JP2003141950A - 平角絶縁電線の製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 平角導体の外周に絶縁塗料を複数回塗布焼付
する平角絶縁電線の製造方法に大幅な変更をすることな
く、焼付後に角部を含む全面に渡って均一な皮膜が形成
され、導体表面が露出することがなく、絶縁性に優れた
平角絶縁電線の製造方法を提供する。 【解決手段】 断面円形の丸導体を圧延して平角導体と
する圧延工程 Ｇ１；と、前記平角導体に紫外線を照射
することにより、導体全面または選択的に導体角部の濡
れ性を向上させる紫外線照射処理工程 Ｇ２；と、前記
紫外線照射した平角導体の外側に絶縁塗料を複数回塗布
焼付して所定皮膜厚さの絶縁皮膜を設ける塗料塗布焼付
け工程 Ｇ３；と、により絶縁性に優れた平角絶縁電線
を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は平角絶縁電線の製造
方法に関する。更に詳しくはスピーカのボイスコイル、
ビデオテープレコーダ（VTR）用小型モータコイル、チ
ョークコイル、光ピックアップ用リニアボイスコイル、
フロッピディスク用モータコイル、ノイズフィルタ等に
用いられる平角絶縁電線の製造方法に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】平角絶縁電線の製造方法は断面円形の丸
導体を圧延して平角導体とし、その外側に常法に従って
絶縁塗料を塗布焼付する方法、もう一つは丸導体の外側
に絶縁塗料を塗布焼付後これを圧延して平角絶縁電線に
変形する方法があるが、いずれの方法にも次のような欠
点がある。即ち、前者の方法では平角導体に絶縁塗料を
塗布焼付する際、塗料の温度上昇に伴いその流動性が増
大し、焼付後の角部の皮膜が薄くなり厚さの均一な皮膜
を得ることが困難である。角部の皮膜が薄く甚だしくは
導体表面が露出した平角絶縁電線を電気機器コイル巻線
に用いた場合、絶縁不良の原因となり機器の信頼性が著
しく低下する。一方後者の方法では厚さの均一な皮膜を
得ることができる反面、圧延による導体の加工硬化と絶
縁皮膜の加工劣化による特性低下の問題がある。前記加
工硬化した導体は熱処理することによって軟らかさを与
えることができるが、加工劣化した皮膜は耐熱衝撃性が
劣り亀裂が発生したり剥がれが起こる。この現象は平角
絶縁電線の厚さと幅の比が大きくなるに従って顕著にな
るが、特にその比が1:5以上の高圧延比になると亀裂や
剥がれが無数に発生して導体表面が露出し、絶縁特性は
大幅に低下してしまう。このため前記コイルには適用し
得なかった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来技術
が有する各種問題点を解決するためになされたものであ
り、従来の第一の方法である平角導体の外周に絶縁塗料
を複数回塗布焼付する平角絶縁電線の製造方法に大幅な
変更をすることなく、焼付後に角部を含む全面に渡って
均一な皮膜が形成され、導体表面が露出することがな
く、絶縁性に優れた平角絶縁電線の製造方法を提供する
ことを目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】第１の観点として本発明
は、断面円形の丸導体を圧延して平角導体とする圧延工
程；と、前記平角導体に紫外線を照射することにより、
導体全面または選択的に導体角部の濡れ性を向上させる
紫外線照射処理工程；と、前記紫外線照射した平角導体
の外側に絶縁塗料を複数回塗布焼付して所定皮膜厚さの
絶縁皮膜を設ける塗料塗布焼付け工程；と、により絶縁
性に優れた平角絶縁電線を製造することを特徴とする平
角絶縁電線の製造方法にある。上記第１観点の平角絶縁
電線の製造方法では、前記平角導体に紫外線照射処理を
行うことにより、平角導体全面または選択的に導体角部
の濡れ性を向上させることができる。その結果、導体角
部と絶縁塗料の親和性を大きくすることができ、導体角
部に皮膜形成性が付与される。従って、紫外線照射処理
した平角導体の外周に絶縁塗料を塗布焼付することによ
り、角部を含む全面に渡って絶縁皮膜が均一に形成さ
れ、導体表面が露出することがなく、絶縁性に優れた平
角絶縁電線を製造することが可能となる。

【０００５】第２の観点として本発明は、断面円形の丸
導体を圧延して平角導体とする圧延工程；と、前記平角
導体の外側に絶縁塗料を複数回塗布焼付して所定皮膜厚
さの絶縁皮膜を設ける塗料塗布焼付け中、薄絶縁皮膜が
形成された平角導体（中間体）に紫外線を照射すること
により、導体全面または選択的に導体角部の濡れ性を向
上させる塗料塗布焼付け・紫外線照射処理工程；と、に
より絶縁性に優れた平角絶縁電線を製造することを特徴
とする平角絶縁電線の製造方法にある。なお、紫外線照
射処理する中間体の皮膜厚さは、薄い程好ましく、例え
ば0.001mm〜 0.005mmである。上記第２観点の製造方法
では、塗料塗布焼付け中の中間体に紫外線照射処理する
ことにより、平角導体全面または選択的に導体角部の濡
れ性を向上させることができる。その結果、導体角部と
絶縁塗料の親和性を大きくすることができ、導体角部に
皮膜形成性が付与される。従って、プラズマ処理した中
間体の外周に、更に絶縁塗料を塗布焼付することによ
り、角部を含む全面に渡って絶縁皮膜が均一に形成さ
れ、導体表面が露出することがなく、絶縁性に優れた平
角絶縁電線を製造することが可能となる。

【０００６】第３の観点として本発明は、前記平角導体
が銅、アルミニウム、または銅クラッドアルミニウムで
ある平角絶縁電線の製造方法にある。上記第３の観点の
製造方法では、前記平角導体として、銅、アルミニウ
ム、または銅クラッドアルミニウムを好ましく用いるこ
とができる。

【０００７】第４の観点として本発明は、前記絶縁塗料
がポリウレタン系絶縁塗料、ポリエステル系絶縁塗料、
ポリエステルイミド系絶縁塗料、はんだ付け性ポリエス
テルイミド系絶縁塗料、ポリアミドイミド系絶縁塗料ま
たはポリイミド系絶縁塗料である平角絶縁電線の製造方
法にある。上記第４観点の製造方法では、前記絶縁塗料
として、ポリウレタン系絶縁塗料、ポリエステル系絶縁
塗料、ポリエステルイミド系絶縁塗料、はんだ付け性ポ
リエステルイミド系絶縁塗料、ポリアミドイミド系絶縁
塗料またはポリイミド系絶縁塗料等が挙げられる。これ
ら絶縁塗料の具体例としては、ポリウレタン系絶縁塗料
WD4307-30%（日立化成社製 製品名）、ポリエステル系
絶縁塗料LITON3300-30%（東特塗料社製 製品名）等が挙
げられる。

【０００８】第５の観点として本発明は、前記紫外線照
射処理に使用するランプが低圧紫外線ランプであり、該
ランプからでている波長は１８４．９ｎｍ、２５３．７
ｎｍがピークとなる事を特徴とする平角絶縁電線の製造
方法にある。上記第５観点の製造方法では、紫外線照射
処理に使用するランプとして低圧紫外線ランプが好まし
く、また、該ランプから出ている波長は１８４．９ｎ
ｍ、２５３．７ｎｍがピークとなるものが好ましい。

【０００９】第６の観点として本発明は、前記紫外線照
射処理した平角導体の全面または角部の濡れ性が、個体
表面張力で50dyne/ cm²以上であることを特徴とする平
角絶縁電線の製造方法にある。上記第６観点の製造方法
では、紫外線照射処理後の平角導体の全面または角部の
濡れ性が、個体表面張力で50dyne/ cm²以上であるの
で、導体全面または導体角部の濡れ性の向上がより計
れ、導体角部と絶縁塗料の親和性を大きくすることがで
き、導体角部に皮膜形成性が十分付与される。

【００１０】

【発明の実施の形態】以下、本発明の内容を、図に示す
実施の形態により更に詳細に説明する。なお、これによ
り本発明が限定されるものではない。図１は、本発明の
平角絶縁電線の製造方法の１実施形態（実施例１）を示
すチャート図である。図２は、本発明の平角絶縁電線の
製造方法の第２実施形態（実施例２）を示すチャート図
である。

【００１１】―第１の実施の形態（実施例１）― 実施例１の平角絶縁電線の製造方法について、図１のチ
ャート図を用いて説明する。先ず、丸銅線（φ0.70mm）
を圧延して導体厚0.30 mm、導体幅1.30mmの平角銅線を
製造した（圧延工程 ｇ１）。次いで、前記平角銅線を
焼鈍後、紫外線表面改質装置ＳＳＰ−８（センエンジニ
アリング社製 製品名）を用い、平角導体全面に３０秒
間の紫外線照射処理を行った（紫外線照射処理工程 ｇ
２）。この際、前記紫外線照射処理を施した平角銅線の
サンプルを採取し、個体表面張力を測定したところ60dy
ne/ cm²以上あった。次いで、紫外線照射処理平角銅線
上に皮膜厚さが0.012mmとなるように、線速8m/min、炉
温360℃の電熱焼付炉を用い、ポリウレタン系絶縁塗料W
D4307-30%（日立化成社製 製品名）を複数回塗布焼付け
し、平角絶縁電線を製造した（塗料塗布焼付け工程 ｇ
３）。

【００１２】―第２の実施の形態（実施例２）― 実施例２の平角絶縁電線の製造方法について、図２のチ
ャート図を用いて説明する。先ず、丸銅線（φ0.70mm）
を圧延して導体厚0.30 mm、導体幅1.30mmの平角銅線を
製造した。（圧延工程 ｇ１）次いで、上記平角銅線を
焼鈍後、線速8m/min、炉温360℃の電熱焼付炉を用い、
ポリウレタン系絶縁塗料WD4307-30%を複数回塗布焼付す
る際、平角銅線上に皮膜厚が0.004mmとなった中間体
（薄皮膜平角導体）に、前記紫外線表面改質装置ＳＳＰ
−８を用いて選択的に中間体角部に紫外線照射処理を行
い、更に皮膜厚さが0.012mmとなるように複数回塗布焼
付を行い平角絶縁電線を製造した（塗料塗布焼付け・紫
外線照射処理工程 ｇ23）。この際、前記紫外線照射処
理を施した中間体のサンプルを採取し、個体表面張力を
測定したところ60dyne/ cm²以上あった。

【００１３】―比較例１― 丸銅線（φ0.70mm）を圧延した導体厚0.30 mm、導体幅
1.30mmの平角銅線を用い、焼鈍後、紫外線照射処理は行
わずに、上記実施例１と同一条件で塗料塗布焼付けを行
い、平角絶縁電線を製造した。

【００１４】―特性試験― 上記実施例１、２及び比較例１により得られた平角絶縁
電線について、JIS C3003 エナメル銅線及びエナメルア
ルミ線試験方法に従い、ピンホール試験及び絶縁破壊電
圧試験（金属シリンダ法）を行った。その結果を表1に
示す。

【００１５】

【表１】

【００１６】上記表1から明らかなように、本発明の平
角絶縁電線の製造方法により得られた平角絶縁電線は絶
縁皮膜厚が薄いにも関わらず、比較例の平角絶縁電線と
比較して、ピンホール、絶縁破壊電圧値が優れているこ
とがわかる。

【００１７】

【発明の効果】本発明の平角絶縁電線の製造方法によれ
ば、丸導体を圧延した平角導体または塗料塗布焼付け中
の中間体に紫外線照射処理を行うことで、平角導体全面
または選択的に平角導体角部の濡れ性が向上し、導体角
部と塗料の親和性が大きくなり、角部に皮膜形成性が付
与される。これにより角部を含む全面に渡って絶縁皮膜
が均一に形成されるようになり、導体表面が露出するこ
となく、絶縁性に優れた平角絶縁電線が得られるように
なった。従って、本発明により得られた平角絶縁電線を
用いて巻線されたコイル等の信頼性も大幅に向上し、産
業に寄与するところ極めて大である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の平角絶縁電線の製造方法の１実施形態
（実施例１）を示すチャート図である。

【図２】本発明の平角絶縁電線の製造方法の第２実施形
態（実施例２）を示すチャート図である。

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 断面円形の丸導体を圧延して平角導体と
   する圧延工程；と、前記平角導体に紫外線を照射するこ
   とにより、導体全面または選択的に導体角部の濡れ性を
   向上させる紫外線照射処理工程；と、前記紫外線照射し
   た平角導体の外側に絶縁塗料を複数回塗布焼付して所定
   皮膜厚さの絶縁皮膜を設ける塗料塗布焼付け工程；と、
   により絶縁性に優れた平角絶縁電線を製造することを特
   徴とする平角絶縁電線の製造方法。
2. 【請求項２】 断面円形の丸導体を圧延して平角導体と
   する圧延工程；と、前記平角導体の外側に絶縁塗料を複
   数回塗布焼付して所定皮膜厚さの絶縁皮膜を設ける塗料
   塗布焼付け中、薄絶縁皮膜が形成された平角導体（中間
   体）に紫外線を照射することにより、導体全面または選
   択的に導体角部の濡れ性を向上させる塗料塗布焼付け・
   紫外線照射処理工程；と、により絶縁性に優れた平角絶
   縁電線を製造することを特徴とする平角絶縁電線の製造
   方法。
3. 【請求項３】 前記平角導体が銅、アルミニウム、また
   は銅クラッドアルミニウムであることを特徴とする請求
   項１または２記載の平角絶縁電線の製造方法。
4. 【請求項４】 前記絶縁塗料がポリウレタン系絶縁塗
   料、ポリエステル系絶縁塗料、ポリエステルイミド系絶
   縁塗料、はんだ付け性ポリエステルイミド系絶縁塗料、
   ポリアミドイミド系絶縁塗料またはポリイミド系絶縁塗
   料であることを特徴とする請求項１、２または３記載の
   平角絶縁電線の製造方法。
5. 【請求項５】 前記紫外線照射処理に使用するランプが
   低圧紫外線ランプであり、該ランプからでている波長は
   １８４．９ｎｍ、２５３．７ｎｍがピークとなる事を特
   徴とする請求項１、２、３または４記載の平角絶縁電線
   の製造方法。
6. 【請求項６】 前記紫外線照射処理した平角導体の全面
   または角部の濡れ性が、個体表面張力で50dyne/ cm²以
   上であることを特徴とする請求項１、２、３,４または
   ５記載の平角絶縁電線の製造方法。