワーローラ外輪106が固定してあ
ると共に、ベアリングを構成する複数のボール108お
よびラジアルニードル軸受109を介してパワーローラ
内輪107が軸回りに回転自在に取付けてある。パワー
ローラ内輪107は、潤滑油を介して各ディスク10
3,112の転動面103a,112aに接触してい
る。また、両出力側ディスク112は、入力軸101と
の間にラジアルニードル軸受113が介装してあると共
に、入力軸101の軸線回りに回転する出力ギア114
に連結してある。
すると、押圧装置102を介して入力側ディスク103
が回転し、この入力側ディスク103の回転により、そ
の転動面103aに対して転がり接触する一対のパワー
ローラ内輪107がそれぞれ回転し、これらパワーロー
ラ内輪107と転動面112aにて接触する出力側ディ
スク112が回転し、この出力側ディスク112ととも
に出力ギア114が回転する。そして、入力軸101か
ら出力ギア114に回転伝達を行う間に、紙面垂直方向
の図示しない回動軸を中心にしてトラニオン104とと
もにパワーローラ内輪107を回動させ、各ディスク1
03,112に対するパワーローラ内輪107の接触位
置を移動させることで変速比を無段階的に変化させる。
する部位としては、各ディスク103,112の転動面
103a,112a、パワーローラ内輪107の転動面
107a、パワーローラ外輪106および内輪107の
ベアリング溝部106b,107b、ピボットシャフト
105とパワーローラ内輪107の間に介装したラジア
ルニードル軸受109、および入力軸101と出力側デ
ィスク112の間に介装したラジアルニードル軸受11
3などが挙げられる。また、とくに曲げ応力がかかる部
位としては、パワーローラ内輪107の内周部F1や各
ディスク103,112の小径部内側F2,F3などが
挙げられる。
記載したようにディスクおよびパワーローラの少なくと
も一方の転がり接触をする部位、あるいは請求項7に記
載したようにディスクおよびパワーローラの少なくとも
一方のとトラクション面に、被膜を形成している。この
被膜により、金属接触の低減や基材に対する水素の侵入
が抑制され、各部位の転動疲労寿命が向上する。また、
転がり接触する部位からの各部品への水素の侵入が抑制
されることにより、部品全体としての鋼中含有水素量が
低下するため、曲げ応力がかかる部位の水素濃度も低下
し、各部品の曲げ疲労強度が向上する。なお、当然のこ
とながら、図5に符号を付して説明した部位以外に転が
り接触をする相手部材(例えばニードル)、CVT部を
構成するその他のベアリング類に被膜を形成することも
可能である。
動体では、請求項1〜5のいずれかに記載の被膜を、少
なくともパワーローラのベアリング溝部に形成したの
で、とくに、最大で3GPaを超える高い接触面圧がか
かり且つ負荷回数が最大となるベアリング溝部におい
て、水素侵入抑制効果や金属接触低減効果が発揮され、
ベアリング溝部での転動疲労寿命が向上する。
動体の製造方法では、転動面に、無電解めっきまたは電
気めっきにより銅または銅合金の被膜を形成する。この
方法では、めっき処理という比較的簡便で且つ安価な手
段によって転動面に被膜が形成されることとなり、しか
も、一工程で被膜密着性が確保できるので生産性に優れ
たものとなる。また、銅または銅合金の被膜は、被膜の
硬さが比較的軟らかいため、被膜の転写性に優れ、その
結果として、長い期間転動面に被膜が残存し、水素侵入
抑制効果および金属接触低減効果をこれまで以上に持続
し得る。
きあるいは電気めっきにより形成する方法としては、シ
アン化銅系めっき浴、硫酸銅系めっき浴、ピロリン酸銅
系めっき浴、および有機酸系めっき浴などが挙げられる
が、これらに限定されることは無い。また、電気めっき
における電解条件としては、とくに限定されることはな
いが、例えば0.1A/dm2〜10A/dm2の低電
流密度を適用することが好ましい。これにより、得られ
ためっき被膜の性状は、緻密で且つ平滑なものとなり、
水素侵入抑制効果および金属接触低減効果などの品質を
安定して確保し得るものとなる。
転動体の製造方法では、転動体にめっき被膜を形成した
後、200℃以下の温度でベーキング処理を施す。これ
により、無電解めっきあるいは電気めっきの際に、母材
もしくは被膜内に侵入した水素、および浸炭焼入れある
いは浸炭窒化焼入れ等の熱処理の際に母材に侵入した水
素が放出され、品質のさらなる安定化を実現する。ここ
で、ベーキング処理時の温度を200℃よりも高くする
と、ベーキング処理による脱水素量は増加するものの、
母材が高温に曝されることによって軟化したり、ショッ
トピーニング等で付与した残留圧縮応力が低減したりす
る場合があるので好ましくない。なお、ベーキング処理
は、真空炉にて行うのが好ましく、これにより脱水素効
果がさらに高められる。
転動体によれば、比較的簡便で安価な表面処理により、
ミクロな金属接触による新生面の形成を低減させると共
に、水素が透過し難い保護被膜を形成して、基材内部へ
の水素の侵入を抑制することができ、これにより転動疲
労寿命の向上を実現し、とくに、転動中のオイル分解等
により発生した水素が基材中に侵入することで発生する
水素脆性的な短寿命剥離の抑制を実現することができ
る。また、転動中に侵入してくる水素を低減すること
で、鋼中の水素濃度を低下させ、介在物起点の曲げ疲労
強度を向上することができる。
動体によれば、請求項1と同様の効果を得ることがで
き、とくに被膜の厚さを0.1〜10μmとしたことか
ら、水素侵入抑制効果および金属接触低減効果を充分に
発揮するための品質をより安定化させることができ、且
つ生産性の向上も実現することができる。
動体によれば、請求項1と同様の効果を得ることがで
き、とくに被膜の厚さを0.5〜7μmとしたことか
ら、水素侵入抑制効果および金属接触低減効果を充分に
発揮するための品質をより一層安定化させることがで
き、且つ生産性のさらなる向上も実現することができ
る。
動体によれば、請求項1〜3と同様の効果を得ることが
できるうえに、被膜の表面粗さをRa0.1以下とした
ことから、転動部でのミクロの金属接触率の増加を防止
すると共に、転動部の温度上昇に伴う素材の軟化や相手
材を含めた表面損傷による表面起点型の転動疲労寿命の
低下を防止して、水素侵入抑制効果および金属接触低減
効果を得ることができる。
動体によれば、請求項1〜4と同様の効果を得ることが
できるうえに、とくに銅または銅合金の被膜を形成させ
た後の母材の表面面粗さをRa0.1以下としたことか
ら、転動部でのミクロの金属接触率の増加をより確実に
防止すると共に、転動部の温度上昇に伴う素材の軟化や
相手材を含めた表面損傷による表面起点型の転動疲労寿
命の低下をより確実に防止して、水素侵入抑制効果およ
び金属接触低減効果を得ることができる。
れば、ディスクおよびパワーローラの互いに接触する転
動面、パワーローラを構成するベアリングにおける転動
面、およびディスクと回転軸の間に設けたベアリングに
おける転動面等の各転動面において、充分な水素侵入抑
制効果や金属接触低減効果を発揮して転動疲労寿命およ
び曲げ疲労強度を向上させることができ、ひいては無段
変速機自体の寿命を著しく向上させることができ、ユニ
ットの大容量化、あるいは小型軽量化等、性能をより一
層高めることができる。
れば、とくに高面圧がかかるディスクおよびパワーロー
ラ少なくとも一方のトラクション面において、充分な水
素侵入抑制効果や金属接触低減効果を発揮して転動疲労
寿命および曲げ疲労強度を向上させることができ、ひい
ては無段変速機自体の寿命を著しく向上させることがで
き、ユニットの大容量化、あるいは小型軽量化等、性能
をより一層高めることができる。
れば、とくに高面圧がかかり且つ負荷回数が最大となる
パワーローラのベアリング溝において、充分な水素侵入
抑制効果や金属接触低減効果を発揮して転動疲労寿命を
向上させることができ、ひいては無段変速機自体の寿命
を向上させることができる。
動体の製造方法によれば、めっき処理という比較的簡便
で且つ安価な手段で被膜を形成することができると共
に、一工程で被膜密着性が確保できるので生産性を高め
ることができる。また、銅または銅合金の被膜は比較的
軟らかいため、被膜の転写性に優れると共に、長期にわ
たって転動面に残存させることができ、水素侵入抑制効
果および金属接触低減効果をこれまで以上に持続させる
ことができる。
転動体の製造方法によれば、請求項9と同様の効果を得
ることができるうえに、転動面にめっき被膜を形成した
後に200℃以下の温度でベーキング処理を施すことに
より、無電解めっきあるいは電気めっきの際に、母材も
しくは被膜内に侵入した水素、および浸炭焼入れあるい
は浸炭窒化焼入れ等の熱処理の際に母材に侵入した水素
を放出する脱水素効果を充分に得ることができ、品質の
さらなる安定化を実現することができる。
段変速機用転動体の一実施例を説明する図である。図1
(a)に示すトロイダル式無段変速機は、入力軸1、押
圧装置2、入力側ディスク3、一対のトラニオン4、出
力側ディスク12および出力軸13等により構成されて
いる。一対のトラニオン4には、それぞれピボットシャ
フト5が取付けてある。各ピボットシャフト5には、パ
ワーローラ外輪6が固定してあると共に、ベアリング構
成する複数のボール8およびラジアルニードル軸受9を
介してパワーローラ内輪7が軸回りに回転自在に取付け
てある。パワーローラ内輪7は、潤滑油を介して各ディ
スク3,12の転動面3a,12aに接触している。
と、カム板2a、保持器2bおよびローラ2cから成る
押圧装置2を介して入力側ディスク3が回転し、この入
力側ディスク3の回転により、その転動面3aに対して
転がり接触する一対のパワーローラ内輪7がそれぞれ回
転し、これらパワーローラ内輪7と転動面12aにて接
触する出力側ディスク12が回転し、この出力側ディス
ク12とともに出力軸13が回転する。そして、上記の
如く入力軸1から出力軸13に回転伝達を行う間に、図
中仮想線で示す回転軸10を中心にしてトラニオン4と
ともにパワーローラ内輪7を回転させ、各ディスク3,
12に対するパワーローラ内輪7の接触位置を移動させ
ることで変速比を無段階的に変化させる。
は、各転動面3a,12aを有するディスク3,12
や、両ディスク3,12に接触する転動面を有するパワ
ーローラ内輪7および外輪6が挙げられる。このとき、
パワーローラ内輪7および外輪6では、ボール8と接触
するベアリング溝部7a,6aも転動面である。また、
回転軸である入力軸1および出力軸13と各ディスク
3,12との間に設けたベアリング(ラジアルニードル
ベアリング)15,16も転動体であり、このベアリン
グ15,16も転動面を有している。
図1(b)に示すように、回転伝達時に高面圧が加わる
部分として、少なくともパワーローラ内輪7および外輪
6のベアリング溝部7a,6aに銅または銅合金の被膜
を形成している。このとき、被膜は、その厚さを0.1
〜20μmとし、表面粗さをRa0.1以下とし、被膜
形成後の母材の表面粗さをRa0.1以下としている。
アリング溝部7a,6aのほか、各ディスク3,12の
転動面3a、12a、パワーローラ内輪7の転動面、入
力軸1および出力軸13とディスク3,12との間に設
けたベアリング15,16の転動面に形成することも可
能である。
実施例および比較例を挙げてその有用性を示す。なお、
各実施例および比較例のいずれの試料も図1(b)に示
すパワーローラ内輪7および外輪6である。
素材であって、鍛造成形した後に粗加工し、図2に示す
熱処理条件で浸炭窒化処理が施してある。
のベアリング溝部7a、6aとして研削超仕上げを行
い、仕上げ加工後のパーワローラ内輪7および外輪6
に、下記のめっき条件にて銅または銅合金の被膜を形成
した。なお、完成後のベアリング溝部7a、6aの母材
部分は、表面粗さがRa0.02〜0.10程度、表面
硬さがHv700〜720程度になるようにした。
の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)観察にて定量し
た。作成した転動体のベアリング溝部の表面粗さは、市
販の触針式表面粗さ測定装置(JIS B0651−1
996に準拠)を用いて、カットオフ0.08mmで測
定を行った。また、被膜を形成した後の母材の表面粗さ
Raは、軸受転動疲労試験装置によるベアリング溝部の
転動疲労寿命試験後の供試材をめっき被膜剥離液(シア
ン系めっき被膜剥離液/商品名;キザイ(株)製リップ
マスター#1219)に浸漬し、めっき被膜のみを完全
に除去した後、ベアリング溝部の非転動部に対して上記
のベアリング溝部の表面粗さと同様の条件で測定を行っ
た。
よび外輪のベアリング溝部に、電気めっき浴(A)を使
用して銅被膜を形成させた。なお、実施例8では、めっ
き被膜を形成させた後に、真空炉を用いてベーキング処
理(130℃×20時間)を行った。
外輪のベアリング溝部に、無電解めっき浴(B)を使用
して銅被膜を形成させた。
外輪のベアリング溝部に、Cu−Snめっき浴(C)を
使用して銅合金の被膜を形成させた。なお、実施例9で
は、めっき被膜を形成した後に、真空炉を用いてベーキ
ング処理(130℃×20時間)を行った。
のベアリング溝部に、Cu−Znめっき浴(D)を使用
して銅合金の被膜を形成させた。
のベアリング溝部に、Cu−Pbめっき浴(E)を使用
して銅合金の被膜を形成させた。
表面粗さの異なる2種類のパワーローラ内輪および外輪
を用意した。
のベアリング溝部に、電気めっき浴(A)を使用して銅
の被膜を形成させた。なお、この比較例3は銅被膜を形
成させる際に印加する電流密度が9A/dm2であるも
のの、その処理時間が長いために、得られた被膜の膜厚
が26μmと、実施例と比較して厚いものとなった。
輪のベアリング溝部に、沸騰苛性ソーダ水溶液へ浸漬す
ることにより行う黒染め処理にて酸化鉄の被膜を形成さ
せた(特開平2−190615号公報に記載の方法)。
おいて作製した各試料(パワーローラの内輪および外
輪)に対して、図3に示す軸受転動疲労試験機を用い
て、ベアリング溝部の転動疲労寿命試験を行った。
0内において、プレート21によりパワーローラ外輪6
の下面を保持すると共に、パワーローラ内輪7の上面に
回転軸22を所定の加圧力で当接させ、プレート21を
通してパワーローラ内輪7の内側に潤滑油を供給しなが
ら、回転軸22とともにパワーローラ内輪7を回転させ
る構造である。この軸受転動疲労試験では、潤滑として
トラクション油を用い、3L/minの強制潤滑下で最
大接触面圧3.4GPaとなるように試験条件を設定し
た。また、転動疲労寿命は、振動センサーにて検知し、
内輪または外輪のベアリング溝部がフレーキングに至る
までの試験時間を寿命とした。
おけるベアリング溝部の被膜の特性値(被膜厚さ、被膜
部面粗度)、および被膜形成方法と合わせて、上記試験
条件にて評価した転動疲労寿命試験結果の一覧を表2に
示す。
の転がり方向断面の組織写真を示す。同図には形態の異
なる白色組織が観察されているが、本実験条件ではすべ
ての剥離品の剥離部近傍に図4(a)に示すAタイプ、
あるいは図4(b)に示すBタイプの組織変化が観察さ
れた。Aタイプは、比較的長寿命の試料に観察された。
一方、Bタイプは、比較的短寿命の試料に観察された。
先の表2には、転動疲労試験結果と合わせて組織変化形
態を同時に示している。
験後の試料から転動部を切り出し、鋼中の拡散性水素量
を測定した結果を表3に示す。なお、測定は昇温脱離ガ
ス分析装置(日本真空技術(株)UPM−ST−200
R型)を用い、加熱温度400℃以下にて放出された水
素量を拡散性水素量とした。
Bタイプの場合、Aタイプに比べて、水素侵入量が多い
ことがわかる。このことから、Bタイプは、侵入水素が
起因となった水素脆性的な剥離形態であるといえる。つ
まり、侵入水素を抑制することで組織変化形態がBタイ
プからAタイプにシフトし、長寿命化することが考えら
れる。
験の結果、表面に銅または銅合金の被膜を設けた本発明
の実施例1〜9では、Bタイプの組織変化形態を呈して
おり、比較例1〜4に対して、転動疲労寿命が大幅に向
上していることが確認された。
疲労寿命評価により本発明の有用性を立証したが、ディ
スクやパワーローラのトラクション面等のその他の転動
部位に適用した場合についても同様であることは言うま
でもない。
ロイダル式無段変速機を説明する断面図(a)およびパ
ワーローラにおける被膜形成部位を示す片側省略の断面
図(b)である。
を示す説明図である。
織写真である。
び曲げ応力がかかる部位を説明する断面図である。
Claims (10)
- 【請求項1】 ディスクに潤滑油を介してパワーローラ
ーを接触させた構成を有する無段変速機に用いる転動体
であって、転動面に銅(Cu)または銅合金の被膜を形
成すると共に、被膜の膜厚を0.1μm以上、20μm
以下としたことを特徴とする無段変速機用転動体。 - 【請求項2】 被膜の膜厚が、0.1μm以上、10μ
m以下であることを特徴とする請求項1に記載の無段変
速機用転動体。 - 【請求項3】 被膜の膜厚が、0.5μm以上、7μm
以下であることを特徴とする請求項1に記載の無段変速
機用転動体。 - 【請求項4】 被膜の表面粗さが、Ra0.1以下であ
ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の無
段変速機用転動体。 - 【請求項5】 被膜を形成した後の母材の表面粗さが、
Ra0.1以下であることを特徴とする請求項1〜4の
いずれかに記載の無段変速機用転動体。 - 【請求項6】 ディスクに潤滑油を介してパワーローラ
を接触させた構成を有する無段変速機において、請求項
1〜5のいずれかに記載の被膜を、転動面に形成したこ
とを特徴とする無段変速機。 - 【請求項7】 ディスクに潤滑油を介してパワーローラ
を接触させた構成を有する無段変速機において、請求項
1〜5のいずれかに記載の被膜を、ディスクおよびパワ
ーローラの少なくとも一方の転動面に形成したことを特
徴とする請求項6に記載の無段変速機。 - 【請求項8】 ディスクに潤滑油を介してパワーローラ
を接触させた構成を有する無段変速機において、請求項
1〜5のいずれかに記載の被膜を、少なくともパワーロ
ーラのベアリング溝部に形成したことを特徴とする無段
変速機。 - 【請求項9】 ディスクに潤滑油を介してパワーローラ
を接触させた構成を有する無段変速機に用いる転動体を
製造するに際し、転動面に無電解めっきまたは電気めっ
きにより銅または銅合金の被膜を形成することを特徴と
する無段変速機用転動体の製造方法。 - 【請求項10】 転動面にめっき処理を施した後、20
0℃以下の温度でベーキング処理を施すことを特徴とす
る請求項9に記載の無段変速機用転動体の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001342722A JP2003148577A (ja) | 2001-11-08 | 2001-11-08 | 無段変速機用転動体およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001342722A JP2003148577A (ja) | 2001-11-08 | 2001-11-08 | 無段変速機用転動体およびその製造方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003148577A true JP2003148577A (ja) | 2003-05-21 |
Family
ID=19156528
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001342722A Pending JP2003148577A (ja) | 2001-11-08 | 2001-11-08 | 無段変速機用転動体およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2003148577A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2006250158A (ja) * | 2005-03-08 | 2006-09-21 | Nsk Ltd | トロイダル型無段変速機 |
JP2008291994A (ja) * | 2007-04-24 | 2008-12-04 | Ntn Corp | 転がり軸受 |
JP2010002034A (ja) * | 2008-06-23 | 2010-01-07 | Ntn Corp | 航空機用転がり軸受 |
RU2475655C1 (ru) * | 2011-08-12 | 2013-02-20 | Федеральное государственное бюджетное образовательное учреждение высшего профессионального образования "Приморская государственная сельскохозяйственная академия" | Способ обработки радиально-упорного подшипника перед эксплуатацией и устройство для его осуществления |
RU2719715C1 (ru) * | 2019-06-18 | 2020-04-22 | Федеральное государственное бюджетное образовательное учреждение высшего образования "Брянский государственный аграрный университет" | Способ уменьшения микроволнистости колец подшипников качения |
-
2001
- 2001-11-08 JP JP2001342722A patent/JP2003148577A/ja active Pending
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