JP5165823B2 - ゼラチン加水分解物の成形方法 - Google Patents

ゼラチン加水分解物の成形方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゼラチン加水分解物の成形方法に関し、さらに詳細には、ゼラチンに比べてアレルゲン性が低く、より生体にとって安全な天然物質由来のゼラチン加水分解物を、工業的に容易な操作で成形することができるゼラチン加水分解物の成形方法、および当該成形方法により製造された成形物に関する。
【0002】
【従来の技術】
コラーゲンは分子量100,000のポリペプチド鎖3本が三重らせん構造をとったもので、コラーゲンを加熱変性させることで三重らせん構造が壊れてゼラチンとなる。工業的には、ゼラチンは、コラーゲンを主成分とする生体組織(皮膚、骨)から熱水等で抽出された平均分子量80,000以上のものである。
【0003】
一般に、コラーゲンは、動物種間でアミノ酸配列の相同性が高く、特にウシ、ブタおよびヒトにおいて90%以上同じである。このためコラーゲンより得られるゼラチンはアレルゲン性が低い。
【0004】
このような理由から、ゼラチンは安全で生体適合性に優れた天然物質として、フィルム状、スポンジ状、棒状、ペレット状、粉末等の形態に加工成形され医療用に用いられている。
【0005】
例えば、一般的にゼラチンフィルムは以下のようにして作製される。すなわち、ゼラチンを水あるいは有機溶媒に溶解してゼラチン溶液を調製し、これを撥水処理したガラス板あるいはアクリル板上に流涎して乾燥することによりフィルムが得られる。
【0006】
このようにして得られたゼラチンフィルムの用途として、例えば、特開2000-37450号公報に開示されているゼラチンの癒着防止材のようなものがある。
【0007】
【発明の解決しようとする課題】
上述のように、ゼラチンはアレルゲン性が低い生体材料として知られている。しかし、ごく少数ではあるが、近年幼児においてワクチン接種後にアレルギー反応が報告され、その抗原物質がワクチンに添加されたゼラチンであることが報告された(J. ALLERGY. CLIN. IMMUNOL. Vol. 96 (1995) 563-565)。その後、ゼラチンアレルギー患者の血清がウシ由来のゼラチンのα2鎖に特異的に反応することが明らかとなった(J. ALLERGY. CLIN. IMMUNOL. Vol. 104 (1999) 695-699)。
【0008】
そこで、酸、酵素等でゼラチンを分解し、アレルゲン性を低くする研究が多数なされてきた。その結果、ゼラチン加水分解物ではゼラチンアレルギー患者の抗ゼラチン免疫グロブリンE抗体(IgE)反応部位が破壊され、アレルゲン性が低下していることが明かとなった。ゼラチンの低分子化、低アレルゲン化についてはいくつかの報告がある。その中でも、本出願人は、特開平11-349599号公報において、ペプシン分解によって得られる重量平均分子量3,500〜20,000である低アレルゲン性の新規ペプシン分解ゼラチンを提案している。
【0009】
上記のように、低アレルゲン化されたゼラチン加水分解物はゼラチン以上に生体に安全な素材であると言える。また、ゼラチン加水分解物は酸、酵素によりゼラチンを分解したものである。ゼラチン加水分解物およびゼラチンはコラーゲンに由来するので、アミノ酸の組成も配列も共通である。したがって、生体適合性さらには止血作用等の生体に対する効果は同等である。
【0010】
一方、ゼラチン加水分解物は、以下のように、ゼラチンとは物性が異なることが知られている。すなわち、ゼラチンを水に溶解する場合、水に膨潤させた後に加熱して溶解するが、ゼラチン加水分解物では常温の水にも容易に溶解する。また、ゼラチンには低温で近傍の分子同士が三重らせん構造を形成しゲル化するという特性がある。10重量%ゼラチン溶液の凝固点(ゲル化温度)は20〜28℃であるので、常温(15〜25℃)で溶液状態にするためには加温しなければならない。一方、ゼラチン加水分解物溶液は常温でも流動性を維持しており、ゼラチン溶液に比べて粘度が低く、非常に操作性が良い。例えば、医薬用に用いる場合、エンドトキシン除去のための活性炭やイオン交換等のカラム操作が必要となるが、ゼラチン加水分解物溶液ではその操作が容易で、かつ、除去効率も良くなる。ゼラチン同様、ゼラチン加水分解物も、低温で近傍の分子同士が三重らせん構造を形成するという性質を持っているが、ゼラチン加水分解物の平均分子量に依存してゲル-ゾル転移温度がゼラチンより低下する。以上のように、ゼラチン加水分解物はゼラチンに近い性質も持ってはいるが、物性的にはかなり異なる物質と言える。
【0011】
このように、より生体に安全で、かつ、操作性の良いゼラチン加水分解物を用いて成形物、特に医療用成形物を作製することは産業上有利となる。しかし、ゼラチン等についての公知の作製法を用いてゼラチン加水分解物の成形物を作製しようとしても、ゼラチン成形物と同等の性能を有するものができない。例えば、フィルムの場合、平均分子量3,000〜5,000のゼラチン加水分解物ではヒビ割れしてフィルムにならず、平均分子量5,000〜30,000のゼラチン加水分解物ではフィルム状になっても強度が弱く、しなやかさのない、脆いフィルムとなってしまう。これは、ゼラチン分子に比べゼラチン加水分解物では分子量が小さいことが原因と考えられる。このような公知の作製法では、ゼラチンフィルムと同様の物性を持ったゼラチン加水分解物フィルムを作製することは困難である。
【0012】
従って、本発明の目的は、ゼラチン加水分解物を用いて、ゼラチンを用いて成形した場合と同様の性能を有するゼラチン加水分解物成形物を提供することにある。より詳細には、ゼラチン加水分解物溶液を用いて工業的に容易な操作で、ゼラチンを用いた場合と同様の性能を有するゼラチン加水分解物成形物の成形を行うことができるゼラチン加水分解物の成形方法を提供することにある。
【0013】
さらに本発明は、上記のようにして成形した、ゼラチン成形物に比べてアレルゲン性が低く、生体に対してより安全なゼラチン加水分解物成形物を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は鋭意検討の結果、ゼラチン加水分解物溶液を低温に保持すると、ゼラチン加水分解物の近傍の分子同士が部分的な三重らせん構造を形成し、かかる形成物が成形をするのに適していることを見いだし本発明を完成したものである。
【0015】
すなわち、本発明は、ゼラチン加水分解物溶液を当該ゼラチン加水分解物が会合するに足る低温に保持し、所望の成形形態に保持した状態で、当該低温のまま乾燥させることを特徴とするゼラチン加水分解物の成形方法にある。
【0016】
また、本発明は、前記成形方法において、前記ゼラチン加水分解物の平均分子量が3、000〜30、000である方法にある。
また、本発明は、前記成形方法において、前記ゼラチン加水分解物を会合するに足る温度が0〜20℃である方法にある。
【0017】
また、本発明は、前記成形方法において、前記ゼラチン加水分解物溶液に多価アルコールを添加する方法にある。
また、本発明は、前記成形方法において、さらに架橋させることを特徴とする方法にある。
【0018】
また、本発明は、上述の本発明の成形方法により製造された成形物にある。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
次に、本発明の成形方法について詳述する。
【0020】
本発明の成形方法は、ゼラチン加水分解物溶液を当該ゼラチン加水分解物が会合するに足る低温に保持し、所望の成形形態に保持した状態で、当該低温のまま乾燥させることにより実施できる。
【0021】
更に詳細に説明すると、本発明において使用されるゼラチン加水分解物は、通常市販されているゼラチン加水分解物を特に制限なく使用することができる。例えば、ウシアルカリ処理ゼラチン酵素加水分解物((株)ニッピ製、商品名「PE-50」;平均分子量5,000)、ウシアルカリ処理ゼラチン酸加水分解物((株)ニッピ製、商品名「PA-100」;平均分子量10,000)等が挙げられる。また、ゼラチン加水分解物はいかなる動物種のものを用いても構わない。また、ゼラチン加水分解物を調製する場合には、ゼラチン加水分解物の原料であるゼラチンの製造法は限定されず、このため原料として用いられるゼラチンは、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン、コラーゲン変性物のいずれでも良い。また、ゼラチンの分解法には、酸分解、酵素分解等の方法があるが、分解法は限定されない。尚、よりアレルゲン性の低いゼラチン加水分解物を調製するためには、ペプシンで分解することが好ましい。
【0022】
前記ゼラチン加水分解物の平均分子量は、しなやかな成形物を作製するために、好ましくは3,000〜30,000、より好ましくは10,000〜30,000である。
本発明においては、ゼラチン加水分解物溶液を低温に保持することで、部分的な三重らせん構造を有するゼラチン加水分解物を形成させることが特に特徴的な点である。本明細書中では、このようにゼラチン加水分解物の近傍の分子同士が部分的な三重らせん構造を形成することを会合と称し、会合により形成されたゼラチン加水分解物を会合体という。このようにして、会合体を形成させることにより、低分子のゼラチン加水分解物をゼラチンに近い分子量にすることができるのである。したがって、用いるゼラチン加水分解物は、ゼラチンに比べ平均分子量が小さくなっているものが適当で、かかる観点からも、上述の平均分子量の範囲内とするのが好ましい。例えば、平均分子量10,000〜30,000のゼラチン加水分解物でフィルムを作製すると、公知の方法により作製されたゼラチンフィルムと同等のゼラチン加水分解物フィルムを作製することができる。一方、本発明の方法と同様にして平均分子量80,000のゼラチンでフィルムを形成した場合には、分子同士の相互作用が大きすぎて剛直なフィルムとなってしまい、所望のフィルムを得ることができない。
【0023】
前記ゼラチン加水分解物溶液におけるゼラチン加水分解物の濃度は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは5〜20重量%である。
ゼラチン加水分解物溶液を低温に保持した時の会合体形成の程度は、ゼラチン加水分解物溶液におけるゼラチン加水分解物の濃度及び分子量を調整することにより調節できる。すなわち、濃度が高いと近傍の分子数が多くなり分子の会合が進む。また、分子量が大きいゼラチン加水分解物では分子の会合の程度が大きく、分子量が小さくなるとその効果も減少する。したがって、ゼラチン加水分解物の分子量により作製された成形物の物性も大きく変化するため、目的の用途に応じて用いるゼラチン加水分解物の濃度および分子量を選択することが必要である。
【0024】
また、前記ゼラチン加水分解物溶液において用いられる溶媒としては、水、エタノール水溶液(例えば、20容量%エタノール)、メタノール水溶液(例えば、20容量%メタノール)等が用いられる。
【0025】
また、前記ゼラチン加水分解物溶液には、ゼラチン加水分解物成形物により柔軟性を持たせるために、多価アルコールを添加することもできる。該多価アルコールとしては、好ましくは、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等が挙げられる。
【0026】
前記多価アルコールは、成形前にゼラチン加水分解物溶液に混合されるもので、その添加量は、用いるゼラチン加水分解物の全量に対して50重量%以下とするのが好ましい。より好ましくは、5重量%〜20重量%である。
【0027】
前記ゼラチン加水分解物を会合するに足る前記低温は、好ましくは0〜20℃、より好ましくは0〜10℃である。前記低温が、20℃を超えると、会合体が形成せず目的を達成することができない。
【0028】
そして、前記低温に保持したまま、所望の成形形態に保持し、乾燥することにより、ゼラチン加水分解物を所望の形態に成形することができる。ここで、所望の成形形態は、特に制限されず、フィルム状、スポンジ状、棒状、ペレット状等が挙げられる。
【0029】
前記の低温保持する方法は、前記の所望の成形形態が何であるかにより種々の手法が採用されうるが、例えばフィルム状に成形する場合には、ゼラチン加水分解物溶液を、撥水処理したガラス板あるいはアクリル板等の平面上に流涎し、前記低温で30分〜5時間放置することにより行うことができる。その後、再び低温に保持して乾燥し、乾燥後、平面から剥がして目的のフィルムを得ることができる。
【0030】
この他、所望の成形形態に応じて種々の型等を用いてもよい。
また、ゼラチン加水分解物溶液が会合体を形成した後、紫外線を照射してさらに架橋を導入することもできる。該架橋は、形成した会合体の強度を高めるためのもので、かかる目的のためには行うのが好ましいが、行わなくても構わない。
【0031】
前記架橋は、得られた成形物に紫外線あるいはガンマ線を照射する物理的架橋法、あるいは化学架橋剤を用いた化学的架橋法により行うことができる。紫外線あるいはガンマ線の照射時間、または架橋剤の濃度や処理時間は、得られる成形物に対する所望の強度に応じて任意である。また、得られる成形物が生体内に挿入して使用される物である場合、架橋の程度を調節して生体での分解吸収速度を調節することが可能である。また、化学架橋剤の代表例としては、アルデヒド類、エポキシ類、カルボジイミド類、イソシアネート類などが挙げられる。
【0032】
そして、架橋工程は、ゼラチン加水分解物の種類、分子量、所望する成形体の強度等に依存して、会合体を形成した後に乾燥し、それから架橋しても、会合体を架橋してから乾燥しても、あるいは会合体を形成した後、ある程度予備的に架橋させてから乾燥し、さらに所望の程度架橋してもよい。
【0033】
本発明の成形方法においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前述した以外の種々工程を行うことができる。
次に、本発明の成形方法により得られる、本発明の成形物について説明する。
【0034】
本発明の成形物は、複数のゼラチン加水分解物が、例えば、部分的な三重らせん構造による会合されてなる、ゼラチン加水分解物の会合体である。会合体形成の程度は、特に制限されるものではなく、前述のように調節して用途に応じて所望の程度とすることができる。さらには、ゼラチン加水分解物の会合体を成形した後、架橋を導入して形成された架橋体であってもよい。
【0035】
また、本発明の成形物の成形形態は、任意であり、例えば、フィルム状、スポンジ状、棒状、ペレット状等とすることができる。
本発明の成形物は、ゼラチン成形物に比べてアレルゲン性が低く、生体により安全なゼラチン加水分解物の成形物である。そして、本発明の成形物は、ゼラチンを用いて成形した成形物と同様の性能を有するものである。例えば、成形物の成形形態をフィルム状とした場合には、しなやかで強度的にも各種用途、例えば、癒着防止材、創傷被覆材、DDS(ドラッグデリバリーシステム)の担体等に十分に使用し得るものである。
【0036】
【実施例】
以下、実施例を示すことにより、本発明をさらに詳細に説明する。尚、以下の例において「%」は「重量%」である。
(実施例1)ゼラチン加水分解物の会合状態の確認
ゼラチン加水分解物A〔(株)ニッピ製、商品名「PE-50」;ウシアルカリ処理ゼラチン酵素加水分解物;重量平均分子量5,000〕、ゼラチン加水分解物B〔(株)ニッピ製、商品名「PA-100」;ウシアルカリ処理ゼラチン酸加水分解物;重量平均分子量10,000〕、及びゼラチン〔(株)ニッピ製、商品名「SE1」;ウシアルカリ処理ゼラチン;重量平均分子量80,000〕をそれぞれ水に溶解し、測定試料としての0.1mg/ml水溶液をそれぞれ調製した。得られた試料を10℃および60℃に1時間保持し、200-250nmの円偏光二色性(CD)の測定を行った。尚、分子楕円率は下記式1に従って算出した。結果を図1に示す。
【0037】
【数1】
分子楕円率[θ]=100*CD / (c/MW)*L ・・・(式1)
CD:測定値
c (mg/ml):濃度0.1mg/ml
MW:平均残基分子量 91.6
L (cm):セル長 1cm
図1に示す結果より、測定温度60℃ではゼラチン加水分解物A、ゼラチン加水分解物Bおよびゼラチンともに単分子分散状態であり、すべてにおいて分子楕円率のピークが確認できない。しかし、測定温度10℃ではゼラチン加水分解物A、ゼラチン加水分解物Bおよびゼラチンともに221nmにコラーゲン三重らせん構造特有のピークが確認された。以上の結果、10℃ではゼラチン加水分解物は近傍の分子同士で部分的に三重らせん構造をとっており、分子の会合体が形成されていることが確認された。また、221nmのゼラチンのピークに比べて、ゼラチン加水分解物BおよびA、特にゼラチン加水分解物Aのピークが低くなっており、分子の平均分子量とピークの高さが相関していることがわかった。これは、平均分子量が大きいほど三重らせんの巻戻りが多い、すなわち、より多くの部分的な三重らせん構造をとっていると言える。
(比較例1)公知の方法によるゼラチン加水分解物フィルムの作製
ゼラチン加水分解物A〔(株)ニッピ製、商品名「PE-50」;ウシアルカリ処理ゼラチン酵素加水分解物;重量平均分子量5,000〕、ゼラチン加水分解物B〔(株)ニッピ製、商品名「PA-100」;ウシアルカリ処理ゼラチン酸加水分解物;重量平均分子量10,000〕、及びゼラチン〔(株)ニッピ製、商品名「SE1」;ウシアルカリ処理ゼラチン;重量平均分子量80,000〕を、それぞれ水に溶解し、10%水溶液をそれぞれ調製した。これらの水溶液10mlをそれぞれアクリル板(10cm×10cm)上に流涎し、50℃の乾燥機に一晩放置して乾燥した。
(実施例2)本発明によるゼラチン加水分解物フィルムの作製
ゼラチン加水分解物A〔(株)ニッピ製、商品名「PE-50」;ウシアルカリ処理ゼラチン酵素加水分解物;重量平均分子量5,000〕、ゼラチン加水分解物B〔(株)ニッピ製、商品名「PA-100」;ウシアルカリ処理ゼラチン酸加水分解物;重量平均分子量10,000〕を、それぞれ水に溶解し、10%水溶液を調製した。これらの水溶液10mlをそれぞれアクリル板(10cm×10cm)上に流涎し、4℃の冷蔵庫中に3日間放置して乾燥し、厚さ約100μmのフィルム(10cm×10cm)を得た。得られたフィルムはいずれもしなやかであった。
(比較例2)ゼラチン加水分解物に代えてゼラチンを用いた、ゼラチンフィルムの作製
ゼラチン〔(株)ニッピ製、商品名「SE1」;ウシアルカリ処理ゼラチン;重量平均分子量80,000〕を水に溶解し、10%水溶液を調製した。この水溶液10mlをアクリル板(10cm×10cm)上に流涎し、4℃の冷蔵庫中に3日間放置して乾燥し、厚さ約100μmのフィルム(10cm×10cm)を得た。
(実施例3)グリセリン含有ゼラチン加水分解物フィルムの作製
ゼラチン加水分解物A〔(株)ニッピ製、商品名「PE-50」;ウシアルカリ処理ゼラチン酵素加水分解物;重量平均分子量5,000〕、ゼラチン加水分解物B〔(株)ニッピ製、商品名「PA-100」;ウシアルカリ処理ゼラチン酸加水分解物;重量平均分子量10,000〕をそれぞれ水に溶解し、20%水溶液をそれぞれ調製した。これらの水溶液10gに、5%グリセリン水溶液4gと水6gとを、それぞれに混合し、1%グリセリンを含むゼラチン加水分解物10%水溶液を調製した。この水溶液10mlをアクリル板(10cm×10cm)上に流涎し、4℃の冷蔵庫中に5時間放置した。ゼラチン加水分解物が会合体を形成した後、紫外線ランプを使用して、30cmの距離から30Wの紫外線を10分間照射して架橋を導入した。再び4℃の冷蔵庫中に5日間放置して乾燥し、厚さ約100μmのフィルム(10cm×10cm)をそれぞれ得た。
【0038】
得られたフィルムはしなやかであった。
比較例1、実施例2、比較例2および実施例3で作製したフィルムについての結果を下記表1にまとめた。
【0039】
【表1】
Figure 0005165823
【0040】
×:ひび割れしてフィルムにならない
△1:フィルムになるが脆い
△2:剛直なフィルムになる
○:しなやかなフィルムになる
(実施例4)物理試験
上記比較例1で得られたゼラチンフィルムおよび上記実施例2で得られたゼラチン加水分解物Bフィルムを用いて、クリープメータ((株)山電、商品名「RE-3305」)にて突き刺し試験を行った。
【0041】
試験方法は次の通りである。すなわち、フィルムを中心部に直径1cmの円形の穴の空いた台に固定し、穴の中心部に直径3mmの円筒形のプランジャー(棒)を速度1mm/secで突き刺した。フィルムにプランジャーが貫通した時の荷重(破断荷重)と歪み(破断歪み)を測定した。測定は5サンプル行い、結果はその平均値で表した。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】
Figure 0005165823
【0043】
表2より、本発明により作製された加水分解物フィルムは公知の方法により作製されたゼラチンフィルムに比べ破断荷重ではやや大きい値を示し、破断歪みでは同等の物性を持っていることがわかった。
(実施例5)ゼラチン加水分解物フィルムの作製(濃度の検討)
ゼラチン加水分解物〔(株)ニッピ製、商品名「PA-100」;ウシアルカリ処理ゼラチン酸加水分解物;重量平均分子量10,000〕を水に溶解し、5%、10%、および20%水溶液をそれぞれ調製した。この水溶液10mlをアクリル板(10cm×10cm)上に流涎し、4℃の冷蔵庫中に3日間放置して乾燥して10cm×10cmのフィルムを得た。5%、10%、および20%水溶液で作製したフィルムの厚さは、それぞれ約50μm、約100μm、および約150μmであった。得られたフィルムはいずれもしなやかであった。
(実施例6)ゼラチン加水分解物フィルムの作製(紫外線架橋)
ゼラチン加水分解物〔(株)ニッピ製、商品名「PA-100」;ウシアルカリ処理ゼラチン酸加水分解物;重量平均分子量10,000〕を水に溶解し、20%水溶液を調製した。この水溶液10gに5%グリセリン水溶液4gと水6gを混合し、1% グリセリンを含む10% PA-100水溶液を調製した。この水溶液10mlをアクリル板(10cm×10cm)上に流涎し、4℃の冷蔵庫中に3時間放置した。ゼラチン加水分解物が会合体を形成したことを確認した後、紫外線ランプを使用して、30cmの距離から30Wの紫外線を10分間照射して架橋を導入した。再び4℃の冷蔵庫中に3日間放置して乾燥し、厚さ約100μmのフィルム(10cm×10cm)を得た。
【0044】
次いで、得られたフィルムを3枚用意し、そのうち2枚それぞれに50cmの距離から30Wの紫外線を12、24時間(表裏半分の時間ずつ)照射して架橋を導入した。また、残りの1枚については、照射を行わなかった。
【0045】
得られたフィルムはいずれもしなやかであった。
(実施例7)強度測定
上記の実施例6で得られたゼラチン加水分解物フィルムを下記のようにして強度試験を行った。
【0046】
ゼラチン加水分解物フィルムを直径8mmの円形に切断し、水と鉛玉の入った円柱状容器の開口部分に当該円形フィルムをかぶせた。別に前記円柱状容器の直径より少し大きな円柱状の容器を用意し、その中に水を満たす。この水を満たした容器中に前記フィルムをかぶせた容器をフィルム部分を下にして挿入し、該フィルムの両面が水に浸され、上面に鉛玉が乗るようにして静置した。フィルムが破れ、鉛玉が落下するまでの時間を指標としてフィルムの強度を測定した。落下するまでの時間が長い程フィルムの強度が高い。その結果を表3に示す。
【0047】
【表3】
Figure 0005165823
【0048】
表3に示す結果より、照射0時間のフィルムに比べて12時間、24時間のフィルムでは鉛玉の落下時間が紫外線照射時間に比例して長くなっている。このことから、紫外線の照射時間を調節することにより、フィルム表面に架橋度を調節することができ、フィルムの強度を上昇させることができることが判る。
【0049】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、生体適合性に優れた天然物質であるゼラチンを低分子化してアレルゲン性を低下させたゼラチン加水分解物を用い、工業的に容易な操作で、ゼラチンを用いて成形した成形物と同様の性能を有するゼラチン加水分解成形物を得ることができる。
【0050】
すなわち、本発明においては、ゼラチンに比べてよりアレルゲン性の少ない安全な生体材料であり、且つ、工業的にも操作性の良いゼラチン加水分解物を用いている。そして、用いるゼラチン加水分解物の濃度、平均分子量および架橋の条件を適宜選択することも容易である。これにより、所望の物性の成形物を工業的に容易な操作で作製でき、医療分野等において有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1の試験結果を示すチャートである。

Claims (4)

  1. 平均分子量が3,000〜10,000のゼラチン加水分解物の溶液を当該ゼラチン加水分解物が会合するに足る0〜20℃に保持し、得られた会合体を所望の成形形態に保持した状態で、当該保持温度のまま該会合体を乾燥させることを特徴とするゼラチン加水分解物の成形方法。
  2. 前記ゼラチン加水分解物の溶液にグリセリン、プロピレングリコール及び1,3−ブタンジオールからなる群から選択される多価アルコールを添加することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. さらに会合体を架橋させることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかの方法により製造された成形物。
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