JP2003088579A - ゼラチン加水分解物の成形方法 - Google Patents
ゼラチン加水分解物の成形方法Info
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Abstract
を低分子化してアレルゲン性を低下させたゼラチン加水
分解物を用いる工業的に操作の容易な成形法と、その成
形法により調製したゼラチン加水分解物成形物を提供す
る。 【解決手段】 ゼラチン加水分解物溶液を当該ゼラチン
加水分解物が会合するに足る低温に保持し、所望の成形
形態に保持した状態で、当該低温のまま乾燥させること
を特徴とするゼラチン加水分解物の成形方法および当該
成形方法により製造されたゼラチン加水分解物成形物。
Description
物の成形方法に関し、さらに詳細には、ゼラチンに比べ
てアレルゲン性が低く、より生体にとって安全な天然物
質由来のゼラチン加水分解物を、工業的に容易な操作で
成形することができるゼラチン加水分解物の成形方法、
および当該成形方法により製造された成形物に関する。
チド鎖3本が三重らせん構造をとったもので、コラーゲ
ンを加熱変性させることで三重らせん構造が壊れてゼラ
チンとなる。工業的には、ゼラチンは、コラーゲンを主
成分とする生体組織(皮膚、骨)から熱水等で抽出され
た平均分子量80,000以上のものである。
酸配列の相同性が高く、特にウシ、ブタおよびヒトにお
いて90%以上同じである。このためコラーゲンより得ら
れるゼラチンはアレルゲン性が低い。
体適合性に優れた天然物質として、フィルム状、スポン
ジ状、棒状、ペレット状、粉末等の形態に加工成形され
医療用に用いられている。
のようにして作製される。すなわち、ゼラチンを水ある
いは有機溶媒に溶解してゼラチン溶液を調製し、これを
撥水処理したガラス板あるいはアクリル板上に流涎して
乾燥することによりフィルムが得られる。
の用途として、例えば、特開2000-37450号公報に開示さ
れているゼラチンの癒着防止材のようなものがある。
ンはアレルゲン性が低い生体材料として知られている。
しかし、ごく少数ではあるが、近年幼児においてワクチ
ン接種後にアレルギー反応が報告され、その抗原物質が
ワクチンに添加されたゼラチンであることが報告された
(J. ALLERGY. CLIN. IMMUNOL. Vol. 96 (1995) 563-56
5)。その後、ゼラチンアレルギー患者の血清がウシ由
来のゼラチンのα2鎖に特異的に反応することが明らか
となった(J. ALLERGY. CLIN. IMMUNOL. Vol. 104 (199
9) 695-699)。
アレルゲン性を低くする研究が多数なされてきた。その
結果、ゼラチン加水分解物ではゼラチンアレルギー患者
の抗ゼラチン免疫グロブリンE抗体(IgE)反応部位が破
壊され、アレルゲン性が低下していることが明かとなっ
た。ゼラチンの低分子化、低アレルゲン化についてはい
くつかの報告がある。その中でも、本出願人は、特開平
11-349599号公報において、ペプシン分解によって得ら
れる重量平均分子量3,500〜20,000である低アレルゲン
性の新規ペプシン分解ゼラチンを提案している。
チン加水分解物はゼラチン以上に生体に安全な素材であ
ると言える。また、ゼラチン加水分解物は酸、酵素によ
りゼラチンを分解したものである。ゼラチン加水分解物
およびゼラチンはコラーゲンに由来するので、アミノ酸
の組成も配列も共通である。したがって、生体適合性さ
らには止血作用等の生体に対する効果は同等である。
に、ゼラチンとは物性が異なることが知られている。す
なわち、ゼラチンを水に溶解する場合、水に膨潤させた
後に加熱して溶解するが、ゼラチン加水分解物では常温
の水にも容易に溶解する。また、ゼラチンには低温で近
傍の分子同士が三重らせん構造を形成しゲル化するとい
う特性がある。10重量%ゼラチン溶液の凝固点(ゲル化
温度)は20〜28℃であるので、常温(15〜25℃)で溶液
状態にするためには加温しなければならない。一方、ゼ
ラチン加水分解物溶液は常温でも流動性を維持してお
り、ゼラチン溶液に比べて粘度が低く、非常に操作性が
良い。例えば、医薬用に用いる場合、エンドトキシン除
去のための活性炭やイオン交換等のカラム操作が必要と
なるが、ゼラチン加水分解物溶液ではその操作が容易
で、かつ、除去効率も良くなる。ゼラチン同様、ゼラチ
ン加水分解物も、低温で近傍の分子同士が三重らせん構
造を形成するという性質を持っているが、ゼラチン加水
分解物の平均分子量に依存してゲル-ゾル転移温度がゼ
ラチンより低下する。以上のように、ゼラチン加水分解
物はゼラチンに近い性質も持ってはいるが、物性的には
かなり異なる物質と言える。
作性の良いゼラチン加水分解物を用いて成形物、特に医
療用成形物を作製することは産業上有利となる。しか
し、ゼラチン等についての公知の作製法を用いてゼラチ
ン加水分解物の成形物を作製しようとしても、ゼラチン
成形物と同等の性能を有するものができない。例えば、
フィルムの場合、平均分子量3,000〜5,000のゼラチン加
水分解物ではヒビ割れしてフィルムにならず、平均分子
量5,000〜30,000のゼラチン加水分解物ではフィルム状
になっても強度が弱く、しなやかさのない、脆いフィル
ムとなってしまう。これは、ゼラチン分子に比べゼラチ
ン加水分解物では分子量が小さいことが原因と考えられ
る。このような公知の作製法では、ゼラチンフィルムと
同様の物性を持ったゼラチン加水分解物フィルムを作製
することは困難である。
解物を用いて、ゼラチンを用いて成形した場合と同様の
性能を有するゼラチン加水分解物成形物を提供すること
にある。より詳細には、ゼラチン加水分解物溶液を用い
て工業的に容易な操作で、ゼラチンを用いた場合と同様
の性能を有するゼラチン加水分解物成形物の成形を行う
ことができるゼラチン加水分解物の成形方法を提供する
ことにある。
た、ゼラチン成形物に比べてアレルゲン性が低く、生体
に対してより安全なゼラチン加水分解物成形物を提供す
ることにある。
結果、ゼラチン加水分解物溶液を低温に保持すると、ゼ
ラチン加水分解物の近傍の分子同士が部分的な三重らせ
ん構造を形成し、かかる形成物が成形をするのに適して
いることを見いだし本発明を完成したものである。
溶液を当該ゼラチン加水分解物が会合するに足る低温に
保持し、所望の成形形態に保持した状態で、当該低温の
まま乾燥させることを特徴とするゼラチン加水分解物の
成形方法にある。
前記ゼラチン加水分解物の平均分子量が3、000〜30、000
である方法にある。また、本発明は、前記成形方法にお
いて、前記ゼラチン加水分解物を会合するに足る温度が
0〜20℃である方法にある。
前記ゼラチン加水分解物溶液に多価アルコールを添加す
る方法にある。また、本発明は、前記成形方法におい
て、さらに架橋させることを特徴とする方法にある。
により製造された成形物にある。
する。次に、本発明の成形方法について詳述する。
溶液を当該ゼラチン加水分解物が会合するに足る低温に
保持し、所望の成形形態に保持した状態で、当該低温の
まま乾燥させることにより実施できる。
用されるゼラチン加水分解物は、通常市販されているゼ
ラチン加水分解物を特に制限なく使用することができ
る。例えば、ウシアルカリ処理ゼラチン酵素加水分解物
((株)ニッピ製、商品名「PE-50」;平均分子量5,00
0)、ウシアルカリ処理ゼラチン酸加水分解物((株)
ニッピ製、商品名「PA-100」;平均分子量10,000)等が
挙げられる。また、ゼラチン加水分解物はいかなる動物
種のものを用いても構わない。また、ゼラチン加水分解
物を調製する場合には、ゼラチン加水分解物の原料であ
るゼラチンの製造法は限定されず、このため原料として
用いられるゼラチンは、酸処理ゼラチン、アルカリ処理
ゼラチン、コラーゲン変性物のいずれでも良い。また、
ゼラチンの分解法には、酸分解、酵素分解等の方法があ
るが、分解法は限定されない。尚、よりアレルゲン性の
低いゼラチン加水分解物を調製するためには、ペプシン
で分解することが好ましい。
しなやかな成形物を作製するために、好ましくは3,000
〜30,000、より好ましくは10,000〜30,000である。本発
明においては、ゼラチン加水分解物溶液を低温に保持す
ることで、部分的な三重らせん構造を有するゼラチン加
水分解物を形成させることが特に特徴的な点である。本
明細書中では、このようにゼラチン加水分解物の近傍の
分子同士が部分的な三重らせん構造を形成することを会
合と称し、会合により形成されたゼラチン加水分解物を
会合体という。このようにして、会合体を形成させるこ
とにより、低分子のゼラチン加水分解物をゼラチンに近
い分子量にすることができるのである。したがって、用
いるゼラチン加水分解物は、ゼラチンに比べ平均分子量
が小さくなっているものが適当で、かかる観点からも、
上述の平均分子量の範囲内とするのが好ましい。例え
ば、平均分子量10,000〜30,000のゼラチン加水分解物で
フィルムを作製すると、公知の方法により作製されたゼ
ラチンフィルムと同等のゼラチン加水分解物フィルムを
作製することができる。一方、本発明の方法と同様にし
て平均分子量80,000のゼラチンでフィルムを形成した場
合には、分子同士の相互作用が大きすぎて剛直なフィル
ムとなってしまい、所望のフィルムを得ることができな
い。
チン加水分解物の濃度は、好ましくは1〜50重量%、よ
り好ましくは5〜20重量%である。ゼラチン加水分解物
溶液を低温に保持した時の会合体形成の程度は、ゼラチ
ン加水分解物溶液におけるゼラチン加水分解物の濃度及
び分子量を調整することにより調節できる。すなわち、
濃度が高いと近傍の分子数が多くなり分子の会合が進
む。また、分子量が大きいゼラチン加水分解物では分子
の会合の程度が大きく、分子量が小さくなるとその効果
も減少する。したがって、ゼラチン加水分解物の分子量
により作製された成形物の物性も大きく変化するため、
目的の用途に応じて用いるゼラチン加水分解物の濃度お
よび分子量を選択することが必要である。
て用いられる溶媒としては、水、エタノール水溶液(例
えば、20容量%エタノール)、メタノール水溶液(例え
ば、20容量%メタノール)等が用いられる。
ゼラチン加水分解物成形物により柔軟性を持たせるため
に、多価アルコールを添加することもできる。該多価ア
ルコールとしては、好ましくは、グリセリン、プロピレ
ングリコール、1,3-ブタンジオール等が挙げられる。
加水分解物溶液に混合されるもので、その添加量は、用
いるゼラチン加水分解物の全量に対して50重量%以下と
するのが好ましい。より好ましくは、5重量%〜20重量
%である。
前記低温は、好ましくは0〜20℃、より好ましくは0〜10
℃である。前記低温が、20℃を超えると、会合体が形成
せず目的を達成することができない。
成形形態に保持し、乾燥することにより、ゼラチン加水
分解物を所望の形態に成形することができる。ここで、
所望の成形形態は、特に制限されず、フィルム状、スポ
ンジ状、棒状、ペレット状等が挙げられる。
成形形態が何であるかにより種々の手法が採用されうる
が、例えばフィルム状に成形する場合には、ゼラチン加
水分解物溶液を、撥水処理したガラス板あるいはアクリ
ル板等の平面上に流涎し、前記低温で30分〜5時間放置
することにより行うことができる。その後、再び低温に
保持して乾燥し、乾燥後、平面から剥がして目的のフィ
ルムを得ることができる。
等を用いてもよい。また、ゼラチン加水分解物溶液が会
合体を形成した後、紫外線を照射してさらに架橋を導入
することもできる。該架橋は、形成した会合体の強度を
高めるためのもので、かかる目的のためには行うのが好
ましいが、行わなくても構わない。
いはガンマ線を照射する物理的架橋法、あるいは化学架
橋剤を用いた化学的架橋法により行うことができる。紫
外線あるいはガンマ線の照射時間、または架橋剤の濃度
や処理時間は、得られる成形物に対する所望の強度に応
じて任意である。また、得られる成形物が生体内に挿入
して使用される物である場合、架橋の程度を調節して生
体での分解吸収速度を調節することが可能である。ま
た、化学架橋剤の代表例としては、アルデヒド類、エポ
キシ類、カルボジイミド類、イソシアネート類などが挙
げられる。
の種類、分子量、所望する成形体の強度等に依存して、
会合体を形成した後に乾燥し、それから架橋しても、会
合体を架橋してから乾燥しても、あるいは会合体を形成
した後、ある程度予備的に架橋させてから乾燥し、さら
に所望の程度架橋してもよい。
旨を逸脱しない範囲で、前述した以外の種々工程を行う
ことができる。次に、本発明の成形方法により得られ
る、本発明の成形物について説明する。
解物が、例えば、部分的な三重らせん構造による会合さ
れてなる、ゼラチン加水分解物の会合体である。会合体
形成の程度は、特に制限されるものではなく、前述のよ
うに調節して用途に応じて所望の程度とすることができ
る。さらには、ゼラチン加水分解物の会合体を成形した
後、架橋を導入して形成された架橋体であってもよい。
であり、例えば、フィルム状、スポンジ状、棒状、ペレ
ット状等とすることができる。本発明の成形物は、ゼラ
チン成形物に比べてアレルゲン性が低く、生体により安
全なゼラチン加水分解物の成形物である。そして、本発
明の成形物は、ゼラチンを用いて成形した成形物と同様
の性能を有するものである。例えば、成形物の成形形態
をフィルム状とした場合には、しなやかで強度的にも各
種用途、例えば、癒着防止材、創傷被覆材、DDS(ド
ラッグデリバリーシステム)の担体等に十分に使用し得
るものである。
らに詳細に説明する。尚、以下の例において「%」は
「重量%」である。 (実施例1)ゼラチン加水分解物の会合状態の確認 ゼラチン加水分解物A〔(株)ニッピ製、商品名「PE-5
0」;ウシアルカリ処理ゼラチン酵素加水分解物;重量
平均分子量5,000〕、ゼラチン加水分解物B〔(株)ニッ
ピ製、商品名「PA-100」;ウシアルカリ処理ゼラチン酸
加水分解物;重量平均分子量10,000〕、及びゼラチン
〔(株)ニッピ製、商品名「SE1」;ウシアルカリ処理
ゼラチン;重量平均分子量80,000〕をそれぞれ水に溶解
し、測定試料としての0.1mg/ml水溶液をそれぞれ調製し
た。得られた試料を10℃および60℃に1時間保持し、200
-250nmの円偏光二色性(CD)の測定を行った。尚、分子
楕円率は下記式1に従って算出した。結果を図1に示す。
解物A、ゼラチン加水分解物Bおよびゼラチンともに単分
子分散状態であり、すべてにおいて分子楕円率のピーク
が確認できない。しかし、測定温度10℃ではゼラチン加
水分解物A、ゼラチン加水分解物Bおよびゼラチンともに
221nmにコラーゲン三重らせん構造特有のピークが確認
された。以上の結果、10℃ではゼラチン加水分解物は近
傍の分子同士で部分的に三重らせん構造をとっており、
分子の会合体が形成されていることが確認された。ま
た、221nmのゼラチンのピークに比べて、ゼラチン加水
分解物BおよびA、特にゼラチン加水分解物Aのピークが
低くなっており、分子の平均分子量とピークの高さが相
関していることがわかった。これは、平均分子量が大き
いほど三重らせんの巻戻りが多い、すなわち、より多く
の部分的な三重らせん構造をとっていると言える。 (比較例1)公知の方法によるゼラチン加水分解物フィ
ルムの作製 ゼラチン加水分解物A〔(株)ニッピ製、商品名「PE-5
0」;ウシアルカリ処理ゼラチン酵素加水分解物;重量
平均分子量5,000〕、ゼラチン加水分解物B〔(株)ニッ
ピ製、商品名「PA-100」;ウシアルカリ処理ゼラチン酸
加水分解物;重量平均分子量10,000〕、及びゼラチン
〔(株)ニッピ製、商品名「SE1」;ウシアルカリ処理
ゼラチン;重量平均分子量80,000〕を、それぞれ水に溶
解し、10%水溶液をそれぞれ調製した。これらの水溶液
10mlをそれぞれアクリル板(10cm×10cm)上に流涎し、
50℃の乾燥機に一晩放置して乾燥した。 (実施例2)本発明によるゼラチン加水分解物フィルム
の作製 ゼラチン加水分解物A〔(株)ニッピ製、商品名「PE-5
0」;ウシアルカリ処理ゼラチン酵素加水分解物;重量
平均分子量5,000〕、ゼラチン加水分解物B〔(株)ニッ
ピ製、商品名「PA-100」;ウシアルカリ処理ゼラチン酸
加水分解物;重量平均分子量10,000〕を、それぞれ水に
溶解し、10%水溶液を調製した。これらの水溶液10mlを
それぞれアクリル板(10cm×10cm)上に流涎し、4℃の
冷蔵庫中に3日間放置して乾燥し、厚さ約100μmのフィ
ルム(10cm×10cm)を得た。得られたフィルムはいずれ
もしなやかであった。 (比較例2)ゼラチン加水分解物に代えてゼラチンを用
いた、ゼラチンフィルムの作製 ゼラチン〔(株)ニッピ製、商品名「SE1」;ウシアル
カリ処理ゼラチン;重量平均分子量80,000〕を水に溶解
し、10%水溶液を調製した。この水溶液10mlをアクリル
板(10cm×10cm)上に流涎し、4℃の冷蔵庫中に3日間放
置して乾燥し、厚さ約100μmのフィルム(10cm×10cm)
を得た。 (実施例3)グリセリン含有ゼラチン加水分解物フィル
ムの作製 ゼラチン加水分解物A〔(株)ニッピ製、商品名「PE-5
0」;ウシアルカリ処理ゼラチン酵素加水分解物;重量
平均分子量5,000〕、ゼラチン加水分解物B〔(株)ニッ
ピ製、商品名「PA-100」;ウシアルカリ処理ゼラチン酸
加水分解物;重量平均分子量10,000〕をそれぞれ水に溶
解し、20%水溶液をそれぞれ調製した。これらの水溶液
10gに、5%グリセリン水溶液4gと水6gとを、それぞれに
混合し、1%グリセリンを含むゼラチン加水分解物10%水
溶液を調製した。この水溶液10mlをアクリル板(10cm×
10cm)上に流涎し、4℃の冷蔵庫中に5時間放置した。ゼ
ラチン加水分解物が会合体を形成した後、紫外線ランプ
を使用して、30cmの距離から30Wの紫外線を10分間照射
して架橋を導入した。再び4℃の冷蔵庫中に5日間放置し
て乾燥し、厚さ約100μmのフィルム(10cm×10cm)をそ
れぞれ得た。
較例1、実施例2、比較例2および実施例3で作製したフィ
ルムについての結果を下記表1にまとめた。
施例2で得られたゼラチン加水分解物Bフィルムを用い
て、クリープメータ((株)山電、商品名「RE-330
5」)にて突き刺し試験を行った。
ィルムを中心部に直径1cmの円形の穴の空いた台に固定
し、穴の中心部に直径3mmの円筒形のプランジャー
(棒)を速度1mm/secで突き刺した。フィルムにプラン
ジャーが貫通した時の荷重(破断荷重)と歪み(破断歪
み)を測定した。測定は5サンプル行い、結果はその平
均値で表した。結果を表2に示す。
解物フィルムは公知の方法により作製されたゼラチンフ
ィルムに比べ破断荷重ではやや大きい値を示し、破断歪
みでは同等の物性を持っていることがわかった。 (実施例5)ゼラチン加水分解物フィルムの作製(濃度
の検討) ゼラチン加水分解物〔(株)ニッピ製、商品名「PA-10
0」;ウシアルカリ処理ゼラチン酸加水分解物;重量平
均分子量10,000〕を水に溶解し、5%、10%、および20
%水溶液をそれぞれ調製した。この水溶液10mlをアクリ
ル板(10cm×10cm)上に流涎し、4℃の冷蔵庫中に3日間
放置して乾燥して10cm×10cmのフィルムを得た。5%、1
0%、および20%水溶液で作製したフィルムの厚さは、
それぞれ約50μm、約100μm、および約150μmであっ
た。得られたフィルムはいずれもしなやかであった。 (実施例6)ゼラチン加水分解物フィルムの作製(紫外
線架橋) ゼラチン加水分解物〔(株)ニッピ製、商品名「PA-10
0」;ウシアルカリ処理ゼラチン酸加水分解物;重量平
均分子量10,000〕を水に溶解し、20%水溶液を調製し
た。この水溶液10gに5%グリセリン水溶液4gと水6gを混
合し、1% グリセリンを含む10% PA-100水溶液を調製し
た。この水溶液10mlをアクリル板(10cm×10cm)上に流
涎し、4℃の冷蔵庫中に3時間放置した。ゼラチン加水分
解物が会合体を形成したことを確認した後、紫外線ラン
プを使用して、30cmの距離から30Wの紫外線を10分間照
射して架橋を導入した。再び4℃の冷蔵庫中に3日間放置
して乾燥し、厚さ約100μmのフィルム(10cm×10cm)を
得た。
そのうち2枚それぞれに50cmの距離から30Wの紫外線を1
2、24時間(表裏半分の時間ずつ)照射して架橋を導入
した。また、残りの1枚については、照射を行わなかっ
た。
った。 (実施例7)強度測定 上記の実施例6で得られたゼラチン加水分解物フィルム
を下記のようにして強度試験を行った。
円形に切断し、水と鉛玉の入った円柱状容器の開口部分
に当該円形フィルムをかぶせた。別に前記円柱状容器の
直径より少し大きな円柱状の容器を用意し、その中に水
を満たす。この水を満たした容器中に前記フィルムをか
ぶせた容器をフィルム部分を下にして挿入し、該フィル
ムの両面が水に浸され、上面に鉛玉が乗るようにして静
置した。フィルムが破れ、鉛玉が落下するまでの時間を
指標としてフィルムの強度を測定した。落下するまでの
時間が長い程フィルムの強度が高い。その結果を表3に
示す。
ムに比べて12時間、24時間のフィルムでは鉛玉の落下時
間が紫外線照射時間に比例して長くなっている。このこ
とから、紫外線の照射時間を調節することにより、フィ
ルム表面に架橋度を調節することができ、フィルムの強
度を上昇させることができることが判る。
合性に優れた天然物質であるゼラチンを低分子化してア
レルゲン性を低下させたゼラチン加水分解物を用い、工
業的に容易な操作で、ゼラチンを用いて成形した成形物
と同様の性能を有するゼラチン加水分解成形物を得るこ
とができる。
比べてよりアレルゲン性の少ない安全な生体材料であ
り、且つ、工業的にも操作性の良いゼラチン加水分解物
を用いている。そして、用いるゼラチン加水分解物の濃
度、平均分子量および架橋の条件を適宜選択することも
容易である。これにより、所望の物性の成形物を工業的
に容易な操作で作製でき、医療分野等において有効利用
できる。
ある。
Claims (6)
- 【請求項1】 ゼラチン加水分解物溶液を当該ゼラチン
加水分解物が会合するに足る低温に保持し、所望の成形
形態に保持した状態で、当該低温のまま乾燥させること
を特徴とするゼラチン加水分解物の成形方法。 - 【請求項2】 前記ゼラチン加水分解物の平均分子量が
3、000〜30、000である請求項1に記載の方法。 - 【請求項3】 前記ゼラチン加水分解物を会合するに足
る温度が0〜20℃である請求項1または2に記載の方
法。 - 【請求項4】 前記ゼラチン加水分解物溶液に多価アル
コールを添加する請求項1〜3のいずれかに記載の方
法。 - 【請求項5】 さらに架橋させることを特徴とする請求
項1〜4のいずれかに記載の方法。 - 【請求項6】 請求項1〜5のいずれかの方法により製
造された成形物。
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Cited By (2)
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