JP2003113892A - 能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御方法 - Google Patents

能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 個々のエンジンの振動特性に応じて能動型防
振支持装置に有効な防振性能を発揮させる。 【解決手段】 クランクパルスセンサでクランクパルス
を読み込み、その時間間隔から演算したクランク角速度
を時間微分してクランク角加速度を演算し、そのクラン
ク角加速度に慣性モーメントを乗算してエンジンのトル
ク演算する。続いてトルクの最大値および最小値の偏差
としてエンジン振動の振幅を演算し、その振幅が設定値
未満であれば、演算した振幅および予め設定した位相に
基づいて能動型防振支持装置のアクチュエータを制御す
る。一方、前記振幅が設定値以上であれば、トルクが最
大値となる位相からエンジン振動の位相を演算し、演算
した振幅および演算した位相に基づいて能動型防振支持
装置のアクチュエータを制御する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンの振動を
受ける弾性体と、弾性体が少なくとも壁面の一部を構成
する液室と、液室の容積を変化させる可動部材と、可動
部材を電磁力で駆動するアクチュエータとを備えた能動
型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】かかる能動型防振支持装置は、特開平7
−42783号公報により公知である。
【0003】この能動型防振支持装置は、アクチュエー
タに交流電流を印加して可動部材を振動させることでバ
ネ定数を変化させるもので、そのバネ定数を設定する交
流電流のピーク電流値と位相との関係を予めマップとし
て記憶しておき、エンジン回転数に応じて前記マップか
らアクチュエータに印加すべき交流電流のピーク電流値
と位相とを求めることで、種々のエンジン回転数領域で
能動型防振支持装置に有効な防振性能を発揮させるよう
になっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来
のものは、エンジンの個体間で振動の大きさや振動の位
相にバラツキがあることや、エンジンの長期の使用に伴
う振動特性の変化の影響を考慮できないため、必ずしも
有効な防振性能を発揮できない場合があった。
【0005】本発明は前述の事情に鑑みてなされたもの
で、個々のエンジンの振動特性に応じて能動型防振支持
装置に有効な防振性能を発揮させることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に記載された発明によれば、エンジンの振
動を受ける弾性体と、弾性体が少なくとも壁面の一部を
構成する液室と、液室の容積を変化させる可動部材と、
可動部材を電磁力で駆動するアクチュエータとを備えた
能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御方法にお
いて、エンジンのクランクパルスを検出することでエン
ジン振動の位相を推定し、推定したエンジン振動の位相
に基づいてアクチュエータを制御する場合と、予め設定
したエンジン振動の位相に基づいてアクチュエータを制
御する場合とを切り換えるようにしたことを特徴とする
能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御方法が提
案される。
【0007】上記構成によれば、能動型防振支持装置の
アクチュエータの制御を行う際に、エンジンのクランク
パルスから推定したエンジン振動の位相に基づいて行う
場合と、予め設定したエンジン振動の位相に基づいて行
う場合とを切り換えるので、エンジン振動が小さい等の
理由でエンジン振動の位相の推定が難しい場合でも、予
め設定したエンジン振動の位相に基づいてアクチュエー
タを制御することで有効な防振性能を支障なく発揮させ
ることができる。
【0008】また請求項2に記載された発明によれば、
請求項1の構成に加えて、エンジンのクランクパルスを
検出することでエンジン振動の大きさを推定し、推定し
たエンジン振動の大きさが所定値以上のときには推定し
たエンジン振動の位相に基づいてアクチュエータを制御
し、推定したエンジン振動の大きさが所定値未満のとき
には予め設定したエンジン振動の位相に基づいてアクチ
ュエータを制御することを特徴とする能動型防振支持装
置のアクチュエータ駆動制御方法が提案される。
【0009】上記構成によれば、エンジンのクランクパ
ルスからエンジン振動の大きさおよびエンジン振動の位
相を推定し、推定したエンジン振動が大きいときには推
定したエンジン振動の位相に基づいてアクチュエータを
制御するので、エンジンの個体間の振動の大きさや振動
の位相のバラツキ、あるいはエンジンの長期の使用に伴
う振動特性の変化の影響を受けることなく、アクチュエ
ータを的確に制御して有効な防振性能を発揮させること
ができる。また推定したエンジン振動が小さいときには
予め設定したエンジン振動の位相に基づいてアクチュエ
ータを制御するので、エンジン振動が小さいためにエン
ジン振動の位相の推定が難しい場合でも、アクチュエー
タを的確に制御して有効な防振性能を発揮させることが
できる。
【0010】また請求項3に記載された発明によれば、
請求項1の構成に加えて、エンジンのクランクパルスを
検出することでエンジン振動の大きさを推定し、推定し
たエンジン振動の大きさが所定値以上のときには推定し
たエンジン振動の大きさおよび推定したエンジン振動の
位相に基づいてアクチュエータを制御し、推定したエン
ジン振動の大きさが所定値未満のときには推定したエン
ジン振動の大きさおよび予め設定したエンジン振動の位
相に基づいてアクチュエータを制御することを特徴とす
る能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御方法が
提案される。
【0011】上記構成によれば、エンジンのクランクパ
ルスからエンジン振動の大きさおよびエンジン振動の位
相を推定し、推定したエンジン振動が大きいときには推
定したエンジン振動の大きさおよびエンジン振動の位相
に基づいてアクチュエータを制御するので、エンジンの
個体間の振動の大きさや振動の位相のバラツキ、あるい
はエンジンの長期の使用に伴う振動特性の変化の影響を
受けることなく、アクチュエータを的確に制御して有効
な防振性能を発揮させることができる。また推定したエ
ンジン振動が小さいときには推定したエンジン振動の大
きさおよび予め設定したエンジン振動の位相に基づいて
アクチュエータを制御するので、エンジン振動が小さい
ためにエンジン振動の位相の推定が難しい場合でも、ア
クチュエータを的確に制御して有効な防振性能を発揮さ
せることができる。
【0012】また請求項4に記載された発明によれば、
請求項1の構成に加えて、エンジンが気筒休止状態であ
るか否かに基づいてアクチュエータの制御を切り換える
ことを特徴とする能動型防振支持装置のアクチュエータ
駆動制御方法が提案される。
【0013】上記構成によれば、エンジン振動が大きく
なる気筒休止状態のときには推定したエンジン振動の位
相に基づいてアクチュエータを制御し、エンジン振動が
小さくなる非気筒休止状態のときには予め設定したエン
ジン振動の位相に基づいてアクチュエータを制御するこ
とで、気筒休止状態であるか否かに関わらずに有効な防
振性能を発揮させることができる。
【0014】また請求項5に記載された発明によれば、
請求項1の構成に加えて、エンジンがアイドル状態であ
るか否かに基づいてアクチュエータの制御を切り換える
ことを特徴とする能動型防振支持装置のアクチュエータ
駆動制御方法が提案される。
【0015】上記構成によれば、エンジン振動が大きく
なる非アイドル状態のときには推定したエンジン振動の
位相に基づいてアクチュエータを制御し、エンジン振動
が小さくなるアイドル状態のときには予め設定したエン
ジン振動の位相に基づいてアクチュエータを制御するこ
とで、アイドル状態であるか否かに関わらずに有効な防
振性能を発揮させることができる。
【0016】尚、実施例の第1弾性体14は本発明の弾
性体に対応し、実施例の第1液室24は本発明の液室に
対応し、実施例の能動型防振支持装置Mの位置における
振幅は本発明のエンジン振動の大きさに対応する。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を、添
付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0018】図1〜図5は本発明の一実施例を示すもの
で、図1は能動型防振支持装置の縦断面図、図2は図1
の2−2線断面図、図3は図1の3−3線断面図、図4
は図1の要部拡大図、図5はアクチュエータの制御手法
を示すフローチャートである。
【0019】図1〜図4に示す能動型防振支持装置M
は、自動車のエンジンEを車体フレームFに弾性的に支
持するためのもので、エンジンEのクランクシャフトの
回転に伴って出力されるクランクパルスを検出するクラ
ンクパルスセンサSが接続された電子制御ユニットUに
よって制御される。このクランクパルスはクランクシャ
フトの1回転につき36回、つまりクランクアングルの
10°毎に1回出力される。
【0020】能動型防振支持装置Mは軸線Lに関して実
質的に軸対称な構造を有するもので、エンジンEに結合
される板状の取付ブラケット11に溶接した内筒12
と、この内筒12の外周に同軸に配置された外筒13と
を備えており、内筒12および外筒13には厚肉のゴム
で形成した第1弾性体14の上端および下端がそれぞれ
が加硫接着により接合される。中央に開口15bを有す
る円板状の第1オリフィス形成部材15と、上面が開放
した樋状の断面を有して環状に形成された第2オリフィ
ス形成部材16と、同じく上面が開放した樋状の断面を
有して環状に形成された第3オリフィス形成部材17と
が溶接により一体化されており、第1オリフィス形成部
材15および第2オリフィス形成部材16の外周部が重
ね合わされて前記外筒13の下部に設けたカシメ固定部
13aに固定される。
【0021】膜状のゴムで形成された第2弾性体18の
外周が第3オリフィス形成部材17の内周に加硫接着に
より固定されており、この第2弾性体18の内周に加硫
接着により固定されたキャップ部材19が、軸線L上に
上下動可能に配置された可動部材20に圧入により固定
される。外筒13のカシメ固定部13aに固定されたリ
ング部材21にダイヤフラム22の外周が加硫接着によ
り固定されており、このダイヤフラム22の内周に加硫
接着により固定されたキャップ部材23が前記可動部材
20に圧入により固定される。
【0022】しかして、第1弾性体14および第2弾性
体18間に液体が封入された第1液室24が区画され、
第2弾性体18およびダイヤフラム22間に液体が封入
された第2液室25が区画される。そして第1液室24
および第2液室25は、第1〜第3オリフィス形成部材
15,16,17により形成された上部オリフィス26
および下部オリフィス27によって相互に連通する。
【0023】上部オリフィス26は第1オリフィス形成
部材15および第2オリフィス形成部材16間に形成さ
れる環状の通路であって、その一部に設けられた隔壁2
6aの一側において第1オリフィス形成部材15に連通
孔15aが形成され、前記隔壁26aの他側において第
2オリフィス形成部材16に連通孔16aが形成され
る。従って、上部オリフィス26は、第1オリフィス形
成部材15の連通孔15aから第2オリフィス形成部材
16の連通孔16aまでの略1周の範囲に亘って形成さ
れる(図2参照)。
【0024】下部オリフィス27は第2オリフィス形成
部材16および第3オリフィス形成部材17間に形成さ
れる環状の通路であって、その一部に設けられた隔壁2
7aの一側において第2オリフィス形成部材16に前記
連通孔16aが形成され、前記隔壁27aの他側におい
て第3オリフィス形成部材17に連通孔17aが形成さ
れる。従って、下部オリフィス27は、第2オリフィス
形成部材16の連通孔16aから第3オリフィス形成部
材17の連通孔17aまでの略1周の範囲に亘って形成
される(図3参照)。
【0025】以上のことから、第1液室24および第2
液室25は、直列に接続された上部オリフィス26およ
び下部オリフィス27によって相互に連通する。
【0026】外筒13のカシメ固定部13aには、能動
型防振支持装置Mを車体フレームFに固定するための環
状の取付ブラケット28が固定されており、この取付ブ
ラケット28の下面に前記可動部材20を駆動するため
のアクチュエータ29の外郭を構成するアクチュエータ
ハウジング30が溶接される。
【0027】アクチュエータハウジング30にはヨーク
32が固定されており、ボビン33に巻き付けられたコ
イル34がアクチュエータハウジング30およびヨーク
32に囲まれた空間に収納される。環状のコイル34の
内周に嵌合するヨーク32の筒状部32aに有底円筒状
のベアリング36が嵌合する。コイル34の上面に対向
する円板状のアーマチュア38がアクチュエータハウジ
ング30の内周面に摺動自在に支持されており、このア
ーマチュア38の内周に形成した段部38aがベアリン
グ36の上部に係合する。アーマチュア38はボビン3
3の上面との間に配置した皿ばね42で上方に付勢さ
れ、アクチュエータハウジング30に設けた係止部30
aに係合して位置決めされる。
【0028】ベアリング36の内周に円筒状のスライダ
43が摺動自在に嵌合しており、可動部材20から下方
に延びる軸部20aが、ベアリング36の上底部を緩く
貫通してスライダ43の内部に固定したボス44に接続
される。ベアリング36の上底部とスライダ43との間
にコイルばね41が配置されており、このコイルばね4
1でベアリング36は上向きに付勢され、スライダ43
は下向きに付勢される。
【0029】アクチュエータ29のコイル34が消磁状
態にあるとき、ベアリング36に摺動自在に支持された
スライダ43にはコイルばね41の弾発力が下向きに作
用するとともに、ヨーク32の底面との間に配置したコ
イルばね45の弾発力が上向きに作用しており、スライ
ダ43は両コイルばね41,45の弾発力が釣り合う位
置に停止する。この状態からコイル34を励磁してアー
マチュア38を下方に吸引すると、段部38aに押され
てベアリング36が下方に摺動することによりコイルば
ね41が圧縮される。その結果、コイルばね41の弾発
力が増加してコイルばね45を圧縮しながらスライダ4
3が下降するため、スライダ43にボス44および軸部
20aを介して接続された可動部材20が下降し、可動
部材20に接続された第2弾性体18が下方に変形して
第1液室24の容積が増加する。逆にコイル34を消磁
すると、可動部材20が上昇して第2弾性体18が上方
に変形し、第1液室24の容積が減少する。
【0030】しかして、自動車の走行中に低周波数のエ
ンジンシェイク振動が発生したとき、エンジンEから入
力される荷重で第1弾性体14が変形して第1液室24
の容積が変化すると、上部オリフィス26および下部オ
リフィス27を介して接続された第1液室24および第
2液室25間で液体が行き来する。第1液室24の容積
が拡大・縮小すると、それに応じて第2液室25の容積
が縮小・拡大するが、この第2液室25の容積変化はダ
イヤフラム22の弾性変形により吸収される。このと
き、上部オリフィス26および下部オリフィス27の形
状および寸法、並びに第1弾性体14のばね定数は前記
エンジンシェイク振動の周波数領域で低ばね定数および
高減衰力を示すように設定されているため、エンジンE
から車体フレームFに伝達される振動を効果的に低減す
ることができる。
【0031】尚、上記エンジンシェイク振動の周波数領
域では、アクチュエータ29は非作動状態に保たれる。
【0032】前記エンジンシェイク振動よりも周波数の
高い振動、即ちエンジンEのクランクシャフトの回転に
起因するアイドル振動やこもり音振動が発生した場合、
第1液室24および第2液室25を接続する上部オリフ
ィス26および下部オリフィス27内の液体はスティッ
ク状態になって防振機能を発揮できなくなるため、アク
チュエータ29を駆動して防振機能を発揮させる。
【0033】アクチュエータ29による防振機能を発揮
させるべく、電子制御ユニットUはクランクパルスセン
サSからの信号に基づいてコイル34に対する通電を制
御する。この制御の内容を、図5のフローチャートに基
づいて具体的に説明する。
【0034】先ずステップS1でクランクパルスセンサ
Sからクランクアングルの10°毎に出力されるクラン
クパルスを読み込み、ステップS2で前記読み込んだク
ランクパルスを基準となるクランクパルス(特定のシリ
ンダのTDC信号)と比較することでクランクパルスの
時間間隔を演算する。続くステップS3で前記10°の
クランクアングルをクランクパルスの時間間隔で除算す
ることでクランク角速度ωを演算し、ステップS4でク
ランク角速度ωを時間微分してクランク角加速度dω/
dtを演算する。続くステップS5でエンジンEのクラ
ンクシャフト回りのトルクTqを、エンジンEのクラン
クシャフト回りの慣性モーメントをIとして、 Tq=I×dω/dt により演算する。このトルクTqはクランクシャフトが
一定の角速度ωで回転していると仮定すると0になる
が、膨張行程ではピストンの加速により角速度ωが増加
し、圧縮行程ではピストンの減速により角速度ωが減少
してクランク角加速度dω/dtが発生するため、その
クランク角加速度dω/dtに比例したトルクTqが発
生することになる。
【0035】続くステップS6で時間的に隣接するトル
クの最大値および最小値を判定し、ステップS7でトル
クの最大値および最小値の偏差、つまりトルクの変動量
としてエンジンEを支持する能動型防振支持装置Mの位
置における振幅を演算する。この振幅は本発明のエンジ
ン振動の大きさに対応する。続くステップS8で前記振
幅が予め設定した設定値以上であれば、ステップS9で
エンジン振動の位相を演算する。このエンジン振動の位
相は、前記トルクが最大になるときのクランクアングル
から演算可能である。一方、前記ステップS8で前記振
幅が予め設定した設定値未満であれば、ステップS10
でエンジン振動の位相を予め設定した設定値に固定す
る。そしてステップS11で、演算したエンジン振動の
大きさおよび演算したエンジン振動の位相(あるいは予
め設定したエンジン振動の位相)に基づいて、アクチュ
エータ29のコイル34に印加する電流のデューティ波
形およびタイミング(位相)を決定する。
【0036】しかして、振動によってエンジンEが下方
に偏倚して第1液室24の容積が減少して液圧が増加す
るときには、コイル34を励磁してアーマチュア38を
吸引する。その結果、アーマチュア38はコイルばね4
1,45を圧縮しながらスライダ43および可動部材2
0と共に下方に移動し、可動部材20に内周を接続され
た第2弾性体18を下方に変形させる。これにより、第
1液室24の容積が増加して液圧の増加を抑制するた
め、能動型防振支持装置MはエンジンEから車体フレー
ムFへの下向きの荷重伝達を防止する能動的な支持力を
発生する。
【0037】逆に振動によってエンジンEが上方に偏倚
して第1液室24の容積が増加して液圧が減少するとき
には、コイル34を消磁してアーマチュア38を吸引を
解除する。その結果、アーマチュア38はコイルばね4
1,45の弾発力でスライダ43および可動部材20と
共に上方に移動し、可動部材20に内周を接続された第
2弾性体18を上方に変形させる。これにより、第1液
室24の容積が減少して液圧の減少を抑制するため、能
動型防振支持装置MはエンジンEから車体フレームFへ
の上向きの荷重伝達を防止する能動的な支持力を発生す
る。
【0038】以上のように、クランクパルスセンサSで
検出したエンジンEのクランクパルスからエンジン振動
の大きさおよびエンジン振動の位相を推定し、推定した
エンジン振動の大きさおよびエンジン振動の位相に基づ
いてアクチュエータ29のコイル34に印加する電流を
制御するので、エンジンEの個体間の振動特性のバラツ
キ、あるいはエンジンの長期の使用に伴う振動特性の変
化の影響を受けることなく、能動型防振支持装置Mに有
効な防振性能を発揮させることができる。
【0039】また推定したエンジン振動が小さいときに
はトルクの変動も小さいため、そのトルクが最大になる
位相から推定するエンジン振動の位相の精度が低下し、
アクチュエータ29を的確に制御することが難しくな
る。しかしながら、この場合には推定したエンジン振動
の大きさと、予め設定したエンジン振動の位相とに基づ
いてアクチュエータ29を制御するので、エンジン振動
の位相の推定が難しい場合でもアクチュエータ29を的
確に制御し、能動型防振支持装置Mに有効な防振性能を
発揮させることができる。
【0040】ところで上記実施例では、能動型防振支持
装置Mの位置での振幅が大きいときには推定したエンジ
ン振動の位相に基づいてアクチュエータ29を制御し、
前記振幅が小さいときには予め設定したエンジン振動の
位相に基づいてアクチュエータ29を制御しているが、
この方法だとエンジン回転数が同一であっても振動の大
小によって2種類のエンジン振動の位相の何れか一方を
用いて制御を行うことになるため、制御が複雑になって
2種類の制御が切り換わるときに不具合が発生し易くな
る問題がある。そこで、以下の二つの手法によってアク
チュエータ29の制御を切り換えることで、上記問題を
解消することができる。
【0041】休筒運転と全筒運転とを切り換えるエンジ
ンEでは、作動する気筒数が少ない休筒運転時にエンジ
ンEの運転が滑らかでなくなって振動が大きくなり、作
動する気筒数が多い全筒運転時にエンジンEの運転が滑
らかになって振動が小さくなるため、エンジン振動が大
きい休筒運転時に推定したエンジン振動の位相を採用し
てアクチュエータ29を制御し、エンジン振動が小さい
全筒運転時に予め設定したエンジン振動の位相を採用し
てアクチュエータ29を制御することができる。
【0042】またエンジン回転数が低いアイドル運転時
にエンジン振動が小さくなり、エンジン回転数が高い非
アイドル運転時にエンジン振動が大きくなるため、エン
ジン振動が大きい非アイドル運転時に推定したエンジン
振動の位相を採用してアクチュエータ29を制御し、エ
ンジン振動が小さいアイドル運転時に予め設定したエン
ジン振動の位相を採用してアクチュエータ29を制御す
ることができる。
【0043】このように、休筒運転時には実際のエンジ
ン振動の大小に関わらずに推定したエンジン振動の位相
に基づいてアクチュエータ29を制御し、またアイドル
運転時には実際のエンジン振動の大小に関わらずに予め
設定したエンジン振動の位相に基づいてアクチュエータ
29を制御することで、アクチュエータ29の制御を簡
素化することができ、しかも推定したエンジン振動の位
相に基づく制御と予め設定したエンジン振動の位相に基
づく制御とが切り換わるときの不具合を回避することが
できる。
【0044】以上、本発明の実施例を詳述したが、本発
明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行う
ことが可能である。
【0045】例えば、実施例では自動車のエンジンEを
支持する能動型防振支持装置Mを例示したが、本発明の
能動型防振支持装置は工作機械等の他の振動体の支持に
適用することができる。
【0046】また実施例では振幅が予め設定した設定値
以上のときに、演算したエンジン振動の大きさおよび演
算したエンジン振動の位相に基づいてアクチュエータ2
9への通電を制御しているが、演算したエンジン振動の
位相だけに基づいてアクチュエータ29への通電を制御
しても良い。同様に実施例では振幅が予め設定した設定
値未満のときに、演算したエンジン振動の大きさおよび
予め設定したエンジン振動の位相に基づいてアクチュエ
ータ29への通電を制御しているが、予め設定したエン
ジン振動の位相だけに基づいてアクチュエータ29への
通電を制御しても良い。
【0047】
【発明の効果】以上のように請求項1に記載された発明
によれば、能動型防振支持装置のアクチュエータの制御
を行う際に、エンジンのクランクパルスから推定したエ
ンジン振動の位相に基づいて行う場合と、予め設定した
エンジン振動の位相に基づいて行う場合とを切り換える
ので、エンジン振動が小さい等の理由でエンジン振動の
位相の推定が難しい場合でも、予め設定したエンジン振
動の位相に基づいてアクチュエータを制御することで有
効な防振性能を支障なく発揮させることができる。
【0048】また請求項2に記載された発明によれば、
エンジンのクランクパルスからエンジン振動の大きさお
よびエンジン振動の位相を推定し、推定したエンジン振
動が大きいときには推定したエンジン振動の位相に基づ
いてアクチュエータを制御するので、エンジンの個体間
の振動の大きさや振動の位相のバラツキ、あるいはエン
ジンの長期の使用に伴う振動特性の変化の影響を受ける
ことなく、アクチュエータを的確に制御して有効な防振
性能を発揮させることができる。また推定したエンジン
振動が小さいときには予め設定したエンジン振動の位相
に基づいてアクチュエータを制御するので、エンジン振
動が小さいためにエンジン振動の位相の推定が難しい場
合でも、アクチュエータを的確に制御して有効な防振性
能を発揮させることができる。
【0049】また請求項3に記載された発明によれば、
エンジンのクランクパルスからエンジン振動の大きさお
よびエンジン振動の位相を推定し、推定したエンジン振
動が大きいときには推定したエンジン振動の大きさおよ
びエンジン振動の位相に基づいてアクチュエータを制御
するので、エンジンの個体間の振動の大きさや振動の位
相のバラツキ、あるいはエンジンの長期の使用に伴う振
動特性の変化の影響を受けることなく、アクチュエータ
を的確に制御して有効な防振性能を発揮させることがで
きる。また推定したエンジン振動が小さいときには推定
したエンジン振動の大きさおよび予め設定したエンジン
振動の位相に基づいてアクチュエータを制御するので、
エンジン振動が小さいためにエンジン振動の位相の推定
が難しい場合でも、アクチュエータを的確に制御して有
効な防振性能を発揮させることができる。
【0050】また請求項4に記載された発明によれば、
エンジン振動が大きくなる気筒休止状態のときには推定
したエンジン振動の位相に基づいてアクチュエータを制
御し、エンジン振動が小さくなる非気筒休止状態のとき
には予め設定したエンジン振動の位相に基づいてアクチ
ュエータを制御することで、気筒休止状態であるか否か
に関わらずに有効な防振性能を発揮させることができ
る。
【0051】また請求項5に記載された発明によれば、
エンジン振動が大きくなる非アイドル状態のときには推
定したエンジン振動の位相に基づいてアクチュエータを
制御し、エンジン振動が小さくなるアイドル状態のとき
には予め設定したエンジン振動の位相に基づいてアクチ
ュエータを制御することで、アイドル状態であるか否か
に関わらずに有効な防振性能を発揮させることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】能動型防振支持装置の縦断面図
【図2】図1の2−2線断面図
【図3】図1の3−3線断面図
【図4】図1の要部拡大図
【図5】アクチュエータの制御手法を示すフローチャー
【符号の説明】
E エンジン 14 第1弾性体(弾性体) 20 可動部材 24 第1液室(液室) 29 アクチュエータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F16F 15/02 F16F 13/00 620D Fターム(参考) 3D035 CA05 CA21 CA34 CA35 CA42 CA43 3J047 AA03 CA04 CB03 CB10 DA01 FA02 3J048 AA02 AB15 AC04 AD03 BA18 BE03 CB19 DA01

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジン(E)の振動を受ける弾性体
    (14)と、 弾性体(14)が少なくとも壁面の一部を構成する液室
    (24)と、 液室(24)の容積を変化させる可動部材(20)と、 可動部材(20)を電磁力で駆動するアクチュエータ
    (29)と、を備えた能動型防振支持装置のアクチュエ
    ータ駆動制御方法において、 エンジン(E)のクランクパルスを検出することでエン
    ジン振動の位相を推定し、 推定したエンジン振動の位相に基づいてアクチュエータ
    (29)を制御する場合と、予め設定したエンジン振動
    の位相に基づいてアクチュエータ(29)を制御する場
    合とを切り換えるようにしたことを特徴とする能動型防
    振支持装置のアクチュエータ駆動制御方法。
  2. 【請求項2】 エンジン(E)のクランクパルスを検出
    することでエンジン振動の大きさを推定し、 推定したエンジン振動の大きさが所定値以上のときには
    推定したエンジン振動の位相に基づいてアクチュエータ
    (29)を制御し、 推定したエンジン振動の大きさが所定値未満のときには
    予め設定したエンジン振動の位相に基づいてアクチュエ
    ータ(29)を制御することを特徴とする、請求項1に
    記載の能動型防振支持装置のアクチュエータ駆動制御方
    法。
  3. 【請求項3】 エンジン(E)のクランクパルスを検出
    することでエンジン振動の大きさを推定し、 推定したエンジン振動の大きさが所定値以上のときには
    推定したエンジン振動の大きさおよび推定したエンジン
    振動の位相に基づいてアクチュエータ(29)を制御
    し、 推定したエンジン振動の大きさが所定値未満のときには
    推定したエンジン振動の大きさおよび予め設定したエン
    ジン振動の位相に基づいてアクチュエータ(29)を制
    御することを特徴とする、請求項1に記載の能動型防振
    支持装置のアクチュエータ駆動制御方法。
  4. 【請求項4】 エンジン(E)が気筒休止状態であるか
    否かに基づいてアクチュエータ(29)の制御を切り換
    えることを特徴とする、請求項1に記載の能動型防振支
    持装置のアクチュエータ駆動制御方法。
  5. 【請求項5】 エンジン(E)がアイドル状態であるか
    否かに基づいてアクチュエータ(29)の制御を切り換
    えることを特徴とする、請求項1に記載の能動型防振支
    持装置のアクチュエータ駆動制御方法。
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