JP2003113276A - ノンハロゲン難燃性樹脂組成物及びこれを用いた電線・ケーブル - Google Patents

ノンハロゲン難燃性樹脂組成物及びこれを用いた電線・ケーブル

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Abstract

(57)【要約】 【課題】燃焼時に有毒なガスを発生することがなく、高
い難燃性、及び優れた機械的強度を有する樹脂組成物お
よびこれを絶縁体・シースに用いた電線・ケーブルを提
供する。 【解決手段】ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し
て、金属水酸化物50〜250重量部、及び1,3,5
‐トリアジン誘導体0.5〜50重量部を添加する。こ
れにチタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケ
ル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジ
ウム、パラジウム、タンタル、イリジウム及び白金から
なる群より選ばれる少なくとも1種の金属又はその化合
物3〜20重量部を含ませてもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ノンハロゲン難燃
性樹脂組成物及びこれを用いた電線・ケーブルに関し、
特に、燃焼時にハロゲン系ガスやホスフィンガス等の有
毒なガスを発生しない樹脂組成物及びこの樹脂組成物を
導体の絶縁体又はシースに用いた電線・ケーブルに関す
る。
【0002】
【従来の技術】ハロゲン化合物を含まない難燃性樹脂組
成物として、ポリオレフィン系樹脂に水酸化マグネシウ
ム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物を添加した組
成物が知られている。これらの組成物は燃焼時に塩化水
素やダイオキシン等の有害なガスを発生しないため火災
時の毒性、腐食等の二次災害を防止することができ、か
つ、廃棄時の焼却処分が可能である。
【0003】ただし、金属水酸化物を単独で添加しただ
けでは、目的の難燃性を得られない場合が多いので、難
燃性向上のための難燃助剤として赤リンなどのリン含有
難燃剤を添加することが行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の難燃性
樹脂組成物によると、金属水酸化物の添加量を増やす
と、それに伴い引張強度などの機械的特性が著しく低下
してしまうという問題がある。また、難燃助剤として添
加されるリン含有難燃剤は、高温多湿環境下(使用時又
は廃棄時)でホスフィンガスを発生するという問題があ
る。
【0005】従って、本発明の目的は燃焼時に有毒なガ
スを発生することがなく、高い難燃性、及び優れた機械
的強度を有する樹脂組成物及びこれを導体の絶縁体・シ
ースに用いた電線・ケーブルを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記目的を達
成するために、請求項1記載の発明において、ポリオレ
フィン系樹脂100重量部に対して、金属水酸化物50
〜250重量部、及び1,3,5‐トリアジン誘導体
0.5〜50重量部を含むことを特徴とするノンハロゲ
ン難燃性樹脂組成物を提供する。
【0007】請求項2に記載の発明において、ポリオレ
フィン系樹脂100重量部に対して、金属水酸化物50
〜250重量部、1,3,5‐トリアジン誘導体0.5
〜50重量部、及びチタン、クロム、マンガン、鉄、コ
バルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデン、ル
テニウム、ロジウム、パラジウム、タンタル、イリジウ
ム及び白金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金
属又はその化合物3〜20重量部を含むことを特徴とす
るノンハロゲン難燃性樹脂組成物を提供する。
【0008】請求項3記載の発明において、前記1,
3,5‐トリアジン誘導体は、メラミン、シアヌル酸、
イソシアヌル酸、メラミンシアヌレート、硫酸メラミン
からなる群より選ばれる少なくとも1種であるノンハロ
ゲン難燃性樹脂組成物を提供する。
【0009】請求項4記載の発明において、前記金属又
はその化合物は、ニッケルが固溶した水酸化マグネシウ
ムであり、前記ニッケルが固溶した水酸化マグネシウム
の添加量が、前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に
対して、3〜250重量部、かつ、前記金属水酸化物を
加えた添加量が50〜250重量部であることを特徴と
するノンハロゲン難燃性樹脂組成物を提供する。
【0010】請求項5記載の発明において、請求項1か
ら4のいずれか1項記載のノンハロゲン難燃性樹脂組成
物を導体の絶縁体又はシースに用いたことを特徴とする
電線・ケーブルを提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明のノンハロゲン難燃性樹脂
組成物及びそれを導体の絶縁体又はシースに用いた電線
・ケーブルについて説明する。
【0012】本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂
として、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレ
ン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン‐メチルメ
タクリレート共重合体、エチレン‐メチルアクリレート
共重合体、エチレン‐エチルアクリレート共重合体、エ
チレン‐酢酸ビニル共重合体、エチレン‐グリシジルメ
タクリレート共重合体、エチレン‐ブテン−1共重合
体、エチレン‐ヘキセン‐1共重合体、エチレン‐ブテ
ン‐ヘキセン三元共重合体、エチレン‐プロピレン‐ジ
エン三元共重合体、エチレン‐オクテン共重合体、ポリ
プロピレン、エチレン共重合ポリプロピレン、エチレン
‐プロピレン共重合体、ポリ‐4‐メチル‐ペンテン‐
1、マレイン酸グラフト低密度ポリエチレン、マレイン
酸グラフト直鎖状低密度ポリエチレン、マレイン酸グラ
フトエチレン‐メチルアクリレート共重合体、マレイン
酸グラフトエチレン‐酢酸ビニル共重合体、エチレン‐
無水マレイン酸共重合体、エチレン‐エチルアクリレー
ト‐無水マレイン酸三元共重合体等が挙げられる。これ
らは、単独又は2種以上混合して使用できる。
【0013】金属水酸化物として、水酸化マグネシウ
ム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等が挙げら
れ、これらは、単独又は2種以上を使用してもよい。ま
た、これらの金属水酸化物は、シランカップリング剤、
チタネ−ト系カップリング剤、ステアリン酸塩やステア
リン酸カルシウムなどの脂肪酸又は脂肪酸金属塩などに
よって表面処理されているものを用いても差し支えな
い。本発明において金属水酸化物の添加量は、50〜2
50重量部であり、添加量が50重量部より少ないと十
分な難燃効果が得られず、250重量部より多いと機械
的強度が著しく低下する。
【0014】1,3,5‐トリアジン誘導体としては、
メラミン、シアヌル酸、イソシアヌル酸、メラミンシア
ヌレート、硫酸メラミン等が挙げられる。より好適に
は、メラミンシアヌレートである。これらは、非イオン
性表面活性剤や各種カップリング剤により表面処理され
ていてもよい。本発明において、1,3,5‐トリアジ
ン誘導体の添加量は、0.5から50重量部であり、添
加量が0.5重量部より少ないと十分な難燃効果が得ら
れず、50重量部より多いと機械的強度が著しく低下す
る。1,3,5‐トリアジン誘導体は、燃焼時300度
以上で分解、昇華し、不燃性ガスを発生するため、難燃
性に寄与するものと考えられる。
【0015】本発明のノンハロゲン難燃性樹脂組成物に
含まれる金属としては、チタン、クロム、マンガン、
鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ニオブ、モリブデ
ン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、タンタル、イ
リジウム及び白金が挙げられる。これらは、金属単体又
はその化合物として少なくとも1種を添加することがで
きる。
【0016】より好適には、ニッケル、チタンを含有す
る物質が挙げられ、具体的には、ニッケルが固溶した水
酸化マグネシウム、二酸化チタン等が好ましい。ニッケ
ルが固溶した水酸化マグネシウム(水酸化マグネシウム
とニッケルの固溶体)は、Mg(1-x)Nix(OH)
2(x=0.01〜0.5)であらわされる化合物であ
り、シランカップリング剤、チタネ−ト系カップリング
剤、ステアリン酸塩やステアリン酸カルシウムなどの脂
肪酸又は脂肪酸金属塩などによって表面処理されている
ものを用いても差し支えない。金属又はその化合物の添
加量は特に規定しないが、好ましくは3〜20重量部で
あり、添加量が3重量部より少ないと後述するように強
固な燃え殻を形成せず、20重量部より多いと、機械的
強度が著しく低下する。
【0017】なお、ニッケルが固溶した水酸化マグネシ
ウムを用いる場合、通常の水酸化マグネシウムとしての
難燃効果も期待できるため、添加量は、3〜250重量
部であり、かつ、前記金属水酸化物との合計添加量は、
50〜250重量部とする。添加量が3重量部より少な
いと後述するように強固な燃え殻を形成せず、250重
量部より多いと、機械的強度が著しく低下する。また、
水酸化マグネシウムとの合計添加量が50重量部より少
ないと強固な燃え殻を形成せず、250重量部より多い
と、機械的強度が著しく低下する。
【0018】本発明において、1,3,5−トリアジン
誘導体を単独で難燃助剤として用いるよりも、金属又は
その化合物を併用することにより高い難燃性が発現する
ことを見出した。詳細は不詳であるが、燃焼時に分解し
た1,3,5−トリアジン誘導体が金属触媒の存在下、
再結合し、そのときに架橋体を作り、強固な燃え殻(炭
化層)を形成するためと考えられる。燃焼時に外気と接
触している絶縁体又はシースが強固な燃え殻を形成すれ
ば、絶縁体又はシースにより被覆されている内部の樹脂
の分解により生じる可燃性ガスの表面への拡散を抑える
ことができ、また、燃焼時の形状を保持することにより
可燃成分が多量に含まれるケーブルコアの露出を防ぐこ
とができる。
【0019】また、上記の配合剤以外にも必要に応じて
酸化防止剤、滑剤、軟化剤、可塑剤、無機充填剤、相溶
化剤、安定剤、カーボンブラック、着色剤等の添加物を
加えることが可能である。
【0020】更に、有機過酸化物により架橋したり、電
子線などの放射線により架橋してもよい。
【0021】
【実施例】本発明の実施例を図1〜3並びに表1及び2
に示す。
【0022】図1は、銅導体1に絶縁体2を被覆したも
の3心を介在4と共に撚り合わせ、押え巻きテープ5を
施し、最外層をシース3として押出し被覆したケーブル
を示す図であり、シース3を本発明のノンハロゲン難燃
性樹脂組成物により作製する。
【0023】図2は、銅導体1に絶縁体2を被覆した電
線であり、絶縁体2を本発明のノンハロゲン難燃性樹脂
組成物により作製する。
【0024】図3は、銅導体1に絶縁体2を被覆したも
のを絶縁線心6とし、これを対撚りした対撚線7を4本
撚り合わせたコア8の外層を、シース内層9及びシース
外層10として押し出し被覆したものである。シース内
層9及びシース外層10は、本発明のノンハロゲン難燃
性樹脂成形物により作製する。
【0025】樹脂成形物およびケーブルは、以下のよう
に作製した。
【0026】試験用シートは、表1に示した配合割合で
各種成分を配合し、6インチロールによって150℃で
混錬後、180℃でプレス成型により作製した。また、
ケーブルは、同様の配合割合でニーダによって150℃
で混練後、混練物をペレットにし、これを図1に示すケ
ーブルのシースとして、160℃、厚さ3.5mmで押出
し被覆して作製した。ケーブルのコアとして、断面32
5mm2(325SQ)の銅導体に架橋ポリエチレンを
厚さ2.5mmに被覆したものを、介在と共に3心撚り合
せて、その外周にクラフト紙テープにより押え巻きが施
されたものを使用した。
【0027】各試験用シートについてJIS C 30
05に従い引張強さを測定し、10MPa以上を目標値
とした。
【0028】また、35mm×35mm×2mmの試験
用シートについて燃焼後の殻の硬さを測定した。バーナ
ーで10分間試験用シートを強熱後、プッシュプルゲー
ジの先端(12mmφ、平盤状)を押し付け、試験用シ
ートが割れたときの荷重を燃え殻の硬さとした。加重1
00g未満のものを×、100g以上200g未満のも
のを○、200g以上のものを◎とした。
【0029】各ケーブルについては、IEEE383に
準拠した垂直トレイ燃焼試験を行い、延焼距離が100
cm未満のものを◎(裕度をもって合格)、100cm
以上180cm未満のものを○(合格)とし、180c
m以上延焼したものを×(不合格)とした。
【0030】表1に示したように実施例における材料で
は、引っ張り強さは目標値を満足し、垂直トレイ燃焼試
験は合格している。また、実施例3、5〜10では、金
属化合物を添加することで、燃え殻は強固なもの(◎)
となる。特に実施例3、5、6、8では、メラミンシア
ヌレートとニッケルが固溶した水酸化マグネシウムを併
用することで、難燃性は向上し、垂直トレイ燃焼試験で
は裕度をもって合格(◎)となる。
【表1】
【0031】これに対し、表2に示すように、メラミン
シアヌレートを添加していない比較例1、添加量が規定
より少ない比較例8、水酸化マグネシウムの添加量が規
定より少ない比較例4,9においては難燃性が不十分で
あることがわかる。また、水酸化マグネシウムの添加量
が過剰な比較例2、メラミンシアヌレートが過剰な比較
例3、硫酸メラミンが過剰な比較例7、ステアリン酸処
理水酸化マグネシウムとニッケルが固溶した水酸化マグ
ネシウムの添加量の合計が規定を上回る比較例5,6に
おいては引張強さが不合格となった。
【表2】
【0032】
【発明の効果】以上説明したように、本発明による難燃
性樹脂組成物によれば、ポリオレフィン系樹脂に対し
て、金属水酸化物及び1,3,5‐トリアジン誘導体を
添加し、ハロゲンを含まないこととしたため、燃焼時に
有害なガスを発生せず、高い難燃性及び優れた機械的強
度を有するノンハロゲン樹脂組成物が得られた。また、
その樹脂組成物を絶縁体又はシースに使用することによ
り、使用時に有害なガスを発生せず、高い難燃性及び優
れた機械的強度を有する電線・ケーブルを得ることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 絶縁線心3条の外周を押え巻きテープ及びシ
ースで被覆したケーブルを示す図である。
【図2】 銅導体上に絶縁体で被覆した電線を示す図で
ある。
【図3】 対撚り線4本のコアの外周を2重のシース層
で被覆したケーブルを示す図である。
【符号の説明】
1 銅導体 2 絶縁体 3 シース 4 介在 5 押え巻きテープ 6 絶縁線心 7 対撚線 8 コア 9 シース内層 10 シース外層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01B 3/44 H01B 3/44 M P 7/295 C08K 3:22 //(C08K 13/02 5:3492 3:22 3:08 5:3492 H01B 7/34 B 3:08) (72)発明者 木村 一史 茨城県日立市日高町5丁目1番1号 日立 電線株式会社総合技術研究所内 Fターム(参考) 4J002 BB031 BB051 BB061 BB071 BB111 BB211 DA088 DA118 DE076 DE086 DE136 EU187 EU197 FD136 FD137 GQ01 5G303 AA06 AA08 AB20 BA12 CA11 5G305 AA02 AB15 AB25 AB35 BA12 BA13 CA01 CA04 CA06 CA07 CA08 CA51 CB15 CC01 CC03 CD13 5G315 CA03 CB02 CB06 CC08 CD02 CD04 CD14 CD17

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリオレフィン系樹脂100重量部に対
    して、金属水酸化物50〜250重量部、及び1,3,
    5‐トリアジン誘導体0.5〜50重量部を含むことを
    特徴とするノンハロゲン難燃性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 ポリオレフィン系樹脂100重量部に対
    して、金属水酸化物50〜250重量部、1,3,5‐
    トリアジン誘導体0.5〜50重量部、及びチタン、ク
    ロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、
    ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウ
    ム、タンタル、イリジウム及び白金からなる群より選ば
    れる少なくとも1種の金属又はその化合物3〜20重量
    部を含むことを特徴とするノンハロゲン難燃性樹脂組成
    物。
  3. 【請求項3】 前記1,3,5‐トリアジン誘導体は、
    メラミン、シアヌル酸、イソシアヌル酸、メラミンシア
    ヌレート、硫酸メラミンからなる群より選ばれる少なく
    とも1種である請求項1記載のノンハロゲン難燃性樹脂
    組成物。
  4. 【請求項4】 前記金属又はその化合物は、ニッケルが
    固溶した水酸化マグネシウムであり、前記ニッケルが固
    溶した水酸化マグネシウムの添加量が、前記ポリオレフ
    ィン系樹脂100重量部に対して、3〜250重量部、
    かつ、前記金属水酸化物を加えた添加量が50〜250
    重量部であることを特徴とする請求項1又は2のいずれ
    か1項記載のノンハロゲン難燃性樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 請求項1から4のいずれか1項記載のノ
    ンハロゲン難燃性樹脂組成物を導体の絶縁体又はシース
    に用いたことを特徴とする電線・ケーブル。
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