JP2003121255A - ボロメータ型赤外線検出器 - Google Patents
ボロメータ型赤外線検出器Info
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Abstract
ノイズによる特性劣化の無い構造のボロメータ型赤外線
検出素子の提供。 【解決手段】少なくとも支持膜3、ボロメータ薄膜4、
ボロメータ薄膜の抵抗変化を読み出すための電極6、保
護膜5とからなり、基板9から梁2によって浮かせて支
持されたダイアフラム構造を有するボロメータ型赤外線
検出器において、ボロメータ薄膜4を複数の短冊状に形
成し、各々のボロメータ薄膜4を電極6により直列に接
続することにより、ボロメータ抵抗を高くして自己発熱
による温度ドリフトを抑制すると共に、体積効果による
1/fノイズの増加を防止する。
Description
るボロメータ型赤外線検出器に関し、特に、温度ドリフ
トとノイズを抑制することができる高性能化のボロメー
タ型赤外線検出器に関する。
を利用した量子型と、熱による材料物性値(抵抗、誘電
率等)の変化を利用した熱型に大きく分けられる。前者
は高感度ではあるが動作原理上冷却を必要としている。
それに対し後者は、特に冷却を必要としていないため非
冷却型とも呼ばれ、製作コストや維持コストの面で量子
型に比べ有利な点が多く、赤外線検出器の主流となりつ
つある。
電型及び熱電対型があり、いずれも検出器の感度を高く
するため一般には熱分離構造、いわゆるダイアフラム構
造を有している。このなかでもボロメータ型の赤外線検
出器は比較的特性に優れ、特にボロメータ材料として酸
化バナジウム(VO2)を用いたものは、SPIE(1
996年、2746巻、23頁)にも述べられているよ
うに、二次元に配列され赤外画像検出素子として用いら
れている。ここでは、その一画素を例にとって、ボロメ
ータ型赤外線検出器の典型的な構造を説明する。図3
は、従来のボロメータ型赤外線検出器の構造を示す平面
図であり、図4は、B−B′線における断面図である。
赤外線検出器は一般に、熱電変換部分1とそれを支える
梁2とからなり、熱電変換部1は梁2によって支えられ
ているダイアフラム構造となっている。このダイアフラ
ム構造は、支持膜3、熱電材料としてのボロメータ薄膜
4、ボロメータ薄膜4の抵抗変化を検出するための電極
6、及び保護膜5よりなり、これらはキャビティ8によ
り基板9から熱的に分離されている。
堆積し、さらに支持膜3、ボロメータ薄膜4を堆積、パ
ターニング、電極6を形成、保護膜5を堆積し、各層を
所望の形状にドライエッチング等でパターニングして熱
電変換部1の周りに犠牲層を露出させ、最後に熱電変換
部1の周りからエッチングにより犠牲層を除去すること
により形成される。犠牲層が除去された部分であるキャ
ビティ8は完全に空隙になっており、熱電変換部1を梁
2で吊っている構造となっている。特に図には示されて
いないが、梁2の先端は基板9に接地している。ボロメ
ータ薄膜4の相対する2辺は電極6と接触しており、こ
れらの電極6は梁2を経由して信号処理回路に接続さ
れ、赤外線を吸収することでダイアフラムの温度が上昇
し、それによって生じたボロメータ薄膜4の抵抗変化を
電気信号として取り出している。
ウム銅酸化物)などの比抵抗の低いボロメータ材料を用
いた場合は、電極とボロメータ材料が一体化できる利点
はあるものの、素子としての抵抗値を所望の値に制御す
るために、図5に示すようにダイアフラム上でメアンダ
ー構造を採用する必要がある。この例はSPIE(19
93年、2020巻、2頁)に述べられている。メアン
ダー構造の幅は狭く、折り返し回数も多くなっている
が、低抵抗の材料を用いているため、形状が与える電気
的な影響(たとえば折り返し部分での電流密度の不均一
性など)はあまり問題にはならないと思われる。
赤外線検出器は、赤外線を吸収することでダイアフラム
の温度が上昇し、それによって生じたボロメータの抵抗
変化を電気信号として読み出しているが、実際に動作時
にはバイアスを印加することでボロメータに電流が流
れ、ジュール熱による自己発熱によりダイアフラム温度
は上昇する。このジュール熱による温度上昇は動作時の
温度ドリフトの原因となり、ボロメータの抵抗変化によ
る電気信号に大きく影響を与えるため、極力抑えること
が必要である。そのためにボロメータ抵抗は高い方が望
ましく、100kΩ程度にするのが適当である。
の比較的高い値が得られる材料であり、通常ボロメータ
型赤外線検出器に用いられているVO2は、厚さ約10
00Å(100nm)でシート抵抗は10〜20kΩで
ある。温度ドリフトの影響を軽減するためにボロメータ
抵抗として100kΩを得るには、ボロメータ形状を改
善し、現状の1/5から1/10程度まで薄膜化するか
細線化する方法が考えられる。これにより温度ドリフト
は改善される。
は1/fノイズが支配的と言われており、1/fノイズ
の大きさSvは次式で表される。
の係数であるK値はボロメータ材料の体積あるいはキャ
リア数に依存すると言われている。即ち体積が大きい方
が、あるいは比抵抗が小さい方が(キャリア数が多い方
が)K値が小さくなり性能的には優れたものとなる。し
かしながら、上述した方法で抵抗を高くし温度ドリフト
を改善しても体積効果によりノイズ特性が大幅に劣化
し、最終的に性能の優れたものは得られない。また材料
自体を改良し、高比抵抗化を図ったとしてもキャリア数
の効果によりノイズ特性の劣化は免れない。
させずに抵抗だけを高くする方法が求められる。これを
実現する方法としては、従来の技術で図5により示した
メアンダー構造が考えられる。図6には通常のVO2を
用いてボロメータ薄膜4をメアンダー構造にし、電極6
で配線した状態を示した。図5と比較してボロメータの
比抵抗が高いため、メアンダー構造の幅は広く折り返し
回数は少なくなっている。
の全体の体積はほとんど変わらず、抵抗のみが100k
Ω程度になるように調整しているものの、折り返し(曲
がり)の部分では特に電流密度が不均一になり、動作に
寄与する有効体積は減少している。従ってK値に関して
もボロメータの体積から想定される値に対して2〜3倍
劣化する問題が生じている。また、曲がりの内側部分に
電流が集中して高温になり、動作に悪影響を与えること
も懸念される。
のであって、その主たる目的は、自己発熱による温度ド
リフトを抑制し、かつ、ノイズによる特性劣化の無い構
造のボロメータ型赤外線検出素子を提供することにあ
る。
め、本発明のボロメータ型赤外線検出器は、支持膜と、
前記支持膜上に設けられたボロメータ薄膜と、前記ボロ
メータ薄膜上に設けられた保護膜とからなる熱電変換部
が、基板から梁によって浮かせて支持されたダイアフラ
ム構造を有するボロメータ型赤外線検出器において、前
記ボロメータ薄膜が短冊状に分割された複数の素子で構
成され、前記短冊状の複数の素子が、短冊の長手方向の
端部に設けた電極により直列に接続されているものであ
る。
が、前記ボロメータ薄膜で発生するジュール熱の許容値
を参照して設定されることが好ましい。
薄膜が、幅の異なる複数の前記素子からなる構成とする
ことができる。
型赤外線検出器を、信号読み出し回路基板上に2次元に
配列して形成する構成とすることができる。
図1に示すように短冊状に加工して配列し、それらを電
極により直列に接続した構造としている。従って、ボロ
メータ薄膜の成膜条件や膜厚は従来と全く同様としたま
まボロメータ抵抗の高抵抗化を図ることができ、動作時
のジュール熱による温度上昇を抑え、温度ドリフトの影
響を抑制することが可能となる。更に、本発明の構造で
は、ボロメータの体積は、動作に寄与する電流が流れる
有効体積を考慮しても従来構造とほぼ同等であるため、
ボロメータ抵抗が高くなってもK値が増加することはな
く、1/fノイズを低く抑えることができる。
を劣化させることなくボロメータ抵抗を1桁程度高くす
ることができ、温度ドリフトを抑えたボロメータ型赤外
線検出器を得ることができる。
るボロメータ型赤外線検出器の構造、製造方法、動作、
特性について、図1及び図2を用いて具体的に説明す
る。図1は、本発明の一実施の形態に係るボロメータ型
赤外線検出器の構造を示す平面図であり、図2は、図1
のA−A′線における断面図である。なお、本実施形態
では、ボロメータ材料としてVO2を用いた場合につい
て示す。
タ型赤外線検出器は、熱電変換部1であるダイアフラム
を2本の梁2で支えている形状である。特に図には示さ
れていないが、梁2の先端は基板9に接地されている。
ボロメータ薄膜4はダイアフラム内で3本の短冊状に配
列され、それらは電極6により電気的に直列に接続され
ている。ボロメータ薄膜4の熱による抵抗変化は、梁2
中にある電極6を経由して外部に取り出すことができ
る。また、図2に示すように、熱電変換部1及び梁2は
キャビティ8により中空に浮いており、基板9から熱的
に分離されている。
きさを30μm□、中に含まれる短冊状の各ボロメータ
薄膜4の幅を9μm、間隔を0.5μmとし、梁2は幅
2μm、梁2の中の電極6は幅1μmとした。また熱電
変換部1と梁2間の貫通孔7の幅(スリット幅)を1μ
mとした。
出器の製造方法について述べる。まず、基板9上に犠牲
層(特に図示されていない)としてポリイミドを2〜3
μm程度塗布し、電気的配線に係わる加工をした後に焼
き締めを行う。次に、支持膜3を300nm程度、ボロ
メータ薄膜4を100nm程度堆積し、ボロメータ薄膜
4のみ、3本の短冊状にドライエッチングで加工する。
各短冊の大きさは幅9μm、長さ28μmで間隔0.5
μmである。次に、電極6を各短冊状のボロメータが電
気的に直列に接続され、それらの抵抗変化が梁2を介し
て外部に読み出されるように加工した後、全面に保護膜
5を300nm程度堆積する。ここでは支持膜3、保護
膜5としてシリコン窒化膜、電極6としてはチタンを用
いている。次に、熱電変換部1、梁2の部分を残して周
囲の保護膜5、支持膜3を犠牲層に到達するまでドライ
エッチングにより除去し、貫通孔(スリット)7を形成
する。最後に犠牲層であるポリイミドを貫通孔7を通し
てアッシングにより除去し、キャビティ8を形成し素子
は完成する。
出器の動作及び特性について簡単に説明する。赤外線が
ダイアフラム構造の上面より入射すると、シリコン窒化
膜である支持膜3、保護膜5で吸収され、熱電変換部1
の温度が上昇し、ボロメータ薄膜4の抵抗は変化する。
ここではボロメータ薄膜4として一般的なシート抵抗1
2kΩ、抵抗温度係数−2%/KのVO2を用いてい
る。この温度上昇により変化した抵抗を電極6を介して
外部へ読み出すことにより、入射赤外線の量を検出す
る。実際には抵抗変化を読み出すために、電極6の両端
にバイアス電圧を印加しており、そこに流れる電流量に
よって変化を読み取っている。
熱(W=V2/R)により自己発熱を起こし、一般にこ
れが多い場合にはダイアフラムの温度が時間的に変動し
温度ドリフトの原因となり、入射赤外線による温度上昇
に影響をあたえる。しかしながら本実施形態の構造の場
合、シート抵抗12kΩのVO2を3本短冊状になら
べ、それらを直列に接続することでボロメータ抵抗を1
08kΩにしている。従って、従来に比べてジュール熱
による自己発熱を1桁下げることができ、安定した動作
が可能となる。
は、主にボロメータ薄膜4の抵抗温度係数と梁2の熱コ
ンダクタンスで決まるが、素子全体の性能を考えるとノ
イズも重要な要素となる。前述したように、ボロメータ
型赤外線検出器のノイズは1/fノイズが支配的であ
り、ボロメータ材料の体積あるいはキャリア数の逆数に
比例するK値は小さい方が性能的には優れている。本実
施形態の構造では、3本の短冊状のボロメータ薄膜を形
成することで、従来と同等の比抵抗、同等の膜厚のボロ
メータ薄膜で、108kΩとボロメータ全体の高抵抗化
を図りながらも、従来と同等の体積を得ることができ、
K値に関しても従来と遜色のない3×10− 13程度の
低い値を得ることができる。このようにノイズを増加さ
せずに高抵抗化が可能となる構造を提供している。
出器を信号読み出し回路基板上に2次元に配列すること
で、2次元のアレイセンサも比較的容易に実現できる。
を3本並置した構造を示したが、本発明は上記構造に限
定されるものではなく、ボロメータ型赤外線検出器に求
められる性能に応じてその本数及び幅は適宜変更するこ
とができる。例えば、本実施形態ではボロメータ抵抗と
して約100kΩの例を示したが、シート抵抗が10〜
20kΩで比較的K値の小さい膜を用い、短冊の本数や
幅を調整することで、ノイズを低いレベルに保ちなが
ら、更に高いボロメータ抵抗を得ることも可能となる。
膜4を並置した例を示しているが、各々のボロメータ薄
膜4を異なる形状としてもよく、例えば、図7に示すよ
うに、両端側で狭く、中央部で広い構造とすることもで
きる。このようにボロメータ薄膜4の幅を変えることに
より、体積を変えることなく直列抵抗を調整することが
できる。
5としてシリコン窒化膜、ボロメータ薄膜4として酸化
バナジウムを用いた例を示したが、材料はこれらに限定
されるものではなく、例えば、支持膜3や保護膜5とし
てシリコン酸化膜、ボロメータ薄膜4としてアモルファ
スシリコン等を用いてもよく、このような材料を用いて
も本発明の効果を得ることができる。
れば、ボロメータ薄膜を複数の短冊状に分割し、かつ、
それらを低抵抗の電極により直列に接続しているため、
ノイズを低いレベルに保ちながらボロメータ抵抗を高く
することが可能となり、低抵抗のボロメータの比べて自
己発熱等による特性劣化を抑えた高性能なボロメータ型
赤外線検出器を得ることができる。
タ薄膜は屈曲部のない直線的な形状で形成されているた
め、高抵抗化を図るためにボロメータ薄膜を屈曲させた
従来のメアンダー構造に比べ、電流集中による悪影響を
抑制することができる。
検出器の1画素の構造を示す平面図である。
タ型赤外線検出器のA−A′断面図である。
面図である。
B−B′断面図である。
ー構造のボロメータ型赤外線検出器の平面図である。
ータ型赤外線検出器の平面図である。
検出器の他の構造を示す平面図である。
Claims (4)
- 【請求項1】支持膜と、前記支持膜上に設けられたボロ
メータ薄膜と、前記ボロメータ薄膜上に設けられた保護
膜とからなる熱電変換部が、基板から梁によって浮かせ
て支持されたダイアフラム構造を有するボロメータ型赤
外線検出器において、 前記ボロメータ薄膜が短冊状に分割された複数の素子で
構成され、前記短冊状の複数の素子が、短冊の長手方向
の端部に設けた電極により直列に接続されていることを
特徴とするボロメータ型赤外線検出器。 - 【請求項2】前記短冊状の素子の数が、前記ボロメータ
薄膜で発生するジュール熱の許容値を参照して設定され
ることを特徴とする請求項1記載のボロメータ型赤外線
検出器。 - 【請求項3】前記ボロメータ薄膜が、幅の異なる複数の
前記素子により構成されることを特徴とする請求項1又
は2に記載のボロメータ型赤外線検出器。 - 【請求項4】請求項1乃至3のいずれか一に記載のボロ
メータ型赤外線検出器を、信号読み出し回路基板上に2
次元に配列して形成したことを特徴とするボロメータ型
赤外線検出器。
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