JP3895668B2 - 転がり摺動部材及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、相手部材との間で転がり接触若しくはすべり接触又は両接触を含む接触が行われる転がり摺動部材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
オルタネータ、サイクロ減速機等に用いられる転がり軸受や、トロイダル型無段変速機のディスクやローラのように、高面圧下においてすべりや振動が生じる転がり摺動部材においては、その使用中にDEA(Dark Etching Area)、ホワイトバンド及び白層等の種々の疲労組織が発生し易く、特に白層が発生すると、他の疲労組織に比べて摺動部材に早期剥離を生じ、その寿命が著しく短くなる。そこで、例えば特許文献1には、所定の合金組成成分を有する鋼素材を用い、熱処理後の転がり摺動部材の表面近傍に平均粒径50〜500nmのMo・V系炭化物・炭窒化物を析出させ、鋼中に侵入した水素のトラップサイトとすることで、白層の発生を抑制する技術が開示されている。しかしながら、水素をトラップするだけでは、白層の発生を十分に抑制することはできないことが判明している。また、この場合には鋼素材として従来多用されている軸受鋼や肌焼鋼等の一般的な軸受用鋼を用いることができないので、コストが高く付くという問題もあった。
このような従来の問題点に鑑み、この発明は、白層の発生を効果的に抑制することができる軸受用鋼からなる転がり摺動部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−32900号公報(第3頁)
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明の転がり摺動部材は、軸受用鋼として高炭素クロム軸受鋼を用いた転がり摺動部材であって、高炭素クロム軸受鋼を焼き入れ及び焼き戻しすることにより、転がり摺動面の表層部におけるマルテンサイトのラス内に、平均粒径が100nm以下の微細炭化物が析出していることを特徴としている(請求項1)。
本願発明者は、白層組織の発生初期段階を観察した結果、マルテンサイトが局部的に微細な等粒状組織に変化していることが確認された。このことから、転がり又は摺動による疲労時に、転がり摺動面の表層部に局部的なすべり変形が生じていると推測される。このようなすべり変形は、疲労時に発生する内部応力の影響で、転位が移動することによって生じることから、当該転位が移動するのを規制すれば、白層が発生するのを抑制することができるとの知見を得た。この発明はかかる知見に基づいてなされたものであり、マルテンサイトのラス内に析出させた平均粒径が100nm以下の微細炭化物によって、前記転位が移動するのを規制することにより、白層が発生するのを抑制している。前記微細炭化物の平均粒径を100nm以下としたのは、微細炭化物の析出はマルテンサイト中に固溶している炭素原子の拡散、凝集によって生じるため、平均粒径が100nmを超えると、微細炭化物の個数が減少する結果、すべり(転位の移動)を抑制する効果が十分に得られないためである。
【0005】
前記転がり摺動部材において、前記微細炭化物は、転がり摺動面の表面から最大せん断応力が作用する深さまでの領域に析出しているのが好ましい(請求項2)。この場合には、当該表層部において白層が発生するのをより効果的に抑制することができる。
また、前記転がり摺動部材において、前記微細炭化物の平均粒径は40nm以下であるのがより好ましい(請求項3)。これにより、前記転位が移動するのをより効果的に規制することができ、表層部において白層が発生するのをより一層効果的に抑制することができる。
【0006】
さらにこの発明の転がり摺動部材の製造方法は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の転がり摺動部材を製造する方法であって、高炭素クロム軸受鋼で所定形状に形成された転がり摺動部材用のブランクを焼き入れ処理した後、200℃を超え230℃以下の温度にて焼き戻し処理を行う工程を含むことを特徴としている(請求項4)。
この製造方法によれば、請求項1から請求項3の転がり摺動部材を、容易かつ安定的に製造することができる
【0007】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明の一実施形態に係る転がり摺動部材としての転がり軸受の外輪を示す断面図である。
この外輪は、軸受鋼(高炭素クロム軸受鋼)であるJIS SUJ2を用いて作製したものであり、その転がり摺動面である軌道面1には、研磨による超仕上げ加工が施されている。前記軌道面1の表層部2におけるマルテンサイト3のラス3a内には、平均粒径が100nm以下、好ましくは40nm以下の微細炭化物4が析出している(図2参照)。前記平均粒径とは、微細炭化物4単体の最大径と最小径との平均値である。
【0008】
前記微細炭化物4が析出している範囲は、軌道面1の表面から最大せん断応力が作用する深さまでの領域である。この領域は、軌道面1とその相手部材であるボールとの接触部Aは、平面上において図3に示すような接触楕円を形成しているが、この接触楕円の短径をDとした場合に、軌道面1から1.0D程度までの領域である。なお、前記表層部2には未固溶の球状炭化物5が析出するが、その平均粒径は0.1〜3μmであり、前記ラス3a内に析出している微細炭化物4に比べてきわめて大きいものである。
【0009】
前記マルテンサイト3のラス3a内の微細炭化物4は、所定形状に形成された外輪用のブランクを、従来よりも高温で焼き戻しすることによって析出させることができる。例えば、従来においては840℃で焼き入れした後、160°Cで焼き戻しているが、この焼き戻し温度を190〜250℃にすることによって析出させることができる。このような高温で焼き戻しすると、外輪の硬さがHRC56〜62程度と、従来に比べて低くなる。また、焼き戻し温度が190℃未満であるとマルテンサイト3のラス3a内に微細炭化物4が析出し難く、250℃を超えると炭化物が大きくなるとともに、外輪の硬さが大きく低下して転がり軸受として必要な硬さを得難くなる。前記焼き戻し温度は240°C以下であるのがより好ましく、200℃を超え230℃以下であるのがさらに好ましい。これにより、外輪の硬さと炭化物分散とのバランスを良好に確保することができる。
【0010】
以上の構成の転がり摺動部材によれば、マルテンサイト3のラス3a内に析出させた平均粒径が100nm以下の微細炭化物4によって、転位が移動するのを規制することができ、これにより、軌道面1の表層部2に白層が発生するのを抑制することができる。特に前記ラス3a内に析出させた微細炭化物4の平均粒径が40nm以下である場合には、白層の発生をより効果的に抑制することができる。
【0011】
なお、上記実施形態では、軸受用鋼としてSUJ2を用いているが、他の高炭素クロム軸受鋼を用いて実施することができる。
また、この発明は、前記転がり軸受用の外輪の他、内輪や転動体にも適用して実施することができる他、トロイダル型無段変速機のディスクやローラのように、高面圧下においてすべりや振動が生じる種々の転がり摺動部材についても同様に適用して実施することができる。
【0012】
[実施例]
軸受用鋼としてJIS SUJ2を用いて転がり軸受(JIS−6202)の外輪用ブランクを複数個作製し、このブランクを840℃で油焼き入れした後、210〜230℃で焼き戻しを行った。その後、外周面、両端面及び軌道面を研磨し、さらに当該軌道面を超仕上げして転がり軸受用の外輪を複数個作製した(実施例1〜)。これらの外輪を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察したところ、その軌道面表面から最大せん断応力が作用する深さ0.2mmに至る領域において、マルテンサイトのラス内に平均粒径が40〜100nm以下の微細炭化物が析出していることが確認された。また、これらの外輪の表面の硬さはHRC58.8〜60.8であった(表1参照)。
【0013】
[比較例]
軸受用鋼としてJIS SUJ2を用いて転がり軸受(JIS−6202)の外輪用ブランクを複数個作製し、このブランクを840℃で油焼き入れした後、130〜180℃、及び300℃で焼き戻しを行った。その後、外周面、両端面及び軌道面を研磨し、さらに当該軌道面を超仕上げして転がり軸受用の外輪を複数個作製した(比較例1〜4)。これらの外輪をTEMにて観察したところ、比較例1〜3の軌道面の表層部におけるマルテンサイトのラス内には微細炭化物が全く析出していないことが確認された。また、比較例1〜3の表面の硬さはHRC63〜65.5であり、比較例4の表面の硬さはHRC54.5であった(表1参照)。一方、比較例4では平均粒径が100nmを超える炭化物が析出していることが確認された。
[ 参考例 ]
軸受用鋼としてJIS SUJ2を用いて転がり軸受(JIS−6202)の外輪用ブランクを複数個作製し、このブランクを840℃で油焼き入れした後、190℃及び250℃で焼き戻しを行った。その後、外周面、両端面及び軌道面を研磨し、さらに当該軌道面を超仕上げして転がり軸受用の外輪を複数個作製した(参考例1〜2)。これらの結果も表1に示す。
【0014】
<寿命試験>
前記実施例比較例及び参考例の外輪を用いて転がり軸受を作製し、以下の条件で寿命試験を行った。これらの転がり軸受の外輪と玉は、全て通常の焼入焼き戻し品(内輪180℃、玉175℃焼き戻し)である。この寿命試験の結果を表1に示す。
(1)試験機 ラジアル寿命試験機
(2)最大接触面圧 2.6GPa
(3)回転数 9000〜18000rpm
(4)潤滑 グリース封入
(5)油温 自然昇温(約100℃)
【0015】
【表1】
Figure 0003895668
【0016】
表1より比較例1〜3は数十時間で白層剥離が発生したのに対して、実施例1〜2及び参考例1は1000時間を経過した時点でも白層剥離が全く発生していなかった。また、参考例2は824時間で剥離が発生した。このことから、前記マルテンサイトのラス内に析出させた微細炭化物が、白層発生を効果的に抑制していることが確認された。また実施例は比較例1〜3に比べて硬さが若干低いが、それを十分カバーできる軸受寿命を発揮できることも確認された。
【0017】
【発明の効果】
以上のように、この発明の転がり摺動部材及びその製造方法によれば、転がり摺動面の表層部におけるマルテンサイトのラス内に析出させた微細炭化物によって、転がり摺動面の白層の発生を抑制することができるので、その長寿命化を図ることができるという特有の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係る転がり摺動部材としての外輪を示す断面図である。
【図2】表層部の組織を示す模式図である。
【図3】外輪とボールとの接触部における接触楕円を示す図である。
【符号の説明】
1 軌道面
2 表層部
3 マルテンサイト
3a ラス
4 微細炭化物

Claims (4)

  1. 軸受用鋼として高炭素クロム軸受鋼を用いた転がり摺動部材であって、
    高炭素クロム軸受鋼を焼き入れ及び焼き戻しすることにより、転がり摺動面の表層部におけるマルテンサイトのラス内に、平均粒径が100nm以下の微細炭化物が析出していることを特徴とする転がり摺動部材。
  2. 前記微細炭化物が、転がり摺動面の表面から最大せん断応力が作用する深さまでの領域に析出している請求項1記載の転がり摺動部材。
  3. 前記微細炭化物の平均粒径が40nm以下である請求項1又は2記載の転がり摺動部材。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかに記載の転がり摺動部材を製造する方法であって、高炭素クロム軸受鋼で所定形状に形成された転がり摺動部材用のブランクを焼き入れ処理した後、200℃を超え230℃以下の温度にて焼き戻し処理を行う工程を含むことを特徴とする転がり摺動部材の製造方法。
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